交代絡み目の二重分岐被覆に関する Greene の予想へ のアプローチ
畠山 えりか
(広島大学大学院理学研究科
)∗ 概 要2つの絡み目が同相な二重分岐被覆をもつならば,それらは共に交代的であ るか,または共に非交代的であるという予想をGreeneが提案した.本稿で は,Boileauにより示唆されたπ-双曲結び目に対するGreene予想解決のア イデアを紹介し,そのアイデアを用いたGreene予想の部分的解決の報告を 行う.
1. 導入
1.1.
分岐被覆と
Greene予想
定義
1.1.絡み目
L⊂S3に対し,
3次元多様体
Mが
Lで分岐する
S3上の二重分岐被覆
(double branched covering)であるとは,次の
2つの条件を満たす連続写像
p:M →S3が存在するときをいう.
Mを
Σ2(L)で表す.
(1) p|p−1(L) :p−1(L)→L
は同相写像
(2) p|(M\p−1(L)) : (M\p−1(L))→(S3\L)
は二重被覆写像
このとき
pを
Lで分岐する
S3上の二重分岐被覆写像
(double branched covering map)とよぶ.Σ
2(L)を
Lの二重分岐被覆とよぶこともある.
例
1.2.二橋絡み目
K(p, q)に対し,
Σ2(K(p, q))∼=L(p, q)が成り立つ.ここで,
L(p, q)は
(p, q)型のレンズ空間
(lens space)を表す
(図1).図
1:例
1.2は,逆も成立する.すなわち
Hodgson [5]により,レンズ空間
L(p, q)と同相な 二重分岐被覆をもつ絡み目は二橋絡み目
K(p, q)に限ることが示された.
∗〒739-8526 広島県東広島市鏡山一丁目3番1号 広島大学 大学院理学研究科
e-mail:[email protected]
定理
1.3 ([5]).絡み目
K ⊂S3に対し,
Σ2(K)∼=L(p, q)ならば
(S3, K)∼= (S3, K(p, q))である.特に,
Σ2(K)∼=S3なら
Kは自明結び目
K(1,0)である.
Greene [4]
は交代絡み目の二重分岐被覆に関する次の予想を提案した.
予想
1.4 ([4, Conjecture 1.5]).同相な二重分岐被覆をもつ
2つの絡み目の組に対し,そ れらは共に交代絡み目であるか,共に非交代絡み目である.
定義
1.5.結び目
Kの二重分岐被覆
Σ2(K)が双曲多様体であるとき,
Kを
π-双曲結び 目
(π-hyperbolic knot)とよぶ.
本稿では,
Boileauにより示唆された
π-双曲結び目に対する
Greene予想の攻略法を 紹介し,その方法を用いて,次節で定義する
6⋆結び目に対して
Greene予想の部分的解 決を与える
(系
1.11).
1.2. 6⋆
結び目
本稿で取り扱う
6⋆結び目を導入する.
定義
1.6.タングル
(tangle)とは,
3次元球体
B3と
B3に適切に埋め込まれた
2本の弧 との組である.B
3の境界は結び目と
4点で交わり,この境界を
Conway球面という.
定義
1.7.次の図
2,図
3のように整数列
a1, a2,· · · , an (ai ̸= 0)から得られる自明な
2糸タングル
(trivial 2-string tangle)のダイアグラムを
Conway表示
(Conway notation)という.各
|ai|は交差数を表す.図
2,図
3では,すべての
aiの符号を正としている.
交差の上下が逆の場合,
aiの符号を負とする.また,
Conway表示
a1, a2,· · · , anをもつ 自明な
2糸タングルを,傾き
qp :=an+ 1
an−1+···+a1
1
の有理タングル
(rational tangle)と いう
(図4).図
2: nが奇数のとき 図
3: nが偶数のとき
図
4:傾き
13
の有理タングル
(B3, t(13))定義
1.8.次の
(1),
(2)を満たす連結
4価グラフ
Γ⊂S2を
Conwayグラフとよぶ.
(1) Γ
と横断的にちょうど
(頂点以外で
)4点で交わる
S2内のすべての単純閉曲線
ℓに 対し,次のいずれかを満たすような
ℓを境界とする円板
Dが存在する.
