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大阪府立大学大学院農学生命科学研究科年報(2001・2002年度) No.6

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大阪府立大学大学院農学生命科学研究科年報(2001

・2002年度) No.6

引用

大阪府立大学大学院農学生命科学研究科年報(2001

・2002年度). 2003, 6

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(3)

大阪府立大学大学院農学生命科学研究科年報

(2001・2002年度)

大阪府立大学大学院農学生命科学研究科

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は じ め に

本年報(第6巻)は、2001年∼2002年の大阪府立大学農学生命科学研究科の研究成果、教育・研究活動、社会活 動等についてまとめたものである。本研究科は2000年に大学院重点化を完了し、大学院大学として新たに出発した ので、この年報は本研究科の実質的に最初の巻である。 この数年、国立大学の大学法人化をはじめとする大学改革の荒波は公立大学にも波及し、公立大学は今、国立大 学と私立大学の狭間で苦悩し、揺れ続けている。国公立大学の大学法人化、再編統合、第三者評価による競争原理 の導入、21世紀COEプログラムによるトップ30大学の選抜等、矢継ぎ早に打ち出される大学改革の荒波に設置者の 財政状況の悪化も加わって、本研究科の前途は大変厳しい状況にある。 教育研究実績や個性的な魅力がない大学は、大学間競争から取り残され淘汰されかねない状況の中で、地方自治 体によって設立された公立大学として、本学、本研究科の存在意義があらためて問いなおされている。公立大学が、 国立や私立大学と最も異なる点は、納税者に対して直接的なアカウンタビリティ(説明責任)を負っていることで あり、それぞれの地域に根ざし、地域に開かれた高等教育機関として、高度な教育・研究を行うとともに、その成 果を社会に還元する地域貢献が強く求められている。 本研究科は、2000年の大学院重点化を契機にして、農学にバイオサイエンス・バイオテクノロジーや環境科学な どの領域を加えた生命科学関連領域の高度な教育・研究機関として出発し、この分野の優れた人材の養成を通して 地域社会への貢献を図って来た。また、産学官の共同研究を積極的に推進し、地域産業の活性化に寄与するととも に、附属農場や附属家畜病院等の機能を通して、府民に開かれた大学としての役割も果たして来た。 本研究科が厳しい大学間競争に勝ち抜き、大学院大学として農学や応用生命科学の領域で今後も更なる発展を続 けるためには、「目的と意義」を明確にし、絶えず自己点検・評価を行うのみならず、外部の第三者評価等を受けて、 点検と自己変革を続けなければならない。 この第6巻は、ここ2年間の本研究科の活動の実体を集大成したものである。関係各位の率直なご批判を戴けれ ば幸いである。 2003年7月1日 大阪府立大学大学院農学生命科学研究科長 大阪府立大学農学部長

切   畑   光   統

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目    次

は じ め に

Ⅰ.農学生命科学研究科・農学部の概要 1.大学院農学生命科学研究科 ……… 1 (1)農学生命科学研究科の理念・目的 (2)農学生命科学研究科の組織 2.農学部 ……… 3 (1)農学部の理念・目的 (2)農学部の組織 Ⅱ.農学生命科学研究科・農学部の教育 1.農学生命科学研究科 ……… 5 (1)専攻・分野の教育・研究 (2)教育課程の編成 (3)学生の受入れ (4)外国人留学生の受入れ (5)社会人教育 (6)学位授与と論文指導 (7)教育,研究の支援体制 (8)修了生の進路 2.農学部 ……… 11 (1)学科・附属施設の教育 (2)教育課程の編成 (3)学生の受入れ (4)卒業生の進路 3.生涯学習 ……… 15 Ⅲ.研究室・附属施設の教員編成と研究現況 1.農学環境科学専攻 ……… 17 (1)教員組織 (2)研究現況 2.応用生命化学専攻 ……… 30 (1)教員組織 (2)研究現況 3.獣医学専攻 ……… 37 (1)教員組織 (2)研究現況 4.農学部附属家畜病院 ……… 47 (1)教員組織 (2)研究現況 5.農学部附属農場 ……… 49 (1)教員組織 (2)研究現況

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Ⅳ.研究成果 1.農学環境科学専攻 ……… 50 2.応用生命化学専攻 ……… 86 3.獣医学専攻 ……… 106 4.農学部附属家畜病院 ……… 135 5.農学部附属農場 ……… 139 Ⅴ.研究活動 1.農学環境科学専攻 ……… 141 2.応用生命化学専攻 ……… 151 3.獣医学専攻 ……… 157 4.農学部附属家畜病院 ……… 164 5.農学部附属農場 ……… 165 Ⅵ.国際教育研究活動 1.農学環境科学専攻 ……… 167 2.応用生命化学専攻 ……… 173 3.獣医学専攻 ……… 176 4.農学部附属家畜病院 ……… 179 5.農学部附属農場 ……… 180 6.国際協力事業団との共同事業 Ⅶ.社会における活動 1.農学環境科学専攻 ……… 182 2.応用生命化学専攻 ……… 190 3.獣医学専攻 ……… 193 4.農学部附属家畜病院 ……… 197 5.農学部附属農場 ……… 197 Ⅷ.研究科・学部管理運営 1.研究科・学部の管理組織と責任体制 ……… 199 (1)農学生命科学研究科教授会 (2)農学生命科学研究科会議 (3)研究科長の選任 (4)各種委員会 (5)事務組織 2.自己点検・評価の組織体制 ……… 204 (1)農学部,農学生命科学研究科自己点検・評価制度委員会 (2)「農学生命科学研究科年報」の編集と自己点検・評価の実施 Ⅸ.農学部図書室 ……… 205 Ⅹ.学生生活への配慮 ……… 208 ⅩⅠ.資料 1.大学院農学研究科,大学院農学生命科学研究科 ……… 210 (1)専攻別学生数

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(2)学生の受入れ (3)大学(学部)卒業年別入学状況(博士後期課程を除く) (4)研究生等の学生数 (5)学位授与 (6)修士学位論文リスト (7)博士学位論文リスト 2.農学部 ……… 221 (1)学科別学生数 (2)学生の受入れ (3)科目等履修生の学生数 (4)専任教員数と年齢構成 3.農学部附属農場 ……… 223 (1)附属農場の土地・施設設備・備品 (2)実習教育 (3)学内外の活用状況 (4)運営概況 4.農学部附属家畜病院 ……… 230 (1)家畜病院の施設 (2)家畜病院の主な設備 (3)運営概況 編集後記

