漢
字
学
習
の
ー
考
察
ー
漢字
圏
以
外
の
外
国
人向
け
、
漢字
学
習
法1
日
本
人
の
み
な
ら
ず
世
界
の民
族
に
対
し
漢
字
・
仮
名
・
漢
字
仮
名
交
り
に
つ
いて
正
確
に読
み易
く
能
率
的
し
か
も
調
和
よ
く
書
写
す
る
指
導
技
能
の研
究
の中
、
第
一
着
手
とし
て
の漢
字
初
歩
学
習
と
し
て必
要
性
に
せ
ま
ら
れ
、
研
究
に踏
み
切
った
も
の
で
あ
る
。
文
教
大
学
言
語
文
化
研
究
所
研
究
員
T
R
U
D
Y
M
A
D
U
Z
(
トウルーデ
ィ
・
マ
ド
ウ
ッ
ッ
)
漢字学習の一 考察研
究
の動
機
文
字
の学
習
を
す
る
た
め
に
、
小
学
校
学
習
指
導
要
領
第
一
学
年
、
第
二
学
年
配
当
漢
字
(
教
育
漢
字
一
O
O
六字
)
の中
から
先
ず
、
最
も
基
礎
的
基
本
的
な
二
十
入
文
字
を
選
ん
で
、
漢
字
学
習
の
一
助
と
し
て
、
日
本
人
以
外
の外
国
籍
の方
に試
み
た。
な
ぜ、
こ
の二
十
入
字
を
選
ん
だ
か
と
いえ
ば
、
こ
れ
ら
の
文
字
の中
に
は
、
漢
字
楷書
の基
本
的
な
﹁
点
画
﹂
が含
ま
れ
て
いる
から
で
あ
る
。
﹁
点
画
﹂
に
は、
点
や横
画
・
縦
画
・
斜
め
画
な
ど
があ
る
。
ま
た
、
そ
れ
ら
の点
画
の長
短
・
方
向
・
間
隔
・
接
し
方
(
浅
い、
深
い
)な
ど
の組
み合
わ
せ
に
よ
り
字
形
が
形
成
さ
れ
る
。
点
画
に
は
、
始
筆
・
送
筆
﹁
そ
り
・
曲
が
り
・
折
れ
﹂
、
終
筆
﹁
止
め
・
は
ね
・
払
い
(
左
払
い
の方
向
の
四
系
統
・
右
払
い
の方
向
・
縦
払
い
・
そ
の他
の払
い
)
﹂
、筆
記
具
を
運
ぶ
際
に
生
じ
る筆
圧
(上
下
運
動
の強
弱
)
、
速度
(
遅
速
)な
ど
の筆
の
運
び
方
があ
る。
こ
れ
を
運
筆
と
いう
。
人
類
は
そ
の昔
、
意
志
の伝
達
は
手
ぶ
り
、
身
ぶ
り
か
、
か
た
こと
の発
声
だ
った
と
思
わ
れ
る。
や
が
て話
し
言
葉
が発
生
し
、
そ
のあ
と
、
記
録
を
残
す
た
め
、
あ
る
いは
遠
隔
地
へ
の
伝
達
手
段
と
し
て
どう
し
て
も
文
字
の
必
要
性
が生
じ
た
。
文
字
の目
的
は
、
内
容
を
伝
達
す
る
こ
と
が
でき
れ
ば
、
こ
と
足
り
る
わ
け
であ
る
。
そ
の目
的
が達
成
す
れ
ば
先
ず
、
そ
一175-文教大学 言 語 と文化 特集号
の第
一
段
階
は
終
わ
った
と
言
え
よ
う
。
し
か
し
、読
む
立
場
か
ら
は
、
読
み易
く
、
整
って
い
て、
誤字
が
な
く
、
さ
ら
に
気
持
ち
の上
で美
し
さ
を
感
ず
る
こ
と
を
誰
でも
欲
す
る
の
で
は
な
いだ
ろう
か。
そ
のた
め
に
、
整
った
文
字
を
書
く
こ
と
を
心
掛
け
ね
ば
な
ら
な
い。
そ
れ
に
は
、先
ず
、
基
礎
的
・
基
本
的
な
事
項
を
重
視
し
、
でき
る
だけ
そ
の
ルー
ツ
を
探
り
な
がら
、
大
綱
を
はず
さ
ず
文
字
の発
生
を
た
ど
り
つ
つ、
日本
文
化
の表
現
に意
を
用
い
な
け
れ
ば
な
ら
な
い。
漢
字
は
表
意
文
字
と
いわ
れ
、
漢
字
の成
り
立
ち
の巧
妙
さ
に気
付
き
な
が
ら、
漢
字学
習を
進
め
る
こと
の
必
要
性
を思
っ
て
、
こ
の研
究
を
進
め
て
み
た。
ま
た
仮
名
文
字
は
、
表
音
文
字
であ
り
、
日本
語
は
表
意
文
字
の
漢
字
と
、
表
音
文
字
の仮
名
と
を
交
え
て
使
用
す
る
こと
に
よ
っ
て、
日本
語
を
表
現
し
て
いる
。
そ
し
て
、
日本
文
化
と
と
も
に
日本
人
の心
に
一
体
と
な
って
、
﹁
道
﹂
の芸
術
と
言
わ
れ
る
ま
で
に築
き
上
げ
て
い
る
こと
に
は
、
た
だ
た
だ
驚
嘆
し
て
、
遂
に外
国
籍
であ
り
な
が
ら
、
と
り
つか
れ
てし
ま
った。
字
の
ル⋮
ツ
が
明
確
化
し
つ
つあ
るよ
う
で
あ
る。
漢
字
は
象
形
