平成15年度兵庫教育大学プロジェクト研究
子どもの自然体験活動の指導に
求められる学校教員の資質能力形成に関する研究
研 究 報
(第二年次)
研究代表者 長 揮 憲 保
(兵庫教育大学学校教育研究センター教授)
は し が き 本研究は、本学の学校教育研究センター・実地教育支援研究部門のプロジェクト研 究として出発した、平成13年度教育改善推進経費(学長裁量経費)による「『自然学校』 に求められる学校教育教員の指導資質能力に関する研究−『自然学校』受入施設の青 少年指導者に対する調査を通して−」の研究成果を発展させ、平成14年度には、兵 庫教育大学プロジェクト研究として全学的な支援の下、「子どもの自然体験活動の指 導に求められる学校教員の資質能力形成に関する研究」としてさらに継続的に展開さ れてきた研究である。本書は、平成14年度の第一年次研究報告に続く、第二年次の 研究報告である。 本研究の目的と趣旨については、次の「研究の目的」において詳述しているが、学 校教育における子どもたちの貴重な自然体験活動の機会を、実り豊かにより充実させ る指導のあり方は、ますます専門的で高度なものが期待されてきており、学校教員の 養成や研修においても、その資質能力形成に科学的な根拠と手掛かりの明確化が求め られてきている。そこで、本研究では、兵庫県立教育研修所、兵庫県立嬉野台生涯教 育センター、兵庫県立南但馬自然学校等に広範なご理解ご支援を賜り、また当該施設 等を利用される県内各地の小学校関係者等にもご協力を頂いて調査研究を進めてきた。 この研究成果の一端は、平成15年度兵庫教育大学プロジェクト研究発表会(平成16 年3月20日開催)においても報告し、学内外から第二年次研究の評価と第三年次研 究に繋がる課題に関する示唆に富むご意見を賜った。本報告書は、こうした貴重なご 意見を取り入れながら、第二年次研究の総括として、その成果をここに報告するもの である。 本研究の推進のために、ご理解とご協力を賜った関係者各位に対して、衷心より御 礼を申し上げると共に、本報告書の内容等についてご検討下さる方々から、忌博のな いご意見、ご批正を賜ることを期待申し上げる次第である。 研究代表 兵庫教育大学学校教育研究センター 教授 長 澤 憲 保 l−11−
目 次 はしがき 目 次 第1章 研究の目的及び方法 第1節 研究の目的 第2節 研究の内容及び方法 第2章 評価尺度の作成 第1節 評価尺度の作成方法 第2節 教員用評価尺度と子ども用評価尺度 第3章 研究の結果(その1)∼アンケートの数量データに基づいた統計分析 第1節 分析の手順 第2節 教員の資質能力と子どもの成果に関する全体的把握 第3節 事例間における子どもの成果の差異 第4節 高得点群・低得点群による子どもの成果の差異 第4章 研究の結果(その2)∼教員の指導性から捉え直した事例分析 第1節 分析の観点と方法 第2節 逆転事例における教員の指導性の差異 第3節 子どもの成果が高かった事例にみる教員の子どもへの関わり方 第5章 研究の結論と課題 第1節 研究の結論 第2節 研究の課題 資料1自然体験活動の指導に関するアンケート調査(小学校教員用) 資料2 自然体験についてのアンケート調査(子ども用) 研究組織 一2−
第1章 研究の目的及び方法
第1節 研究の日的 子どもの発育・発達には豊かな直接経験や自然体験等が不可欠とされているが、現 在の子どもには直接経験や自然体験等が不足していると指摘されることが多い1)。特 に、我が国における情報化、科学技術の進歩、都市化の急速な進展は、ますます子ど もの直接体験や自然体験等の機会の減少を加速させ、子どもの様々な問題を生起させ てきた。 そうした状況にあって、現行の学習指導要領では、子どもに思いやりの心や豊かな 人間性・社会性を育み、自ら考え判断できる「生きる力」を育成するために、総合的 な学習の時間を中心に、教育課程の中に自然体験活動等の様々な体験活動の導入を促 している2)。さらには、平成13年7月の学校教育法及び社会教育法の改正により、各 学校は各種体験活動を教育活動に適切に位置づけ、その充実を図ることとなった。 しかし問題は、子どもを指導する立場にある学校教員もまた自然体験活動や野外活 動等の各種体験や指導経験が不足していることである3)。学校教員に豊かな自然体験 活動等の直接経験がなければ、自然体験活動等の重要性や意義が理解できず、子ども への適切な指導も行うことができない。現に多くの学校教員は、実施する活動内容に 着目するあまり、その指導に関しては手探りの状態で行われており、必ずしも子ども たちにとって効果的な指導が行われていると言い難い。今後この問題を解決するため には、現職教員のみならず養成段階の学生にも自然体験活動や野外活動等の体験や指 導経験を積ませる機会が必要である4)。けれども、単に体験や経験を積ませればよい のではなく、自然体験活動の指導において学校教員にはどのような資質能力が求めら れるのかという観点から体験や経験を積ませる必要がある。ところが、これまでの自 然体験活動に関する先行研究では、子どもの自然体験の実態や子どもの自然体験活動 の意義と効果に注目した研究が多く、その指導に携わる学校教員の資質能力の在り方 を問う研究はほとんどなかった5)。 そうした現状から、本プロジェクト研究は3年計画で研究を進めることとし、子ど もの自然体験活動の指導に求められる学校教員の資質能力を明らかにすることによっ 一3−て、本学の実地教育及び教育課程の改善に役立てるとともに、最終的に学校教員が活 用できるリーフレットを作成することを目的とした。 