家庭科学習への動機づけに関する考察(1)
一中学校における他教科との比較検討を中心に一
櫛 田 眞 澄*・太 田 美 保**
(1996年10月14日受理)
How to Motivate for Students on Leaning of Homemaking Subjects(1)
一The Cases of Junior High Schoo1一
Masumi KusHIDA*and Miho OoTA**
(Received October 14,1996)
は じ め に
学習意欲は本来的に子供自身に備わっており,その社会の広範な生活環境の中で方向づけられる ものと考えられている。しかし現在では,家庭および地域社会の教育力の低下に伴い,本来的意欲 も削がれる傾向があり,改善が模索されている。そして学習意欲に対する影響の場として,学校が
大きな位置を占めていることには変わりがない。それ故にこそ,学校全体のあり方や教師のあり方,
またクラスの雰囲気などが,子供にとっての学習的環境であり,学習意欲に直接影響を及ぼしてい る。また,いじめや不登校の問題が次々と起こり,その原因の複雑さと根深さと深刻さが浮き彫り
にされている1}。更に,想像を超えるほどの学習不成立の状態が広がっており2),学校段階が上がる ほどに学習意欲の低下の傾向は著しい3)。親の学歴偏重の意識傾向には変化の兆しは殆ど見られず,
子供たちにプレッシャーを与え,学習は試験で良い点数を取るためのもの,良い学校に行くための
ものとなり,歪められた形となり,真の意味での学習意欲は衰えてしまっている4)ように見受けられ
る。
一方では21世紀の社会を逞しく生き抜くために,自己学習力(自己教育力)をつけるべきと考え られ,学校がその基礎・基本を身に付けさせる場所であると認識されるようになった。しかし子供
たちの学習意欲の低下は日々教室で授業をする教師たちの悩みの種となっている。
このような状況の中で,最近になり学習に対する動機づけが一層注目され始めている。従来の学 習への動機づけは,学習時間の始まりの段階,あるいは学習内容,領域の初段階で導入として為さ れるものと考えられていた。しかし今では,子供たちは何処で,またどんな形で動機づけられるか
定かではないという考えの基に,学校におけるあらゆる生活の場で,また各種学習の全過程の中で,
*茨城大学教育学部家政教育講座(〒310茨城県水戸市文京2−1−1)
**茨城県稲敷郡新利根町立新利根中学校(〒300−14茨城県稲敷郡新利根町柴崎7139)
動機づけを意識した学校の営みが求められている5)。そしてより広範な対策が要求され,あらゆる場 での地道な努力が求められている。
本稿では,教室における授業の動機づけに限定して,中学生に対する学習への動機づけについて 検討を試みる。まず現場の教師側の意識に関して実態調査し,次に生徒側の意識調査と併せて考察
し,中学校の家庭科の授業展開に,有効な基礎資料を得ることを目的とする。
次回は高校生を対象にした動機づけについて,検討する予定である。
方 法
1)調査対象
A 中学校教師 茨城県内の中学校教師211名(家庭科の教師26名,家庭科以外の他教科の
教師185名)B 中学生 茨城県内の中学生180名 2)調査対象の属性
A.中学校教師
教師211名の年代による構成は,20代は36名(17.0%),30代113名(53.5%),40代46名
(21.8%),50代16名(7.5%)であった。性別による構成は,男性119名(56.3%),女性92名
(43.6%)である。教職経験年数の平均は,12.8年。勤務形態は,常勤が197名(93.3%),非常 勤11名(5.2%),不明3名(1.4%)である。
B.中学生
1年73名(男子37女子36),2年107名(男子52女子55)
3)調査方法
A 中学校教師 自由記述法による質問紙調査(家庭科の教師に対しては,これ以外に面接
調査も実施した)
B 中学生 評定尺度法による質問紙調査 4)調査期間
A 中学校教師1995年8〜10月 B 中学生 1996年7月〜10月
5)調査内容A.教師に対しては主として自由記述法により,(1)オリエンテーションについて,(2)動機づけ のための工夫,(3)動機づけが成功したと感じる場面の内容,(4)動機づけが成功したと感じた場
面の生徒の様子,(5)生徒にやる気を起こさせるための配慮(5)家庭科の各領域における動機づけの工夫,などを調査内容とした。
