読みの原動力を発動させるための指導方略 : フィッシュを理論的起点に
9
0
0
全文
(2) 読みの原動力を発動させるための指導方略 ― フ ィッシュを理論的起点に ― . 花 坂 歩. ては極めて安定的でありながら、何か一つの解釈が普遍的に安. 定することはないということになる。もちろん、これは読みに. らを律し、自らを創造の地平に投げ込む読み手へと変容してい. 放するための授業試案を示す。本稿での考察は、自ら進んで自. を研究してきた(注1) 。本稿では、生徒の読みの閉塞感を解. 稿者はこれまでW・イーザーの読書行為論に基づいた授業実 践によって、自律的で創造的な読み手を育てるための指導方略. とも述べている。これは「特定の読みが力を持つ所において」. であるがゆえに、それは変化しうるテクストである。」 (注3). の読みが力を持つ所において、それが継続するかぎりにおいて. 定位されるのは、あらゆる場所、時代に対してではなく、特定. い。常に定位されるテクストを主張している。しかし、それが. 「私は無限に開かれた複数のテクストを主張しているのではな. 一 はじめに. くために必須の第一段階であり、フィッシュの解釈共同体とい. おける奔放な解釈を是認しているわけではない。フィッシュは、. う考え方がその指導には適していると考えている。. ることを前提としている。. あるとはとうてい思われない。そしてそのような意味とは直義. るにせよ)あまりに明白だと見えるために、それ以外の意味が. にとっては自由な読みの可能性が保障されることになり、読み. 条件下においてのみ有効であることを学ぶことができる。生徒. この考え方を授業で生徒が学ぶことによって、教師が提示す る読みが唯一絶対の解釈ではなく、教師が授業において設けた. という言葉が示すように、何かしらの解釈戦略が正常に機能す. フィッシュは「状況の変貌をも生き延びる不変の内容という 意味での直義的意味を、それは持たない。しかし、それらの一. 的意味である」 (注2)と説明している。. の閉塞感から解放できる。教師にとっては結果としての解釈で. つ一つの状況において、一つの意味は(それが複数の意味であ. この考え方に従えば、テクストの解釈は特定の状況下におい. - 65 -.
(3) はなく、「なぜそのように読み取ったのか」という根拠を問う. のもつ強力な陳述性について体験させることから始めた。. ずは生徒たちにとって馴染みのよい「顔文字」を用いて、記号. ①(. 問一 次の 「記号」 にはどのような気持ちが込められているか。 ) ②( T_T ) ③( ^^; ) ^o^. 指導へと転換されていく。 本稿は、フィッシュの理論を「授業」という場で実践し、ど のような現象が確認できるかを試すと同時に、稿者の主研究で あるイーザーの読書行為論の授業実践研究も兼ねている。そし. 生徒は普段使い慣れている顔文字ゆえに、記号に即した「う れしい」 、 「悲しい」、「困惑」のような心情を逸脱なく読み取っ. て第三時の授業ではイーザーの読書行為論の中で重要な概念で. ていた。また、生徒の感想文からは顔文字を用いた授業におも. ある「空白」に着目した。フィッシュの理論に基づいた指導を 受けてきた生徒たちが、その後の空白補填にどう挑んでいくの. 変え、同様に、気持ちを考えさせた。. しろさを感じていることがわかった。その後、学習材を単文に. かを作文によって分析する。. 二 読みの閉塞感からの解放. に、かつ確実に体験させるために、二つの段階を設けた。第一. 重要な基盤ともなっている。その現象を生徒たちに、より鮮烈. うという負の側面を持ちながらも、意志の疎通を成り立たせる. 私たちは暗黙的束縛とも言うべき慣習や文化的背景などから 理解・表現の制限を受けている。その制限は私たちの自由を奪. えさせ、顔文字のもつ強力な陳述性で文のもつ肯定的な意味合. 中から否定的・消極的な意味合いをもつものを問二の単文に添. 生徒の多くが慣習による暗黙的制限に従い、文のもつ肯定的 な印象を違和感を覚えずに受け入れていた。その後、顔文字の. ①満腹 ②テストで満点をとった ③恋人ができた. 問二 次の「文」にはどのような気持ちが込められているか。. の段階は記号、語句・単文を学習材とした授業、第二の段階は. いを大きく転換させた。例えば、 「恋人ができた( T_T )」のよ うにである。そしてその単文が意味を持つような文脈を考えさ. 「読むことの仕組みを知る」 これから提示する授業は単元名を とし、主教材に入るプレ学習として計画した。. 一つのセグメント(注4)を学習材とした授業である。. せた。このことにより、生徒は文の意味はそれのみで安定的で. 別の文脈を添えさえすれば、異なる意味合いへと多様に変化す. あるように見えるが、それは慣習に支えられた安定感であり、. 方略一 記号・単文がもつ陳述性 生徒は、私たち大人と共通の文化的制限を受けながら、同時 に、大人と違う独自の高校生文化を有している。第一時で、ま. - 66 -.
