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肺血管系の病理(Ⅰ)

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(1)

〔綜 説〕

(喪脇墜整舞懇∼3鴛/

肺血管系の病理(1)

東京女子医科大学病理学教室

授 今

イマ 井 イ ミ 喜 キ

(受付・昭和33年1月30日)

系統的な病理学書を開いてジ肺血管系病変につ いての記載を見るようになったのは比較的新し い。特に心,肺を含めた小循環系としてどりあげ て論じられるようになったのはここ十年号のこ≧ であらう。大循環系にわいても,血管病変として は,大動脈の病変,特殊な動静脈炎:,臓器.血管の 主として硬化性変化等が個々に論じられていた時 期から,心臓をふくめた.血管系統全体の問題とし て改めて心,血管変化が見直されるようになっ た。勿論このようなことを,以前から注目していた 医学者もないわけでは信かつたが,生理的,.病態 生理的研究方法の発達により,生体における動静 を時に応じてとらへることができ,実証的なData が得られるようになってから,機能的変動と形態 変化とのむすびつきが次第に明らかになりつつあ る。こういう中から,ショック,高血圧の問題, 臓器:炎の問題等が解明される道が開かれる。 肺」血管系においても同様で,今日迄の研究を総 括すると大体次の如く分類される。 初期よりの研究としては 1)解剖学的,組織学的な肺画t管系の正常構造 に関する研究1)’5)。 2)特殊な肺血管病変を示す例の症例報告。(此 の中には慢性心・肺疾患と関聯のあるものが 多く含まれている) が主であり,比較的近来になって 3)気管枝血管系及びそれと肺動静脈系との関 係について,また肺動静脈系内諸短絡路の問 題に関する研究6♪、ユ。)。 が病躯となり,これに呼吸,循環に関しての生 理的,病態生理的研究成果1エ’∼ゆを参考して 4)大小循環系.血管構造の比較研究5),。 5)種々の急性,働性心,肺疾患の肺循環肺病 変の再検討を行った研究17)’ 25)。 が相次いであらわれた。 著者も嘗て:先天性及び後天性心疾患における肺 血管系の変化を55例の剖検材料について観察し, その結果の一一一i部を報告した2A)。それは約言すれば,

肺血管樹に与えられるhamodynamischな条件

の変更に対応する形態変様である。著者はその 後,この形態変様の中に含まれている有機的な性 格をより深く,より明確に理解せんとして,つぎ の順序により研究を続行した。 1..基準としての「正常」形態の關明 正常形態とは決して固定された理念的形象では ない。ある条件範囲で動揺する機能過程の形態的 表現である。したがってこの問題の解明には,正 常の機能負担が血管樹の各区間にどのやうに分布 されているかを明らかにすることになる。そして この知見こそ種々の異常条件下の形態変化を把握 する際の基盤となるべきものである。 この研究は具体的内容としてつぎの項目を包含 する。

i)Miller等によってSchemaの形で与えら

れた肺動,静脈樹の実状の再検討。 ii)これと気管枝動脈との関係。 iii)従来から論議されながらまだ帰趨の明らか でない諸系闘吻合路の検討。もし存在すると Miki ・IMAI : (Department of・Pathology, Tokyo Women’s Medical Coilege) : ( 1 )

Pulmonary Vascular System.