B.生徒に対しては,動機づけの要因となると一般的に認識されている事項,例えば「親の期待」,
「教師の期待」,「友人との競争」などについて21項目を選定し,それらに対する意識や感じ方につ
いて4段階の評定尺度法により調査を実施した。
表1オリエンテーションで主にする話
A
B 合計 平均
項 目
頻度
%頻度
%頻度
%1.年間計画・学習内容
16 32.7 84 20.6 100 2L92.教科の意義・目標 14 28.6 86 21.1 100 21.9
(学習の狙い・目的・意味・教科の特性)
3.学習の方法
11
22.4 186 45.6 197 43.1(約束事・授業のすすめ方・自己学習方法・教 科の特性)
4.教師の教科観
3
6.118
4.421
4.65.評価について 3
6.116
3.919
4.16.その他
2
4.1 18 44 20 4.4(教師と教科との関わり・アンケート・自己紹 介・グルーピングなど)
合 計
49
100408
100457
100 注1;調査対象 A=家庭科の教師26人,B=家庭科を除く他教科の教師185人注2;数字は自由記述による出現頻度
注3;調査年1995年
結 果 と 考 察
A.教師の意識および実態
1.オリエンテーションについて(表1参照)
新年度のオリエンテーションの時間は,教科の学習に対する動機づけに重要な意味があると考え
られ,その点について設問した。
その結果,新年度の授業を始める前に,教科に関するオリエンテーションを意識的に行っている 教師は,199人(94.3%),行っていないものは10人(4.7%),その他2人で(1%)あった。大 部分の教師はオリエンテーションを意識的に,時間を設けて行っていることが解る。
次にオリエンテーションを意識的に行っている教師に対して,その主な内容について設問し,自 由記述によって記されたものを集計し,表1とした。
各項目は,出現頻度総数に対する割合で示したが,教師全体を見ると,r学習の方法』について語 る教師が最も多く,次にr年間計画・学習内容』とr教科の意義・目標』となる。
家庭科の教師については,1位はr年間計画・学習内容』(32.7%),2位『教科の意義・目標』(28.6
%),3位r学習方法』(22.4%)であった。
家庭科以外の教師(英,数国,社,理などの受験科目と,音,美,保体,技術などの教科を含
む。以下これらを他教科の教師とする)では,1位『学習の方法』(45.6%),2位r年間計画・学習 の内容』(20.6%),3位『教科の意義・目標』(21.1%)という結果である。他教科の教師はオリ
エンテーションの時間に,約半数近くがr学習方法』に関して語っている。その内容は主として「約束ごと」,「自己学習のポイント」,「家庭での学習の仕方」,「学校での学習の仕方」など,教科とし ての勉強の仕方についてであり,家庭科の教師とは,意識面に違いが見受けられた。
オリエンテーションの際におけるr教師の教科観』では,「自分が教師になった理由」や「教科の
楽しさ」などを含み,これらは中学生に対する学習への動機づけとして一般的には望ましく,しかも有効と認識されるものだが,両者ともに極めて僅かしか語られていない。現場では教師の自己開
示がなされにくい(されていない)という現状であった。
2.動機づけが成功したと感じた場面の内容(表2参照)
多くの教師は,授業後にやりがいがあったと感じる授業をしたいと願い,学習に対する動機づけ に努力をしているが,必ずしも成功するとは限らないところが,現実の授業である。そこで動機づ けが成功したと思われる場面について設問し,それらを集計して表2とした。
その結果,家庭科の教師と他教科の教師とは類似し,1位r授業内容が,実験,実習,作業のとき』,
2位r視聴覚教材を利用したとき』,3位r教材・題材を工夫したとき』となり,中学生の活動状況
から,これらは有効な動機づけと教師間では受け止められている。
r視聴覚教材』はrVTR,テレビ,コンピューター」などの視聴および操作であり, r教材・題材
の工夫』の内容には「課題を明確にする」,「自分なりの課題をもたせる」,「課題に選択の幅をもた
せる」などを含んでいる。これらは家庭科の教師にも他教科の教師にも支持され,実践されて一般的と考えられる。
『身近な内容を取り入れたとき』は家庭科の教師から支持されているが,この教科の特色からの結 果であろう。他方r具体物を提示したとき』は他教科の教師から割合に支持がある。このことから,