(4) ることを実感を通して知る。 方略二 テクストの不明確さの認識と制限添加による具体化 第一時で用いた記号や単文は「一つのもの」として、他の記 号や文と関係を持たない。また、それはテクストの、いわば明 示部であり、慣習による制限も直接的である。実際の読書行為 は、文が次々と立ち現れ、関係付いていく上に、いわゆる「行. 問一 「私は追いかけた」とあるが、 「私」は何を考えてそう したのか。 「私」の心中を推し量り、想定されるすべてを書き. なさい。なお、文末は理由を表す「~から。」にすること。. 問二 Aに「心の中で、『面倒くさい女だ』と思いながら」を 入れ、問一で考えた解答の妥当性を判断しなさい。. 授業では、まず本文とともに問一を提示した。本時で提示し た文章は、いくら文脈に注目しても問に明確に答えられないよ. 間の意味」のようなテクストの暗示部をも読み取らなければな らないために、複雑で、重層的である。そこで、第二時には前. うに作成してある。これは前時において、文の意味を定位する. 像をしていた。その後、問の答えを指名によって答えさせ、板. であるが、多くの生徒はそれに気がつかず、無邪気に様々な想. ためには文脈を読まなければならないということに反する現象. 時の発展として文章の解釈に取り組ませた。 ◎次の文章を読んで後の問いに答えなさい。. 自由な想像を体感させた後、問二を板書し、再度、全文を音読. 書によって全体の場で共有した。そのようにして読みにおける. した。生徒の多くがその意味の変化を実感し、音読の最中に、. れ全く違って見える。そして、その言葉がなかったら主人公. 好印象を与える言葉にするのとは、前の文も後の文もそれぞ. A. ら れ ず、 彼 女 は 涙 を 流 し て 走 り だ そ う と し た。 私 は. 「ひどい男だ」、 「全然違う」のような声を上げていた。生徒が. 下校中、突然、彼女は私に言いがかりをつけてきた。身に 覚えのない私はひたすらに誤解を解こうとしたが、聞き入れ 追いかけた。私は彼女に追いつき、手をつかみ、彼女を引き. 書いた授業の振り返り作文を次に示す。. 寄せ、こう言った。 「どこに行こうとしてるんだよ」 彼女はただ泣くだけだった。 彼女にだけ聞こえるようにそうつぶやいたとき、彼女は泣 きじゃくりながら、 (中略)そして、彼女は目に涙を残しな. 一つの言葉が入るだけで他の文脈にも大きな影響を与える ということを知った。 一つの言葉を否定的な言葉にするのと、. がら「ありがとう」と言った。友人たちは少し離れたところ. の心情がわからず、文脈が定まらないということを知った。. 「俺はどこにも行かないから」. で私たちを見ていたが、そんなことはどうでもよかった。. - 67 -.