文
字
の代
表
と
し
て
、
世
界
文
字
文
化
の王
座
を
占
め
て
いる
こと
は言
う
ま
でも
な
い
。
す
で
に
史
的
に確
証
さ
れ
て
いる
も
の
で
、書
体
の変
遷
のあ
ら
ま
し
を
調
べ
て
み
る
と
、
﹃
書
源
﹄
の巻
頭解
説
の
と
こ
ろ
に
﹁
書
体
変
遷
表
﹂
が掲
載
さ
れ
て
いる
。
最
も
わ
かり
やす
く
表
解
さ
れ
て
いる
の
で
、
そ
れ
を
引
用
す
る
こと
とす
る。
[
書
源ほ
藤
原
鶴
来
編
二
玄
社
刊
P
・
一
四
凵
一174-書
体
に
つ
い
て
漢
字
の
発
生
は
五
千
年
前
と
も
三
千
年
前
と
も
言
わ
れ
、
さ
だ
か
で
は
な
い
。
し
かし
中
国
の新
発
掘
に
よ
り
、
次
第
に
漢
漢字学習の一考察 童日 體 繍 叉 遷 表 ( 編 者 書 ) 六 義 造 字 法 に象 形 . 指 示 . 會 意 . 形 聲 が あ り 使 用 法 に 轉 注 ( 樂 惡 ) ・ 假 借 (革 來 ) があ る、 之 を 六義 と いう 。 (年)(歩)(至)(女)(鹿) -⋮ ー 古 文 ( 殷 周 ) --ー ﹂ ■ ■ ロ コ コ ・ 龜甲 文 鐘 鼎 文 一 (秦 ) 篆 書 ( 秦 漢 ) 隸 書 ( 漢 ) 章 草 鹿 象 形 文 字 ● 頭 角 足 な ど の形 を 象 つて いる。 女 象 形 文 字 ● 婦 人 が膝 を 屈 し 手 を 組 ん で いる 形 を 表 わ し て い る。 至 指 示 文 字 ●鳥 が高 處 か ら飛 び 下 り て 地 に 來 る意 を指 示し て いる 。 歩 會 意 文 字 ● 止 は 足 の 形 兩 足 を 書 い て 歩 む意 を 表 わ し て い る。 年 形 聲 文 字 ● も と 禾 と 干 の 合 字 、 禾 は 一 年 に 一 度 み のる 五 殻 を 表 わ し 干 は 音 符 であ る。
圜
楷 書 ( 漢 六朝 ) ( 漢 六朝 ) 草 書 (漢 六 朝 ) 行 書 (卒安朝) 卆假 名 ( 卒安 朝 ) 片 假名 一173一文教 大学 言語 と文化 特集 号
漢
字
楷
書
の学
習
法
と
し
て
、
学
習
の基
準
に
な
る文
字
を
第
一
に挙
げ
な
け
れ
ば
な
ら
な
い
。
そ
の基
準
に
す
る文
字
を
ど
のよ
う
にす
る
か
が
、重
要
な
問
題
とな
って
く
る
の
であ
る。
こ
の基
準
文
字
とし
て
、
現
代
の
日本
に
お
け
る
最
高
の
理
想
的
標
準
文
字
を
ベ
ー
ス
にす
る
こ
と
が
、
学
習
者
に
と
っ
て
は
、
生
涯
の岐
路
とも
な
り
か
ね
な
い
。
そ
のた
め
に
、
い
ろ
い
ろ
の
研
究
の結
果
、
中
国
の
初
唐
時
代
の欧
陽
詢
(
おう
よう
じ
ゅ
ん
)
[
中
でも
九
成
宮
醴
泉
銘
(
き
ゅう
せ
い
き
ゅ
う
れ
い
せ
ん
め
い
)を
中
心
と
し
て
]
お
よ
び虞
世
南
(ぐ
せ
い
な
ん
)
[
孔
子
廟
堂
碑
(
こ
う
し
び
ょ
う
どう
の
ひ
)を
中
心
と
し
て
]
の筆
跡
を
主
と
し
て、
そ
れ
に近
いも
のを
与
え
る
こ
と
がよ
い
の
では
な
いか
と
い
う
結
論
に到
達
し
た。
各
文
字
に
つ
いて
の発
達
変
遷
の過
程
を
た
ど
り
な
が
ら
、
最
終
的
に
は
、
未
熟
で
は
あ
る
が
、
自
分
の理
想
とす
る
方
向
に努
力
し
て小
字
の
﹁
毛
筆
﹂
と
、硬
筆
代
表
と
し
て
﹁
鉛
筆
﹂
に
依
る
文
字
を
併
記
し
て
お
いた。
※
文
字
の古
典
資
料
に
つ
いて
は
紙
面
の
関
係
で原
寸
の八
十
四
パ
ー
セ
ン
ト
と
な
っ
た
こ
と
を
こ
と
わ
って
おく
。
一172-一
漢字学習の一考察↓
﹃
ζ
音 ー イ チ ・イ ッ 訓 11 ひ と 、 ひ と つ ひ と つ の横 線 で 、 数 の ﹃ ひ と つ﹄ と いう 意 味 を 表 す 。 ロー マ数 字 では 縦 に ー と 引 く が 、 ﹃ ひと つ ﹄ の棒 で表 し た こ と は縦 横 の示 し 方 の違 い で は あ る が 、 考 え方 は 同 じ であ る 。 ア ラ ビア 数 字 の ー も 、 同 じ 成 り 立 ち であ る。 特 別 な 読 み 方 11 一 日 ( つ いた ち ) 一 人 ( ひ と り ) 三 十 一 文 字 ( み そ ひ と も じ )ー 短 歌 一171一文教 大学 言語 と文化 特集号