そこで、第一年次の平成14年度の研究では、兵庫県下の公立小学校第5学年児童 を対象に実施されている「自然学校」6)に注目し、平成13年度の「自然学校」受入教 育施設の指導者(170名)を対象とした質問紙調査と平成14年度に実施した小学校教 員(567名)及び第5学年児童(3601名)を対象とした質問紙調査から、自然体験活 動の指導で求められる学校教員の資質能力の内実を明らかにしようとした。その結果、 自然体験活動の指導で求められる学校教員の資質能力は、自然体験活動プログラムへ の「共通理解と集団指導力」、「安全管理・安全指導の能力・知識」、「自然体験活動の 知識」、「企画・指導技術」、「状況予測力と対人関係能力」、「関心・意欲」、「元気・体 力」であることを同定した7)。しかしながら、この結果だけでは実際の自然体験活動 の指導の場において、これら7つの資質能力が、子どもたちの活動の成果にどの程度 結びっいているのかは理解できない。 そうした課題から、平成15年度(第二年次)の研究では、第一年次の結果を受け て「教員用評価尺度」と「子ども用評価尺度」を作成し、実際の自然学校で指導した 学校教員の様子と子どもの活動後の評価尺度調査から、7つの因子で構成した「自然 体験活動の指導で求められる学校教員の資質能力」が実際の指導場面でどの程度妥当 性があるのかを明らかにすることを目的とした。 第2節 研究の内容及び方法 (1)調査の実施方法 まず最初に、7つの因子で構成した「自然体験活動の指導で求められる学校教員の 資質能力」が実際の指導場面でどの程度妥当性があるのかを明らかにするために、7 つの因子の構成項目からプロジェクト研究のメンバー3名により、因子内容を反映し た、因子負荷量が高い20項目を抽出し、質問紙調査票を作成した。また、その妥当 性を検討するために、「子ども用評価尺度」として、第一年次の研究で用いた子ども 調査から、「自然体験で培われた能力尺度」と「楽しさ体験尺度」8)等20項目を抽出 し、質問紙調査票を作成した。 −4−
次に、これらの質問紙調査票を持参して、実際の自然学校へフィールド調査に出向 き、当該小学校のある一つのプログラムを指導する学校教員の様子をVTR撮影によ り観察するとともに、そのプログラム終了後に指導した学校教員と活動に参加した子 ども全員にそれぞれの質問紙調査に回答してもらった。また、指導補助員について は、現地で子どもの指導に当たっているが、あくまで当該校の教員の補助という位置 づけにあり、本研究の対象としている学校教員ではないため、回答者の対象から外し た。 なお、本研究で扱った対象事例は、我々が観察したプログラムを1事例と考えた。 したがって、1つの学校でも違う学校教員が指導した場合は、それぞれを別々の事例 と捉えた。 調査実施期間:平成15年11月4日∼平成16年9月15日 実施対象校数:18校 調査協力者数:教員27名(男17名、女10名)、児童1214名(男647名、女567名) (2)研究の方法 上記の手順によって得られた調査データを下記の手順に従って分析を行った。 〔教員の資質能力と子どもの成果に関する全体的把握〕 (丑小学校教員の資質能力について性差の観点から違いを明らかにするとともに、7 つの因子における平均値の違いを把握する。 ②子どもの成果について性差の観点から違いを明らかにするとともに、7つの因子 における平均値の違いを把握する。 〔事例間による子どもの成果の差異〕 ①小学校教員の各因子から最高得点事例と最低得点事例を抽出し、それらの事例に おける子どもの成果の違いを平均値の差から明らかにする。 ②小学校教員の全体平均の最高得点事例と最低得点事例を抽出し、それらの事例に おける子どもの成果の違いを平均値の差から明らかにする。 ③全事例の子どもの成果にどのような違いがあるのかを平均値の差から明らかにす る。 ー5−
〔上位群と下位群による子どもの成果の差異〕 ①因子ごとに平均値を基準として上位群と下位群に分類し、それが子どもの成果に どのように反映しているのかを平均値の差から明らかにする。 ②小学校教員の全体平均の値を基準として上位群と下位群に分醸し、それが子ども の成果にどのように反映しているのかを平均値の差から明らかにする。 〔VTRによる活動分析〕 ①教員の自己評価と子どもの成果とが負の対応関係にある事例から、なぜそうなっ たのか、その原因を探る。 ②子どもの成果が高い事例から、指導場面における教員の教授行動を抽出し、それ が「自然体験活動の指導で求められる学校教員の資質能力」にどう該当している かを明らかにする。 【注】 1)文部科学省(2003)『平成14年度 文部科学自書 新しい時代の学校∼進む初等中 等教育改革∼』や中央教育審議会(2002)『青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策 等について(答申)』では、子どもたちの生活体験、社会体験、自然体験等、多く の人や社会、自然と直接触れ合う体験の機会が乏しく、直接経験が不足していると 指摘している。また、佐藤、松下、深谷の各氏は子どもの自然体験不足の実態を問 題視している。(佐藤哲郎(1993)「子どもたちに自然体験がなぜ必要か」、『青少年問 題』8月号、12−18貢。松下倶子(1998)「学校教育に生きる豊かな自然体験の在り方 を探る」、『中等教育資料』6月号、14−19頁。深谷呂志(1999)「自然体験に乏しい子 どもたち」、『レクリエーション』483、日本レクリエーション協会、6−9貢。) 2)文部省(1998)『小学校学習指導要領』。 3)青少年の野外教育の振興に関する調査研究協力者会議(1996)『報告青少年の野外 教育の充実について』の「野外教育指導者の課題」において言及されている。また、 星野は、今の学校教員のほとんどが野外活動への引率指導だけに終わってしまって おり、野外活動の指導もできず、自分自身も野外活動の経験がないという学校教員 が多すぎると指摘している。(星野敏男(1994)「野外活動の指導者養成をめぐる現状 と問題点」、『月刊 社会教育』5月号、19貢。) 一6−