• D∩Γ
は
D内の自明な
2糸タングルである.
• D∩Γ
は
4点集合
ℓ∩Γ上で円錐体
(cone)と同相である.
(2) Γ
は図
5のどのグラフでもない.
図
5:図
6は,
6つの
4価頂点をもつ平面グラフである.これを
Conwayの
6⋆グラフとよぶ.
図
6: 6⋆グラフ
図
7で示されるように
6⋆グラフの各頂点に傾き
r1, r2, r3,−r4,−r5,−r6の有理タング ルを代入することによってできる結び目を
6⋆結び目とよび,
K(r1, r2, r3,−r4,−r5,−r6)で表す.
例
1.9.図
8は各頂点に以下の有理数を傾きとする有理タングルを代入した
6⋆結び目で
ある.
r1 =r4 =r6 = 12,
r2 =r3 =r5 = 13図
7: 6⋆結び目 図
8: 6⋆結び目 次の定理
1.10が本稿の主結果である.
定理
1.10. 6⋆結び目
K(r1, r2, r3,−r4,−r5,−r6)に対し,
ri (1≤i≤6)を次の
3つの条 件を満たす有理数とする.
(1) 0< ri <1
(2) (r1, r5),(r2, r6),(r3, r4)̸= (1,1) (3) K(r1, r2, r3,−r4,−r5,−r6)
は結び目
このとき,K(r
1, r2, r3,−r4,−r5,−r6)は
π-双曲交代結び目であり,その二重分岐被覆により完全に特徴づけられる.すなわち,
Σ2(K) ∼= Σ2(K(r1, r2, r3,−r4,−r5,−r6))で あるなら,
K ∼=K(r1, r2, r3,−r4,−r5,−r6)である.
系
1.11.定理
1.10の
6⋆結び目に対して
Greene予想が成立する.
2. 同相な二重分岐被覆をもつ結び目の構成法
この節では,同相な二重分岐被覆をもつ結び目の構成法
(構成法
(S),構成法
(P))を紹 介する.はじめに,構成法
(S),構成法
(P)で用いられる結び目の
2種類の対称性を紹 介する.
2.1.
強可逆結び目と周期的結び目
定義
2.1.向きを保存する対合
h : S3 → S3で,
h(K) = Kかつ固定点集合
Fix(h)は
S1であり,
Kと
2点で交わるものが存在するとき,結び目
K ⊂S3は強可逆結び目
(strongly invertible knot)であるという.また,
hを
Kの強可逆写像
(strongly inversion)とよぶ.
例
2.2.図
9で与えられる対合
h :S3 →S3により,
8の字結び目
Kは強可逆結び目と なる.
定義
2.3.向きを保存する対合
f :S3 →S3で,f(K
) =Kかつ
Fix(f)は
S1であり,K と交わらないものが存在するとき,結び目
K ⊂ S3は位数
2の周期的結び目
(periodic knot of period 2)であるという.また,
fを
Kの周期写像
(periodic map)とよぶ.
例
2.4.図
10で与えられる対合
f :S3 →S3により,
8の字結び目
Kは位数
2の周期的
結び目となる.
図
9:強可逆結び目
図
10:位数
2の周期的結び目
注意
2.5. Smith予想の肯定的解決
[10]により,
h, fは標準的な回転と同値であること が示されている.
2.2.
構成法
(S)K
を強可逆結び目,
hをその強可逆写像とする.写像
φ: S3 → S3/h ∼= S3による
K,
Fix(h)の像をそれぞれ
k0,O とおく.このとき,Σ
2(K)は空間グラフ
O∪k0で分岐す る
S3上の
Z2⊕Z2被覆
Σ2⊕2(O∪k0)である
(図
11).
図
11:構成法
(S)の説明
ここで空間グラフ
O ∪k0に注目する.この図式は図
12のように,3 価頂点
2つと,
3
本の弧
k1, k2, k0から成る.