Pathology of the

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すれば正常時におけるその意義。 iv)以上諸形態の年令的変遷。 2.上記の基本研{究によっそ明らかにされた諸 項目の病的条件下での変容。これはさらに次の如 く区分される。 i)旬外環境の変更に基く一次的変化。 ii)この一次的変化を与件として進展する諸変 化。 著者は今日迄,これらの問題の全般にわたって 結論を得たというわけではない。此の論文におい ては問題の一部である慢性心疾患における肺血管 樹系の諸変様をとりあげ,これを中心として肺血 管系変化の有機的な関係を,正常構造と関聯きせ て見なおしてみたいと考えるのである。 用いられた例は,先天性心疾患45例,後天性心 疾患80余興が中心であるが,その他に各年令層の 各種疾患の剖検例から適宜対照が選ばれた。代表 的な例を連続切片により追求し,それから得られ た知見を基にして,その他の例を一般組織標本, 色素加ゼラチン注入標本により検討した。 先天性心疾患はつぎの如く分類される。 A 脚高血圧を来す先天性心疾患。 ユ. 心房中隔欠損 2. 3. 4. 5, 卵円孔開存 第一次心房中隔形成不全 心室中隔欠損 ボタロー導管開存 動脈転移心室中隔欠損 総動脈幹残存 6例 4例 15例 2例 1例 1例 B 肺動脈流入1血の減少を来す先天性心疾患。 1・ ファロ 一一氏四壁症 15例 2・純型肺動脈緋口狭窄症 2例 3・先天性三尖弁口狭窄症 1例 後天性心疾患としては80余財の僧帽弁口狭窄並 びに閉鎖不全症が主として用いられ,その他の弁 膜疾患,高血圧症,心筋障害等の諸例は参考に用 いられた。 以上の諸例は各例毎に心の病変の程度が異り, 生存期間,臨床経過も区々であるから(先天性の場 合は合併症で死亡したものが多い),本来は各例e“ とに検討すべきであるが,今回は総括的な記載に とどめ,詳細は今後の報告にゆつることにしたい。 肺動脈高血圧を来す先天性心疾患の際の肺血管 系の変化 1.心房中隔欠損:此の中6例は卵円孔凝鮒, 4例は第一次心房中隔形成不全による心房中隔下 部の欠損である。 一般に卵円孔開存の際には左右心房の血圧差に 』よって欠損部を通じて左房から磯草へと血流が行 われ右心系と肺との問に一血液の再循環が行われ る。その,tめに肺血流:量の増大がある。このもの は肺の流床の増加,短絡路の利用と,右房の拡 張,肥大によりょく代償され,開存口の小さい場 合には殆んど無症状に経過し,健康診断によって 発見きれだり,死後剖検によりはじめて見出され ることも稀でない。したがって何等かの症状を呈 して医者を訪れる者は,欄存口が大きくて,年令 を重ねるとともに,上記の肺及び心の代償機能に 多少なりとも破綻を来したものであることを考慮 に入れて剖検例を検討する必要がある。 a)軽度の変化:肺動脈は流量の増’加のために 拡張のあることは当然予想されることで,1ユ才で 手術後の肺水腫で死亡した1例においては,肺動 静脈の拡張(毛細管,前毛細管性動脈,後毛細管 性静脈をのぞく)が全経過にわたr)て見られるの みでその他に著変を見ない(写真1)。

b)高度の変化:それぞれ24才及び31才で

死亡した2例においては高位,中位筋型肺動脈 が,対照例に比べて遙かに太く,著明な中膜筋層 の肥大がある(写真2)。また高位動脈では部分的 に,中位動脈では略々全長にわたって,中等度の Fibro−elastoseが見られる。(註:以下筋型肺動 脈を分けて,高,中位及び末梢母型肺動脈という 名称を用いるが,これは著者が,筋型肺動脈と気 道との関係から,筆算上名づけたもので,末梢尊 号動脈は大体終末小気管枝から呼吸小気管枝に沿 う部分で,この部から筋層を欠く動脈毛細管移行 部につづく。高・中位動脈と記載したものには忍 辱とした境界があるわけではない。低血圧循環系 である肺1血管系では,大循環系における臓器血管 のようには血管樹各部の機能半靴の差が著しくな いものと思われる。末梢筋型動脈は,中膜の肥大 と,内弾力膜の増強が目立つ(写真3)。しかしこ の状態は,後述する心室中隔欠損例よりは遙かに 軽い。 筋層を失う直後の動脈毛細管移行部には特有な 動脈内膜炎がみとめられる。すなわち内皮細胞 様,或は類上皮細胞様の細胞が,種々の程度に増 一 180 一

