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石川県立看護大学 大学院 看護学研究科

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(1)

石川県立看護大学

大学院 看護学研究科

博士論文

地方農村部シルバー人材センター会員による 主体的健康づくり活動のプロセスと支援の検討

米澤 洋美

2019

(2)

1

Process of Members' Voluntary Health Promotion Activities at Silver Human Resources Centers in rural areas.

【Objective】 The purpose of the present research was to consider the process of voluntary health promotion activities for members of silver human resource centers (SC) in rural areas and to clarify the support required by members.

【Methods and Results】This study was conducted in two stages. First, we conducted a preliminary survey in which we collected and organized information on members’ health management and responses on members’ voluntary health promotion activities in X

prefecture (N = 14). Then, we examined the actual condition of SC health management and health promotion activities in a self-administered, postal questionnaire survey (N = 1304) completed by SC administrators. The results showed that health management often consists of prevention of injuries and accidents at work. Voluntary Health promotion activities were carried out at approximately 30% of SC. Because there is no employment contract between members and the SC, the member is treated as a sole proprietor, so it is necessary for members to engage in health management themselves. The purpose of the preliminary survey was to examine cases of voluntary health promotion activities of elderly members of human resource centers, and to qualitatively examine the significance of these activities from the contents of semi-structured interviews. Using an interview guide, interviews were

conducted with seven members of the SC secretariat and administrative staff at five SC

where members perform voluntary health promotion activities. In terms of the significance

of the activities, the following four main categories were extracted: “senior management

(3)

2

supporting the launch and continuation of activities”, “administrators fostering the

autonomy of other members”, “the joy and satisfaction gained by the members who perform health promotion activities from conducting the activities themselves”, and the “ripple effect of increasing and maintaining membership”. These main categories suggest that there is added value that leads to long-term participation of the members. After the preliminary survey, we conducted a secondary survey involving participatory action research to examine the support necessary to start activities in rural SC. We analyzed the process of voluntary health promotion activities among 12 members and advisors from the following

perspectives:

1: Planning, implementation and evaluation of activities through conferences (qualitative analysis)

2: Subjective activity meetings held before and after conferences attended by members (self-administered questionnaire survey)

3: Analysis of actions performed by the facilitator (qualitative analysis)

4: Descriptive analysis of questionnaires on subjective activities that were completed during meetings

The survey was conducted with the approval of the ethics review committee of the

researchers’ institution. The results showed that during the entire process, “discovering and

analyzing tasks that require resolution in specific communities” accounted for the greatest

amount of time. Ultimately, we organized a simulated health event for the elderly, and even

though health problems emerged, the current health status was not decided by <currently

feeling OK> or <other people’s affairs>. After that, the viewpoint of members changed to

the future and awareness of the aging. While advisors hoped for continuation of health

(4)

3

promotion activities, there were problems related to <other people’s affairs> and advisors made proposals to facilitate planning of experiences to make members’ group decisions on health issues easier and to help clarify future prospects, but in fact, this did not proceed as expected.

In the determination of health issues, it is conceivable that the current health status of members is good, resulting in optimism and thinking that everything is still OK. This can lead to unpredictable events in the final selection process of health tasks. Meanwhile, persons involved in the management of subjective activities can take a selfish and altruistic viewpoint when exploring survival as a society.

【Discussion】It is important to understand the significance of subjective activities and

paying attention to the management of meetings for subjective activities. In order for

members to acquire the skills necessary to plan and implement independent activities, the

advisor is required to support equal relationships based on awareness that they should

facilitate the decision making of the SC members.

(5)

1

目 次

論文の全体構成 ... 2

第Ⅰ章 序論 ... 4

1 研究の背景 ... 4

1) 日本の高齢者就労の現状 ... 4

2) 就労と健康との関連 ... 5

3) シルバー人材センター会員の法的位置づけとそれに伴う健康課題 ... 7

4) 住民の主体性の獲得とその支援 ... 11

2 研究の目的と意義 ... 12

3 用語の定義 ... 14

4 文献検討 ... 15

4-1:日本の高齢者の就労と健康づくり・健康管理との関連 ... 15

4-2:シルバー人材センター会員の健康課題,会員の健康づくり活動・健康管理 ... 22

5 倫理的配慮(概要) ... 29

第Ⅱ章 本論 ... 30

1 予備調査(1) X 県内シルバー人材センター会員の健康管理・主体的健康づくり活動に関する実態 把握 ... 30

1) はじめに ... 30

2) 目的 ... 31

3) 方法 ... 31

(6)

2

4) 倫理的配慮 ... 31

5) 結果 ... 31

6) 考察 ... 35

7) 研究の限界 ... 35

8) 予備調査(1)の小括 ... 36

2 予備調査(2) 全国調査によるシルバー人材センター会員の健康管理に関する統計的検討 ... 36

1) はじめに ... 36

2) 目的 ... 36

3) 方法 ... 36

4) 倫理的配慮 ... 38

5) 結果 ... 38

(1) 回収率および対象の属性 ... 38

(2) シルバー人材センターの概要 ... 39

(3) 健康管理実施の有無とその内容 ... 40

(4) 主体的健康づくり活動の有無とその内容 ... 46

(5) 保健師や地域包括支援センターとの連携 ... 47

(6) 主体的健康づくり活動と関連するその他の要因 ... 48

6) 考察 ... 51

(1) 健康管理実施の有無とその内容 ... 51

(2) 主体的健康づくり活動の有無とその内容 ... 52

(7)

3

(3) 主体的健康づくり活動の有無と他の項目との関連 ... 53

7) 研究の限界 ... 54

8) 予備調査(2)の小括 ... 54

3 予備調査(3) シルバー人材センター会員の主体的健康づくり活動の意義 ... 55

1) はじめに ... 55

2) 目的 ... 55

3) 方法 ... 55

4) 倫理的配慮 ... 58

5) 結果 ... 59

(1) 対象,シルバー人材センターおよび主体的健康づくり活動の概要 ... 59

(2) ストーリーライン ... 59

(3) カテゴリーの説明 ... 61

6) 考察 ... 67

(1) 下支え型の事務局の支援 ... 68

(2) 会員の主体性の醸成 ... 68

(3) 主体的健康づくり活動そのものの喜びや満足 ... 69

(4) 会員数の維持・増加への波及効果 ... 70

7) 研究の限界 ... 71

8) 予備調査(3)の小括 ... 72

4 本調査 地方農村部Zシルバー人材センター会員による主体的健康づくり活動のプロセス ... 72

(8)

