︹解題︺
法および法制度の比較門日本とヨーロッパーマクファーカー・田村 五三
1脚
六二
裁裁所ヒエラルヒー ⁝ 先 例 拘 束 ⁝
※ 最高裁判所に対する上訴の主たる目的が終局判決を得ることにあるということから︑最高裁判所は一八九 八年以来自身の先例によって厳格に拘束されるようになった︒ 現存する判例法が望ましくないものと考えられたならば︑公共の利益のためにそれを変更する立法が制定される︒ 一九六六年に︑最高裁判所自身が︑社会諸条件の変化に照応して法を改革する必要がある場合には厳格なアプローチをとらずに︑自身の先行判例を単に説得的な先例とみなすとの決定を下している︒ 一九六八年に︑最高裁判所は︑はじめて︑先行判例を変えたが︑それ以後はほとんどそのようなことはしなくなっ 下級の裁判所は︑依然として最高裁判所の判例によって厳格に拘束されている︒
六六 1.長所 ω 確実性および一貫性 先例原則は︑裁判所の判決における一貫性の存在を確保するのに役立つ︒このことが訴訟事件者にコモン・ローを予測可能なさしめる︒㈹融通性 判例法の動的な性格は︑形式のととのった立法手続によることなく︑社会諸条件の変化に即応した法の迅速な改革を促進する点にある︒働実際的であること 一般的︑抽象的原理からなり︑裁判所に適用が委ねられているところの国会制定法と比較して︑判例法は︑実際の訴訟で作動してきた一団の原則から成っている︒㈹慣習的性格 判例法は︑イギリス法の基礎としてこの国本来の慣習法規範を維持してきている︒ 2.欠 点 ω 国会主権 民主主義においては︑裁判の機能は法を適用することにある︒法の創造は︑選挙される国会に留保される︑といわれている︒㈹硬直性 先例拘束主義は︑法改革の妨げとして機能することがある︒それは︑裁判官が立法の援助なくして︑定着している
七八ではないであろう︒判例法および先例は急激に変動する社会にあって︑きわめて重要な意義をもつものである︒それは︑社会の要求にたいして︑柔軟な法の適用を可能にするので︑日本は︑先例という観念をその短所を甘受することなしに︑有益に追求することができるかもしれない︒先例拘束と成文法化との融合が採用されるかもしれない︒裁判所がエクイティの原理もしくは条理にもとついて両者︹先例拘束と成文法化︺を稀釈してきているのであるから︒