横浜在留華僑の特質に関する若干の考察(その2) : 世帯の諸類型とその分析
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(2) 山室周平・河村十寸穂 Ⅲ・三世代世帯. を欠く世帯. 1・第一世代の配偶者の一方を欠く世帯. 4・第一潜よび第二世代の配偶者のある. 2・第二世代の配偶者の一方,またほ双. 世帯. 方を欠く世帯. Ⅳ・四世代世帯. 3・第一世代の配偶者の一方,および算. じ. は. め. 括. Ⅴ.総. 二世帯の配偶者の一方,または双方. お. わ. り に. に. 前回においては外国人登録法にもとづき華僑の一人一人を単位として作製された登録カ ードを単純集計した結果について報告したが,ひきつづき今回ほ,それらのカードに記載 された続柄関係,住所などを手掛りとし,世帯単位に組合せた結果にもとづき世帯構成の 特質についての考察を試みた。 元来,世帯構成は,民族,地域,階層,あるいは時期などによる差同を共通の基準によ って対比することが比較的容易であるという利点があるため,家族研究の諸領域のなかで も従来とくに推進されてきた領域である。 日本については大正9年度に実施された第1周国勢調査の1%抽出にもとづく戸田貞三 「家族構成」 (昭和12年)辛,最近においてほ昭和35年度厚生行政基礎調査の1%抽 出にもとづく小山隆「世帯の分析一昭和35年における世帯構造-」. (昭和38年)のピと き成果があるので,比較研究のための主体的条件はほぼ整備されているということができ. るであろう。. これにたいして,中国本土に関する,これらと対比しうるごとき世帯の全国的調査は存 在しないが,李景漠「定県,社会概況調査」 (1933年)辛, Buck, J.L., Land Utilization in China,. 1937のごとき地域調査や,若干の都市に関する調査資料もないでほなかった. ので・牧野巽「統計的に見た日支家族構成の比較」 れている)のごとき比較研究の成果も現われている。. (「支部家族研究」昭和19年に集藤さ. しかるに,華僑に関しては,多数の研究者が,ほとんど除外なく婿姻や家族を論じてい るにかかわらず世帯構成に関する実証的質料を提示しているものほない。しかも,この点 ほ戦後各国における華僑研究の晴溌化にもかかわらずなお依然たるものがあり, Leeや Kungのもののごとき在来華僑に関する浩廟な論策においてすら,世帯構成に関する資料 は提示されておらず,ただKaye, cal. Survey. of Chinese. Households. B・, Upper Living. Nankin in. a. Street. Densely. Singapore. Populated. A Area.. Socialogi1960が. ほとんど唯一の例外といってよいであろう。その意味では,わが国の華僑に関する世帯構 成の実証的な研究が,戦前・戦後を通じて皆無であったのも当然といえないでほないが, 本報告はそのような空自を充すことによって,華僑の家族研究のための基礎資料の整備を 意図したものであるo. さて・本題に入るにさきだち二,三予めお断りしておかねばならない点がある。そのは・冒頭にのべておいたごとく,本報告は華僑一人一人を単位として作製された登轟カー.
(3) 55. 横浜在留華僑の特質に関する若干の考察. ドを,世帯主の姓名,綻駄本韓の住所,現住所などを手掛り′とすることによって同一の 環住所に住み,同一の世帯主のもとにある世帯員を僅帯単位に組合わせたものを資料とし たo鼠合せの作業は横浜国立大学の社会学専攻学生諸君の協力をえで際塞に進められた が,予想外の労苦をともなうと同時に,多くの時日を要したが,世帯員によって世帯主と して登録されているにかかわらず該当者が見出されないケースが少くなかったこと(それ らは世帯主不在あるいぼ不明と明記し,区別しておいた),そのこは世帯員の申告が相互に 噴い適う若干のケ-スが存在したこと,すなわち,例えば,三世代世帯において祖父が世 帯主となっているが,長男の妻およびその手ほ長男を世帯主とし・長男白身は世帯主の長 男として登録しているというごときケースであるが,このような場合ほ,当事者白身の申 告を重視する建前をとることとし,長男妻や孫の申告にもかかわらず,長男白身の申告に したがい三世代世帯とした。したがって前回の報告と世帯主数などの点で喚いちがいを生 じたことoそ・の三は組合せの作業が意外に難航したた軌今回の報告においてほ取敢えず 山下町在留の華僑のみについての報告に留軌山下町以外の中区在留者については他日を 期することにした点について予め諒承をお願いしたいo なおまた,本報告において乳性帯の分析にあたって新しい奇襲方法をとることにした。 このような分襲方法を採用する理由や,意義については,朗稿(山室周平「核家族論批判 No1 57,昭和39年8月。 の立場一現代家族社会学の前進のために-」社会学評論・ 参照)においてのべておいたので,ここで繰返えすつもりはないが,核家族論にみるごと family)と,その複合体とし き最末端の単位としての夫婦と子からなる核家族(nuclear ての複婿家族(polygamous. family)および拡大家族(extended. family)というごとき分. 輝方法によっては,事実上,単独,未熟父子・母子などの世帯が多数に存在すること・. ぉよび複合家族が必ずしも核家族の複合体ではないことを説犯し難いのみならず,とくに 現代社会における家族の問題状況を適確にとちえ繋いと考えたからである。したがって, 本報告においては,従来余り行われていなかった単独・夫婦,父子,母子,兄弟姉妹(同 胞)世帯のごとき諸形態や,夜食世帯の内容分析な重視することにしたので,この点も併 せて予めお断りしておく。 I.一世代世帯. 一世代世帯としては,単独,夫軌父子,母子,および同胞の諸形態が存在するが,そ れらのうち,まず単独世帯から順次にとりあげることにするo 1.単. 独. 世. 帯. 戸田貞三ほ「家族的生酒者と罪家族的生活者」. (社会政策時報・. No・. 62・大正14年11. 月.後に「家族の研究」大正15年に収録)において「わが国民柱,家族生酒に非常な執 着心を持っているのであるが,併しわが国民が果して全部この家族的生酒を営んでいるや 否やは疑問である。、この疑問は未だ誰も問題とした者もなく,また解答したものもないよ ぅである。」 (「家族の研究」 282-3頁)しかしながら「国民に何喪家族生晴の要求が強い としても,現実にこのような人が存在するのを香定すること経できぬo国民が一般に家族.
(4) 56. 山室周平・河村十寸穂. 的生活に非常な興味を持っているのに,国民中何程かの人々がこの家族的集団をなしてお らぬといふことは,青々にとっては頗る注意に価することであろう。」. (同上284頁)との べ,大正9年の国勢調査の1%抽出による資料から一位帯ごとに同宿人,一時的宿泊人, 来客,同居人,下宿人,使用人,その他親族関係のないものを抜き出し,それらについて 分析を加えられた結果についてつぎのような点を指摘されている.. 1)国民の約11%が 2)それらのものは全体として女子より男子に多い. 3)とく に15-24才の男子が男子の同年奇人口中33-36%を占め,もつとも多い。 4)女子にお. 家族的生酒をしていないo. いては15∼19才がもつとも多く同年令の女子人口中約30%を占めている。. 5)高年令層. においては男子よりも女子の方が多い。. のみならず戸田は,同じ資料のなかから,とくに東京市の部分のみを採りあげ,同様の 分析を試み, 「非家族的生活者」が全市民の27%にたつしていること,とくに男子のみに ついていえば約36%であり,就中15-19才においては実に72%が,そのようなもの によって占められていること,また女子の同じ年令層においても53%にたつしているこ となどを確認されたのであった(同前, 286-328頁)0 戸田は,この論文を結ぶにあたって,「将来においては,事実上自己の家族集団の内に生 活しないものが,相当多くできるのではなかろうか。またあるいは全く自己の家族団体な るものを持たないものが,比較的多くできるのではなかろうか。」掴前,. 330頁)とのべ ているが,その後,「非家族的生活者」が果して増加したかどうかについては,戸田以後同 様の手続きによる研究を行うものがなかったので比較が困難であるが,戸田の「単独世帯」 (ただしこの場合は,世帯主のみの狭義の単独世帯の他に使用人や,傍系親を含む世帯を も含めたAの類塾である。戸田「家族構成」 抽出によれば, 6・45%. 473頁参照)が大正9年の国勢調査の1%. (東北6県は2・5%,. 6大都市においては8.8%)であったのにた いし,昭和35年度における厚生行政基礎調査にもとづく小山隆の「単独世帯」(この場合 ほ他の成員を含まない一人世帯である。小山「世帯の分析」修正版第8表参照)は7.8%. であり,概念が狭められているにもかかわらず,その間に少なくとも1%以上の増加のあ ったことが確められる.因みにGlick,. P・C・,. American. Families.. 1957.によれば,ア. メリカ合衆国全国における一人世帯(1 person household)の全世帯数のなかで占める割 合は,衰ト1のごとくに増大する傾向を辿っているということである(p. 22)0 これにたいして,中国本土において,単独世帯がどのよ うな割合を占めていたか,また占めているかを知るべき賃 料は求め難いが,牧野巽のあげている1930年代の-資料 によれば,. =. 「非家族」の全戸数にたいする割合ほ農村(北京,. 上海,漠口,広東の周辺2,422戸,および都市(南京の 2・027戸)において夫夫3・8%および7.4%であった(敬 野「支那家族研究」628頁参照)ということであり, の7省16地方2,640農家(1921-25年度)にたいする 調査結果によれば一人のみのものの計が57すなわち2.2. 表I-1空望v;-雪空空二仝 世帯の割合の変遷. Buck. 1790年. 3.7. 1890. *. 3.6. %o. 1900. *. 5.1. A. 1940. *. 7.7. A. 1950年. 9.3. 5ro. (Glick,. P. C.,. Families.. p.. 7o. American. 22).