4)横山や星野は、野外活動の指導は社会教育に任せておけばよいという考えは間違 いであり、小中学校で野外活動を行うのであれば、現在の教員養成課程の中に野外 活動指導のトレーニング・プログラムを必修として開設すべきであると言及してい る。(横山隆一(1989)「野外活動をめぐる指導者養成のいくつかの問題」『月刊 社 会教育』33(10)、38貢。上指、星野敏男(1994)、19貢。) 5)子どもの自然体験活動に関する研究では以下のようなものがあげられる。千駄忠 至・赤松幸子(2003)「自然学校で育成される態度とそれに影響を与える要因」、『兵 庫教育大学研究紀要』23、59−66貢。谷井淳一・藤原恵美(2001)「小・中学生用自然 体験効果測定尺度の開発」、『野外教育研究』5(1)、日本野外教育学会、39−47貢。蓬 田高正・飯田 稔・井村 仁・関 智子・岡村泰斗(2000)「長期自然体験が児童の 内発的動機づけに及ぼす影響」、『野外教育研究』3(2)、日本野外教育学会、13−22貢。 今泉紀嘉(1995)「自然体験活動による態度変容について」、『日本特別活動学会紀要』 4、68−85貢。飯田 稔(1993)「体験学習の意義」、『青少年問題』40(8)、4−11貢。 野沢巌(1989)「埼玉県の都市部と農村部における小学生から大学生までの1年間の 自然体験と生活体験(1)」、『埼玉大学紀要教育学部(教育科学Ⅱ)』38(1)、99− 116貢。 学校教員に必要な資質能力では、兵庫県立南但馬自然学校の研究紀要において 触れられている程度である(兵庫県立南但馬自然学校編(2001)『平成12年度研究紀 要』)。 6)「自然学校」は、国の事業である自然教室の実施状況等を参考にしたもので、「学 習の場を教室から豊かな自然の中へ移し、児童が人とのふれあいや自然とのふれあ い、地域社会への理解を深めるなど、さまざまな活動を年間指導計画に位置づけて 実施することにより、心身ともに調和のとれた健全な児童の育成を目的」(4貢)と し、全国に先駆けて昭和63年度から実施されている。平成3年度からは県内の公 立小学校5年生全員を対象に5泊6日で実施され、現在では「トライやるウィーク」 と並んで兵庫県の特色ある教育活動の一つとして全国的に注目されている。(兵庫 県教育委員会(1998)『自然学校10周年記念誌』。) 7)上西一郎編(2003)『平成14年度兵庫教育大学プロジェクト研究 子どもの自然体 験活動の指導に求められる学校教員の資質能力形成に関する研究 研究報告書(第 一年次)』。 ー7−
8)上掲書、第3章を参照されたい。
第2章 評価尺度の作成
第1節 評価尺度の作成方法
第一年次の研究において、「自然体験活動の指導に求められる学校教員の資質能力」 は7因子から構成されていることを明らかにした。第二年次の研究では、この7因子 の各因子に該当する項目から2、3項目抽出し、合計20項目の教員用評価尺度を作 成した。項目を抽出する際に留意したことは、①項目内容が各因子名を反映している こと、②その園子を構成する全項目の平均値と抽出した項目の平均値との相関係数が 0.800以上になること、である。 具体的には、次のような手順で項目を抽出した。 第1因子は10項目から構成され、「共通理解と集団指導力」と命名した。この10項 目の中から因子名に該当する項目として、「31)参加する子どもたちをまとめる能力」、 「27)子どもに生活習慣、社会的ルールを指導する能力」、「29)子どもの自然体験活 動に対する意義と価値の理解」、「35)子どもたちを自主的に行動できるように促す 能力」を抽出した。第1因子の平均値と抽出項目の平均値との相関係数は.926であっ た。 第2因子は8項目から構成され、「安全管理・安全指導の能力・知識」と命名した。 この8項目の中から因子名に該当する項目として、「32)事故等への応急処置に関す る知識」「18)教員自らが健康管理ができること」「11)子どもへの安全指導の能力」 を抽出した。第2因子の平均値と抽出項目の平均値との相関係数は.909であった。 第3因子は7項目から構成され、「自然体験活動の知識」と命名した。この7項目 の中から因子名に該当する項目として、「12)動植物、森林等の自然に関する知識」、 「24)自然体験活動を実施する場(海・山)の知識」、「13)子どもの自然観察・自然理 解を指導する技術」を抽出した。第3因子の平均値と抽出項目の平均値との相関係数 は.931であった。 第4園子は3項目から構成され、「企画・指導技術」と命名した。この3項目の中 から因子名に該当する項目として、「22)自然体験活動プログラムを企画・開発する能 力」、「9)子どもにレクリエーションやゲーム等を指導する技術」を抽出した。第4因 ー9一子の平均値と抽出項目の平均値との相関係数は.958であった。 第5因子は6項目から構成され、「状況予測力と対人関係能力」と命名した。