(5) お詣りに行かなかったことに気が付き、文章全体に波及させる. 「お爺さん」が「神さま」に感謝しながらも、「用事にかまけて」. 人 ⒝ い い 人 ⒞ あ ま り よ く な い 人 ⒟ 悪 い 人 ⒠ わ か ら な い」から選ばせることにした。前時までの指導が生かされれば、. 際、自分自身の立場をより鮮明にさせるため、 「⒜とてもいい. な人だと思いますか? なぜそのように考えたのですか。 」と 問い、その時点における自分の読みを把握させた。なお、その. 爺さん」が答えるまでを提示した。生徒には「お爺さんはどん. 一つ目の文章は「A」とし、生徒には「ある夜のことであり ました」から、「私の分もよくお礼を申して来ておくれ」と「お. に提示した。. 川未明の『赤い蝋燭と人魚』の中から四カ所を取り上げ、生徒. 授業の第三時では、その現れを再度確認するとともに、空白 補填に取り組ませ、読みの想像力を育もうとした。学習材は小. 現化であり、受動的綜合(注5)の生成過程そのものである。. る。これはイーザーの読書行為論における主題・地平構造の具. 一文一文に警戒心をもって臨まねばならないという態度を強め. め、また、 一つの文が文章全体に大きな影響を与えるがゆえに、. 第二時までの学習を終えることで、生徒たちの多くが文章を 読む際には文脈全体から考えなければならないという意識を強. 三 読書行為論への展開(方略三として). かれている。そのため、お爺さんに対して否定的な印象を抱く. れとも思わなかった」のように、「お爺さん」の非情な姿が描. れ ま せ ん で し た。 」 、「夫婦はそれを見ても、いじらしいとも哀. てしまった年より夫婦」、 「何といっても娘の言うことを聞き入. 夫婦に言い寄り、老夫婦が売ってしまう場面がある。そこには. 三つ目は「C」とし、「お爺さん」の悪性を読み取れる部分 を提示した。作品の後半には香具師が人魚を売ってほしいと老. お爺さんに対して肯定的な印象を抱くのが正常な判断である。. 性を示す記述が多く、文章を表面的にのみ読み取っていけば、. のツヤツヤとした、おとなしい怜悧な子」となる部分までを提. とに決めた部分を経て、赤ん坊が「黒眼勝な美しい、頭髪の色. 二つ目は「B」とし、その後の文章である「お婆さんは、と ぼとぼと家を出かけました。 」から、人魚の赤ん坊を育てるこ. しか注目していなかったようである。. もいい人」、 「いい人」を選択した生徒は「お爺さん」の良い面. に 善 悪 の 両 面 が あ る た め に 判 断 が つ か な か っ た ら し く、 「とて. 実施) 。なお、「わからない」を選択した生徒は、「お爺さん」. 等学校、二学年、文系クラス二十七名、二〇一三年六月十二日. が「⒠わからない」、三・一%(一名)が「⒜とてもいい人」 、. を選び、十五・六%(五名)が「⒟悪い人」、九・三%(三名). ことで「お爺さん」を否定的に捉えることになる。実際、一つ. のが正常な判断である。. 「つい金に心を奪われて」や「もはや、鬼のような心持になっ. 示し、同様の質問をした。なお、この部分は「お爺さん」の善. 十二・五%(四名)が「⒝いい人」を選択した(北海道根室高. のクラスでは五十九・四%(十九名) が 「⒞あまりよくない人」. - 68 -.