(5) 57. 横浜在留華僑の特質に関する若干の考察. %程度に留っている(Buck,. Chinese. Farm. Economy,. 表Ⅰ-2. 1930,東亜経済調査局訳「支那農家経済研究」下巻468-9 頁参照)。その他開港都市などにおいてはいわゆる「苦カ」 のうち単独世帯が相当多かったであろうことが推測される が,その点を確認すべき資料が手元にないためここにはあ. シンガポール華僑 街における世帯の構 成員数別比校. 1 person. 39. 7o. 2 persons. ll. 7o. 3 persons. 10. 7o. げえなかった.. 4. さて,華僑の世帯構成,とくに単独世帯に関する資料は Singapore市の ほとんど皆無に近い状態にあるが,ただ,. 5 persons. 8 7o. 6 persons. 6. 7o. 7. 5. 9ら. 8 persdns. 2. 7o. 9 persons. 1 7o. Upper. Nankin. B・. Street在留の華僑を調査したKaye,. のもののみが比放しうるほとんど唯一の資料を撞供してい る。. persons. persons. 39%に. 12. persons. 13. persoIIS. 14. persons. 15. persons. 11%,女性ほ28% これらの一人世帯のうち,男性は, を占めており(p. 34のTable9より算出),また,それ 34),全体として らの年令構成は蓑 ト3のごとくで(p.. 40才以上の年令層への偏りがみられるが,とくにこの点 は女性において著しく,男性においては20-39才が36 %であるのにたいして女性ほ僅かに6%を数えるにすぎな い。. これにたいして,横浜市中区山下町在留の単独世帯であ. lH‖‖=‖‖. persons. ll. 達し,また,もつとも頻度の多い形態である。. =. = u. Total. (Kaye,. p.. 7 7o 100. B., Upper. Street,. 表Ⅰ-3. r: %.. ■. households. Absentee. %. lヲら. 10 person. Kayeによれば,総数632世帯中一人世帯(1 household)の占める割合は表Ⅰ-2にみるごとく. 9. persons. 7o. Nankin. 31). シンガポール華僑 衝における一人世帯 構成者の年令. るが,われわれの場合の「単独世帯」の概念をまずもって 明確にしておく必要があるであろう. われわれの場合の単独世帯にはつぎの三種類のものが含 まれているo. 1)本人が世帯主であって,彼(彼女)を世帯主とする 他の直系,傍系の親族である世帯員を欠くもの 2)他に世帯主があると記載しているが,該当者が不明 であり,また同一人を世帯主とする他の直系,傍系の親族 甲世帯員を欠くもの 3) 1)あるいは2)であって,同時に同居人を含むもの したがって,同居人を含む世帯を加えている点において, 戸田の非家族的生活者や,その他の人々の単独世帯,一人. (Kaye,. Upper. Street,. p.. Nankin. 34). 世帯より広義であるが,後に記すごとく,この3)の部分はごく少数である。 (男113,女41), 2).の合計は62 まず1)についていえば,その合計は154 女28)であり,世帯主にたいする続柄関係として記載された内訳は男(兄2,義轟l,長. (男34,.
(6) 58. 山室周平・河村十寸穂. 男1も. 二男5,三男2,六男1,孫2,同居人7),女(母1,嚢7,長女9,ニ女3, 囲女l,五女1,姪1,同居人2)であった。 また3)の合計は8であるが,そのうち,イ.本人が世帯主であって同居人を含むもの は,男世帯主5,女世帯主1であり,. p.世帯主が不明の単独世帯であって同居人を含む 同居人は各世帯とも各1名であり,イ.の男て5に. ものは,男なし,女2であった.なあ. たいする同居人は全て男,また女1にたいする同居人1は女であった.また. ロ.の女2に. たいする同居人2も同様女であるo したがって,. 表Ⅰ-4. 1), 2)および3)の合計は. 男単独世帯. 152. 女単独世帯. 72. 計. 生. 年. 1900年以前. 2?4. であり,全世帯数にたv、する割合は, わち3分の1に近い割合を占めている。. 単独世帯帝成者の年令. 1901-1910年. 32.1%すな. したがって,そのような割合を占める単独世帯 が,どのような性によってなりたっているかとい. 1911-1920年 1921-1930年 1931-1940年 1941-1950年 1951-1960年. う点のみならず,さらにどのような年令層の,ど. 1961年以降. のような職業,在留資格をもつものによって占め. 不. 明. られているかを検討しておく必要がある。. まず,年令の点については,表Ⅰ-4にみるご とく, 1910年以前出生の老年層の男が31%弱であるのにたいして,女は32%弱であり,. 1911-40年の中壮年層の男は54%であるのにたいし,女は47%でやや下廻り,それ以 下の年令層は男約15%,女が約18%でやや上廻っている.この点はSingaporeの華僑 において,. 50才以上の男が37%にたいして女が61%であったのにたいし,山下町の場. 合は比較的バランスがとれており,またSingaporeの20才から49才の男が62%,女37 %にたいしても,横浜の中壮年層は54%と47%でその開きが前者ほど激しくない。この ことはSingaporeの19才以下が男,女を通じて僅かに1%であるのにたいして横浜の 側の1951年以後の出生にかぎるとしても5%弱あることにも関係があると考えられるが, それらの大多数は第2碇の世帯主不明の単独世帯である。それにしてもこのような年令層 が,単独世帯として存在することには意外の感があるが,戸田虜三は0-4才の幼児の「非 家族的生清音」が大正9年度国勢調査の結果によると男女合計約18万人を数えたことに 関連して,彼らを「両親があっても何等かの事情の為里子に出されている老,または両親 がない為他人に養はれている老,または親が他家-雇われている為,親に附いて他家に寄. 食している者,あるいぼまた母と共に工場の寄膚舎,または他人の家に同居している者, および同じような運命の子供と共に,他人の保護によって生長しつつあるものの集計であ る(「家族の研究」 309貫)とのべているが,山下町の場合それらのいずれかであるかどう かについて陀登録カ-ドのみによって判断することほ困煮であるo. つぎに彼らの職業の点であ・るが単独僚帯全体をこついてみれば表Ⅰ-5のごとく無職(記.