この 6項目の中から因子名に該当する項目として、「3)活動に協力してもらう人々との対 人関係づくり能力」「19)参加する子どもたちの相互人間関係づくりを支援する能力」 「26)プログラムの企画段階で状況の変化を予見する能力」を抽出した。第5因子の平 均値と抽出項目の平均値との相関係数は.904であった。 第6因子は3項目から構成され、「関心・意欲」と命名した。この3項目の中から 因子名に該当する項目として、「39)自然に関する興味・関心をもつこと」、「1)自然 体験活動への情熱」、「36)自然体験を教員自らが楽しめる感覚、構え」を抽出した。 第6因子の平均値と抽出項目の平均値との相関係数は1.000であった。 第7因子は2項目から構成され、「元気・体力」と命名した。この因子名に該当す る項目として、「7)教員自身に体力があること」、「10)教員自身が元気であること」 を抽出した。第7園子の平均値と抽出項目の平均値との相関係数は1.000であった。 以上の手順により、各因子を反映した20項目は、測定項目として適切であると判 断した。 第2節 教員用評価尺度と子ども用評価尺度 (1)教員用評価尺度 抽出した20項目から、次のような教員用評価尺度を作成した。回答は5段階尺度 とし、〔1.そう思わない、2.あまりそう思わない、3.どちらともいえない、4. 少しそう思う、5.そう思う〕で答える形式を採用した。 〔第1因子:共通理解と集団指導力〕 1)私は、参加する子どもたちをまとめることができた。 2)私は、子どもに生活習慣・社会的ルールを指導することができた。 3)私は、子どもの自然体験活動に対する意義と価値を理解している。 4)私は、子どもたちに自主的に行動できるように促すことができた。 〔第2因子:安全管理・安全指導の能力・知識〕 5)私は、事故等への応急処置に関する知識をもっている。 −10−
6)私は、自分の健康管理ができている。 7)私は、子どもへの安全指導をすることができた。 〔第3因子:自然体験活動の知識〕 8)私は、動植物・森林等の自然に関する知識をもっている。 9)私は、自然体験活動を実施する場(海・山)の知識をもっている。 10)私は、子どもの自然観察・自然理解を指導する技術をもっている。 〔第4因子:企画・指導技術〕 11)私は、子どもたちに合うように事前に工夫したプログラムを提供できた。 12)私は、子どもにレクリエーションやゲーム等を指導する技術をもっている。 〔第5因子:状況予測力と対人関係能力〕 13)私は、活動に参加してもらう人々との対人関係づくりができた。 14)私は、参加する子どもたち相互の人間関係づくりを支援することができた。 15)私は、プログラムの企画段階で状況の変化を予見することができた。 〔第6因子:関心・意欲〕 16)私は、自然に関する興味・関心をもっている。 17)私は、自然体験活動への情熱をもっている。 18)私は、自然体験活動を自ら楽しむことができた。 〔第7因子:元気・体力〕 19)私は、体力に自信がある。 20)私は、活力がある。 (2) 子ども用評価尺度 子ども用評価尺度は、第一年次の研究で用いた子ども調査の項目の中から「自然体 験で培われた能力尺度」と「楽しさ体験尺度」を用いた。以下に示すように、子ども 用評価尺度も20項目で構成した。回答肢は、「自然体験で培われた能力尺度」では4 件法(1.いっもできなかった、2.できないことが多かった、3.できたことが多 かった、4.いっもできた)を採用した。また、「楽しさ体験尺度」では体験の有無 を「はい・いいえ」の2件法で求め、「はい」に回答した者を対象に4件法(1.ぜ んぜん楽しくなかった、2.どちらかといえば楽しくなかった、3.どちらかといえ ば楽しかった、4.たいへん楽しかった)を採用した。 一11−
〔自然体験で培われた能力尺度〕 1)それぞれの活動にあった準備が自分からできた。 2)自分が活動をする場所の安全に気をくぼることができた。 3)活動をするとき、前から自分の知っていたことやしらべたことを使った。 4)自分のできないところがどこかわかった。 5)自分にあっためあてを 自分の判断できめることができた。 6)だれとでも協力できた。 7)自分の力でめあてを達成できた。 〔楽しさ体験尺度〕 1)約束ごとを守って活動したときがあった。 2)気持ちをひきしめて、きびきび活動したときがあった。 3)進んで活動しようという気持ちになったときがあった。 4)自然のよさやすばらしさを感じたときがあった。 5)思い通りできたときがあった。 6)友だちといっしょに活動する中で友だちの心がわかったときがあった。 7)だれとでも 気持ちよく活動できたときがあった。 8)今、行った活動は、生きていくのに大切だと感じたときがあった。 9)自分の役割をはたしたときがあった。 10)今までにしたことのない活動をしたときがあった。 11)友だちに教えてあげたときがあった。 12)友だちのよさを見っけたときがあった。 13)友だちにはめられたときがあった。 ー12−
第3章 研究の結果(その1)