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殖し,著しい部分では増殖細胞のために,.血管壁 が著しく拡張ざれ,内腔はほとんど,或は全く閉 塞されている(写真4)。また増殖細胞塊の中に細 い」血路が形成されて,糸球体様の所見脅呈レたり 血栓形成及び」血栓の器質化が加わって,部分的な 線維化像も混じている(写真5)。このような動脈 内膜炎は引きつづき早臥末梢動脈まで及んでいる こともある。こういう変化を呈する動脈の更に末 梢は毛細管に移行する前に拡張を示す部分があ る6 d)前2者の中間に位する変化を示すのが17才 及び20才の卵円孔開存例である。高・中位筋型肺 動脈の筋層の肥大が目立ち,末梢動脈の筋層肥:大 と,内弾力膜の増強,動脈毛細管移行部内皮細胞 の軽度の増殖が見られる。静脈は一般に内障が広 く,壁はうすい。 心房第一次中隔形成不全による心房中隔下部欠 損に於ては,略々卵円孔開存と同様の所見である が,4例共に年令が若く,そのため肺一血管の変化 は軽い。この場合には房室弁の閉鎖不全を伴いや すいために,前者よりも早く臨床症状があらわれ る可能性がある。2例(1エ才及び8才)では内腔 の拡張のみであり,他の2例(9才及び7才)では筋 型動脈の軽度の中膜肥大がみとめられる。後者の 1例では中位動脈内膜の部分的Fibro−elastose, 動脈毛細管移行部の動脈内膜炎初期像がみとめら れる。 2.心室中隔欠損:この中に含まれるのは, 大動脈の右側転移を伴うEisenmenger氏複合と それを伴わないRoger氏病及び両者の種々の程 度の移行型を総括し,合計15例である。心房中隔 欠損と異る所は,流量増加の上に左室の高圧が肺 動脈通1流に加わることである。したがって心房中 隔欠損に見られたと同種の変化が,ずっと早期か ら起ることになる。

『a)軽度の変化:4才,4才,5才,6才の4

例では高位より末梢に到るまでの筋型肺動脈の内 灘の拡張を伴った,中等度の筋層肥大があり,末 梢筋型動脈の内弾力膜の増強が目立つ(写真6)。 b)中等度の変化:22才,29才,26才で死亡し た3例では,高,中位動脈の強い中膜筋層の肥大, 内弾力膜の発達に’加へて,内膜のFibra−elaLRtose が著明であり,特に此の変化は,中位動脈に強い 傾向がある(写真7)。此の場合筋層の萎縮を来し ていない中は内膜変化のために,内腔の狭窄が起 る錫合がある。末梢動脈及び動脈毛細管移行部で は,動脈内膜炎の初期変化のために内腔の狭窄の ある揚所も見られるが,閉塞性変化はみとめられ ない。

c)高度の変化:26才及び41才の2例におい

ては肺動脈幹にはじま弓弾力型動脈の強い拡張 と,壁の肥厚,内膜のAtherosklerose,及び Fibroseの変化が所々に見られる様子は,あたか も大動脈の分枝を見るようである。高位潮型動脈 は内腔が広く,強い中膜筋層の肥大があり,顕著 な内弾力膜が:重層している。同位より末楕動脈に かけて,高度のFibro−elastoseに加えて,末梢 に行くにしたがい,動脈内膜炎の性格が強くなる。 動脈の多くの分枝は,さきに心房中隔欠損の高度 の肺動脈変化として述べたような,特異な閉塞性 動脈内膜炎の像を呈している(写真8)。それより 末梢は急に血管腫様の肺胞壁毛細管拡張部に移行 する。閉塞性動脈内膜炎の陳旧になったものでは, 炭粉沈着のある線維性組織による動脈閉塞として みとめられる(写真9)。このような閉塞性変化は, 頚1栓形成も加はつて次第に高位動脈へと進展す る。激しい動脈壁の変化として,時に壊死性動脈 炎の像を示す場合もある(写真10)。

3.ボタロ下野管開衿:3例共に20才を越え

る者であり,変化は,心室中隔欠損例の高度のも のと同類である(写真ll,エ2)。 4.動脈転移兼心室中隔欠損:本営は6才であ るが,すでに2.の最高度の変化に一致する。 以上の肺動脈高血圧例では,毛細管拡張による 肺胞虚脱,閉塞性動脈炎による血液分布の不規則 から招来される肺構造の改変,出血,褐色硬化壁の 変化が年と共に進行する(写真13,14,15)。 上記の肺動脈高血圧性変化の意義:この変化の 組織発生を解する場合に,大循環系における高血 庄性血管変化が参考になる。ただ,高血圧に対し て,発育過程における血管系の適応性が,先天性の 場合には,後天性のものよりはるかに大きい。一血 流の増加,高血圧に対して,内腔の拡張と,中三筋 の肥大で応じる度合は,・格段にちがう。、しかしこ の適応にも限度があり,早晩は過度の慢性刺戟か ら,内膜のFibro−el我stose,筋層の萎縮に転じ る。.この変化が早くあらわれるのは,中位及び末 梢筋型動脈で,変化は次第に上行する。ζのこと 一 131 一一