(7) 59. 横浜在留華僑の特質に関する若干の考察 表I-5. 1. ー. 員. 員 1. の. 教. 師. 学. 生. 家. 政. 婦. そ. の. 他. 無. 髪. 理. 料理・飲食店(経営泣に従事者) 会ノ 社 員 店 員. 4. 43448. 1. 師(宣教師を含む) 生. 学. そ 無. ). 1. 522. 社. 単独世帯構成者(女のみ) の職業. 5. ) ). o539142、5317糾. 料理・飲食店(経営泣に従事者) 〝 洋服製造・販売( 〝 商 業( u とくに貿易業とあるもの( 会 店 教. 表I-6. 単独世帯構成者の職業. 職(記入なしを含む). 他. 職(記入なしを含む) 計. 224. 入なしを含む)が多いことが注目されるが,後述するごとくその過半数が女性によって占 められていること,および中高年令者に多いことを考慮に入れるべきであろう.なお女性 のみに限った場合の職業は表. ト6のごとくである.. いずれにもせよ,山下町の単独世帯は,前回の報告においてのべたごとき全体としての 山IF町在留華僑と比放した場合,飲食物サーヴィス業関係が約44%であったのにたいしノ て単独世帯においては, 38.5%,ホワイト・カラー的被傭者の約19%にたいして,この 場合も約19%であり,ブルー・カラ-に相当すると考えられるものが共通して少ない点 から,とくに単独世帯に特有な職業のありかたほ霞め難い.この点は戯前の本土における, とくに開港都市の-いわゆる「苦力」のごとき階層に多かったであろう単独世帯と著し く異ったものであるといえるであろうが,この点を確認すべき比較のための賃料を欠いて いるのみならず,職業の点についてほ,戸田やKayeもふれていないので,それらと比較 することもできない。. 表ト7. 単独世帯構成者の 在留資格. 永. 住. さらに,山下町の単独世帯についてとくに留意すべき点 の一つとして在留資格の問題があるo彼らがどのような資 格で在留しているかを表 ト7に示しておいた。 この表にみるごとく,永住の資格をもつものが47%強. 4-1-16-3. 4-1-5. ると80%強となり,貿易に従事するもの(4-1-5)の3 年間,研究,教育に従事するもの(4-1-6)の1年間,. 4-1116-2. 留者が少ないことば,定職をもつ比校的中老年令層の多い ことと併せて,単独世帯が必ずしも一時的な形態でないこ とを示しているごとくであるが,彼らの生酒が現実にどの. ようなものであるかについては,さらに直接的な調査に供. 73. 4-1-4. を占め,さらに若干不確定な点があるとしても在留期間の 長期にわたる可能性の多いとみられる4-1-16-3を加え. および観光客(4-1-4)の60日のごとき比校的短期の在. 10 6. 4-1-6. 不明および記入なし 計. 2 29 224. (注)在留資格に関する詳し い解説は煩墳になるので省 略するが,前回の報告p・25 を参照王統いたい..
(8) 60. 山室周平・河村十寸穂. つべきであろう。 2.夫. 婦. 世. 帯. 夫婦世帯,すなわち夫婦のみによって構成された世帯,および,. 夫婦以外に親族を欠く. が,同居人を含む世帯を加えた形態をつぎにとりあげる。ただし,. 上記のうち,山下町の. 華僑の場合,後者は1例あるのみであり,他はすべて夫婦の 表Ⅰ-8. みからなる世帯である。. 大正9年度国勢調査にもとずく戸田の,この種の形態(但 し,この場合は夫婦の他に直系親を欠くものであり,傍系親 のあるものが含まれている)は11.45% (戸田「家族構成」 473頁のBから算出)であり,昭和35年度厚生行政基礎調 査にもとずく小山によれば7.5%. 夫婦世帯の割合 の国際比較. 国 日本全 u 東北5県. 11.27o. 6大都市 村. 15.6%o. u. 5.07o. 中国農. (この場合は夫婦のみによ. 都. u. って構成された世帯のみ,小山「世帯の分析」鯵正版第8表 より算出)であるが,牧野巽の掲げている比較資料によると. 米. 衰. p.. 3.6%o 9.57o. 会 国. 15.27o. (牧野巽,「支那家族究究」. ト8の通りであったということである(牧野「支部家族. 628). 研究」 628頁参照.なお原資料は戸田およびSmythe).またKayeのSingaporeにおけ. る華僑の調査結果によれば8%である(Kaye,前掲書, これにたいして横浜の場合ほ級数31. 25)o (うち同居人を含むもの1)で全世帯数にたいする p.. 割合は4.5%であるo. それらのうち・夫を世帯主とするもの30,妻を世帯主とするもの早ま1(夫は船員,妻無 職)であった。 表ト9. 世帯主の職業ほ料理,飲食店(経営 滋に従事者) 12,洋服製革,販売(同 節)4,会社員,事務員5,医師,敬 師2,その他4,無職4,計31であ る.. また在留資格の点では表Ⅰ-9のご とくであり,また世帯主の年令の点で. 永. 夫婦世帯における世帯主甲在留資格. (雪上嘗警票詣晶菅笠蒜). 住20. 4-1-16-3. 5. 4-1-4. 1 1. 4-I-7. 無. 記. 入. 4. (但し妻は永住, 1を含む). 31. 計. は表Ⅰ-10の通りであるが,昭和35. 年度の厚生行政基礎調査にもとずく小山の分析によれば20. 表ト10. 夫婦世帯におけ る世帯主の年令. -39才の年令層が47%にのぼっている(小山「世帯の分析」 修正版第8表より算出)のにたいし,山下町の場合は1930 年生れまでを含めても32%程度でfamily cycleの開始期. 1900年以前生れ. 8. 1901. 1blO年生れ. 9. にあると考えられるものが後者の側においてより少ないごと. 1911. 1920年生れ. 4. 1930年生れ 1940年生れ. 5. くであるoただし,山下町の場合たっい.Tは世帯主のみの年 令であるので夫婦の年令が,世帯主の側において高く,〉妻と. の年令差が15年-最高24申こ及ぶもののあることを含み. -. -. 1921. -. 1931. -. 5.
(9) 61. 横浜在留華僑の特質に関する若干の考察 におく必要がある。. 3.兄弟姉妹(同胞)世帯 兄弟姉妹のみによって構成された世帯であるが,この場合もその他に同居人を含むもの (山下町の場合は除数18例中1例,ただし同居人ほ3名)および兄弟姉妹の寵偶老を含 むもの(山下町の場合は長男の妻を含む1例のみ)をも含めている○ Kayeのいずれもが関説していないので他と この輝塾の世帯については,戸eg,小山, の比掛ま困難であるが,山下町の華僑においては18世帯の全世帯にたいする割合ほ2・7 %である。. 18世帯中兄弟姉妹のいずれか1人が世帯主である同胞世帯は僅かに1例のみで・他は いずれも他に世帯主ありとしているが諺当者のカードを見出し得なかったものである。し たがって,これらの世帯の最年長者が,それらの世帯主にたいしてどのような続柄関係を もつものであるかをみると,衰卜11のごとく長男や長女が多いが,ただし・最年長者の みの年令をみると,表Ⅰ-12のごとく若い年令層に偏りががあり,しかも1921-1930年 の1例は同胞のなかから世帯主を出している世帯であったoただし,最年長者の在留資格 については,表ト13のどとく,とくに他の形態と異るところがない。 表ト11同胞世帯における 最年長者と不在の世 帯主との続柄 長男または長女 姉. ・. 弟. 計. 15 2. 表Ⅰ-12最年長者の年令 (同胞世帯) 1901. -. 1911.-. *兄弟姉妹のなかから世 帯主を出している1例. 住. 8. 1910年生れ. 1. 永. 1920年生れ. 0. 4-1-16-3. 5. 1930年. 1. 4-1-4. 1. 記入なし. 4. 1921. -. 1931. -. 1940年. 5. 1941. -. 1950年. 5. 1951. -. 1960年. 6. 17*. 表I-13最年長者の在留資 格(同胞世帯). を除く。. なあ. この形態の世帯における世帯人口は表I-14のどとくであり,規模の小さい点が 特徴となっているといえるだろう。この裏中5人からなる世. 表ト14同胞世帯の成員数. 帯1のどときも同居人3を含むため規模がやや大きくなつ たものであり,同胞のみについていえば2人世帯にすぎず, また7人世帯1は,兄弟および妹の他に長男の配偶者を含 む世帯であり,しかも長男妻ほ長男を世帯主として申告して いるが,当事者である長男自身が弟妹とともに登録カ-ドに 該当者の見出されない世帯主の長男として登録しているため 当事者の申告を重視し,夫婦世帯と同胞世帯に分離すること 計. なく,同胞の配偶者を含む同胞世帯としたものであることを 付言しておく。.