(6) に補えているかを見ようとした。その生徒の反応は四・三に示. 爺さん」の善良な面と善と悪の側面をバランスよく捉え、空白. 何をしていたか。 」と生徒に問うた。この発問では生徒が「お. 宮参りをしている部分に注目させ、 「この間、お爺さんは家で. ことを把握している。その上で、 「お婆さん」が家を離れてお. めに、生徒たちは「お爺さん」には善と悪の二つの側面がある. 強調し、Cにおいて「お爺さん」の非情な面を強調しているた. 四つ目は「D」とし、AとBを結合させたものを再読させる ことにした。ここまで、Bにおいて「お爺さん」の善良な面を. 楽しかったです。 ※一部抜粋. オリジナルの物を見つけ出した時は、良い気分になれて結構. いましたし、何百何千と限りなくある文脈を考えて、自分の. は文脈によって、文の意味が変化していくことを面白いと思. この二つが相互作用にあり、 ②個という文と環境という文脈、 文の意味は文脈によって変化してくことがわかりました。私. ともあるということがわかった。 ※一部抜粋・傍線稿者. 文脈などの流れによっては意味がまったく変化してしまうこ. ①今回の授業で、文などには「それなりの意味」というもの があるけれど、文だけでその意味を確定させるのではなく、. えて、自身の体験として自分の言葉で説明している例や、③の. に分かりやすかったようで、②のように、学習したことを踏ま. に慣れていたせいか、記号、語句・単文を用いての指導は生徒. 達成されたと言える。特に、普段、教科書の作品を使った授業. 徒が左に示す①のような感想文を書いたため、授業のねらいは. 自由な発想の時に言えたことが言えなくなりました」は、イー. みて、想像を楽しんでいる。④の「明らかに視野が狭くなり、. い表している。そして、③は様々な言葉を実際に自分で入れて. 全体の世界観」という言葉が方略二で期待した現象を見事に言. 方略二では、一文の持つ影響力の強さを体験的に学習させよ うとした。次頁に示す①はその効果を表している。②は「文章. 四・二 方略二における生徒作文とその考察. 思う。 ※一部抜粋・傍線稿者. など、もっと簡単に自分の状況を解釈できるのではないかと. がこの構成を当てはまるのであれば、対人関係や日頃の悩み. ③すべての物事はそれのみではなく、置かれた状況によって 意味が大きく変化するということがわかった。すべての物事. す。. 四 考 察 四・一 方略一における生徒作文とその考察 「文」の意味は固定的なものではなく、文脈に 方略一では、 応じて、様々に変化することを学ばせ、広い視野でテクスト全. ようにテクストの解釈に止まらず、日常生活全般の解釈にまで. 体を見渡し、解釈に臨む態度を生徒に育もうとした。多くの生. 派生して考えている例もあった。. ザーの読書行為論におけるテクスト作用に触れるものであり、. - 69 -.
(7) 学びの発展とみることができる。 ①Aの部分に入った言葉で、彼と彼女の性格、関係がまるで 変 わ っ た。 文 の 一 つ 一 つ は 大 き な 意 味 を 成 し て い る の だ と. 本稿では、その改善のために二つの方略を用意し、文にも、文. 脈にも注意深い読み手に生徒を育てようとした。そして、その. 成果の検証の場に空白を選んだ。. ②文章中に「面倒くさい女だと思いながら」のように、様々. べき状態で、在る。ゆえに、空白を補填させることで生徒がそ. ものと、そこで想起されたものとが、いわば主客混在ともいう. 注目しない。しかし、空白には、読み手がそれまで読み取った. 空白はテクスト構成上の必要素としてありながら、通例、読 み手の関心は主題化される明示部にあり、多くの読者は空白に. 言葉を入れることによって、文章全体の世界観が変化して、. れまで何を読み取ったのかを把握することができる。その作文. 思った。. いろいろな発想が出てくるので、それはとてもおもしろいと. ④Aに「面倒くさい女だ」と入れたときに束縛され、自由な. りで、悪い部分がある。ここでしていることは、「用事にか. と頼んだ。だからお爺さんは、基本いい人だが、面倒くさが. 婆さんに「ついでに私の分もよくお礼を申してきておくれ」. は思っているだけで行動に移さない節がある。