4

1) はじめに ... 72

2) 目的 ... 73

3) 方法 ... 73

4) 倫理的配慮 ... 85

5) 結果 ... 86

(1) 対象の概要 ... 86

(2) 取り組みのプロセス ... 86

(3) 主体的健康づくり活動会議の分析 ... 87

第1節 主体的健康づくり活動会議の内容 ... 87

第2節 会員アンケートの分析 ... 102

(4) 健康課題の意思決定プロセスの分析 ... 113

(5) 主体的健康づくり活動会議関与への態度・思いの分析 ... 119

(6) 取り組みと研究のプロセスの分析 ... 120

(7) 主体的健康づくり活動会議前後におけるメンバーの変化の分析 ... 123

(8)ファシリテーターの活動会議での行為 ... 123

6) 考察 ... 130

(1) メンバーの前後変化について ... 130

(2) 主体的健康づくり活動第 1 サイクルのプロセスについて ... 131

(3) 会員アンケートの分析 ... 139

(4) 主体的健康づくり活動第 1 サイクルに必要な支援について ... 142

(9)

5

7) 研究の限界 ... 146

8) 本調査の小括 ... 147

第Ⅲ章 終章 ... 148

1 今後の展望 ... 148

2 まとめ ... 148

その他 ... 148

1 引用文献 ... 148

2 利益相反の開示... 165

3 謝辞 ... 165

付 録 ... 1

1 予備調査(2)調査用紙 ... 2

2 予備調査(3)インタビューガイド ... 6

3 本調査 調査用紙(メンバーアンケート) ... 8

4 本調査 調査用紙(会員アンケート) ... 12

5 本調査 主体的健康づくり活動会議資料 ... 18

(10)

2

論文の全体構成

論文の全体構成を図1に示す.

論文は3章で構成されている. 第Ⅰ章は「序論」である.

研究背景として日本の高齢者就労の現状と健康課題, シルバー人材センター会員の法的位置づけと健 康課題, 住民の主体性獲得とその支援の現状を述べた. 文献検討により高齢者就労と健康管理,シルバ ー人材センターと健康管理・主体的健康づくり活動について把握し,本研究の意義を検討した.

第Ⅱ章は 3 つの予備調査と本調査からなる「本論」である.

予備調査(1)では,全国調査前に X 県内のシルバー人材センターで行われている健康管理・健康づ くり活動の実態把握を行った.

予備調査(2)では,全国のシルバー人材センター事務局が行う健康管理の実態と,会員の主体的健康 づくり活動の実態把握を目的とした.管理者全数を対象に郵送法による自記式質問紙調査を実施した.

予備調査(3)では,主体的健康づくり活動の実践事例から「主体的健康づくり活動が生み出す意義」

について半構造的面接を用いて質的な分析を行った.

次に本調査は,予備調査の結果を受けて地方農村部にあるX県Y町Zシルバー人材センターにて,会員 の主体的健康づくり活動の立ち上げから,計画・実施・評価までのサイクルを実施した.研究手法には 当 事者自身がその問題解決の道筋を探り,問題解決の進捗状況の度合いを探りながら問題解決の追及を支 援していく参加型アクションリサーチを用いた.集団の意思決定の経過,ファシリテーターの行為,グル ープ・ディスカッションの記録,自記式質問紙調査等を用いてそのプロセスを分析した.また,結果の妥 当性を高めるため複数の研究者から分析および結果に対するスーパーバイズを受けて最終的な結果とし た.

第Ⅲ章は, 「終章」である.地方農村部シルバー人材センターにおける主体的健康づくり活動に対して

どのような支援が求められるのかを含めて将来展望そして研究全体の結論を考察した.

(11)

3

図1 博士論文の全体構成 第Ⅰ章 序 論

        研究の意義と課題      先行文献の検討

第Ⅱ章 本 論

  予備調査(1)X県SCの健康管理の実態把握  予備調査(3)取り組み事例の検討

目的: X県SCの健康管理・健康づくりの実態把握 方法: SC管理者に対して聞き取り調査を実施(N=14)

結果: 健康管理は就業中の怪我や事故の予防が多い

   予備調査(2)全国調査の統計的検討

主体的活動は会員と事務局双方に利点がある

第Ⅲ章 終 章

目的:

方法:

結果:

結論:

SCの健康管理・会員の主体的活動の実態把握

SC管理者に対して郵送法による自記式質問紙調査を実施

(N=1304)

健康管理は就業中の怪我や事故の予防が多い

事務局主導ではない運営タイプのSCは,健康管理のメニュー数 が多い

主体的活動は約3割が実施

主体的活動にもSC事務局の関与が考えられる

結果:

結論:

全会員を対象にした主体的活動が生み出 す意義の抽出

親睦・交流以外の取り組み事例

(N=5)をSC管理者等へ半構造的面接 による質的帰納的分析を実施

主体的活動が生み出す意義は【下支え型の 事務局の支援】,【自主性の醸成】,【活動 そのものの喜びや満足】,【会員数の維持・

増加への波及効果】であった

結論:

働く集団というメンバーの現在の健康度が楽観性を生み,健康課題の発見過程で複数回決定できない場面が出現した.

全過程の大半は健康課題の発見と分析が占めていた.限定的選択肢からの意思決定や楽しみと明確さを兼ね合わせた体験と いった支援の中に主体性の獲得に繋がる糸口が示唆された.

 本研究では、先行研究の検討と3つの予備調査の結果を踏まえ,地方農村部SC会員の主体的健康づくり 活動を参加型アクションリサーチにて実施し,会員がこの活動を展開するプロセスを明らかにした.

 この活動における初めてのサイクルの過程には,メンバーの活動会議関与への態度・思いとして,

利他的立ち位置と利己的立ち位置が共存していた.

 当事者の主体性獲得に向けて,支援者には当事者の意思決定を容易にする役割であって当事者ではない という自覚の上に立つ支援が求められた.

・高齢者の就労は概ね健康にプラスの影響がある(国内外)

・国内では、定年退職後も働く高齢者が増加傾向にある

・高齢者にとって就労はボランティアや趣味活動より高い活動レベルに  あり介護予防・社会的孤立予防としても重要

・退職後の活躍の場としてシルバー人材センター(SC)は期待されて いる. 雇用形態は基本、個人事業主の扱いで一人一人の健康管理が重要

日本の高齢者もしくはSCの「就労」と「健康づく り・健康管理」との関連:就労そのものを健康管理・

健康づくりとみなす研究が大半で,就労の場で行う 健康づくりに関する論文がほとんどみあたらなかった

目的: 地方農村部のシルバー人材センターにおいて会員自らが自分たちの健康課題を初めて考え,その課題解決に向けた健康 づくり活動の計画・実施・評価を行うまでの初めてのサイクルのプロセスを明らかにすることである.

方法: 前期高齢者の会員(12人)をメンバー,事務局、地域包括支援センター(保健師),社会保険労務士、研究者を他メンバーと して立ち上げたグループにおいて主体的活動の企画・実施・評価までの主体的活動会議プロセス(質的分析),自記式質問紙 調査(メンバー/会員)から分析を行った.結果の妥当性を高めるために複数の質的研究者から分析および結果に対するスー パーバイズを受けて最終的な結果とした.調査期間:2017年1月~6月

結果: 活動会議(8回),従来開催の交流会の運営,会員向けアンケートを経て、催しとして高齢者疑似体験を実施した.途中、一人一 人の中で健康課題が浮上しても,現状は<まだ大丈夫>と<他人事>で決定に至らなかった。その後、視点が将来へ変化し

【老いへの自覚】が決定された.会としての継続を望みながら最後まで<他人事>は存在した.