(10) 62. 山室周平・河村十寸穂. ⅠⅠ.ニ世代世帯 以上において,一世代世帯を終り,二世代世帯の諸形態をとりあげるo. この形態はさら. に父子,母子,夫婦一子(「核」),その他の諸形態に再分類されるので,それらを慣次にと i)あげてゆくことにする. 1.父. 子. 世. 帯. 昭和35年寛厚生行政基礎調査にもとずく小山の賃料によれば父子世帯(ただし,この 場合は三世代世帯を含んでいる)は9%程度(小山,前掲書,. 22頁より算出)であり,ま た牧野の掲げている1930年代の中国本土,およびアメリカに関する-資料によれば「男 と子」ほ表Ⅱ-1に見るごとくであった(牧野,前掲書, これにたいして,. Kaye. 628頁参照)ということである。. によれば. singaporeの華僑街においては1954表Ⅰト1中国および米国の表ⅠⅠ-2父子世帯にお汁る 年度において,. 5%. 父子世帯の割合 (1930年代). (Kaye,前掲書,. 父の年令. 1900年以前生れ. p.35,第11表参照)であるが,山下 町においては,同居人を含む世帯3. 中国農村. (同. 1.4% 2・3%o. 中国都会. 居人数ほ各世帯1)を加えて,総数38. 米. であり,全世帯数にたいする割合は 5・5%であるo. 0・7%. 国. 1901. -. 1911. -. 1921. -. 1931. -. CO. 1910年生れ. 12. 1920年生れ. 8. 1930年生れ. 8. 1940年生れ. 2. (牧野,支那家族研究, p・628). 総数38中,世帯主が子の側にある. ものは皆無であり,全部の世帯の世帯主が父であった。 それらの父の年令をみると蓑Ⅱ-2に見るように高年令層にやや偏りを示している。 また,それらの父親の職業は,高年令層が多いにかかわらず表Ⅱ-3が示すように無職 のものが極めて少ないo職種としては,半数近くが料理,飲食店であることが特色的であ る。. また,世帯主である父の在留資格の点については,衰Ⅱ-4のごとく定着的である。 最後に表Ⅱ-5によって世帯としての規模をみる. 表II-3父子世帯かこおける文の職業. と,平均2・63人で,概して小さい。ただ8人位帯. 料理・飲食店(経営正に従事者) 洋. 服. 店(. 〝. 16. ). 5. 会社員・事務員. 5. 貿. 2. 易. 商. その他の商業 理. 容. 教 そ. の. 無 計. 1が含まれているが,これは同居人による膨脹では 表II14父子世帯における 父の在留資格. 表II-5父子世帯の成員数. 5. 永. 業. 1. 師. 1. 4-1-1613. 他. 1. 記. 職. 2 38. 入. 計. 住. 25. し. 5. 8. な. 38 38.
(11) 63. 横浜在留華僑の特質に∫関する若干の考察. なく,同居人を含む倣帯も3人世帯2,および4人世帯1で必ずしも大きくない。 2.母. 世. 子. 帯. 母子像帯は,昭和35年度のか山の資料によれば13・3%であり,父子世帯の9%と同 (小山,前掲書, 様三世代世帯を含んでいるが,ともあれ,それらの合計柱22・3%. 22貢. 参照)にたつしており,大正9年度の戸田の資料でほ母子世帯の割合が明瞭でないが父子, D, E,Fの合計)より2・2%程度増加 母子の合計の21.7%(戸田,前掲亭474貢のC, しており,アメリカにおいても,1961年度のセンサスにもとずき母子世帯が増加の懐向に P.,. あるとするものがある(Kunstadter, Family.. cal. また,. in. A. Feb・. Anthropologist,. American. Survey. of the. Consanguine. 1963)0 (父子は5. Singaporeの華僑常におけるこの種の世帯は28%. Kayeによれば,. p・. %にすぎない)にのぼっている(Kaye,前掲審,. Matrifo-. or. 35,第11蓑より算出)ということで. ある。. これにたいして,山下町の華僑における母子世帯の合計は81であり,父子世帯の38 世帯をはるかに上桐り,全世帯数にたいする割合も11・6%にのぼるが,そのうち母が世 帯主であるものは53,子の側が世帯主であるもの3,他は世帯主が別にあると申告してい るが,カードの見出されないものであるoその数は25にのぼるが,最年長者の世帯主に たいする続柄は,母16(義母1を含む),妻が9(ただし妻9のうち1飼においては子は妻 を俊帯主として申告している)である。また,この場合も同居人を含む世帯が含められて いるが,その数は合計4. (世帯主が母であるもの2,世帯主不在で妻2)であり,同居人. の数は各世帯1名宛計4人(男2,女2)である。 澄帯の規模は表II-6のごとくであり,平均規模は3.51人であり,父子世帯の場合の 平均規模2.63人をかなりの程度に上廻り,その世帯数においても,そこに含まれた成員 の数においても母子世帯がより重要な形態であ尋ことを示している. これらの斑帯の母または,婁の年令は,裏Ⅱ-7のごとくであり,やや中老年令層に債 斜がある。また,それちの人々の在留資格ほ衷Ⅱ-8のどとくであり,さらに,それらの 表ⅠⅠ-6母子世帯の成員数 表Ⅰト7母子世帯における 母の年令 1 900年以前生れ. 7. 1920年生れ. 23. 1930年生れ. 8. 1901 1911. -. 1921. -. 1931. -. 1940年生れ 計. 1・l. 1910年生れ. 21. -. 2. 表Ⅰト8母の在留資格 (母子世帯) 永. 59. 住. 15. 4-1-16-3. 7*. 不明また記入なし. 81. 計 *ただし子が4-1-16 -2のもの1, -16-3のもの1o. 4-1.
(12) 64. 山室周平・河村十寸穂. 人々の職業については表Ⅱ-9のごとくであった。. 表Ⅰト9母の職業(母子世帯). 無職が圧摩相加こ多く,子が料理,飲食店関係の職業をもつ. 料理・飲食店関係 洋 服 店 関 係. 5. もの7,会社員6,洋服製造1,某手製造1のごときものも. あるが,最年長の子が学生生徒である場合も12を数えるの. 家. 主. 1. で,それらのみならず,母子世帯がどのようにして支えられ. 会. 員. 1. 産. 1. 容. 師. 1. 中. 1. の. 他. 1. 職. 67. タ. ているかについてはとくに知りたいところであるがこの調査. 業. 資料の限界をこえることになるので,今後における現地調査. 社 バ. コ. 女. に期待すべきであろう。. そ 無. 3.夫婦一子(「枝_I:)世帯. 計. 呉主恵はその昔「華僑本質論」. 1. 81. (1944)の中で華僑の家族お. よび婿姻に関する観念が中国古来の伝統を鮮魚していることを述べて,次のどとき諸点を あげている。. ①父母が死後に子孫なきを最大の恥辱として,家庭の貧困を度外視してまでも早く子女 を結解させること。. ②父母は多くの子女をもつことによって,彼らの孝行の対象たりうることを喜ぶo こ⑧子女は結婿後,自己の生計を維持し得なくても,父母がその生活の保証を与えるから. 安心して結嬉しうること。. ④父母は子女の成年後,その外的誘惑による不良行為を恐れて早く結婚させること。 ⑤中流以下の家庭では,多くは嫁が来ると,家庭内の手助けとなるから経済的であるこ と。. ⑥子女が成年になってもまだ結嬉しないと,親戚や友人から軽視され,批判の対象とも なること。. (同書p. 210). 呉のあげたこれらの点に関してはCoughlin, Chinese. in modern. ldentity: The R.J.もその昔``Double Tbailand''(1960)のなかで,新しく結婿した夫婦ほ通常夫の家に居. を構え,嫁は家事雑用に従事すると述べており(p. な華僑家屋の構造を図示したなかに, 見られる。. ``Bedroom. 73),またBangkokにおける典型的 of Married. Son. &. Wife''なる箇所が. (ibid.,p. 69). しかるに一方において呉は,民国以来西欧化の影響が漸次参透して伝統的な家族観や嬉 姻観が動揺して,小家族形態が遵頭してきたこと,そしてこの現象が華僑において特に顕 著であったこと,また華僑家庭における主婦の地位が本国のそれよりも向上していること などを論じている。 (同書p. 211-212) 上のごとき論議は主として南方華僑を素材としてなされたものであるが,山下町の華僑 においては,問題の「1ト家族形態」はどのような状態であろうか. 山下町において,夫婦とその未婿の子よりなる世帯(「核」世帯)は総数225を数え, 山下町会華僑世帯の3分の1弱であるが,その内訳は表Ⅱ-10の通りとなっている。 世帯主(世帯主不在のものは,その手または弟)の年令をみると表II-11のどとくである。.
