遺伝子導入による興奮性アミノ酸誘導性神経細胞死 の抑制
著者 北尾 康子
著者別表示 Kitao Yasuko
雑誌名 平成16(2004)年度 科学研究費補助金 基盤研究(C) 研究成果報告書
巻 2002‑2004
ページ 9p.
発行年 2005‑04
URL http://doi.org/10.24517/00049272
Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja
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生ロ 室自
研 究 成 果 報
2004 49
金 沢 大 学
研 究 課 題 名
遺伝子導入による興奮性アミノ酸誘導性神経細胞死の抑制
課題番号14580725
平成14年度〜平成16年度科学研究饗補助金(基盤研究(C)(2))研究成果報告書
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金沢大学附属図書館 平成17年4月
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北 尾 康 子(金沢大学大学院医学系研究科・助手)研究代表者
0500−04145−8
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はしがき
研 究 組 織
研究代表者:
研究分担者:
研究分担者:
北 尾 康 子 小 川 智 堀 修
(金沢大学大学院医学系研究科・助手)
(金沢大学大学院医学系研究科・教授)
(金沢大学大学院医学系研究科・助教授)
交 付 決 定 額
研 究 発 表
YamaguchiA,TaniguchiM,HoriO,OgawaS,T"oN,MatsuokaN,MiyakeSiS,KasaiK, SugimotoH,TamataniM,YamashitaT,TohyamaM.Peg3/PwllslnvoIvedinp53‑mediated CellDeathPathwayinBrainlschemia/Hypoxia・エB"LC""@.2002;277,623‑629
1
.
HoriO,IchinodaF,TamataniT,YamaguchiA,SatoN,OzawaK,KitaoY,MiyazakiM, HardingHP,RonD,TohyamaM,StemDM,andOgawaS・TranSmissionofcellstressfiDm endoplasmicreticulumtomitochondria:expressionofLonprotease.エα〃Bj〃、2002,157:
ll51‑ll60 2
.
MiyazakiM,OzawaK,HoriO,KitaoY,MatsushitaK,OgawaS,andMatsuyamaT.
ExpressionofORP150(150kDaoxygenregulatedprotein)inthehippocampussuppresses delayedneuronalcelldeath・エにセ花6.B〃〃〃〃""セ畑6.2002;22,979‑987
3
.
MiyagiT,HoriO,KoshidaK,EgawaM,KatoH,KitagawaY,OzawaK,OgawaS,andNamiki M・Antimmoreffectofreductionofl50‑kDaoxygen‑1℃gulatedpr℃teinexWessiononhuman prostatecancercells・肋rJ〃〃.2002;9:577‑585
4.
5.AsahiH,KoshidaK,HoriO,OgawaS,andNamikiM・Immunohistochemicaldetectionofthe 150‑kDaoxygen‑regulatedproteininbladdercancer.RJUIM、2002;90:462‑466
IkematsuK,TsudaR,KondoT,KondoH,OzawaK,OgawaS,andNakasonoI・TheexpPcssion ofanovelstressprotein'150‑kDaoxygenregulatedprotein'insuddeninfantdeath.L昭M〃
"b〃Qノ.2003;5:15‑9
6
.
MiyagiT,KoshidaK,HoriO,KonakaH,KatohH,KitagawaY,MizokamiA,EgawaM,Ogawa S,HamadaH,NamikiM・Genetherapyfbrprostatecancerusingthecytosinedeaminase/Uracil phosphoribosyltransferasesuicidesystem.〃仇"e〃〃%2003;5:30‑37
7
.
8.PopivanovaBK,KoikeK,TonchevAB,IshidaY,KondoT,OgawaS,MukaidaN,InoueM, 直妾経費(工 )
■■︾■封 翌雪(工)
二口A口
一(工 )
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ー z成14年度 1,500,000 0 1,500,000
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ー
、
ー z成16年度 700,000 0 700,000
二一︑牌総
一 3,600,000 0 3,600,000
YamashimaT・AccumulationofmicroglialcellseXpressingELRmotifLpositiveCXC chemokmesandtheirreceptorsCXCR2inmonkeyhippocanpusafierischemia‑reperfusion.
