A Case Study on a Curriculum for a Class for Children with Health Impairments(2)
古 屋 義 博
Yoshihiro FURUYA
Ⅰ.問題と目的 病弱教育の対象となる子どもたちの主な疾病等の種類は、時代と共に大きく変化し続け、現在、か なり多様化している(全国病弱養護学校長会、2001:文部科学省、2002)。 小学校に置かれた病弱(身体虚弱)児のための特別支援学級(以下、「病弱学級」とする)は、文部 科学省(2008)によれば、2007年5月1日現在、全国で716学級である。同じく知的障害児のための 特別支援学級13,736学級や情緒障害児のための特別支援学級9,062学級に比べると圧倒的に少ない。病 弱学級の多くが病院内に置かれた学級あるいは分校、いわゆる院内学級である。小学校の校舎の中に 通常の学級と同じように教室が配置されている病弱学級は少ない。必然的に、そのような学級の教育 課程編成上の工夫についての情報は十分に蓄積されていない。 本研究は、病弱学級の教育課程の実際と課題について記述した先の報告(古屋、2008)に続く第2 報であり、これらに関する情報の蓄積を目的とする。 Ⅱ.方法 1.対象 平成19年度現在、ある県の全小学校の中に、病弱学級(いわゆる院内学級を除く)は4学級ある。 いずれも児童1人(以下、「A児」「B児」「C児」「D児」とする)の在籍である。その各学校(以下、「A 小学校」「B小学校」「C小学校」「D小学校」とする)の学級担任(以下、「A教諭」「B教諭」「C教諭」「D 教諭」とする)を対象とする。 2.期間 平成20年3月 3.手続き 対象の4教諭に、各学校の病弱学級の教室にて聴きとり調査を行う。各校長と各教諭宛に調査項目 を含む手続き(以下の文面)を事前に送付して、必要な資料を整えるように依頼する。記録は筆記で ある。後日、清書した記録を各教諭宛に送付して、内容の確認を求める。 聴きとり調査の方法や項目について 1 特別支援学級の時間割の写し(コピー)を提供してください。以下、その写し(コピー)を 見ながら、担任の先生に対する聴きとりを行います。 ※児童やその保護者への聴きとり等は実施しません。 ※教室の写真を撮影させてください(個人名等が特定されないように処理します)。 2 聴きとり調査の項目 (1) 在籍する児童の属性Ⅲ.結果 1.A小学校の病弱学級についてのA教諭による説明 (1)児童の実態について 4年生。必要な生活規制は、けが(外傷や骨折、やけど)の予防や体温調節である。 けがの予防については、各授業で計画される活動の性質を見極め、休み時間も含めて、その都度、 指導している。痛覚に加えて、温覚・冷覚が機能しないため、やけどにも注意が必要である。 体温調節については、夏期や運動時に高体温になるため、行動観察はもとより、体調の変化に関す るA児の訴えの評価、体温を下げるためにA児がすべき対応の補助が必要である。 (2)時間割表(表1参照)について ○ 学年 ○ 学校での諸活動(運動量や食事、学習時間、校外活動など)にかかわる必要な「生活規制(生 活の自己管理)」の概要 ※上記以外、例えば、性別や疾患名等はお聞きしません。 (2) 「各教科」の週当たりの指導時間数および授業形態について ○ それぞれの週当たりの時間数 ○ 特別支援学級内での実施か、交流学級での実施(交流学習)か。 ○ 交流学習の際の留意事項 (3) 「道徳」「特別活動」「総合的な学習の時間」の週当たりの指導時間数および授業形態について ○ それぞれの週当たりの時間数 ○ 特別支援学級内での実施か、交流学級での実施(交流学習)か。 ○ 交流学習の際の留意事項 (4) 「自立活動」を実施していれば、その目標と内容、指導時間数、授業形態について (5) 「教科・領域を合わせた指導」を実施していれば、その目標と内容、指導時間数、授業形態 について (6)教育課程編成にかかわり次年度に向けて改善したい事柄について ○ 教科・領域の「目標」「内容」「指導時間数」「授業形態」について ○ 「交流学習」の充実について 写真1 A小学校の病弱学級の教室
