長崎大学工学部研究報告 第
30巻 第
55号 平成
12年
7月
207生態系モデルによる大村湾 の 3 次元流動 ・水 質解析
富 樫 宏 由*
・清 成 竜 太 **
ApplicationofanEcosystemModelfor
3‑DTidalCurrentandWaterQualityAnalysisinOmuraBay
by
HiroyoshiTOGASHI*andRyutaKIYONARI**
Inthisstudy,twonumericalmodelsaredevelopedfortidalcurrentandecosystem analysis.Themodelsarebased oneutrophicationphenomenonwhichisconsidereda
§
血eprocessofwaterpollutionanalysis.From 山etidalmodelre‑ sult
s,itisunderstoodthatthereisaspecialcu汀entinOmuraBay.Theecosystemmodelbasedontidalcu汀entpredicts goodagreementofCODconcentrationforthewholebayareawiththemeasureddata.1
.は じめに近年,閉鎖性海域 における代表的な水質汚濁問題 と して,富栄養化現象が懸念 されてお り,海洋環境保全 を考 える と,早急 に解決 しなければならない課題の一 つである.そのため,水質汚濁解析 プロセス を構成す る流体力学過程 ( 流動場及 び密度場) と,生物化学的 過程 ( 生態系) を結合 して水質汚濁現象 を再現する試 みが進め られ,富栄養化現象 を数値 シ ミュレーシ ョン 解析 によって再現することが可能 にな りつつある. ま た,わが国では,化学的酸素要求量
(chemicalOxygen Demand:以後
coDと称す)が環境基準 として採用 さ れているため,環境影響評価 の際の重要 な項 目として,
coD濃度の解析 は結果が分 か り易 くて良い.そ こで,本研究では対象 を閉鎖性の強い大村湾 とし,湾全域 に おける水質状況の把握 を目的 としている.上述 した事 柄か ら,大村湾の今後の海洋環境保全 を考 える と,拷 内における流動特性 と水質状況 を把掘す ることは,檀 めて重要 と考 えられる.
水質汚濁解析 プロセス としては,先ず,流体力学過 程 によって大村湾固有の流動形態の現況 を把握す るた めに,湾内流れ を代表す る主要地点の潮流楕円につい て,数値解析結果 と現地観測結果 を比較検討 して数値 解の妥当性 を検証 し,湾内 を支配 している残差流 を求
平成
12年
4月
21日受理
*社会開発工学科
(DepartmentofCivilEngineering)**日本工営 ( 樵)
(NipponKoeiCo.)めた.次いで,先の流動解析結果 に基づ き,大村湾全 域 において生態系モデルを用いた富栄養化現象の解析 を試みる.この生物化学的過程 によ り算 出す る因子 と して は,主 に
CODで あ るが,溶存 酸 素 (DO)や 富栄養化現象の誘発要 因で もあ る,全窒 素 (
T‑N)や仝リン
(T‑P)につい ての解析 や挙動 につ いて も検 討 す る.
2.
流動解析 モデルの概要
(1)基礎方程式 と計算対象領域
モデルは流動場及び密度場の 2つのサ ブモデルによ り構成 されている.流動場 に対す る支配方程式 として は,Na
vieトStokesの方程式,連続 の方程式 であ り,杏 度場 に対 しては熱 ・塩分収支 を考慮 した拡散方程式及 び水温 ・塩分 による海水密度の状態方程式である.
解析対象領域 は,図 ‑ 1 に示す ような大村湾全域 と し,水平方向 を 9 00mX9 00mの格子間隔 に,鉛直方向 に は
5層 (1層 目 :
4m, 2‑4層 目
:5m,
5層 目 : 1 8. 0m) に分割 した.数値計算の時間ステ ップは 1 0秒 とし,水平及び鉛直方向の渦動粘性係数や渦動拡 散係数は一定 として与 えた.