O = k1 ∪k2は自明結び目であることに注意する.もし,
O′ := k2 ∪k0
が自明結び目ならば,
Σ2(O′)は
S3と同相であり,
Σ2(O′)における
k1の
逆像
K′は
S3 ∼= Σ2(O′)内の強可逆結び目である.更に,K
′の二重分岐被覆
Σ2(K′)は
Σ2⊕2(O′∪k1)∼= Σ2⊕2(O∪k0)∼= Σ2(K)と同相である.この構成法を構成法
(S)とよぶ.
同様に,
O′′ := k1∪k0が自明結び目であるとき,構成法
(S)を適用することができ ることに注意する.
図
12:空間グラフ
O∪k0 =k1∪k2 ∪k0 =k1 ∪O′図
11においては
K ∼=K′であるが,次の例
2.6のように
K ̸∼=K′となることもある.
例
2.6.図
13において,
K′は構成法
(S)を適用して
Kからできた強可逆結び目,つま り
Σ2(K)∼= Σ2(K′)である.また
K, K′は共に
π-双曲結び目であり,結び目補空間の体積が異なるため,
K ̸∼=K′である.
図
13: K ̸∼=K′である例
2.3.
構成法
(P)K
を位数
2の周期的結び目,
fをその周期写像とする.写像
ψ :S3 → S3/f ∼=S3によ る
K,
Fix(f)の像をそれぞれ
Kˇ,
Oとおく.このとき,
Σ2(K)は
2成分絡み目
O∪Kˇで分岐する
S3上の
Z2⊕Z2被覆
Σ2⊕2(O∪K)ˇである
(図14).ここで
2成分絡み目
O∪Kˇに注目する.
Oは自明結び目であることに注意する.も
し,
Kˇが自明結び目ならば,
Σ2( ˇK)は
S3と同相であり,
Σ2( ˇK)における
Oの逆像
K′は
S3 ∼= Σ2( ˇK)内の位数
2の周期的結び目である.更に,K
′の二重分岐被覆
Σ2(K′)は
Σ2⊕2( ˇK∪O)∼= Σ2⊕2(O∪K)ˇ ∼= Σ2(K)と同相である.この構成法を構成法
(P)とよぶ.
図
14:構成法
(P)の説明
図
14においては
K ∼=K′であるが,次の例
2.7のように
K ̸∼=K′となることもある.
例
2.7.図
15において,
K′は構成法
(P)を適用して
Kからできた位数
2の周期的結び 目,つまり
Σ2(K)∼= Σ2(K′)である.また
K, K′は共に
π-双曲結び目であり,結び目補空間の体積が異なるため,
K ̸∼=K′である.
図
15: K ̸∼=K′である例
π-双曲結び目に対しては,次の強力な定理がBoileau-Flapan [1]
により証明されて いる.
定理
2.8 ([1, Theorem 1.2]). π-双曲結び目K,K′に対し,K と
K′が同相な二重分岐被
覆をもつための必要十分条件は,
K′が構成法
(S)または構成法
(P)によって
Kから得
られることである.
注意
2.9.構成法の説明には
8の字結び目を用いたが,
8の字結び目は
π-双曲結び目で はない.
3. 6
⋆結び目の初等的性質
補題
3.1. 6⋆結び目
K(r1, r2, r3,−r4,−r5,−r6)が交代的であるための必要十分条件は,
ri (1≤i≤6)
がすべて正の数またはすべて負の数であることである.
この証明には次の観察を用いる.
観察
3.2.有理タングルの傾きが正のとき,
Conway球面の近傍の交差の上下は,一般 に図
16のように表せる.また,有理タングルの傾きが負のとき,
Conway球面の近傍 の交差の上下は,一般に図
17のように表せる.
図
16:傾きが正のとき 図
17:傾きが負のとき
補題
3.1の証明. 次の図
18より明らか.
図
18:定義
3.3. Vを絡み目
L ⊂ S3で分岐する
S3上の二重分岐被覆とし,p
: Ve → Vを
Vの普遍被覆とする.
τで
Vの被覆対合を表す.このとき,
O(L)は
Veへの
τのすべての リフトにより生成される群である.これは対合により生成される
Veの微分同相写像の 群である.商空間
V /O(L)eは
S3を底空間とし,L を分岐集合とする軌道体であり,こ れを
(S3, L)が定める
π-軌道体
(π-orbifold)とよぶ.また,群
O(L)を
Lの
π-軌道体群
(π-orbifold group)とよぶ.
