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交代絡み目の二重分岐被覆に関する Greene の予想へ のアプローチ

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(1)

交代絡み目の二重分岐被覆に関する Greene の予想へ のアプローチ

畠山 えりか

(

広島大学大学院理学研究科

) 概 要

2つの絡み目が同相な二重分岐被覆をもつならば,それらは共に交代的であ るか,または共に非交代的であるという予想をGreeneが提案した.本稿で は,Boileauにより示唆されたπ-双曲結び目に対するGreene予想解決のア イデアを紹介し,そのアイデアを用いたGreene予想の部分的解決の報告を 行う.

1. 導入

1.1.

分岐被覆と

Greene

予想

定義

1.1.

絡み目

L⊂S3

に対し,

3

次元多様体

M

L

で分岐する

S3

上の二重分岐被覆

(double branched covering)

であるとは,次の

2

つの条件を満たす連続写像

p:M →S3

が存在するときをいう.

M

Σ2(L)

で表す.

(1) p|p1(L) :p1(L)→L

は同相写像

(2) p|(M\p1(L)) : (M\p1(L))(S3\L)

は二重被覆写像

このとき

p

L

で分岐する

S3

上の二重分岐被覆写像

(double branched covering map)

とよぶ.Σ

2(L)

L

の二重分岐被覆とよぶこともある.

1.2.

二橋絡み目

K(p, q)

に対し,

Σ2(K(p, q))=L(p, q)

が成り立つ.ここで,

L(p, q)

(p, q)

型のレンズ空間

(lens space)

を表す

(図1).

1:

1.2

は,逆も成立する.すなわち

Hodgson [5]

により,レンズ空間

L(p, q)

と同相な 二重分岐被覆をもつ絡み目は二橋絡み目

K(p, q)

に限ることが示された.

739-8526 広島県東広島市鏡山一丁目31号 広島大学 大学院理学研究科

e-mail:[email protected]

(2)

定理

1.3 ([5]).

絡み目

K ⊂S3

に対し,

Σ2(K)=L(p, q)

ならば

(S3, K)∼= (S3, K(p, q))

である.特に,

Σ2(K)=S3

なら

K

は自明結び目

K(1,0)

である.

Greene [4]

は交代絡み目の二重分岐被覆に関する次の予想を提案した.

予想

1.4 ([4, Conjecture 1.5]).

同相な二重分岐被覆をもつ

2

つの絡み目の組に対し,そ れらは共に交代絡み目であるか,共に非交代絡み目である.

定義

1.5.

結び目

K

の二重分岐被覆

Σ2(K)

が双曲多様体であるとき,

K

π-

双曲結び 目

(π-hyperbolic knot)

とよぶ.

本稿では,

Boileau

により示唆された

π-

双曲結び目に対する

Greene

予想の攻略法を 紹介し,その方法を用いて,次節で定義する

6

結び目に対して

Greene

予想の部分的解 決を与える

(

1.11)

1.2. 6

結び目

本稿で取り扱う

6

結び目を導入する.

定義

1.6.

タングル

(tangle)

とは,

3

次元球体

B3

B3

に適切に埋め込まれた

2

本の弧 との組である.B

3

の境界は結び目と

4

点で交わり,この境界を

Conway

球面という.

定義

1.7.

次の図

2

,図

3

のように整数列

a1, a2,· · · , an (ai ̸= 0)

から得られる自明な

2

糸タングル

(trivial 2-string tangle)

のダイアグラムを

Conway

表示

(Conway notation)

という.各

|ai|

は交差数を表す.図

2

,図

3

では,すべての

ai

の符号を正としている.

交差の上下が逆の場合,

ai

の符号を負とする.また,

Conway

表示

a1, a2,· · · , an

をもつ 自明な

2

糸タングルを,傾き

q

p :=an+ 1

an1+···+a1

1

の有理タングル

(rational tangle)

と いう

(図4).

2: n

が奇数のとき 図

3: n

が偶数のとき

(3)

4:

傾き

1

3

の有理タングル

(B3, t(13))

定義

1.8.