(2)
境界条件及び計算条件
流動解析 は,成層期である夏場 と混合期である冬場
を対象 に行 った.計算 に用いた初期条件,境界条件は 以下に示す通 りである.
1)密度 :初期条件 として湾全域 に与えた水温 と塩分 は,夏場及び冬場 により大別 される.夏場 における 水温は,上層か ら
28.0,28.0,26.0,25.0,25.0℃, 塩分は
28.0,28.0,31.0,31.0,31.0‰ として与え
ている.一方,冬場 においては,混合期 とい うこと を考慮 し,水温
14.0℃,塩分
32.5‰ を全層一定で与 えている. また,外洋 との境界条件 として,夏場 に おいては水温
25.0℃,塩分
33.0‰,一方,冬場 にお いては水温
11.0℃,塩分
33.0‰ を与えた.
2 )河川流量 :川棚川,彼杵 川 ,郡川,長与川など大 村湾に流入する主要
22河川を対象 に,年間平均流量 と夏場及び冬場 における水温の平均値 を,時間的に 変化のない もの として与えている. また,河川の塩 分濃度は
0‰ としている.
3
)潮汐 :湾 口部 開境界 にて,大村湾 の
M2分潮振 幅である
0.24mを与えた.
3.
生態系モデルの概念 ( 1 ) 基礎方程式及び物質循環
生物化学的過程 においては,実海域での物理過程で ある流れによる物質の循環 と,渦動拡散現象 を考慮 し なければならない.故 に,物質の時間的変化及び空間 分布は,物理過程 と生物化学的過程 を考慮 した相互関 係か ら成 り立 っている.本研究 における生態系モデル は,図
‑2に示す ような物質循環 を考慮 してお り,中 田1 ) に従 い,植物 プランク トン,動物 プラ ンク トン, 懸 濁態有 機物 ( poc) ,溶存 態有 機物
(DOC),全無 機態窒素
(DIN), リン酸塩
(DIP),溶存 酸 素
(DO),
coDの8要素で構成 されてお り, これ らの変化 は, 生物化学的変化項 を加 えた次式に示す拡散方程式で表 わ される.
竣
∂Jニ
ーu雷 ‑
V晋 ‑ W 雷
・A^(普 +翠 )+AZ雷 +(普
)
* (1'ここに
,β:生態系モデルの各構成要素の現存量で あ り
,礼,A ∴ 水平及 び鉛直方向の渦動拡散係数は一 定 と仮定 している. また,生物化学 的変化項 :( ∂β/
∂t) *に相応する各 コンパー トメン トの物質循環 を模式 化すると以下の ようになる.
1 )植物 プ ランク トン
:dPW /dt‑ (光合成 に よる 増殖)‑ ( 細胞外分泌)‑ ( 呼吸 による消費)
‑ (zooによる被食)‑ ( 枯死)‑ ( 沈降)
2
)動物 プラ ンク トン :
dZOO/dt‑ ( 摂食 に よる増
2 ‡ . 1 ● 2 l . 1
0と ]
=1 5
.10i >
・・ 1l.ll5.ll
I
.01 1l.10 15.11 2l.10 25.11 3l.11 35.01 4l.llXIAXIS
図‑ 1 大村湾の解析領域
JLJt
図
一2生態系モデルによる物質循環 加) ‑ ( 排糞) ‑ ( 排継) ‑ (自然死亡)
±(日周 垂直移動)
3)
願濁態有機物
:dPOC/dt‑ (PHYの枯死)
+(zooの排糞 ・自然死亡)‑ ( 微生物による分解) ‑ ( 分 解余剰物生成)‑ ( 沈降)
4)
溶存態有機物 :
dDOC/dt‑ (PHYの細胞外分泌)
+(po
cの分解余剰物生成)‑ ( 無機化)
5)
7
)ン酸 塩 :dDIP/dt‑‑ (
PHYに よる摂 取 ・呼 吸)
+(zooの排壮)
+(pocの無機化)
+(DOCの無機化)
+( 海底か らの溶出)
6)仝無機態窒素 :dDIN/di
‑‑(
PHYによる摂取 ・
呼吸)
+(zooの排 壮)
+( pocの無 機化)
+( 港
底か らの溶出)
生態系モデルによる大村湾の
3次元流動 ・水質解析
7)溶存酸素 :
dDO/dt‑ ( 光合成 による供給)
‑ (PHYの呼吸 に よる消 費)
‑ (zOOの呼吸 に よる消 費)
‑ (po
cの無機化 に伴 う消 費)
‑ (DOCの無機 化 に伴 う消費)‑( 底泥 による酸素消費)‑( 再曝気)
8)化学 的酸素 要求量 :
dCOD/dt‑ (PHYか ら求 まる
CODの時 間変 化)
+(zooか ら求 まる
CODの 時間変化)
+ (pocか ら求 まる
CODの時 間変化)
+ (DOCか ら求 まる
CODの時間変化)
解析対象領域 における水平及び鉛直方向の格子間隔 は,流動 モデル と同様 とし,数値計算の時間ステ ップ は
54秒 とした.
