社 会主義 精神 文 明論 に見 る理想 と道 徳(樋 口)117
社 会 主義 精 神 文 明論 に見 る理想 と道 徳
樋 口 勝
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は じめ に
社会 主義精 神 文 明論 の概要 理想 の 問題
道徳 の 問題 おわ りに
1は じめ に
1997年9月12日 、 中 国共 産 党 第15回 全 国 代 表 大 会(以 下 、15大 と記 す) が 開幕 し、 江 沢 民 は代 表 報 告 で 「都 小 平 理 論 の偉 大 な旗 印 を高 く掲 げ て 、 中
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国 の特 色 を もつ 社会 主義 を建設 す る事業 を全面 的 に21世 紀 に推 し進 め よ う」
と呼 び掛 けた。今 回の大会 の大 きな特徴 は 「登阿・平理論 の旗 印を高 く掲げ る」
こと にあ った。 それ 故、螂 小 平 の中 国の特 色 を持 っ社 会主i義建設 理論 が 、現 代中 国のマル クス主 義 と して中 国共産党 の規約 に も盛 り込 まれ る ことに なる。
また、江沢 民報告 に よれ ば、 中国の特色 を持 っ社会 主義 を建設 す る事 業 とは、
「と りも なお さずチ ャンスを逃 が さず 、 しっか りっ かみ 、古 い習慣 を踏襲 せ ず 、 開拓進取 し、経 済建 設 とい う中心 をめ ぐり、経済 体制 改革 で新 た な突破 を とげ、政 治体制 改 革 を引 き続 き進化 させ 、精神 文 明建設 を着実 に強化 し、
各 方 面 が 互 い に 呼応 し、経 済 発展 と社 会 の 全面 的 進 歩 を実現 す る ことで あ
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る」 と言 う。 っ ま り、 中 国 の経 済 発 展 と社 会 の繁 栄 ・進 歩 を 実 現 す るた め に 、
現 代 中 国 の 国 情 に適 した新 た な マ ル ク ス 主 義 で あ る$N小 平 理 論 に基 づ くこ と が 重 要 で あ る と説 くの で あ る。
で は 、登β小 平 理 論 と は何 か 。 無 論 、 一 口で は 表 現 す る こ と は 困 難 だ が 、 江 沢 民 報 告 で は 、 「中 国 の 特 色 を も っ 社 会 主 義 の 経 済 、 政 治 、 文 化 を 建 設 す る
・基本 目標 と基 本政 策 は 有 機 的 に 統 一 され 、 分 割 で き ず 、 社 会 主 義 初 級 段 階 に お け る党 の 基 本綱 領 を構 成 す る。 この 綱 領 は 、$N小 平 理 論 の重 要 な 内容 で あ
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り、 党 の基 本 路 線 の経 済 、 政 治 、 文 化 な どの 面 にお け る展 開 で あ る 」 と解 釈 す る 。 ま た 、 「中 国 の 特 色 を もっ 社 会 主 義 文 化 は 、 そ の主 な 内 容 に っ い て 言 え ば 、 改 革 ・開 放 以来 わ れ わ れ が 一一貫 して 提 唱 して きた 社 会 主 義 精 神 文 明 と 一 致 す る も ので あ る
。 文 化 は 経 済 ・政 治 に対 して 言 う も の で あ り、 精 神 文 明 は 物 質 文 明 に対 して 言 う も の で あ る。 経済 、 政 治 、 文 化 が 協 調 し発 展 して は じめ て 、 二 つ の文 明 が り っぱ に な って は じめ て 、 中 国 の 特 色 を もっ 社 会 主 義
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と言え るのであ る」 と言 う。っ ま り、社会 主i義初級段 階 にあ る今 日の中国で 、 経 済建設 を中心 に、社会 主義 の 高度 な物 質文 明 と精 神文 明を建設す るため の 指導 原理 で あ る と位 置付 け てい る。
中 国で は1978年 の11期3中 全会 以来 、社 会 主義 の下 で の経済 発展 と社 会 の繁 栄 を模 索 して きた。 また 、 それ に伴 って、社会 主義 精神 文 明 も提 唱 され た。86年 の12期6中 全会 で は特 に 「社 会 主義精 神 文 明建 設 の指 導方 針 に関 す る決議 」 も行 なわ れ 、精 神文 明建 設 の戦略 的地位 、根 本的任 務 、重 要 方針 な どが採択 され 、物 質文 明 と精 神文 明の二つ の文 明建 設 を推進す るよう にな る。 しか し、89年 の天 安 門事 件 を前 後 して、登昼小 平 は ここ十 年 来 の最 大 の 過 失 は教育 で あ り、思想政 治面 の教 育が薄 弱で あ った と告 白 してい る。 そ こ で 、天安 門事 件直 後 の13期4中 全 会 以降 、経 済 建設 と共 に社 会 主 義精 神 文 明 の建 設 の強 化 が 図 られ る よ うに な った。 そ して、92年 の第14回 党大 会 で は、 中 国の特 色を もっ社会 主義建 設 とい う登誌小 平理 論 の共 産党 におけ る指 導 的地位 を確 立 し、社会 主義 市場経 済 の構 築 と共 に、精 神文 明建設 の推 進 を再
社 会主義 精 神文 明論 に見 る理 想 と道 徳(樋 ロ)119
度 強 調 す る こ と に な る。 そ の 意 味 で も 、 今 回 の15大 は 、 特 に14大 以 降 の 理 論 と実 践 を 総 括 し、 「中 国 共 産 党 規 約 の 中 に都 小 平 理 論 を党 の 指 導 的 思 想 と
して確 立 し、 中 国 共 産 党 は マ ル ク ス ・レー ニ ン主 義 、 毛 沢 東 思想 、獅 小 平 理