次の

(1)

(2)

を満たす連結

4

価グラフ

Γ⊂S2

Conway

グラフとよぶ.

(1) Γ

と横断的にちょうど

(

頂点以外で

)4

点で交わる

S2

内のすべての単純閉曲線

に 対し,次のいずれかを満たすような

を境界とする円板

D

が存在する.

D∩Γ

D

内の自明な

2

糸タングルである.

D∩Γ

4

点集合

ℓ∩Γ

上で円錐体

(cone)

と同相である.

(2) Γ

は図

5

のどのグラフでもない.

5:

6

は,

6

つの

4

価頂点をもつ平面グラフである.これを

Conway

6

グラフとよぶ.

6: 6

グラフ

7

で示されるように

6

グラフの各頂点に傾き

r1, r2, r3,−r4,−r5,−r6

の有理タング ルを代入することによってできる結び目を

6

結び目とよび,

K(r1, r2, r3,−r4,−r5,−r6)

で表す.

1.9.

8

は各頂点に以下の有理数を傾きとする有理タングルを代入した

6

結び目で

ある.

r1 =r4 =r6 = 12

r2 =r3 =r5 = 13

(4)

7: 6

結び目 図

8: 6

結び目 次の定理

1.10

が本稿の主結果である.

定理

1.10. 6

結び目

K(r1, r2, r3,−r4,−r5,−r6)

に対し,

ri (1≤i≤6)

を次の

3

つの条 件を満たす有理数とする.

(1) 0< ri <1

(2) (r1, r5),(r2, r6),(r3, r4)̸= (1,1) (3) K(r1, r2, r3,−r4,−r5,−r6)

は結び目

このとき,K(r

1, r2, r3,−r4,−r5,−r6)

π-双曲交代結び目であり,その二重分岐被覆

により完全に特徴づけられる.すなわち,

Σ2(K) = Σ2(K(r1, r2, r3,−r4,−r5,−r6))

で あるなら,

K =K(r1, r2, r3,−r4,−r5,−r6)

である.

1.11.

定理

1.10

6

結び目に対して

Greene

予想が成立する.

2. 同相な二重分岐被覆をもつ結び目の構成法

この節では,同相な二重分岐被覆をもつ結び目の構成法

(

構成法

(S)

,構成法

(P))

を紹 介する.はじめに,構成法

(S)

,構成法

(P)

で用いられる結び目の

2

種類の対称性を紹 介する.

2.1.

強可逆結び目と周期的結び目

定義

2.1.

向きを保存する対合

h : S3 S3

で,

h(K) = K

かつ固定点集合

Fix(h)

S1

であり,

K

2

点で交わるものが存在するとき,結び目

K ⊂S3

は強可逆結び目

(strongly invertible knot)

であるという.また,

h

K

の強可逆写像

(strongly inversion)

とよぶ.

2.2.

9

で与えられる対合

h :S3 →S3

により,

8

の字結び目

K

は強可逆結び目と なる.

定義

2.3.

向きを保存する対合

f :S3 →S3

で,f(K

) =K

かつ

Fix(f)

S1

であり,K と交わらないものが存在するとき,結び目

K S3

は位数

2

の周期的結び目

(periodic knot of period 2)

であるという.また,

f

K

の周期写像

(periodic map)

とよぶ.

2.4.

10

で与えられる対合

f :S3 →S3

により,

8

の字結び目

K

は位数

2

の周期的

結び目となる.

(5)

9:

強可逆結び目

10:

位数

2

の周期的結び目

注意

2.5. Smith

予想の肯定的解決

[10]

により,

h, f

は標準的な回転と同値であること が示されている.

2.2.

構成法

(S)

K

を強可逆結び目,

h

をその強可逆写像とする.写像

φ: S3 S3/h = S3

による

K

Fix(h)

の像をそれぞれ

k0

,O とおく.このとき,Σ

2(K)

は空間グラフ

O∪k0

で分岐す る

S3

上の

Z2Z2

被覆

Σ22(O∪k0)

である

(

11)

11:

構成法

(S)

の説明

ここで空間グラフ

O ∪k0

に注目する.この図式は図

12

のように,3 価頂点

2

つと,

3

本の弧

k1, k2, k0

から成る.