本調査:地方農村部SCにおける会員の主体的活動開始に必要な支援の検討

背景: 会員一人一人が事業主であり,主体的な健康への意識付けが必要なSCにおいて,主体的活動実施は全体の約3割であった;

予備調査(2).さらに、実施しているSCには事務局の下支えというサポートによって展開されていた;予備調査(3).

方法:

目的:

(12)

4

第Ⅰ章 序論

1 研究の背景

1) 日本の高齢者就労の現状

日本の平均寿命は男性 80.21 歳,女性 86.61 歳で,男女とも過去最高を更新し(厚生労働省,2014) , 国際的にも世界最高水準に到達した.これに伴い, 日本の高齢者の就労期間も延びている.高年齢者雇 用安定法 2004 年改正(2006 年 4 月施行)により,65 歳までの高年齢者雇用確保措置が義務化され,

その結果, 実際に働く高齢者の割合は高まり,過去 1 年間の 60 歳定年企業における定年到達者のうち,

継続雇用された人の割合は 76.5%に至っている(厚生労働省,2013b) .全産業の雇用者数をみても 60

~64 歳の雇用者は 459 万人, 65 歳以上の雇用者は 375 万人と, 60~64 歳の雇用者だけでなく 65 歳 以上の雇用者も増加した(総務省,2012) .

日本の高齢者の就労意欲は国際的にみても高い.それは「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査;

仕事を辞める時期として適当と考える年齢」 (内閣府,2015a)が欧米諸国に比べ高年齢を示しているこ とからもうかがえる.彼らが就労を続ける理由として, 経済上の理由が最も割合として高いが, 加齢に 伴ってその割合は低下している.さらに,経済的な理由より社会交流や健康増進など生きがいを求めて就 労を希望する高齢者の割合が他国と比較して高い事も特徴的である(内閣府,2015b) .

国は「生涯現役社会の実現に向けた就労のあり方に関する検討会」報告書において, 健康な高齢者が できるだけ長く現在の状態を維持することが重要であり,その方策として高齢者の能力を活かしつつ意 欲や目標をもって継続的な活動に関わり続けるという社会参加の有効性を述べている(厚生労働省,

2013a) .継続的な社会参加は社会の支え手として社会貢献となるばかりでなく, 介護が必要な状態をで きるだけ先送りにできるため,介護予防の効果も期待できるとしている(厚生労働省,2013a) .

しかしながら,高齢者の就業希望率(内閣府,2015a)と実際の就業率には大きな乖離がある(稲葉,

2016) .それは,就労を希望しているが就労できていない高齢者が多い現状にあるということだ.高齢者

の失業率が低いのは多数の高齢者が就労を求めて求職活動をしないだけで,高齢者の労働市場では潜在

(13)

5 的供給量は極めて大きいと考えられる.

2) 就労と健康との関連

就労と健康との関連について,健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health:以下SDH)

と関連性が深い.SDHの概念は 2000 年代より注目され,個人でなく住民全体の健康を増進させるポピ ュレーション戦略の重要性が指摘されてきた(Wilkinson R,2001). 2008 年から「国民の健康の増進の 総合的な推進を図るための基本的な方針の改正(以下, 「健康日本21(第2次)」 )において, 「あらゆる 世代の健やかな暮らしを支える良好な社会環境を構築することにより,健康格差の縮小を実現する」と言 及され日本でもSDH・健康格差対策が進められている.健康格差の解消に向けて世界保健機関(WH O)SDHに関する委員会(WHO;Commission on Social Determinants of Health)は,SDHの 10 の 要因の中に,就労に関連する項目として労働と失業を掲げている(WHO,2008) . 「労働」においては,

就労が仕事を持たない状態よりも概ね健康には良いが,職場の社会的組織, 経営方針, 職場での社会的 人間関係等,職場を構成する要因全てが健康に関わってくるために仕事上のストレスが健康状態を大き く左右し, 病気による欠勤や早死の重要な原因になり, 健康の社会的格差にも関わってくることが明ら かになっている.ヨーロッパでの職場に関する研究では, 人々が自分の技術を使う機会に恵まれない時 や意思決定の場で低い権限しか持ち得ないときに健康上の問題が起きる(Bosma,1998・Hemingway,

2003・Marmot,1997・Perer,2002・Schnall,2000・Theorell,2000).一方, 「失業」においては,健 康上の危険を招くが,その危険性は失業者が多い地域ほど高い.各国からの報告では失業者とその家族 は,他の要因を考慮しても,現実として早死の危険性を有することが明らかになっている.失業者の健康 は,失業がもたらす心理的影響と経済的問題,とりわけ借金に影響される (Beale,1985・Bethune,1987・

Burchell,1994・Ferrie,2003・Iversen,1987).

高齢期の就労が健康に与える影響について,海外論文のレビューでは 15 件中 14 件がプラスの影響を

報告し 1 件は両者に交差作用があるとされていた(東京都健康長寿医療センター研究所社会参加と地域

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保健研究チーム,2015).ほかにも仕事を引退した年齢と認知症発症リスクには有意な関連性が認められ ている(Carole,2014) . 健康上の理由で定年後に有意義な活動への参加が阻害された人は特に,労働力 から外れると社会的孤立を招きやすい(Peter A,2015) .そして早期退職は死亡のリスク因子であり,長 期の労働生活は米国の成人に生存利益をもたらす可能性がある(Wu C, 2016).また,国内論文のレビュ ーでは,高齢者が働くことは社会参加であり(片桐,2012) , その効果として男性では農村部と都市部に かかわらず基本的日常生活動作能力の低下を抑制すること(Fujiwara,2015)や 3 年後の生存率を上げる こと(高燕,2008a),セルフ・エフィカシー(小柳,2012) ,主観的健康感(高燕,2008b),生きがい(平 川,2010) ,主観的幸福感や生活の質(Quality of life;以下 QOL)の改善や向上に貢献すること(小林,

2008)が明らかにされている.

概ね就労の良い影響が多く示されているが,その意義は藤原の示した高齢者の生活機能(=健康度)に よる分布と社会参加活動の枠組みからもみてとれる.高齢者の社会参加・社会貢献を生産性の側面から 5 つのステージに定義すると,それは高次から低次へライフコースに沿って重層的に推移する.なかでも就 労はもっとも高次の階層に位置し,就労が困難になった場合にボランティア活動や自己啓発・生涯学習

(趣味)へと推移していく(藤原,2014,2016) (図2) .

(15)

7

図2 高齢者の生活機能(=健康度)による分布と社会参加活動の枠組み(藤原,2014)

就労し続けることが生活機能を高め,加えて女性に比べて社会的孤立傾向が強いとされる男性の社会 活動の促進に繋がる(稲葉,2016・Fujiwara Y,2017).