「抽象的ではない現実の物や現象」を内容として取り上げることが,中学生に対する学習への動機づ けに有効と教師に思われている。
その他,アドバイスやコメントなどをr教師側が配慮したとき』やr能九個に応じた授業のと
き』も割合に支持されるが,家庭科の教師と他教科の教師との間には格差が存在している。
3.動機づけが成功したと感じた場面の生徒の様子(表3参照)
刻々と変化する教室における授業の中で,動機づけが成功したと感じるときの生徒の様子につい
て設問し,回答をまとめたものが表3である。
全体としては,1位はr意欲的,積極的に取り組む様子』,2位はr自分で計画を立て,目標に向
かって活動している』,3位は『意欲的な感想を表現する』であった。
1位のr意欲的,積極的に取り組む』は家庭科でも他教科でも絶対的多数で支持され,「活発な発
言や活動」,「集中して真剣に取り組む姿」などが見られる。
表2 動機づけが成功したと感じた場面の内容
A
B 合計 平均
項 目
頻度
%頻度
%頻度
%1.授業内容が実験・実習・作業のとき 6
31.6 25 31.731
31.62.視聴覚教材等を利用したとき 4
21.014
17.718
18.4(VTR・テレビ・コンピューターなど)
3.身近な内容を取り入れたとき 3
15.82
2.55
5.14.教材・題材の工夫をしたとき 3
15.814
17.717
173(課題を明確にして自分なりの課題をもつ・選 択制にする)
5.生徒主体の授業のとき 0 0 4
5.14
4.16.能力,個に応じた授業のとき 0 0 6
7.66 6.1
7.具体物(作品)を提示したとき
1 5.37
8.98
8.2(良い作品・友達の作品・過去の作品など)
8.教師側が配慮をしたとき 2
10.52
2.54
4.1(アドバイス・コメントなど)
9.その他
0 0 5
6.35
5.1(生徒の知的好奇心に合っているとき・いろい
うな予想ができてそれを確かめるようなとき・いつも感じている・成功を感じたことは
ない)
合 計
19
100 79 100 98 100注1;調査対象A=家庭科の教師26人,B=家庭科を除く他教科の教師185人 注2;数字は自由記述による出現頻度
注3;調査年1995年
しかし家庭科での2位はr実生活で生かしている様子』およびr作品の成果』となり,家庭科の教
師による支持が高く,他教科の教師からは支持されていない。ここに家庭科の教科としての特質(独
自性)が現れていると思われる。
r自分で計画を立て,目標に向かって活動』およびr意欲的な感想を表現する』は,他教科から支
持がある。
以上のことにより,中学生が有効に動機づけされると,r意欲的に取り組む』r自分で計画を立て,
目標に向かって活動している』『意欲的な感想を表現する』などの様子が見られるものと推察される。
表3 動機づけが成功したと感じた場面の生徒の様子
A
B 合計 平均
項 目
頻度
%頻度
%頻度
%1.意欲的・積極的に取り組む様子 7
46.7 87 69.0 94 66.6(活発な発言,活動・集中して真剣に作業に取 り組む姿など)
2.驚きを見せる 0 0 6
4.86
4.33.授業終了後,質問や意見が出てくる 0 0 6
4.86
4.34.実生活で生かしている様子がみられる 2
13.32 L6 4
2.85.作品に成果が現われる 2
13.32 L6 4
2.8(良い作品・すばらしい作品ができたとき)
6.自分で計画を立て,目標に向って活動してい
@ る
1 6.7
8
6.39
6.47.意欲的な感想を表現する 0 0 8
6.38
5.7(またやってみたい,教科が好きになった・楽 しい・できるようになったなど)
8.その他
3
20.07
5.610
7.1(疑問を持つき・自分で考えながら活動してい る・予習,家庭学習をやってくる・学習を理 解している)
合 計
15
100 126 100 141 100 注1;調査対象 A=家庭科の教師26人,B=家庭科を除く他教科の教師185人注2;数字は自由記述による出現頻度 注3;調査年1995年
4.生徒にやる気を起こさせるために気をつけていること(表4参照)
学習に対して意欲を示さない生徒の多い中で,教師は何とかして学習に気持ちを向けさせようと 努力をしているが,現在ではどのような努力がなされているのであろうか。このことについて設問
し,その結果をまとめたものが表4である。