1
﹃
二
﹄
音 1ー 二 訓 皿 ふた 、 ふ た つ ふ た つ の横 線 で ﹃ ふ た つ﹄ と いう 意 味 を 表 す 。 ロー マ数 字 で は H と書 く 。 ア ラ ビア 数 字 の ﹃ 2﹄ は 、 ふ た つ の横 線 の ﹃ 二﹄ を つな い で ﹃ Z﹄ と な った よう に 考 え た も のも あ る が縦 書 の 思 想 と 横 書 思 想 と が混 同 し て いる き ら い はあ る。 特 別 な 読 み方 ー 二 日 ( ふ つか ) 二 十 日 ( は つか ) 二 人 ( ふ た り ) 二 十 ( は たち ) 二 十 歳 ( は た ち ) 十 重 二 十 重 ( と え は た え ) ・ 一170一φ
一
一
﹃
三
﹄
音 ー サ ン 訓 ー み 、 み つ 、 み っ つ ﹃ み っ つ﹄ の横 線 で 、 ﹃ み っ つ ﹄ と い う 意 味 を 表 し た字 で あ る 。 ロ⋮ マ数 字 の mも 同 じ で あ る 。 ア ラ ビア 数 字 に つ いて は 六 ペー ジを 参 考 に さ れ た い。 特 別 な 読 み 方 ー 三 味 線 ( し ゃ み せ ん ) 三 十 一 文 字 ( み そ じ ひと も じ )1 短 歌 漢 字学習の一考察↓
↓
↓
文教 大学 言語 と文化 特集号
﹃
土
﹄
音 1ー ト ・ ド 訓 ー つ ち ﹃ つち ﹄ の中 から 草 が芽 を 出 し た 姿 を 表 し た も ので 、 ﹁ つ ち ﹂ の こ とを 表 し た象 形 字 であ る。 人 は この ﹃ つち ﹄ の上 に住 ん で いる ので 、 ﹃ 人 の住 ん で いる所 ﹁ 土 地 ﹂ ﹁ 郷 土﹂ ﹄ や ﹃ 国 土 ﹄ な ど の意 味 に 使 わ れ て い る。 特 別 な 読 み 方 ー 土 産 ( みや げ )1
圜
1
1
.:漢字学習 の一 考察
上
﹃
上
﹄
↓
↓
音 ー ジ ョ ウ ・シ ョ ウ 訓 11 う え . う わ .か み ・ あ が る 、 あ げ る ・の ぼ る 、 の ぼ す 、 の ぼ せ る i 基 準 (も と ) にな る線 から ﹁ 上﹂ の方 に 印を 示し 、 ﹃ こち ら の方 です よ﹄ と 言う 意 味 で、 ﹁ ﹂ の印 を付 け たも ので ﹃ う え﹄ と 言う 意 味を 表 し た字 であ る。 ﹁ 土 ﹂ と いう字 と 形 がよ く似 て いるが 、区 別す るた め には ﹁上 ﹂ と いう 姿 で書 か なけ れ ばな ら な い。 ﹁ 上﹂ と い う こと は ﹁ 高 い ﹂ と い う こと でもあ る か ら、 ﹃ の ぼ る﹄ 、 ﹃あ が る﹄ と い う 意 味 にも な っ た。 ま た、 ﹁ 上 昇﹂ ﹁ 上達 ﹂ のよう に ﹃ のぼす ﹄ ﹃ のぼ せ る﹄ ﹃あ げ る﹄ と いう 意味 にも使 わ れ たり、 ﹁ 上役 し ﹁上 様 ﹂ ﹁ 上手 ﹂ のよ う に ﹃ 身 分 が高 い ﹄ ﹃ すぐ れ て いる﹄ と い う 意 味 に も使 わ れ る。 特 別 な 読 み 方 ー 上 手 ( じ ょ う ず ) 上 手 ( か み て ) 1 芸 能 舞 台 用 語一
一167一文教大学 言語 と文化 特集 号
下
﹃
下
﹄
d
音 1ー カ ・ ゲ 訓 ー し た ・し も ・ も と ・ さ げ る 、 さが る ・ お り る 、お ろ す ・ く だす 、 く だ る 、 く ださ る 基 準 ( も と ) に な る 線 か ら ﹃ 下﹄ の方 に 印 を 示 し 、 ﹃ こち ら の方 です よ ﹄ と 言 う 意 味 で ﹃ 一 ﹄ の印 を つ け た字 で ﹃ し た ﹄ と いう 意 味 を 表 し た も の であ る。 ﹃ し た ﹄ と いう こと は ﹁ ひ く い ﹂ と い う こ と でも あ る の で 、 ﹃ おり る﹄ ﹃ く だ る﹄ ﹃ さ が る ﹄ と いう 意 味 も あ る。 ま た 、 ﹃ お ろ す ﹄ ﹃ く だす ﹄ ﹃ さ げ る﹄ と い う 意 味 にも 使 わ れ る 。 さ ら に 、 ﹃ お と っ て いる 11 下 劣 ( ゲ レ ツ ) ﹄ と いう 意 味 の言 葉 とし て使 わ れ る。 特 別 な 読 み方 ー 下 手 ( へた ) 下 手 ( し も て )ー 芸能 舞 台 用 語 r 一166一漢 字学習の一考察
﹃
王
﹄