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は,正常時における,血液分布の調節が,中位よ り末梢動脈にかけての動脈で行われいることに一 致する。 筋層を失った動脈毛細管移行部にまず見られる 変化が,先天性肺動脈高血圧の特異な所見である が」これも大循環系の悪性高血圧の際の末梢動脈 内膜炎と同類のものと考えられる。強力な筋層を 持つたより高位の一血管の高度の収縮から(此の収 縮により,毛細管血圧が過度に上昇することがふ せがれている),宋梢1丘L流の一時的な杜絶にいたる 揚合もあり得る。そうした揚合・の動脈壁障害は,激 しい時は壊死性動脈内膜炎,緩徐な時は内膜障害 に続いて内皮細胞の増殖としてあらわれる。そし て断続する血流が障害された血管内に流入する。 このような変化が反覆される中に,増殖した内皮 細胞群の間に血流が行われて,時に動脈瘤状に拡 張した内曇に,特異な糸球体様の結節が出来上る。 正常肺でも,血流が区域ごとに交互に行われてい る事実は実験的に証明されていることであり,血 流量が多く,高圧の肺動脈が,高度に収縮すること は充分考えられることである。なおこの詰合,上記 の変化のある動脈が,.Sperrarterieといわれる, 特殊な動脈であるとは考え難い。そうして,この ような肺動脈枝の狭窄晶晶は閉塞性変化による, 末梢血路通過障害から,肺循環流床の不規則性が 増し,ある部では血管腫様の毛細管拡張,ある部 では肺胞萎縮による気腫性変化がわこり,それに 一血液漏出による褐色硬化,反覆言出一二等が加わる。 こうした肺構造の改変は逆に又肺高血圧を二進き せることにもなる。 肺動賑流入血の減少を来す先天性心疾患におけ る肺血管系及び気道の変化 これに属するものはFallot氏四幅症,純型肺 動脈弁口狭窄症,及び先天性三尖弁口狭窄症であ る。てれらの揚合の肺循環は,前述の肺動脈高血 圧症の時のように問題が簡単でない。それは肺循 環において屡々論議される気管枝一血管系の問題が 絡んで来るからである。このことについては後で ふれることにして,つぎにその所見を記載する。

a)軽度の変化:9才,5才,7才の諸例で正

常小児肺の所見と異る所は,三内1血液分布が不規 則なこと,(但しこれは小児肺では肺胞発達が不充 分なことから,また死亡時の状態から,これに類 似した所見は普通でも見られることがある),気管 枝動脈の発達が正常より強いこと等である。肺動 脈枝は壁がややうすいこともあるが,甚しく萎縮 性ということはない。また肺胞壁特に呼吸小気管 枝に近い肺胞壁の弾力線維がやや強い。 b一)高度の変化:10才,ユ2才,15才,20才,22 才の諸例の変化がこれに相当する。弾力型及び高 位筋型肺動脈枝は正常に比べてやや鼻腔が狭く, 壁がうすいという程度である。中位旧型動脈よ .り,末梢動脈にかけて特異な変化が見られる。こ の区間の動脈の内需は大体正常或は少し広い,壁 の中膜の厚さは,正常乃至やや厚い。内膜の所々に 限局性の線維性肥厚が見られる。このものは末梢 、部,特に肋膜下の動脈枝に著しい傾向がある。著 明な場所では,.血管外径が著しく拡大し,中膜は 萎縮或は消失し,内腔に向って細胞成分にとぼし い,種々な古さの線維性隆起が不規則に突出し, 此のため血管腔は裂隙状を呈したり(写真16,17, 18),数本の細管に分れたり(写真19),或は叉全く 閉塞きれたりしている。時に膨化内膜に蛋白質に 富んだ血漿成分の浸潤のあるような新しい血管壁 障害像,又新鮮血栓形成のみとめられる例もある (写真20)。気管杖動脈は著明に発達している。 C)中等度の変化:a)及びb)の聞に動脈内 膜炎の種々な程度のものがある。 純型肺動脈弁口狭窄2例及び先天性三尖弁口狭 窄1例の変化は,Fallot氏四徴症のものと同類 である。 高度の.血管変化を呈しているような例では肺内血 液分布の不規則,肺胞壁弾力線維の増加,不規則 な肺胞虚脱巣,叉屡々呼吸小気管枝内に少量の滲 廿1物を見る(写真21,22,23)。 上記の変化の論義 先天性肺動脈弁口狭窄等で心から肺動脈を通じ て,肺へ流入する血液量の少い揚合の,肺1血管系 及び気道系の変化は,単純な最低血圧性変化とは いい難い。気管枝動脈をはじめ,大循環系からの 血液供給路は剖検時,肉眼的にも目立ち,・叉組織 学的にも気管枝!血管系の異常な発達が見られる。 こうした.血.路が,肺動脈並t流の少いことの補いと なるということは,古くから考えられていた。し かし,気管枝一血管系に関する研究がすすむにした がって,血圧及び一血液性状の全く異る大小循環系 の結合が,一血液の補充以外に,肺及び心にもたら す影響についての考察が進められ,諸種の心,肺 一 182 一