そしてまたお. ①お詣りに行く場面で、お爺さんが「本当にお前の言うとお りだ。私も毎日・・・」という場面があるが、このお爺さん. を次に示す。. 思いました。※傍線稿者 ③文は文脈によって変化するのと同様に、文脈も文によって 変化する。例えば、「傷だらけになりながら」を入れるのと、 「とりあえず」を入れるのでは、その文脈は大きく異なる。 だから文を読むためには文脈を読む必要があるのと同様に、. 発想の時よりも明らかに視野が狭くなり、自由な発想の時に. 文脈を読むためには文を読むことも大事になる。. 言えたことが言えなくなりました。 僕はこれらのことを学び、. まけて」という記述があるので、たぶん、仕事の蝋燭作りを. 思う。自分的には後者だと思う。. しているか、町にでも出かけて遊んでいるかのどちらかだと. 文脈や文の変化が大きく話に影響することを理解しました。 ※傍線稿者. 多少、眠りながらも、蝋燭が売れるように祈りながら、蝋燭. ②お爺さんはお婆さんが山を降りて帰ってくることを祈りな がら、 蝋燭を売るために準備をしていた。休憩を間に挟んで、. かつて『赤い蝋燭と人魚』を学習材に読書行為論における転 移について考察した際、生徒がテクスト中の伏線をまるで無視. を作っている。気づくと、ぐっすり寝てしまい、お婆さんが. 四・三 空白補填による読みの具体化. するかのように読み進めていることが明らかになった (注1) 。. - 70 -.
(8) 帰ってきた。 ③お婆さんにお詣りを自分の分までするように言ったが、そ れだけではいけないと思い、 お婆さんの帰りを待つとともに、. 「いいところに気がつきなされた」 と言ったにもかかわらず、. 自分は言い訳をし、行かないし、いい人なら、夜に一人でお. たから、お婆さんが無事にお山のお詣りから帰ってくるのを. ⑤お爺さんは神様をありがたいと思っていて、こうやって暮 らしていけるのも、神様のおかげだと思うくらい良い人だっ. 詣りをさせないと思う。. きて、眠りそうになるが、 強く自分に言い聞かせる。しかし、. 神様に対し、祈りを捧げる。しかし、だんだんうとうとして またうとうとして、少し眠ってしまう。目を覚まして、眠っ. 待っていた。次のお詣りには自分も行こうと考えていた。. 五 まとめ. てしまったことに罪悪感を感じ、眠らないよう、蝋燭を作る 作業に変え、寝ないようにするも、睡魔には勝てず、あかり. でもない。今回の空白補填の目的は一つ一つの文の効力を解釈. 蝋燭と人魚」での「お爺さん」は、生粋の善人でもなく、悪人. しか捉えておらず、⑤は正の側面を強調しすぎている。 「赤い. 常に興味深い。なお、以下に示す④は「お爺さん」の負の側面. し、物語の空白を物語によって埋めているという点において非. 特に、②、③は、①が説明的に「お爺さん」を考えているの対. これら①、②、③は「お爺さん」の人柄の良さを感じ取りな がら、「お爺さん」のいかがわしさにも触れている好例である。. 与えているにすぎないと見ることもできる。ましてや、方略三. よって読みの姿勢を方向付けているために、単に新たな束縛を. 閉塞感から解放するといいながら、結果として、二つの方略に. フィッシュの考えに従えば、あらゆる解釈は「特定の読みが 力を持つ所において」(注3)成立する。方略一、二も読みの. ばせようとした。. 得力を持つためには文、文脈の相互関係が必要であることを学. 必要であることを生徒に学ばせようとした。そして、解釈が説. そこにテクストを機能付ける読み手の意志なり社会通念なりが. を消して、一人で寝てしまう。. に反映させることにあったため、④、⑤のような作文を書いた. 本実践では、フィッシュの『このクラスにテクストはありま すか』を理論的背景に、まず、解釈が理解を生じさせるのは、. 生徒たちには、①、②、③の作文を範例として示し、読みの態. に示す空白の補填ともなれば、それは明らかに一つの解釈戦略. なお、学校教育ではここに述べてきた方略が好ましい。. シュの理論によってたやすく無効化される。しかし、それでも. を発動させていることになる。 それらの企ては、皮肉にもフィッ. 度をより慎重にさせた。 ④お婆さんがお詣りに行っている間、お爺さんはのんびり怠 けていたと思う。なぜならお婆さんに「お前の言うとおり」. - 71 -.