B""Res970:195‑204,2003
YatabeN,KyoS,MaidaY,NishiH,NakamuraM,KanayaT,TanakaM,IsakaK,OgawaS, InoueM・HIF‑l‑mediatedactivationoftelomeraseinCervicalcancercells.O"cQge"e、2004
23:3708‑37015 9
.
10.KitaoY,HashimotoK,MatsuyamaT,IsoH,TamataniT,HoriO,SternDM,KanoM,OzawaK, andOgawaS・ORP150/HSP12AregulatesPurkiniecellsurvival:arolefbrendoplasmic
reticulumstressincerebellardevelopment・JNNe"msci2004;24:1486‑96
ll.HoriO,IchinodaF,YamaguchiA,TaniguchiM,KoyamaY,TohyamaM,StemD,OzawaK, KitaoY,OgawaS.RoleofHelpintheendoplasmicreticulum(ER)stI℃ssIeSponse.仇"
α肋.2004:457‑469
12.OkjdaK,MinaminoT,TsukamotoY,LiaoY,HirDtaA,YutaniA,OzawaK,OgawaS,
TomoikeH,HoriM,andKitakazeM・ProlongedERStressmHypertrophicandFailingHeart FollowmgAorticConstriction:PossibleContributionofERStresstoCardiacMyocyte
Apoptosis.α7.C"伽伽".2004;110:705‑12
13.BandoY,TsukamotoY,KatayamaT,OzawaK,KitaoY,HoriO,StemDM,YamauchiA, OgawaS.ORP150/HSP12AprotectsIcnalmbularepitheliumfromischemia‑inducedcell death・E4SEB。Jh2004;18:1401‑3.
14.NakagomiT,KitadaO,KuribayashiK,YoshikawaH,OzawaK,OgawaS,MatsuyamaT・The 150‑kilodaltonoxygen‑regulatedprotemameliorateslipopolysaccharide‑mducedacutelung iniuryinmice.4"J〃肋"2004;165:1279‑1288
15.NakataniY,KanetoH,KawamOriD,YoshiuchiK,HatazakiM,MatsuokaTA,OzawaK, OgawaS,HoriM,YamasakiY,MatsuhisaM・Involvementofendoplasmicreticulumstressin insulinresistanceanddiabetes.JB〃C"".2005;280(1):847‑851
BandoY.,KatayamaT.,TaniguchiM.,MatsuoN.,IshibashiT.,Ogawa
S.,TohyamaM.RA410/SlylsuppressesMPP+and6‑hydroxydOpamineinducedcelldeathin SH‑SY5Ycells.NNe"〃6""〃〃D施帥肥2005;18:143‑151
●●6711
18.OzawaK,MiyazakiT,HoriO,KitaoY,TamataniT,andOgawaS.TheERchaPeronel50 kDaOxygenRegulatedProtein(ORP150)伽provesinsulinlesistanceinType2Diabetes Mellitus、D加加卿.2005;54(3):657‑63
19.AleshinAN,SawaY,Kitagawa‑SakakidaS,BandoY,OnoM,MemonlA,TohyamaM,Ogawa S,andMatsudaH・150‑kDaoxygen‑regulatedproteinattenuatesmyocardial
ischemia‑reperfusionirjuryinratheart.JM〃α"Q"WOl.2005;38(3):517‑25.