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Ⅰ.農学生命科学研究科・農学部の概要

1.大学院農学生命科学研究科

(1)農学生命科学研究科の理念・目的 農学は,人類の生存基盤である食料・農産物や生活・産業資材である生物資源の安定供給を目的として,絶え間なく発展を続 けてきた.人類は,この生物生産活動を通じて国土と環境を保全し,自らの生存基盤を確保してきた.しかし近年は,産業や経 済が拡大し,人類が直面している課題も,食料の欠乏,環境の悪化,資源の枯渇など高度で複雑なものばかりになり,地球規模 での解決が求められるようになった.このような状況のなかで,生物の生産と利用の範囲や目的は著しく拡大し,農業生産活動 はその価値とあり方とが改めて問い直され,人類の持続的発展に寄与しうる科学的知識と方法の探求が不可欠のものとなってい る.また,学術研究の急速な進展,社会経済の高度化・複雑化,国際化の進行などにともない,農学領域における学術研究は, 分子から生態系まで,あるいは自然環境から人間生活までの広範な領域に拡大して,専門化と先端化が進んでいる.遺伝子組換 えや細胞融合などに代表されるバイオサイエンス・バイオテクノロジー,そして情報科学が劇的に発達した結果,農学領域の学 術研究においても,より高度な展開が求められるようになった.とりわけ西日本の中心都市であり,人口と産業が集積する大阪 に立地する本研究科は,このような多元的な社会的要請に応えるために,従来の農学に生命の営みと環境の視点を加えた農学生 命科学という新しい学問体系の確立を目指し,さらに高度で多角的な教育研究を推進し,地域社会の発展にも一層の貢献をする 必要がある.本研究科には,これらの諸課題に立ち向かい,産学官の研究教育機関の次世代を担う有能な研究者・教育者を育成 するとともに,新しい産業や社会経済システムの創出につながる独創的な研究開発を推進し,先端的分野を開拓できる創造性を 備えた,進取の精神に富んだ人材を養成することが求められている.また,技術革新と知識の陳腐化が急速に進行しつつある今 日において,すでに社会に出て活動している人々の再教育にも役割を果たす必要がある. 本研究科は,以上のような学術の発展と社会経済的要請をふまえて,従来の農学に生命の仕組みと営みを高度に理解して活用 するという生命科学の視点を加えた農学生命科学の教育研究を行う.具体的には,教育研究の対象領域を従来の伝統的な農学か ら広範な関連領域を含むものに拡大し,生物の生産機能や環境形成機能の解明と活用,経済性や効率性をめざした先端的な生物 生産技術の確立と普及,あるいは地域環境の保全と持続的発展,また,あらゆる生物の生命現象や生命維持機能の仕組みや原理 の解明,生命科学の理論を人類の生活や産業に有効利用するための方法や技術の開発,さらには,生体の恒常性の維持に関わる 諸方策の確立,などの諸領域において先端的な研究を推進し,それぞれの領域において学術の発展とその応用に貢献できる人材 を積極的に養成する.また,研究面では,国際的な水準の研究を行い,それを世界に向けて発信して人類共通の資産としての科 学の発展に寄与するとともに,教育面では,国際的に貢献できる人材を養成し,さらに諸外国からの人材も積極的に受け入れ, 研究者や教育者の養成や再教育も行う. 本研究科は,現代社会の多様な要請に応えて,研究者あるいは高度専門職業人として,農学生命科学の諸分野で活躍しうる, 広い視野と深い洞察力をもつ,独創的な研究能力を備えた人材を養成するために,「農学環境科学」と「応用生命化学」,「獣医学」の 3専攻をおく.「農学環境科学専攻」と「応用生命化学専攻」には博士前期課程・後期課程を,「獣医学専攻」には博士課程を設け,学 部教育との連携をふまえた上で,一貫した教育を行う. <博士前期課程> 農学生命科学の知識の蓄積と研究を,専門性・総合性・学際性という視点に立って体系的に行うことを通じて,専門分野にお ける諸課題の認識と分析,ならびに評価と応用に必要な高度な学識と研究能力および専門的能力を培い,人類社会と文化の発展 に寄与しうる人間性豊かな高度専門職業人の育成を目指す. <博士後期課程,獣医学専攻博士課程> 農学生命科学のより高度な知識の蓄積と研究を,専門性・総合性・学際性という視点に立って体系的に行うことを通じて,専 門分野における諸課題の認識,ならびに分析・評価・応用の能力を培うとともに,人類共通の財産としての科学的知識を新たに 生み出し,社会と文化の発展に貢献しうる人間性豊かな,より高度な専門的職業人ならびに学術研究を担う研究者の育成を目指 す.

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(2)農学生命科学研究科の組織 本研究科は,平成12年4月に教員組織を農学部から研究科に移して大学院農学生命科学研究科を部局とし,高度で多角的な教 育研究を推進する体制を整えた.さらに獣医学専攻では平成13年4月に,獣医教育の高度化を図るためそれまでの15講座体制から から2分野4講座18研究室体制に再編した. 事務局 事務課 総務・教務グループ 植 物 機 能 開 発 学 作 物 機 能 制 御 学 資 源 植 物 学 植 物 病 学 応 用 昆 虫 学 生 態 保 全 学 果 樹 生 態 生 理 学 青 果 品 質 保 全 学 植 物 生 産 管 理 学 野 菜 システム 生 産 学 鑑 賞 園 芸 学 植 物 繁 殖 学 生物情報システム工学 植 物 感 性 工 学 大 気 環 境 学 生 物 環 境 調 節 学 環 境 開 発 工 学 水 資 源 環 境 工 学 環 境 情 報 工 学 緑 地 環 境 計 画 工 学 緑 地 環 境 保 全 学 地 域 生 態 工 学 緑 農 資 源 管 理 学 地 域 緑 農 政 策 学 土 壌 植 物 栄 養 学 食 品 代 謝 栄 養 学 発 酵 制 御 化 学 応 用 生 物 物 理 化 学 食 品 素 材 化 学 生 体 情 報 化 学 応 用 分 子 生 物 学 微 生 物 機 能 開 発 学 生 物 資 源 循 環 工 学 生 物 制 御 化 学 生 理 活 性 物 質 化 学 酵 素 蛋 白 工 学 獣 医 解 剖 学 獣 医 病 理 学 実 験 動 物 医 学 細 胞 病 態 学 統 合 生 理 学 応 用 薬 理 学 細 胞 分 子 生 物 学 毒 性 学 獣 医 公 衆 衛 生 学 獣 医 微 生 物 学 獣 医 免 疫 学 獣 医 感 染 症 学 獣 医 国 際 防 疫 学 獣 医 内 科 学 獣 医 外 科 学 獣 医 放 射 線 学 獣 医 繁 殖 学 特 殊 診 断 治 療 学 農学環境科学専攻 応用生命化学専攻 獣医学専攻 教授会 大学院 農学生命科学   研究科長 植物機能科学 植物システム生産学 地球環境科学 生物機能化学 資源生物工学 生体構造機能学 疾病制御学

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2.農学部

(1)農学部の理念・目的 本学部は,農学分野における教育と研究を遂行するにあたり,学部・学科・研究室等の各組織において展開される教育研 究に関する諸活動が,相互に有機的な関連をもって組織的・計画的に行われ,学部としての総合的成果の増大を保証するた めに必要とする理念・目的を,以下のように定めている. 農学部は,多彩な生命現象に関する基礎原理の解明,生態系保全を前提とする生物資源の維持・開発,生物生産と生産物 利用の効率増進,地球生態系と調和する人間環境の創造,および生体の恒常性維持をめぐる方策確立などの諸分野を対象と して,その基礎的・応用的理論に関する教育研究を行う組織である.本学部はそれらの分野における体系的な専門知識と, それに立脚した見識を培い,幅広い洞察力と理論的な思考能力を身につけた国際感覚豊かな人材を育成する. 本学部では,上記の理念・目的を指針として教育研究組織の編成ならびに教育研究活動を行ってきており,平成12年度に は教員組織を農学部から大学院農学生命科学研究科に移すなど,近年の学術の発展と深化,大学に対する多元的な社会的要 請に応えて,教育研究の組織や活動を改革してきた.したがって,本学部の教育研究においても,従来の農学に生命の営み と環境の視点を加えた農学生命科学という新しい学問の方向に沿って,さらに高度で多角的な教育研究を推進するよう努力 を重ねている. 獣医学専攻組織の新旧対照図 農学環境科学専攻 ( 旧 組 織 ) 旧専攻学科目名 ( 新 組 織 )