全体として家庭科の教師と他教科の教師間での格差は小さかった。1位はr教材の工夫』,2位は
『言葉掛け』,3位は『『生徒の実態把握』の順となった。また『授業面での工夫』やr生徒主体の授 業』は,全体として支持されている。
1位の『教材の工夫』には,大枠組みの「題材の工夫」も含まれ,「課題を明確にする工夫」など
が取り入れられており,多くの教師がr教材の工夫』に配慮していることがわかる。2位にはr言葉かけ』が挙がり,「ほめること」や「否定的な言葉は使わない」などを配慮してい
表4生徒にやる気を起こさせるために気をつけていること
A
B 合計 平均
項 目
頻度
%頻度
%頻度 %
1.教材の工夫17
36.2 55 21.1 72 23.4(題材の工夫・課題を明確にする)
2.学習形態の工夫
2
4.311
4.213
4.2(グループ編成など)
3.授業面での工夫
0 0
32 12.3 32 10.4(楽しい,興味関心の持てる授業・成就感の持 てる授業)
4.生徒主体の授業
6
12.7 24 9.2 30 9.7 5.言葉かけ8
17.0 45 17.2 53 17.2(ほめる・否の言葉は言わないようにする)
6.生徒の実態把握
7
14.9 43 16.5 50 16.2(能力に応じた指導・個に応じた指導・考えの 良さを認めて支援する)
7.評価の工夫
4
8.518
6.9 22 7.1(自己評価を工夫・ノート,提出物にコメント を書く)
8.学習の環境づくり 2
4.316
6.118
5.99.その他 1
2.1
17 6.518
5.9(教科の良さを紹介・教師自身の研究,向上
心)
合 計
47
100 261 100308
100 注1;調査対象 A=家庭科の教師26人,B=家庭科を除く他教科の教師185人注2;数字は自由記述による出現頻度
注3;調査年1995年
る。最近の中学校では,生徒たちに対しては,r言葉かけ』によってほめる努力がなされていること が理解できるが,お世辞でほめているのか,どうかは中学生たちに敏感に感じ取られていると考え
られる。従って,授業における『言葉かけ』の内容が問われることになる。
3位のr生徒の実態把握』からは,「能力に応じた指導」,「個に応じた指導」あるいは「考えのよ
さを認めて支援する」などの配慮が見られる。またr生徒主体の授業』については両者からの支持は高いが,r授業面での工夫』は「楽しい授業」「興味関心の持てる授業」「成就感のもてる授業」な
どを含み,これらは他教科の教師に支持され,家庭科では支持されていない。
以上のように見てくると,学習意欲の低い生徒が多く存在する状況であるからこそ,教師側は,授
業に対して種々の工夫をせざるを得ないことになり,またこれらの配慮がなされないときには,授 業が成立しないことも想像される。このことは,生徒側の状況の変化に応じて,教師側が変わらざるを得ない状況と受け止めるられる。後味の悪い授業はできるだけ避けたいという思いがある故に,
それが授業を変革するエネルギーとなるのであろう。
また,ここで分析に用いた資料が,選択肢法による回答を集計分析したものではなく,設問に対
表5 家庭科の各領域における動機づけの工夫
領域 家庭生活 食 物 被 服 住 居 保 育 教材の工夫 教材の工夫 教材の工夫 教材の工夫 教材の工夫
1
30.7% 22.4% 41.6% 33.8% 24.3%
身近な内容 学習授業形態 学習授業形態 学習授業形態 視聴覚材の利用 2
23.0% 20.4% 13.8% 16.6% 19.5%
学習指導形式 学習指導形式 学習指導形式 学習指導形式 身近な内容 3
15.3% 18.3% 13.8% 16.6% 17.0%
視聴覚材の利用 身近な内容 言葉かけ 視聴覚材の利用 学習授業形態
4 13.4% 16.3% 13.8% 16.6% 17.0%
その他 視聴覚材の利用 身近な内容 その他 その他 5
17.6% 16.3% 11.1% 16.4% 22.2%
その他 その他 6
6.3% 5.9%
100% 100% 100% 100%
100%
合計 (N=52) (N=49) (N;36) (N=12) (N=41)
注1調査対象 家庭科教師26人複数回答1995年
注2学習授業形態;実習,実験,視察,調査,発表など注3 学習指導形式;一斉学習指導,グループ学習指導,個別学習指導など