(13) 65. 横浜在留華僑の特質に関する若干の考察 黄Ⅰト10. 表Ⅰト11兼帯一子世帯にお ける世帯主の年令. 兼好一子世帯の内容上の区別 219. 夫を世帯主とするもの. 1900年以前生れ. 25. 1901. -. 1910年弓生れ. 82. 1911. -. 1920年生れ. 66. 1930年生れ. 39. 1940年生れ. 11. 1. 婁を世帯主とするもの. 3. 世帯主不在で,その子(男)の夫婦ヰ世帯. 1921 2. 世帯主不在で,その弟の夫婦一子世帯. 1931. -. 不. 225. 計. -. 2. 明. これでみると夫婦一子世帯の77%弱においては,世帯主(またはそれに代るもの)の年 令が40才を越えているわけで,いわゆる若夫婦と幼児という形態ほ意外に少ないo若い 世代の結婿がそれほど少ないとは考えられないし,そうかといって,若夫婦が親の世代と 同居するという形態が一般的だとすれば,次に述べる「その他の二世代世帯」や「三世代 世帯」がもつと増える筈である。前述の「夫婦世帯」についてみても世帯主の年令が比較 的高いことと思い合せて,この点は興味ある課題だというべきであろう。 世帯主の在留資格についてみると,. 225のうち176が永住の資格をもっており,これは. 総数の78%強にあたる。前回の報告(その1)に見るごとく,山下町金華僑のうち永住 資格の所有者は66%であり,これに比べると,夫婦ヰ世帯は(後述の三世代世帯に次い で)他の形態よりも定着性が強いとみてよいであろう。 1世帯あたりの平均人員ほ4・92人. また世帯員教則にみると,表Ⅱ-12の通りであり,. で,夫婦一子世帯のみの数値としてはかなり高いと思われる。これほ恐らく上に述べたよ うに,世帯主の年令が相対的に高いことと関連があるものとみてよかろう。 世帯主の職業ほ表Ⅱ-13のごとくであるが,料理・飲食業関係者は全体の51%に達し ていて,相対的に高いが,職業との関連においては格別目だった現象ほないと思われる。 ホワイト・カラー的被傭者の比率 が夫婦一子世帯において多いとい. 表Ⅰト13. 表II-12夫婦一子世 帯の成員数. 世帯主の職業 (夫婦一子世帯). うこともなく,山下町に関する限 料. 4人. 〝. 53. 洋. 5人. 〝. 46. 港. ここで上の結果をもとにして若 干の国際比較を試みておきたい。. 6人. 〝. 34. 貿. 易. 7人. 〝. 26. 理. 髪. 業. 4. すでに述べたように,山下町華僑. 8人. 〝. 11. そ. 自 営業 者. 21. であるが,これ椎他地域の華僑世 帯あるいは他民族の世帯構成と比. 人人人. のなかに占める割合は, 32.3%, 夫婦一子世帯の平均人員は4.92人. 910. においてほ,夫婦一子世帯の全世帯. ク. 11. 計. 〃. か. の. ・飲 衣. ●. 食 料. 物・雑. 他. の. 営. 経. 業. CO. 品貨. えそうである.. 理服産. 48. 莱商商. 1 ー5. 3人世帯. り,むしろ相対的には少ないとい. ホワイトカラー的被億者 の 他. そ. 無. 職 お. よ. 計. び. 不. 明. 10 1O. 2 20 6 12 225.
(14) 66. 山室周平・河村十寸穂. べると,どんな特徴があるであろうか.従来,世帯ないし家族の類型に関して払学者に よってかなりまちまちの分類が行なわれており,しかも各類型の占める割合を示したもの は少ない。そこで十分な比較資料によって検討するだけの用意はないが,いま可能な範囲 で多少の言及をしておきたい。 まずKayeの調査になるSingaporeのUpper. Nankin. Street. ■の華僑についてみる. と,夫婦一子替帯は全世帯の21%強にあたり,山下町より10%以上も少ない。このこと Singaporeの単独世帯が全体の39%に上っていることと関係があるのではないかと. は,. 思われる.ただSingaporeでは夫婦-+世帯の平均人員は5.31人となっており,山下町 のそれよりも大きくなっている.. (Kaye,. ibid., p.. 32-35より計算). 華僑の本国である中国ほ伝統的に大家族が支配的である与する通俗的見解が一般に信じ られてきたが,実態は草食前においても,必ずしもそうではなく,牧野の一引用になる Smytbe.の調査報告(民国24年)によれば,中国の農村において夫婦一子世帯は全体の 26・1%,都市(南京)において33.1%を占めている。. (ここで農村というのほ北京・上 海・漠口・広東四市の附近の農村地域である)したがって山下町における夫婦一子世帯の 割合は,戦前における中国都市のそれとほぼ同じであるといえるであろう。また,同じ中 国の資料によれば,夫婦一子世帯の平均人員は農村において4.5人,都市において4.1人 であり,山下町のばあいはその何れよりも大きい。 同じ頃のアメリカのNew. Havenで行なわれた調査によると,夫婦一子世帯は全体の. 41・4%に上っており,その平均人員は4.7人となっている。 族研究,. p・. (以上ほ何れも牧野,支般家 627-628による)なお1953年のセンサスによれば,アメリカにおいて, 18. 才未滞の子を含んだ夫婦一子世帯だけで全体の36.2%となっているが, でふくめれば,この数値はもつと高くなる筈である。 1957,. p.. (Glick, P. C.,. 18才以上の子ま American. Families,. 2). おわりに現代日本の夫婦一子世帯の実態について述べておこう。昭和35年の厚生行政基 礎調査をもとにした小山の「世帯の分析」から計算すると,夫婦一子世帯とみなされるの ほ全体の42・56%であり,その平均人員は4.5人である.大正9年の第1回国勢調査を もとにした戸田の「家族構成」によると夫婦一子世帯は38.3%であり,. 4.26%の増加をみ. ている。. 以上のごとく,山下町の夫婦一子世帯を他の資料と比較することによって,ある程度そ の位置づけを概観しようと試みたわけであるが,もとより極めて不十分な,しかも外見上 の検討に止まっており,伝統的なfamily cycleにたいして,この輝些や夫婦世帯の世帯 主の年令が高い点との関連をどう考えるべきかの問題等についてもなお今後の究明に供た ねばならない。 4.その他の二世代世帯. ここでは,二世代世帯のうち,上に述べたもの以外を取り扱うoその数は全部で25世 帯であるが,これらの世帯は構成内穿からみて,更にいくつかの類型に分けることができ.