命題
3.4.交代
6⋆結び目
K =K(r1, r2, r3,−r4,−r5,−r6)は,図
19の形でないとき
π-双
曲的である.
図
19:証明
.次の
3つの事実により従う.
(1)
軌道体定理
(orbifold theorem) [2]より,(S
3, K)に付随する
π-軌道体は“幾何的”である.
(2) Menasco [8]
の結果より,
(S3, K)は素かつ本質的
Conway球面
(essential Conway sphere)をもたない.
(3) (S3, K)
はトーラス結び目でも,モンテシノス結び目
(Montesinos knot)でもない
.主結果の証明において,与えられた結び目の対称性を決定する必要がある.これは 一般に簡単なことではないが,交代結び目に対しては次の定理により原理的に可能で ある.
定理
3.5 (Taite flype conjecture [9, Theorem 1]). 2つの既約で素な向きづけられた交 代絡み目の図式が同じ絡み目型をもつための必要十分条件は,
2つの図式が
flype操作
(図
20)により関係づけられることである.
図
20: flype操作
Kawauchi [6]
の
Theorem 10.7.7およびその直後の注意によると,定理
3.5は次の結果 を導く.
結果
3.6 ([6, Theorem 10.7.7]). Γを
Conwayグラフとし,Γ の各頂点に有理タングル を代入することによって得られる交代絡み目を
Lとする.このとき
Lの対称性は有理 タングル代入情報を保存する
(S2,Γ)のグラフ自己同型群と同型である.
この結果を
6⋆結び目に対して適用すると,次の結果が得られるため,我々は
6⋆グラ フの対称性を見さえすればよい.
結果
3.7.与えられた
6⋆交代結び目の対称性は,
Conwayの
6⋆グラフの対称性から誘
導される.
4. 証明
4.1.
証明の方針
K
,
K′を定理
1.10の条件を満たす
2つの交代
6⋆結び目とし,
Σ2(K)∼= Σ2(K′)とする.
このとき定理
2.8より以下の
2つの場合が考えられる.
Case (S) K′
は構成法
(S)によって
Kから得られる.
Case (P) K′
は構成法
(P)によって
Kから得られる.
以下の手順で
6⋆結び目を調べる.
• Case (S)
のとき
Step (s-i) K
を強可逆結び目にする
(S3, K)の対合を分類する.
Step (s-ii)
分類した各対合に対し,構成法
(S)を適用できるかを調べる.
すなわち,結び目
k1∪k0または結び目
k2∪k0が自明であるかを調べる.
Step (s-iii)
構成法
(S)を適用してできた新たな結び目
K′が再び交代的であるか を調べる.
• Case (P)
のとき
Step (p-i) K
を位数
2の周期的結び目にする
(S3, K)の対合を分類する.
Step (p-ii)
分類した各対合に対し,構成法
(P)を適用できるかを調べる.
すなわち,結び目
Kˇが自明であるかを調べる.
Step (p-iii)
構成法
(P)を適用してできた新たな結び目
K′が再び交代的である かを調べる.
4.2. 6⋆
グラフの対称性
6⋆
グラフの位数
2の対称性で,
S3の向きを保存するものは,図
21で与えられる
3種類 の対称性に限る.
図
21: 6⋆グラフの対称性
補題
4.1. Kを
6⋆結び目とする.
(1) Type 1
の対称性が
Kの対称性を誘導するならば,それは
Kの強可逆写像を与
える.
(2) Type 2
の対称性が
Kの対称性を誘導するならば,それは
Kの強可逆写像または
位数
2の周期写像を与える.
(3) Type 3
の対称性が
Kの対称性を誘導するならば,
Kは非交代結び目である.
例
4.2.図
22,図
23はそれぞれ
Type 1,
Type 2の対称性をもつ結び目である.
図
22: Type 1図
23: Type 2今,
Kは交代
6⋆結び目を仮定しているので,対合の分類において
Type 3は除かれ
る.ここまでで
Step (s-i),Step (p-i)ができた.