(2)
境界条件及び計算条件
解析 は成層期である夏場 を対象 として行 い,生態系 モデルに用いた初期条件及び境界条件 は以下 に示す通
りである.
1)水温 ・塩分 :初期条件 は,上述 した流動 モデル と 同様 に設定 した.
2
)河川水質 :大村湾 に注 ぎ込 む主要
22河川の流入負 荷 は,長崎県 ・社団法 人底質浄化協 会
2) を基 に平 成
3
年度の数値 を年平均値 として,一定で与 えた.
3 )生態系モデルの初期値 :平成 3年度 〜 6年度 にお ける
6月の平均値 を,公共用水域水質測定結果 に基 づ き設定 した.
4
)生態系モデルのパ ラメー タ :財団法人ナガサキ ・ テ クノポ リス財 団
3) に従 い,表 ‑ 1,
2の ように設 定 した.
4.
解析結果及び考察
( 1 ) 流動 モデルによる解析結果の考察
ここでは,上述 した流動モデルによ り解析 された大 村湾の流動形態 について検討す る.解析デー タは,水 面変動及び残差流,潮流楕 円であ り,図‑ 1に示 して い る
P1‑P5の
5地点 を対 象 と して い る.た だ し, 解析デー タは成層期 ( 夏場) を対象 とした ものである.
図
‑3は
,plにおける水面変動 を示 してい る.拷 中央南東部である津水湾近郊 に位置す る
Plの
M2分 潮振幅
0.24mの潮位 は良好 に出てお り,
5周期 日以降
は定常状態 とな り安定 している.
次 に,図
‑4か ら図
‑7に,湾 中央部である
P3と 川棚港沖である
P4の表層及び底層 における現地観測 結果 と数値解析結果の潮流楕円を示す.図 に示す ●印 は,中村 ら
4)に よる現 地観測結果で あ り,▼印 は本研 究 による解析結果 である.先ず
,p3に着 目す る と, 表層及び底層の計算結果 は,観測値 よ りも若干流速が 小 さ くなったが,流向は比較的良 く再現で きている も
秦 ‑ 1 生態系モデルのパ ラメー タ
209パ ラ メ‑ タ
単 位設定値
最大可 能成長速度
dayー1 0.59exp(0.0633T) 呼吸速度
day ) 0.02exp(0.0524T)
リン酸塩 摂取 の半飽和値
FQr atm/I 0.02無機態窒素摂取の半飽和値
FLg‑arm/I ).0沈 降速 度
m/day 0.15枯死速 度
day 1 0.02e,rp(0.0639T) 光合成 の最適光強度
cat/Cm2.day 250chl
光消散 係数 の成分 消 散 係 数 の
‑a濃 度 に依 ら な い
Chl‑a依 存 性 を示す比例定数
C/chL‑a
比
m l 0./5m1(mgchl.m:i)1 0.066
mg/mg 2.65
C/P
比
mg/mg 63.IC/
〃 比
mg/mg 8.6TOD/C
比
mg/mg 3.2C()〟/C
比
mg/mg) . 4 最大捕 食速度
day 1 0.18exp(0.0693T)飼 料制 限パ ラ メー タ
(m.1C/m3)‑I 0.01捕食 の開催
mgC/m:i 0.0消化効 率
% 7().0総 成長効 率
% 30.0死亡速 度
dayr1 0.054exp(0.0693T)C/P
比
mg/mg 45.8C′
Ⅳ 比
mg/mg 5.41TOD/C
比
mg/mg 3,51表
‑2生態系モデルのパ ラメー タ
パ ラメ‑ 夕
単 位設定値
懸濁態有機物の無機化速度