して自由記述されたものをKJ法により分析し,まとめたものであることは,動機づけに対する実態 調査としては意味深いものと考える。即ち,自由記述は教師たちが教室において実践をしていなけ れば記入したり,表現したりできないことから推察すると,以上の結果は信葱性が高いと理解する
ことができる。
5.家庭科における各領域の動機づけ(表5参照)
前節までは,学習上の動機づけについて家庭科の教師と他教科の教師との意識や実践に関して比 較,検討をしてきたが,この節では家庭科の教師のみに対して,家庭科の内容に関して面接調査を
実施した結果を報告する。大部分の中学校においては,各校に家庭科教師は1人しか配属されていな い。また時間講師がその学校全体の家庭科を担当しているという状態もあった。
家庭科の各領域における動機づけの工夫は表5としてまとめた。表5に見るように,家庭科では
生徒を動機づけるための工夫として,全領域を通じて,r教材の工夫』が最もよくなされていること
が明瞭である。
更に家庭科の学習において生徒が意欲的に取り組む内容や指導方法について質問したので,結果
を以下にまとめて記しておく。
1)家庭生活領域
生徒が意欲的に取り組む内容は食生活(弁当づくり,献立,食生活の仕事)および住生活(小物
作り,掃除)であった。学習授業形態としては,実習,作業,製作である。
2)食生活領域
この領域では,調理実習が圧倒的に生徒が意欲的にとり組むとされている。学習授業形態として
は,実習と作業である。
3)被服領域
被服に関する製作が殆どで,染色や実験がわずかにあげられている。
4)住居領域
設計や模型作り,視聴覚教材による指導の場合に意欲を見せるとされるが数は少ない。
5)保育領域
評価スケール 0 0.5 L O 1.5 1 1 1
1.親の期待を感じるとき 1 1 1
P 1 1
2.教師の期待を感じるとき R.進学したい学校を考えるとき S.教師を尊敬しているとき T,友達に負けたくないと思うとき U.友達が「すごい」言ってと認めたとき
l I l 戟@ l I 戟@ I戟@ 6 1
@ 1 1
P 1 1
P 1 1
@ 1 1
@ 1 1
7.教師の説明が面白いとき
l lC I l 8.内容が現在の実生活に関係が深いとき
l l I@ l l 9.内容が将来の生活に関係が深いとき
l l戟@ , 1
10.内容が人生や生き方に関係が深いとき l l l
戟@ l Ill.内容が趣味や得意なことに関係が深いとき l l [ h l 12.内容が作業や活動を伴うとき P3.学習をする理由を納得したとき P4.自分でやりたい内容を決定したとき P5.自分の計画で解決の見通しが見えたとき
l I戟@ l I @ I l 戟@ l
戟@ lh l l 戟@ l I 16.自分で解決法や仕事の手順がわかったとき
l l l 戟@ l I17.アドバイスやヒントが与えられたとき 1 1
P 1
18.努力が友達や教師に認められた時
l l ハ o l19.努力が親に求められたとき
I l I h l20.以前よりも進歩向上が解ったとき I I I
戟@ l21.自分でやり遂げた後,次の段階に対して 1 1 1
P 1 1
(注 調査対象中学生180名,1996年)
図1 学習に対して意欲(やる気)が出るとき く中学生〉
意欲を見せる内容としては,幼児の心身の発達,幼児の生活,性について,が挙げられているが 数は少ない。それに対して,学習授業形態では実習(おもちゃ作り,おやつ作り)が圧倒的に支持 され,幼稚園や保育園訪問および自分の小さい頃を調べるなどの調査に関して割合に意欲を示すと
されている。
B.生徒自身が「学習に意欲(やる気)を出すとき」(図1参照)
教師側から見て,動機づけが成功したと見えても,生徒側には「学習に意欲などでなかった」,「や
らされているだけ」と受け止められている場合がある。ここでは,生徒に対して,一般的に学習に 対する動機づけと関係が深いと言われている項目を21項選定し,生徒たちはどのようなときに意欲 的になるのであろうかについて,4段階の評定尺度法により調査した。調査結果の集計の方法は,例えば「親の期待を感じるときやる気が出る」の項目については,「全 然思わない」=−2,「やや思わない」ニー1,「やや思うニ+1,「強く思う=+2,と定めて換算し,
各項目毎の平均を計算し,図1として表した。
図に示すように平均値は全体としてプラス傾向であったが,次のように大きく区分し検討の基準
とした。
1)A段階 中学生の意欲をあまり引き起こさないもの