同学年の通常の学級(以下、「交流学級」とする。B・C・D校についても同様)との共同学習の機 会を多く確保するため、交流学級の時間割に準じて時間割を作成している。共同学習への参加は、(A 教諭の)付き添いを原則としている。 空間認知の発達に偏りがあるため、算数については、A児が不得意な「量と測定」や「図形」を中 心に、当該病弱学級の教室(写真1参照)にて個別授業や自立活動に替えた授業をしている。算数の この授業では、交流学級の児童の中で、欠席やその他の事情で算数の学習につまずきを示した児童を 取り出し、A児との少人数授業を試みとして実施することがあった。 体育は、(A教諭が)付き添い、原則的に交流学級との共同学習としている。この時間や休み時間の 外遊びなどは、体温調節やけがの予防について扱う自立活動の指導の重要な機会になっている。 生活単元学習については、(A教諭が)付き添い、校内の他の特別支援学級との共同学習を不定期に 行っている。 (3)各教科・領域にかかわる授業時数について 当該学年に準じた授業時数をおおむね確保している。自立活動は週1∼2単位時間であり、授業時 数上、時間割の同一枠内にある体育や算数との調整である。 他の特別支援学級との共同学習である生活単元学習は、図画工作との調整である。授業時数の配分 は、生活単元学習約75%・図画工作約25%である。生活単元学習では、具体的な活動を通して、各教 科・領域の広範囲にわたる内容を扱っている。特にこの時間では、学校生活に関する安心感・充実感・ 達成感が得られるような配慮をしている。 (4)自立活動の目標や内容等について 生活の自己管理にかかわり、体温調節や運動の仕方、けがの予防や対処などを指導している。 体温調節については、外気温や体温の計測、高体温時や低体温時の対処を、運動の仕方については、 骨や関節などの構造・機能や運動による骨や関節にかかる負荷の違いを指導している。けがの予防、 および転倒やけがをした際の対処については、学校生活のあらゆる場面で指導している。 今年度の後半あたりから、A児が自身の身体の状態を言語化する能力、例えば「暑いかもしれない」 表1 A小学校の病弱学級の時間割
や「まだだめ(十分な休息や適度な体温になっていないという意味)」と表現できる能力の芽生えがあっ た。その際には外気温や体温を計測して、A児の判断の是非を確認するという、生活の自己管理の仕 方に指導の力点を置くようにした。ただ、例えば、体育のボールゲームで夢中になってしまうと、そ の判断の基準があいまいになってしまうため、十分な行動観察は必要である。 (5)次年度に向けての課題について a.「領域・教科を合わせた指導」の見直しについて 生活単元学習では、安心感・充実感・達成感を保障する機会になった。ただ、2学年以上の隔たり のある児童が在籍する他の特別支援学級との共同学習であることや、交流学級の授業進行に歩調を合 わせたいという事情により、不連続な授業計画にならざるを得なかった。生活単元学習の目標や内容、 時間配分などの見直しが必要である。 b.自立活動の指導の充実について 生活の自己管理の指導に、次年度は特に力を入れたい。体育に限らず、例えば理科の実験で「炎」「熱 した鉄板」「沸騰した水」などに触れてはいけない、というように注意を要する場面が増える。学校生 活のさまざまな場面に隠れている危険を把握して、指導に結びつけたい。 c.各教科、特に算数の目標の立て方の工夫について 空間認知の発達に若干の偏りがあるために、「量と測定」や「図形」についての学習につまずきが生 じる。一方、比較的得意な内容もあり、当該学年に応じた指導ができる。個人内差をいかに受けとめて、 できるところをいかに伸ばし、自信をつけさせるか、などの検討が必要である。 d.特別支援学級の弾力的なよりよい運営について さまざまな配慮が必要な児童が、通常の学級にも多くいる。今年度、そのような児童らとA児との 少人数授業を行った。次年度も、特別支援学級の弾力的な運用の方法について模索したい。 e.家庭との連携の強化について 生活の自己管理能力もしくは生活力ともいえる能力を育むためには、家庭との連携が鍵である。そ のような能力が芽生え始めているので、「病弱であり手厚い保護が必要」という発想から、できること はA児に積極的にさせるという発想で、家庭と連携しながらさまざまな取り組みをしたい。 2.B小学校の病弱学級についてのB教諭による説明 (1)児童の実態について 4年生。必要な生活規制は運動である。 今年度については欠席(一部、入院)が多く、十分な授業日数を確保できなかった。B児の病状を 写真2 B小学校の病弱学級の教室