これまで地域における高齢者の活動と健康との関連性においてボランティア活動の有用性が多く取り 上げられてきた(田中ら,2018・佐藤,2017a・藤原,2006)が,高齢就労者が増加している中,就労と 健康や社会的孤立予防との関連についてもますます関心が高まってきているといえる.

3) シルバー人材センター会員の法的位置づけとそれに伴う健康課題

高齢者の就労支援の一つであるシルバー人材センター;Silver Human Resources Center(以下, SC)

は 60 歳以上の健康な高齢者を会員とする法人である.その歴史は,東京都で 1975 年に設立された「高

齢者事業団」に遡る.国は,第4次雇用対策基本計画基本方針(1979 年)に沿って,1980 年から高齢者

に対する任意的な就業機会を提供する団体を育成する自治体に対し,国庫補助を行っていた.この国庫補

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助の対象になったのを契機に,それまで「高齢者事業団」に賛同して活動していた全国各地の団体が「シ ルバー人材センター」に統一され,事業が本格的に実施されることになった.その後,1986 年に施行さ れた「高年齢者等の雇用の安定などに関する法律」にて,定年退職者等高年齢者の就業機会確保のため,

必要な処置を講ずるよう努めることが,国及び自治体の責務として位置付けられ, SCは法的に認知さ れ,全国各地でSCの設立が飛躍的に伸びることとなる.さらに 1996 年には,同法に都道府県単位で事 業を実施する「シルバー人材連合」に関する規定が設置された結果,SCが設置されていない市町村で も,シルバー人材事業を展開できる法制度上の体制が整備された.

SCは 2015 年度では全国 1304 箇所に設置され,総会員数は 72 万人を超える団体となった.会員の 構成は男性の割合が高く,会員の 3 分の2を男性が占める.それがSCの地域密着型の他のボランティ ア組織や非営利組織(Non-Profit Organization;以下,NPO)と比較した場合に特徴的である(石橋,2016) . 会員の平均年齢は男性 71.5 歳,女性 71.1 歳である.年齢階級別にみた場合, 75 歳以上の後期高齢者層 が全体の 4 分の1を占めているものの,70 歳未満は設立当初は 6 割を占めていたが,現在では 4 割に縮 小しに至っている(石橋,2015) .SCの事業実績について契約金額は 2007 年をピークに減少に転じ,

現在も停滞状況にあり(石橋,2015),同様に会員数も 2009 年をピークに減少に転じている(石橋,2015).

SCの業務内容は,臨時的かつ短期的又はその他の軽易な業務を提供するとともにボランティア活動 をはじめとする様々な社会参加を通じて,高齢者の健康で生きがいのある生活の実現と地域社会の福祉 の向上,活性化に貢献する(公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会,以下,全シ協, 2017) . SCは歴史的背景から「労使間の雇用関係を前提としたうえでの高齢者就労ではなく,あくまで地域の高 齢者たちが自主的に働こうとするところの互助と共働のための就労活動(以下,いきがい就業) 」である

(大河内,1982) .そしてさらに,高齢者の社会参加と地域の活性化を目的として設立された社会運動体

でありながら,行政主導の下,組織運営が行われてきた準公共機関的性格を持ち合わせた二面性のある組

織である(塚本,2016) .組織は, 事業執行に係る審議を行う機関として理事会が設置され,この理事会

の方針に連動した業務執行機関であるSC事務局(以下,事務局)が組織運営として重要な位置を担って

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いる(全シ協,2017).仕事の発注は仕事を希望する発注者(個人・企業等)がSCとの間で請負・委任 契約を結んだ仕事について,さらにSCと会員との間で請負・委任契約を結ぶことになっている(高野,

2010) .SCが仲介する就業は高齢者福祉の一環として取り組まれてきた施策(福祉型就労)であり会員 は自らの裁量で働く個人事業主の扱いである.SCでは無料職業紹介所や一般労働派遣事業も実施して おり雇用労働の場合があるものの,一般的にはSC会員は雇用労働者ではないため,労働基準法や最低賃 金法や労働安全衛生法が適応されないだけでなく,労働保険や健康保険や厚生年金保険なども適応され ない(高野,2010) .労災保険に加入できないため代わりにシルバー人材センター団体傷害保険(以下,

シルバー保険)がある.これは会員が身体に怪我や障害などを負った場合に応じて死亡給付金,後遺障害 寄付金,入院寄付金などを受け取ることができる(高野,2010)が労災保険とは異なる.

高齢化の進行する日本で高齢者の健康や生きがいを維持するSCの活動は,健康寿命の延伸につなが りひいては介護予防効果も期待されている(厚生労働省,2013a) .第 6 期介護保険事業(支援)計画の 中でも,介護予防・日常生活支援総合事業の担い手としてSCの活動は期待されている.ただし,生きが い就業が健康維持や介護予防にどの程度効果があるかはほとんど解明されていない(石橋,2016) .

健康維持や介護予防としての就労を考えた場合,高齢者の生活機能(健康度)との関連が伺われる.高 齢者の生活機能に応じた社会参加活動はより高い次元から下の次元へ重層的に推移する(藤原,2014,

2016).その中でも就労は最も高次の段階にあり,生きがい就業を掲げるSCの場合(1)就労と(2)

ボランティア活動の中間に位置すると考えられる(図 3) .男性は社会的孤立に陥りやすい(稲葉,2016・

Fujiwara Y,2017)が,SCでは男性会員が全国的に多い.また,SCの全国的な平均年齢 71.2 歳(H

26.3.31 現在)で男性の 70%が 70 代後半から体力が落ち始める(秋山,2010;図4)とされる年代に近

づきつつあるといえる.

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図3 藤原(2014)による高齢者の生活機能(=健康度)による分布と社会参加活動の枠組み に研究者が一部加筆

図4 高齢者自立度の変化パターン(男性)全国高齢者 20 年の追跡調査(N=5,715)秋山(2010)

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全シ協では,会員数や就職率,粗加入率等の全国データおよび,活動の概況や会員の基本属性が公開さ れているが,それぞれのSCにおける会員の健康管理や親睦や交流に関する独自の取り組み事業は把握 できない.SCは基本的には全国市(区)町村単位で展開されているために独自性があると考えられる.

これまでの実践事例からSC会員の主体的健康づくり活動(以下,主体的活動)が開始され運営される意 義を定性的に把握した上で,会員の主体的活動の第 1 サイクルのプロセスを明らかにすることは他のS Cへの汎用性を高める上で重要である.

4) 住民の主体性の獲得とその支援

主体とは「他者に対して自己の意思を及ぼす行動の根源者」を意味する(嶋田,1998).社会福祉協議 会基本要項(1962)において住民主体の原則が打ち出されて以降,広く住民主体という概念が用いられ るようになってきた.この考え方は地域福祉における重要な原則として位置づけられるようになり地域 福祉関係者および住民の中に浸透することとなる.住民の主体性の内容には,自主性・自発性に限定され ず,責任性や自己決定・自助までが含まれる.また,個々の住民だけでなく集団としての主体性やコミュ ニティとしての主体性,さらには住民の主体性形成も取り上げられている(山口,2001).地域福祉の主 体は地域住民ないし個人であり主体性は個人に内在しているものである.しかしその主体性はそのまま では容易に具現化はせず,何らかの関与により組織化されることによって実践主体としての性格を有す る(渡辺,2001).

