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産業連関表の数理的な分析をめぐる話題について

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Academic year: 2021

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産業連関表の数理的な分析をめぐる話題について

Mathematical analysis of Input-Output Table

田村肇

1

Hajime Tamura

1

1

筑波大学図書館情報メディア研究科

1 Graduate School of Library, Information and Media Studies, University of Tsukuba

Abstract: The Input-Output Table summarize dealings between the industries of one country for one year

in the table, and it has been used in economic analysis for many years. The subject about mathematical analysis of this table is introduced.

1.はじめに

産業連関表は、国内経済において一定期間(通 常1年間)に行われた財・サービスの産業間取引 を一つの行列(マトリックス)に表した統計表で ある。5年ごとに関係省庁の共同事業として作成 されている 産業連関表は、我が国の経済構造を明らかにす る基礎統計として、経済の波及効果分析や予測、 国民経済計算などの経済統計の基準値として利 用されている。 産業連関表は、5年ごとに作成されるが、その 間をつなぐものとして、延長表が作成されている。 しかし、作成のたびに産業分類などに変更がある ため、これまではあまり長期間接続された産業連 関表は存在しなかった。そのため、産業連関表を 用いて、経済の中長期的なダイナミックスを明ら かにすることは難しかった。 最近になって、20年間に渡る(1980年~ 2000年)長期接続産業連関表が作成され、公 表されたため、利用が可能になった。 最近、このようなデータを用いた研究を始めた ので、どのような観点から研究を進めていくつも りかを、簡単に説明したい。

2.産業連関表の構造

産業連関表は、1936 年アメリカの経済学者 W.W. レオンチェフによって考案された。産業連関分析 による経済予測はその精度の高さと有用性が認 められ、広く世界で使われるようになった。レオ ンチェフは、その功績により 1973 年にノーベル 経済学賞を受賞した。 一国の国民経済を構成する各産業部門は、相互 に網の目のように結び付き合いながら生産活動 を行い、最終需要部門に対して必要な財・サービ スの供給を行っている。 ある産業部門は、他の産業部門から原材料や燃 料等を購入(投入)し、これを加工して別の財・ サービスを生産する(この時点で、労働、資本な どが投入される)。そして、その財・サービスを さらに別の産業部門における生産の原材料等と して、あるいは家計部門等に最終需要として販売 (産出)する。 このような「購入-生産-販売」という関係が 連鎖的につながり、最終的には各産業部門から最 終需要部門に対して必要な財・サービスが供給さ れて取引は終了する。 産業連関表は、このような取引を通じて最終需 要部門に至るまでに、各産業部門間でどのような 投入・産出という取引過程を経て、生産・販売さ 人工知能学会研究会資料 SIG-DMSM-A902-02 (10/18) 8

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れたかを、一定期間(通常1年間)にわたって記 録し、その結果を図のような行列(マトリックス) の形で取りまとめたものである。

3.産業連関表を用いた既存の分析

産業連関表は、通常、取引基本表、投入係数表、 逆行列係数表等で構成されている。 取引基本表は、各産業間で取り引きされた財・ サービスを金額で表示したものである。 投入係数は、取引基本表の中間需要の各列ごと に、原材料等の投入額を当該産業の生産額で除し て得た係数である。換言すれば、ある産業におい て1単位の生産を行う時に必要な原材料等の単 位を示したものである。 逆行列係数は、ある産業に対して1単位の最終 需要の変化があった場合、各産業の生産が究極的 にどれだけ変化するか、つまり、直接・間接の究 極的な生産波及の大きさを示す係数である。逆行 列を求める方法で算出することからこのように 呼ばれる。 このように逆行列係数表が求められれば(取引 基本表→投入係数表→逆行列表の順に求められ る)、最終需要の変化を与えれば、各産業の産出 額の変化を求めることができる。 日本の戦後の経済政策は、長らく、ケインズの 理論に基づく有効需要政策が中心であった。つま り、不況は需要不足が引き起こしている。そのた め、景気を回復するためには、財政政策を通して、 消費や投資といった最終需要を増やす必要があ ると考えてきた。政府の支出、あるいは減税の額 が分かれば、それが経済全体に及ぼす効果は産業 連関表を用いて予想することが可能になる。 また、オリンピック誘致の経済効果等が新聞で 公表されることがよくあるが、シンクタンクなど の推計値はもっと単純な方法が用いられること も多いが、産業連関表を用いれば、より精度の高 い見積もりを行うことが可能になる。