確認しながら、(B教諭が)入院先へ訪問して指導することもあった。 校内での移動や教室で行われる授業について、「ほとんど息がはずまない程度」まで運動を制限して いる。比較的長時間、根を詰めて机に向かうことにも注意している。B児の様子を十分に観察しながら、 おおむね20∼30分ごとに休息をとるように指導している。登校後に体調を崩すことがあり、養護教諭 と話し合い、保護者に迎えに来てもらい、早退させることが度々あった。 校外学習については、体調の変化に対応するために、酸素ボンベを常に用意している。県外へ出か ける行事については、緊急の場合を想定して、活動する場所の近隣の医療機関の位置を確認すること は必須である。B児の体調の関係で、保護者に付き添いをお願いしたこともあった。 休み時間については、外で活動することが困難なため、図書室で本を読んでいるが多い。 (2)時間割表(表2参照)について 体調が十分に整わないことや欠席が多いが、B児もその保護者も、交流学級の児童たちと少しでも 多く一緒に活動できることを望んでいる。よって、交流学級の時間割に合わせた時間割にしている。 B児のそのときの体調や、交流学級の授業の内容を把握しながら、(B教諭の)付き添いを原則として、 交流学級との共同学習をより多く確保できるように努力している。 運動が強く制限されているため、特に体育の授業については、他の児童たちと同じように参加でき ない。よって、すべてを自立活動に替えている。これについては、原則的に、当該病弱学級の教室(写 真2参照)で個別授業をしている。クラブ活動と委員会活動については、B児が参加する活動と(B教諭) 自身が担当する活動とを同じにしている。 (3)各教科・領域にかかわる授業時数について 体育を除き、当該学年に準じた授業時数をおおむね確保している。生活の自己管理にかかわる指導 として、週2単位時間程度の自立活動を確保している。ただし、必要な休息やその際に行う個別の指 導がとても重要で、自立活動の実質的な授業時数は多い。 (4)自立活動の目標や内容等について 表2 B小学校の病弱特別支援学級の時間割
他の児童たちが行っている活動への参加が強く制限されている。そのため、自信や自尊心の低下が 生じやすい。よって、自立活動の目標として、B児の特技・長所の発見と伸長、集団の中での自分の 役割を見いだす意欲を高めることを重視している。ただ、今年度については欠席が多く、自立活動を 含めて、継続した指導がなかなか実施できなかった。 (5)次年度に向けての課題について a.授業の実質的な時間数の確保の仕方について 今年度は欠席が多く、すべての各教科・領域について、継続的な指導ができなかった。そのため、 入院先に(B教諭が)訪問して、学習の遅れの補充もした。もしも可能であれば、例えば、夏期休業 中の健康状態のよいとき、正式な授業はできないものの実質的な指導を行うことができればと考えて いる。 b.交流学級との共同学習の仕方について B児もその保護者も交流学級の児童たちと、より多く一緒に活動できることを強く希望している。 B児のその意欲を何よりも大切にしたい。その意欲をいかに受けとめて、実現させるか、いつも考え ている。各授業での各活動の中で、B児が自分自身の役割を見いだせる指導と、一部でも参加できる ような工夫を、養護教諭や他の教職員、保護者、医師との話し合いを深めながら行っていきたい。 c.校外学習への参加方法の工夫について 学年進行に伴い、校外学習の増加と遠距離化、活動量の増加の傾向がある。それぞれの校外学習ご とに個別に検討や工夫をせざるを得ない。特に6年生で実施される修学旅行への参加の方法について は、具体的な検討を早めからしていかなければならない。 d.担任の関与の程度について 体調の急変が常に予想されるので、(B教諭による)濃厚な行動観察が必要である。B児は、常に(B 教諭を含めた)大人の視野内にあるといえる。ただ、そのことが他の児童たちとの関わり合いに何ら かの影響を与える。学年進行に伴い、大人(担任)への依存も減っていくし、減るのが当然であろう。 適切な距離感についての判断に悩む。 3.C小学校の病弱学級についてのC教諭による説明 (1)児童の実態について 4年生。必要な生活規制は、容易に骨折をしてしまうため、運動についての大きな制限である。 下肢(片側)の骨折の影響で、車椅子を使用している。歩くことはもとより、立つことも禁止して いる。ゆっくりとした動きでのつかまり立ちは大丈夫である。上肢については、脱臼の危険があるため、 急激で強い動きは禁止している。とても活発、元気であるため、過度に動こうとすることや危険回避 写真3 C小学校の病弱学級の教室