4.3. Type 1 :
構成法
(S)Type 1
の対称性をもつ結び目
Kが強可逆結び目であるための条件を与える.6
⋆グラフ
の辺と
Fix(h)は
2点で交わっているため,
6⋆グラフの頂点に代入する有理タングルと
Fix(h)
は交わらないようにする.
以下,有理数
qp(ただし,p
と
qは互いに素な整数) に対して
• qp ≡ 10
は
q≡1 (mod 2), p≡0 (mod 2)を表す.
• qp ≡ 01
は
q≡0 (mod 2), p≡1 (mod 2)を表す.
• qp ≡ 11
は
q≡1 (mod 2), p≡1 (mod 2)を表す.
また,
qp (mod 2) = 10
のように表すこともある.
補題
4.3. Type 1の対合
hが
Kの強可逆写像を与えるための必要十分条件は
ri (1 ≤ i≤4)が次の
(1),
(2)を満たすことである.
(1) r1, r4 (mod 2)∈ {11 , 10}
(2) r2, r3
は次のいずれかの条件を満たす
• r2 ≡ 10
または
11, r3 ≡ 10
• r2 ≡ 01
または
11, r3 ≡ 01
• r2 ≡ 10
または
01, r3 ≡ 11
以下,r
i := pqii, i= 1,4
とする
(図24).図
24: Type 1 :構成法
(S)ここで,有理タングルの商空間を記述するため,次の補題を用意する.
補題
4.4 ([11, Lemma 2.4]).傾き
qp
の有理タングル
(B3, t(qp))に対し,次の
(1),(2)が
成り立つ.
(1) q
が奇数であるとき,図
25の対合
gに対して以下が成り立つ.
( B3, t
(q p
)
∪Fix (g) )
/g ∼= (
B3, t ( q
2p ))
(2) q
が偶数であるとき,図
26の対合
gに対して以下が成り立つ.
( B3, t
(q p
)
∪S )
/g ∼= (
B3, t (q
2
p ))
ただし,
S=cl(Fix(g)\v1v2)である.
図
25:補題
4.4 (1)のイメージ 図
26:補題
4.4 (2)のイメージ
ここで
S3の
hによる商空間をとると,補題
4.4より,
( B3, t
(qi
pi )
∪Fix (h) )
/h∼= (
B3, t ( qi
2pi ))
, i= 1,4
が成り立つ
(図
27).
Step (s-ii)
結び目
k1∪k0または結び目
k2∪k0が自明であるかを調べる.
観察
3.2より,結び目
O′ :=k1∪k0, O′′ :=k2∪k0は一般に図
28,図29のように表せ る.
O′, O′′は共に既約で交代的な図式で表されているため,非自明結び目である.よっ
て,
Type 1の対合には構成法
(S)が適用できないことが分かった.
注意
4.5. Kが交代結び目であるという条件を除けば,結び目
O′または
O′′が自明であ
る例は無限に存在する.
図
27: (S3, K∪Fix(h))/h図
28: O′ =k1∪k0図
29: O′′=k2∪k04.4. Type 2 :
構成法
(P)Type 2
の対称性をもつ結び目
Kが位数
2の周期的結び目であるための条件を与える.
6⋆
グラフの辺と
Fix(h)は交わっていないため,
6⋆グラフの頂点に当てはめる有理タン
グルと
Fix(h)も交わらないようにする.
補題
4.6. Type 2の対合
hが
Kの位数
2の周期写像を与えるための必要十分条件は
ri (1≤i≤4)が次の
3つの条件を満たすことである.
(1) r1, r4 (mod 2)∈ {10,01} (2) r1 ≡r4 (mod 2)
(3) r2 ̸≡r3 (mod 2)
以下,r
i := pqii, i= 1,4
とする
(図30).図
30: Type 2 :構成法
(P)ここで,有理タングルの商空間を記述するため,次の補題を用意する.
補題
4.7.傾き
qp
の有理タングル
(B3, t(qp))に対し,次の
(1),
(2)が成り立つ.