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論 を 自 らの行動 の指針 とす る と明確 に規定 す る」 こと、す なわ ち 「郵 小 平理 論 を高 く掲 げ る」 ことが大 き なテーマで あ ったわ けで あ る。す る と、現 在 の 中 国でそ の価値 観 を見 るに は、郡 小平 理論 並 び に党 の指導 方針 を検 討す る必 要が あ る ことは言 う まで もないが 、中で も社 会 主義精 神文 明の概 念 を整理 す る ことに よ って、 中国共産 党が 目指す 価値観 を検 討す る こ とがで きる ように 思わ れ る。
価値観 は人間 の生 き方 を規定 し、人 間 の幸福 を左右す るもので あ る。経済 、 政治 、文化 の発 展 と言 い、 あ るいは社 会 の繁栄 、進歩 と言 って も、そ の 目的 は個 人 の幸 福 にあ るはず で あ る。 また 、個 人 の幸 福 と言 って も社会 の安 定 、 進歩 と無縁 で は ない。 その意 味 で、11期3中 全会 か ら15大 に至 るまで の20 年 間で、 中 国が社会 主義市 場経 済 と精 神文 明を提 唱 し、社 会 の繁栄 と人 間 の 幸福 を 目指 して きた理 論 と実践 は注 目に値 す る。 そ れ故 、15大 で この20年
を総 括 し、都 小 平理 論 を新 た な中 国の精神 的支柱 に据 えた現在 、社 会主 義 精 神文 明理 論か ら見 た価 値観 を検 討す る ことは、今後 の 中国 の動 向を知 る上 で も有 益で は ないか と思われ る。 したが って本稿 で は、 中国共産 党 が志 向 して きた社会 主義建 設理 論 にお いて、個 人 の幸 福 を どの よ うに捉 え てい るのか 、 特 に社会 主義精 神文 明にお け る価 値 問題 の考 察 を通 して、人 間 の幸 福 と社会 の繁 栄 の問題 を検討 してい くことに したい。 中で も今 回は 、そ の理 想 と道徳 を通 して見 られ る価値 観 を検討す ること によ って、社 会 主義精 神文 明論 に見 られ る問題 点 を指摘 で きれ ば と思 ってい る。
2社 会主義 精 神文 明論 の概要
(1)経 過
社 会 主義 精 神 文 明の概 念 は、79年9月 の葉 剣 英 に よ る 「在慶 祝 中華 人 民 共 和 国成 立30周 年 大会 上 的講 話 」 にお いて 、初 め て 明確 に提 唱 され た と言
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われ る。そ こで は、精神 文 明 と物 質文 明の関係 、社 会主 義精 神文 明 の内容 、 社 会主 義精 神文 明は社 会主義 現代 化 の重 要 な 目標 で あ ること な どが 指摘 され
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た。 また、 それ に先立 ち、 同年 の3月 には都小 平 が 「堅 持四項 基本 原則 」 を 発表 し、四 つの現代 化建 設 には社会 主義 の道 、無産 家階級 専制 、共 産党 の指 導 、 マル クス ・レーニ ン主義 ・毛沢 東思 想の堅 持が 必要 であ ると強 調 した。
そ の上 で都 は、四つ の基 本原則 と民主 の関係 に触れ 、中 国人 民が今 日必要 な 民主 とは、社会 主義 的 民主、 人民 民主で あ り、資産 階級 の個人 主義 的民主 で は な いと し、社会 主義 制度 の下 で は、個 人 の利益 は 集団 の利 益 に、局 部 の利 益 は全 体 の利 益 に従 わ なけれ ば な らない と してい るQし か し、決 して個 人や 局 部 の利益 を重視 しないので は な く、個 人 や局部 の利益 は全 体 の利 益 と合致 させ なけれ ば な らず 、それ ぞれ の利 益の相互 の関係 を調 節す る必要性 を説 き、
全体 観 に立 って こそ 四つ の現 代化 は達成 され ると述 べ る。 そ して、四つ の基 本 原則 に基づ いた社 会 主義 的民主 とは、民主 が あ り自由が あ り意志 統0が あ り、 また個 人 の心情 が快 適 で活 発 な政治 局面 で あ り、今後 努 力 して実 現す べ き 目標 であ ると言 う。登 が言 う四つ の基 本原則 には、社会 主義精 神文 明 とい う用 語 は表 れ な いが 、そ の後 の葉 剣 英 の講 話 か ら15大 に至 るまで の社 会 主 義精神 文 明論 の基 調 にな ってい る ことは容 易 に看 取で き るで あ ろう。
80年12月 の中共 中央 工 作会 議 で は、都 も精 神 文 明 にっ い て具 体 的 に言及 し、「精神 文 明 とは、教 育、科 学 、文 化 のみで な く、共産 主義 の思想 、理想 、
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信 念 、道 徳 、 規 律 、 また 革 命 の立 場 と原 則 、 人 と人 との 同志 的 関 係 な ど」 と 指 摘 して い る。 そ して 、82年9月 の12大 で は 、 更 に 一 歩 進 ん で 社 会 主 義 精
社 会主 義精 神文 明論 に見 る理 想 と道徳(樋 口)121
神文 明の理 論 が 提起 され た 。 そ こで は、① 社 会主 義 精 神 文 明が 物 質文 明 と 共 に社 会 主義 建 設 の柱 で あ る こ と、② 物 質 文 明 と精 神 文 明 は社会 主義 建 設 に お いて は弁 証 関係 に あ る こ と、③ 社 会 主 義 の特 徴 は 共産 主 義 思想 を核 心 とす る社 会主 義精 神 文 明 を有 して い る こ と、④ 社 会 主 義精 神 文 明 の主 な 内 容 は文化 建 設 と思想 建 設 で あ る こと 、⑤ 社 会 主義 精 神 文 明 は全党 と各 分 野
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の重要 な任 務 で あ る こと、 な どの理 論 が提 起 され た 。86年9月 の12期6中 全会 で は、「中共 中央関於 社会 主義 精神 文 明建 設 指導方 針 的決議 」(以 下 、86