戦後日本の第一次ベビーブーム世代である団塊世代(1947 年~1949 年生まれ)が全て 75 歳に達する

2025 年(平成 37 年)は後期高齢者が 2,179 万人に達し,その後 15 年間はほぼ横ばいと推計される(総

務省,2012) .この 2025 年を目途に「地域の包括的な支援・サービス提供体制(以下,地域包括ケアシ

ステム)」の整備が進められている.今後は軽度要介護認定者(要支援相当)の増加 (平成 27 年度介護保

険事業報告)が予測されるため,介護予防の促進(一次予防,二次予防)が重要視されている.国は一億

総活躍社会づくりの一環として,地域社会では「支え手側」と「受け手側」に分かれるのではなく,地域

(20)

12

のあらゆる住民が役割を持ち,支え合いながら,自分らしく活躍できる地域コミュニティを育成し,公的 な福祉サービスと協働して助け合いながら暮らすことのできる「地域共生社会」を実現する必要があると している.よって 2016 年7月に「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部が設置された.その結果,地 域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案(改正社会福祉法案)の中で,

「地域共生社会」の実現に向けた地域づくりの強化のための取組の推進として,住民が主体的に地域課題 を把握して解決を試みる体制づくりの推進を求めている.健康度の高い高齢者が虚弱な高齢者を支える 仕組みづくり, 高齢者の生きがい,出番づくり,集いの場の創生などの「自助」 「互助」の観点が注目さ れ,住民主体の介護予防活動が重視されてきている(厚生労働省,2017) .また,グループ活動へ主体的 に参加することは,健康づくりの意識向上が期待でき自主的な取り組みが促進されるとともに行動変容 が起きやすい(橋口,2009) .よって高齢社会の体制の維持と個人の健康維持の両面から期待されている.

グループを対象とした支援は保健師にとっての日常的支援であり,今後の地域社会における住民主体の ヘルスプロモーション推進の観点からも重要である.錦戸ら(2005)は保健師活動におけるグループ支 援の方向性として「グループの形成支援」 「グループの主体性獲得の支援」 「グループ活動の地域への発展 の支援」挙げている.グループ支援は,個人のニーズを単なる個人のニーズに終わらせず同じ課題を持つ 集団,さらに地域社会の中でニーズを捉え住民が主体的に課題解決に取り組めるというメリットがある

(村嶋ら,2005) .しかしながら我が国では地域における保健医療職によるグループ支援の実践に関する 研究や報告は欧米諸国に比べて少なく(小路,2014),地域看護におけるグループの自主化について理論 と実践活動を結び付け普遍化することが課題である(村嶋ら,2005) .

2 研究の目的と意義

本調査の目的は,地方農村部のシルバー人材センターにおいて会員と支援者によるグループを初めて

立ち上げ,会員自らが自分たちの健康課題を初めて考え,その課題解決に向けた健康づくり活動を計画し

実施し評価を行うまでの「主体的健康づくり活動」のサイクルのプロセスと,そのプロセスにおいて支援

(21)

13 者に求められる支援を明らかにすることである.

SCは 60 歳以上の健康な高齢者を会員とし,就業と共に社会参加を通じて健康で生きがいのある生活 の実現と地域貢献を目指し,退職後高齢者の活躍の場としても期待されている.しかし,一般的な雇用関 係を持たないため,会員は基本的には個人事業主の扱いである.個人事業主は労働者ではないため労働者 災害補償保険(以下,労災保険)の対象でもない.もしも個人事業主が,業務の途中で怪我をしても,労 災保険の給付はないため,自己負担での治療をよぎなくされる.労災保険に代わる就業中の万一に備えた 保険としてSC会員が加入するシルバー人材センター団体障害保険(以下,シルバー保険)があるが労災 保険と比較して制限が多い.このような条件下にあるSCの会員は,一人一人の健康維持に向けた取り組 みが重要になり,受け身ではなく主体性が求められる.そこで,そのような立場にあるSC会員達が働く

「場」に主体的健康づくり機能を加えたいと考えた.SCで働き続けることは 高齢社会の体制の維持と 個人の健康維持の2つの側面から効果が期待できる.

SC設立の理念である「自主・自立,共働・共助」によって高齢者の知識,経験,能力を生かしながら,

社会参加しようとする発想は集団による健康づくり活動との親和性が高いと考えた.その結果,日本の高 齢者全体の就労者数が増え就労期間が延長する中で,介護を必要としない高齢者が,就業の場で健康意識 を高めることが介護予防に繋がると考えたからである.それには当事者自身がその問題解決の道筋を探 り,問題解決の進捗状況の度合いを探りながら自制を積み重ねつつ持続的な問題解決の追及を支援して いく研究手法である参加型アクションリサーチがふさわしいと考えた.しかしながら会員の主体性はそ のままでは容易に具現化はせず,何らかの関与により組織化されることによって実践主体としての性格 を有する.そこで主体性のあるグループを支援する支援者の存在も必要であると考えSC会員を支援す る側の支援の在り方についても同時に検討することとした.

現状ではSC会員の主体的活動における集団での意思決定のプロセスや支援に関する研究はみあたら

ない.その意味でも本研究は,地方農村部のSCで高齢者の主体的活動を通して行われる介護予防という

新たな実践,研究領域の開発にも貢献できると考える.

(22)

14

今後,このような主体的活動が全国的に増えるなどの他のSCへの応用も期待でき,将来的には継続的 な就業による介護予防の効果が期待できる.

3 用語の定義

就業/就労:雇用以外の就労形態を就業とした. 「就業」と「就労」という語の区別に統一的な定義はみ あたらないが,SCを規定している「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(第 41 条)」,SC定款や 事業報告書などの公式文書,厚生労働省委員会および諮問機関報告書等で雇用と雇用以外を区別する意 味で「就業」が用いられている.

よって本研究では,雇用以外の就労形態を「就業」 ,雇用と就業の両方を含む語として「就労」を用い る.なお, 「就労」は有償労働(稼得型就労)であり,無償ボランティアを含まない.

健康管理:事務局がSC会員に行う下記1)2)とした

1) 就業中の怪我や事故の予防のための労働安全に加え, 趣味活動,ボランティア等の健康づくり活動を 行える心身機能を備えた状態を維持できるように健康面の配慮を行うこと.

2) 介護保険法の要支援・要介護状態になることを予防する行動.

主体的健康づくり活動:会員が計画するSC会員の健康や安全に繋がる活動でありその活動には会員全 員が参加可能とした.よって特定の会員のみによる趣味活動や事務局からの指示や依頼による作業や就 業を除く活動とした.