day‑i 0.01exp(0.07T)願 関す る 附 萄態有機物の無機化に関 する分解余剰物生成の割合 解濁態 有機物 の沈降速度 濁態有機物 の無機化 に
DOの半飽和値
mg/I I.0% 25.0
m/day 0.432
溶存態有機物の無機化速度
day l 0.003exp(0.0693T)溶存態有 機物 の無機化量 に関す る
DOの半飽和値
底i
・p尼 溶 出速度
mg/mlmg/I'.day I/..07・
〃 溶 出速度
mg/m2.day 26.8・酸素消 費速度
解
・C/濁態有機物 中の
P比
mgo2/mg/mgm2.day 250.Oexp(32.07.Ck593T)・cm
比
mg/mg 6.9・TOD/C mg/mg j.2
・COD/C
潜存態有機物 中の
・(:ンP比
mg/mgmg/mg ]12.425.0・C/N
比
mg/mg )0.0・TOD/C mg/mg j.∫
・COD/C mg/mg 138
海表面最 強 日射量
cat/cm2.day 9j()日長
day 0.58]0
.
4 0.3 0.2 0.10.123qqq
5
10Cyc J e
図 ‑
3 Plにおける水面変動
の と思われる. また,水平
2成分 ( 東西方向 と南北方 向) に分解 して考察する と,表層 においては,東西方 向の流速が
1.3cm/S程度 であ るの に対 し,南北 方向 は
4.2cm/S程度 を示 していることか ら,p3の表層近傍 で は南北方向の流れが卓越 していることがわか る.一方 の底層近傍 における流速 は,東西及 び南北方向 とも
3.0 α/S程度 の相似 した流速成分 が見 られた.次 に
,P4に着 目す る と,p3と同様 表層及 び底層 の計算結果 は, 観測値 よ りも若干弱い流速であ ったが,流向は良好 に 再現で きている もの と思 われる.表層 においては,東 西及 び南北方向 とも
2.0cm/S程度 の相似 した流速成分 が見 られた. しか し,底層 においては,南北方向の流 速が
1.0cm/S程度 であ るの に対 し,東西 方向の流速 は
4.5cm/S程度 を示 していることか ら
,p4の底層近傍 で
は東西方向の流れが卓越 していることがわかる.
以上の考察か ら,表層及 び底層 における流況特性 は, それぞれの場所 によって大 きな相違はあるが,数値解
と観測値 は各地点毎ではほほ相似 していて数値解 は概 ね再現性 の良い ことが分か り,その妥当性が検証 され た.
また,図
‑8か ら図
‑11に,それぞれの流況特性が 顕著 に見 られる第 1層,第
2層及 び第
3層,第
4層 に おける残差流の流速ベ ク トル図 を示す. まず,湾口部 に着 目す ると,各層 において反時計 回 りの水平循環流 の存在が確認で きることか ら,湾口部 における各層 ご との相違 は殆 ど見 られない ようである.次いで,湾中 央部 における流況特性 について考察 を行 う.第 1層, 第 2層である表層 における流況特性 と しては,時津港 沖近郊か ら川棚港沖へ と向か う北向 きの流れが湾中央 部 で大 きな反時計回 りの水平循環流 を形成 しているこ
とが確認で きた. この流況は,第
3層 において,第
1層及び第
2層 よ りも弱い流れで形成 されていることが 認め られるが,第 4層 においては確認で きなかった.