年 決 議 と記 す)が 採 択 され 、 これ まで の基礎 の上 に社 会 主i義精神 文 明建 設 の綱 領 的 な見解 が提示 され た。87年10月 に は13大 が行 なわれ 、社 会 主義 初 級 段 階 論 が初 め て提 起 され た 。 それ に よれ ば 、① 中 国はす で に社 会主 義 で あ り、 今後 も社 会主i義を堅持 す る、 ② 現 段 階 の 中 国は社 会 主 義 の初 級 段 階 にあ り、初級 段階 の実 際か ら全 て出発 しなけれ ば な らない。 それ 故 に 、文 革 期 の階級 闘争 を中心 とす る基本路 線 を否定 してい る。そ して、初級段 階 の基 本路線 の主要 な内容 とは 、全 国の各族 人 民 を指導 し団結 させ 、経 済建 設 を 中 心 と して 、四つ の基本 原則 と改 革開放 を堅 持す る所謂 「一 っ の中心 、二 つ の 基 本 点」 であ るとす る。 その上 で 、社 会主 義初級 段 階 にお け る社 会 主義精 神 文 明 と して、86年 の 「決議 」 の貫徹 を通 して 、現 代 化建 設 と改 革 開放 の理 論 を深 め 、輿 論 を形成 し、価 値観 や文 化 ・社 会条 件 を整備 し発展 させ るよ う
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求 め てい る。 こ のよ うに見 る と、社 会 主義 精 神 文 明 にっ い ての86年 決 議 の 重要 性 が窺 え る。 また 更 に、そ の重要 度 は、 この決議 の中で示 され た精 神 文 明建 設 の指 導 方針 と基本 内容が 、90年11月 に行 なわれ た全 国精 神 文 明建設 活 動 工作 会 議 の席 上 、李 瑞環 によ って肯 定 され 、且 っ 今後5年 、10年 の精 神 文 明建 設 の総体 か ら見 て、そ の大 きな軌道 は 「決議 」 の基 本精 神 を遵 守す
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る と 明 言 した こ と か らも 明 らか で あ る。
更 に 、92年 の14大 で は 「11期3中 全 会 以 来 の党 の 基 本 的 実 践 と基 本 的 経 験 を総 括 し、 中 国 の特 色 を もっ 社 会 主 義 建 設 とい う$N小 平 の 理 論 の全 党 に お
け る指導 的地位 を確 立 し、社 会主義 市場 経済体 制 を構築 す る と同時 に精 神文
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明建 設 を 新 た な水 準 に 高 め る よ う要 求 した 」 と言 わ れ る。 そ れ を承 け て 、96 年10月 の14期6中 全 会 で は 、「社 会 主 義 精 神 文 明建 設 強 化 の 若 干 の 重 要 問 題 に 関 す る中 国共 産 党 中央 の決 議 」(以 下 、96年 決 議 と 記す)が 採 択 され る。
これ を86年 の 決 議 と比 較 す る と 、 更 に具 体 性 が 加 味 され て い る も の の 、 そ の基 本 方 針 に変 更 は な く、10年 間 の社 会 主 義 精 神 文 明建 設 の 進 展 と そ の 重 要 性 の 認 識 の 深 化 を 知 る こ とが で き る。 ま た 、15大 で も そ の 基 本 姿 勢 は 変 わ らな い 。 した が って 、86年 と96年 の 決 議 の 内 容 を 中 心 に検 討 す る こ と に よ って 、社 会 主 義 精 神 文 明 論 に っ い て の全 体 像 を 窺 い 知 る こ とが で き る と言 え よ う。
(2)概 容
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86年 決議 の概 略 は以下 の通 りで あ る。
① 社 会主 義精神 文 明建設 の戦略 と基 本指 導方針
中 国 の社会 主義 現代化 建設 の総 体 は、経 済建設 を中心 に して、経 済体 制改 革 、政 治体 制改 革 を行 い、精神 文 明建 設 を強 力 に推進 す る ことにあ る。 こ の三 つ の方 針 は相 互 に補完 し相 互 に促 進 され るこ とを知 らね ば な らない。
また 、社会 主義 精神 文 明は社会 主義 現代化 を推 進す るた め の もの で、改革 開放 と四つ の基 本原則 を堅 持 しなけれ ば な らない。
② 社会 主義 精神 文 明建 設 の根本任 務
社会 主義精神文 明建設 の根 本任務 は、社会 主義現代化建 設 の需要 に適応 し、
理 想 、道徳 、文化 、紀 律 を もっ社 会主 義 の公 民を育成 し、全 ての中華 民族 の思想 ・道徳 の資質 と科 学 ・文化 の資質 を高 め る ことにあ る。
③ 共 同の理想 で全 国各 族人 民 を動 員 し団結す る
中国 の特色 を持 っ社会 主義 の建設 とは、 中国 を高度 な文 明、高度 な民主的 社 会主 義 国家 に建 設す る ことで あ り、 これ が現段 階 にお け る中国各族 人民
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の共 同の理想 で あ る。 また 、党 の最 高 の理想 とは共産 主義社 会で あ り、永 遠 に中国共産 党 の精 神 的支柱 で あ る。 中 国の特色 を有す る社 会主 義 の建 設 は、最 高 の理想 を実現す るため の前 段 階で あ る。
④ 社 会主 義 の道徳 的気風 を樹 立 し発 揚す る
社 会主 義道徳 建設 の基 本的要 求 は、祖 国、人 民 、労働 、科学 、社 会主 義 を 愛 す る 「五愛 」 にあ る。それ を も って、人 民間 に平等 、 団結 、友 愛 、互助 の社 会 主義 の新 た な関係 を築 き発 展 させ る。 また、道徳 は経 済 的基盤 の反 映で あ る。 それ 故 、現段 階 で は公 有制 を主体 に しっっ も、(生 産 力 を発 展 させ るた めに)多 種 の経 済基 盤 を発展 させ なけれ ば な らない。 そ のため に も、 国家 、集 団、個 人 のそれ ぞれ の利益 と社 会主 義 の集 団主義精 神 を結合 させ るよ う奨励 し、大 局観 に立 ち信義 を重 ん じ互助友 愛 と救 済 の精神 を発 揚 させ る必 要が あ る。 また 、社会 生活 の中で 、社 会 主義 の人道 主義精 神 を 発揚 させ なけれ ば な らない。