O = k1 ∪k2

は自明結び目であることに注意する.もし,

O := k2 ∪k0

が自明結び目ならば,

Σ2(O)

S3

と同相であり,

Σ2(O)

における

k1

逆像

K

S3 = Σ2(O)

内の強可逆結び目である.更に,K

の二重分岐被覆

Σ2(K)

Σ22(O∪k1)= Σ22(O∪k0)= Σ2(K)

と同相である.この構成法を構成法

(S)

とよぶ.

(6)

同様に,

O′′ := k1∪k0

が自明結び目であるとき,構成法

(S)

を適用することができ ることに注意する.

12:

空間グラフ

O∪k0 =k1∪k2 ∪k0 =k1 ∪O

11

においては

K =K

であるが,次の例

2.6

のように

K ̸∼=K

となることもある.

2.6.

13

において,

K

は構成法

(S)

を適用して

K

からできた強可逆結び目,つま り

Σ2(K)= Σ2(K)

である.また

K, K

は共に

π-双曲結び目であり,結び目補空間の体

積が異なるため,

K ̸∼=K

である.

13: K ̸∼=K

である例

2.3.

構成法

(P)

K

を位数

2

の周期的結び目,

f

をその周期写像とする.写像

ψ :S3 S3/f =S3

によ る

K

Fix(f)

の像をそれぞれ

Kˇ

O

とおく.このとき,

Σ2(K)

2

成分絡み目

O∪Kˇ

で分岐する

S3

上の

Z2Z2

被覆

Σ22(O∪K)ˇ

である

(図14).

ここで

2

成分絡み目

O∪Kˇ

に注目する.

O

は自明結び目であることに注意する.も

し,

Kˇ

が自明結び目ならば,

Σ2( ˇK)

S3

と同相であり,

Σ2( ˇK)

における

O

の逆像

K

S3 = Σ2( ˇK)

内の位数

2

の周期的結び目である.更に,K

の二重分岐被覆

Σ2(K)

Σ22( ˇK∪O)∼= Σ22(O∪K)ˇ = Σ2(K)

と同相である.この構成法を構成法

(P)

とよぶ.

(7)

14:

構成法

(P)

の説明

14

においては

K =K

であるが,次の例

2.7

のように

K ̸∼=K

となることもある.

2.7.

15

において,

K

は構成法

(P)

を適用して

K

からできた位数

2

の周期的結び 目,つまり

Σ2(K)= Σ2(K)

である.また

K, K

は共に

π-双曲結び目であり,結び目補

空間の体積が異なるため,

K ̸∼=K

である.

15: K ̸∼=K

である例

π-双曲結び目に対しては,次の強力な定理がBoileau-Flapan [1]

により証明されて いる.

定理

2.8 ([1, Theorem 1.2]). π-双曲結び目K,K

に対し,K と

K

が同相な二重分岐被

覆をもつための必要十分条件は,

K

が構成法

(S)

または構成法

(P)

によって

K

から得

られることである.

(8)

注意

2.9.

構成法の説明には

8

の字結び目を用いたが,

8

の字結び目は

π-

双曲結び目で はない.

3. 6

結び目の初等的性質

補題

3.1. 6

結び目

K(r1, r2, r3,−r4,−r5,−r6)

が交代的であるための必要十分条件は,

ri (1≤i≤6)

がすべて正の数またはすべて負の数であることである.

この証明には次の観察を用いる.

観察

3.2.

有理タングルの傾きが正のとき,

Conway

球面の近傍の交差の上下は,一般 に図

16

のように表せる.また,有理タングルの傾きが負のとき,

Conway

球面の近傍 の交差の上下は,一般に図

17

のように表せる.

16:

傾きが正のとき 図

17:

傾きが負のとき

補題

3.1

の証明. 次の図

18

より明らか.

18:

定義

3.3. V

を絡み目

L S3

で分岐する

S3

上の二重分岐被覆とし,p

: Ve V

V

の普遍被覆とする.

