古 ロ ー マ 法 に お け る 物 的 担 保
18
0
0
全文
(2) 早法七四巻三号︵一九九九︶. 四七六. ︵2︶ と同等に扱われるようになるのは︑ようやく三世紀のパウルスの時代になってからである︒物的担保が使われなか. った原因としては︑当時のローマでは商品経済が浸透しつつあったとしても︑それが十分ではなかったこと︑さら. に登記制度が未発達であったことが考えられる︒しかし︑何より重要な原因は︑ローマ人が古くから友情に基づく. 義務︑すなわち﹁信義﹂︵ま亀を社会生活における最も重要な行動原理として考えていたことがあげられよう︒. そして今日と異なり︑信義に反する行為に対する強制履行が厳格で刑罰的要素を含み︑確実に債権を回収できる可 ︵3︶ 能性が強かったことも人的担保を多く利用する理由になったといえよう︒. ローマ法の物的担保は︑﹁信託﹂︵匿8琶︑﹁質﹂︵℃蒔崖ω︶︑﹁抵当﹂︵ξ零9Φ8︶と発展した︒このうち抵当を示 ︵4︶. ︵5︶. すξ8跨Φ8はギリシャ法に由来するとされるが︑その実体がギリシャ法のそれと同一であったかは疑問である. 古代ローマ法の物的担保は︑当時の経済社会を知る上で重要な手がかりになり︑また法技術的な点で論ずべ. とされており︑ローマの法律用語としてあらわれるのも二世紀と比較的新しい︒これに対し︑前二者は相当に古く ︵6︶ から存在しており︑信託については既に前五世紀半ばの十二表法制定の頃には利用されていたとされている︒ただ ︵7︶ それらのうちいずれがより古いのかについては見解の相違があり︑定かではない︒ 二. き様々な問題があるが︑本稿では信託と質のその起源における法的構造の解明に論点を絞ることにする︒期間とし ては︑いわゆる﹁古ロ!マ法の時代﹂と称される前五世紀から前三世紀頃までである︒. この問題は︑言うまでもなく︑当該の時代における所有権の構造との関係で論じられるべきである︒すなわち︑. カーザーやウッベは︑この時期には﹁私のものである﹂︵B窪目8豊と称される所有権が唯一の物権としてあり︑. 信託と質もそうした所有権に包摂されて︑分割所有権として存在していたと主張した︒一方︑ワトソンやディオズ.
(3) ディは︑この時期の所有権を絶対的な性質としてとらえ︑信託と質もはじめから所有権とは別個独立の他物権とし. て成立したとして︑カーザーの見解を批判している︒したがって︑この問題はつまるところ所有権の性質をめぐる. 論争であり︑これを避けて論じられない︒しかし︑ここでは紙数の都合上︑これらの物的担保の構造の解明に手が. 本稿で主に参照した文献は左記の略記号で表わした︒雑誌略記号は囚器2肉︑踊〜>穿實釜轟①⇒に拠った︒. かりを提供してくれている幾つかの史料を分析することにより︑この問題に対する私見を試みることにする︒ *. =○霧色\ζ貰震 竃巴≦ωΦ一ダ肉肉::出○霧Φミ冨亀Φ吋−ζ巴≦ωΦ一ダ肉qミ帖Gりらぎの寒qミト︾亀一←一︒︒︒刈. 内9 ︒ωΦお鴇︒.︐..霞●内器R︸肉膏鴨ミ軸§黛ミ駄ヒo湧駐軌ミ匙尉N§ミ§嘗詳§肉§ミ︸P>亀一︒﹂09. 冒﹃ω−囚qpざ一−≦窪ひqΦぴ肉肉.....冒参−内二良oマ≦Φ薦R︸おq§蹄らミの肉象ミω︒﹄蕊●しOお. 内錺g加珀・....罫国霧Φぴ寒§§NN§ミミ蹄き§愚ミ箋箋貢乞①&毎畠Φ邑け乞餌9﹃夷窪α①ωくΦぽ錺ωRωレ︒︒ ︒N. 一〇δ. 四七七. ︒ωΦぴb翁肉qミ貯ミ㌔蕊ミ妹ミらミ肉透ミ﹄騨さ蔦糞b箋ミ妹ミミ貯貫§Gりき碁§誤魯鴨§織神§籔︒りらミ肉象ミ 囚霧Φ斜肉︑鵠〜.::暴内9. 内霧Φお的N竃:・:言囚器Φお§ミミミ脳Gり息§︑鳶§§塾欝的N竃︵一︒魔︶ω︒ ︒︒出暁. 鍔き一鴨も斜§へGっ::・︾︒竃き蒔F肉肉N︒\︸し認︒厘. ζき蒔F罰駄ミ貯・::>●困き蒔F肉肉︒\ρ認︒︒配一. 霞昌R−ピ巴ざ肉憶︐︒...↓訂○家塁R 寓巴ざ肉qミ詠らぎ︒︒︑試◎ミ蕊らミ一㊤︒一. ≦讐ωopS詳卜亀ミ勲Oミ尉ミ賊§の黛導軸トミ箋肉︒ミ§肉愚さN貸H︒3. ω魯巳N︶O肉卜.....國ωo言貫GN愛G︒箒ミ肉oミ§卜黛婁お竃. ≦簿ωOPOミ磁禽§︒り::・>. ミ気︑8愚箋愚き蛛ミトミミ肉oミ§︑︑愚箋§這︒○. ≦讐ωOp肉謀.....︾︐≦簿ω○戸肉◎ミ§︑試ミ融卜亀ミミミ§駄鳴ミ切Ω一︒目. ≦讐ωOp肉ミミ勲k冒S專§︸謹蕎§§織ミ愚鳴昌︾H︒胡. ≦9 ︒けωoP牢8霞昌︐..:>≦讐ωOPS壽卜. ≦讐ωOp強寒ミ湧:・:>. 古ローマ法における物的担保︵谷口︶. ≦魯びρ雰ミ箋愚職o⁝:國≦暮げρ雰ミ§愚誉§織ミ﹄禽執ミG︒肉斜§融ミ閑NQ︒︵一︒︒︒︶一裟︒. 。.