音 1ー オ ウ 訓 ﹁ 天 ﹂ と ﹁ 地 ﹂ と の問 に 生 き て 生 活 し て い る 人 々の 中 で、 両 手 両 足 を 広 げ て 立 って いる 偉 大 な 人 であ る ﹃ 王様 ( オ ウ さ ま )﹄ を 表 し た 象 形 字 であ る。 ﹁ 国 で 一 番 偉 い人 ﹂ ﹁ 国 を 治 め る 人﹂ の こ と で あ る が、 ﹃ そ の みち で 、 一 番 す ぐ れ た 人﹄ の こ と の 意 味 に も使 う 。 例 え ば 、 ﹁ 陸 の王 者 ﹂ と 言 え ば ﹃ 陸 上 競 技 場 で 一 番 す ぐ れ て い る者 ﹄ と いう 意 味 であ るし 、 ﹁ 発 明 王﹂ と言 え ば ﹃ 発 明 に かけ て は並 ぶ者 の無 い人﹄ と いう こと に な る 。1
一
H
一165文教大学 言語 と文化 特 集号
玉
﹃
玉
﹄
↓
↓
音 1ー ギ ョク 訓 ー た ま た く さ ん の 意 味 を 表 す ﹁ 三 つ﹂ の ﹃ 玉 ﹄ を 紐 で通 し た 形 の象 形 字 で あ る。 ﹃ 固 く て美 し い石 ﹄ ﹃ 宝 石 ﹄ を 表 し た 字 で 、 ﹃ 玉 ( ギ ョ ク ) ﹄ と 言 っ た が 、多 く は 磨 い て ﹁丸 い玉 ﹂ に 作 る の で 、 ﹃ た ま ﹄ と いう 言 い 方 を す る よ う にな っ た。 こ の こ と か ら 、 ﹃ 丸 い 物 ﹄ の 意 味 に 使 わ れ る 。 ま た 、 金 科 玉 条 ( キ ン カ ギ ョ ク ジ ョウ ) の よう に 、 ﹃ 美 し く 立 派 な も の ﹄ の意 味 に 使 う こ と も あ る 。 古 い字 形 は ﹃ 王 ﹄ であ った が 、 ﹁ 王 ( オ ウ ) さ ま ﹂ の ﹃ 王 ﹄ と 区 別 が つ か な い の で 、 ﹃ た ま ﹄ の 印 の ﹁ 、 ﹂ を つけ て ﹁ 玉 ﹂ と し た 。 し か し 、 ﹁ へん ﹂ の時 は ﹁ 王 ﹂ で ﹁ ご を 付 け な い。 読 む 時 は 、 ﹃ 王 ( オ ウ ) へん ﹄ と 言 わ な い で 、 ﹃ 玉 ( た ま ) へん ﹄ と 言 う 。 [ 理 ・現 ・ 班 ・ 珪 ・ 琳 ・ 玩 ・環 ・珈 ・ 琉 球 ・ 瑠 璃 ⋮ ⋮ ] 一164一漢字学 習の一 考察
日
﹃日
﹄
丘 日 羅 ニチ ・ジ ツ 訓 11 ひ ・か↓
太 陽 の形 を 表 し た象 形 字 で、 ﹃ お 日さ ま ﹄ の 意 味 を 表 し たも の であ る。 中 の ﹁・ ﹂ は 、 丸 が た だ の ﹃ わ っか ﹄ では な く て 、 ﹁ お 日 さ ま ﹂ であ る こと を 表 し た印 であ る。 昔 は ﹁ と き ﹂ は 、 お 日 さ ま の動 き で測 った。 そ れ で ﹁ とき ﹂ は ﹁ 時 ﹂と いう 字 であ る 。 日 の出 か ら 次 の日 の出 ま で の ﹁ 時 の長 さ﹂ を ﹃一日﹄ と 言う 。 こ の ﹃ 日﹄ に 、 今 で は ﹁ 日 曜 ﹂ から ﹁ 土 曜 ﹂ ま で 七 つ の名 前 が 付 け ら れ て いる 。 ま た 、 ﹃ 昼 間 ﹄ の意 味 に使 う こ と もあ る。 特 別 な 読 み方 ー 明 日 ( あす ) 昨 日 ( き のう ) 今 日 ( き ょう ) 一 日 ( つ いた ち ) 二 日 ( ふ つか ) 二 十 日 ( は つか )↓
↓
一163 一文教 大学 言語 と文化 特集号
目
﹃
目
﹄
↓
囿
↓
音 ー モ ク ・ボ ク 訓 ー め ・ ま 目 の形 を か た ど った 象 形 字 であ る が 、も と も と ﹃ 目 ﹄ は Φで 、 そ れ を 縦 にし た も の であ る 。 ﹃ 目 ( め ) ﹄ と いう 意 味 を 表 す 。 ﹃ 目 ﹄ は物 を 見 る 器 官 だ か ら 、 ﹃ 見 る ﹄ と いう 意 味 や ﹃ 物 を 見 通 す 力 ﹄ と いう 意 味 にも 使 わ れ る 。 例 え ば ﹁ 目 が 利 く ﹂ と いう 言 い方 が これ であ る。 ま た 、 ﹁ 網 の 目﹂ ﹁ 碁 盤 の目 ﹂ ﹁ 筋 目﹂ ﹁ 木 目 ﹂ な ど の使 い方 も あ る 。 ﹃ 目 ﹄ は人 にと っ て最 も 大 切な と ころ だ か ら 、 ﹃物 事 の 一 番 大 切 な と ころ ﹄ の意 味 に使 う こ とが あ る。 [ 眼 目 ( ガ ンモ ク ) ]さ ら に、 ﹁ 目 指す ﹂ ﹁ 目 当 ( め あ て ) ﹂ な ど 、 ﹃ こ ころ ﹄ の意 味 にも 使 わ れ る こと が あ る 。↓
一162一漢字 学習の一考察
口
﹃
口
﹄
金文代 用
音 1ー コ ウ ・ク 訓 ー く ち1