τ

V

の被覆対合を表す.このとき,

O(L)

Ve

への

τ

のすべての リフトにより生成される群である.これは対合により生成される

Ve

の微分同相写像の 群である.商空間

V /O(L)e

S3

を底空間とし,L を分岐集合とする軌道体であり,こ れを

(S3, L)

が定める

π-

軌道体

(π-orbifold)

とよぶ.また,群

O(L)

L

π-

軌道体群

(π-orbifold group)

とよぶ.

命題

3.4.

交代

6

結び目

K =K(r1, r2, r3,−r4,−r5,−r6)

は,図

19

の形でないとき

π-

曲的である.

(9)

19:

証明

.

次の

3

つの事実により従う.

(1)

軌道体定理

(orbifold theorem) [2]

より,(S

3, K)

に付随する

π-軌道体は“幾何的”

である.

(2) Menasco [8]

の結果より,

(S3, K)

は素かつ本質的

Conway

球面

(essential Conway sphere)

をもたない.

(3) (S3, K)

はトーラス結び目でも,モンテシノス結び目

(Montesinos knot)

でもない

.

主結果の証明において,与えられた結び目の対称性を決定する必要がある.これは 一般に簡単なことではないが,交代結び目に対しては次の定理により原理的に可能で ある.

定理

3.5 (Taite flype conjecture [9, Theorem 1]). 2

つの既約で素な向きづけられた交 代絡み目の図式が同じ絡み目型をもつための必要十分条件は,

2

つの図式が

flype

操作

(

20)

により関係づけられることである.

20: flype

操作

Kawauchi [6]

Theorem 10.7.7

およびその直後の注意によると,定理

3.5

は次の結果 を導く.

結果

3.6 ([6, Theorem 10.7.7]). Γ

Conway

グラフとし,Γ の各頂点に有理タングル を代入することによって得られる交代絡み目を

L

とする.このとき

L

の対称性は有理 タングル代入情報を保存する

(S2,Γ)

のグラフ自己同型群と同型である.

この結果を

6

結び目に対して適用すると,次の結果が得られるため,我々は

6

グラ フの対称性を見さえすればよい.

結果

3.7.

与えられた

6

交代結び目の対称性は,

Conway

6

グラフの対称性から誘

導される.

(10)

4. 証明

4.1.

証明の方針

K

K

を定理

1.10

の条件を満たす

2

つの交代

6

結び目とし,

Σ2(K)= Σ2(K)

とする.

このとき定理

2.8

より以下の

2

つの場合が考えられる.

Case (S) K

は構成法

(S)

によって

K

から得られる.

Case (P) K

は構成法

(P)

によって

K

から得られる.

以下の手順で

6

結び目を調べる.

Case (S)

のとき

Step (s-i) K

を強可逆結び目にする

(S3, K)

の対合を分類する.

Step (s-ii)

分類した各対合に対し,構成法

(S)

を適用できるかを調べる.

すなわち,結び目

k1∪k0

または結び目

k2∪k0

が自明であるかを調べる.

Step (s-iii)

構成法

(S)

を適用してできた新たな結び目

K

が再び交代的であるか を調べる.

Case (P)

のとき

Step (p-i) K

を位数

2

の周期的結び目にする

(S3, K)

の対合を分類する.

Step (p-ii)

分類した各対合に対し,構成法

(P)

を適用できるかを調べる.

すなわち,結び目

Kˇ

が自明であるかを調べる.

Step (p-iii)

構成法

(P)

を適用してできた新たな結び目

K

が再び交代的である かを調べる.

4.2. 6

グラフの対称性

6

グラフの位数

2

の対称性で,

S3

の向きを保存するものは,図

21

で与えられる

3

種類 の対称性に限る.

21: 6

グラフの対称性

(11)

補題

4.1. K

6

結び目とする.

(1) Type 1

の対称性が

K

の対称性を誘導するならば,それは

K

の強可逆写像を与

える.

(2) Type 2

の対称性が

K

の対称性を誘導するならば,それは

K

の強可逆写像または

位数

2

の周期写像を与える.