−アンケートの数量データに基づいた統計分析− この章では、18校の小学校における自然学校を対象に実施した教員とその活動に参 加した子どもたちへのアンケート調査に基づいて、7つの因子からなる「自然体験活 動の指導に求められる学校教員の資質能力」が実際の指導場面においてどの程度妥当 性を有しているのかを明らかにしようとした。 第1節 評価尺度の作成方法 (1)個人の得点の算出方法 〔小学校教員の場合〕 小学校教員用アンケートでは、20項目について5段階尺度(1.そう思わない、2. あまりそう思わない、3.どちらともいえない、4.少しそう思う、5.そう思う) で回答を求めた。個人の得点の求め方としては、5段階尺度の回答に1点から5点を 与え、その平均値を算出した。例えば、各因子ごとに個人得点を算出する場合、その 因子を構成している質問項目の回答を得点化し、その平均値を求めた。また、複数の 教員が協力して指導にあたった場合、それらの教員の回答から平均値を求めた。 〔子どもの場合〕 子ども用アンケートでは、「自然体験で培われた能力尺度」の各項目につト、て4件 法(1.いっもできなかった、2.できないことが多かった、3.できたことが多かっ た、4.いっもできた)で回答を求め、「楽しさ体験尺度」の各項目について体験者 のみ4件法(1.ぜんぜん楽しくなかった、2.どちらかといえば楽しくなかった、 3.どちらかといえば楽しかった、4.たいへん楽しかった)で回答を求めた。個人 の得点の求め方としては、4件法の回答に1点から4点を与え、その平均値を算出し た。例えば、因子ごとに個人得点を算出する場合、その因子を構成している質問項目 の回答を得点化し、その平均値を求めた。 −13−(2)分析方法 本章で取り扱う数量データは、以下の手順で分析を行った。 まず、第2節では、教員の資質能力と子どもの成果に関して全体傾向を把握する。 具体的には、①小学校教員データから小学校教員の性差によって20項目の回答傾向 にどのような違いがあるのかをt検定によって明らかにする。②活動プログラムの中 で小学校教員が資質能力をどの程度発揮しているのかを7つの因子の各平均値から把 握する。③子どもについても、子どもデータから子どもの性差によって20項目の回 答にどのような違いがあるのかをt検定によって明らかにする。④活動プログラムに おける子どもの成果を7つの因子の各平均値から把握する。 第3節では、教師の資質能力の発揮の違いが子どもの成果にどのように表れるのか を明らかにする。①小学校教員の各因子から最高得点事例と最低得点事例を抽出し、 それぞれの子どもの成果にどのような違いがあるのかをt検定によって明らかにする。 ②小学校教員の全体平均の最高得点事例と最低得点事例を抽出し、それぞれの子ども の成果にどのような違いがあるのかをt検定によって明らかにする。③全事例の子ど もの成果にどのような違いがあるのかを分散分析によって明らかにし、子どもの成果 が高い事例を抽出する。 第4節では、各事例を小学校教員の資質能力の得点から平均値を算出し、それを基 準として上位群と下位群に操作的に分類した上で、子どもの成果とどのような対応関 係にあるのかを明らかにする。具体的には、①因子ごとの平均値に基づいて各事例を 上位群と下位群に分類し、そのことが子どもの成果とどのように対応しているのかを t検定によって明らかにする。②小学校教員の全体平均に基づいて各事例を上位群と 下位群に分類し、そのことが子どもの成果とどのように対応しているのかをt検定に よって明らかにする。つまり、そうした分析を通して、自然学校の指導場面では、7 つの資質能力の発揮と実際の子どもの成果とがどの程度結びっいているのかが明らか になると考えたからである。 −14−
第2節 教員の資質能力と子どもの成果に関する全体的把握 (1)性差による小学校教員の資質能力の差異 まず初めに表3−1は、小学校教員用アンケート調査に回答した学校教員27名の データについて性差の観点から分析したものである。表中の数値は各項目の平均値を 示しているが、大まかな傾向として、男性教員よりも女性教員の方が値が高いことが 分かる。特に、t検定の結果から、「3)私は、子どもの自然体験活動に対する意義 と価値を理解している」と「15)私は、プログラムの企画段階で状況の変化を予見す ることができた」という2つの項目については、有意差が認められた。このように、 体力面を除けば、男性教員よりも女性教員の方が自然体験活動の指導に対して積極的 な評価を示す傾向にある。 (2)因子からみた小学校教員の資質能力の発揮 また、小学校教員が活動プログラムの中で7因子からなる資質能力をどの程度発揮 しているのかを把握するために、表3−1の右端に各因子ごとの平均値も示した。こ の平均値によれば、最も高い資質能力は「関心・意欲」であり、ついで高い資質能力 は「元気・体力」であった。また、「共通理解と集団指導力」も高い値を示した。そ れらに比べると、「安全管理・安全指導の能力・知識」、「状況予測力と対人関係能力」、 「企画・指導技術」はやや低い値を示した。さらに、低い値を示したのは「自然体験 活動の知識」であった。 このように、小学校教員は自然体験への関心・意欲をもって元気に自然体験におけ る集団指導ができたと評価した。しかし、それらに比べると安全指導や状況予測力・ 対人関係能力、企画・指導技術などは少し評価が低くなり、自然体験活動の知識につ いてはあまり発揮されていなかったようである。 (3)性差による子どもの成果の差異 表3−2は、性差の観点から子ども用アンケート調査に回答した1214名の児童のデー タを分析したものである。男子と女子の違いを平均値とt検定から判断すると、男性 よりも女性の方が達成感が高く、積極的な評価を示す傾向にあった。例えば、「(1)自 然体験で培われた能力尺度」では、「3)活動をするとき、前から自分の知っていた 一一一15…