人 の ﹃ 口 ﹄ の形 を 表 し た象 形 字 で 、 ﹃ く ち ﹄ と い う 意 味 の字 であ る。 ま た 、 ﹁ ロ か ら 出 る ﹃ 言 葉 ﹄ ﹂ と いう 意 味 に も使 う 。 ﹁ ひ と かず ( 人 数 )﹂ の こ とを ﹁ 人 の 口﹂ と書 い て、 ﹁ 人 口﹂ と 言う が 、 そ れ は、 ﹁ひ と かず ﹂ の こと を ﹁ く ち かず ﹂ と も 言 った か ら であ る。 ま た 、﹃ いり く ち ( 入 り 口) ﹄ と いう 意 味 にも 使 わ れ る 。 口 が ﹁ 食 物 の ﹃ 入 り 口﹄ ﹂ だ か ら であ る。 ﹁ 口絵 ( く ち エ) ﹂ は 、本 の は じ め ( い りく ち ) の と こ ろ に の って いる絵 の こ と であ る 。 こ のよ う に 、 ﹃ 口﹄ は ﹃ 物 事 の 初 め ﹄ と いう 意 味 にも 使 わ れ る 。1
↓
一161一文教大学 言語 と文化 特集 号
﹃
田
﹄
田
音 ー デ ン 訓 11 た き ち ん と 四 角 に区 画 さ れ た ﹃ た ん ボ﹄ の形 を か た ど った 象 形 字 で 、作 物 を栽 培 し 収 穫 す る た め の ﹃ 田﹄ や ﹃ 畑 ﹄ を 表 し た 字 であ る。 日 本 で は 、 ﹃ 稲 ( 米 )を 作 る と ころ ﹄ の意 味 の ﹁ 水 田﹂ を 表す の に 使う 。 ま た、 ﹁ 産 物 のと れ る と こ ろ ( 作 物 以外 の物 )が と れ る と こ ろ﹂ でも 、 ﹁ 塩 田﹂ ﹁ 炭 田﹂ ﹁ 油 田 ﹂ な ど のよ う に ﹃ 田 ﹄ と 言う 。 変 遷 ( ヘ ンセ ン) の ひど い例 え に ﹁ 桑 田変 じ て 海 と な る ﹂ と 言 う よ う な 使 い方 を す る こと も あ る。 日 本 では 、 ﹁ 稲 以 外 の作 物 を 作 る と こ ろ ﹂ は ﹁ 畑 ﹂ と言 う が 、 中 国 に は、 ﹁ 畑 ﹂ と い う 字 は な く て、 ﹃ 作 物 を 作 る と こ ろ﹄ はす べて ﹃ 田 ( デ ン) ﹄ と 言 った。 特 別 な 読 み方 11 田舎 ( いな か )一
`一160-﹃
七
﹄
音 ー シ チ 訓 ー な な 、 な な つ、 な の 針 の先 が ﹃ 切 断 し た ( 折 れ る ) ﹄ と いう 形 の字 で 、 ﹃ 切 る ( き る ) ﹄ の 元 の字 であ る 。 ﹃ 針 ( 十 ) ( ジ ュ ウ )﹄ の三 分 ( ブ )が 欠 け て、 七 分 ほ ど残 っ た 形 で、 ﹃ な な つ﹄ の 意 味 を 表 す 。 特 別 な 読 み 方 11 七 夕 ( た な ば た ) 漢字学 習の一考察↓
1
一159一 」文教大学 言語 と文化 特集号
十
﹃
十
﹄
1
音 1ー ジ ュ ウ 、 ジ ッ 訓 11 と お 、 と も とは 、糸 を通 し た針 の形 を表 した も ので 、﹁ 針﹂ と いう意 味 の字 であ る。 数 を表 す字 は 、コ ﹂ ﹁ 二﹂ ﹁ 三﹂ な ど のう ち は簡 単 に作 れ る が、 数 が大 きく な る とな かな か う まく 作 れな い 。 ﹃ ジ ュウ﹄ も そう であ る。 こう い う 時 には 、 た いて い 同 じ ﹁音 ( オ ン) ﹂ の言 葉を 借 りて作 る。 これを ﹃仮 に借 り る﹄ と いう 意味 で ﹁仮 借 ( カ シ ャク )﹂ と言 う。 漢 字 の造 字 法 で ﹁ 六書 ﹂ と い う 中 に、 造 字法 の 一 種 に ﹁ 仮借 ﹂ とあ るが 、 これ だけ は ﹁ カシ ャ﹂ と 読む 。 ﹁ はり ﹂ と ﹃ ジ ュ ウ ﹄ は、中 国 で は同 じ音 であ った。 そ れで ﹃ 十﹄ を ﹃ ジ ュ ウ ﹄ の意 味 に使う よ う にな っ た。 と ころ が 、 ﹁十 ﹂ が ﹃ 針﹄ と い う 意 味 と、 数 の ﹃ ジ ュ ウ ﹄ と いう 意味 に使 われ た の で、大 変 ま ぎら わし く な った ので 、﹃ は り﹄ を 表す 字 に は ﹁ 金 へ ん ﹂を 加 え て ﹁ 針 ﹂ とす るよ う に な った。 特 別 な 読 み 方 11 二 十 日 ( は つか ) 二 十 ( は た ち ) 二 十 歳 ( は た ち ) 十 重 二 十重 ( とえ は た え ) 十 八 番 ( お は こ )i 歌 舞 伎 用 語 三 十 一文 字 ( み そ ひ と も じ ) -短 歌1
158一漢字 学習の一考察
囲
﹃
千
﹄