⑤ 社会 主義 の民 主、法制 、紀 律 の教育 を強 め る
高度 な民主 は社会 主義 の偉 大 な 目標 の一つ で あ り、社 会 主義精 神文 明の国 家 と社 会生 活 におけ る重要 な体 現で あ る。 民主 は法制 、紀 律 とは不 可分 で あ る。 社会 主義 の法制 は 、人 民の意 志 を体 現 、人 民の合 法的権 利 と権 益 を 保 障 、人 間間 の関係 を調整 、人 間 の行 動規 範 、社 会 に危害 を与 え る不法行 為 に対 す る制裁 を行 なう もので あ る。そ して、それ を遵 守す るた め の根 本 問題 は、 人間 の教育 にあ る。
⑥ 教 育、科学 、文化 を普及 し高 め る
教 育、科学 、文化 は物 質文 明建設 の重要 な条件 で あ り、人 民の思想 、道徳 、 自覚 を高 め る重 要 な条 件 で あ る。 中 国の文化事 業 にお け る社会 主義 的性 格 とは、社会 公益 を最 高基準 にす る所 にあ る。
⑦ マル クス主義 は精神 文 明建 設 にお け る指 導 的役割
マル クス ・レーニ ン主義 、毛 沢東 思想 の堅持 は 、社 会 主義精 神文 明建設 の
根 本 で あ る。 したが って、理 想 、道徳 、文 化 、民主 法制等 の建 設 は、 マル クス主義 か ら離 れ ることはで きない。た だ、 マル クス主 義 は実践 の中 で不 断 に真理 を開 くことを求 め るが故 に、我 々はそ の基 本原則 、基 本方法 を運 用 して新 た な問題 を創造 的 に解決 してい く必要が あ る。 また、そ のため に、
学 術 と芸術 は憲法 の範 囲 内で 自由に行 い、人 民 と社会 主義 に奉仕 させ る こ とが 求め られ る。
⑧ 党組織 と党 員 の精 神 文 明建 設 にお け る責任
労 働者 階級 はわ が 国の指 導 階級 であ る。 それ故 、党組 織 と党員 は、党 風 を 始 め とす る 自身 の精 神文 明建 設 を強め 、人 民 の模範 とな って全社 会 の精 神 文 明建設 を推 進 しなけれ ばな らない。
86年 決 議 で は 、 以 上 の8章 に わ た っ て社 会 主 義 精 神 文 明 を 説 明 して い る。
これ を更 に要 約 す る と 、社 会 主 義 現 代 化 建 設 は 経 済 建 設 を 中 心 に して改 革 開 放 と 四 つ の 基 本 原 則 を 堅 持 す る こ と に よ っ て達 成 され る。(「 一 個 中 心 、 両 個 基 本 点 」)ま た 、 物 質 文 明 は精 神 文 明 に 支 え られ て こそ 発 展 す る こ とが で き る の で 精 神 文 明 の強 化 が 必 要 で あ り、 そ の た め に理 想 、 道 徳 、 文 化 、 紀 律 を もっ 社 会 主 義 の 公 民 を育 成 し、 社 会 主 義 の 人 道 主 義 精 神 を発 揚 しな けれ ば な らな い。 そ れ 故 に 、 人 間 の教 育 こそ が 精 神 文 明建 設 の根 本 で あ る。 そ して 、 教 育 、 科 学 、 文 化 を普 及 す る こ と に よ って そ の 条 件 が 整 え られ る 、 と い う こ
と に な ろ う。 ま た 、96年 決 議 で も 、 登阿 ・平 の 言 を 引 用 して 「思 想 ・文 化 ・ 教 育 戦 線 の 同 志 は み な 人 間 づ く りの技 師 で な けれ ば な ら な い」 と言 う。 す る
と、 社 会 主 義 精 神 文 明 で 問 題 に な る の は 、 人 間 の教 育 と い う こ と に な る。 人 間 の 素 養 を 高 め る こ と に主 眼 が あ るわ け で あ る か ら、 個 人 の幸 福 の 問 題 と も 関 連 して くる は ず で あ る。 しか し、86年 決 議 を 見 る と、 ① 〜 ⑧ まで 相 互 に 関 連 し合 って い る こ とは 言 う ま で も な いが 、 そ の 主 旨 は社 会 の 繁 栄 ・発 展 の た め に社 会 主 義 体 制 を 堅 持 し、 そ の た め に 人 間 に社 会 主 義 的 自覚 を促 す と い
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う構 図 が窺 え る。 それ は また 、91年3月 に李 鵬 が行 な った報 告 で 、精 神 文 明建 設 の推進 に よ り祖 国 の建 設 と中華 の偉大 な事業 を振 興 させ るとの見解 と 軌 を 一 にす るもので あ る。96年 決 議や15大 で も同様 で あ る。 社 会 に基礎 を 置 く点 は理解 で き る。社 会 の繁栄 ・発展 のた め に社 会主 義体制 を堅持す る点 も承 認す る ことに しよ う。 しか し、 問題 は社 会 の繁栄 と人 間の社会 主義 的 自 覚 ・更 に言 えば人 間 の幸棉 の問題 と どの よ うに関係 す るか であ る・
前 述 した よ うに社 会 主義精神 文 明論 は盛 ん に論 じられ てい る し、全 国で も 思想 ・道徳 教 育 は熱心 に行 なわれ て い る。11期3中 全 会 以来20年 を経 て、
経済 建設 は概 ね成功 して い るよう に思わ れ るが、精 神文 明の問題 はそ の間何 回 も提起 され てい るに も関わ らず 、更 に深刻 な問題 に な ってい る。 あ るいは 15大 で江 沢 民が 「(現 在 は)物 質 文 明を建 設す ると 同時 に、精 神 文 明 の建 設 に も努 め る歴 史 的段 階で あ り、世 界先 進水 準 との格差 を徐 々に縮 小 し、社 会主i義の基礎 の上 に中華 民族 の偉大 な復 興 を実現す る歴 史的 段階 で あ る。 こ
