膵リ ボ蛋 白 分 画 の能動免 疫 による イヌ 膵障害作成の こ こ ろみ
富山 県 立中央 病院 ・ 内科
広 瀬 昭 一 郎
石川 郡中 央病院 ・ 内科
中 島
( 昭和5 6年4 月8 日受 付)
Key w ords A uto a ntibody, Lip opr otein
,P a n c r e atic l njury
慢 性月革灸の成因にはアル コ ー ル飲 用, 胆 石症 な ど が あ げ ら れて いる が. 成 因不明の もの も 2 0 〜 4 0 % あ
り1 ) 2 ), その成 因と して自己免疫 機 序も想 定さ れて い
る3 ).慢 性 膵 炎の患者 血 清 中に抗 膵抗 体が高率に見出さ れ る事 実射〜7 )も その推 測を支持す る. し か し, これ まで に 膵抗 原を能 動 的に免疫して動 物に膵 外 分泌腺の障害 を作っ た報 告は, わ れ わ れの知る ところで は存 在し な い. そこ で著 者ら は 異種・ 同 種の膵不溶 性リ ボ蛋 白の 可 溶 化 分画を抗 原と してイヌを長 期 間 免 疫し, 何ら か の膵病 変を作り得ないか検 討し た. その結 果, 膵 組 織
へのリン パ球 浸潤のよ う な炎症性 病 変は生 成し な かっ た が, 酵 素 原 顆 粒の減少や消 失に表 現さ れ た膵 腺 細 胞
の軽い変 性, お よ び血清ア ミ ラ ー ゼ活 性の変 動を 認 め たの で報 告す る.
材料お よ び方法 1. 陣の不溶 性リ ボ 空白分画の抽 出
新 鮮なウ シ膵 臓を屠 殺場よ り入 手し た. 新鮮な イヌ 膵 臓ほ当村におい て他の急 性 実 験に用いら れ た イヌよ り得た.これ らの膵 臓は使用 す る まで ‑ 4 0 ℃に凍 結 保 存し た. 膵の不 溶 性リ ボ蛋 白 分 画 (L P) は S mith ら8 ) の方 法の変法によって抽 出し た. 通常.5 0 0gm の膵 組 織か ら作 業を開始し,1 0 0 〜 1 2 0gm ( 湿 量) のL P を得 た.約2 0gm のL P に0.2 % デスオ キシコ ー ル酸ナ トリ ウム液1 0 0 m ほ加えて ホ モ ジナ イ ズ し, さ らに氷 室 内
でマ グ ネチ ッ ク スタ ー ラー によ り 一 夜 撹 拝し た. 翌朝
At te m p t to Pr odu c e P a n c r e atic Inju ry in the
9 ,0 0 0rpm3 0分 間 冷 凍 遠心後, 上 清を と り, こ の上清
の容 量の1 0倍 容量の冷ア セ トンを加え,
‑ 20 ℃に一
夜お き, 生じ た白 色 沈 澱 (L P s ol) を3 ,0 0 0rpm1 5分 間 遠jL、して集め た.20gm のL P か ら出 発して得ら れ た L P s ol に5 〜 1 0 mエの生理的 食 塩 水を加えホ モ ジ ナ イ ズ す る と 蛋白 濃 度13 〜 4 0mg/mエの液が え ら れ た.
蛋 白 定量 は Lo w ry ら9 )の方 法によっ た.
2. イヌ の免 疫
A ,B,C ,3群の雑 種 成 犬を準 備し た. A 群は 8頭か ら な り, これ らの前 記の方 法で準 備し たウ シ膵L P s ol の 30 〜 5 0 mg 蛋 白を含む液 2 〜 3 mL と同量 の
Fr e u nd 完 全ア ジエ バ ン ト(Iatr o n 製) を ェ ム ルジョ
ンと してイヌ の肩 甲骨 下へ筋 注し た. こ の注 射は 2 過 ご とに5 回, つい で4過ご とに行なっ た. 総 計,2 頭の イ ヌ では6 回, 5頭で9 回, 1頭で1 5回 免 疫 注射を行 なっ た.
B 群は3 頭か ら な り, これ らにイヌ膵を材 料と して
前 記の方 法で作 成し た L P s ol を筋 注し た. 注 射の間 隔は A 群と同じであ り,投 与の回 数は 2 頑におい て9 回, 1頭では 1 0 回であっ た.