(3) Type 3

の対称性が

K

の対称性を誘導するならば,

K

は非交代結び目である.

4.2.

22

,図

23

はそれぞれ

Type 1

Type 2

の対称性をもつ結び目である.

22: Type 1

23: Type 2

今,

K

は交代

6

結び目を仮定しているので,対合の分類において

Type 3

は除かれ

る.ここまでで

Step (s-i),Step (p-i)

ができた.

(12)

4.3. Type 1 :

構成法

(S)

Type 1

の対称性をもつ結び目

K

が強可逆結び目であるための条件を与える.6

グラフ

の辺と

Fix(h)

2

点で交わっているため,

6

グラフの頂点に代入する有理タングルと

Fix(h)

は交わらないようにする.

以下,有理数

q

p(ただし,p

q

は互いに素な整数) に対して

qp 10

q≡1 (mod 2), p0 (mod 2)

を表す.

qp 01

q≡0 (mod 2), p1 (mod 2)

を表す.

qp 11

q≡1 (mod 2), p1 (mod 2)

を表す.

また,

q

p (mod 2) = 10

のように表すこともある.

補題

4.3. Type 1

の対合

h

K

の強可逆写像を与えるための必要十分条件は

ri (1 i≤4)

が次の

(1)

(2)

を満たすことである.

(1) r1, r4 (mod 2)∈ {11 , 10}

(2) r2, r3

は次のいずれかの条件を満たす

r2 10

または

1

1, r3 10

r2 01

または

1

1, r3 01

r2 10

または

0

1, r3 11

以下,r

i := pqi

i, i= 1,4

とする

(図24).

24: Type 1 :

構成法

(S)

ここで,有理タングルの商空間を記述するため,次の補題を用意する.

補題

4.4 ([11, Lemma 2.4]).

傾き

q

p

の有理タングル

(B3, t(qp))

に対し,次の

(1),(2)

成り立つ.

(13)

(1) q

が奇数であるとき,図

25

の対合

g

に対して以下が成り立つ.

( B3, t

(q p

)

Fix (g) )

/g = (

B3, t ( q

2p ))

(2) q

が偶数であるとき,図

26

の対合

g

に対して以下が成り立つ.

( B3, t

(q p

)

∪S )

/g = (

B3, t (q

2

p ))

ただし,

S=cl(Fix(g)\v1v2)

である.

25:

補題

4.4 (1)

のイメージ 図

26:

補題

4.4 (2)

のイメージ

ここで

S3

h

による商空間をとると,補題

4.4

より,

( B3, t

(qi

pi )

Fix (h) )

/h∼= (

B3, t ( qi

2pi ))

, i= 1,4

が成り立つ

(

27)

Step (s-ii)

結び目

k1∪k0

または結び目

k2∪k0

が自明であるかを調べる.

観察

3.2

より,結び目

O :=k1∪k0, O′′ :=k2∪k0

は一般に図

28,図29

のように表せ る.

O, O′′

は共に既約で交代的な図式で表されているため,非自明結び目である.よっ

て,

Type 1

の対合には構成法

(S)

が適用できないことが分かった.

注意

4.5. K

が交代結び目であるという条件を除けば,結び目

O

または

O′′

が自明であ

る例は無限に存在する.

(14)

27: (S3, K∪Fix(h))/h

28: O =k1∪k0

29: O′′=k2∪k0

(15)

4.4. Type 2 :

構成法

(P)

Type 2

の対称性をもつ結び目

K

が位数

2

の周期的結び目であるための条件を与える.

6

グラフの辺と

Fix(h)

は交わっていないため,

6

グラフの頂点に当てはめる有理タン

グルと

Fix(h)

も交わらないようにする.

補題

4.6. Type 2

の対合

h

K

の位数

2

の周期写像を与えるための必要十分条件は

ri (1≤i≤4)

が次の

3

つの条件を満たすことである.

(1) r1, r4 (mod 2)∈ {10,01} (2) r1 ≡r4 (mod 2)

(3) r2 ̸≡r3 (mod 2)

以下,r

i := pqi

i, i= 1,4

とする

(図30).