音 1ー セ ン 訓 ー ち 昔 は 人 の形 を 書 い て 、 そ れ で ﹃ 百 の十 倍 のか ず ﹄ を 表 し た 。 ﹃ 千 ﹄ は 、 人 の形 ( イ ) に ﹃一 ﹄ を 加 え て コ せ ん ( ﹃ せ ん﹄ が 一 こ ) L と い う 意 味 で作 ら れ た 字 であ る。 だ か ら 、 ﹃ 二 せ ん﹄ は ﹃ 手 ﹄ と 書 き 、 ﹃ 三 ぜ ん﹄ は ﹃ 畢﹄ と 、 一 字 で これ を 表 し た。 今 は 、 ﹃ 二千 ﹄ ﹃ 三 千 ﹄ と 書 く 。 多 い数 の単 位 な の で 、 ﹃ 非 常 に数 が お お い ﹄ こと を 表 す の に 使う 。 日 本 では ﹁ 千 草 ( ち ぐ さ ) ﹂ な ど の よう に 、 ﹃ ち ﹄ と いう 言 葉 で 、 こ れを 表 し た。H
一157一文教大学 言語 と文化 特集 号
山
﹃
山
﹄
甲骨文代用
↓
1
音 ー サ ン 訓 11 や ま ﹃ や ま﹄ の形 を か た ど り 、 山 の意 味を 表 し た象 形 字 であ る。 ま た、 ﹃ や ま ﹄ のよう に ﹃ 高 く 積 み重 な って いる も の﹄ の意 味 に も 使 わ れ る。 ﹃ サ ン﹄ は漢 音 で 、 呉 音 は ﹃ セ ン﹄ であ る 。 呉 音 は 、 ﹁ 大 山 ( ダ イ セ ン )﹂ や ﹁ 須弥 山 ( シ ュミ セ ン) ﹂ な ど のよ う に 固有 名 詞 に わず か に使 わ れ て いる だ け であ る 。 特 別 な 読 み方 ー 山車 ( だ し )1
一156一丿
漢字学習の一考察﹃
川
﹄
音 ー セ ン 訓 ー かわ ﹃ か わ﹄ の水が流 れて いる様 子を三本 の 線 で表し た象 形字 で、﹃ 川﹄と い う意 味 の 字 であ る。 ﹃ かわ﹄ を表し た字に ﹁ 河﹂と い う 字がある が、﹃ 川 ﹄ よりも ﹁ 大き いかわ﹂ ﹁ 長 いかわ﹂に使 う のが普通 である。 日本 のよ う に 土地の狭 い 国 には ﹁ 川﹂だけ しかな い [ 信濃 川 ・ 利根 川 ・ 熊野 川 ・ 石狩 川] 。 中国 のような大 陸に ﹁ 河﹂が存在す る [ 黄 河 ・ 遼 河 ・ 長 江 ( 揚子 江) ・ 西 江] 。そ れ で、大 き い河、小 さ い川、 いろ い ろ な ﹃ かわ﹄を 合わ せて、 ﹁ 河川 ( カ セ ン) ﹂ と言う。 ﹃ かわ ﹄ の 音 の ﹁ セ ン ﹂ は、﹃ 地を 穿 ( う が) って ( 突き 抜 いて ) 流 れる﹄ と い う意 味 の ﹁ 穿 ( セ ン)からき て いる。 特 別 な 読 み方 11 川 原 ( か わ ら )↓
1
一155一文教大学 言語 と文化 特集号
中
﹃
中
﹄
1
1
音 ー チ ュウ 訓 11 な か 物 の 真 ん 中 に 線 を 引 いて ﹁ こ こ が ﹃ ま ん な か﹄ です よ ﹂ と 概う こ と で、 ﹃ 真 ん 中﹄ と いう 意 味 を 表し た字 であ る。 ﹃ 中 ﹄ と い う こ と か ら 、 ﹃ 中 程 ( な か ほ ど )﹄ ﹃ 途 中 ﹄ ﹃ あ る 範 囲 内 ﹄ と いう 意 味 にも 使 わ れ て いる。 ま た 、字 の 形 が ﹁ 真 ん 中 を 線 が貫 い た 形﹂ を し て い て、 矢 が真 ん 中 に 当 た っ た よ う に 見 え る の で 、 ﹁ 命 中 ﹂ ﹁ 中 毒 ﹂ のよ う に ﹃ あ た る ﹄ と いう 意 味 にも 用 いら れ て いる 。1
圃
一154一漢字学 習の一考察
1
﹃
八
﹄
音 1ー ハチ 訓 ー や 、 や つ 、 や っ つ ・よ う 一 本 の棒 を 二 つ に分 け た 形 ( 一つ のも のが 二 つに 分 か れ た 形 )を 表 し た 字 で、 ﹃ 分け る ﹄ と いう 意 味 の 字 で あ る 。 ﹃ 八 ﹄ は 二 つに 分 け る と ﹁ 四 ﹂ 、 さ ら に 分 け る と ﹁ 二 ﹂ 、 さ ら に 分 け る と コ ﹂ とな る よ う に 、 十 ま で の数 の中 で、 最 も 多 く 二 つに 分 け ら れ る数 であ る。 そ れ で、 分 け る 印 の ﹃ 八 ﹄ で ﹃ ハチ ﹄ を 表 し た の であ る。 ま た 、 ﹃ 多 い﹄ と いう 意 味 に も 使 わ れ る。 特 別 な 読 み方 ー 八 百 屋 ( や お や ) 八 百 長 ( や お ち ょ う ) 十 八番 ( お は こ )i 歌 舞 伎 用 語1
1
団
一153一文教大学 言語 と文化 特集号
人
﹃
人
﹄