以上を踏まえ,日本の高齢者と就労と健康づくり・健康管理に関する文献検討を行った.その後,SC

と健康づくり・健康管理に関する文献検討を行った.

(23)

15

4 文献検討

4-1:日本の高齢者の就労と健康づくり・健康管理との関連 1) 文献検索の手順

日本の高齢者の就労の場における健康づくりや健康管理の概観を示し,健康づくりに求められる要因 の特徴について考察することを目的とした.よって地域を日本に限定し海外の高齢者を対象とした文献 は除外した.

研究実施に向けて PubMed, CINAHL with Full Text,医中誌 Web,CiNii Articles の 4 データベース により,2016 年から過去 10 年間に発表された原著論文から文献を検索した.検索時期は,2017 年 3 月 1 日であった. 医中誌 Web と PubMed のシソーラス用語から,下位語も含めキーワードを検討した.

「労働衛生」 :作業管理,労働安全衛生,労働安全衛生法,労働条件,労働保健, 「労働」 :労働,Labor,

勤労,仕事,就業,「労働者」,「高齢者」 :高齢者,Elderly people , 「健康増進」 : 健康づくり,健康増 進,ヘルスプロモーション, health promotion「健康管理」 :健康管理,ヘルスケア,health care,health management, 「日本」 :日本,Japan,Japanese であった.言語は日本語と英語,論文の種類は原著論文,

資料論文とした.

重複した文献を除外し,タイトル,抄録から高齢者の就労と健康づくり・健康管理に直接関連しない文 献を削除した (一次スクリーニング).その後,文献本文を収集してフルテキストを読み①高齢者を含む 調査であること,②就労の有無だけにとどまらない就労形態がわかる結果があることの 2 点について記 述があるか精査した(二次スクリーニング).

2)分析方法:

対象とした論文を,高齢者の就労について,健康課題や健康づくり・健康管理に焦点を当てて検討した.

3)結果:

(1)文献の概要(表 1,2)

(24)

16

表1 文献一覧

No. 著者 (発行年) 表題 雑誌名,巻(号)頁.

① 宮内清子, 望月好子, 石田貞代 他 2009 中高年女性の就業形態と更年期症状の関連 母性衛生, 49(4), 433-441.

② Fujikawa A, Suzue T, Jitsunari F et.al. 2011 Evaluation of health-related quality of life using EQ-5D

in Takamatsu,Japan. Environ Health Prev Med,16(1),25-35.

③ 八島妙子, 新野直明 2013 地域在住高齢者の生活リズムの変化 老年学雑誌,3,101-111.

④ 鈴木政司, 田中友規, 柴崎孝二 他 2014 シニア世代の就労を介した身体活動量の増加と体組成

への改善効果 日本未病システム学会雑誌 20(1), 94-98.

⑤ 江口みかる, 湯浅由美子, 牛島絹子. 2015 高年齢労働者の就労継続の要因と健康支援のあり方 日本看護学会論文集: ヘルスプロモーショ ン,45,203-206.

⑥ 南潮,鈴木宏幸,倉岡正高, 他 2015 高齢者就労に関する先行研究,高齢者就労支援の在り

方の検討 公衆衛生,79(9),625-628.

⑦ Minami U, Nishi M, Fukaya T. 2015 Effects of the Change in Working Status on the Health

of Older People in Japan. PLoS One, 10(12), e0144069.

⑧ 渡部月子,藤井暢弥,櫻井尚子, 他. 2014 都市郊外在宅高齢者における就労と3年後の健康寿命

との関連構造

社会医学研究 : 日本社会医学会機関誌 31(2), 131-140.

⑨ 山口初代,大湾明美,佐久川政吉 2014 男性高齢者の"生きがい就労"の実態とニーズ : A島の当

事者の語りから 沖縄県立看護大学紀要 (15), 43-51.

(25)

17

表2挿入

(26)

18

日本の高齢者の就労について健康づくり・健康管理についての記述があった論文は 9 件であった.研 究方法は量的研究が 8 件(文献①~⑧) ,質的研究が1件(文献⑨)であった.研究デザインは課題探 索型2件(文献①⑤) ,仮説検証型が4件(文献②③⑦⑧),質的記述的研究1件(文献⑨)であった.

地域特性は,都内・都内近郊・都市部が5件(文献①④⑥⑦⑧) ,大都市近郊や地方中堅都市 2 件(文 献②③) ,小離島 1 件(文献⑨)であった.対象は,高齢者に限定した母集団の研究が7件(文献③~

⑨),年齢は広範囲で高齢者を含むものが2件(文献①②)であった.さらに高齢者に特定した集団の うち,不特定の住民2件(文献⑦⑧) ,SC会員1件(文献③),SC以外就労者3件(文献④⑤⑨) , 求職者 1 件(文献⑦)であった.調査方法は,自記式質問紙法が 7 件(文献①~⑧)聞き取り調査 1 件

(文献⑤)身体測定 1 件(文献④)インタビュー調査1件(文献⑨)であった.主な調査項目は就労・

雇用形態5件(文献①②⑤⑦⑧) ,主観的健康観3件(文献③⑤⑦)であった.

(2)文献の内容(表 2)高齢者の就労と健康づくり・健康管理の特徴

就労と健康寿命との関連について渡部らの報告(文献⑧)では要介護状態にない高齢者の就労が 3 年 後の健康寿命に及ぼす直接効果の標準化推定値は,男性 0.488,女性 0.841 であった.しかし,社会的経 済的要因,健康 3 要因(精神・身体・社会的要因) ,就労,健康寿命との総合的な関連構造でみると就労 から健康寿命への特設効果を占める標準化推定値は性別(前期高齢者・後期高齢者)で分けてみると,男 性-0.009/-0.048,女性 0.062/-0.039 であった.その一方,健康 3 要因から健康寿命への直接的効果 を示す標準化推定値は男性で 0.661/0.746,女性で 0.378/0.569 と高い値を示していた.その結果,就 労は健康寿命に直接的な関連は見られず,社会経済的要因が就労や健康 3 要因に直接影響し,健康寿命 が規定されていた.

就労と身体的な特徴との関連について,鈴木らの報告(文献④)では 3 か月の間の健康調査スタッフ

という就労の前後で比較した結果,身体活動量として3METs(Metabolic equivalents)以上の活動時間

は就労前 21.5 分/日が就労後 29.2 分/日となり有意に増加した( p =.020) .また,歩数は就労前 5592

歩/日が就労後は 7223 歩/日となり有意に増加した( p =.017) . 四肢骨格筋肉量(skeletal muscle mass

(27)

19

index : SMI)は就労前後に有意差はなかった.体脂肪量は就労前 16.3 ㎏から就労後 13.6 ㎏へ就労前後で 有意に減少した( p =.004) .