応用生命化学専攻 獣 医 学 専 攻 専攻名 新専攻学科目名 動物応用形態学 動物応用機能学 感 染 制 御 学 動物疾病治療学 疾 病 制 御 学 生体構造機能学 獣 医 学 専 攻 講座名 分野名 専攻名 獣 医 解 剖 学 獣 医 病 理 学 実 験 動 物 医 学 細 胞 病 態 学 統 合 生 理 学 応 用 薬 理 学 細胞分子生物学 毒 性 学 獣医公衆衛生学 獣 医 微 生 物 学 獣 医 免 疫 学 獣 医 感 染 症 学 獣医国際防疫学 獣 医 内 科 学 獣 医 外 科 学 獣 医 放 射 線 学 獣 医 繁 殖 学 特殊診断治療学 獣 医 解 剖 学 獣 医 病 理 学 実 験 動 物 学 獣 医 生 理 学 獣 医 薬 理 学 獣医分子生物学 毒  性  学 獣医公衆衛生学 獣 医 微 生 物 学 獣 医 免 疫 学 獣 医 疫 学 獣 医 内 科 学 獣 医 外 科 学 放 射 線 学 獣医臨床繁殖学

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(2)農学部の組織 植 物 機 能 開 発 学 作 物 機 能 制 御 学 資 源 植 物 学 植 物 病 学 応 用 昆 虫 学 生 態 保 全 学 果 樹 生 態 生 理 学 青 果 品 質 保 全 学 植 物 生 産 管 理 学 野 菜 システム 生 産 学 鑑 賞 園 芸 学 植 物 繁 殖 学 生物情報システム工学 植 物 感 性 工 学 大 気 環 境 学 生 物 環 境 調 節 学 環 境 開 発 工 学 水 資 源 環 境 工 学 環 境 情 報 工 学 緑 地 環 境 計 画 工 学 緑 地 環 境 保 全 学 地 域 生 態 工 学 緑 農 資 源 管 理 学 地 域 緑 農 政 策 学 土 壌 植 物 栄 養 学 食 品 代 謝 栄 養 学 発 酵 制 御 化 学 応 用 生 物 物 理 化 学 食 品 素 材 化 学 生 体 情 報 化 学 応 用 分 子 生 物 学 微 生 物 機 能 開 発 学 生 物 資 源 循 環 工 学 生 物 制 御 化 学 生 理 活 性 物 質 化 学 酵 素 蛋 白 工 学 獣 医 解 剖 学 獣 医 病 理 学 実 験 動 物 医 学 細 胞 病 態 学 統 合 生 理 学 応 用 薬 理 学 細 胞 分 子 生 物 学 毒 性 学 獣 医 公 衆 衛 生 学 獣 医 微 生 物 学 獣 医 免 疫 学 獣 医 感 染 症 学 獣 医 国 際 防 疫 学 獣 医 内 科 学 獣 医 外 科 学 獣 医 放 射 線 学 獣 医 繁 殖 学 特 殊 診 断 治 療 学 教授会 農学部長 植物開発生産学 生態管理学 園芸生産利用学 システム園芸学 細胞機能化学 生体分子機能学 資源細胞工学 生体分子化学 動物応用形態学 動物応用機能学 感染制御学 動物疾病治療学 植物生産制御工学 生物環境学 地域環境工学 環境計画学 緑農経済学 応用植物科学科 地域環境科学科 応用生物化学科 獣 医 学 科 事務局 事務課 総務・教務グループ 附 属 家 畜 病 院 附 属 農 場

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Ⅱ.農学生命科学研究科・農学部の教育

1.農学生命科学研究科

(1)専攻・分野の教育・研究 農学環境科学専攻 農学環境科学専攻では,園芸学,農学,農業経済学,農業工学といった,従来の学問的枠組みをさらに発展させ,農業生 産活動と人間生活とを学際的,総合的にとらえた「農学環境科学」領域を構築し,より高度な教育を柔軟に行い,多様な現 代的課題に対処しうる国際的かつ地域に貢献できる有意な研究者,アグリビジネス,エコビジネスなどにおける専門技術者, 行政担当者などの育成をめざしている. 本専攻では生物生産を支える植物自体の諸機能,効率的な植物生産,そして環境保全・開発の3つの領域を対象として, 「植物機能科学」,「植物システム生産科学」,「地域環境科学」の3つの教育課程(分野)をおき,相互の連携をはかりなが ら,それぞれが先端的で専門的な教育を行っている. 1)植物機能科学分野 植物機能科学分野では,植物の多様な生命機能を探索,開発,制御,管理するための基礎領域と,それらの生命機能を 作物生産と環境形成へ活用するための応用領域を有機的に結合させた「植物機能科学」の教育を行う.ここでは,植物の 遺伝学,生理学,生態学などを基盤として,有用遺伝子の探索と導入,バイオテクノロジーを駆使した有用植物の作出, 環境調和型植物生産技術の確立,総合的病害虫管理と生態系保全など,農業生産活動と人間生活とを支えるための基礎な らびに応用領域について高度な専門教育を行っている. 本分野は,植物機能開発学,作物機能制御学,資源植物学,植物病学,応用昆虫学,生態保全学などの専門カリキュラム を提供している. 2)植物システム生産科学分野 植物システム生産科学分野では植物情報,環境情報,人間情報を利用しながら,それらの相互作用の解明を通して食料 生産,環境創造,アメニティ形成など植物のもつ多様な可能性を最大限に発揮させるシステムに関する教育研究を行って いる.特に,園芸作物を対象として,それらを安全かつ効率的に生産利用するために,植物の生育制御,栽培のシステム 化,品質保持,種苗生産,資源の有効利用,環境負荷と労働力の軽減などについて体系的な教育を行い,園芸・農業生産 および関連産業に貢献できる人材の養成に努めている. 本分野は,果樹生態生理学,青果品質保全学,植物生産管理学,野菜システム生産学,観賞園芸学,植物繁殖学,生物 情報システム工学,植物感性工学などの領域について専門カリキュラムを提供している. 3)地域環境科学分野 地域環境科学分野では,特定地域が保有する自然生態システムと社会システムを的確に捉え,自然と人間との共生のも とに人類と地球の未来を考え,地域環境の持続的発展に寄与する広い見識と高度な専門技術や方法論,自立的な研究能力 を身につけた人材の育成をはかる.本分野では,地域環境の制御と最適化,環境秩序の回復と保全,地域環境の開発と整 備,ならびに,それらを支える社会経済システムの構築について教育している. 本分野のカリキュラムは,自然生態を基礎とする大気環境学,生物環境調節学,環境開発工学,水資源環境工学,環境 情報工学,緑地環境計画工学,緑地環境保全学,地域生態工学の領域から,社会科学を基礎とする緑農資源管理学,地域 緑地農政策学にいたる領域によって構成する. 応用生命化学専攻 応用生命化学専攻の教育目標は,教育研究機関や発酵産業,食品工業,医薬品工業,化学工業,電気・電子工業,資源エ ネルギー産業などの発展と進歩に貢献しうる有為な研究者や高度専門職業人を育成することにある.バイオサイエンスとそ の技術であるバイオテクノロジーは,相互に影響を及ぼし合い,共鳴しながら急速に発展しつつある.そこで,本専攻は応 用生命科学の基礎となるバイオサイエンスの理論に主眼をおき,あらゆる生物の生命現象や生命維持機能の仕組みや原理を