C 群5 頭を対照 と し た. こ の群では生理的 食塩 水‑
ア ジエ バ ン ト ・ エ ム ル ジョ ンを A や B 群と同じ間 隔
で筋 注し た. 投 与 回数は 4 頭で8 回, 1 頭で1 1 回であ
っ た.
3. 血中抗体の検 出お よ び 血清アミラ ーゼ活 性の測 定.
毎回の障L P s ol ま た は対照エ ム ル ジョ ンの注 射 直
D og by A ctiv eIm m uniz atio n wit h L ipop‑ r otein Fra ctio n of B o vine and Canin e P a n c r e a s. S hoichiro H ir o s e, Depa rtm ent of Inte・ rn al M edicin e, T oya m a Pr efe ctu r al Ce ntr al H o spital, Toya m a. S hin N ak ajim a, Depat・ tm e nt of Inte r n al M edicin e
,Ish ika w a‑gun C entr al H o spital, M ats uto.
前に5 〜 8mエ採 血して血 清を分離し た. こ の血 清につ
い て. ウシ ま た は イ ヌ の膵L P s ol を抗 原と して Ou chte rlo ny 法1 0 ▲に よ り抗 体を 検 索 し,
一 方
Ca r a w ay 法I l )によ りア ミ ラ ー ゼ癌性を測 定し た. 4. 膵組織の蛍 光抗体 法によ る検索.
最 終の免疫注射の7 〜 1 4 日後にイヌをペ ン ト パ ル ビ タ ー ルによ り麻 酔し, 大腿 動 脈か ら採 血L な が ら出 血死さ せ た. こ の間に開 腹して膵の 一 部を摘 出し. ド ライアイスとア セ ト ンの混 合 液によ り ‑ 8 0 ℃に冷 却 し た無 水エ タ ノ ー ル へ浸 して瞬 間に凍結さ せてか ら引 き出し,
‑ 4 0 ℃に保 存し た.1 2 日 以内にク リオ スタッ ト で凍結 切 片を作 製し た.
間接 蛍 光 抗 体 法には膵 切 片を A ま た は B 群の イ ヌ
血清を燐 酸 緩 衝 生 食 水 (pH 7.2 ) によ り8 倍に希 釈し た液によっ て約2時 間 披い, つ い で F I T C (flu o r e s̲ C ein is oth io cya n ate)標 識 抗イヌ 7・ グロ ブ リン家 兎 血 清グロ ブリン(M ile s Lab.,Illin ois, U.S.A.) によ り 3 0 〜 6 0 分 間染 色し た.これ らの操 作は 3 7 ℃の湿 室で
行なっ た.
な お, 対照にはアジエ バ ン ド対照C 群のイヌ血 清を 用い染色し た.
直接 蛍 光 抗 休 法に は R ig gs ら1 2 )の方 法に よ り A 群
のイヌ の γグロ ブリンを FI T C によ り標 識しつ い で精 製し た ものを 用い, ウ シま た は イヌ膵のク リ オスタッ ト切片を 3 7 ℃の温室で6 0 〜 1 2 0 分 間 染 色し た.な お,
C群のイヌ γグロ ブ リンを同 様に標識し, 対照 染色 標 本を作 成し た.
Tab le l. Se ru m Pr e cipitin to Bo vinePan C r e a SL P s ol
5. 組 織 学 的 検 索
膵の左 葉と右 腰, 肝, 腎. 牌. 胃, 小腸, 心, 肺,
唾 液 腺の 一郎を 1 0 % ホル マ リンによ り固 定し, パ ラ フ ィン切 片を作 製L ,
へマ トキシリン ー エオ ジンお よ び アザン染 色を行なった.
成 績
1. 血中抗 体の証明.
膵抗 原 分 画 (L P s ol) に対す る抗 体の出 現を.ま ず Ou chte rlo ny 法によ り検 討し た. A 群のイ ヌ8 頭で はウ シ膵の投 与を開 始し た2過後か ら沈 降抗 体が陽 性 と な り( 図1),これ は最 終 免疫 後まで継続し た( 表1).