30: Type 2 :

構成法

(P)

ここで,有理タングルの商空間を記述するため,次の補題を用意する.

補題

4.7.

傾き

q

p

の有理タングル

(B3, t(qp))

に対し,次の

(1)

(2)

が成り立つ.

(1) qp (mod 2)∈ {11}

であるとき,図

31

の対合

g

に対して以下が成り立つ.

( B3, t

(q p

)

∪S )

/g = (

B3, t ( q

pq 2

))

ただし,

S=cl(Fix(g)\v1v2)

である.

(2) qp (mod 2)∈ {10,01}

であるとき,図

32

の対合

g

に対して以下が成り立つ.

( B3, t

(q p

)

Fix (g) )

/g = (

B3, t ( 2q

p−q ))

(16)

31:

補題

4.7 (1)

のイメージ 図

32:

補題

4.7 (2)

のイメージ ここで

S3

h

による商空間をとると,補題

4.7

より,

( B3, t

(qi pi

)

Fix (h) )

/h∼= (

B3, t

( 2qi pi−qi

))

, i= 1,4

が成り立つ

(図33).

33: (S3, K∪ Fix(h))/h

34: ˇK =K/h

Step (p-ii)

結び目

Kˇ

が自明であるかを調べる.

観察

3.2

より,結び目

Kˇ

は一般に,図

34

のように表せる.

Kˇ

は既約で交代的な図式 で表されているため,非自明結び目である.よって,Type 2 の対合には構成法

(P)

が 適用できないことが分かった.

4.5. Type 2 :

構成法

(S)

Type 2

の対称性をもつ結び目

K

が強可逆結び目であるための条件を与える.

6

グラ

フの辺と

Fix(h)

は交わっていないため,

6

グラフの頂点に当てはめる有理タングルと

Fix(h)

2

点で交わるようにする.

補題

4.8. Type 2

の対合

h

K

の強可逆写像を与えるための必要十分条件は

ri (1 i≤4)

が次の

2

つの条件を満たすことである.

(1) r1 (mod 2)∈ {11}, r4 (mod 2)∈ {10,01}

(17)

(2) r2 ̸≡r3 (mod 2)

以下,r

i := pqi

i, i= 1,4

とする

(図35).

35: Type 2 :

構成法

(S) S3

h

による商空間をとると,補題

4.7

より,

( B3, t

(q1

p1 )

∪S )

/h∼= (

B3, t ( q1

p1q1

2

))

(

B3, t (q4

p4 )

Fix (h) )

/h∼= (

B3, t

( 2q4 p4−q4

))

が成り立つ

(

36)

Step (s-ii)

結び目

k1∪k0

または結び目

k2∪k0

が自明であるかを調べる.

観察

3.2

より,結び目

O′′ :=k2∪k0

は一般に図

37

のように表せる.

O′′

は既約で交代 的な図式で表されているため,非自明結び目である.

ここまでの証明では,定理

1.10

の条件

(1)

を使う必要はない.残りの議論では条件

(1) 0< ri <1

を仮定する.

ここで,結び目

O := k1∪k0

に注目する.

0< r1 < 1

より

0 < q1 < p1

であるので,

q1 p1−q1

2

>0

である.また,

0 < q4 < p4

より

2q4 < p4 +q4

であるので,

2q4

p4+q4 <1

である ことから,図

38

のように右上の

Conway

球面の境界付近に少なくとも

1

垂直方向の 負の交差

が存在する.

このとき,O

は図

39

のように既約で交代的な図式に変形できるため,非自明結び目 である.よって,

Type 2

の対合には構成法

(S)

が適用できないことが分かった.

以上により定理

1.10

が証明された.

注意

4.9.

定理

1.10

の条件

(1)

を仮定せず,この結び目

O

が非自明であるかどうか判

定できれば,すべての

π-

双曲

6

結び目に対して

Greene

予想が成立することが証明で

きる.