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解析,理解する教育を行う「生物機能化学分野」とバイオテクノロジーの技術面に主眼をおき,生命科学の理論を人類の生 活や産業に有効利用するための方法や技術開発など,生命科学の応用領域について教育する「資源生物工学分野」の2つの 教育コースを設ける.本専攻では,これらの2つの教育コースについて内容を充実させるとともに,これらが相互に有機的 に連携.補完しつつ機能するように位置づけることにより,ますます多様化,学際化する応用生命化学領域に的確に対応し うる研究教育をめざしている.さらに,先端科学研究所からも2部門4研究室の参画を得て,学際化に対応している. 1)生物機能化学分野 生物機能化学分野では,生命科学の基礎領域として,動物,植物,微生物などのあらゆる生物を対象に,生体内でいと なまれる生命現象にかかわる多様な機能,たとえば,物質やエネルギーの変換機能,情報変換機能,分子認識機能,物質 輪送機能,あるいはそれらの制御などを,細胞や分子のレベルで解析,理解することに力点をおいて教育研究を行う.ま た,これらの基礎的原理が,生物生産や環境保全,さらには健康維持・増進などにどのように貢献しうるかを解析し,理 論の理解を深めさせる. 本分野には,土壌植物栄養学,食品代謝栄養学,醗酵制御化学,応用生物物理化学,食品素材化学,生体情報化学,お よび学内非常勤による動物分子生理学などのカリキュラムを設け,応用生命化学の基礎領域について教育研究している. 2)資源生物工学分野 資源生物工学分野では,有用生物や有用生物資源を,食品,医薬品,農薬,工業用素材などの開発,あるいは環境の修 復・保全に活用するための応用面に重点をおいた教育を行っている.さらに,医学,薬学,工学などとの学際領域の教育 も加えながら,食品素材や生理活性物質などの探索,新規機能物質の分子設計,遺伝子工学による生物育種,微生物を利 用したバイオマスの有効利用や高付加価値物質への変換,バイオリメディエーションなどを対象とした生物制御化学,生 理活性物質化学,酵素蛋白工学,応用分子生物学,微生物機能開発学,生物資源循環工学,および学内非常勤による医療 素材化学,バイオミミック工学などのカリキュラムを設け,応用生命化学の応用領域について教育研究している. 獣医学専攻 平成9年に大学院の再編が行われ農学生命科学研究科が新たに発足し,さらに平成12年から大学院の部局化への移行が実 施された.これに続いて獣医学専攻では平成13年4月に,それまでの15講座体制から2分野4講座18研究室体制に再編し, 研究・教育の先端,高度化を図った(3ページ新旧対照図参照). 動物科学を基盤とする獣医学においては,生命科学領域における分子生物学,細胞生物学,発生工学,遺伝子工学等の著 しい進歩に対応した教育・研究体制の充実が要望されている.本専攻においては,主体的かつ活発な研究活動を重視し,生 命科学領域で専門別に細分化された知識・技術を統合し,自らの課題を体系的に認識する能力,さらには国際的視野を備え, 多様化する社会要請に即応し,かつ創造力に富んだ能力を備えた人材の育成を図ることとしている. さらに本専攻では,大阪府における卓越した動物科学領域を主体とする教育・研究拠点を形成するために,畜産動物や伴 侶動物の疾病に対する予防・健康管理・診断・治療に加えて,ヒトと動物に関わる公衆衛生学領域での大都市大阪圏の人口 過密による環境汚染,国際交流・物流の大幅な増加に伴う海外からの感染症や新たな病原微生物の流入における府民の社会 生活の安全性確保に貢献できる研究・教育を行うとともに,地域の産業振興や新たな産業創出に携わる人材の養成を行う. この目標を達成するために,生体の組織,細胞,分子の構造と機能の解析を基礎とする研究・教育を行う生体構造機能学分 野と,動物の個体および群を対象とし,ヒトにおける疾患とも関連する疾病解析,治療方法の研究・教育を目的とする疾病 制御学分野の2つの教育課程を設けた. 両分野においては大講座制のもとで各教員のもつ専門性を多角的に連携させた集団指導体制により,新たに生み出される 学際性も重視した国際性の高い研究を積極的に展開させ,柔軟で多様な思考能力を備えた研究・指導者の育成を図っている. (2)教育課程の編成 「農学環境科学」と「応用生命化学」の2専攻については,学部教育との連携を踏まえた上で更に専門的な教育を行うた めに,各専門領域に対応した5つの分野(教育課程)を設置している.分野は複数の専攻学科目から成り,演習などの教育 指導や研究論文作成などの指導を共同して行う単位であり,また共通の学科目をもつ履修コースでもある.

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「農学環境科学」と「応用生命化学」の2専攻には博士前期課程・後期課程を設け,一貫して高度専門職業人ならびに研 究者の養成を目指した教育を行っている.これら専攻のもっとも重要な教育目標は,先端的で高度な専門知識を習得させ, 主体的に研究する能力を身につけさせることであり,研究者として,また高度専門職業人として不可欠であるリサーチマイ ンドを研究経験を通して身につけさせることである. 前期課程では学部での基礎教育との連続性を保ちながら,専門知識のみならず幅広い関連分野の知識と技術を身につける ための教育・研究指導を行い,修了者が社会の多方面で高度専門職業人として活躍できるように図っている.共通の必修科 目や演習科目により分野ごとに一定の共通性を確保できるようなカリキュラムを用意し,科学技術や学術研究の本質につい ての深い理解,豊かな学識や人間性,真理を実証的に探究する精神の涵養につとめている.前期課程の目標は,研究成果自 体だけでなく,さまざまな工夫を加えたカリキュラムによって学生の自立性と創造性を育て,自ら考え表現する力を養うこ とであり,またこの間に自身の適性や進路について自ら判断し,他からアドバイスを受ける貴重な機会としても機能する事 を願っている. 後期課程では前期課程での教育を基礎としてより研究に重点を置いた教育を行い,主として高度な学術研究を担う研究者 を養成する.とくに演習科目では専門学問領域における高度な知識や技術について理解を深めさせるとともに,総合的な視 野や深い洞察力,独創性や自立的研究能力を身につけるための教育を行っている. 社会人のリフレッシュ教育に当たって は,カリキュラムの工夫により基礎学力を強化するとともに,関連学問領域についての幅広い理解と先端的な専門知識を身 につけさせている. 「農学環境科学」と「応用生命化学」の2専攻では入学資格,入学時期,修業年限などを弾力化し,社会人や外国人留学 生など多様な学生の受け入れに柔軟に対応できるようカリキュラムを工夫している.半年単位のセメスター制の採用によっ て科目選択の自由度を向上させ,学生が主体的に適性を見出し進路を決定できるような環境にしている.共通科目,演習科 目,選択科目の配置などの工夫によって,学生が広い視野と高度な専門性とを共に身につけることができるようにし,演習 科目によって自立的能力を向上させるための教育や,英語によるコミュニケーション,プレゼンテーション教育などを強化 している.学部教育との連携を配慮し,前期課程修了までの6年間で高度専門職業人として必要な専門教育を完成できるよ うにし,後期課程では研究者養成に重点を置いた教育を行うとともに, 学生の自立的研究能力を育成するための工夫をし ている.複数教員指導制の導入によって,学生が学習や研究のプロセスに則した幅広い指導を受けられるようにしている. 「獣医学専攻」では従来の獣医学に加えて,人畜共通伝染病の対策や高度な獣医臨床,基礎医学への貢献,動物遺伝子の 高度利用などを実現するために,幅広く専攻学科目を設けている.また,各専攻学科目に深くかかわる問題については日常 的に開催される各学科目のセミナーにおいて,専攻に属する教員が共同で指導にあたっている.また,毎月開催される獣医 学専攻主催の研究会において,専攻生は現代の獣医学が直面する課題や研究動向を各種学術雑誌から取り上げて,総説とし て解説する.これには専攻所属全教員が参加し,それぞれが専門の立場から討議に加わり,広く学生の知識,思考力の向上 と, 学問的意欲,知的好奇心の刺激につとめ,学術的な課題をまとめる能力を高めるよう指導している. (3)学生の受け入れ 農学生命科学研究科における大学院学生の受け入れは,博士前期課程,博士後期課程,獣医学専攻博士課程のいずれにお いても,筆答試験,口述試験よりなる学力試験を中心に行っている.博士前期課程における筆頭試験は,外国語として英語 を,また専門科目として2科目を選択させておこなっている.口述試験は専攻により若干異なるが,分野あるいは専攻学科 目を中心に行われているのが一般的である.博士後期課程における筆答試験は外国語として英語を課している.ただし,外 国語を課さない専攻もある.専門科目についても専攻毎に異なり,筆答試験を課さない専攻もある.専門科目に関する評価 については各専攻が実施している口述試験の中でなされる比重が大きい.獣医学専攻博士課程にあっては,筆答試験は外国 語として英語を課している.また専門科目については,学部卒業研究あるいはそれと同等とみなされる学習の内容を中心と して口述試験を行っている.博士後期課程の選抜は入学志願にあたっては事前に希望する専攻学科目の担当教員と充分協議 することが求められている. 受け入れ時期は,博士後期課程および獣医博士課程については4月入学と10月入学の2回機会がある.また,博士前期課 程については4月入学だけであるが1次と2次の2回入学試験の受験機会がある.