また,第 1層及 び第
2層 における津水湾や長崎空港付 近の流況特性 は,流出す る傾向が見 られたが,第 4層
+
也:Y(cm/8)ミ 普:Obs
㌔ l
ー:CalI . , 1 . ● I ■ . t I ■
\
̲I , ̲ 1
・ ヽ 、 、
\\もも
〜
\i
暮
色ニVくcTTL/8)図 ‑ 4 P3における表層 の潮流楕 円
+
也:Y(crb/8)8 ▼ ' . : C b a s l
\〜
ヾ ■ 、 , ̲
㌔\図‑
5P3における底層 の潮流楕 円
+
也 :Y (cn/8)8 : C b s γ : C a l
1 竜
】 L も
図‑
6 P4における表層 の潮流楕 円
+
也:V(C巾′■)
幹 : C b s
I : C a l
h▼ ▼ ▼▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ー▼ ▼ ▼ ▼ ▼▼ ▼
▼ ●̲
▼ ▼ ●
1
▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ = ▼ ▼ ▼ ▼ ▼▼ 〜
▼' J
■
、 √ rー
+也
.・lJ(中Il/■)図
‑7 P4における底層 の潮流楕円
生態系モデルによる大村湾の
3次元流動 ・水質解析
においては流 入す る傾 向 にあ った.従 って,湾全域 に おける流況特性 として,底層 か ら流入 した水塊が沿岸 湧昇 し,表層 か ら流出す るとい う鉛直循環流の存在が 確認で きる.一方,図
一10に示す第
3層 においては, 水塊の流入や流出が余 り顕著 に見 られない ことか ら, 流入及び流出す る流れが複雑 に入 り混 じる逆転層的流 況であろうと推察 される.
(2)
生態系モデルによる解析結果の考察
生態系モデルでは ,( 1 ) で示 した図
‑3を考慮 し,定 常状態での流動解析結果 を用 いて解析 を行 った.解析 対象時期 は既存資料 の関係か ら夏場 のみ とし,平成 3 年度
〜6年度 における
6月の平均値 を初期値 として与
え
,30日間後である
7月の解析 を行 うことに した. 2 5 ・ 生態系モデルによ り解析 された結果 を,図
‑12か ら
2血 . 図
‑15に示 し,考察 を加 えてい く. ここでの図は,拷
口部 か ら湾 奥 部 まで の
COD,DO,T‑
N,T‑
Pの 各 濃度の空間分布 を取 っている.
図
‑12よ り,湾 口部 か ら湾 奥 部 に向か うにつ れ て
coD濃度が全体的 に大 き くなってい る こ とが確認 できた.特 に,表層 ではその挙動が顕著 に見 られ るが, 底層 においては濃度勾配が緩やかであ り,殆 ど変化 は 見 られなかった.coD濃度 も津水湾近傍 で最大2.
9Ⅰ喝nと,やや高めの値であ った.
図
‑13は溶存酸素の濃度分布 を示 しているが,底層 における濃度が観測値で は最小 で も 1. 8‑3. 2 m 郎 であ るの に対 し,計算値 で は約 4. 6 叩nとい うか な り相 違 す る結果 になった.
図
‑14及び図
‑15に示す
T‑N及びTIPによる濃度の空間分布 の特徴 としては,表層 よ りも底層 において高 い濃度 を示 している. この ことよ り,全無機態窒素及 び全 リンを主体 とした栄養塩濃度は,底層 においてそ の挙動が顕著 になる傾向が見 られた.