神経発生における小胞体ストレスに関する研究 主 任 研 究 者
分 担 研 究 者 同
北 尾 康 子 小 川 智 堀 修
研 究 要 旨
ORP150は、生後4‑8日にかけて小脳、特にプルキンエ細胞に強い発現パター ンを示した。ORP150を過剰発現させたトランスジェニックマウス(TG)では、
プルキンエ細胞に強いORP150の発現を認めるとともに、ORP150ノックアウ トヘテロ接合体(KO)では、その発現は明らかに減弱していた。ORP150の強 制発現によってこの時期における細胞死が抑制され、逆にORP150ノックアウ
トマウスでは、神経細胞死が加速された。ORP150は海馬神経においてグルタ ミン酸による細胞内Ca++上昇を抑え、細胞死を抑制することから小脳発生過 程における神経細胞死にも小胞体を介する神経細胞死の関与が示唆される。
A・研究目的
脳はグリア細胞やオリゴデンドロサイト、血 管内皮細胞など異なった種類の細胞によって 構成されるが、中心的存在である神経細胞は 虚血に対してとりわけ脆弱である。したがっ て、長時間に及ぶ虚血では脳を構成するすべ ての細胞が壊死に陥るが、虚血が短時間であ る場合、神経細胞だけが死に到る。これに反 してアストログリアや血管内皮細胞は虚血に 対して強い抵抗性を示すことが知られてい
る。さらに、アストログリアは虚血などの自 らの生存すら危うくしかねないような環境下 でも神経細胞に対する保護機作を発揮するこ
とが知られている。
本研究では、アストログリアが虚血環境で生 き抜くためのいくつかの戦略を解析し、その 戦略を利用して、虚血環境にあっても神経細 胞 死 を 抑 制 し う る か を テ ー マ と し て 研 究 を 進 めてきた。また、虚血性神経細胞死だけでな くアルツハイマー病による神経細胞死も小胞 体のストレス応答異常による可能性が示され てきた。本研究では、小胞体の機能異常が脳 虚血とアルツハイマー病に共通する神経細胞 死の経路であるとの認識に立ち、小胞体の機 能制御による神経細胞死の抑制に関して研究
してきた。
B.研究方法
野生型マウス(WT)、ORP150トランスジェ ニックマウス(TG)、ORP150ノックアウトマ
ウスヘテロ接合体(KO)より生後l‑10日にか
けて小脳を分離しNP‑40(1%)にて蛋白を抽出 後、SDS‑PAGEで分離し、ORP150、
GRP78、HSP70,GAD133,による抗体を用 いてWesrnblotを行った。また、各のマウ スを潅流固定し上記抗体による免疫組織染色 を行った。小脳プルキンエ細胞のマーカーは CalbmdmD28kを用いた。神経細胞死は活性化 Caspase‑3抗体による免疫染色およびTUNEL
法によって行った。
マウスの行動テストはRotorRodにて評価し た。また、小脳プルキンエ細胞の神経回路形 成の評価は電気生理学的に行った。
C・研究結果
マウスにおける小脳発生では神経細胞死がお こることが知られているが、新規小胞体スト レス蛋白であるORP150は、生後4‑8日にかけ て小脳、特にプルキンエ細胞に強く発現、
GRP78、GRP94、HSP70などとは異なった発 現パターンを示した。ORP150を過剰発現さ せたトランスジェニックマウス(TG)では、
プルキンエ細胞に強いORP150の発現を認め るとともに、ORP150ノックアウトヘテロ接 合体(KO)では、その発現は明らかに減弱し
ていた。野生型マウスでは生後4日をピーク にプルキンエ細胞層で活性化型Caspase‑3の 免疫陽性細胞が見られたが、TGでは陽性細 胞数が有意に減少していた。Calbindin染色で 評価したプルキンエ細胞数も生後4‑20日にか けてTGで多く、KOで減少していた。また、
グルタミン酸拮抗薬であるMK‑801の投与に
より、TGと同様の傾向が再現された(23)。培養神経細胞においてもグルタミン酸負荷に ORP150ノックアウトマウスの発生初期の小応答して発現上昇する。発生段階の小脳プル 脳プルキンエ細胞を観察すると、出生後4‑6キンエ細胞においても、グルタミン酸入力回 日にかけて、TUNEL法および活性化caspase‑ 路の増加が生後4‑8日におこると報告されて 3による免疫染色で胞死が検出される。このおり、ORP150の発現のピークと一致する。