4.産業連関表を用いてこんな研究

ができる

4.1 高次元小標本データとして

の産業連関表

すでに述べたように、最近になって、20年分 の連続した産業連関表が容易に入手できるよう になった。 これまでは、せいぜい、3年分程度しか連続し た産業連関表が入手できなかったため、産業連関 表が表している経済構造のダイナミズムのよう なものを明らかにすることは難しく、単年度での 分析が中心であった。その意味では、このようは データが入手できるようになったことは経済学 的には画期的なことである。 しかし、視点を変えると、新たな困難に直面す る。 産業連関表は、通常、500前後の部門から構 成される。したがって、中間取引の部分のみに注 目しても500×500のマトリクスになり、非 常に高次元のデータとなる。単年度の産業連関表 を、ある確率的データ生成過程から得られた一つ の標本ともみなせば、データの次元が非常に高い 割には標本数は過小となる。 このような高次元小標本データの統計的分析 は、最近になって行われるようになったばかりで ある。また、このような分析でも、標本の数はも う少し多いのが普通である。 さらに、20年にも渡るデータであるため、途 中で経済に構造変化が起こっている可能性があ り、そう考えると、全ての標本データが同じ母集 団から採られたものではないかもしれない。その 場合は、標本数はさらに少なくなる。 このように、産業連関表データのダイナミズム の分析(時系列分析)を行おうとすれば、統計的 に異常な事態に直面することになる。 このような問題を解決する一つの方法は、次元 を圧縮することである。そのための一番単純な方 法は、部門の統合である。つまり、似たような産 業部門は集計して一まとめにする。このように集 計することで部門数を圧縮した産業連関表はこ 9

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れまでも普通に公表されてきた。 ただし、圧縮された産業連関表は、元の産業連 関表が表していた経済構造を正確には保存しな いことが以前から指摘されている。 このように、産業連関表の次元圧縮の問題は、 まだまだ研究の余地があると考える。

4.2 ネットワーク分析の観点か

らみると

産業連関表の中間取引の部分のみに注目する。 そうするとこのマトリックスは正方行列になる が、産業間の取引ネットワークの関係を表してい ることになる。したがって、この行列を隣接行列 とみなせば、そのままネットワーク分析の手法が 適用できる。 産業連関表を取引ネットワークとみなして、ネ ットワーク分析の手法を適用した例は、かなり以 前から社会ネットワーク分析におけるブロック モデリングの手法を用いた研究が有名である。 しかし、このような分析は、単年度の産業連関 表を用いて行われているので、時系列的な分析を 行うためには新たな手法の開発が必要である。 産業連関表は、そのまま用いれば、情報量が多 すぎると考え、産業連関表を0-1のマトリック スに変えて分析を行う方法も過去から行われて きた。このような分析は、旧来の産業連関分析の 枠組みでは、質的産業連関表の分析と呼ばれ、グ ラフ理論を用いた研究が有名である。 0-1マトリックスに変換する方法は、基本的 にはある特定の域値を超えたセルは1とし、それ 以下のセルは0とすることで行われる。この域値 の設定の仕方には、幾つかの方法が考案されてい るが、方法によって得られる0-1マトリクスも 異なってくるので、まだまだ検討の余地があると 思われる。 このように、産業連関表の中間取引マトリック スを0-1マトリックスに変換し、これを隣接行 列とみなし、重みづけのないネットワークのダイ ナミズムとして考えるのが、出発点としては一番 妥当かもしれない。

参考文献

[1]宮沢健一、『産業連関分析入門―経済学入門シ リーズ (日経文庫) 』、日経新聞社(2002年) [2] 朝倉 啓一郎、『産業連関計算の新たな展開』、 九州大学出版会(2006) 10

参照

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