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の よう な歴 史的 プ ロセ スは 、少 な くと も百年 はか か る」 と言 うよ うに、長期 の弛 まぬ奮 闘努 力が必要 なので もあ ろ う。で は、 その社 会主 義精神 文 明論 が 説 く人 間 の理想 と道徳 とは何 で あろ うか。人 間が 自覚 を生む には、理想 が必 要 で あ る。 また 、そ の理想 は道 徳 に支 え られ て こそ普遍 性 を持っ ことがで き る。 更 に言 えば 、個 人 の利 益 に支 え られ て こそ、 その理 論 は実 践 され大 衆化 され る ことがで き るよ うに思 う。換 言す れば 、価 値 観 の問題 で あ り、個 人 の 幸福 観 の問題 に帰着す る。無論 、個 人 の幸 福 と社 会 の繁栄 は個 と全 体 の問題 で あ る。社 会 主義精神 文 明論 は主 に全 体 の次元 か らの もので あ るが、個 の利 益や 発展 が な く して、全体 の発展 もあ り得 ない。 したが って、社会 主義 精神 文 明論が あ るい はその建設 が どれ だ け個 人 に理想 や価 値観 念 を与 え る ことが で き るのかが重要 に なる ように思 う。 本稿 で は社 会 主義精 神文 明論 に見 る価 値観 全 てを扱 う余裕 は ない ので、次 に価値観 の一部 を なす 理想 と道 徳 の問題 につ いて考察 してい くことにす る。
3理 想 の 問 題
都 小 平 は 次の よう に言 う。「我 々は常 に我 々の 人民 を特 に青 年 を教 育 し、
理想 を持 たせ なけれ ば な らない。我 々は何故過 去 の非常 に困難 な状 況下 で奮 闘 し、戦 いに勝利 して革命 を成功 させ る ことが で きた のか。 それ は 、我 々に は理 想が あ り、 マル クス主義 の信 念 と共 産主 義 の信 念 が あ った か らで あ る。
我 々が行 な うの は社 会 主義 の事業 で あ り、最 終 目的 は共 産 主 義 の 実現 で あ
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る」 「我 々の信 念 と理想 は 、共産 主義 を行 なう ことで なけれ ば な らない。我 々 が最 も困難 な時期 に 、共 産主 義 の理 想 は我 々の精神 的支柱 であ った。 では 、 共産 主義 とは何 か。 それ は 、人間 が人 間 を搾取 しない制度 であ り、物資 が極 め て豊富 で必要 に応 じて必要 なだ け分配 で き る社会 で あ る。必 要 に応 じて分 配す るには、極 め て豊富 な物質 条件 が なけれ ば不 可能で あ る。 共産 主義 を実 現す るには、社 会主 義段 階 の任 務 を完遂 しなけれ ば な らない。 社会 主義 にお け る任 務 は多 いが 、そ の根本 は生産 力 の発展 で あ り、共産 主義 のため に物 質
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的 な基礎 を創 造 す る こ とで あ る」 と。 これ は 、86年 決 議 の前 年 の講話 で あ るが 、86年 決 議 の 「理 想 」 にっ い ての 内容 を端 的 に表 して い る と言 え る。
っ ま り、前述 した86年 決 議 の ① ②③ に相 当す る。 ただ 、決 議で は 「理想 、 道 徳 、文化 、紀 律 を もっ社 会 主義 の公 民」 と 「共 同理 想」 にっ いて補 足 が加
え られ てい るのみ で ある。
郵 は 「共 産主 義 の理想 は我 々の精 神的 支柱」 と言 い、そ の理想 を中 国の人 民 に持 たせ ることを念願 していた。 なぜ な ら、最終 目的 の共産 主義 を実 現す るには相 当 な困難 を経 なけれ ば な らず 、それ を克服す るため に は革命 戦争 で 有 して いた革命 の理 想 を精 神 的支柱 にす る必要 が あ ると考 えて いたか らで あ る。 しか し、 革命戦 争 当時 は外 国の侵略 が あ り、 国 内戦争 に苦 しみ 、人 民 も 国土 も疲弊 して いた。っ ま り、生死 を賭 け ての革命 闘争 で あ った。 現在 は、
経 済 的 に先進 国 には及 ぼ な くとも、政治 的 に も物質 的 に も当時 と比較 に な ら
社 会主 義精 神文 明論 に見 る理 想 と道 徳(樋 口)127
ないほ ど安定 し発 展 して い る。 人 々もそれ に慣れ てい る。 この よう な状 況下 で 、革命 の理 想 を持 ち続 け る ことは確 か に困難 を伴 う。 それ故 に、中 国で は 幾 度 も社 会 主義精 神文 明 を唱 え、理想 を唱 え る必要 が あ るのだ が 、で は、そ の現段 階 にお け る理想 とは何 か 、そ の理想 と国民 とは如何 な る関係 にあ るの か につ いて次 に検 討 してい くことにす る。
鄙 が言 う よ うに、理 想 は人間 の精神 的支 柱で あ る。っ ま り、意識 主体 で あ る人 間 の観 念現 象で あ り、人間 は常 に現実 や 自身 を超 越 しよ うとす る強烈 な 願 望 を備 え てい る もので あ る。 また 、 これ を理想 と現実 の関係 か ら見れ ば 、 理 想 は主体 の未 来 に対す る予測 で あ り、現 実 の変革 の可能 性 を備 えた観 念で あ るが、現 実 は客観 的存 在 で あ る。 それ故 、理想 と現実 は常 に矛盾 を抱 え て い る。 しか し、矛盾 を抱 え てい るが 故 に、人 間 は常 に現実 を変 革 し新 た な現 実 を創 造 しよ うとす る。換 言す れ ば、理想 と現 実 は相 関関係 にあ り、理 想 の 中 に現実 の要素 が含 まれ 、現実 の 中 に理想 の因が含 まれ る。 っ ま り、 現実 は 理 想 を構築 す るた めの基礎 で あ り、理 想 は また現実 の産物 であ る と言 え る。