(15) 67. 横浜在留華僑の特質に関する若干の考察. る。したがって,これら25世帯を一括して,その全体的傾向を調べてみても,あまり意 味がないと思われるので,表Ⅱ-14のような分類を試み・その各々の揮塾ごとに若干の 考察を加えることとした。 表ⅠⅠ-14. 「その他の二世代世帯」の分弊. (i)第一世代に親・配偶者以外の親族を含むもの. 6. (ii)第二世代に兄弟姉妹または子以外の親族を含むもの (ii)にあげた親族を含むもの (iii)第一および第二世代の双方に(i),. 8 1 7. (iv)夫婦一子(「核」)の他に同居人を含むもの (Ⅴ) (i),(ii),(iii)の何れかに同居人を含むもの. 2 1. (vi)その他の世帯. (i)第一世代に親・寵偶者以外の親族を含むもの この炉型は給数6世帯であるが,その内容は何れも夫婦ヰ世帯において,それに世帯主 の兄弟姉妹(実のまたは義理の)を含むものであって,兄を含むもの2・妹を含むもの1, 弟と妹を含むもの1,義妹を含むもの2となっている。なお世帯に含まれる親族は,弟と 妹を含む1例を除いては何れも1世帯1人であるo 6人世帯1・ 8人世 5人世帯2, これらの「核」外的親族を含めた世帯人員をみると, 帯3となっており,やや大きい感じを与えるが・何分にも級数が少ないので数量的観察を 加えるのは適当ではあるまい。. 世帯主の年令は, 1916-30年生れの間に分布しており・. 30-40才代の中壮年層である. ことがわかる。職業についてみると,料理」飲食業2,貿易商2,医師1,無職1となつ ていて,特に注意すべき傾向は見られない.在留資格についても永住が多く,これらの点 からこの額塾の世帯の特数をさぐることはできないようであるo (ii)第二世帯に兄弟姉妹またほ子以外の親族を含むもの 1世帯ほ夫婦一子世帯に加えて世帯主の甥を含むものであるが, この輝型8聴帯のうち, 他の7例ほ何れも第二世代(つまり子)に寵偶老を含む世帯である。しかし世帯構成の具 体的内容に即して考察してみると・以下にみるように-・さらにいくつかの分解が可能であ る。. (a)たとえば,世帯主夫婦・三男・四男・長男の妻という構成が示すように,醗偶者を 要った当の長男自身が不在の場合があり,このケースほ合計3世:帯である。この場合・長 男ほ死亡したか,あるいは長期他出ということが考えられるが・その詳しい事情はわから ない。. (b)第二世代には結婚した子夫婦が含まれるのみという察塾で,具体的にi3:・世帯主夫 婦と二男大麻という構成を示す1世帯がこれに当る。 (c)第二世代において結婿した子夫婦以外に,他の子が含まれている場合,つまり世帯 主夫婦・長男夫婦・二男というケースが1世帯みられる..
(16) 68. 山室周平・河村十寸穂. (d)第二世代の構成は(c)と同様であるが,第一慢代において夫を欠く世帯が2例あ るoすなわち・母・長男夫婦・三男というどときである.なおこの2世帯のうち,. 1例ほ. 母を世帯主に,他は子を世帯主にしている。 さきに述べたように第二世代に甥を含む世帯は(世帯主の職業は料理兼洋服商,. 1912年. 生れ,永住盟格,成員数6人)他の7例とは世帯構成の面で性格的に異なると患われるの で・残り7例について若干の属性を検討してみよう. (データは第一世代による)。この類 型では第一世代っまり親がかなり高年令層であることが当然ながら顕著であり, 1900年以 前の出生者が4,. 1901-10年までが3となっている。職業では料理・飲食業3,理髪1,. 貿易商1・洋品商1,英子商1となっていて格別の樺色は見られないし,在留資格はすべ て永住である。世帯人員をみると, 4人世帯2, 5人世帯2, 分布となるが,数量胎観察はこの場合にも不適当であろう。. 7人世帯2,. 8人世帯1の. なおこれら,子の世代に寵偶者を含む世帯は,前掲(a)の場合はともかくとして,第三 世代(孫)の出生によって,いわゆる直系家族ないし家長的家族という三世代世帯に移行 する可能性をもっていることが考えられる。. (iii)第一および第二世代の双方に(i),. (ii)にあげた親族を含むもの. この類型に該当するものとしては1世帯あるのみであるが,その構成内容を具体的に示 すと次の通りである。. 世帯主・弟・妹・甥2・姪(計6人) ただこの場合'面接調査にもとずいたデ-タでなく,登録カードの記載に蘇っているた めに・甥や姪たちの親が具体卸こ誰なのかが厳密には不明確であり,世帯主との続柄がわ かるに止まる.したがって詳しい実態が調査できれば,あるいほこの類型から外れる可能 性もありうることである。なあ. この世帯主は1929年生れの料理人であって,在留資格. は不明である。. (iv)大麻一子(「核」)の他に同居人を含むもの 「核」約成員の他に同居人を含むものは組数7世帯であるが,同居人の数は1人の場合 4世帯, 2人の場合2世帯, 5人を含むもの1世帯となっている.この類型における同居 人級数13人のうち,世帯主と同姓の者は2人だけで, 11人は異姓である。 世帯主の年令をみると,. 1911-20年生れの中年層が4人で過半数を占吟ているほかは, 職業・在留資格などには特に指摘するほどのことはない。同居人を含んだ世帯人員をみる と・. 5人世帯2・. 6人世帯1,. 7人世帯3, 8人世帯1となっており,やや大きい。 ただ8人世帯の1例では5人が同居人で,世帯主の経営する料理店の従業員であり,そ. れを除別号夫婦と長女のみとなる.しかもこの長女は結婚して別居している可能性が強く, 家庭生活の実質は夫婦世帯に近いものと考えられる.結解した娘が別居していると患われ るのに・依然として実父を世帯主として登録している例はもう1件ある。このような事情 から推察すれば,「世帯」の観念が,かなり流動的で多義的に理解されているのではないか と考えられ・このことは,山下町の華僑登録票調査を通じて,世帯主不明というケースが 極めて多いことと考え合せて,中国人における世帯観念の特質を追究する必要性を酷示し.
(17) 69. 横浜在留華僑の特質に関する若干の考察 ているのではないかと思われる。. なお同居人と記載しながら,住所は世帯主のそれと異るケースが1例あり,これも「世 帯」あるいは「世帯主」という観念の多義性を示すものと考えられるが,一応登録票の記 載に従って集計したことを付記しておく。 (Ⅴ)上記(i),. (ii),(iii)の何れかに同居人を含むもの. この類型は総数2世帯であって,何れも上記(i)の塾に同居人を加えたものである。含 まれる第一世代の親族は, 1例においては世帯主と義姉であり,もう1つの場合は,姉と 従姉である.同居人は前者にあっては1人(異姓),後者でほ2人(何れも異姓)であるo 世帯主の年令は, 1907年生れと1919年生れであるが,世帯数も少ないし,別に特散ら しいものを云々するわ捌こはいかないo世帯人員は8人と7人で当然ながら比校的多い。 (vi)その他の世帯 ここに挙げるのは1世帯のみで,その構成は,夫婦と二男および養女の4人である。こ の世帯を特にこの項にあげたのは「養女」の名があるからに他ならない。これはあるいは 実質的には「核」世帯であるかとも考えられるが,非血縁の子という点が明記してあるの で,一応普通の「核」世帯と区別したまでである. 中巨那こおける養子,特に養女の問題については種々注目すべき点が存することが,従来 指摘されているが,ここではそうした点に深く立ち入ることは避けておく。 ⅠⅠⅠ.三世代世帯. 三世代世帯は,大正9年度国勢調. 表ⅠII-1世代別にみた世帯の割合(大正9年). 査にもとずく戸田の研究によれば表 Ⅲ-1のごとくであったということ. である(戸田「家族構成」 照)0. 555頁参. これにたいして,小山の昭和35年 度厚生行政基礎調査にもとずく研究 によれば,表Ⅲ-2のごとくで,≡. 世代以上の世帯が減少の懐向を表し. (戸田貞三,家族辞成,. p・. 555). ているが,とくに三世代世帯につい ては示されていないので審かでな 10頁参照)0 い(小山,前掲書,. 表ⅠⅠト2 察型別にみた世帯の割合. また,牧野巽はSmytheにもと ずき,中国本土に関する表Ⅲ-3の ごとき資料を掲げている(牧野,前 掲宰, 631頁参照)0 さらに, Singaporeの華僑につい ての. Kaye. の調査によれば,三世. (小山隆,世帯の分析,. p.. 10).