C 群 ( 対照) の 5頭では, ウ シ膵L P s ol に対 する沈 降 抗 体は どの時 期にも出 現し な かっ た. B群の3 頭では イヌ膵L P s ol に対す る沈 降 抗 体は Ou chte rlo ny 法
では 証明でき な かっ た.
F I T C で標 識し た A 群のイヌ γグロ ブ リンによっ て ウ シ膵のク リ オスタッ ト切 片を染 色 する と, 膵 腺 細 胞
のapical po rtio n( 核 上 部) に蛍 光が強く,腺 細 胞 核・ La n ge rha n s 島細 胞 ・ 膵 問 質には蛍 光は み と め ら れ な かっ た( 図2).対 照のC 群の イ ヌ血 清か らγグロ ブ リンを分離し同様に操 作し た が, 原 形 質 全般の弱い非 特 異 的蛍 光が み ら れ たのみであった.
2. 間接 蛍 光 抗 体 法の染 色 所見.
ウ シ膵L P s ol によって免疫し た A 群のイ ヌ膵ク リ オスタッ ト切 片を自己血 清で披い, つ い で FI T C 標 識 抗イヌ γグロ ブ リン家 兎 血 清グロブ リンで染 色 する と
。喝諾k o 2 4 6 8 1 0 1 2 1 6
7 3‑ 1 7 3‑ 2 7 3‑ 5 7 3‑1 4 74‑ 1 7 4‑ 2 7 4‑ 7
「 阿‑ 8
4 1 6 >3 2 1 6 8 1 6 1 6
8 4 1 6 1 6 8
4 1 6 1 6
2 1 ̀ 8 1 6
8 >3 2 1 6 1 6 2 3 2 1 6 8 1 6 1 6
3 2 3 2 >3 2
1 6 3 2 >3 2
8 8
+
十
十
+
8
̀ U
′
0
1 1
つ一 つJ
1 6 1 6 8 1 6 +
1 6 >3 2 1 6 8 +
>3 2 十
>3 2 十
Ma xim al d 血tio n n u mbe r of c anin e s e m m is 血o w n d 血 g the c o u r s e of 血m u niz atio n wi th bo vine pan C r e a SL P s ol・ T hedog7 3‑1 w a s s a cd Lic ed at4 8 w e eks・ 0 th e rs w e r e s a cri fic ed 年Sindi‑
C ated in thetable.
+ de n ote s s a c rific e.
梓 腺 細 胞の原 形 質 全 般に蛍 光が あ り, ま た腺 細 胞の
apic al po rtio n の蛍 光が よ り強かった ( 図 3 ) ・ 自己 血清のか わ りにC 群のイヌ血 清で被っ た対 照 切 片で は蛍 光は全般に微弱であっ た.
同 種 膵のL P s olで免疫し た B 群2 頭の膵 凍結 切 片 を自己血 清で披い, つい でF 汀 C 標 識 抗イヌ γグロ ブ リン家 兎血 清グロブ リンで染 色し た ところ, 膵 腺 細 胞
の apic al po rtio n の蛍 光が強か った( 図4)・ こ の蛍 光は C 群のイヌ血清を 用いた対 照 切 片よ り強かっ た・
対 照C 群5 頭の膵を自 己血 清で披い, F I T C 標 識 抗 イ ヌ γグロ ブ リン家 兎 血 清グロ ブ リン で処理 し た場
合. 膵臓 細 胞は微弱な蛍 光を呈し たに過ぎ ない・ 3∴肉眼 お よび 光 学顕微 鏡 所 見・
肉 眼的には A ・ B ・ C 各 群の膵に異 常を み と め な か
っ た, へ マ トキシリン ・ エ オ ジンま た はアザン染 色 標 本の検 鏡では各 群の膵に実 質 壊 死・ 細 胞 浸 潤・ 線 維 化 は み ら れ ず. 従って急 性や慢 性の膵 灸は発 生して いな かっ た. し か し,膵L P s olに よって免 疫し た イヌ では し ば し ば腺細月包の酵 素 原 顆 粒が減 少あ るいは消 失し た 部が巣 状に出 現し た( 図5,6 ). 対 照群におい ても同 様
の部は多 少は み と め ら れ たの で以下のよ う な計 測を行
った. すな わ ち,1 頭のイヌ に つ き膵 左 糞よ り1 カ所.