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疾患の際の気管枝血管系の意義が明らかになりつ つある。その中,特に前毛細管性吻合の発達によ る,:大循環血圧の肺動脈圧への影響については未 だに諸家の意見の一致を見ないところである。肺 動脈弁口狭窄等で,代償的に気管枝動脈が発達す る掛合,.吻合路が発達するにしたがい,肺血流が 増加するのみならず,大循環血圧の影響を受け て,次第に肺動脈高血圧に移行すると考える者 は,前記の肺動脈枝,肺胞壁の変化を,肺動脈高 血圧性変化と解している。またある者は血圧の影 響は考慮外とし,年を経るにしたがって,肺に異 常に多量の血液が気管枝動脈を通じて流入するこ とが,小動脈や肺胞壁毛細管の拡張をうながし,

肺胞を圧迫してPneumonoseに到らしめるとい

っている。 著者も肉眼的,組織学的所見及び組織標本の連 続切片の所見から,気管枝.血管系の異常な発達に ついては異論はない。又気管枝壁に淋巴濾胞が多 数に,しかも末梢気管枝壁まで見られることも気 管枝動脈発達の一つの証左である。しかしながら 気管枝動脈血の肺組織への供給路については更に 検討して見る必要があらう。 後天性の肺疾患に於ける気管眼動脈発達につい ては,Liebow7),青木8hr中村9)等の詳細な研究 があるが,これらの多くの媛合は何等かのかたち で肺の荒廃が前提となって気管枝動脈の発達が促 される。これに対して,ここで扱う先天性心疾患 の農業には,少くとも一次的な肺組織の荒廃が老 えられないという点で,両者を一日に論じること には無理があろう。 ここで著者は此の暗合の変化の組織発生を,便 宜上二つに分けて考えて見る。一つは肺動脈血不 足による変化,他は気管枝動脈発達に伴う変化で ある。勿論両者は互に関聯があり,特に年令の進 んだ者では両者の関係が深い。肺動脈末梢部の特 異な動脈内膜炎,年令の進んだ者で見られる気道 末梢部の萎縮,呼吸小気薄舞,肺胞道に特に強 く,時には肺胞壁全体にわたる膠原線維及び弾ヵ 線維の増強等は前者のあらわれであらう。動脈内 膜炎はその発生部位が初期には冷々一定してい て,末梢筋型動脈で,しかもその像は緩徐な発生 を思わせる。これは上流動脈閉塞,狭窄等による 永続的な血流不足ではなくて,断続的なあまり激 しくない血液の不足によるものと思われる。(こ れは生理的な肺循環に於ける区域的な交互の循環 消長から推定される)。これに1血栓形成が合併する こともある。肺胞壁弾力線維の増強は肺胞壁の循 環不充分の上に:Hypoxamieに伴ふ過度の呼吸に よって促されるものと考えられる。但し,高年令 者のように肺胞壁萎縮の結果,肺気腫状になって いるものは見られない。 気管枝動脈は組織標本で見るとなるほどかなり 末梢まで相当の太さと筋層を持つた壁を保って居 るが(写真24),これが毛細管或は毛細管に近い細 きにまで分枝することなく,肺動脈枝と連絡して いる像は,著者の見た範囲では見出されなかっ た。ただ,前毛細管性の両動脈吻合は一部の者に 否定きれながらも多くの研究者により先天性心疾 患でも,健常肺でも存在するといわれているか ら,著者も例を加へてきらに検討して見たいと思 っている。しかしながら,生後に発達した気管枝 動脈が,相当の大循環系動脈圧を保つほどの太さ のままで既存の肺動脈系に入りこみその流路を利 用するということは寧ろ考え難い。もし吻合路が できるとすれば,気管枝末梢部における肺動脈, 気管枝動脈の毛細管性吻合部から発達するもので はなかろうか。高年令者では屡々この部に…致し て気管枝周囲組織の拡大と線維化が見られる(写 真25)。また多くの例で終末気管枝から呼吸小気 管枝にかけて,脱落した.L皮性細胞と少量の滲出 物とからなる一種のmildな終末気管杖炎が認め られるのも,この部の循環路の利用と関連がある と考えられる。 また気管枝一血管系の流路の一つとしてつぎのよ うな所見がある。高度の肺動脈弁口狭窄のあるフ ァv一塁四季症の1例を連続切片により追求して 見ると,小気管国国で毛細管程度に迄分枝した気 管枝動脈から末梢気管枝周囲の肺胞壁毛細管への 豊富な連絡がみとめられる。このことを考慮に入 れて肺組織を見ると,毛細管拡張のある部は巣状 に分布していて決して一一一・様でない。連続切片標本