(18) 70. 山室周平・河村十寸穂. 代の「大家族」*の全世帯数のなかで占める割合ほ13%で. 表III-3世代別にみた中国 の世帯(1930年代). あったということである。. これらにたいして,山下町の華僑においては,三世代世 帯の合計は53であり,全世帯数にたいする,その割合は 7.6%であった。. それらの世帯の内容を分析するに当っては,つぎのごと き分類法を用いた。 1)第一世代の配偶者のいずれか一方を欠くもの 2)第二世代の配偶者のいずれか一方,または双方を欠. (牧野,支部家族研究,. p.. 631). くもの. 3)第一世代の寵偶老の一方,およぴ,第二世代の寵偶老の一方または双方を欠くもの 4)第一,および第二世代の寵偶者の揃っているもの. このような分類法を用いたのは,冒頭にのべておいたごとく,核家族論においては, extended. family. は. n11Clear. familyの複合体であると考えられているが,事実上は必. ずしもそのようなものではなく,むしろ,しばしばいわば「欠損」を補完するための「欠 損」を含む複合体であるからである。ただ,傍系親族をどの程度に含むかという点におい て,日本にかける「直系,ないし嫡系家族」**と傍系家族とを区別しておくことも必要と 考えられるので, 1) -4)のそれぞれのなかで傍系親族および同居人を含む世帯と然らざ るものとを区別しておくことにした。 表ⅠII14. 第一世代に含まれる者の続柄 (三世代世帯1塾). 母のみのもの(祖母1を含む). E33. さて,そのような分弊方法により山下町の三世代 世帯を再分類した結果はつぎのごとくである。 1.第一世代の配偶者のいずれか一方を欠くもの. 妻の母のみのもの. 4. 父のみのもの. 5. その総数は23であり,三世代世帯の合計52の. 婁の父のみのもの. 1. 半ばに近く,もつとも多い形態である。それらのう. 23. 計. ち第一世帯に含まれるものを見ると表Ⅲ-4の通り で,母あるいは妻の母のみのものが,父あるいほ妻. の父Qみのものの3倍近くになっている。 また23世帯中傍系親族,同居人を含む世帯は,. 7世帯であり,その内容は,第二世帯. に兄弟姉妹を含むもの5,甥を含むもの1,同居人を含むもの1であった。 2.第二世代の配偶者のいずれか一方または双方を欠くもの この形態に属するものの合計ほ6***であり,そのうち,配偶者の一方のみを欠くもの *. Kayeはgreater. familyをA. household. consisting. of. three. generations. of. relatives,. p・ 32参照. Kaye前掲書, and/or married siblings.と規定している. 「哲学」所収, 1960年など **直系ないし嫡系家族の概念については,有賀喜左衛門「家族と家」 参照.ただし,牧野は日中農村を比較した際,両者間にさ捻どの差はないであろうと推測して 631貴重照)。 いる(牧野,前掲書, ***このなかにはつぎのごとき1例が含められている。 世帯主・章一長男・長男妻・ニ男・五男・大男・七男・長女・三男の妻-二男の長男.. inlaws.
(19) 71. 横浜在留華僑の特質に関する若干の考察. が6,双方を欠くものほ存在しなかったoまた・それらの6∴例ほ全て傍系親族を含む世帯 であり,いずれも第二世代に兄弟姉妹が含まれている○ この場合,長男夫婦に即していえば4)の形態であるが,第三世代に即していえば,ニ 男の配偶者を欠くものであり,さらに三男の妻にたいする夫をも欠くという点から2)と した。. 3・第一世帯の寵偶老の一方・および第二世代の配偶者の一方またほ双方を欠くもの この形鄭こ該当するものは15例を数えるo世帯主一子の妻一乳あるいは,父一世帯 圭一三男,四男,五男,五女,六女,七女のごときがそれである。. この形態の15世帯中停系親族を含むものは6例で,第二世代に兄弟姉妹を含むもの4, 姪を含むもの1,その他,同居人を含むものが1あった。また第一世代の配偶者の一方お よび第二世代の配偶者を欠く世帯ほ母-(世帯主および妻不卯一子の1例のみであったo 4.第一および第二世代の配偶者の揃ったもの この形態に属するものは9例であり・三世代世帯組数53にたいし17%程度にすぎな い。. この形態中,傍系親族を含むものが5飼あるが,その内訳はいずれも第二世代の兄弟姉 妹を含むものであった。 なお,三世代世帯の分輝に関連して,お断りしておかねばならないのは・他の形態にお いてもそのような事例がないではなかったが,とくにこの形態においては,世帯員相互の 間の続柄関係の申告に喚いちがいの発見された事例の少なくなかったことであるo その若干の事例をあげると 例1.世帯主一長男,長男妻一孫(1)の場合・全員同一番地であるが,孫のみは長男を 世帯主としている.ただし,長男白身が父を世帯主としているので三代世帯としたo 例2. (世帯主不明)母-長男,長男妻一孫(2)の場合,同番地に全員が居住しているが, 長男妻および孫2人は長男を世帯主としている。しかしながら・この場合も長男自身が登 録カードには存在しなかった父を世帯主とし,母も生存しているので三世代世帯としたo 例3.. (世帯主不卿,章一二男,二男妻,甥一二男の長男および長女・二女の場合,二. 男妻および二男の1男2女,および努までが二男を世帯主としているが,二男自身が所在 の確罷できなかった父を世帯主としているので三世代世帯とした。いうまでもなく,ての 場合も同番地である。. このような事例,とくに例1に額似する事例が3例を数えるが,いずれにもせよ・この 瞳の事例ほ,世帯員間に意識のズレを生じている事 例として興味がある。 さて,三世代世帯全体を通じて,いずれの世代に 世帯主があるかをみると,表Ⅲ-5のごとく第二世 代に世帯主のある方が,むしろ第一世代にあるもの より多いことは注目すべき事実であるのみならず・. 第三世代にあるものすら1例あったのである○. 表ⅠII15. 三世代世帯における 世帯主の所在. 第一世代に世帯主のあるもの. 24. 第二世代に世帯主のあるもの. 28. 第三世代に世帯主のあるもの 計. ・. 1. 53.
(20) 72. 山室周平・河村十寸穂 表ⅠⅠⅠ-6三世世帯の成員数代. 表・ⅠII-7 三世代世帯における世帯 主の年令 1900年以前生れ. 14. 1901. 1910年生れ. 13. 1920年生れ 1930年生れ. 13. 1911 1921. -. -. -. 8. 48. 不 荏 甲山u 主く. 帯除 (世を. 表ⅠⅠト8 三世代世帯の世帯主の 在留資格 永. 住. 4一卜16-3. 無記入または不明4. 42. 2(言監督譜至る) 48. 計. つぎに,三世代世帯のの規模別分布をみると表Ⅲ-6に示す通りであり,一世帯平均規 模は6.40入である。 つぎに,世帯主のみにかぎり年令構成をみると,表Ⅲ-7のごとくであり,聴業につい ては・料理,飲食店関係者が20名にたっし,他の形態の場合よりやや多い他,その他の 職業のありかたも著しく異る点はなく・ただ無職が4名のみであることが若干注意をひく 程度である。 在留資格の点においては,蓑Ⅲ-8に見るごとく他の形態にたいして永住の多いこと, すなわち約88%にのぼること(夫婦ヰ世帯の場合が多かったが,その場合でも78%)が, 特色的であるといってよいだろう。 ⅠⅤ.四世代世帯 四世代世帯は,五世代世帯を含めるとしても牧野の前記資料による中国農村において 2・94%. (四世代のみでは2・9%)同じく中国の都市においては0.8%. (四世代のみでほ 0・7%)程度であり,戸田による大正9年度における日本の六大都市において四世代世帯 (五世代以上の世帯はネグリヂプルで除かれている)は0・59%,東京市0・66%,大阪市 0・37%となっている(牧野,前掲書631貢および戸田「家族成構」 Kayeの調査したSingapore華腐街においては``greater. 555貢参照)。また family''は三世代までを含む. としているが,それ以上の世代の世帯の有無を明言はしていないが,他に当てはまる項目 がないと考えられるところから・皆無であったと理解してよいであろう(Kaye,前掲書, 32等参照)0. p.. 山下町においては'わずかに1例,したがって全世帯数696にたいする割合は0.001%.