立 日 踊 ジ ン ・ ニ ン 訓 11 ひ と 人 の立 っ て い る 形 を 表 し た 象 形 字 で、 ﹃ ひ と ﹄ と いう 意 味 の字 であ る 。 ま た 、 人 を 数 え る と き に ﹁ 五 人 、 六 人 、 七 人 ⋮ ﹂ と 言 う よ う に 使 わ れ る 。 特 別 な 読 み 方 11 大 人 ( お と な ) 一 人 ( ひ と り ) 二 人 ( ふた り ) 素 人 ( し ろ う と ) 玄 人 ( く ろ う と ) 仲 人 ( な こう ど ) 若 人 ( わ こう ど )↓
一
一
一152一(46)
漢 字学習の一考察
﹃
大
﹄
音 1ー ダ イ 、 タ イ 訓 1ー お お 、 お お き い 、 お お い に 人 が 両手 両 足 を広 げ た 形 を表 し た字 で 、 ﹃ お お き い﹄ こ とを 表 現 し た字 であ る 。 こ う いう 構 成 の字 は 象 形 的 であ る が 、 意 味 が 人 で はな く て 大 き い ﹃ こ と﹄ を 表 す の で 、 象 形 字 と は 言 わ ず に指 事 の 文字 と 言 う 。 ﹃ お おき い ﹄ と い う 意 味 か ら 、﹃ 多 い﹄ ﹃ 豊 か﹄ ﹃ 力 が 強 い﹄ ﹃ 大 切﹄ ﹃ 立 派 ﹄ な ど の 意 味 にも 使 わ れ て い る。 ま た 、 ﹁ 態 度 が 大き い﹂ 1 ﹃ いばる﹄ と いう 意 味 や 、 ﹁ 大 勢 ( タイ セイ ) ﹂ のよう に ﹃ 全 体 的 ﹄ と い う 意 味 に も 使 わ れ る。 ま た 、 ﹁ 大 勢 ( お お ゼ イ ) ﹂ とも 読 み 、 人 数 の多 い こ と に使 わ れ る 。 特 別 な 読 み方 ー 大 人 ( お と な ) 大 和 絵 ( や ま と え ) 大 和 魂 ( や ま と だ ま し い )↓
國
↓'一
冖
r文教大学 言語 と文化 特集 号
1
↓
﹃
木
﹄
音 ー ボ ク ・モ ク 訓 11 き .こ 木 の形 を か た ど った象 形 字 で、 ﹃ 木 ﹄ と いう 意 味 を 表 し た字 であ る。 枝 の部 分 よ り も 、 目 に 見 え な い根 元 の方 が大 き く 表 さ れ て いる と こ ろ に 、 深 い意 味 が感 じ ら れ る。 ﹁ 木 刀 ﹂ な ど のよ う に 、 ﹁ 木 で作 ら れ た物 ﹂ も ﹃ 木 ﹄ と言 う 。 ﹃ ボ ク ﹄ は 漢 音 で 、﹃ モク ﹄ は呉 音 ( 古 い音 ) であ る。 ﹃ 木 ﹄ の訓 は 、 ﹃ き ﹄ だ が、 熟 語 にな る と ﹁木 の葉 ﹂ や ﹁木 陰 ﹂ ﹁ 木 立﹂ のよう に ﹃ こ﹄ と 変 わ る の が普 通 で あ る。 特 別 な 読 み方 ー 木 綿 ( も め ん )冖
一150一漢字学 習の一考 察
、
ノ
1
↓
﹃
小
﹄
音 ー シ ョ ウ 訓 ー ち い さ い 、 こ 、 お 古 い字 の形 は 、 小 さ な 点 三 つで 表 さ れ て いる が 、 今 の形 か ら 見 れ ば 、 一つ の物 ( ー ) を 分 け る ( 入 ) こと を 表 し た 字 と 見 た方 が わ か り 易 いよう で あ る。 ﹁ 物 を ﹃ ち いさ く す る ﹄ こと ﹂ を 表 し た のも の であ る 。 ま た 、 ﹁ 小 作 ( こサ ク ) ﹁ 小 心 ( シ ョウ シ ン) ﹂ ﹁ 小 人 ( シ ョウ ジ ン) . 六 こび と ) ﹂ の よ う に ﹃ ち いさ い﹄ こと 、 ﹃ わず か な も の﹄ ﹃ つま ら な いも の﹄ や ﹃ お さ な い﹄ と いう 意 味 にも 使う 。 ﹁ 小 生 ( シ ョウ セイ ) ﹂ のよう に 、 ﹃ 自 分 を へり く だ って言 う ﹄ 使 い方 も あ る 。 特 別 な 読 み 方 ー 小 豆 ( あ ず き ) 小 雨 ( こ さ め ) 小 夜 時 雨 ( さ よ し ぐ れ ) 一149文教大学 言語 と文化 特集号
プ
﹃
水
﹄
音 ー ス イ 訓 ー みず 川 の ﹃ み ず ﹄ の流 れ る姿 を 表 し た 象 形 字 でハ ﹃ み ず ﹄ と い う 意 味 を 表 し た字 であ る。 海 や 川 や 池 な ど ﹁ 水 の あ る所 ﹂ を ﹁ 水 辺﹂ ﹁ 水 郷 ﹂ のよ う に ﹃ みず ﹄ と言 う こ とが あ る。 ﹃ 水 の よう な も の﹄ ﹃ 液 体 ﹄ と いう 意 味 で、 ﹁ 水 銀 ﹂ と 言う 使 い方 も す る。 ま た 、 ﹁ 水 星 ﹂ と 言 っ て ﹃星 ﹄ の名 前 に 使 わ れ た り 、 ﹁ 水 曜 日﹂ と 言 って ﹃ 日 ﹄ の名 前 に 使 わ れ て いる。 ﹁ 水 曜 ﹂ と は ﹃ 水 星 ﹄ の こと だ か ら 、 ﹁ 水 曜 日﹂ と は ﹃ 水 星 の 日﹄ と い う 意 味 の言 葉 で あ る 。↓
