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スピンの流れを制御する:スピントロニクスの挑戦

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Academic year: 2021

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スピンの流れを制御する:スピントロニクスの挑戦

従来の半導体エレクトロニクスをこえて,「スピントロ ニクス」とよばれる,電子のスピンの自由度を積極的に利 用したエレクトロニクスがホットな研究対象となっている. この分野でいま,注目を集めている現象が「スピン流」で ある.通常の「電流」は電荷の流れであり,ほぼ同数ずつ 存在する上向きスピンと下向きスピンは互いに打ち消し 合っている.それに対し,その数的なバランスが崩れると, スピンがつくり出す磁気の流れ,「スピン流」が生じる. 通常,物質中のスピン流は非常に短い距離で減衰してし まうため,最近までスピン流に由来する物理現象は知られ ていなかった.しかし,ナノテクノロジーの発展により, スピンが減衰する距離よりも短いスケールの素子の作製や 現象の観測が可能となり,スピン流がもたらす現象が相次 いで発見されるようになった.スピン流は,電流といっ しょに流れる場合と,電流をともなわずにスピン流だけで 流れる場合がある.後者を「純粋スピン流」とよぶが,こ れを効率的につくり出す研究が精力的に進められている. その研究は,スピン流の測定原理となる「逆スピンホー ル効果」の発見により急速に進展した.これは,スピン・ 軌道相互作用の強い非磁性の金属や半導体の試料にスピン 流が流れると,それに直交する方向に電場が生じる現象で ある.この電場により生じる電圧を測ることで,スピン流 の定量的な測定が可能となった. 最近の研究により,強磁性体と金属を貼り合わせた接合 系において,強磁性体スピンの集団運動(スピン波)をマ イクロ波で励起すると(スピンポンピング),金属中にス ピン流が注入できることが発見された.また,光や熱,超 音波などの刺激により,スピン流がつくられる現象も続々 と発見されている.とくに,磁性体と金属の界面に温度勾 配を導入したときに,金属にスピン流が注入される現象は 「スピンゼーベック効果」とよばれ,注目を集めている. さらに,トポロジカル絶縁体に電場をかけることで,スピ ン流を取り出せることも実験で実証された. 電荷の流れをともなわないスピン流は,ジュール発熱が 抑えられるため,それによる磁壁や磁気渦の駆動,磁化反 転といった現象を利用してデバイスをつくることで,圧倒 的な省電力化が期待できる.また,スピン流の概念を足掛 かりにして,スピントロニクスにおける新しい現象の発見 や既知の現象の新しい理解が進むことが期待されている. 会誌編集委員会 ©2016  日本物理学会

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