細胞死は、野生型、ORP150トランスジェ砂ネズミの一過性総頚動脈結紮によって海馬 ニックマウ(TG)の順に、すなわち、ORP150CAl領域に遅発性神経細胞死(DND)がおこ の発現が強くなるほど抑制される傾向にあつ り、この細胞死は虚血耐性を獲得させた個体 た。さらに、TGでは、プルキンエ細胞の密では起こらない。ORP150は虚血耐性を獲得 度も、明らかに増加していた。ところが、行した砂ネズミCA1領域に極めて強く発現し、
動テストで評価された小脳の機能は、逆にまた、あらかじめCAl領域にアデノウイルス
TGで傷害されていた。ベクターを用いてORP150を遺伝子導入する
ことにより、神経細胞死を救済することがで D . 考 察 き る 。 D N D で は 1 ‑ 2 週 間 で 神 経 細 胞 死 が 完 成
グルタミン酸塩受容器とグルタミン酸の結合する「慢性虚血性神経細胞死モデル」であ によって開始される一連の生体反応は、細胞る。このパラダイムにおいてもORP150は神 内のカルシウム上昇、さらには、細胞内環境経細胞死を抑制することが示されている。
の変化を来たし、最終的には神経細胞死に至
らしめる。ORPI50は興癒性アミノ酸投与にE.結論
よりマウス海馬に誘導され、また、培養海馬発生段階におけるORP150の発現は、発生と ORP150+/Lm̲ORP150.f/+│"TgORP150P.61,一 TUNELposiliVecelis(%)
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図:発生初期の小胞体ストレスが小脳プルキンエ細胞の塞壷密度を決める。
ORP150ノックアウトマウスの発生初期の小脳プルキンエ細胞を観察すると、出生後4再6日にかけて、
TUNEL法および活性化caspase‑3による免疫染色で胞死が検出される。この細胞死は、野生型、ORP150I‑
ランスジエニックマウ(TgORP150)の順に、すなわち、ORP150の発現が強くなるほど抑制される傾向に あった。さらに、TgORP150では、プルキンエ細胞の密度も、明らかに増加していた。ところが、行動テ ストで評価された小脳の機能は、逆にTgORP150で傷害されており、発生段階における小胞体ストレス が、ホストのプルキンエ細胞の至適密度を決めると考えられる。
いうより慢性的な変化における小胞体ストレ スの存在を示している。急性虚血だけでなく
ヒトに見られるような慢性虚血、さらには慢 性的に進行する神経変性疾患においても小胞 体ストレスの重要性が示唆される。
F.研究発表 1.論文発表
l.IkematsuK,TsudaR,KondoT,KondoH, OzawaK,OgawaS,andNakasonol・The expressionofanovelstl・essprotein'150‑kDa oxygenl℃gulafdprotein'insuddeninfant death・LegMed(Tokyo).2003;5:15‑9 2.MiyagiT,KoshidaK,HoriO,KonakaH,
KatohH,KitagawaY,MizokamiA,Egawa M,OgawaS,HamadaH,NamikiM・Gene therapyfbrprostafcancerusingthecytosine deaminase/Uracilphosphoribosyltlansferase suicidesystem・JGeneMed、2003;5:30‑37 3.KitaoY,HashimotoK,MatsuyamaT,IsoH,
TamataniT,HoriO,StemDM,KanoM, OzawaK,andOgawaS.ORP150/HSP12A regulatesPurkiniecellsurvival:arolefbr endoplasmicreticulumstI℃ssincerebellar development.JNeurosci.2004;24:1486‑96 4.YatabeN,KyoS,MaidaY,NishiH,
NakamulaM,KanayaT,TanakaM,IsakaK, OgawaS,InoueM.HIF‑l‑media"d
activationoftelomeraseincervicalcancer cells.Oncogene.2004,mpress.