就労と精神症状との関連について宮内らの報告(文献①)では女性の更年期症状と就業形態について簡 略更年期指数(Simplified Menopausal Index;SMI)を用いて関連をみた.その結果,就業形態によって SMI 得点に有意差がみられた( p <.049) .自営業群は他群に比較して「怒りやすく,いらいらする」 「く よくよしたり憂鬱になったりする」 「頭痛・眩暈・吐き気がよくある」などの症状が有意に高かった.調 査対象全体に占める 60 歳以上の割合は 4.5%で年齢階級区分ごとの分析はなかった.

Minami らの報告(文献⑦)ではフルタイムの仕事を辞めた高齢者が精神衛生(老年期うつ病評価尺度 Geriatric depression scale 15;GDS15)と活動能力を測定する尺度である老研式活動能力指標(Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology, Index of Competence ;TMIG-IC)の両方を悪化させる.精神衛生 は急速に悪化し,活動能力は徐々に悪化した.しかし,フルタイムの仕事からアルバイトに変更した場合 は悪化しなかった.アルバイトを辞めると徐々に精神衛生が悪化し,活動能力はフルタイムの仕事に比べ て適度に悪化した.

就労と生活リズムとの関連について八島らの報告(③)では, SC会員へ生活リズムの規則性を評価 する生活リズム測定尺度(Social Rhythm Metric;SRM)を用い 1 年間の SRM スコアの変化を検討した結 果, SRM スコアの平均値は初回調査時 5.1 点が 1 年後 4.8 点となり有意に低下していた.男女別にみる と, 男性は 5.2 から 4.9 に変化し有意差( p <.01)が認められたが, 女性は有意ではなかった.生活行 動開始時刻は, 女性は起床から昼食までの時間で遅い方への変化を認めたが生活リズムに有意な低下は 認められなかった.一方男性は, 生活行動開始時刻に有意な変化は認められなかったが「仕事や家事の 開始時刻」や「戸外に出る時間」「帰宅する」に関する規則性が有意に低下していた.

就労と健康意識・主観的健康観・主観的幸福感について, Fujiwara らの報告(文献②)では EuroQol

アンケート(EQ-5D)を用いて健康関連 QOL を測定した結果,特に失業者または退職者の場合年齢と

ともに減少した( p <.000) .

(28)

20

江口らの報告(文献⑤)人間ドックを受けた対象の主観的健康度は「大変良い・どちらかといえば良い」

93.2%「どちらかといえば悪い」6.8%であった.南らの報告(文献⑥)では高齢者専用就労支援施設利 用者について主観的健康観は「まあ健康な方だ」以上の回答は全体で 91.4%と高い傾向であった.しか し精神的健康状態の QOL を測定する世界保健機関(WHO)が開発した WHO-5精神的健康状態表の粗 点合計は全体平均が 14.02 であり特に男性では 12.71(P=.034),65 歳未満では 11.76(P=.005)と有意に 低い傾向がみられた.鈴木らの報告(文献④)では自記式質問紙調査ではメンタルヘルスや生活の質の向 上についての質問では 9 割以上が意識の向上を感じていた.また,自由記載では, 「健康に対する意識改 善」「人とのつながり」「運動習慣の見直し」 「生活上での気持ちの向上」に関する記述がみられた.

健康づくり・健康管理について宮内らの報告(文献①)では,自営業群は他群に比較して「起こりやす く,いらいらする」 「くよくよしたり憂鬱になったりする」 「頭痛・眩暈・吐き気がよくある」などの症状 が有意に高かった結果から,自営業群への精神面への支援が求められる.鈴木らの報告(文献④)からは 3 か月の労働でも身体活動量が増加しメンタルヘルスや生活の質の向上が 9 割と生きがいと身体活動量 の増加による体組成の改善にも寄与できることを示唆していた.江口らの報告(文献⑤)では生活費を得 る以外に,社会の関わりや仕事への情熱で従事しているが上位にあがっていた.また,仕事ができる理由 として体力や健康があるから就労できていると考えている者が全体の 84%に上り一番多かった.他に就 労継続のために仕事のストレスをためない 69.2%,健康維持の手段として年に 1 回以上の人間ドッグ受 診は全体の 77.8%と就労継続のために健康に気をつけていることが示された.南らの報告(文献⑦)で は求職の理由は全体の 78.9%が生活のための収入を上げたが,就労に生きがいを求める割合は女性( p

=.051)および 65 歳以上( p =.020)で多かった. 山口らの報告(文献⑨)では,島の民泊事業が生き

がい就労につながっていた.生きがい就労の実態は「働きたいときに無理なく楽しく働ける」 「現役時代

に培ってきた能力・経験が活かせる」 「高齢者の就労が課題解決の貢献につながる」 「共生の理解に貢献す

る」の4つのコンセプトが抽出された.生きがい就労のニーズは「島の産業として組織的に取り組みた

い」 「食事サービスの質を向上させたい」 「老い<身体機能>に合わせて民泊がしたい」であった.介護予

(29)

21

防のために生きがい就労を推進するという新たな介護予防の支援方法の必要性を示唆した.Minami らの 報告(文献⑦)では 65 歳以上の老年期うつ病尺度と老研式活動能力尺度の値の低下とフルタイムからア ルバイトへの移行の場合の低下防止の結果を受け,働くことが高齢者にとっての社会参加の効果的な方 法であることを示していた.また,渡部らの報告(文献⑧)では就労自体が健康寿命には直接影響しない が,社会的経済的要因が就労や健康 3 要因に直接影響し健康寿命が規定されるとの結果から,就労が維 持できる健康支援や就労を支える環境整備が重要としていた.

(3)まとめ

総じて就労によるポジティブな反応が多く海外論文と同様の傾向が見られた.横断的研究が多いが,

鈴木らの報告(文献④)では準実験研究として 3 か月就労を創出しその前後で比較した結果,身体活動 量が増加し,歩数が増加,体脂肪が減少していた.他の研究でも退職して無職となるよりもフルタイムか らアルバイトになった方が,うつ病尺度や活動能力尺度による得点の悪化が防止できていた(文献⑦) . 健康関連 QOL は失業者・退職者の低下が認められた(文献②) .就労と生きがいへの関連について,女 性および 65 歳以上での生きがいを求める割合が他よりも高い(文献⑦) ,仕事への経済以外の目的に社 会との関わりや仕事への情熱を求める者が多い(文献⑤) ,共生の理解に貢献する(文献⑨)などであっ た.

一方で,渡部らの報告(文献⑧)では,就労は健康寿命へ直接影響するものでなく,社会経済的要因が 就労や健康の 3 要因に直接影響し,健康寿命が規定されていた.Minami ら(文献⑦)も働くことが高齢 者の社会参加の効果的方法であることを示唆したが,高齢者が働けばすなわち健康寿命が延伸するわけ ではなかった.自営業者が精神面での症状が多いなど(文献①) ,働く立場や仕事内容によっても左右さ れることが伺われた.

就労形態や社会経済的要因,自営業か雇用されているか等,就労に関する条件や立場を同じにするなど

の配慮した分析が必要であり,働く高齢者を一概に分析することは困難であることが示唆された.