(1) qp (mod 2)∈ {11}
であるとき,図
31の対合
gに対して以下が成り立つ.
( B3, t
(q p
)
∪S )
/g ∼= (
B3, t ( q
p−q 2
))
ただし,
S=cl(Fix(g)\v1v2)である.
(2) qp (mod 2)∈ {10,01}
であるとき,図
32の対合
gに対して以下が成り立つ.
( B3, t
(q p
)
∪Fix (g) )
/g ∼= (
B3, t ( 2q
p−q ))
図
31:補題
4.7 (1)のイメージ 図
32:補題
4.7 (2)のイメージ ここで
S3の
hによる商空間をとると,補題
4.7より,
( B3, t
(qi pi
)
∪Fix (h) )
/h∼= (
B3, t
( 2qi pi−qi
))
, i= 1,4
が成り立つ
(図33).図
33: (S3, K∪ Fix(h))/h図
34: ˇK =K/hStep (p-ii)
結び目
Kˇが自明であるかを調べる.
観察
3.2より,結び目
Kˇは一般に,図
34のように表せる.
Kˇは既約で交代的な図式 で表されているため,非自明結び目である.よって,Type 2 の対合には構成法
(P)が 適用できないことが分かった.
4.5. Type 2 :
構成法
(S)Type 2
の対称性をもつ結び目
Kが強可逆結び目であるための条件を与える.
6⋆グラ
フの辺と
Fix(h)は交わっていないため,
6⋆グラフの頂点に当てはめる有理タングルと
Fix(h)
が
2点で交わるようにする.
補題
4.8. Type 2の対合
hが
Kの強可逆写像を与えるための必要十分条件は
ri (1 ≤ i≤4)が次の
2つの条件を満たすことである.
(1) r1 (mod 2)∈ {11}, r4 (mod 2)∈ {10,01}
(2) r2 ̸≡r3 (mod 2)
以下,r
i := pqii, i= 1,4
とする
(図35).図
35: Type 2 :構成法
(S) S3の
hによる商空間をとると,補題
4.7より,
( B3, t
(q1
p1 )
∪S )
/h∼= (
B3, t ( q1
p1−q1
2
))
,
(B3, t (q4
p4 )
∪ Fix (h) )
/h∼= (
B3, t
( 2q4 p4−q4
))
が成り立つ
(図
36).
Step (s-ii)
結び目
k1∪k0または結び目
k2∪k0が自明であるかを調べる.
観察
3.2より,結び目
O′′ :=k2∪k0は一般に図
37のように表せる.
O′′は既約で交代 的な図式で表されているため,非自明結び目である.
ここまでの証明では,定理
1.10の条件
(1)を使う必要はない.残りの議論では条件
(1) 0< ri <1を仮定する.
ここで,結び目
O′ := k1∪k0に注目する.
0< r1 < 1より
0 < q1 < p1であるので,
q1 p1−q1
2
>0
である.また,
0 < q4 < p4より
2q4 < p4 +q4であるので,
2q4p4+q4 <1
である ことから,図
38のように右上の
Conway球面の境界付近に少なくとも
1つ
“垂直方向の 負の交差
”が存在する.
このとき,O
′は図
39のように既約で交代的な図式に変形できるため,非自明結び目 である.よって,
Type 2の対合には構成法
(S)が適用できないことが分かった.
以上により定理
1.10が証明された.
注意
4.9.定理
1.10の条件
(1)を仮定せず,この結び目
O′が非自明であるかどうか判
定できれば,すべての
π-双曲
6⋆結び目に対して
Greene予想が成立することが証明で
きる.
図
36: (S3, K∪ Fix(h))/h図
37: O′′=k2∪k0図
38: O′ =k1∪k0図
39: O′ =k1∪k0謝辞
講演の機会を与えてくださった日本大学の市原一裕先生,茂手木公彦先生には心より 感謝致します.また本研究にあたり,指導教員の作間誠先生には非常に適切かつ丁寧 な助言,指導をしていただきました.とても感謝しております.また先輩の阪田直樹 さん,片山拓弥さんには大変お世話になりました.この場をお借りして深く御礼申し 上げます.
参考文献
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