(4) 早法七四巻三号︵一九九九︶. 学陽書房︑昭和五八年. 四七八. ディオズディ﹃ローマ所有権法の理論﹄・::Oざディオズディ著佐藤篤士・西村隆誉志・谷口貴都共訳冒ーマ所有権法の理論﹄ 原田﹃ローマ法﹄・::原田慶吉﹃ローマ法﹄︵改訂︶有斐閣︑昭和三〇年. 船田第三巻::・船田亨二﹃ローマ法﹄第三巻︑岩波書店︑昭和四五年. 春木﹁質権﹂・::春木一郎﹁質権ノ発達史二於ケル︷こ8冨二付イテ﹂法学協会雑誌四三巻一号︑四四巻二号一〇号六頁以下. ︵1︶ O讐ρ魯轟試らミ§§一&る︵後述︶. 内器9肉︑垢〜島コ竃駕①マζ巴ざ肉︑①ごωoどFG肉トお㌣≦簿ωoP肉謹○︒合目曾船田第三巻六三九頁以下︑同﹃ローマ法. ︵2︶評q一︒U﹂8一しP︒ ℃き一■∪ひρ一9一︒︒︒ ︒ 口︐. 入門﹄一六七頁︒ローマ人が﹁信義﹂を重視したことについては︑曽ご貫℃註ミ愚駐魚肉◎ミ隣ミト黛ミ一89器認廿原田慶吉﹃ロ. ︵3︶. ギリシャ法の. ーマ法の原理﹄清水弘文堂︑昭和四二年︑三〇頁以下を見よ︒保証関係の成立の方法としては一般に問答契約︵旨讐一簿§に基 づく保証契約が 用 い ら れ た ︒. げ蜜Oo浮Φ8については︑>囚鼠目一色P肉斜§婁ミミ§織ヒ∪携貯賊ミ恥試禽ミ零畿§肉象ミ一8紳o︒謀h. ︵4︶ 竃き蒔F§o導鳴ミ︸菊国︒\どω蕊採認無捨霞○お巴一\冨昌R−﹈≦巴≦ω巴ダ肉肉N︒合客塁R−困巴ざ肉︑8. ︵5︶冒一︒U●β︒ ︒る﹂︷︒. 田﹃ローマ法﹄一一六二頁︵信託︶︒シュルツは確認できないという︒曽どドG淘卜合①●. ︵6︶ 鼠磐戯F肉蕊§鞘器︒︒9因霧9露謡貸ディオズディ﹃ローマ所有権法の理論﹄一七七頁︑船田第三巻六六八頁︵信託︶︑原. ︵7︶ 内霧璽蝿謡9船田博士も信託の方が古いという︒船田前掲六七三頁︒春木博士も︑信託が市民法の制度であり︑債務者に. の信託の欠点を克服するために︑質があらわれたとされて︑信託の方が古いという︒春木﹁質権﹂六頁以下︒これに対して︑シュ. 危険が多かったこと︑信託においては一旦物を信託として譲渡すると︑後日同一物を信託に付すことができなくなったこと︑以上. ルツは質の方が信託よりも起源が古いという︒ωoど寅G謁トおS質がいつ頃発生しのかは困難な問題である︒法的現象としては︑. れていたと考えられる︒ただそれが法的現象としてあらわれることが少なかったにすぎなかったとも考えられる︒. 十二表法六表一に根拠を置く信託がはやくにあらわれたことは確かであるが︑引渡︵賃&置○︶を用いた質もはやい時代に利用さ.