表3−1性差からみた教員の資質能力の差異と各因子平均値 教 員 ア ン ケ ー ト 項 目 男 性 (N =17 ) M (S D ) 女 性 (N =1 0 ) M (S D ) t 検 定 各 因 子 平 均 値 M (S D ) 第 1 因 子 :共 通 理 解 と 集 団 指 導 力 1)私 は 、参 加 す る子 どもた ち をま とめ ることが できた 3 .5 ( .8 7) 3 .6 ( .84 ) * 3.8 (.5 1) 2)私 は 、子 ど もに 生 活 習 慣 ・社 会 的 ル ー ル を指 導 す る ことが で きた 3 .7 ( .9 3) 3 .8 (1.03 ) 3)私 は 、子 ど もの 自 然 体 験 活 動 に 対 す る 意 義 と価 値 を理 解 して い る 3 .8 ( .9 0) 4 .6 ( .52 ) 4)私 は 、子 ど もたち に 自主 的 に 行 動 でき るように 促 す ことが で きた 3 .9 ( .7 5) 4 .3 ( .68 ) 第 2 因 子 :安 全 管 理 ・安 全 指 導 の 能 力 ・知 識 5)私 は 、事 故 等 へ の 応 急 処 置 に 関 す る 知 識 を もってい る 3 .7 ( .9 3) 3 .8 ( .63 ) 3 .7 (.4 9) 6)私 は 、自分 の 健 康 管 理 が で きて い る 3 .6 (1 .12) 4 .0 ( .94 ) 7)私 は 、子 どもへ の 安 全 指 導 を す る ことが で きた 3 .7 ( .9 2) 4 .2 ( .63 ) 第 3 因 子 :自 然 体 験 活 動 の 知 識 8)私 は 、動 植 物 ・森 林 等 の 自 然 に 関 す る 知 識 をもって い る 3 .5 (1 .0 7) 3 .4 (.70) 3 .3 ( .9 7) 9)私 は 、自 然 体 験 活 動 を 実 施 す る場 (海 ・山 )の 知 識 をもって い る 3 .4 (1 .1 8) 3,4 (.8 4) 10)私 は 、子 ど もの 自 然 観 察 ・自然 理 解 を指 導 す る技 術 を もって い る 3.4 ( .9 3) 3 .3 (.6 8) 第 4 因 子 :企 画 ・指 導 技 術 11)私 は 、子 ど もたち に 合 うように 事 前 に 工 夫 したプ ログ ラム を提 供 できた 3 .7 ( .70 ) 3 .9 (.3 2) 3 .6 ( .55 ) 12)私 は 、子 ど もに レクリエ ー シ ョン や ゲ ー ム 等 を 指 導 す る 技 術 をもって い る 3 .4 ( .8 7) 3 .5 (.7 1) 第 5 因 子 :状 況 予 測 力 と 対 人 関 係 能 力 13 )私 は 、活 動 に参 加 して もらう人 々 との 対 人 関 係 づ くりが でき た 3 .8 ( .88 ) 4 .0 (.6 7) * 3 .6 ( .62 ) 14)私 は 、参 加 す る子 どもた ち相 互 の 人 間 関 係 づ くりを 支 援 す ることが でき た 3 .6 (.87 ) 4 .0 (1.0 0) 15)私 は 、プ ログ ラム の 企 画 段 階 で 状 況 の 変 化 を予 見 す ることが で きた 3 .2 (.97 ) 4 .0 ( .7 1) 第 6 因 子 :関 心 ・意 欲 16)私 は 、自 然 に関 す る興 味 ・関 心 をもって い る 4 .3 (.92) 4 .2 ( .7 9) 4 .2 (.59 ) 17)私 は 、自 然 体 験 活 動 へ の 情 熱 をもって い る 3 ,9 ( .75) 3 .9 ( .8 8) 18)私 は 、自 然 体 験 活 動 を 自 ら楽 しむ ことが できた 4 .0 ( .9 4) 4 .1 ( .5 7) 第 7 因 子 :元 気 ・体 力 19)私 は 、体 力 に 自信 が あ る 3 .7 (1.2 7) 3 .5 (1.2 7) 3.9 (.58 ) 20)私 は 、活 力 が ある 3 .9 ( .6 6) 4 .2 ( .79 ) (注1)各因子の平均値は、各項目の5段階尺度(1.そう思わない、2.あまりそう思わない、3.どち らともいえない、4.少しそう思う、5.そう思う)による回答から算出した。 (注2)t検定結果は、*:pく.05、**:pく.01、***:pく.001を意味する。 −16−
表3−2 性差からみた子どもの成果の差異と各因子平均値 子 ど も ア ン ケ ー ト項 目 男 子 女 子 t検 定 各 因 子 平 均 値 M (S D ) N M (S D ) N (1 )自 然 体 験 で 培 わ れ た 能 力 尺 度 第 1 因 子 :学 習 の 基 本 的 態 度 1)それ ぞ れ の 活 動 にあった準 備 が 自分 か らできた 2.9 (.72 ) 64 7 3 .0 (.68 ) 56 7 *** 3 .0 (.62 ) 2 )自分 が 活 動 をす る場 所 の 安全 に気 をくぼ ることができた 2.9 (.86 ) 64 7 3 .1 (.77) 56 3 ** 第 2 因 子 :学 習 の 仕 方 3)活 動 をす るとき、前 か ら自分 の 知 っていた ことや しらべ た ことを使 った 2 .6 (.98 ) 634 2 .6 (.9 2) 5 5 8 2 .6 (.95) 第 3 因 子 二自 己 に 対 す る 理 解 4)自分 の できな い ところが どこか わ か った 2 .9 (.90) 63 5 3 .0 (.84 ) 5 5 7 * ** 2 .9 (.70) 5)自分 にあ っため