が十分にできないことにつながっているので、日頃から十分に注意している。 体温調節の機能が十分ではないため、室温や衣服の調節、高体温時の冷却、さまざまな活動への参 加の制限を(C教諭が)している。今年度の運動会は暑い日であったため、C児が出る種目以外の場 面では、C児を保健室で休息させた。 校外学習については、C児の移動手段が車椅子であることやC児の体調などを考慮しながら、一部 参加や保護者の付き添いをお願いすることもあった。 教科学習については、当該学年相当の注意持続が困難なため、C児の興味・関心を十分に配慮した 指導内容や教材・教具の工夫が必要である。 (2)時間割表(表3参照)について 国語と算数は、当該病弱学級(写真3参照)での個別授業である。道徳と生活単元学習は、校内の 他の特別支援学級との共同学習である。図画工作と特別活動は、さまざまな要素を考慮しながら、個 別授業か、交流学級との共同学習、他の特別支援学級との共同学習のいずれかを選択している。その 他の教科(社会・理科・音楽)や総合的な学習の時間については、指導計画および交流学級の授業の 内容に応じて、(C教諭の)付き添いを原則として、交流学級との共同学習としている。 (3)各教科・領域にかかわる授業時数について 週4単位時間の生活単元学習を確保している。計算上、国語・社会・総合的な学習の時間をそれぞ れ週1単位時間程度、算数を週2単位時間程度を減らした分で充てている。その他の教科や領域につ いては、当該学年に準じた授業時数をおおむね確保している。 生活単元学習では、他の特別支援学級の児童たちと、栽培活動や自然観察、学校行事への取り組み などを行うことを通して、各教科・領域にかかわる目標はもとより、自信をつけさせることや手指の 巧緻性の向上などをねらっている。 各教科については、国語や算数などを中心に、当該学年の前各学年の目標や内容に一部替えた指導、 いわゆる下学年適用である。必要に応じて、その教科の枠組みに縛られない指導もしている。 生活の自己管理にかかわる指導としての自立活動は時間割にはなく、その授業時数を算定しにくい。 しかし、C児の実態上、学校生活の中で生じるさまざまな状況に応じて行う指導がすべて自立活動に かかわってくる。 表3 C小学校の病弱学級の時間割
(4)自立活動の目標や内容等について 時間割上、自立活動はないが、すべての時間が自立活動であるといえるかもしれない。学校生活の あらゆる場面で、必要に応じた指導を随時行っている。目標は、危険回避の方法を知ることと集団活 動へのよりよい適応の仕方を学習することである。 (5)次年度に向けての課題について a.生活の自己管理の指導について 安心・安全な学校生活が何よりも大切である。骨折を繰り返すため、身体の機能もなかなか高まら ない。自分自身の身体の特徴を理解して、学校生活をより安全に過ごすために必要な知識や能力を獲 得できるように引き続き指導をしていきたい。 b.校内の他の特別支援学級や交流学級との共同学習について 交流学級の児童たちとの発達の差は現実的に広がりつつある。交流学級の児童たちはC児に対して、 さまざまな配慮をあたたかくしてくれる。しかし、交流学級との共同学習は、C児にとっては過剰な 負担となることもある。といって、当該病弱学級での授業では、一人学級ゆえのさまざまな制約もある。 そこで、他の特別支援学級との共同学習の機会をさらに重視した指導計画を工夫したい。 4.D小学校の病弱学級についてのD教諭による説明 (1)児童の実態について 2年生。必要な生活規制は運動の制限が主である。 「学校生活管理指導表(日本学校保健会)」の「軽い運動」は可能である。具体的には、比較的長時 間走り続けること、なわとびを5∼10回以上続けること、ボールゲームへの通常の参加、水泳で比較 的長時間息を止めること(潜水)などについては危険であるため、日頃から注意している。 適度な歩行は担当医師からも勧められていることもあり、校外学習や遠足では休息をとりながら比 較的長距離を歩く。ただし、体調の変化に対応するために、緊急の連絡・対応体制を整えたり、酸素 ボンベを持参したりしている。 寒さに敏感なため、教室内にはエアコンとストーブが設置されている。寒い日に、D児自身がストー ブの近くに机を運び、座って休息することもある。 血液凝固の機能の低下があるため、刃物を頻繁に使用する活動への参加には必要に応じて制限を加 えている。 (2)時間割表(表4)について 交流学級との共同学習の機会をより多く確保するために、交流学級の時間割に準じて時間割を作成 している。共同学習は、(D教諭の)付き添いを原則としている。 写真4 D小学校の病弱学級の教室