「親の期待」,「教師の期待」
2)B段階 中学生の意欲を少し引き起こすもの
「教師を尊敬しているとき」,「友達がすごいと認めたとき」,「教師の説明が面白いとき」,「現在の 実生活の内容⊥「作業や活動を伴うとき」,「学習する理由を納得したとき」,「自分でやり遂げた後,
次の段階⊥「アドバイスやヒントが与えられたとき」
3)C段階 中学生の意欲を引き起こすもの
「自分の計画で解決の見通しが見えたとき」,「自分で解決法や仕事の手順がわかったとき」,「努力 が親に認められたとき」
4)D段階 中学生の意欲を強く引き起こすもの
「進学したい学校を考えるとき」,「友達に負けたくないと思うとき」,「内容が将来の生活に関係が 深いとき」,「内容が人生や生き方に関係が深いとき」,「内容が趣味や得意なことに関係が深いとき」,
「自分でやりたい内容を決定したとき」,「努力が友達や教師に認められたとき」,「以前よりも進歩向 上が解ったとき」
以上の結果から見るとき,小学校の児童の場合とは異なり,中学生になると「親の期待」や「教 師の期待」に対しては,それほど意欲的にはならない。しかし「自分の進学したい学校のことを考 えるとき⊥そして「友達に負けたくないと思うとき」に意欲が出るとは,生徒たちの正直な気持ち の表現であり,進学優先の学校風土と,競争社会の名残りを残している点に注目すれば,真の意味
における学習意欲の低下と,内発的動機づけの喪失が表現されていると判断できる。
また一方では,「内容が将来に関係が深いとき」や「内容が趣味や得意なことに関係が深いとき」
に意欲的になると答え,現実の授業に対する彼らの願いと希望を示している。
従って教師は,授業に対して少なくともC段階あるいはD段階に挙げられている項目を意識し,念
頭において,学習指導の設計をすべきであると思われる。いわゆる従来型の動機づけの考え方から
脱却できない場合は,苦労は多くて実りの少ない授業となることが推測される。
即ち,「現実的な実生活の内容」を取り上げ「作業や実習」を多く取り入れ,しかも教師が,授業 に対して生徒の関心を授業内容に向けさせる意図で,「面白い話」をしても,また「学習する理由」
を説明しても,生徒側には「白けて」いる者いて,教師が期待するほど動機づけられないという結 果を示している。それ故に教師側の努力は空回りしてしまうのであろう。授業の不成立の原因はこ
の事実とも関係が深いように思われる。
ま と め
本研究においては,教師側と生徒側の両サイドから調査を実施してみることにより,現段階では,
生徒側の意識と教師側の意識の間に相当のギャップが存在していることが明確になった。中学校で
はこの格差を少なくすることが,全教科の授業に対して第一に求められよう。
家庭科の教師の場合に,現実問題を取り上げることにより,実践的という名目の上で,実習や製 作を授業の中心に置いていても,生徒自身はそれほどやる気を起こしていない場合があり,教師の
思い込みで「意欲的である」と判断していることも考えられる。この点は追求を要する課題である。
全体的に,中学校において教師側が考え直すべきことは,内容面では,「将来の生活に関係が深い もの」,「人生や生き方に関係が深い内容」,「生徒の個性に配慮した内容」にすることが大切である。
多くの教師が指摘するr教材の工夫』のポイントはここにあると思われる。
また方法としては,「生徒個人でやりたい内容を決定させ」,「生徒個人で解決の方法を計画させ,
工夫させ,見通しを立てさせる」ことである。更に,学習の各段階毎に「自己評価をさせる」,ある いは「他者による評価を自己の判断の中に取り入れさせ」,「以前よりも進歩していることに気づか せる」,また「その努力をみんなが認めてやる」などの工夫と配慮が,指導方法に関して特に必要と 考えられる。
本研究の自由記述による教師対象の調査およびその集計の過程には,以上のような配慮や工夫の 記述が僅かながら見られたが(表2,4参照),茨城大学付属中学校では,これらに焦点を当てた研
究が先進的になされている6)。しかし一般の公立の中学校においては,まだまだ模索の段階であり,
授業が成立しない状態を如何に脱するか,その対応を迫られていると言えよう。
教師は常に後味の悪い授業は避けたいと願い,そのために授業に工夫を凝らすものであるから,今
後はその点に留意した,教師支援や教師研修が必要とされているように思われる。今日では,21世紀の社会に対応できるように基礎・基本を押さえ,その上に立って創造性豊かな