右 農よ り 1 〜 2 個 所 組 織 標 本を作 成し. 1 枚の組 織 標 本で は 1 0偶の61 7〃×4 5 0〝 の区 画の中の ,
a. 酵 素 原 頼 粒の数が ほ ぼ 正常,
b. 酵 素 原 板 粒の数が か な り減 少し, 1個の細 胞 内に 5 〜 1 0個し か存 在し ない,
c .酵 素 原 顆 粒が全く存 在し ないか, 1 〜 4 個のみ存 在す る.
の各 境 目に属す る細 胞 数を無 作 為に計 数し表2 に示 し た. その結果. 上 記の区 画 内の腺 細 胞 総 数 (a ・ b ・ C
の各項に属す る細 胞数の和)は A ,B,C 各 群の間で有 意 差は な かった. し か し,ウ シや イヌ膵L P s ol投 与 群で
は対 照 群に比して酵 素 原 顆 粒の減少し た細 胞 (b) ,あ るいは ほ と ん ど消 失し た細 胞 (c) が明ら かに多く(そ れ ぞ れ, P < 0.00 1), 酵 素 原顆 粒 数が 正常と 思 わ れ る 細 胞 (a) は明ら かに少な かっ た(P < 0・0 0 1 . 表2)・
ウ シ膵L P s ol投 与 群と イヌ膵L P s ol 投 与 群との比 較では, 後 者の方が酵 素 原 顆 粒の減 少し た細 胞 (b) が 多く(P < 0.0 0 1), ま た酵 素原 顆 粒の殆ん ど消 失し た 細 胞 (c) も多かった (P < 0.0 5 , 表2) ・
膵以外の臓 器の肉眼検 査で は, ウ シやイ ヌ膵L P
s ol免 疫お よ び対 照の各 群に多 少と も脾 腫 大が み と め ら れ た. ウ シ膵L P s ol 投 与の2 頭では肺に米 粒 大の 褐 色 結 節が散 在してみ と め ら れ た・ 肝 ・ 腎・Jい 胃・
小 腸には肉眼では異 常が み ら れ な かっ た・ 組 織 学 的検 索では膵L P s ol投 与 群の全 例お よ び対照群5例 中の 4 例におい て肝お よ び肺に肉 芽 腫を み と め た・ 腎・ 心‥ 胃・ 小 腸・ 唾液 腺には組 織 学 的に は異常を み と め な かった.
4. 血清アミ ラー ゼ活 性の推 移.
免 疫 開始 後 6 カ月 間はウ シ膵L P s ol 投 与 群の血 清
ア ミ ラ ー ゼ活 性は対 照群のそ れに比 して高い傾 向が み ら れ た ( 図7). ウ シ膵L P s ol投 与群におい て, 血清
Table 2. Nu mbe r ofPa n c r e atic Acin a r Cells a nd De n sit y of Z ym oge n Gr a n ule in t he Ce11
Bo vh e C 血 e N o 工m 山S 血 e
A
ntige n G iv e n
pa n c r e a sL P s oI Pan C r e a SL P s ol (C O ntr Ol)
Nu mbo rof Dogs
Nu mbe r of Spe cim e n sEx aLm ined
つ J
8 Nu mbe r of Acin a lCens
(M e an 土Sta nda rd De Yiatio n)
a. Acin a = C ells wh ichc o ntain n u m e r o u sZ G 4 8 士9* ** 4 4 ± 7** *
b. Acin a r c eus which c o ntain 5‑1 0 Z G 9 ±2** * 1 3 士 1** *
c. A 血肛 C 曲 w 址 h c o nt血 0‑4 Z G 2 4 ±6* 榊 3 0 土1 0* * *
血 Tot山ofn n mb¢rS a,b a nd c 7 8 ±6 # 8 7 ±1 2 #
7 1
つ J
7
±
±
±
±
̀ U
5 8
Qノ
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V
7
Nu mbe r ofc eus w a s c o u nted in t he a I C a Of6 1 7 ×4 5 0F▲・
Le v el of sigmi fic a n c ein statistical e v alu atio n c o mpa r edto c o Tltr Ol;***:P<0・0 0 1・
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Z G: Zym Oge n 騨乱 皿1e s