(30)

22

4-2:SC会員の健康課題,SCに求められる会員の主体的活動・健康管理 1) 文献検索の手順 (図5)

図5文献検索の手順

SC会員の健康課題,健康づくり・健康管理の概観を示し,SCに求められる会員の健康づくり・健康 管理の特徴について考察することを目的とした.

研究実施に向けて PubMed, CINAHL with Full Text,医中誌 Web,CiNii Articles の 4 データベース により,2016 年から過去 10 年間に発表された原著論文から文献を検索した.検索時期は,2017 年 3 月 1 日であった.用いたキーワードは, 「シルバー人材センター」 :シルバー人材センター/Silver Human Resources Center,言語は日本語と英語,論文の種類は原著論文・資料論文とした.

文献全文を読んで精査した 全文論文の件数

:二次スクリーニング n= 10 :洋0   和10

除外された文献 n=2 :洋0   和2

除外理由

 :結果に会員の健康に関する項目がない

/老人クラブ会員との区別がない PubMed

0

CINAHL 1

医中誌 17

CiNii Articles 102

重複文献削除後の文献件数 n=115 :洋1  和114 データベース検索によって

特定された  文献件数 n= 120 :洋1 和119

その他の情報源から特定した 追加文献

n=0

関連しない文献削除後の文 献 件数:一次スクリーニ

ング

n=12 :洋0   和12

除外された文献 n= 103 :洋1   和102

(31)

23

重複した文献を除外し,タイトル,抄録からSCの就業や健康づくりに関連しない文献を削除した (一 次スクリーニング).その後,文献本文を収集してフルテキストを読み,①SC会員を対象とした調査で あること,②SC会員の健康課題もしくは,健康づくり・健康管理に関する結果があることの 2 点につ いて記述があるか精査した(二次スクリーニング).

2)分析方法:

対象論文を, 「SC会員と健康課題」と「SC会員に求められる健康づくり・健康管理」に焦点を当て て検討した.

3) 結果

(1) 文献の概要(表 3)

表3 文献一覧

No. 著者 発行年 表題 雑誌名,巻(号)頁.

① 瀧敦弘,野崎祐子 2008 高齢就業の現状と問題点ー広島シルバー人材センターのアンケート調査よりー 地域経済研究,19,77-85.

② 針金まゆみ, 石橋智昭, 岡眞人 他 2009 都市部シルバー人材センターにおける就業実態 老年社会科学, 31(1), 32-38.

③ 原田謙, 杉澤秀博, 柴田博 2009 高齢者のシルバー人材センターの退会に関連する要因 老年社会科学, 31(3), 350-358.

④ 和泉 京子, 阿曽洋子 2011 身体・心理・社会状況からみた向老期世代の老いの認識および老いへの備えをふま

えた介護予防のあり方 看護研究集録 18, 1-10.

⑤ 高木富士男,陶山三千也,星子和夫 他 2011 シルバー人材センター登録者の肥満度と運動習慣に関する調査 総合学術研究論集 1, 177-181.

⑥ 八島妙子, 新野直明 2013 地域在住高齢者の生活リズムの変化 老年学雑誌,3,101-111.

⑦ 中原純 2014 シルバー人材センターにおける活動が生活満足度に与える影響 : 活動理論(activity

theory of aging)の検証 社会心理学研究 29(3), 180-186.

⑧ 中村桃美,石橋智昭 2017 都市部シルバー人材センターにおける就業の高次生活機能の低下抑制への影響 老年学雑誌 6, 15-24.

⑨ 山本直史,浅井英典,萩裕美子 2016 高齢者における体力と就労の中止との関連性:シルバー人材センター会員を対象と

した横断研究 生涯スポーツ学研究,13(2)27-33.

⑩ 米澤洋美 2016 健康づくり自主企画事業実施後の実行委員の思いに関する質的研究 : 地方農村部シ ルバー人材センターでの取組み事例

日本看護学会論文集: ヘルスプロモー

ション,46,124-127.

(32)

24

表4挿入

(33)

25

SCと健康づくりや健康管理についての記述があった論文は 10 件であった.研究方法は量的研究が9 件(文献①~⑨) ,質的研究が1件(文献⑩)であった.研究デザインは課題探索型2件(文献①②⑤),

仮説検証型が 4 件(文献③④⑥⑦⑧⑨) ,質的記述的研究 2 件(文献⑩)であった.地域特性は,46 都道 府県への大規模調査 1 件(文献③),都内・都内近郊・都市部が2件(文献②⑧) ,大都市や大都市近郊 5 件(文献①④⑤⑥⑨),市部 1 件(文献⑦)地方農村部 1 件(文献⑩)であった.対象は,SC会員全員 が 5 件(文献②⑤⑥⑦⑨) ,退会員を含むが1件(文献③)であった.60~64 歳限定 1 件(文献④),労 研式活動能力指標が 10 点以上の者に限定 1 件(文献⑧) ,SC内交流会の実行委員経験者に限定 1 件(文 献⑩)であった.調査方法は,自記式質問紙法が9件(文献①④⑤⑥⑦⑨)SCや先行研究データからの 分析 3 件(文献②③⑧)インタビュー調査1件(文献⑩)であった.調査項目は従属変数に就業の有無,

配分金額,就業内容,現会員か否か,老いへの備え,老いへの自覚,身長・体重,肥満度,生活リズム,

生活満足度,老研式活動能力指標と各研究で異なっていた.

(2)文献の内容(表 4)SC会員と健康課題や主体的活動・健康管理の特徴

就業の実態について, 針金らの報告では(文献②)過去 1 年間に就業していたのは男性の 74.6%, 女 性の 71.2%で男女間に有意差はなかった.男女別に就業の有無と年齢階級をみた場合, 男性は有意な関 連性がみられ( p <.01)60~64 歳(68.2%)と 75 歳以上(70.0%)の就業割合が 65~69 歳(77.1%)

と 70~74 歳(77.9%)よりも少なかった.その一方で, 女性では就業の有無と年齢階級の有意な関連は 認められなかった.就業の量を性別と年齢階級で検討した場合, 男性では有意差があり(F(3.2196)

=13.54, P <.001)他の年齢階級よりも 75 歳以上の男性会員は配分金額が少なかった(60~64 歳との多 重比較 P <.01,65~69 歳との多重比較 P <.001,70~74 歳との多重比較 P <.001) .就業内容を性別に 年齢階級別にみた場合,74 歳以下の男性では施設管理が首位, 75 歳以上の男性では屋外作業が首位,

女性はどの階級でも屋内作業が首位であった.屋外作業は年齢が高いほど従事割合が大きくなる傾向が

あった(有意差はない).和泉らの報告では(文献④)全体の 60.9%が就労ありと回答した.中原の報告

では, 最近2, 3か月の期間にSCでの就業をしていない者の割合は 14.3%, 活動頻度は年 1 回以下

表 27-7  第 7 回活動会議話し合いの内容

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