次 に,生態系 モデルによ り解析す る領域の詳細 を図
‑16
に,解析結果 を図
‑17か ら図
‑20に示 して考察す る. ここでの解析結 果 は,各領域 における
COD,DO,
TIN,T‑Pの各濃度 を示 している.図
‑17は,各エ リアにお ける
COD濃度 の計 算 結果と観測値 の比較 を示 してい る.エ リア A か らE まで の湾全域 において差 は余 り見 られず,良好 に再現で き ている もの と思 われる.表層 に着 目す る と,エ リア A か ら
Dは計算結果 の方が観測値 よ りも
0.05‑0.40叩n程度大 きい値 を取 ってい るが,エ リア Eに関 して は 計算結果が観測値 よ りも小 さい値 を取 っていた. この ことか ら,本モデルによる喜 々津 川沖 な どの地形が複
211
ア ブ 苧t i i ‑
1 0 .
5 . 0 0
1仇00 1〜.00 ZAO8 25.003 0 . 0 0 3 5 . 0 0 4 0 . 0 0
Ⅹ‑4XtS
図
‑8第 1層 における残差流
5 . 0 0
10.00 15.00 20.00 25.003 0 . 0 0 二 1 5 . 0 0 4 0 . 0 0
Ⅹ‑▲ⅩIS
図
‑9第
2層 における残差流
図
‑10第
3層 における残差流
5 . 0 0
10.00 15.00 王0.00 21003 0 . 0 0 1 5 . 0 0 4 0 . 0 0
X‑^X(S
図
‑11第
4層 における残差流
ー S一rfac
e 4 ‑ ■ M
iddle IBottom・ : . ̀ ′
串 ・三≡誠紳 桝=::‥::‥::::≡:==;=;…三:;=
0 10 20 30 40
(
l n)
.IO'図
‑12湾 口か らの
COD濃度分布 T ̲ J V
3 5 0 3 0 0 2 5 0 2 0 0 1 5
01
005
0 0l I
StJr舟ceI : .Mi d d l e ネ B o t t o m
耗 避寒
葦.■⊥●.'':A
0 1
0
20 30 40(m) .IOJ
図
‑14湾 口か らの TI N 濃度分布
雑 で入 り組 ん だ場所 にお け る表層 の
COD濃度 再現計 算 は,余 り精度 が良 くない と考 え られ る.次 に,底層 に着 目す る と,エ リア
Bの湾 中央 部 や エ リアCの形上清近郊 か ら時津港 にかけての計算結果 は, l殆 ど差異 が な く,良好 な値 を示 している と思 われる.エ リア
Dの堂崎 沖 に関 しては,観 測値 よ りも
0.50r喝n程 度低 い 借 を示 してい るが,全体 的 な計算結果 か ら考慮 す る と, 特 別 な値 で は ない もの と思 わ れ る. このエ リア D に 関 して も言 える こ とは,堂 崎 沖 もエ リア E と同様 , 地形的 に複雑 であ り,再現計算 は難 しい もの と考 えれ る. しか し,表層 及 び底層 における本研 究 の計算結果 は,少 しの誤差 はあ るが,比較 的観測値 に近 い値 を取 ってい る ことが確 認 され てい る. また, これ らの計算 結 果及 び観 測値 か ら読 み取 れ る こ とは,エ リア B 及
びE
にお い て は,表 層 の
COD濃 度 が
3.OJTWを超 え ているため,水 質の悪化 が懸念 されている場所 であ る と推測 される.大村湾全域 で考 える と,平均 的 な値 が 表層 で3. OJ T W 前後,底 層 で2. 0 1 喝n程 度 であ る こ とか ら,表層 と底 層 で は
1.0m 糾 程 度 の差 が あ り,表 層 の ほ うが水 質の悪化 が顕 著 に見 られる.