(21) 73. 横浜在留華僑の特質に関する若干の考察 にすぎない。. その続柄Bu構成ほ 叔母(異姓)一世帯主,妻一長女,二女,長男,二男,三男,四男・五男一孫(1)であり} 第一世代と第三世代の配偶者を欠いているが・合計11名からなっている。世帯主の職業 は料憩,飲食店関係で在留資格は永住である。 Ⅴ.捻. 括. 以上において世帯形態のそれぞれについて,その内容の検討を試みてきたが,最後にそ (経緯表,襲Ⅴ-1参照) れらを経括した場合に考察される若干の点をとりあげておきたい。 (``broken. (1)単独低帯をはじめ夫婦,父子,母子,同胞のごときいわゆる「欠現家族」. family'りの世帯級数のなかで占める割合が棲めて高く,それらの合計が49・2%,すなわ ち半ば近くを占めていること。ただし,昭和35年. 表・Ⅴ-1. 総. 括. 表. の草本全国におヤ、てもその朝食ほ約37・8%にた つしており(小山,前掲書より算出),かつまた中 国本土の都会(民国24年度の南京)では「正常 塑」がわずかに17%であり,他ほbrokenある いは「非家族」であるとした-資料(牧野,前掲 書627頁第2表より算出)もあることであり,さ らに,この種の世帯の比重は単に世帯形態相互の 間の比較によってのみならず,それぞれの形態の なかに含まれる世帯員の絶入口にたいする朝倉に ょって論ぜられねばならない。山下町においては, 単独,夫婦,父子,母子の各世帯形態に含まれる 人口の総人口にたいする割合の点からみれば約 19%程度にすぎず,必ずしも大きな比重を占め ていない。. (2)前回の報告において示したどとく,個人を ユニットとして集計した場合,傍系親族が,他に 比べて著しく少ないことが注目された.すなわち, 蓑Ⅴ-2に示すように,山下町において措,. 2・9. %にすぎなかった(前回報告35頁,表Ⅸ-2参 輿)が,そのことは,単独,夫婦,父子,母子, 夫婦一子の各世帯のごとき分輝の建前上傍系親族 を含みえない世帯の合計が86.6%にのぼる点か. 表V-2 日. 傍系親族の含まれる割合. 本全国(大正9年). 日本犬大都市(大正9年) 中国中東部(Buck) 山 町 下. 6・77o 7・2. 7o. 19・2. 7o. 2・97o. らも意像に難くないであろうごとく,傍系親族が 主として三世代および四世代の世帯の,しかも一部. (合計54世帯中傍系親族を含む世帯. 株24世帯にすぎない)にのみ見出されることと関連があると考えられる。牧野娃中国本.
(22) 74. 山室`周平・河村十寸穂. 土において傍系親族を含む家族が全家族数の20%にもたつしないであろうと推静してい る(牧野・前掲幸・. 631頁)が・そのことは,山下町の場合においても裏書きされている. といってよく;したがって,この点に関するかぎりでは日本の家族を「直系ないし廟系」 家族として特徴ず仇中国人の家族は,しばしば傍系を含むがゆえに傍系家族であるとす ることは世帯構成のみの点からいえば不当である。 (3)単独,父子・母子・夫婦一子ならびに三世代世帯などにおいて一棟に高年令層を世 帯主とするものの多いことが汝目される.例えば,夫婦一子世帯において45才以上の世 帯主が昭和35年度の小山資料によれば削ぎ40%軽度であるのにたいL,山下町におい ては40才以上の世帯主・またはそれに準ずるものが77%鄭こたっしている。このこと. は山下町においては多数の青壮年が,それらの世帯のなかに東婿(あるいは届出をともな わない婿姻関係)の状態のまま含まれていることを意味するであろう(前回報告,年令構 成の項参照)。 (4)山下町の華僑に関するかぎり,職業と世帯構成との間に特別の相関関連は見いだし 難い。 (5)在留資格の点においてほ・永住権をもbものの割合が,三世代世帯においてもつと も高く・ついで夫婦一子世帯が高く・単独世帯においてもつとも低い0 最後に一言お断りしておきたいことT3=・世帯をユニヴける分析にあたり,若干の世帯 が除外されないということである。. ・その-ほ長男・二男,長女,二女・三女のいずれもが同一人を世帯主とし,別に世帯主 妻もある7人世帯であるが,世帯主が女性であったという事例である。世帯主および妻の いずれもが女性名である点からいっても単純な記載上の誤りとは見倣し難いが;結局対象 から除外することにした。. そのこほ登録票において日本人が世帯主となっている事例が8例あり。それらについて. も前記の考察の対象から除外されているが以下において,それらのものにつき簡単に記し ておく。. (1)日本人(世帯主)の妻が1人あるo日本人と括解した中国婦人ほ,多くの場合,早 晩日本に帰化するものと思われるo噺ヒの問題についてほ前回の報告(その1)の付論に おいて多少ふれておいたが,この婦人の場合も・やがて帰化手続がとられるのかも知れな いqただ面接調査をしていないので,そうした点や彼女を含む日本人世帯の構成などはわ からない。. (2)日本人の母を世帯主とする,その長女と二女・および同様な母の二男(合せて2例)。 これらの場合は,おそらく父が中国人であると思われるが,何らかの事情で父と同居して. おらず,したがって,これらのケースは一応「母子世帯」をなすものと考えられる。しか し日本人である母が,自己の親族(日本人)といかなる世帯関係をもっているかは不明で ある。. (3)日本^の世帯に同居しているもゐ5件。このうち,同居人が2人(同姓,あるいは.
(23) 75. 横浜在留華僑の特質に関する若干の考察. 兄弟か)の場合が1件で,残りの4件ほ単独同居とみられる。 これまでの叙述においてほ,同居人はそれぞれの世帯の構成員として扱い,彼らを特別 5件, 6人の同居者を職 に準世韓的な観点から独立に分析をしてこなかったのであるが, 業的にみると船員1,料理2,研究者1,無記入2となっており,無記入の2人は年令的 にみて恐らく学生であろう。他の有職の4人は中壮年層であるo在留資格は3人が永住, 4-1-8 (期間1ケ年)が1人(研究者),無記入1人(船員)とな. 4-1-16-3が1人,. っているが,もとより詳しい彼らの実態を知るには不十分である. 以上極めて大鮒巴ながら日本人が世帯主となっている場合について述べたわけであるが, 中国人の「世帯」を単位とした分析を中心とする本稿においては,この部分ほいわば付属 的な補遺餐度を出るものではなく,したがって「中国人世帯」という観点からほ一応別個 の扱いをすべきものであろう。. ただ世帯や居住をめぐってだけでなく,広く一般的にいって,在留華僑と日本人との関 係・交渉の問題ほ興味のあるところなので,他の横会に,改めてこの課題をとりあつかい たいと患う。 お. ぁ. り. に. 本報告の基掛こなっているのは,最初にも述べたように,外国人登録票の写しであり, これは個人単位に作製されたものである。したがってバラバラに分散していた個人票を世. 帯ピとによせ集めるという作業を加えることによって,世帯構成の考察を試みた次第で奉 る。. このように既存の文書資料の操作によって一応本文にみるような結果を得たのであるが, しかし興味のある問題点,あるいは疑問の箇所についてのより詳しい追及,確認などは, その性質上不可能であった。したがって,これらの点を明らかにするためにも,現地にお ける面接,調査の必要性が痛感される。 たとえば単独世帯,母子世帯,三世代世帯などを調べたところでは,有配偶者がもう少 し多くてもよさそうな感がないでほないが,資料調査の性質上,それ以上の究明は不可能 であった。. なお本稿執筆の過程において,特に他資料との比故を行なうに際して,各研究における 世帯もしくは家族概念が極めて多様であり,厳密な意味での比較検討が屡々困難であった。 その意味において,統一的解釈にもとづく,同一のカテゴ1)-を用いた分類・統計が確立 されることが望ましい。. また,単独世帯・父子世帯・母子世帯をはじめ,従来とかく家族ないし世帯の研究にお いて中心的考察から外れがちであった帯形態が意外に多かった点に鑑みても,家族社会学 的研究がこれらの対象に一層の関心を払うことが必要であると考えられるが,その意味か らも,ここで試みられたごとき分類ならびに分析の方法が,今後における研究推進の一助 として役立つところありとすれば幸甚であるo 本報告は前回の報告(その1)に次いで文部省科学研究費による横浜華僑研究の一環を.
(24) 76. 山室周平・河村十寸帝. なすものであって,前回報告(本紀要No・. 9,. 1963)を併せ参照願えれば幸いである。 最後に,今回もまた,横浜国立大学学芸学部社会学専攻学生諸君多数の協力を得たこと. を記して謝意を表したい。.
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