(9) 教室内には、国語の授業のマンネリ化に失望している生徒も いれば、華やかな活動主義に浸りきり、忍耐強くテクストに向 き合えない生徒もいる。個人の価値観が多様化し、かつて「素 晴らしい作品」と呼ばれてきたものが、必ずしも生徒の心に響. 中であり、本稿もその一つとしてある。. 『このクラスにテクストはありますか』 、 Stanley Fish 小林昌夫訳、みすず書房、一九九二年十月、四十五頁. 注 2 . 方法の一つとなる。それためにテクスト作用を発動させる論理. させるためには、テクストとの相互依存関係を生み出すことが. のようにして読む気になった読み手をさらに自主的に読み続け. 読むことの原動力は基本的には読み手自身の志向性にあり、 さらには他者によって誘引される興味関心によって生じる。そ. 必要である。. い。 」 (二三六頁)この受動的綜合は、「テクストの記号の. れた対象の意味と異なるなにかを生み出す。それは感覚的. ジである。(中略)イメージは、経験的対象とも、表現さ. るわけである。(中略)受動的綜合の中核となるのはイメー. に、読書の間は自分の意志と関係なくこの行為を続けてい. 「受動的綜合は前述語的であり、識閾下で遂行されるため. ニュースのように、独立した話題のことをいう。注5 受 動的綜合については、『行為としての読書』(W.イーザー、. 注3 前掲書四十頁 注 4 セ グ メ ン ト は、 報 道 番 組 な ど で 紹 介 さ れ る 一 つ 一 つ の. 的思考力が必要となる。. 結合を同定し、記号間の等価性を再現するような綜合体」. かないことを、 現場に立つ教師ならば実感していることだろう。. 本実践では段階的指導によって直観的読書を疑似体験させ た。授業を通して、読書の際、違和感のある単語・文・部分に. (二三五頁)である「相関体」とは区別される。. そうした時流の中だからこそ、自律的な読み手に育てることが. 注意を向け、それを解きほぐすように思考するという読書態度. 経験を超えてはいるが、述語的に概念化されたものではな. 轡田収訳、岩波書店、 一九九八年五月)に次のようにある。. については、概ね指導できたと考えている。. 注 注1 かつて、想定される読書過程について考察した際、 「次 の展開を期待する」という内的行為において、生徒たちの 反応に滞りが見られた。その現象の解明と改善のために、 期待を現象させるための諸要素を「転移」 、「地平」 、「想起」 などに分解し、授業実践を通して再度検討し直している最. - 72 -.
(10)
関連したドキュメント
1.基本理念
また、注意事項は誤った取り扱いをすると生じると想定される内容を「 警告」「 注意」の 2
状態を指しているが、本来の意味を知り、それを重ね合わせる事に依って痛さの質が具体的に実感として理解できるのである。また、他動詞との使い方の区別を一応明確にした上で、その意味「悪事や欠点などを
状態を指しているが、本来の意味を知り、それを重ね合わせる事に依って痛さの質が具体的に実感として理解できるのである。また、他動詞との使い方の区別を一応明確にした上で、その意味「悪事や欠点などを
「総合健康相談」 対象者の心身の健康に関する一般的事項について、総合的な指導・助言を行うことを主たる目的 とする相談をいう。
られてきている力:,その距離としての性質につ
これらの先行研究はアイデアスケッチを実施 する際の思考について着目しており,アイデア
私たちの行動には 5W1H