図
‑18には,各エ リアにお ける溶存酸素濃度 の計算 結果 と観測値 との比較 を示す.表層 においては,エ リ ア A か ら E まで湾全域 にお い て か な り良好 な値 が再 現 で きて い る こ とが確 認 で き,湾 平均 値 は8. 0叩n程
ー
Sl 血 I ‑ , . M
iddle †・ Bottom・ : ー ‑. . i. :
チ:.・F:苧輔Wi.i.:̲.:.:.: 軸性;i;三::::;::::..:::;三洋;衣:;:≡:…
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●・‑..‑:. :.:::,:̲.:‑誠i'i.Hi‑韓:;:;:;::::;:;:;享 :;:三‥;:;:;‥:=:===::.r==f:耶 千丁=:=.:‑I:::= ii幸 :;;;;≡;:三;:?::::?:瀬 林 i;琳 弾き{=:チ;≡芋貰:‑lJ''‑I;●:A:':;;::.I;:;;;;0 10 20 30 40
(m) +JO;
図
‑13湾 口か らの
DO濃度分布
T̲ P
+ StⅡ・血ce oMiddZc
」 ■
Bottom 3025 20
15 10
苧きき崇*:栄:宗主輔車難:一LJ諜如拙 *# ::::::;:::.I:
≡ヨ;無 や難出,王立…さと主菜.;韓無害や
‑
:#亭*'iii謝 .蕪棚 享耕 端#=.華榊 i : I : : = = = =
嘉 ….;・.;‑
0 10 20 30
(tn)
図
‑15湾 口か らの
T‑P濃度分布
図
‑16湾 内 にお ける各エ リアの詳細
度 と高い値 を示 している.一方,底層 に着 目す る と,
エ リア B,C,D とも観測値 とは大 き く異 なる値 を取
って い る.特 にエ リア C に関 して は,
2倍 以 上 の差
が生 じてお り,貧酸素水塊形成 の可能性が観測値 か ら
尭 われる.大村湾 において貧酸素水塊 が形成 され る範
囲 は,エ リア
Bの湾 中央 部 か らエ リアCの形 上 清 に生態系モ デルによる大村湾 の
3次元流動 ・水 質解析
かけてであ り,溶存酸 素濃度 は2. 0‑4. Om c n程 度 で あ る.本 モデ ルに よるエ リア
B,C,Dにお け る溶存酸 素濃度 は,平均値 で
4.57汀 官n程 度 であ り,貧酸 素化状 態の再現 は見 られ なか った.以上の考察 か ら本 モデル
による再現計算 は,表層 においでは良好 である ものの, 底層 においては貧酸素水塊が形成 される程度の値が算 出 され ない ことが わか った.ゆえに,底層 にお ける溶 存酸素濃度 の計算 は,色 々な諸条件 を再度考慮 し直す 必 要が あろ う.
図
‑19には,各エ リアにお ける全窒素濃度 の計算結 果 と観測値 の比較 を示す.表層 に着 目す る と,エ リア
A及び Dにおいて
0.05n 郎 程 度計算結果が大 きい値 を 取 って はい る ものの,エ リア
B,C,Eに関 して は良 好 な値 で あ る と思 われ る. また,エ リア Eの全 窒 素 濃度の値 は,他 のエ リア と比較す る と
2倍位大 きい値 を示 してい る.エ リア Eにお い て は流 入 して くる河 川が多いため流入負荷が蓄積 され易 く, その負荷が地 形 的な要因か ら拡散 し難 い こ とが原 因である と考 え ら れ る.一方,底層 に着 目 してみ る と,エ リア C の み において観測値が大幅 に計算結果 よ り高い値 を示 して い る. この エ リア C の形 上 湾及 び時津港 付 近 につ い ては,図
‑20か らも全 リン濃度が高 い値 を示 している ことな どか ら,窒素及
び 1)ンの流入負荷が大 きいか, もしくは地形 的要 因か ら蓄積 されやすいのではないか と推 測 され る. このエ リア C につ い て は,流 況 か ら 考 えて も極 めて流 れが弱 く,循環 も してい ない ことな どを考慮す る と,後者の方の影響が強いのではないか と思 われる.以上 の考察 よ り,仝窒素濃度 に関す る表 層及 び底層 における再現計算 は,概 ね計算値 と しては 良好 で あ る と思 われ るが,エ リア
Cの底 層 にお け る 再現計算 は,本 モデルで は難 しい ようであ る.