更 に、理想 と 自身 の超 越 の関係 か ら言 えば 、理 想 が解決 を求 め る主要 な問題 は 、 どの よう に生 きるか とい う価値観 の問題 で もあ る。 っ ま り、主体 が 自己 の理想 を確 立 し、 それが信 念 にまで高 め られ ると、理想 は主体 に精 神 的力 だ け では な く、責任感 を も賦与す る。 それ によ って、現 実 の変 革や理 想 の実 現 に遙進 し、主体 の思想 ・行 為 の基準 に な り、それ に応 じた理想 人格 を追 求す
(18}
る ように もな ると言われ る。 それ故 に、都 や 中 国政 府 は 「理想 を もっ社 会 主 義 の公 民」 の育成 を強調 す る。例 え ば、 これ を中国 の現実 に即 して見 ると、
現状 の生産 力 の水準 や極端 な個 人主 義的価 値観 によ る道 徳心 の喪 失 、多発す る犯 罪 な ど現実 問題 は山積 してい るが 、それ を克服 す る一 つの方途 と して理 想 を高 く掲 げ る ことを要 求す るので あ る。
また 、理 想 と価値 の関係 か ら言 えば 、理 想 は主体 の未来 に対す る期待 と 自 覚 の追 求で あ り、それ は主体 の客 体 に対 す る認識 と主 体 の需要 が基礎 に なる
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か ら、理 想 の問題 も主 体 の価 値 判断 によ る選択 に依 拠す るこ とにな る。 これ は理 解 で き る。 しか し、 問題 は客 体 に内在価 値 を認 め るかで あ る。『精 神 文 明引論』 で は、① 「主体 の内在尺 度 と客体 の 内在価値 の基礎iが統一す る時 、 また歴史 の方 向性 と一致 し歴 史 の必然 性 を繁栄す る時、始 め てそ の理 想 は科
{2A)
学性 を持 ち、現実転 換 の可能 性 を有す る」 と言 う。 また 、② 「理 想 に関す る 精神 的支柱 の作用 は、 まず 人が 人生 の生 き方や奮 闘 目標 を確 定す るのを導 き、
そ こか ら人間 の精 神生 活を充実 させ 、人 間の精 神 的境涯 を高 め る こと にあ る。
理 想 が体 現す るのは人 間 の生 活 の中 の最 高 の価値 で あ るか ら、 … …人 間 の理
{21)
想 の追 求 と実 現 は 、 人 間 の 最 高 の 自我 価 値 と社 会 価 値 で あ る」 と言 う。
① と ② を比較 す る と、主 体 の 内在 尺度 と 自我 価値 、 客体 の 内在 価値 と社 会 価 値 を対応 させ てい るよ うに思われ る。
そ うで あ るな らば、矛盾す る。っ ま り、価値 とは評価 主体 が客体 を認識 し、
その認 識 に,基づ い て評価 主体 が利益 の有 無 を判 断す るもの で なけれ ば な らな い。 も ちろん ここで 言 う利 益 とは 、物質 的 な利 益 とは限 らない。 また 、社 会 的価 値 は社 会が評価 主体で あ り、社会 に と って有益 か否 かを 問う もので あ り、
(22}
社会 自体 に内在価値 があ るの では な い。 その意 味 で言 えば、 自我 価値 と社 会 価値 の存 在 は承認 で きるが、評価 主体 と無関係 に客体 の内在価値 を承 認す る ことはで き ない。 客体 の 内在価 値 とは、評価 主体 以外 の客 体 に価 値 を認 め る もので あ るが 、『引論』 で はそれ を外 在価 値 と呼 び、「生成 され実 現 され た も
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のの 内在価 値 で あ り、潜 在 か ら現実 に な った もの」 と定義す る。 しか し、い くら実現 され た もの が立派 で あ って も、評価 主体 に無 関係 で あれ ば評価 の対 象 にす らな り得 ない。評価 主体 に と って評価 の対 象 で ない もの に、価値 判 断 をす る ことはで き ない。 そ の意 味で 、価 値 とは評価 主体 との関係 にお い て始 め て成 り立っ もので あ る。 ただ 、一般 に客観 的価値 あ るいは普遍 的価値 と称 され る価値 はあ る。 客観 的価値 とは 、交i換価値 で あ り、多 くの評価 主体 が金 銭 あ るいはそ の代替 物 で交換す るこ とを認 め る対 象物 に価値 を承 認す るので
社 会 主i義精神 文 明論 に見 る理想 と道 徳(樋 口)129
あ る。普 遍的価値 とは、 言 う まで も な く、時 空 を越 え て評 価主体 に利 益 を も た らす価値 で あ る。っ ま り、価 値 とは 、共 に評価主体 と対 象物 との関係概 念 で あ る。 そ うであ るな らば 、0般 に承 認 され てい る真 とい う価 値 も成 立 しな くな る。 したが って、 ここで 言 う価値 の概念 か ら見て 、客体 の 内在価 値 とい う概 念 は、価 値の概 念か ら除 外 され なけれ ば な らない。 それ は価値 と言 うよ り、む しろ真理 とい う概 念 に近 い。真 理 と価 値 の関係 につい ては後 述す るが 、 社 会主 義精神 文 明論 にお け る客体 の 内在 価値 とは、真理 の ことを指 してい る
ように思われ る。 それ は、 中 国の多 くの研究 者が真 善美 を価値 観 の基 盤 に置 いてい る ことか らも窺 い知 る ことがで きよ う。
と もあれ 、客体 の 内在価 値 とは、 ① や都 小 平理 論 や86年 決 議 な どか ら見 て、 言 う まで もな く、共 産主 義 の理想 で あ り、現 段階 で は社 会主 義の理 想 を 指 してい るこ とは 明 らかで あ る。 っ ま り、社 会 主義 の理 想 自体 に 内在価値 を 認 め る故 に、そ の価 値 の実 現 のた め に 国民 に社会 主義 の理想 を持 っ ことを求 め るわけ で あ る。 で は、何 故 にそれ を 内在価 値 と認め るのであ ろ うか。それ は、理 想選 択 の基 準 の問題 に なるが 、 その、基準 を歴史 発展 の必然 的趨勢 と多 くの人 民の利益 に合致す るか否 か 、そ して人類 の解放 と 自由に求 め るので あ る。 これ は 、マル クス主義 唯物 史観 か ら くる必 然で あ るが 、興味 深いのは理 想選 択 の基 準 に人民 の利 益 を挙 げ てい る点 であ る。 この点 に関 しても後 述す る と して、次 に現今 の中 国が理 想 にっ い て具体 的 に どのよ うに規 定 してい る のか を見 てい くことにす る。