(5) 一. 一 信託の法的構造. 前五世紀の十二表法が制定される頃のローマでは貨幣経済は未発達で︑金銭の消費貸借もそれほど一般的で. はなかったであろう︒ただ︑当時のローマは近隣の諸都市国家・諸種族との緊張関係の中にあり︑その防衛の中核. である重装歩兵を構成する中小農民は多大の出兵費用を貴族や富裕な者から借財する必要があった︒その際にはじ. めは拘束行為︵器釜日︶と称される債権の担保方法がとられていたと思われる︒これは返済できないときは︑貸主. が借主の身体を拘束するもので︑事実上借主を奴隷とする苛酷な方法であった.しかし︑これでは国家の構成単位. ︵1︶. である家︵貯邑雨︶の消滅を導き︑しいてはローマ国家の崩壊にもつらなるため︑次第に使用されなくなってい. った︒信託はその緩和策の一つとして純粋に物的な担保方法としてかなり古くから認められるようになったと考え. られる︒というのは︑経済社会の発展段階が低い時代には物権は所有権以外にほとんどなく︑あるいは全く存在し. なかった︵カーザー︶と考えられ︑初期のロ⁝マでも所有権を利用して担保の目的を果たす手段がまず最初に取り ︵2︶ 入れられたと想像されるからである︒ ︵3︶. その後︑信託はローマ市民に固有の制度として次第に法的に洗練され︑十二表法の六表一によって法的効力を付. 与されたと思われる︒同規定は︑拘束行為または譲渡行為である握取行為︵鷺壁息短餓○︶をおこなう際に言明 ︵4︶ ︵壼8琶慧○︶をおこなうと︑その言明が法的効力をもつことを定めたものである︒. 四七九. ﹁拘束行為と握取行為をなす際に︑言葉で言明したときは︑それは法たるべし︒﹂︵9ヨ莞蒼ヨ貯︒艮Bき− 古ロ!マ法における物的担保︵谷口︶.
(6) 早法七四巻三号︵一九九九︶ ︒冒=ヨ2ρ昌一日碧鋤昌巨︒唇霧ωF討ごのΦω骨・■︶. 譲渡される物は﹁手中物﹂︵おωB雪o豆︶でなければならなかった︵の鎮一レお山曽︶. 四八O. を譲渡する︒. これを利用して担保物の供与者である債務者︵第三者が担保物を提供する物上保証もあった︶は債権者に握取行為 により物. その際︑譲渡される物は担保物であること︑したがって被担保債権が弁済により消滅したり︑他の方法で消滅した. 場合には︑その物を債務者に握取行為︵再売8目き息冨ぎ︶によって返還する旨についての合意︵冨︒9ヨ. ︵5︶ ゆ身鼠器︶がなされて︑信託は法的効力を得ることになった︵ゆ身︒ご8匿Raぎお︒o導轟o琶︒これによって債権 ︵6︶. 者は担保物の引き渡しを受けるとともにその所有権をも取得したが︑あくまで受託者として扱い︑他に処分するこ ︵7︶. とがないように義務づけられた︒債務者が弁済できないときは︑債権者が担保物の所有権を確定的に自らのものと. して自由に処分できたことは当然であるが︑弁済がおこなわれ︑債務が消滅したとしても︑担保物の所有権はこれ. によって自動的に債務者に復帰するわけではなかった︒そのため︑債権者が返還に応じず他に譲渡しても︑その行 ︵8︶ 為は信義に反すると非難されることはあっても︑譲渡は適法なものとされた︒実際には信託が五人以上の証人を立. ち会わせておこなう握取行為あるいは法務管の面前でおこなう法廷譲与をもっておこなわれたために︑そうした事. 態が生じることはまれであったと思われる︒それでも信託は債務者にとって危険な担保方法であったといえよう︒. そのため前三世紀には信義︵ま旦に基づく信託訴訟︵8ぎ臣&器︶が認められ︑救済策がはかられた︒しかし︑ ︵9V これはあくまで対人訴訟にすぎず︑債権者の処分を無効とするまでの効果をもたなかった︒. また︑信託では担保物を債権者に引き渡してしまうので︑債務者がそれを利用できないという不便さがあった︒. 担保物が家産的性格を有する手中物であったことからすれば︑その占有を奪われることは債務者にとっては重大事.
(7) ︵10︶. であった︒それを避けるために︑所有権は債権者に移転するが︑債務者に担保物の占有を継続させることを内容と. 起源における信託の法的構造について︑カーザーは機能的に分割された所有権であったとの前提に立ってい. する信託も認められるようになった︒. 二. る︒それによれば︑古ローマ法の時代における支配権は︑B窪唐8器︵私のものである︶という極めて包括的な表. 現で示され︑物のみなず人をも対象としていた︒そして物支配権としては︑所有権のみなず他物権をもその中に包. やここで論じる信託と質権もこの. 摂する広範な概念であった︒そのため既に古くから認められていた地役権−但し﹁通行権﹂︵箒目︶﹁道路権﹂ ︵11︶ ︵<芭﹁家畜及び荷車を通行させる権利﹂︵碧け誘︶﹁引水権﹂︵き轟a8蜜ω︶. 概念に包摂されていたという︒すなわち﹁制限物権としてとらえられている担保権の前段階は︑古い時代の秩序に. おいてすべの物権が包括的で︑他との違いがほとんどわからない所有権に包摂されていたことからすれば︑機能的. に分割された所有権︵①ぎ賞爵ぎ器=鴨邑一$ω国蒔8蜜目︶であった︒すなわち担保権設定者が担保債権者に与えた 費︶ 権限もかつては一種の分割所有権としてとらえることができたといえよう︒﹂. カーザーは分割所有権であった根拠を使用再取得︵5貫88蓼︶に求めている︒﹁信託の場合︑常に手中物が信. 託者から受託者に握取行為または法廷譲与によって譲渡され︑その結果信託者はほぼ権利を失う︒しかし︑彼には. その物を処分する権限は留保されており︑さらにそれを譲渡したり︑担保として提供したり︑返還するよう請求し. たり︑それが奴隷の場合は解放することもできた.これに対し︑受託者も所有権者としてそれと同様のことをおこ. なうことができた︒すなわち債務の弁済期の前後を問わず受託者であれ第三者であれ︑彼らから物を返還するよう. 四八一. 請求できた︒⁝おそらく使用再取得︵島自Φ8旨・︶は︑古い時代には信託者が信託物に対して全ての権利を失 古ローマ法における物的担保︵谷口︶.