図
‑20には,各エ リアにおける全 リン濃度の計算結 果 と観測値 との比較 を示す.表層 に着 目す る と,エ リ ア
A,D,Eに関 して は,観 測値 と殆 ど同 じ値 を取 ってお り,良好 に再現 している もの と考 え られる. しか し,エ リア
B及 び
Cにお い ては,最大 で
0.005r r M 程 度 の差が見 られる ことか ら,湾 中央部 か ら湾 中央南部 にかけての再現計算 は難 しい もの と考 え られる. また, エ リア
A‑Eを比較す る と,エ リアEにお ける全 リン濃度のみがエ リア
A‑Dの
2倍以上の値 を示 してい る.
このエ リア
Eにお いて は,流 入河 川 に よる流 入負 荷や地形的要因 な どか ら汚濁物質が蓄積 されやすいため, 仝 リン濃度 の値が大 き くなっている もの と推察 される.
一方 の底層 にお け る比 較 は,エ リア
B及 びDに関 し ては,概 ね良好 に再現で きてい る と思 われ る. しか し, エ リア
Cの湾 中央南部 で は観 測値 が0. 0 05mg / l程 度大
213
[ =]ca 1 ‑ S 吻 o b s ̲ S
EコCal‑B l打払 obs.らlL‑.‑HL、
A ち C D E
Areas
図‑1
7各エ リアにお ける
COD濃度の比較[ =〕c a l ̲ S 圏 o
bs̲S [=コ c a l ̲ B 町皿 ob s ̲ B
‑:.、ー
A a C D E
Am s
図
‑18各エ リアにおける
DO濃度の比較mg , l T‑ N
⊂コ c a 1 ‑ S 磁歪 aob
s̲SEコ c a l ̲ B 皿 ob s ̲ B
A B C D E
Areas
図
‑19各エ リアにおける T‑ N 濃度の比較
mg/I TIP
0035 003 0025 002 0015 00l OLX)5
lJ
⊂コc a l ̲ S 圏 ob s ̲ S E コ c a l ̲ B 皿 ob s ̲ B
A B C D E
Am s
図
‑20各エ リアにおける
TIP濃度の比較
きい値 を示 してお り,本モデルか らは妥当な計算結果 が算定出来 なか った.以上の考察か ら,湾全域 におけ る仝 リン濃度 は,表層及び底層 とも概 ね良好 な値 を示 してはい るが,本 モ デル に よるエ リアCでの湾 中央 南部 における再現計算 は難 しい と考 えられる.
5.
k B
本研究 では,大村湾全域 における富栄養化現象 に伴 う水質状況の把握 を目的 とした数値 シミュ レーシ ョン 解析 を行 った.流動モデル及 び水質モデルのそれぞれ によ り,得 られた成果 をまとめる と以下の ようになる.
(1)
流動解析 について
a)大村湾全域 における残差流の流況ベ ク トル図 よ り,表層 か ら底層 までの各層 において,湾口部の 中心 に位置する浅 曽根 を中心 と した反時計 回 りの 水平循環流 の存在が確認で きた. また,湾中央部 において も水平循環流の存在が認め られ, この流 況特性 は底層 よ りも表層 の方 に顕著 に見 られた.
一方,宮浦 ・大崎半島を境界 とした南東部の湾央 では,表層 においては流出の傾向が,底層 におい ては流入の傾向がそれぞれ見 られたことか ら,鉛 直循環流 による流況特性 の存在が見出 された.
b)
大村湾 を支配 している残差流は,成層期 ( 夏場) 及 び混合期 ( 冬場) において密度差 によって生 じ る密度流の影響 に依存 している部分が極 めて大 き い ことが,従来の研究 よ り指摘 されているが,本 研究 による計算結果か らは,密度差 による残差流 への影響が明確 には見 られなか った.
(2)