のRekonstruktionにより見ると,末梢気管枝

分岐部で特にそれが小葉間静脈網に会する揚所を 中心として肺胞壁の毛細管拡張による巣状の不全 拡張部がある。この関係は小児肺では肺胞の発達 が不完全なためよけいに目立つ。肺内部では気管 枝一血管は後毛細管性肺静脈に流入することが正常 肺に於て明らかにされている。一方この部は肺小 一 133 一

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葉末梢で肺動脈側からの血液供給に不利な揚所で もあるか.ら,気管枝動脈の発達と共に⊥記の血路 が発達することは充分考えられる。. 胎生以来,気道系と肺動静脈系を構成の単位と して発達した肺が,生後上述のような経路で気管 枝動脈か.らの血液を多量にうけることは,.とりも なおきず肺内循環単位の改変である。たとえ量の 点で肺が充分な一血液供給を受けたとしても,ガス 交換に役立つ臥床は正常肺より少い。その上びま ん性肺胞壁肥厚,前記の肺動脈枝の動脈内膜炎及 び血栓による狭窄,閉塞,更に終末気管枝炎によ るVentilationの不全が加わって,肺機能は次第 に低下することになる。 以上の先天性心疾患における肺循環系及び気道 系の変化を通覧して感じられることは.,種々な条 件の調和した作用のもとにはじめて可能な臓器の 正常の発育が,一つの条件の強調或は不足から異 常な発育をとげる場合には,後天性のものに比べ て所謂代償が旺盛に行はれるとしても,その臓器 ひいて’は全身の機構に全く適合した代償というも のは期待され難いということ.である。このことは 他面からいえば先天性後天性を聞はず1また生理 的病的を問はず,個体の存続を旨ざした動きは変 化自身の中にはないということである。その結果 は,問題の臓器が身体内で占める:重要度にしたが って,個体の存続の限界が定められることになる。 (未完) 交 ・献

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写真 1.卵円孔開存,11才,弱拡大 Elastica−v. Gieson染色,動静脈の拡張 写真 2.卵円孔開存,31才,弱拡大 Elastica v. Gieson染色,高・中位動 脈の内腔拡張と中膜筋層肥大 写真 3.卵円孔開存,写真2.と同嚢 中拡大,El. v. G.染色 末梢藤織動脈中膜の肥大,内弾力膜増強 動脈毛細管移行部の軽度の内膜炎像 藤

灘轟

魏魏

鍵、

軽〆』

べ毒拶 写真 4.卵円孔開存,写真2.と同例 解拡大,、E1. v.(].染色,動脈毛細管移行 部の特異な内膜炎 写真 5.卵円孔編綴,24才,中拡大 EI. v. G.染色,動脈毛細管移行部の糸 球体様動脈内膜炎 写真6.心室中隔欠損,4才,弱拡大 E1. v.G.染色,中位より末梢動脈 醐ら185・一