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(4)外国人留学生の受け入れ 農学環境科学,応用生命化学専攻の博士前期および後期課程の外国人特別学生の選抜は,専門科目を中心として筆答試験 または口述試験,あるいはその両方により行っている.獣医学博士課程の,外国人特別学生の選抜は口述試験のみによる. なお,入学を志願するにあたっては事前に希望する専攻学科目の担当教員と充分協議することが求められている. (5)社会人教育 高度な技術と研究能力を持った社会人を養成するため,企業その他の団体に所属する社会人にも本農学生命科学研究科を 開放する方策を検討してきたが,平成7年度から博士前期課程社会人特別選抜,博士後期課程社会人特別選抜,博士課程獣 医学専攻社会人特別選抜を実施している. (6)学位授与と論文指導 本研究科では学位論文実施要領に基づき,所定の単位を取得し,論文を提出した者に対して,最終試験としての論文発表 (公聴会)を経て,博士前期課程にあっては修士(農学)あるいは修士(学術)の学位を,博士後期課程にあっては博士 (農学)もしくは博士(学術)の学位を,獣医学博士課程にあっては博士(獣医学),博士(農学),博士(学術)のいずれ かの学位を授与している.また,いわゆる「論文博士」として,博士課程を経ない者に対しても博士の学位を授与すること が制度化されている.論文作成にあたっては,専攻学科目の主任教授を中心に他の教員,さらに必要に応じて他専攻学科目 の教員の指導を受ける. 論文審査は,学位申請に基づき,原則として主査(指導教授)1名,副査2名の計3名よりなる審査委員会を設けて行う. 論文審査が終了すると,研究科会議において主査が論文審査ならびに最終試験の結果を報告し,それをもとに博士の学位授 与の可否が投票によって決定される. 課程博士の学位申請に際し,求められる資格の内,研究論文の発表については各専攻毎に若干異なってはいるが,概ねレ フェリー制度の設けられている学会誌もしくはそれに準ずる学術誌に,研究論文が掲載または掲載が予定されていることが 要求される. 平成13,14年度の修士ならびに博士学位取得者の氏名と論文名を末尾に示す. (7)教育,研究の支援体制 大学院学生が安心して,学問・研究に打ち込むには,大学院学生の経済的な基盤が安定していることが必要である.平成 13・14年度の日本育英会の奨学金の採用者数を表1に示す. 奨学金の支給額の増額,支給者数枠の拡大など改善が求められる.特に博士後期課程の定員の充足率を高めるためには, 奨学金の給付を保証できるよう,奨学金制度を充実することが必要であろう. 本学では平成5年度からティーチングアシスタント制度が発足し,平成7年度には教務技師制度の廃止に伴い,その人数 が約3倍に増員された.この制度は大学院学生が教員の行う講義や実習を有給で補助する制度である.また,平成11年から はリサーチアシスタント制度が発足し,大学院学生による研究の補助に対し給与を支払っている.この制度が適用されてい る本研究科の大学院学生の数は表2に示す通りである.適用枠は限られているが,今後この制度を充実すれば,教員の不足 をある程度カバーでき,大学院学生にとっても学費や生活費の一助となろう.

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貸与額(月額) 希望21プラン(有利子) 50,000, 80,000, 100,000, 130,000円から選択 博士前期課程 84,000円 博士後期課程(博士課程) 117,000円 表2 ティ−チングアシスタントおよびリサーチアシスタント委嘱状況 (単位:名) ティーチングアシスタント リサーチアシスタント 専      攻 農学環境科学専攻 応用生命化学専攻 獣 医 学 専 攻     計 15 9 10 34 16 8 7 31 3 3 2 8 5 0 2 7 平成13年度 平成14年度 平成13年度 平成14年度 表1 日本育英会大学院奨学生採用状況 年 度 種 別 博士前期 博士後期 獣医学博士課程 1年 2年 1年 2年 3年 1年 2年 3年 4年 23 17 15 23 20 28 27 17 11 11 10 11 7 5 4 4 2 4 2 2 1 2 平成13年 平成14年 第1種 希望21プラン 第1種 希望21プラン

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(8)修了生の進路 平成13年度,14年度における農学研究科および農学生命科学研究科の修了生の進路は表3に示すとおりである.従来と変 わらず研究職などの専門性の高い職種への就職比率の高いのが特色である. 農学環境科学 応用生命化学 計 農学環境科学 応用生命化学 獣   医   学 計 農学環境科学 応用生命化学 計 農学環境科学 応用生命化学 獣   医   学 計 60 32 92 6 8 5 19 44 33 77 12 5 3 20 12 2 14 7 2 9 1 1 1 1 2 2 1 2 3 3 2 2 7 2 1 3 4 3 3 10 47 28 75 2 6 3 11 34 30 64 6 2 8 表3 修了生の進路状況 専    攻 修 了 者 数 進    路 進     学 研 究 生 そ の 他 自 営 業 就 職 者 平   成   14   年   度 平   成   13   年   度 博 士 前期課程 博 士 後期課程 (博士課程) 博 士 前期課程 博 士 後期課程 (博士課程)