(18)

36: (S3, K∪ Fix(h))/h

37: O′′=k2∪k0

38: O =k1∪k0

39: O =k1∪k0

(19)

謝辞

講演の機会を与えてくださった日本大学の市原一裕先生,茂手木公彦先生には心より 感謝致します.また本研究にあたり,指導教員の作間誠先生には非常に適切かつ丁寧 な助言,指導をしていただきました.とても感謝しております.また先輩の阪田直樹 さん,片山拓弥さんには大変お世話になりました.この場をお借りして深く御礼申し 上げます.

参考文献

[1] M. Boileau and E. Flapan,Onπ-hyperbolic knots which are determined by their2-fold and4-fold cyclic branched coverings, Topology Appl. 61(1995), no. 3, 229–240.

[2] M. Boileau and J. Porti,Geometrization of 3-orbifolds of cyclic type, Ast´erisque272(2001), 208 (English, with English and French summaries). Appendix A by Michael Heusener and Porti.

[3] M. Boileau and B. Zimmermann, The π-orbifold group of a link, Math. Z. 200 (1989), no. 2, 187–208.

[4] J. E. Greene, Conway mutation and alternating links, Proceedings of the G¨okova Geometry- Topology Conference 2011, Int. Press, Somerville, MA, 2012, pp. 31–41.

[5] C. Hodgson and J. H. Rubinstein, Involutions and isotopies of lens spaces, Knot theory and manifolds (Vancouver, B.C., 1983), Lecture Notes in Math., vol. 1144, Springer, Berlin, 1985, pp. 60–96.

[6] A. Kawauchi, A survey of knot theory, Birkh¨auser Verlag, Basel, 1996.

[7] K. Kodama and M. Sakuma, Symmetry groups of prime knots up to 10 crossings, Knots 90 (Osaka, 1990), de Gruyter, Berlin, 1992, pp. 323–340.

[8] W. Menasco,Closed incompressible surfaces in alternating knot and link complements, Topology 23(1984), no. 1, 37–44.

[9] W. W. Menasco and M. B. Thistlethwaite, The Tait flyping conjecture, Bull. Amer. Math. Soc.

(N.S.)25(1991), no. 2, 403–412.

[10] J. W. Morgan and H. Bass (eds.),The Smith conjecture, Pure and Applied Mathematics, vol. 112, Academic Press, Inc., Orlando, FL, 1984. Papers presented at the symposium held at Columbia University, New York, 1979.

[11] K. Morimoto, M. Sakuma, and Y. Yokota, Identifying tunnel number one knots, J. Math. Soc.

Japan48(1996), no. 4, 667–688.

図 7: 6 ⋆ 結び目 図 8: 6 ⋆ 結び目 次の定理 1.10 が本稿の主結果である. 定理 1.10. 6 ⋆ 結び目 K(r 1 , r 2 , r 3 , − r 4 , − r 5 , − r 6 ) に対し, r i (1 ≤ i ≤ 6) を次の 3 つの条 件を満たす有理数とする. (1) 0 &lt; r i &lt; 1 (2) (r 1 , r 5 ), (r 2 , r 6 ), (r 3 , r 4 ) ̸ = (1, 1) (3) K(r 1 , r 2 , r 3 , −
図 9: 強可逆結び目 図 10: 位数 2 の周期的結び目 注意 2.5. Smith 予想の肯定的解決 [10] により, h, f は標準的な回転と同値であること が示されている. 2.2
図 14: 構成法 (P) の説明 図 14 においては K ∼ = K ′ であるが,次の例 2.7 のように K ̸∼= K ′ となることもある. 例 2.7. 図 15 において, K ′ は構成法 (P) を適用して K からできた位数 2 の周期的結び 目,つまり Σ 2 (K) ∼ = Σ 2 (K ′ ) である.また K, K ′ は共に π-双曲結び目であり,結び目補 空間の体積が異なるため, K ̸∼= K ′ である. 図 15: K ̸∼= K ′ である例 π-双曲結び目に対して
図 28: O ′ = k 1 ∪ k 0 図 29: O ′′ = k 2 ∪ k 0
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参照

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