(8) 早法七四巻三号︵一九九九︶. 四八二 ︵13︶. うわけではなかったことを示す数少ない痕跡であろう︒それは信託者による取得時効を容易にするものであった︒﹂. 三 力iザーがここで強力な根拠としてとりあげている使用再取得︵易ξ①8冨o︶について二世紀のローマの法 学者ガーイウス︵O巴島︶は次のように述べている︒. ガーイウスニ丁五九﹁さらに︑他の原因により︑ある者が他人の物であることを知りつつこれを使用によって取得. する場合がある︒すなわち︑ある者が他の者に信託を原因として物を後者の権力内に供与し︑またはこれを法廷で譲与. を使用によって取得することができる︒この種の使用取得を使用再取得という︒それは︑われわれがひとたび所有した. した場合に︑同人︵信託者︶自身が客体を占有するときは︑客体が動産不動産を問わず一年の期間の経過によってこれ. 同︑二・六〇﹁けれども︑信託は債権者との間に担保として締結され︑または友人との間にわれわれの物を同人の所. 物を使用によって再び取得するからである︒﹂. 有として一層安全に保管するために締結され︑そうして︑信託が友人との間に締結されたときは︑どのような場合にも. 使用再取得は成立し︑これに反して︑債権者との間に締結されたときは︑債務弁済のあとならば︑いつでも成立するけ. れども︑債務が未だ弁済されない間は︑債務者が債権者から客体を賃借したのではなく︑また債権者の許容によって客 ︵14V 体の占有を取得したのではない場合にだけ成立する︒この場合には無償の使用取得が生じる︒﹂. これは︑信託物を渡した後︑債務者が債権者からあるいは債権者から取得した第三者から取り戻してー盗む場. 合も含むi債務者が一年間継続して占有しつづけると︑債務者は使用取得︵窃8巷§によりその物に対する所. 有権を再取得することを規定したものである︒このうち友人との間での信託︵甘簿昼8ヨ曽巨8︶では無条件に成 ︵焉︶. 立するとされるのは︑それは寄託であり︑信託によって担保するほどの不確実な信用は存在しなかったからである. と考えられる︒これに対し︑債権者との間の信託︵噛&§餌窪目Raぎ量の場合には条件がある︒すなわち︑債務.
(9) の弁済後の場合はいつでも成立するが︑弁済前では債権者から賃借している場合と債権者から占有を許可された場. 合︵冥Φ︒費ごB容仮占有︶を除いて成立する︒通常の使用取得が成立するためには債務者が正当な取得原因と善意. をもって占有をはじめなければならないが︑この場合にはたとえ債務の弁済前に債権者から盗んで一年間占有した. 場合であっても使用取得が成立するという︒なぜ債務者が窃盗をおかしたことにならずに︑むしろ時効によって再. ウッベ︵コを暮幕︶はカーザーの相対的所有権説に賛同し︑信託についてもこの使用再取得制度の中にカー. び所有権を取得するのか︵の葺ωる8蕊3︒. 四 ︵16︶. ザーのいう分割所有権の痕跡を発見しようと試みた︒彼はこの問題に関するこれまでのいくつかの見解を論評した あと︑次のように言う︒. 古い時代の所有物返還訴訟では︑物を信託を原因として取得した者の主張と︑その他の原因︑例えば売買や贈与. などを原因として占有すべき権利︵認︒算墜B望ω置︶を取得した者の主張は同じで︑区別がつかなかった︒裁判. 官は双方の主張を比較衡量して︑いずれがより良い権利を有するかを判断した︒このような考え方における所有権. はまだ絶対的な権利ではなく︑むしろ相争う相手方との関係においてのみ認められ︑相手方よりも占有すべきより. 良い権利として存在していた︒したがって︑訴訟において勝利するために重要なのは︑相手方よりもより良い返還. の根拠︵︒釜路くヨ&︒磐量を証明することであった︒言い換えれば︑古い時代にはその取得の原因に応じて様々な. 種類の所有権︑例えば﹁売買︵に基づいて得た︶所有権﹂︵ζ亀Φ蒔窪霊旨︶︑﹁責任﹇担保﹈︵に基づいて得た︶所有. 権﹂︵鵠臥け量鵯Φ蒔窪9筥︶︑﹁遺言︵に基づいて得た︶所有権﹂︵くR目跨げ9一ωΦ蒔窪9日︶などが存在していた︒﹁売買に. 四八三. より所有権を得た者﹇信託者﹈から担保物を譲渡された責任所有権者﹇受託者﹈は︑彼﹁信託者﹂との関係では弁 古ローマ法における物的担保︵谷口︶.