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2.農学部

(1)学科・附属施設の教育 応用植物科学科 応用植物科学科は,地球規模での食料不足,環境の荒廃,人間的な生活の喪失など,人類が直面しているさまざまな問題 を植物を有効に利用して解決するために必要な基礎知識,すなわち,植物の機能,遺伝,環境との関係など,植物と人間と をめぐるサイエンスとテクノロジーについての教育・研究を行っている.この目的を遂行するための本学科の視点は,高品 質な植物生産物の先端的・持続的生産技術の開発と効率的で安定した農業生産システムの確立,植物生産環境および植物を 媒体とする快適な生活環境の創造・管理・保全,農産物の流通・貯蔵・加工を考慮した品質保全技術の開発,さらに,これ らの目的に役立つ植物資源の開発と利用など,多岐にわたっている. 本学科は,植物の遺伝,生理,生態,さらに微生物や昆虫の科学などの幅広い学問を基礎とし,生命科学や情報科学の成 果も活用しながら,植物生産についての総合的で体系的な教育を通して,農業生産と関連産業の学術的・技術的基盤を支え る人材の養成に努めている. 地域環境科学科 地球環境科学科では,現在の様々な環境問題は広範囲な領域に及ぶ極めて深刻な状態にあると考え,人間と自然との本来 のかかわり合いを基本として,地域あるいは地球環境を持続可能なものに創造,保全,回復させること,そしてその方法を 開発することが人類にとって最重要課題であり,本学科の大きな目標であると考えている.そのため,自然や社会のシステ ムを的確にとらえ,そのリズムを知り,豊かな自然の保全と賢明な利用のもとに,地球と人類の豊かな未来につながる教育 研究を目指している. 教育・研究の視点をグローバルな分野からミクロな分野におよぶ広範な領域に設定し,生物の生産環境システムの制御と 最適化,生活環境の改善と調節,環境に配慮した水および土環境の創出や,環境情報の整備,自然と人間の共生を基調とし たアメニティ環境の計画・デザインと保全・復元,環境に対する新しい地域社会システムの創造など,につながる理論の確 立と技術開発をテーマとし,農学を基本に理学,工学の領域と社会科学の領域を融合させた学際的な地域環境科学の領域の 発展につとめている.本学科は12研究室を有し,教育課程の特徴として,生物環境工学,地域環境工学,環境デザイン学, 緑農経済学という4つのカリキュラムコースを設けており,広範囲におよぶ環境領域の専門的な知識と技術を身につけた人 材の育成を行っている. 応用生物化学科 応用生物化学は化学と生物学に基礎をおく農芸化学から発展した応用科学である.約100年前に我が国で農芸化学が創設 された頃は農業と密接に関係することがらを化学的に研究する学問分野であった.その後,日本の農芸化学は研究の対象を 農業生物や農産物に限ることなく,あらゆる生物とその生産物にまで拡大し,世界に類をみない独自の学問分野として発展 を遂げてきた.現在は,バイオサイエンス(生物科学)・バイオテクノロジー(生物工学)・ライフサイエンス(生命科学) を目指す学際的な総合科学に成長し発展し続けている. 本学科は農芸化学の発展とともに動・植物および微生物による生物生産と生産物の高度利用を目的に,発酵産業,化学・ 生化学産業,食品産業,農水産業,環境産業,医薬・農薬産業などの広範な分野とかかわって,これらの分野の発展に貢献 してきた.現在は,バイオテクノロジーの分野である組換えDNAや細胞融合などによる成果を基にして,先端技術の基礎 と応用分野にも多大の寄与をしている.本学科は,他大学の応用生物化学科や生物機能化学科,生物資源科学科などには類 の少ない12研究室の大規模構成を特色としているだけではなく,学際的な総合科学の教育・研究にも成果をあげ,この分野 の発展のために優れた専門技術者,研究者の育成を行っている.

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獣医学科 獣医学は,基本的にヒト以外の動物の医療を根幹とする総合科学で,主に高等動物を対象に生物学的知識を集大成した学 問分野であり,動物の生命科学を通じてヒトの社会福祉に貢献することを目的としている.獣医学科は,この目的に基づき 平成13年度から18研究室体制で,以下の4つの柱を基本として教育・研究を行っている. 1)動物の生体諸機能を維持するための細胞,組織,器官に至る学理の探求 2)動物細胞を構成する分子の性状と役割に関する学理の探求 3)病原体の特性と感染症成立についての理解と予防に関する学理の探求 4)動物における種々の疾病,治療に関する学理の探求 獣医学教育の高度化に伴い,これまで行ってきた獣医学科の教育・研究の基本目的である,「主として家畜・家禽などの 産業動物および伴侶動物を対象とし,それら動物の多彩な生命現象についての基礎原理の解明とそれに基づいた生体の恒常 性を維持するための種々の機構の解明」に加え,医薬品・食品の安全性等の評価,人獣共通感染症の診断・予防対策,環境 汚染問題への取り組み,海外からのヒト・動物を含めた物流の増加に伴う未知病原体の侵入対策,高度化していく動物の診 断・治療方法,伴侶動物の健康維持とヒトの精神衛生との繋がりなどを新たに取り入れた教育を行う. 本学科は,従来社会が認識している獣医師,つまり動物の医師という単純な概念では対応できない多様に発展する今日の 社会的問題に応え得る応用動物科学を基礎とした高度な専門知識をもつ獣医師の養成を図っている. 附属農場 附属農場は,農学部教育の基本である自然と人間,生物と環境,人と植物との関係を認識するための体験学習や作物生産 および生産技術に関わる実習教育の場である.また,農業生産活動の実践から解明を必要とする諸問題の摘出・考究,農学 の各専門分野における基礎的研究成果の実用化など,フィールドを必要とする卒業研究や大学院生の研究の場としても機能 している.最近では環境と調和した安全な食料生産システムの構築,あるいは農業従事者の減少や高齢化など農業の担い手 問題の解決を目指した新しい生産システムの開発などの教育・研究にも取り組んでいる. しかし,平成17年に予定されている農学生命科学研究科および農学部そのものの大規模な構造改革に伴って,作物生産お よび生産技術を主とした教育・研究機能からの脱皮が求められ,食料資源,環境保全・修復保全,医薬品・工業原材料とし ての植物資源を対象とし,新機能植物の開発や有用植物生産,植物の高度利用などの領域に関わるフィールド教育・研究の 場として特化するべく検討中である. 附属家畜病院 家畜病院は,「獣医学の応用研究ならびに教育のための外来患畜の診療および入院患畜の治療を行うことを目的とする」 と規定(農学部附属家畜病院規定第1条)されているように,家畜病院は外来(入院)患畜の診療を通じての学生・院生に 対する臨床教育の場であり,臨床研究を行う学生・院生においては研究材料の採取または臨床例の蓄積の場でもある.さら に教員にとっても臨床に関する基礎的ならびに応用的研究の場である.さらに,このような診療活動を通して,獣医学上の 成果を社会に還元している. 近年,我国では工業化・情報化が進み,高度管理社会に突入し,日常生活の中でもストレスが増大している.また家庭は 核家族化が進み,イヌ,ネコを人生の伴侶動物として,精神的な潤いを求める家庭が増えてきており,府民からのより高度 な動物医療の要求がよせられている.他方,環境問題が地球的規模で悪化し,自然保護の一環として野生鳥獣の保護や,新 しい社会思想である動物の福祉の向上を求める動きが活発になってきている. 小動物医療にあっては,疾病が多様化するとともに飼育動物の種類が増大し,それに応じた診療技術の高度化が求められ ている.また,産業動物にあっては,個体の診療技術だけでなく,動物群や牧場単位での疾病の予防技術の修得が必要にな ってきており,学部教育だけでは臨床獣医師の臨床研究は困難な状態に至っている.このような状況の変化から,平成4年 には獣医師法が改正され,臨床獣医師の卒後研究を行うように定められた.この卒後臨床研修を家畜病院でも担うように要 請されている. 当家畜病院は関西における唯一の大学附属家畜病院であり,臨床教育の拠点として,地域社会に貢献出来るよう,さらに