中 国の研究者 の分類 に従 えば 、理想 の次 元は社会理 想 、階級理 想、個 人理
ゆ ラ
想 の三種 に分け られ る。社会理 想 とは長期 的 な人類共 同の理想 を指す。無論 、 共 産主義 の理想 の ことで あ る。階 級理 想 とは、社会 に階級 が誕生 してか ら生
じた もの で、現在 で は資 本家 階級 の理 想 と無産階級 の理想 とに分 け られ る。
個 人理 想 とは、個人 が追求す る理 想人 格 や物 質生活や精 神生 活 を指 してい る。
86年 決 議 の ③ で 言 う理想 は 、共 同理 想 が 階級 理想 の 中 の無産 階級 の理想 、
最 高理 想 が社会 理想 とい う こと になる。 では、順次 その 内容 を見 てお きた い。
まず 、社 会 理 想 にっ い ては 、86年 決 議 や都 小 平 の講 話 か らも明 らか な よ う に、共 産主義 の実 現で あ る。 それ は 「人間が 人 間を搾取 しない制 度で あ り、
物 資が極 め て豊富 で必要 に応 じて必要 なだ け分配 で き る社会 」 を言 う。そ の 実 現 は、歴史 発展 の必然 の趨 勢で あ り、多 くの人 民 の利 益 に も合致 し、人類 の真 の解 放 と 自由を保証 す るとい う最 高 の理想 で なけれ ば な らない。 そ の理 想 は、近 代以 降 の生 産 力 の飛 躍的 な増大 、科学 技術 の進歩 、社 会科 学 の発展 に よ って、資 本主義 社会 か らの転換 の可能 性が 生 じてき てい る。 これ まで の 人類 の共 同理想 は、統治 階級 の歪 曲 によ るもので あ り、共 産 主義社 会 の実現 は資本主 義社会 までの よ うな人民 を搾 取す る ことの ない社 会 の実現 で あ る と す るので あ る。
共産 党 が言 う階級 理想 とは、無産 階級 の理 想 で あ り、社 会主 義 の理 想 で あ る。 また それ は 、共 産 主義 社会 の前段 階 で あ り、 当面 の 目標 で もあ る。15 大 で 江沢 民は 、現在 は社会 主義 の初級 段階 にあ り、 そ の理想 の実現 だ けで も
百年 以 上 を 有す る と言 う。 更 に江 沢 民 は社 会 主 義 初 級 段 階 の理 想 と して、
「物質 文 明を建設す ると同時 に、精 神 文 明の建設 に も努め る歴 史的段 階 で あ り、世 界先進 水準 との格 差 を徐 々に縮 小 し、社会 主義 の基礎 の上 に中華 民族
{25)
の偉大 な復興 を実 現す る歴 史的段 階で あ る」 と規 定 して い る。 っ ま り、社 会 主 義 の理 想 に も二段 階 あ り、社 会主 義 の発展段 階 で は無産 階級 の階級 理想 が 実 現 され る段 階 であ り、それ は人類 の解放 と利 益 を代表 す る故 に、共 産主 義 社会 の理想 と同一 にな り、人類 の共 同理 想 とい う ことになる。 そ うで あれ ば、
社会 理想 と階級 理想 の区別 は な くな って しまい、論 理 的 に矛 盾 して しまうの で は ないだ ろ うか。 階級理 想 は苦 しい解釈 で は あ るが 、マ ル クス主i義の階級 理 念か ら導 きだ され る当然 の結 果で もあ る。
個 人理想 とは 、前 述 した よ うに個 人が追 求す る理想 人格 、物質 生活 、精神 生活 で あ り、 また政 治的理 想 、道徳 的理想 、審 美 的理 想 、生活 の理 想 な どで
社会 主義精 神文 明論 に見 る理 想 と道徳(樋 口)131
あ る。 これ は、個 人 の置 かれた環境 や教 養 、性 格 な どに よ り各種各 様で あ る。
また、時代 、時間 や地域 差 に よ って 同一 人物 で あ って も相 違 して くる。 っ ま り、個 人 の理想 は、個人 の持 っ価値 観 に よ って変化す るので あ り、 この点 は 社会主 義で あ ろうが 、資本主義 であ ろうが不変 の真理 のはず であ る。 問題 は 、 個人 理 想 と社 会理 想 との関係 で あ る。 『引論 』 によれ ば、個 人 理想 は独立 性
を有す るが 、社 会理 想 か ら離 れ ることはで き ない。 現実 の生活 の中で 、個 人 理想 は客 観 的存在 で あ るが 、正 しい個 人理想 は個 人 の 自身 の要 求 に対す る追 求 だ けで は な く、個 人 の社会 に対す る責任 も体 現 してお り、個 人 と社 会 の向 上 を 目指 す個 人理想 で あ って こそ 、個 人理想 が個 人 の原動 力 にな ると言 う。
西洋 の よう に、個 人 の利 益 の追求 のみ を強調 し、社 会公 益 を軽 視す ると極 端 な個 人主 義 に走 って しまう。 個人 は社会 を構 成す る細胞 で あ ると共 に、社 会 関係 の中で始 め て存 在す る ことが で き る。個 人 の価値 も現実 の社会 関係 の中 で体 現 され るもので あ る。 それ故 、個 人理想 の評価 は、個 人 の主観 的 な意志 に よ って な され るべ きで は な く、社 会実 践 に よ って決 定 され なけれ ば な らな い。 したが って、個 人理 想 は社会理 想 と一致す る時 に始 め て正 しい もの と な
(26)
り、可能 性 か ら現 実へ の転i喚がで き ると主張 す る。