5.HoriO,IchinodaF,YamaguchiA,Taniguchi M,KoyamaY,TohyamaM,SternD,Ozawa K,KitaoY,OgawaS・RoleofHeminthe endoplasmicreticulum(ER)stressresponse. GenestoCells,2004,inpress.
6.OkadaK,MinaminoT,TsukamotoY,LiaoY, HirotaA,YutaniA,OzawaK,OgawaS, TomoikeH,HoriM,andKitakazeM.
ProlongedERStressinHypertrophicand FailmgHeartFollowmgAorticConStriction: PossibleContributionofERStresstoCaldiac
MyocyteApoptosis・Cil℃ulation,204,inpress. 7.BandoY,TsukamotoY,KatayanaT,Ozawa
K,KitaoY,HoriO,SternD,YamauchiA, andOgawaS・ORP150旧SP12Aprotects renalmbularepitheliumhPomischemia‑ inducedcelldeath.FASEBJ.,2004,mpress.
2.学会発表
KitaoY,TamataniT,HoriO,OzawaK,and OgawaS・ORP150は発生段階における小脳プ ルキンエ細胞死を抑制する。神経科学学会、
2003名古屋
KitaoY,OzawaK,HoriO,andOgawaS・脳虚 血における小胞体ストレスの役割。神経科学 学会、2003名古屋
HoriO,IchinodaF,KitaoY,OzawaK,and OgawaS.小胞体ストレスにおけるユビキチ
ン様蛋白Help/SUPの役割。日本分子生物学 会、2003神戸。
ORP150/HSP12AsuppressesPurkilUecelldeath incel℃bellardevelopment.米国細胞生物学 会、2003サンフランシスコ
HoriO,IchinodaF,YamaguchiA,TaniguchiM, KoyamaY,TbhyamaM,StemD,OzawaK, KitaoY,OgawaS.Roleofaubiquitm‑like proteinintheendoplasmicreticulum(ER)stress response.米国細胞生物学会、2003サンフラ
ン シ ス コ
Neuroserpinopathyのモデルとしてのメグシントランスジエ ニックラットの解
主任研究者 分担研究者 同
北尾康子 小 川 智 堀 修
研 究 要 旨
セリンプロテアーゼの遺伝子変異により異常なセリンプロテアーゼが小胞体 内に蓄積する疾患はseminopathyと総称される。セリンプロテアーゼ阻害ペプ チドであるメグシンを全身発現させたメグシントランスジェニックラット(Tg Mrg)は、そのホモ接合体は腎不全や糖尿病などの全身疾患を呈し、若年にて 死亡するが、ヘテロ接合体は、正常に生育するものの、生後12ヶ月で、行動 テストにて記銘力低下を示した。TgMrg(ヘテロ接合体)より得られた神経細 胞はカルシウム代謝異常を示し、アストロサイトは低酸素環境にてより脆弱 であり、その細胞死には小胞体ストレス蛋白の発現上昇とcaspase‑12の活性化 を伴った。TgMrgでは生後2‑4ケ月で海馬CAl領域にcaspase‑12の活性化、4‑
6ケ月でcaspase‑3の活性化を示し、同領域における神経細胞密度の低下を示し た。さらにcaspase‑12の活性化は黒質級密層でもみられ、チロシン水酸化酵素 (TH)染色陽性の神経細胞の密度減少を伴っていた。以上の事実は、メグシン の過剰発現によって慢性的に小胞体負荷のかかった神経細胞で慢性的かつ緩 徐な細胞死が起こることを示している。
は じ め に