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病院選任教員を充実し,設備・備品を整備・補充する必要がある.一方,獣医臨床においても分子生物学的解析や遺伝子解 析などを応用した診断・治療法への進展が望まれてきており,本家畜病院においても,平成13年度の獣医学専攻・学科の再 編に伴い,病院関係教員の研究指向性を向上させ,さらに多分野におよび臨床関係研究の促進およびその成果を基盤とした 診断・治療の向上を図るあめに,専任教員籍を割愛して,病院兼任研究室を4研究室から6研究室への増設し,より臨床研 究および応用の実践を行う体制としてきている.さらに,日本獣医師会からの依頼による平成12年度の研修獣医師の研修制 度施行成果などをふまえて,研修獣医師制度の導入による臨床獣医師の卒後研修・生涯教育のあり方を検討しつつ,近畿圏 における動物医療統括センターとしての役割を果たすように努力している. 本家畜病院では,現状の人員,設備の条件のもとで,このような社会要請に応えられるよう,日常の診療を介して人材の 養成および研究に取り組んでいる. (2)教育課程の編成 農学部における教育は各学科ごとに組まれたカリキュラムにおいて行われている.また,学生の主体的な学修に配慮する 意味で,他学部あるいは他学科の科目をある一定の限度まで受講することを認め,それを卒業に必要な単位として認定する ことになっている.各学科ごとの特徴は以下のとおりである. 応用植物科学科では,農作物や園芸作物などの植物資源の開発・改良,効率的・持続的な生産技術,品質の保全,植物に よるアメニティの創出などについて,総合的で体系的な教育を行っている.低年次では,まず,「植物サイエンス概論」な どの入門的科目によって応用植物科学の全体を見渡し,理解を深める.次に,「植物機能開発学」や「植物発育生理学」, 「生物生産環境論及び実習」などの基礎的科目によって,植物が供えている機能の開発と制御,効率的・持続的な植物の生 産と利用を支える諸技術について体系的に学ぶ.その後は,目的に応じた専門科目を選択することにより,専門分野の理解 を深める.3年次後期からは研究室に所属し,「卒業研究」を通して問題を自分で解決する能力を身につける. 地域環境科学科では,農学を基本に理学,工学,人文・社会科学からなる学際的な環境科学の領域を多面的かつ総合的に 教育することによって新しい地域環境科学の総合的な知識をもつとともに,生物環境工学,地域環境工学,環境デザイン学, 緑農経済学の各領域の専門的な知識と技術を身につけた人材の育成を目指した教育を行っている.1年次と2年次の前期ま では,環境科学領域の多面的かつ総合的な側面を学習するとともに専門領域の基礎的な側面を学習する.2年次後期からは, 各領域に係わる専門的側面を学習し始め,3年次にはカリキュラムコースを選択してより専門的な学習を深め,4年次には, 研究室を選択して卒業研究に取り組む. 応用生物化学科では,一般教育科目と並行して,1年次から専門科目のカリキュラムを履修する.まず,タンパク質・核 酸など生体成分の性質について学び,生物に共通する構成要素の理解を進めて,次に,これらの分子が持つ生態内での具体 的な機能,相互の関係について学び,生命現象を一連のつながりとして捉える.そして,これらの知識の上に,生物に備わ る機能がどのように研究され,利用されているかを学ぶ.4年次には各研究室に分かれて所属し専攻セミナーや卒業研究が 行われる.また,入学した1年次には本学科について,各研究室に分属して教員や上級生との身近な接触を通して学習でき る科目「応用生物化学ラボ演習」が用意されている. 獣医学科では,基礎的な研究から動物の診療まで幅広い分野に即時対応できる人材を育成するため6年間の一貫教育が行 われ,1年次より専門科目の教育が開始される.低年次には解剖学,生理学,病理学,微生物学,寄生虫学など動物の体や 病原体の基本構造,生体の機能,さらに生体や病態について最新の知見を取り入れた講義科目や実際にそれらを体感する実 習科目が配当されている.そして,それらの知識を基盤とした内科学や外科学,臨床繁殖学などの多くの臨床的専門科目の 講義と,実際に生きた動物を扱う実習科目が加わる.また5年次には,附属家畜病院において臨床実習が行われ,疾病の診 断や治療に関する最新の知識・技術を体験する.また,4年次からは,これら専門科目を提供する研究室に所属し,大学生 活の総まとめとして最先端の研究内容をテーマとした卒業研究に取り組む.6年次の終わりには,獣医師免許を取得するた めの国家試験がある. なお,各学科ごとに必修科目および選択科目が定められているが,提供される科目に多様性をもたせるために,学外の非 常勤講師による集中講義も取り入れ,本学部の専任教員が提供できない講義科目を提供している. さらに,平成14年度から生命科学と情報科学を融合した「生命情報科学履修課程」を全学科が協力して立ち上げ,多様な社

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会要請に応えている. (3)学生の受入れ 入学者の選抜は,一般の入学試験のほか,出身学校長の推薦に基づく志願者および帰国子女の志願者に対する特別選抜試 験,外国人特別学生の選抜試験によっている. 一般の入学試験にはいわゆる分離分割方式を採用しているが,試験の実施においては,大学入試センター試験と本学が独 自で行う試験を併用し,各学科ごとに定められた定数の範囲で入学を許可している.なお,前期試験においては筆答試験の 評価が重視されるのに対し,後期試験の評価においては論文筆記や口答試問の成績が大きな比重を占めている.帰国子女の 特別選抜は,外国居住期間に関して一定の基準を設けて,それを満たす者に対して行っており,各学科ごとに若干名を受入 れている. 外国人特別学生の選抜については,志願者に対し,各学科ごとに決められた科目の筆答試験,口答試問,ならびに文部省 の委託で行われている留学生統一試験の成績を総合評価して,各学科ごとに定められた枠内で入学を許可している. 推薦入学は,応用植物科学科と地域環境科学科に限り,志願者の成績および論文筆記・口答試問の結果を総合評価して, それぞれ若干名の志願者の入学を許可している. なお,中途編入は,入学後の転学科とともに原則として認めていない.しかし,他大学を卒業したり,一時的に在学して あらたに本学部に入学が認められた者については,先に在籍した大学での取得単位数のうち,30単位までを限度として既得 単位として認定することになっている. (4)卒業生の進路 平成13年度,14年度における本学部卒業生の進路の状況は表1に示すとおりである.依然として経済状況は停滞しており, 学生にとって不安な情勢が続いている.いずれの学科でも各教員の努力がなされているが,一部の学科を除いて,就職率は 十分に改善されていない.また,全国的な状況と同様に大学院への進学率は高いレベルを維持している. 応用植物科学科 地域環境科学科 応用生物化学科 獣 医 学 科 計 応用植物科学科 地域環境科学科 応用生物化学科 獣 医 学 科 計 42 46 43 43 174 42 47 40 37 166 22 24 33 3 82 25 21 34 5 85 4 2 2 8 1 1 6 4 2 4 16 2 4 2 1 9 1 1 10 16 8 34 68 13 22 4 31 70 表1 卒業生の進路状況 学   科 卒   業   者   数 進      路 進     学 研 究 生 そ の 他 自 家 営 業 就 職 者 平 成 13 年 度 平 成 14 年 度