(10) 早法七四巻三号︵一九九九︶. 四八四. 済を受けるまでは所持するより良い権利を有する︒言い換えれば︑この権利は︑﹃目的を達成するための一時的暫. 定的な﹄ものであった︒こうして創設された受託者の責任所有権は信託者の売買所有権を完全に取り消すのではな. いことを認めなければならない︒信託者にも所有権︵したがって﹁私のものである﹂︶が留保されており︑例えば信. 託者は彼の下にあった担保物を盗んだ第三者を相手どって返還訴訟を提起することができた︒しかし︑また信託者. との関係において受託者の権利も完全に消滅してはいない︒担保物はある程度はまだ﹃彼の物﹄である︒したがっ. て︑責任所有権者﹁受託者﹈の下にある担保物を奪い返した信託者は時効期間が満了するまでは受託者には訴訟で 負けるが︑盗人として扱われないことになる︒﹂. 確かにウッベの説明は使用再取得と窃盗の不成立との関係について一応の納得のいく説明を提供してくれてい. る︒しかし︑いくつかの問題点がある︒例えば︑相対的所有権説は質についても分割所有権を認め︵後述︶︑信託. と質のいずれも債務者が所有権を有すると考えるが︑質における債務者の取戻行為が窃盗を構成するのに対し︑信. 託における債務者のそれが窃盗の適用を受けなかったちがいをどのように説明するのであろうか︒また︑相対的所 ︵17V 有権説は初期の時代の所有権について相対的性格を認め︑古典時代には所有権は絶対的所有権になったという︒そ. れでは︑古典期になっても使用再取得が存続していたのをどのように説明するのか︒ウッベは古典期には使用再取 ︵18︶. 得を取り囲む事情が大きく変化した結果︑使用再取得は好ましくないものとみられるようになり︑不当な制度と化. し︑使用再取得の存続は不可能になったとして︑苦しい説明をおこなった︒また︑ローマ人の保守性を根拠として. 力iザーとウッベの説明は相対的所有権のドグマにひきずられ︑その枠の中で説明しようする感がある︒む. その存続を説明するだけでは説得力が弱いであろう︒. 五.
(11) ︵19︶. しろ事態を素直に冷静にみつめれば︑容易に答えが見いだせるように思われる︒ すなわち︑この問題はワトソンが. ︵二︶. ︵一︶. 何故に通常の使用取得と異なり︑土地も一年で使用取得することができたのか︒. 何故に信託の場合には︑使用再取得は窃盗を構成しなかったのか︒. 使用再取得の存在意義は何か︒. 言うように︑四つの観点から眺めてみる必要があるであろう︒. ︵三︶. 何故に使用再取得は古典期にも存続し続けたのか︒. については︑担保物を取り戻して占有している債務者の利益をはかることに使用再取得の存在意義があっ. ︵四︶. ︵一︶. 債務が既に支払われたが︑担保物が握取行為または法廷譲与の手続きを踏まずに返還されていないけれど. たと考えるべきであろう︒ それに加えて初期の時代の訴訟技術がまだ洗練されない未熟な部分が残されていたた ︵20︶. めに︑. も︑所有権は既に債務者の下に戻っているものとの推測をおこなったとみるべきであろう︒ そうした視点からこの. の盗とならず︑そのための訴訟が提起されなかったのは︑債務者による担保物の取戻行為が法に触れなか. 制度をながめると ︑︵二︶以下の点についての解答も容易に得ることができる︒ ︵二︶. ったことを意味している︒ それは信託においてはじめから予定され︑同時に期待されていたからであるといえよ. う︒その意味では使用再取得は︑ まさに信託が担保物の実際の使用が債務者に許されるべきだという信頼の表現と. して生まれた制度であること︑ また担保物の管理が債務者に委ねられることはローマの慣習であり︑人々の︼般的. 四八五. 奴隷︑牛︑馬︑ろば︑らば︑農業用地役権︵9一﹂口邑1であり︑このような財産を実際. 認識でもあったことを推測させるものである︒ というのは︑担保物は手中物であり︑したがって重要な生産手段− ーイタリアの土地︑. 古ローマ法における物的担保︵谷口︶.
(12) 早法七四巻三号︵一九九九︶. 四八六. に利用できなくなると︑債務の支払いが困難となる︒法律家たちは︑そうした場合には債務者に実際の使用を委ね. るべきだと考えたのであろう︒また︑債権者は担保物の所有権を得たとしても︑実際にはそれを管理するだけで経. 済的利益が存在しなかった︒そのため︑債権者には盗訴訟を提起する必要はなかったと考えられる︒この点に信託. の場合の取戻行為に盗訴訟が提起されなかったのに対し︑質の場合のそれに盗訴訟が提起され使用取得が成立しな. かった理由を見いだすことができるように思われる︒質に提供される物はそれほど重要でない物︵非手中物︶であ. るのが一般的で︑所有権は債務者に留保され︑占有を債権者のもとにおいて債務の弁済を促す方法がとられた︒そ. の場合︑占有を債権者に移転し留めておくことは重要な意味をもち︑占有を奪うことは盗訴訟の提起を可能とする ほどの評価を受けるものであったのである︵後述︶︒. 信託における使用再取得の意義を以上のように考えれば︑︵三︶の問題である︑動産であるか土地であるか区別. は問題ではなく︑いずれも一年をもって使用取得することができたことは当然であろう︒さらに使用再取得が右に. 指摘した目的のために機能したとすれば︑︵四︶について︑すなわちガーイウスの古典期においてもなお有効な制 度として存続したことは十分納得できよう︒. 以上のように︑使用再取得を理由として信託を分割所有権であったとする主張には根拠がないように思われる︒. むしろ使用再取得は︑債権者への担保物の単独所有権の移転を前提としてはじめて説明のつく制度であるように思 われる︒. 器図qヨは動詞嵩Φ9段①︵拘束する︑義務づける︶に由来する︒十二表法六表一にそれが見られるが︑その正確な内容につい. ては明らかではない︒おそらく目き9冨江○と同様に銅と秤による厳粛な行為をもっておこなわれ︑その際に言明された言葉が法. ︵1︶.