あ てを 自分 の判 断できめ ることが できた 2 .8 (.94) 63 9 2 .9 (.84 ) 5 63 第 4 因 子 :協 力 6)だれ とでも協 力できた 3 .0 (.9 0) 6 40 3 .2 (.83 ) 5 64 ** 3 .1 (.8 7) 第 5 因 子 :課 題 の 達 成 7)自分 の 力で め あてを達 成 できた 2 .9 (.9 2) 6 46 3 .0 (.82 ) 5 63 * 2 .9 (.8 8) (2 )楽 しさ 体 験 尺 度 第 1 因 子 :親 和 ・達 成 3)進 ん で活 動 しようとい う気 持ち になったときが あった 3 .2 (.7 7) 5 3 1 3 .3 (.70 ) 49 4 * *** 3.3 (.5 2) 5)思 い通 りできたときが あった 3.4 (.7 4) 4 50 3 .5 (.64 ) 43 0 6)友 だちといっしょに活 動 する中 で友 だちの 心 が 分 か った ときが あ った 3.1 (.8 7) 3 85 3 .2 (.79 ) 4 13 7)だ れ とでも気持 ち よく活 動 できたときが あった 3.3 (.7 4) 4 61 3 .5 (.65 ) 44 3 9)自分 の 役 割 をは た したときが あった 3.2 (.8 3) 54 3 3 .4 (.70 ) 5 18 ** 10 )今 まで にしたことの ない活 動 をした ときが あ った 3.6 (.70 ) 5 78 3 .7 (.58 ) 5 13 ** * ** 1り友 だち に教 えてあ げ たときがあ った 3.2 (.8 1) 40 5 3 .3 (.70 ) 40 4 12 )友 だち の よさを見 つ けたときが あった 3.3 (.7 3) 4 74 3 .4 (.68 )4 6 6 13 )友 だち にほ め られ た ときが あった 3.5 (.78 ) 35 5 3 .6 (.69) 34 8 第 2 因 子 :自 然 理 解 ・快 活 1)約 束 ごとを守 って活 動 した ときが あった 3 .1 (.73 ) 58 3 3 .2 (.6 7) 53 8 *** ** 3 .2 (.55 ) 2 )気 持 ちをひきしめ てきびきび活 動 したときが あった 3 .0 (.8 1) 47 3 3 .1 (.6 9) 4 5 1 4 )自然 の よさや す ば らしさを感 じたときが あった 3 .5 (.7 1) 52 8 3 .6 (.5 8) 4 8 7 8 )今 行 った活 動 は 生 きて いくの に 大切 だ と感 じた ことが あ った 3 .4 (.76 ) 47 3 3 .4 (.7 0) 4 2 8 (注1)「自然学校で培われた能力尺度」の平均値は、4件法(1.いつもできなかった、2.できなかったことが 多かった、3.できたことが多かった、4.いつもできた)による回答から算出し、「自然学校における楽しさ体験 尺度」の平均値は、体験者のみ4件法(1.ぜんぜん楽しくなかった、2.どちらかといえば楽しくなかった、3. どちらかといえば楽しかった、4.たいへん楽しかった)による回答から算出した。 (注2)t検定結果は、*:pく.05、**:pく.Ol、***:pく.001を意味する。 −17一
ことやしらべたことを使った」を除く全ての項目で男女間に違いが見られた。また、 「(2)楽しさ体験尺度」においても、女性の方が活動に対して積極的に取り組んでいる からなのか、彼女らの行動から喚起される「楽しい」という感情は男性よりも強いよ うである。 このように、小学校教員の場合も子どもの場合も女性の方が高い評価を示す傾向に ある。両者の結果を結びつけて解釈することは困難だが、子どもの場合、こうした結 果になった理由には二つあると考えられる。一つは、女性が、自然学校での活動プロ グラムを通して、普段したこともない体験ができたという新奇性による効果である。 もう一つは、それに関わって、普段からの「女性は女性らしく」という日常的、社会 的慣習からの解放による効果である。そのために、男性よりも女性の方が活動に一生 懸命取り組めたのではないかと思われる。逆に、男性の方は、自然体験活動に対して 何らかの日常体験がある可能性も否定できない。したがって、性差による回答の差異 は、日常性、社会性の要素と深く関係していると考えられる。 (4)因子からみた子どもの成果 また、子どもが自然体験を通じてどの程度成果を得ているのかを把握するために各 因子ごとの平均値を求めて、表3−2の右端に示した。その結果によれば、子どもが 活動プログラムを通して「楽しかった」と思える体験をしていることが分かる。また 「自然体験で培われた能力」として「協力」や「学習の基本的態度」を高く評価して いる。また、「自己に対する理解」や「課題の達成」もある程度の成果が得られてい るが、「めあての達成」という面では、やや評価が低めである。そして「学習の仕方」 についての評価は、2.6と低い値になった。 このような結果から、子どもは自然体験活動を通して楽しく、友だちと協力しなが ら、学習の基本的態度を身につけていると言える。ただし、活動に取り組む際に、子 どもが自己のめあてをどの程度意識しているかは疑問である。また、事前に知ってい たことや調べていたことを活動の中で使ったという意識は低く、学校での学習活動と 自然学校での学習活動がうまく結びっいていない。これは、各学校において、自然学 校での活動に向けた事前指導が十分に行われていない状況を表している。子どもにとっ ては、何ら事前指導も受けずに、自然学校で初めてそれを経験するということが多かっ たのではないかと恩われる。 一18−