(8)

写真 7.心室中隔欠損,22才,中拡 大,EI. v. G.染色,中位,動脈の筋層 肥大と内膜のFibro−elastosei動脈毛 細管移行部の内膜炎 写真 8.心室申隔欠損,12才,最弱 拡大,E1. v.G.染色,高・申位動脈の 高度の筋層肥大,内膜のFibro−elastose 末梢動脈の内膜炎 写真9.心室申隔欠損,26才,弱拡 大,Azan染色,中位,末梢動脈にわた る古い閉塞性動脈内膜炎,炭粉沈着を 伴う ’5真10.心室申隔欠損,41才,弱拡 大,E1. v.G.染色,申継より末梢動脈 にわたる壊死性動脈炎。それより上部 動脈の内膜!Fibro−elastoseと中膜萎縮 写真11.ボタ・一欝欝開存,・20才, 弱拡大,tEl.v.G.染色,高・中位より 末梢動脈の内膜炎及び血栓による閉塞, 中膜萎縮 灘 +9・s

聯懸,

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謡講

写真12.写真11.と同例,弱拡大, E1. v.G,染色,譲位動脈の中膜肥大, 内膜Fibro一一elastose末梢動脈の高度の 閉塞性動脈内膜炎 . 186 一

(9)

餓謎

勲購讃

蒙鐸

写真13.心房申隔欠損,写真2.と同 例最弱拡大E1. v.G.染色,下部は毛細 管拡張による肺胞虚脱,上部は気腫性変 化 写真14.心室中隔欠損,写真9.と 同例,最弱拡大Azan染色,左上部褐 色硬化,中央部気腫性変化 写真15. ボタロー氏管開存,写真11. と同例,最弱拡大 ’E1. v.G.染色,毛細 管拡張による肺胞虚脱巣と気腫性変化 懸

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写真16. プアm;一聯四徴症,20才, 申拡大,El. v. G.染色,末棺動脈内膜 の線維性肥厚

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写真17. ファ・7氏聴講症,t 12才,申 拡大E1. v.G.染色,末棺動脈内膜の線 維性肥厚

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野曝

写真18. プア・Pt氏四徴症,6才,弱 拡大EJ. v. G.染色,肋膜下の末梢動脈 の内膜肥厚と内腔拡張,写真16.17,の 例より内膜増殖結合織が若い 一・ 137 ,一

(10)

写真19. プア・t一一氏謙譲症,6才,中 拡大E1. v.G.染色,内膜炎により細管 に分劃きれた末梢動脈Giampelmoに よりSeptierte Rekanalisationと云わ れたもの

写真20. プアn 一・氏四轟轟,写真18 と同例,弱拡大Azan染色,末梢動脈 の拡張,壁の比較的新しい雛性肥厚 同組織への血漿滲潤,血栓形成

嚥 t.,’agi’;illvl’ 藷媛羅

糞欝饗懇

写真21. プア・一議四難症,写真18 と同例,中拡大E1. v.G.染色,肺胞, 肺胞難壁の弾力線維増強,呼吸小気管 枝より肺胞道にわたる滲出物

、、i馨 藁・構響 認鮒聡3

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写真22. プア・一難四徴症,写真18 と範例,最弱拡大E1. v.(}.染色,巣 状の肺胞虚脱部 圏.

.’・g 『嚢 誌

・黙叢

叢、樗

懇懇1

瓢雑・ 写真23. ファロー氏四徴症,写真16 と同例,最弱拡大E1. v.G.染色,肺 胞虚脱巣と気腫性変化 写真24. プアn一氏四徴症,写真18 と無難,弱拡大Azan染色,気管枝動 脈の高度の発達 “188 一;一

(11)

餌 Iiiiiil/ii.lilil・ii,.,.li,.iff i三嚢憲 写真25. ファ・一氏四徴症,22才,弱拡大 E1. v.G.染色,右上部萎縮した壁を有する申. 位動脈,左下部末梢気管枝周囲の炭粉沈着を 伴う硬化,気管枝動脈枝の発達 一一 139 一‘

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