(13) について﹂法学協会雑誌三九巻五・六号︑吉野悟﹁古代ローマ法に於ける拘束行為︵Z国図d匡︶の構造﹂社会科学研究第六巻第. 的効力をもったのであろう︒これについては春木一郎﹁b仁B8図仁ヨ融息9日き息ロ諏ヨ2ρ旨=一轟轟匡房仁冨ωω津︸一蜜置ω窃8︑. 一号︑佐藤篤士﹃改訂■国区図目↓︾ωq﹇>菊¢竃十二表法原文・邦訳および解説﹄早稲田大学比較法研究所叢書一二︑平成五年︑. つ勺9轟a\甲く○β霞曽頃. O爲ら建らミ鳴黛§織砕の譜§駄題ミミ誉誉§肉象ミρ這OG ︒蕊逡ーカーザーは古くからのローマ市民の取. 一〇六頁以下旧国器9肉︑鵠〜一ま鐸㌣>■ωΦ茜2肉ミ曼亀魯ミ魯b曇ごミ建勲肉oミ§卜鶏β一3ωふ︒・︒を参照︒. 引法上の制度である握取行為あるいは法廷譲与を用いておこなわれたこともこれを裏づけているという︒囚器負霜謡9. ︵2︶. 竃磐蒔ぎ肉疑ミ蔚器︒︒︒■これに対し︑ワトソンは信託が十二表法六表一により法的効力を得たとしても︑それによって信託が. 同法より以前から存在としたことの根拠にならないという︒六表一の目的ももともとは全く異なるものであったろうという︒. ︵3︶. 握取行為の際の言明が法的効果を得ていたことは︑六表二﹁十二表法により︵売主は︶言葉で言明された畷疵を償えば十分で. ≦簿ωOPk肖爵ミ湧一竃pω曾肉講o︒㎝p㌣O竪N斜蕊蝋§︒り嵩9. あり︑彼がこの蝦疵を否定した場合には︑二倍額の罰金を科されたが︑法学者により︑暇疵を言明しないことの罰が定められた﹂. ︵4︶. からも確証できよう︒さらに零夷BΦ簿鋤く魯8轟9でも握取行為と法廷譲与に際して言明された内容が法的効力を有する旨が. ≦簿ωOPS壽ミ膏き的黛為駄ミ貴のNお︵お爵︶ωω一廿Oミ斜&ご基嵩9肉講G︒ヨ冒毎−因二p常マ≦窪鳴び肉馳漣ご船田第三. うたわれている︒一方︑当時はまだ単なる信託の合意だけでは法的効力を得ることはできなかった︒. 内器璽肉︑謁〜&ドまたカーザーはおそらくはじめは金銭の授受と交換に担保物の引き渡しがおこなわれたと想像するが︑推. 巻二一二八︑六六八頁︑春木前掲﹁質権﹂一九頁を見よ︒. ︵5︶. ︵6︶. 担保物を換金して得た額が債権額以上であっても︑余剰分を返還する必要はなかった︒逆に債権額に達しなかった場合も不足. 測の域を出ない︒内霧Φお>鳶&§帖鴇ぎ黛Gり矯H逡P8合肉ヒ65ご肉︑鵠〜一赴・. 額を債務者に要求することはできなかった︒船田前掲六六八頁︒. ︵7︶. ︵8︶債権者の信義に反する行為に対しては訴訟︵法律訴訟︶を提起できなかったとするのが一般的見解のように思われるが︵例え. ば︑内霧P賠巽し8ρ合爵怜船田第三巻六六九頁︶︑ワトソンによれば︑誠意訴訟︵び8器ゆ号二&置鋤︶が導入される以前か. 四八七. 誤った使用を判決に際して考慮できたであろうという︒≦象ωoPOミ磁黛蝋§︒・嵩試廿肉謡︒Q㎝P9これに対して︑カーザーは疑問. ら債務を弁済した債務者は担保物の返還訴訟を提起できたであろうし︑裁判官は担保物に加えられた損害や債権者による担保物の. 古ローマ法における物的担保︵谷口︶.