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3.生涯学習

地域に根ざした公立大学の社会貢献の一つとして,大阪府立大学が府民に生涯学習の機会を提供し,充実を計ることは, 納税者へのアカウンタビリティーを果す意味から重要である.21世紀に入り.大都市大阪では高齢化・少子化社会の到来, 都市生活環境の劣悪化,食の安全性の低下など府民の生活・文化に係わる難題が山積みしている.農学生命科学研究科はこ れらの課題にいかに取組み,成果を挙げつつあるかの情報を速やかに地域社会に公開する任務を負っている.また,年齢の いかんを問わず,生涯を通して新しい情報や知識を得たいと願う人に,その機会と学習の場を設置することは地域社会に支 えられ,開かれた大学の役割として当然の義務であり,公立大学が掲げる特徴の一つでもある. 生涯学習に関連した活動現況は以下のようである. 1.研究成果と情報の公開 (1)公開セミナー 本研究科では広報委員会が核となって,年1回「大阪の食とみどりを考える」のテーマのもと,無料の公開セミナーを実 施している. 最近のテーマは2001年度「21世紀都市社会の安全な食とくらしをめざして」2002年度「食の安全をいかに確保するのか?− 獣医師の役割−」であり,毎年多数の地域住民の来聴者があり,好評を得ている. (2)出前講義 ・本講義の趣旨は,大阪府立大学大学院農学生命科学研究科において蓄積してきた教育・研究の成果を社会に普及・還元し, 大阪府民の生活・文化・経済・産業などの発展に資することを目的として,講義を希望する各種団体の要請に応じて学外 にて実施することにある. ・実施に必要な手続は,広報委員会のもとに置かれた出前講義実施委員会が行い,講師は大阪府立大学大学院農学生命科学 研究科教員有志が担当している. ・講義対象者は大阪府下の市・町・村の公的機関,自治会組織,高等学校,各種団体,企業などである. ・2002年度の講義メニューは次の通りである. 1.生物関連:植物−14講義,動物−21講義,微生物−7講義,バイオテクノロジー・分子生物学−11講義 2.農業・環境関連:農業−6講義,環境−29講義 3.生物産業関連:新農業技術−10講義,未来産業−11講義 4.生活・文化関連:食料・食品−9講義,歴史・文化−8講義 5.体験学習−8講義 合計134講義が開設されている.メニューは広報を通し,また,求めに応じ配布している. ・出前開催経費は約2万円で,出前要請団体より徴収している. 2001年度は開催開始二年目であり,初年度の約2倍20件,2002年度は引きつづき同程度(17件)の出前要請があった. (3)大学が実施している府民講座および水曜講座に,大学院農学生命科学研究科は,毎年それぞれ2∼4名,5∼6名の 教員を講師として派遣し,各講師の専門分野に関連し,社会から要請のある話題について,一般府民に講演している. 2.体験学習 (1)園芸教室 附属農場が中心となって,地域住民,学内職員,組合員などに,2001年度は6回,2002年度は5回,園芸教室を開催し, 好評を得ている. (2)自然体験学習 附属農場がレンゲ畑と水田を自然体験学習用に地域住民に解放し,毎年近隣地域の幼稚園児,小・中学生の見学者を受入 れている.2001年度は22件 約2350名,2002年度は35件 約2740名を受入れ,希望者は年々増加傾向にある.

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3.生涯学習に向けての将来展望

今後,大学院農学生命科学研究科は地域住民の生涯学習の要望に応えるための場と機会を積極的に提供するため,大学内 の空間・緑地・農場などのスペースを地域と共通利用の場として活用することが望まれる.そのためには,近隣自治体の協 力と要望に配慮しながら,体験学習,情報の獲得,コミュニティー活動,アメニティー活動の場として,学内ビオトープ, コミュニティーガーデン,福祉農業体験圃場,プラント・アニマルセラピー実施場などの整備を行う必要がある.

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Ⅲ.研究室(講座)・附属施設の教員編成と研究現況

1.農学環境科学専攻

植物機能開発学研究室

(1)教員組織 (職種) (氏 名) (生年月日) (最 終 学 歴) (学位) (異動事項) 教 授

タル

モト

イサオ 昭和15年4月30日 京都大学農学部農学科卒業 農博 助教授

モリ

カワ

トシ

ノブ 昭和25年10月30日 大阪府立大学大学院農学研究科博士課程 単位取得退学 農博 助 手

ヤナ

マサ

ノリ 昭和37年5月8日 大阪府立大学大学院農学研究科博士前期課程修了 農修 (2)研究現況 本研究室は植物の有用形質を支配する遺伝子と遺伝的機構を分子から個体レベルで解析し,植物機能の開発・改良に効果的に応用 するための原理や育種手法を研究している.現在は,次のようなテーマを持っている. 1)植物系統分化の解明の観点から,ヒガンバナ科植物における遺伝資源学的研究,トウモロコシにおける観賞用としての遺伝 資源学的研究を行っている. 2)栽培植物における有用遺伝子の同定と利用の観点から,ソルガムの新幼穂形成について発現メカニズムの解明,遺伝子の同 定およびそのタンパク質,DNA分析.イネの幼穂形成に係わる発現メカニズムの解明,遺伝子の同定を行っている. 3)組織・細胞培養利用による生殖制御と育種的利用の観点から,ヒガンバナ科植物のカルス培養,胚培養やプロトプラスト培 養系の開発を行っている. 4)Avena属植物の遺伝資源を収集保存している.また,その有用形質の遺伝子分析を行ったり,染色体多型,種子貯蔵タンパ ク質,アイソザイム,PCR−RAPDおよびRFLP変異による遺伝資源の評価を行っている.その分析過程から栽培種や倍数性の分化を 明らかにしようとしている.また,耐病性遺伝子や矮性遺伝子などを近縁野生種から栽培植物に移入し,異なる遺伝的背景での遺伝 様式や形質発現について分析している.

作物機能制御学研究室

(1)教員組織 (職種) (氏 名) (生年月日) (最 終 学 歴) (学位) (異動事項) 教 授

ハラ

ロウ 昭和18年10月15日 東京大学大学院農学系研究科博士課程単位取得 農博 退学 助教授

ダイ

モン

ヒロ

ユキ 昭和31年5月8日 大阪府立大学大学院農学研究科博士後期課程 農博 単位取得退学 講 師

オオ

マサ

ミチ 昭和42年3月22日 東北大学大学院農学研究科博士前期課程修了 農博 (2)研究現況 本研究室ではイネ科,マメ科などの農作物を対象に,生育における生理的反応特性を解析して生育制御の機構を明らかにし,その 活用による新たな生産技術の構築と展開の可能性を追究するために,次の5つの研究テーマを柱としている. 1)マメ科作物の緑肥利用に関する研究.営農に於てエネルギーの低投入型化と環境に優しい持続型農業の確立が求められ,マ メ科作物の窒素固定能力の利活用が改めて注目されている.緑肥として利用可能な種々のマメ科作物の窒素固定能力を調査し,各種 の作付け体系における緑肥利用の効果,窒素の動態,作物間の相互関係を解析している. 2)マメ科作物における窒素固定に関する研究.マメ科作物の窒素固定の機構を明らかにするとともに,その固定能力を高める ため各種のマメ科植物の遺伝的能力を検討しその特性の導入を追究している. 3)水稲の直播栽培に関する研究.水稲作における営農上の国際競争力を備えるためには直播栽培技術の確立が不可欠である. 苗立ちの不良,生育遅れ,倒伏等の直播栽培に伴う種々の問題解決のための基礎的知見を得る.また,従来の品種の耐倒伏性の評価 は移植栽培体系において選抜育成された品種に留まるものであったが,直播に好適な耐倒伏性の遺伝資源について世界的な視野から の探索が望まれる.現在耐倒伏制と関連性の高い根の生長特性を明らかにするため直播が主体である米国の品種も用いて検討してい

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