↓
岡
d
148
漢字学 習の一 考察
d
﹃
月
﹄
音 ー ゲ ツ、 ガ ツ 訓 ー つき 月 の形 を か た ど った象 形 字 で、 ﹃ お 月 さ ま ﹄ の意 味 を 表 し た も の であ る。 月 は ま ん丸 い形 が 毎 晩 欠 け て い き 、す っか り 黒 く な る と 、 今 度 は 段 々 ふく ら ん で い き 、 ま た ま ん 丸 く な る。 こ の 間 が 三 十 日 か か る ので 、 三 十 日 を ﹃一 月 ( ひ と つき ) ﹄ と言 う 。 昔 の暦 は 、. 月 の 満 ち欠 け を 基 に し て 作 った ので 、 月 の 形 で 日 日 ( ひ ニチ ) が わ か った。 満 ち は じ め が 、 ﹃ 月 た ち ﹄ と いう 意 味 で ﹁ 一 日 ( つ いた ち ) ﹂ で、 ま ん丸 にな る の が十 五 日、 真 っ 黒 に な る の が三 十 日 で あ った 。 ﹃ ガ ツ ﹄ は 呉 音 で、 ﹃ ゲ ツ﹄ は 漢 音 であ る。 特 別 な 読 み方 ー 五 月 晴 ( さ つき ば れ ) 五 月 雨 ( さ み だ れ V門
門
一147一文教 大学 言語 と文化 特集号
↓
﹃
力
﹄
音 暫 リ キ 、 リ ョ ク 訓 11 ち か ら 腕 の形をか たど った 字 で、﹃ 腕 の力﹄﹃ 腕 力 ( ワ ン リ ョク) ﹄ の 意 味を表し た指事 の文字 で あ る。 昔 は、 腕力 は大層 必要な力 であ っ たか ら、 この字 で ﹃ ち から﹄ と い う意 味を表 した のでし ょ う 。 ﹃ 体 の力1 1 体力﹄ ﹃ 知恵 の力1 1 知力﹄ そ の 他 ﹃ 気 力﹄﹃ 権 力﹄ な ど い ろ い ろな 力 の 意 味 に 使 う。 ま た、﹃ 力 を尽 くすー つ と める﹄ ことと いう意 味にも 使わ れ る 。 ﹃ リキ ﹄は 呉音 で、﹃ リ ョ ク﹄ は漢音 であ る。 ﹁ 強力﹂ は ( キ ョ ウ リ ョ ク)と読 むと ﹃ 強 い 力﹄ と い う意味 である が、( ゴウ リキ)と読む と ﹃ 強 い力﹄と い う 意味 の 外 に ﹃ 登山者 の 荷 物を背負 っ て道案内す る人﹄ と い う意味 になる。﹃ 剛力 ( ゴ ゥ リキ ) ﹄ と同じ意 味 で あ る。1
口
一
一146漢 字 学 習 の 一 考 察
﹃
子
﹄
音 ー シ 、 ス 訓 ー こ 両 足 が お む つ に包 ま れ た 子 ど も の形 を 表 し た 象 形 字 で 、 ﹃ あ か 子 ﹄ ﹃ おさ な 子 ﹄ と い う 意 味 を 表 し たも の であ る。 ま た、 ﹃ ち いさ い ﹄ も のだ か ら、 ﹃ ち い さ い﹄ と い う 意 味 に も使 う 。 ﹁ 菓 子 ﹂ ﹁ 帽 子 ﹂ ﹁ 椅 子 ﹂ ﹁ 扇 子﹂ な ど物 の名 前 の下 に付 け て、 言 い易 く 、 聞 いても わ かり 易 い よ う に使 う こ と も あ る 。 こ の 場 合 ﹃ 子 ﹄ の意 味 は な い。 ﹁ 君 子 ﹂ な ど の 同 音 の ﹃ 師 ( 先 生 ) ﹄ の意 味 にも 使 わ れ 、 中 国 で は、 ﹁ 孔 子 ﹂ ﹁ 孟 子 ﹂ ﹁ 朱 子 ﹂ な ど 人 柄 や 学 問 にす ぐ れ た入 を 呼 ぶ のに こ の字 を使 う 。 ま た 、 男 子 ( 後 に は女 子 ー 花 子 ・ 君 子 ・ 和 歌 子 ・ ・ ⋮ ) の美 称 と し て使 わ れる 。i
一145-文教 大学 言語 と文化 特集号
甲骨文代用
1
↓
﹃
心
﹄
音 1ー シ ン 訓 11 こ こ ろ 心 臓 の形 を か た ど った 象 形 字 で 、 ﹃ シ ンゾ ウ ﹄ と いう 意 味 の字 であ る。 昔 は た だ ﹃ シ ン﹄ と 言 った。 人 の心 の動 き は ﹃ 心 臓 ﹄ が 、 つか さ ど って いる と 考 え ら れ て いた の で、 ﹁ 本 心 ﹂ な ど のよ う に ﹃ 心 ﹄ が そ のま ま ﹃ こ こ ろ ﹄ と いう 意 味 に 使 わ れ る よ う にな っ た。 ま た 、 ﹁ 中 心﹂ ﹁ 心 棒 ﹂ な ど のよ う に ﹃ 真 ん 中 ﹄ と か 、 ﹃ 大 切 な所 ﹄ と い う 意 味 にも 使 わ れ る 。 心 臓 は体 の 真 ん 中 に あ り 、 非 常 に大 切 な 所 だ か ら であ る。 特 別 な 読 み方 11 心 地 ( こ こち )↓
一144一漢字 学習の一考察