(14) 早法七四巻三号二九九九︶ 視する︒囚器負訪︑肉〜鳶旧舅︒︒高︵お①O︶占象. 四八八. かつては用益権︵島議ヰ8霊ω︶も機能的分割所有権としてとらえていた︒肉鯵映8らぎ神ミ一﹂鵠欺旧肉雨おいω8捕のbミる\. 船田前掲六六九頁︒. ︵9︶ 碧賦○ゆ身9器については︑囚器P肉︑肉〜お一舗船田第三巻六七〇頁注︵三︶︒ ︵10︶. ︵11︶. さらに肉︑謁〜に窪それは既にコシャーカーが主張していたものである︒. 船田亨二訳﹃ガイウス法学提要﹄︵新版︶有斐閣︑昭和四二年︑一三二頁では︑二・五九﹁⁝客体が動産ならば一年︑土. 霜ま. 因器R︶霜謡ふ9さらに︑内p︒ωP肉雨屋h旨ごのN寒堕器H. れについては拙稿﹁起源における地役権の法的構造ーローマ所有権法の研究︵1︶﹂高岡法学第八巻一号一一一頁以下を参照さ. 年ω鴇一しかし︑今日ではこの見解を修正している︒囚器負卜&S︒︵お禽︶し︒①臼沖肉︑謁﹄一斜♪瞠・︒廟のN一8︵おo︒q︶逡︾﹂8・こ. れたい︒. ︵12︶. ︵14︶. ︵13︶ 内器R. 地ならば二年の期間の経過により⁝﹂とされている︒しかし︑囚器9肉遮〜&OPO︒旧≦讐ωOP︑§9鴨§合旧≦︒≦ ω8牢. ディオズディ﹃ロ. 一き9﹄憲慧昏8や皇肉◎ミ§卜§る︐a 口89圏貸ディオズディ冒!マ所有権法の理論﹄一七九頁などは土地の場合も一年の. 期間で足りるという︒また︑船田博士は﹃ローマ法﹄第三巻六六九頁ではいずれも一年としている︒. とく仁げびρp騨○こN畦h. 塑讐ωOP勺§愚軸§鳶団︷︒. 薯=びσρ鋤■斜Oこ圏︒. 内器Φお由閃曽謀抽G︒ざ津旧訪︑需〜お︒暁︷・. ミ旨げρ雰ミ§愚誉一ω胤持窃い. ーマ所有権法の理論﹄一七九頁︒. ︵15﹀ 国吾ρb暗誉箋N蔚賊ミミミ帖鴇ぎ§肉象ミおお﹂3陳︵≦仁びげρ鉾騨○こ旨から引用ご≦昌げρ勲鉾ρ﹄試. 16 17 18 19 20.
(15) 二. 質の法的構造. 一 質をあらわす風磐房という語が古い時代の訴訟である法律訴訟の一種H①臓ω碧江○℃段℃蒔9ユω︒巷δ濤目 ︵1︶. ︵差押えによる法律訴訟︶として認められていたことからすれば︑質もかなり古くから認められていた制度であると. 思われる︒質のもともとの形態は︑担保物の占有が債権者に渡され︑債権者は債権の満足を得るまで物を占有して ︵2︶ 債務の履行を促す占有質︵評霧8暁きρ浮昏暑壁且︶であったと一般に考えられている︒しかし︑前二世紀のカト. しかしギリシャ法のξ唇9Φ8の本来の機能どおりであったとは思えない︵前述︶. :の﹃農業論﹄は当時既に非占有質も認められていたことを示している︵後述︶︒その後︑非占有質はギリシャ法 の制度の影響を受けて. 冨も09①8として展開していったと思われる︒. 占有質の対象は非手中物︵8ω器︒Bき︒嘗︶で︑無方式の引渡︵霞&置・︶を用いて設定された︒信託と異なり︑. 占有質の場合は債権者は担保物を占有するにとどまった︒たとえ債務が履行されなくても所有権は債務者のもとに. とどまり︑勝手に処分することは窃盗をおこなうものとされた︒したがって︑占有質の担保的効果は信託よりも弱. 起源における質の法的構造についてもカ!ザーは分割所有権であったと説明し︑その根拠として前二世紀の. かった.その不都合を改善するために当事者間で流質約款︵一粟8B邑ωω・冨︶を結び︑債務者が債務を履行しない ︵3︶ ときは︑債権者が質物の所有権を取得することが約された︒. 二. 四八九. カトー︵鋸℃.98﹄竃山お蜀O︶の﹃農業論﹄︵前一六〇年頃に書かれたと言われている︶からの一節を引用して 古ローマ法における物的担保︵谷口︶.
(16) 早法七四巻三号︵一九九九︶. 四九〇. カトi﹃農業論﹄一四六・二︵五︶﹁支払いがなされるまで︑あるいはそれについて担保が設定されるまで︑その土. O. ρ呼∪○急8目. ︵5︶. しかし︑カトーの史料からカーザーのような解答を導くことはできないであろう︒この史料はオリーブの実. 産に質を設定したものであり︑賃料の支払いがあるまで持ち去ってはならないことを約束したものである︒もし債. ︵8︶. の売員ではなくて︑オリーブ園の賃料の支払いについて賃借人が賃料の支払いを担保するために自己の所有する財. 三. なる﹂︵3巨巳婁・︶は債務不履行によって質権設定者である買主の農機具や奴隷が売主︵質権者︶に移転すること ︵7︶ を意味したのだという︒そして質権者は物の取戻訴訟︵邑≦&8畳・︶によって十分に保護されたであろうという︒. めて占有に対する権利︑すなわち相対的所有権を取得する︒そして︑カトーの右の史料の中の﹁︹売主の︺所有と. 一〇紹℃貯巳︶の場合︑満期まで財産を拘束しておくこと︵くR賦轟8零訂εが認められ︑債務が満期になってはじ. は質物をつかむこと︵且讐o冨8且︒︶によって︑売主は分割所有権を取得する︒これに対し︑非占有質︵ω亀尽. 解釈していた︒そしてこの史料を根拠に︑占有質の場合︑質を原因とする引渡︵q&置・霞8q鐙ロ磐・冨︶あるい. ︵6︶. ために︑買主が実を収穫し搾油するために持ち込んだ機材や奴隷を質としてとっておくことを勧めたものであると. かつてカ:ザーはこの史料について︑成育中のオリーブの実を売買するにあたり︑その代金の支払いを担保する. ω一2莚α80旨きΦ腎hoB目Φω8︒︶. ωo一qgBΦ昌帥9一富ω簿一ω量ε日Φ葺あ轟Φぎ賞巳○ぎ一帥蜜Φ旨旨も蒔器ユ豊暮o旧8ρ巳血Φ○毎BαΦ盆pα○号℃○博讐9. あろう︒そして持ち去られる財産は何であれ︑︹売主の︺所有となる﹂︵O簿ρ8囲ユ盆詳貫僧一. 地にある買主の全財産を質として保有しておくのがよい︒そうすれば︑その土地からその財産は何も持ち去られないで. い る乙.
