Title
昆虫病原性糸状菌 metarhizium anisopliae と各種殺虫剤との
併用によるコガネムシ類幼虫の防除とその機構解析( 内容の
要旨 )
Author(s)
廣森, 創
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 甲第118号
Issue Date
1998-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2459
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(国籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及 び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 貞 虞 森 創 (京都府) 博士(農学) 農博甲第118号 平成10年3月13日 学位規則第4条第1項該当 連合農学研究科 生物環境科学専攻 静岡大学 昆虫病原性糸状菌施加血血椚α血頑肋と各 種殺虫剤との併用によるコガネムシ類幼虫の防 除とその機構解析 主査 静 岡 大 学 教 授 西 垣 定治郎 副査 静 岡 大 学 教 授 廿日出 正 美 副査 岐 阜 大 学 教 授 櫻 井 宏 紀 副査 信 州 大 学 教 授 森 本 尚 武 論 文 の 内 容 の 要 旨 コガネムシ類は鞘細目昆虫の一種であるが、その多くがわが国のみならず世界各地で農 業、林業の重要事虫となっている。作物への加害はもっばら幼虫期に土壌中で行なわれる ため、その防除は非常に園#である。現在、防除手段として主に殺虫剤が使用されるが、 その効果は十分ではなく、常時、大量の使用は人畜への寺性、環境汚染、害虫の殺虫剤抵 抗性の獲得など問題は多い。その一つの解決手段として、天敵を中心とする生物防除の研 究がなされている。本論文では、生物防除資材として有望視されている糸状菌の一種塑一 tarbiziul anisopli鱒と各種殺虫剤、IGR(昆虫成育阻害)剤を併用することにより 防除効果の増大をはかった。また、両者の共力効果の生ずる作用横構笹ついても解析をお こなった。
まず、塑.弧isopl阜些
の各種薬剤に対する耐性を検討した。その結果、本菌は室内シ ャーレ実験で数種のIGR剤、殺菌剤に対し感受性であったものの、他の多くの合成化学 薬剤に対し耐性を示し、また土壌中では、十分な分生子濃度が存在すれば、さらに広い範 囲の薬剤に十分な耐性を示すことが明らかとなった。そのため些.弧isopl卑猥と各種の薬 剤との併用は実用上問題のないことを確認した。 つぎに、払a山sopli鱒と各種防除薬剤との併用の効果を、コガネムシ類、主として ドゥガネブイブイの幼虫を材料に検討を試みた。その結果、室内条件下で併用による幼虫 の死亡率の増加が観察された。また、野外でのポット試験の結果も両者の併用により、塑. anisopli鱒感染の促進効果が認められた。以上の結果により、些.anisoplia9と各種防-57-除薬剤との併用によるコガネムシ類防除の実用化の可能性が確認された。 この両者の共力効果の出現する理由の一つとして、これら防除薬剤の対象害虫に与える ストレス効果により、虫休の防御システムを低下させ、そのため墜.鱒キ早Opli雛の虫体へ の侵入が容易になり、菌の感染が早い機会に行なわれ、その結果高い殺虫効果が得られる のではないかと推謝した。この共力効果発現の機構に関する推論を立証するために次の実 数の行なった。 まず、虫体に直接殺虫効果を示さない程度の低浪度、少量の各種防除薬剤、糸状菌をス トレツサーとしてドゥガネブイブイ幼虫に与え、塑.anisopliaeと併用して各種の実験を 行ない、その効果を見た。その結果、いずれも、墜.anisopliaeに対し虫休の感受性を高