第3節 事例間における子どもの成果の差異 (1)各因子における教員の資質能力が子どもの成果に及ぼす影響 表3−3は、19事例の各教員が回答した調査データをもとに各因子ごとの平均値を 算出したものである。以下では、因子ごとに最も平均値が高かった事例と最も平均値 が低かった事例を抽出し、その資質能力の発揮が子どもの成果にどのように反映した のかを明らかにする。 第1因子の「共通理解と集団指導力」では、事例Iの値が最も高く、逆に事例M、 0の値が最も低かった。その資質能力の発揮の違いが子どもの成果にどう表れるのか をみたものが、表3−4である。それによれば、事例I、Mとの間には、有意差が認 められなかった。また、事例I、0との間でも有意差が認められなかった。したがっ て、第1因子に関して、事例Iの教員の資質能力は子どもの成果に反映していないこ とが分かった。 第2因子の「安全管理・_安全指導の能力・知識」では、事例Pが最も値が高く、逆 に事例C、F、Mが最も値が低かった。表3−5は、その資質能力の発揮の違いが子 どもの成果にどのように表れるのかを示したものである。それによれば、事例P、C では、「(1)自然体験で培われた能力尺度」の「第2因子:学習の仕方」、「第3因子: 自己に対する理解」、「第4因子:協力」、「第5因子:課題の達成」において有意差が 認められた。また、事例P、Fでは、「(1)自然体験で培われた能力尺度」の第3因子 と第4因子において有意差が認められた。さらに、事例P、Mでは、「(1)自然体験で 培われた能力尺度」の全ての因子において有意差が認められた。これらの検定結果か ら、第2因子に関して事例Pの教員の資質能力は、子どもの成果に反映していないこ とが分かった。 第3因子の「自然体験活動の知識」では、事例Kの値が最も高く、逆に事例Gの値 が最も低かった。表3−6は、その能力の発揮の違いが子どもの成果にどのように表 れたのかを示したものである。それによれば、「(1)自然体験で培われた能力尺度」の 「第4因子:協力」において有意差が認められた。したがって、第3因子に関して事 例Kの教員の資質能力は、子どもの成果に反映していた。 第4因子の「企画・指導技術」では、事例Gの値が最も高く、逆に事例K、Mの値 が最も低かった。その能力の発揮の違いが子どもの成果にどのように表れたのかを示 −19−
。士人∴褐P ︵肺単音踪︶ S荘伸.︵肺襲恵踪︶ ∝辱仲.︵怖襲承論︶ ○辱掛.︵コ皆ぜ 撃︶ d革仲.︵コ鞋塔婆︶ ○革怖.︵肺襲意踪︶ Z亘伸.︵肺塞哀踪︶ 三塁仲.︵コ藍君嶋︶ ﹂革伸.︵脾襲舌鼓︶ ∠革柵.坐帥g蔚無 ︵N班︶ 。吏怠喘組側−翠計e紬回e咄劇.佃野e咄蔀e点蝉.鵜舟。吏﹂軍練成毛細回㊥旬日一︵巾疇小中.の .小酌中小﹂令.寸 ノ﹂亜l吋′﹂尋刃通辞匁.C ノ﹂礎£項中小コ栂嶋.N ノ﹂鼻音疇中小.﹁︶ 畢張警讐芸罵蒜品.坐租石音質甲叶団地 ︵L弱︶ ∽ 志 慧 荘 ど 宣 伸 禦 禦 寸 勺. くc l ぐつ C⊃ C〇 〇〇 cO C⊃ q⊃ ○つ くつ ぐつ ぐつ ぐつ ぐつ ぐつ 寸 ∝ 芸 芸 雷 重 義 寸 u つ
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ところが、事例P、C、あるいは事例P、E、あるいは事例P、Gでは、いずれの場 合も事例Pの子どもの成果の方が値が低く、多くの因子で有意差が認められた。した がって、第7因子に関して、事例Aの教員の資質能力は子どもの成果に反映していた が、事例Pの場合は子どもの成果に反映していなかった。 (2)教員の資質能力の全体平均からみた子ども成果の差異 表3−10は、教員に求められる20項目の資質能力の全体平均から、最高得点事例 と最低得点事例を抽出し、両事例の子どもの成果を比較した結果を示したものである。 それによれば、事例Iの値が最も高く、逆に事例Mの値が最も低かった。しかし、子 どもの成果については、事例IとMの間で有意差は認められなかった。この結果から、 事例Iの教員の資質能力は子どもの成果に反映していなかったと判断できる。 (3)全事例における子どもの成果の差異 以上の結果を踏まえて、各事例の子どもの成果にどのような差異があるのかを一覧 にし、分散分析を施してみた。その結果が表3−11である。F値に示すとおり、子ど もの成果に関するすべての因子で有意差が得られた。つま.り、それだけ、各事例の子 どもの成果に違いがあったということである。特に、事例の差異については、多重比 較が参考になる。この結果から、子どもの成果が高かった事例として、事例B、M、 Nが挙げられる。逆に、子どもの成果が低かった事例として、事例P、R、D、Lが 挙げられる。そのなかでも、事例MとPは、教員の自己評価と子どもの成果とが大き く逆転している事例である。 第4節 高得点群・低得点群による子どもの成果の差異 (1)各因子における上位群・下位群の子どもの成果の差異 さらに、小学校教員の各因子の平均値に基づいて上位群と下位群に分類し、両群の 平均値の差を分析した結果が表3−12である。 まず、第1因子「共通理解と集団指導力」では、高得点群よりも低得点群の方が子 どもの成果は高く、特に検定結果に示すように、「(1)自然体験で培われた能力尺度」 ー24−
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