(17) 務を履行しなかった場合︑賃貸人はこの約束に従って質物に対する所有権を取得すること︑すなわち﹁帰属質﹂. ︵くR琶善鐙&︶を説明したものである︒初期の法においては︑債権者は質物について対物訴権︵霧ぎ言お邑を. 持たなかったので︑債務者が質物を持ち去ってしまうと︑債権者にはそれを取り戻す法的手段はなかった︒したが ︵9︶. って︑まさに占有質であることがこの時代には重要であった︒そして︑質物となりうる物は︑信託と異なり︑非手. 中物であり︑またその設定は要物契約に基づいたが︑握取行為や法廷譲与とは異なり︑単なる引渡で足りたことを ︵10︶ 考慮するならば︑質の目的に利用される物は債務者にとって経済的にそれほど重要なものではなかったであろう︒. 農具が質の担保物となったとしても︑おそらく債務者の農耕にとって必要不可欠のものに対して設定されることは. あまりなかったであろう︒したがって︑質物の占有を債権者に委ねておくことは債務者にとっては確かに農耕に際. して多少の不便があったとしても︑甚大な影響を及ぼすものではなかったと思われる︒しかし︑占有が債権者のも. とにあることは少なからず債務者の弁済を促すことにつながったであろう︒債権者にとっては︑債務者の許可がな. ければ質物の利用はできなかったけれども︑質物を占有していることは︑債務が確実に履行されることへの期待を. 意味していたのである︒したがって︑このような機能をもった占有を奪うことは窃盗という刑罰的評価の制裁を受. けるに値するほどの行為であったと考えられる︵の象ω﹄︒︒︶︒債権者はこの盗訴権︵85費疑︶をもって十分に 保護されたであろう︒. 質の法的構造についてもカ!ザーのいう分割所有権は当てはまらないように思われる︒. 四九一. ︵OΦ一ω亀︑﹁賭け金﹂︵譲①簿蝕霧緯N︶︑﹁手付金︑内金﹂︵9 ︒霞餌神︾轟Φ恩といった意味をもっていた︒冒き卵感斜養︒り旨お廿. ︵1︶質の起源については︑く 霊耳・ヨ雰映8罫幕ミNし窓拝囚器P鴇浮も戯壼ωという語は物的担保のほかに︑﹁人質﹂. 古ローマ法における物的担保︵谷口︶.
(18) 早法七四巻 三 号 ︵ 一 九 九 九 ︶ 国錺Φぴ露ωp一〇︸匡○拐Φ一一\﹈≦鎚R−一≦巴ミωΦ一ダ肉肉一〇S. 船田第三巻六七二頁など︒. 四九二. ︵2︶ざ辱区琶ぎ7ミΦ轟Φ吋㌔肉一器旧密ωΦ同﹄︑霞一参&︒︒旧霜旨葛■菊魯99§魯錯鴨魯のミミの罫§︑蕊ミ蛛ミミの口︒貫一㎝ご. ︵4︶因器ΦおしりN9︵一︒餐ω︒以馴肉︑霞一島. 駕9. ︵3︶ 流質約款︵δ図8B旨ωω象§については︑囚霧9のN雪︵59︶脇刈を参照︒. ︵5︶ 代金は︑オリーブの代金のほかに︑売主がオリーブの摘取り請負業者や︑売主が使った人に支払う賃金も含まれる︒囚器9 亀︒.. 囚器R︾的N①斜ωO一・. 因器Φお露印F器B これが一般的理解である︒. カトーは右の文章のあとに圧搾機︑ 縄︑梯子︑製粉機などをあげている︒. 閤器R植肉︑謁〜一濠︐. 109876.
(19)
関連したドキュメント
ガラス繊維補強セメント(GRC)は主として建築用
狭さが、取り違えの要因となっており、笑話の内容にあわせて、笑いの対象となる人物がふさわしく選択されて居ることに注目す
従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ
式目おいて「清十即ついぜん」は伝統的な流れの中にあり、その ㈲
2021] .さらに対応するプログラミング言語も作
あれば、その逸脱に対しては N400 が惹起され、 ELAN や P600 は惹起しないと 考えられる。もし、シカの認可処理に統語的処理と意味的処理の両方が関わっ
第二の,当該職員の雇用および勤務条件が十分に保障されること,に関わって
政策上の原理を法的世界へ移入することによって新しい現実に対応しようとする︒またプラグマティズム法学の流れ