alアンチトリプシン欠損症は、遺伝子の欠損 ではなくalアンチトリプシンの遺伝子変異に より小胞体で正常にfbldmgされずに小胞体内 に異常アンチトリプシンが蓄積、小胞体負荷 を も た ら す 疾 患 で 、 同 様 の 疾 患 は semmopathyと総称される。中枢神経系でも 神 経 回 路 の 可 塑 性 に 関 与 す る セ リ ン プ ロ テ ア ー ゼ 、 お よ び そ の 阻 害 ペ プ チ ド の 変 異 は neuroseminopathyと呼ばれる神経変性疾患を
呈することが知られている。
メグシンは東海大学の宮田らによって腎糸球 体上皮細胞において発現しているセリンプロ テアーゼ阻害ペプチドとしてクローニングさ れた。非常に興味深いことに、メグシンを強 制発現させたトランスジェニックラットのホ モ接合体では、加齢に伴って、糖尿病、腎不 全、低蛋白血症、呼吸器障害などを呈し12週 齢以前に死亡するためselpinopathyのモデル
であると考えられる。
これに対して、TgM堰のヘテロ接合体では生 後12ヶ月を経ても主たる臓器異常は見られな い。ところが中枢神経系の詳細な観察では、
海馬や黒質級密層(SNpc)において、ORP150
を は じ め と す る 小 胞 体 ス ト レ ス 蛋 白 の 発 現 上
昇、caspase‑l2などの細胞死関連酵素の活性 化がみられ、神経細胞密度の減少がみられる
ことが明らかになった。
研 究 方 法
l)ERストレス蛋白、細胞死マーカーを用い た免疫組織染色
TgMrgへテロ接合体ラット(以下、TgMegと 略す)およびコントロールとしてメグシント ランスジーンを持たない野生型ラット(Non Tgと略す)を用い、生後2ケ月、4ケ月、6ケ 月の時点で潅流固定し、海馬領域の免疫組織 染色(抗ORP150抗体、抗MAP2抗体、抗活性 化型caspase‑3、抗Neuro‑N抗体)を用いた免疫
組織染色を行った。
2)培養アストロサイトを用いた検討
生後すぐのTgMegおよびNonTgラット脳よ りアストロサイトを分離培養し、2次培養の 後、以下の実験に供した。アストロサイトを 最長48時間まで低酸素環境に暴露し、その viabilityをLiveanddead方にて評価した。ま た、ORP150、GRP78、活性化型caspase‑12を
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図1:メグシンを過剰発現させたラットではCA1領域で神経細胞死が加速する。
TgMrgでは、Non功と比較して、生後2‑6ケ月にかけて海馬全体でORP150の発現上昇を認め、これに一致してCA1領 域で、活性化型caspase‑12およびcaspas‑3のシグナルも増加していた。CA3でも若干のシグナル増強を認めた。また、
Neuro‑N抗体で染色されない細胞、すなわち神経細胞以外の細胞でもTgMrgでは活性化型caspase‑12の陽性シグナルを
検出した。
認識する抗体、およびb‑actm抗体を用いた Westemblotを行った。低酸素暴露後18時間 の細胞を用いてGRP78およびメグシンに対す る抗体を用いて免疫組織染色を行った。ま た、小胞体での蛋白分解を阻害する物質とし てLactacystinを用いた。さらに、低酸素環境 下でのメグシンの細胞内分布を確認する目的 でOptiPrepによる密度勾配用によって小胞体 分画とゴルジ分画を分離し、dotプロットを 行 っ た 。 局 在 マ ー カ と し て そ れ ぞ れ 、 calnexin抗体(小胞体)とTGN38抗体(ゴルジ装 置)を用いた。また、強制発現されたメグシ ンが小胞体から処理される過程を分析するた めユピキチンを用いた免疫沈降を行った。
caspase‑12およびcaspas‑3のシグナルも増加し ていた。CA3でも若干のシグナル増強を認め た。また、Neuro‑N抗体で染色されない細 胞、すなわち神経細胞以外の細胞でもTgMrg では活性化型Caspase‑12の陽性シグナルを検
出した。
2)細胞死とメグシンの細胞内分布(図2)