体育の授業については、運動制限があるため、他の児童たちと同じように活動できない。そのため、 体育で扱われる内容に応じて、交流学級の授業に一部参加、あるいは当該病弱学級の教室(写真4) での活動としている。当該病弱学級の教室でも軽い運動やゲームができるように、教室の後方を広く 使えるようにしている。 (3)各教科・領域にかかわる授業時数について 当該学年に準じた授業時数をおおむね確保している。体育を除く各教科・領域の目標と内容につい ては、当該学年に準じている。生活の自己管理にかかわる指導である、週あたり1単位時間分の自立 活動は、授業時数上、体育との調整となっている。 (4)自立活動の目標や内容等について 生活の自己管理についての指導目標は、自分自身の体調を知り、必要な対処ができるようになるこ とである。 指導内容については、「学校生活管理指導表(日本学校保健会)」に示されている運動メニューごと の運動負荷の違いや休息の必要性、気温に応じた衣服の調節の仕方、具合が悪いときには適切な表現 (「寒い」「だるい」「頭、痛い」「おなか、痛い」など)をすることなどを扱っている。これらの指導は、 この時間のみならず、学校生活のあらゆる場面で必要に応じて行っている。 (5)次年度に向けての課題について a.生活の自己管理の学習の促進について 主に「自立活動」に位置づけられるが、自分自身の身体の状態を理解して、担任以外のさまざまな 人に適切に表現できるようになることをねらいたい。体調の変化を周囲の大人が把握し続ける必要性 や比較的長期の入院生活などによりに、D児の周囲には保護者や他の大人が常にいるという状況が多 かった。そのため、同じ年代の集団の中では、どうしても受け身的・消極的な態度になりがちである。 そこで、D児が得意とすること、例えば昆虫を写生する能力を認めて、伸ばして、交流学級の児童 たちに示して、自信をつけさせるというような配慮をしていきたい。このような配慮を含めて、自分 自身の気持ちや自分自身の身体の状態を、担任には表現できるのだが、交流学級の友人やその他のさ まざまな人に表現できるように指導していきたい。 b.交流学級との共同学習の方法の見直しについて 特に体育の授業で要求される運動量について、学年進行に伴い交流学級の児童たちとの差が広がる 現状である。よりよい参加の仕方を、各授業ごとに工夫していきたい。 表4 D小学校の病弱学級の時間割
現在、体育を除く各教科について、交流学級との共同学習を積極的に行い、学年相当の目標・内容 に準じた指導を行っている。しかし、一部の教科でつまずきが生じつつある。取り出しての個別授業 の機会を増やすことを検討しなければならないであろう。 Ⅳ.考察 1.A小学校の病弱学級の教育課程の工夫について 生活の自己管理については、「自立活動の時間における指導」を、他の場面に意図的に反映させる「学 校の教育活動全体を通じて行う自立活動の指導」が機能している。 「領域・教科を合わせた指導」として生活単元学習を行っている。A教諭の説明のとおり、この時 間に「領域・教科を合わせた指導」というより、A児の実態に即した指導、領域・教科の枠組みを超 えた、またはその枠組みに縛られない指導がなされている。 2.B小学校の病弱学級の教育課程の工夫について B児およびその保護者からの強い希望である、交流学級との共同学習の機会をより多く確保してい る。共同学習の際にもB教諭の関与は必要であり、その意味では、同じ教室(場所)に通常の学級の 教育課程と病弱学級の教育課程とが相乗りしているとの解釈ができる。 B教諭の説明にもあるように、学年進行に伴ってさまざまな課題が生じることが予想される。教育 課程編成の際に、どの特例をいかに組み合わせるのか。より高度な調整作業が必要になる。 3.C小学校の病弱学級の教育課程の工夫について 生活の自己管理について、「自立活動の時間における指導」はないが、「学校の教育活動全体を通じて 行う自立活動の指導」がより意図的に実施されている。 「領域・教科を合わせた指導」として、生活単元学習が他の特別支援学級との共同学習にて行われ ている。通常の学級との共同学習の機会も確保されている。各教科の取り扱いについては、学習指導 要領に示された教育課程編成上の特例も利用されている。 4.D小学校の病弱学級の教育課程の工夫について 生活の自己管理について「自立活動の時間における指導」が確保されているが、「学校の教育活動全 体を通じて行う自立活動の指導」が重要な位置を占めている。 教育課程編成上の特例を多く必要としない実態の児童のため、D教諭の付き添いを原則として、交 流学級との共同学習が多く確保されている。その意味で、B小学校と同様に、同じ教室(場所)に通 常の学級の教育課程と病弱学級の教育課程とが相乗りしているとの解釈ができる。 文献 1) 古屋義博(2008)病弱学級の教育課程に関する事例研究.教育実践学研究(山梨大学教育人間科学部附属 教育実践センター研究紀要)、13、146-158. 2)文部科学省(2002)就学指導資料.文部科学省. 3)文部科学省初等中等教育局特別支援教育課(2008)特別支援教育資料(平成19年度).文部科学省. 4)全国病弱養護学校長会(2001)病弱教育Q&A(partⅠ:病弱教育の道標).ジアーズ教育新社.