め、その殺虫効果を高めることを確認した。このことにより、各種防除薬剤は、塑.竺主-SOpliaeとの併用の際、ストレツサーとして作用し、塑.anisopliae感染の機会を増大す ることが明らかとなった。 つぎに、昆虫の病原性糸状菌に対する防御機構として休内血液中の異物処理機能を有す る顆粒細胞、プラズマ細胞の存在が重要であることに着日し、薬剤の低濃度ストレス条件 下におけるこれら血球細胞の動向を実験により調査した.その結果、これらの血球、とく に顆粒細胞は各巻防除薬剤処理によるストレス条件下で顕著に減少することが確認され、 些.anisopliaeと防除薬剤との併用がこのような機構により虫休の免疫力を低下させるこ とを証明した。 以上の研究結果から、本論文は、昆虫病原性糸状菌をanisopl阜些をコガネムシ類の 生物防除剤として使用する場合、他の各種防除薬剤との併用が有効であり、その併用によ る殺虫効果増進の機構は他の防除薬剤のストレス作用による虫休の些.弧isopl車型に対す る生休防御機能の低下にあることを明らかにした。 事 査 結 果 の 要 旨 本論文は農業・林業上の重要害虫であるコカネムシ類の昆虫病原性糸状菌による防除 法について研究を行なったものである。コガネムシ類は長期間にわたる幼虫期を土壌中 で過ごし、その間、植物の板を食害するため、防除は非常に困難である。現在、防除手 段として主に殺虫剤の土壌処理が実施されているが、その効果は十分ではなく、安全性、 害虫の抵抗性の獲得などの面で閉居は多い。近年、それに代る防除手段として、天敵の 利用が考えられている。しかし、天敵は、殺虫効果の点で不十分であり、安定性を欠い ている。本論文では、コガネムシ幼虫の天敵防除資材として注目を浴びつつある昆虫病 原性糸状菌の一種旦etarhiziun弧皐S9pけ鱒を用いて既存の各種防除薬剤との併用によ
リ単独施用よりも高い殺虫効果が期待できることを示し、さらに両者の共力効果の生ず る作用機構についても解析を行なうといった、基礎、応用の両面にわたる研究内容であ る。本論文は大きく2章より成り、その内容は次のように要約される。 まず、第1章においては、を弧阜早OpI車型と防除薬剤との併用の基礎となる各種殺 虫剤、殺菌剤にたいする塑.型嚢opli準の耐性の有無を検討した。その結果、両者の併-58-用による菌への悪影響は、ほとんど問題のないことを確認できた。つぎに、墜.a恒sopli一 望と各種有機リン系殺虫剤、IGR(昆虫成育阻害)対等との併用による殺虫効果を コガネムシ類の一種ドゥガネブイブイの幼虫を用いて検討した。その結果、室内実数で は、併用により、それらの単独施用時よりも高い防除効果が得られることが明らかとな
った。さらに、ポット試験等の野外実験を行なったところ、室内実数よりは劣るものの、
併用による効果が認められた。これらの成果により、墜.弧isopli脈などの昆虫病原性 糸状菌と各種防除薬剤との併用によるコガネムシ類の防除の実用化が期待された。 つぎに弟2章において、塑.弧isop極と各巻防除薬剤の併用による殺虫効果増進の 機構解析を行なった。両者併用による殺虫効果の上昇は、防除薬剤のストレス効果によ る虫体の塑.弧i早Opli鱒の防御システムの低下ではないかと考え、まず、虫体に直接殺 虫効果を示さない程度の各種防除薬剤、糸状菌をストレツサーとして虫休に処理し、塑.a山sopl皐鱒と併用して、その効果を見た。その冶果、予謝通り墜叫is叩1草加に対す
る虫休の感受性が高まることを確認した。さらに、その原因として虫休の防御機構に深 く関わりのある幼虫休内の血液中の顆粒細胞、プラズマ細胞の変動を、薬剤の低浪度ス トレス条件下において調査した。その結果、これらの血球、とくに顆粒細胞ははストレ ス条件下で顕著に減少することが確認され、このことが、虫体の免疫力を低下させ些. anisoplj些と防除薬剤との併用効果を高めることを立証した。 以上について、審査委負全点一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学位論 文として十分価値あるものと認めた。 <基礎となる学術論文> 1)Hiromori,肋jimeandNishigaki,Jojiro:JointactionofanentOmOpathogenicfunguS(Ⅱetarhiziup ani琴OPl享鱒)Yith syntheticinsecticides against the scarab beetle,Anontala cuprea,(Coleoptera:Scarabaeidae)1arvae.Appl.Entomol.Zool. (Accepted) 2)廣森 創・廿日出正美・西垣定治郎:数種殺虫剤、病原性糸状菌をストレス源と するドゥガネブイブイ幼虫の且etarhizium 決定済) anisopli脈感受性の変化.芝草研究 (掲載