TgMegより得られたアストロサイトは低酸 素環境で、NonTgより得られた細胞に比し明 らかな脆弱性を示した。また、Wesmblot では、Tgハ心g由来のアストロサイトでは ORP150やGRP78などの小胞体ストレス蛋白 の発現上昇が明らかであり、さらに低酸素暴 露24時間後でcaspase‑12の活性化を認めた。
また、メグシンの細胞内分布は低酸素負荷前 はGRP78のそれと一致する小胞体パターンを 示し、低酸素暴露後は核周囲に凝集する傾向 が見られ、これはLactacys血添加による変化 に類似していた。さらに、OptiPrepによる細 胞分画では低酸素暴露前には小胞体とゴルジ 装置に連続的に分布していたメグシンが、低 結 果
1)海馬CA1領域における神経細胞死(図1) TgMrgでは、NonTgと比較して、生後2‑6,f'‑
月にかけて海馬全体でORP150の発現上昇を 認め、これに一致してCA1領域で、活性化型
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図2:メグシンを過剰発現させたラットではCA1領域で神経細胞死が加速する。
TgMegより得られたアストロサイトは低酸素環境で、明らかな脆弱性を示した(A)。TgMIg由来のアストロサイトで はORP150PGRP78などの小胞体ストレス蛋白の発現上昇が明らかであり、低酸素暴露24時間後でcaspase‑12の活性 化を伴った(B)。メグシンの細胞内分布は低酸素暴露後は核周囲に凝集する傾向が見られた(C‑K)。OptiPrepによる細 胞分画では、低酸素環境では小胞体に局在する傾向を示した(L)。メグシンが低酸素暴露にかかわらず、ユビキチン化 され、小胞体から分解輸送されていることが明らかとなった(M)。
酸 素 環 境 で は 小 胞 体 に 局 在 す る 傾 向 を 示 し た。またユビキチンを用いた免疫沈降では、
メグシンが低酸素暴露にかかわらず、ユビキ チン化され、小胞体から分解輸送されている
ことが明らかとなった。
が緩やかに進んでいくと考えられた。
発 表 論 文
BandoY.,KatayamaT.,TamguchiM.,Matsuo N.,IshibashiT.,Ogawa
S.,TbhyamaM.RA410/SlylsuppresseshrP+
and6‑lWdro>g/dopammemducedcelldeathm SH‑SY5Ycens.NeurobiologyofDisease2005;
18:143‑151
考 察
小胞体に不必要な蛋白が蓄積した場合ERAD 侭RFassociateddegradation)と呼ばれる機構に
より細胞質に引き出され、蛋白分解を受ける ことが知られている。Tgハ化gにおけるメグ シンは、通常でもこのERADにより分解され ていると考えられるが、低酸素などの環境変 化によって小胞体機能の維持が困難になった 場合、小胞体のfbldmgcapacityを超え、細胞 死に至ると考えられる。海馬CA1領域では、
通常でも興奮性アミノ酸によって常に小胞体 負荷がかかった状態にあると考えられる。前 回の我々の報告でもORP150ノックアウトマ ウスでは興奮性アミノ酸の負荷によってCA1 領域の神経細胞死が見らた。TgMegでは、
慢性的なかつ繰り返す興奮性アミノ酸の負荷 と小胞体負荷によりこの部位での神経細胞死
OzawaK,MiyazakiT,HoriO,KitaoY, TamtamT,andOgawaS.TheERChaperone 150kDaOxygenRegulatedProtem(ORP150) hnprovesmsunnresistancemType2Diabetes Mellitus.Diabetes.2005;54(3):657‑63
AleshmAN,SawaYjKitagawa‑SakakidaS, BandoY30noMMemonlA,TohyamaM, OgawaS,andMatsudaH.150‑kDaoxygen‑
regulatedprotemattenuatesmyocardialischemia‑ reperfilsioninjurymratheart.JMolCellCardio1. 2005;38(3):517‑25.