こ こに 中国が社 会主義 精神 文 明建 設 を重視 す る理 由が あ る。っ ま り、個 人 理想 は本 来 、多様 で はあ るが 、人 間 は社 会 の中で のみ生存 で きるので あ るか ら、人類 の最 高の理 想 であ る共産 主義 の理想 と個人理想 を合致 させ る ことが 、 個 人理 想 に と って も最 高 の理 想 に な り、そ の実現 に努力す るこ とが個 人 の幸 福 と社 会 の繁栄 に繋 が るとい う ことで あ ろう。 なぜ な ら、人 間 は理 想 の実現 を通 して、 また理想 の実 現 を 目指 して努 力す る中 に幸福 を感 ず る存 在 で あ る か らとい う ことに なろ うか。 これ を価値 観 の次元 で言 えば 、最 高 の理想 で あ る共産 主 義 を真 理 と認 め、そ の価値 を追 求 し創 造す る ことが個 人 にと って も 幸福 を実 現す る過程 に なる と言 うので あ ろう。 ここで も真理 と価値 の問題 は 置 くと して、確か に人 間 は社 会 の中で のみ存 在す る ことが で き る し、それ 故
に社会 公益 を重視 す ることは必要 で あ る。 個人利 を中心 に して は社 会が成 り 立 た ない。 そ の意 味 で、道徳 教育 は重 視 され なけれ ば な らない ことは 当然 で あ る。 そ の点 で 言え ば、問題 はな い。 しか し、問題 は共産 主義 の理想 が果 た して真理 で あ るのか。 一歩譲 って、 も しそ うで あ る と して、 それ で は社会理 想 と個 人理想 の比重 は どうな ってい るのか。 双 方が 一致 す る場合 は問題 は な いが、相 違す る場合 に比重 の問題 が 出て くる。全 体 の利益 は個 人利 に優 先す る ことはマル クス主 義 の定論 であ るが 、そ こに全 体主義 へ 傾斜 す る危 険性 が あ るこ とは歴 史が証 明 して い る。
都 小平 は文化 大 革命 の教 訓 を踏 まえ て、「思想 上 の正 しくない傾 向に対 し ては、説得 と教 育 を主 と し、批 判 と 自己批判 を展 開すべ きで、無造 作 で乱暴
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な方 法 を と って は な らず 、 そ れ に構 わ な い 態 度 も と って は な ら ない 」 と言 う が 、 こ こで は 身 体 的 体 罰 を 行 な って は な らな い こ と に 言及 す る もの の 、 心 理 的 、 精 神 的 体 罰 にっ い ては 留 意 して い な い。 っ ま り、説 得 と教 育 とは 言 うが 、
「批 判 と 自己 批 判 の展 開 」 は 容 認 す るわ け で あ る か ら、社 会 理 想 と個 人 理 想 が 抵 触 す る場 合 、 当然 批 判 の 対 象 に な る わ け で あ る。 要 す る に 、個 人 理 想 を
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表 明す る 自由は制 限 され てい る と言わ ざ るを得 ない。 しか し、そ こで階級 理 想 の 内の社会 主義初 級段 階 にお け る理 想 、 あ るいは86年 決 議 で言 う ① や ③
の共 同理想 の必要 性 が 出て きた ので あ ろ う。っ ま り、「一個 中心 、両個 基 本 点」 に基 づ いて、生 産 力の拡大 を当面 の 中心 的 な 目標 にす るので あ る。
4道 徳 の問題
道徳 の問題 も理 想 の問題 と同様 に、共産 主義 道徳 、社 会主 義道徳 、社 会主
く ラ
義的 人道 主 義 の三 つ の次元 に分類 され て い る。86年 決 議 の ④ に よれ ば、共 産 主義 道徳 とは、人 民 の利 益 と幸 福 のた め に、共産 主義 の理想 のため に時代 の先頭 に立 ち、無私 の精神 を も って奮 闘努 力 し、 その ため に身 を捧 げ 、必要
社会 主義精 神文 明論 に見 る理想 と道 徳(樋 口)133
とあ らば 自己 の 生 命 を も犠 牲 に な る こ と を厭 わ な い も の で あ る とす る。 そ れ は 、 革 命 戦 争 期 や 建 国初 期 の 建 設 に貢 献 した 人 々の 中 に体 現 され た も の で あ るが 、 現 在 で 言 え ば86年 決 議 の ⑧ に 言 う共 産 党 幹 部 の 道 徳 を指 す 。 社 会 主 義 道 徳 と は 、「五 愛 」 す な わ ち祖 国 を 愛 し、 人 民 を 愛 し、 労 働 を 愛 し、科 学 を愛 し、社 会 主 義 を 愛 す る こ と を も って 、 人 民 間 に平 等 、 団 結 、友 愛 、 互 助 の社 会 主 義 の新 た な関 係 を 築 き発 展 させ る こ と を 言 う。 そ の た め に 、 国家 、
1
集 団、個 人 のそれ ぞれ の利益 と社会 主義 の集 団主義 精神 を結 合 させ るよ う奨 励 し、大 局観 に立 ち信義 を重 ん じ互助友 愛 と救 済 の精神 を発 揚 させ るこ とを 勧 めて い る。社 会主 義的 人道 主義精神 とは、人 間 を尊重 し、関心 を持 っ、特
に児 童 の保 護 、婦 女 に対す る尊 重 、老 人 に対す る尊敬 、栄 誉 軍人 に対す る尊 敬 と寡 婦 や障害 者 な どの弱者 に関心 を払 い幕助 す るこ とで あ る。 また 、公共 秩序 を遵守 し、礼儀 を弁 え る。公共物 を愛 護 し、環 境 と資源 を保 護 し、 国家 と社会 に対 す る義務 を 自覚す る。 更 に、 国家 の安全 が脅威 に晒 され てい る時 や社 会 の公共 の安全 が危 害 を受け た時 、身 を挺 して勇敢 に闘争す る ことで あ
る と言 う。
『引 論』 に よれ ば、 この三 者 は次 元 を異 にす るもの の、弁 証 的 関係 にあ る と言 う。共 産主 義道徳 は、全 ての 国民 に現段階 で要 求す る ことには無理 が あ るが 、社会 主義精 神 文 明建 設 にお いて は有 力 な指導 的作用 を果 たす こ とが で き る。社会 主義 道徳 や社 会主義 的人 道主義 は、それ よ り レベル の低 い下位 の 道徳 で あ るが 、現段 階で は人 民の道徳 水 準 を高め るの に有効 で あ り、社 会 の 道 徳 的気風 を醸成 し、それ によ って共 産主 義道徳 を提 唱す るため の有効 な基 盤 になる。 またそれ は、社 会主 義初級段 階 にあ る中 国が 、発 達 した社 会主義 、 共 産主 義へ移 行す るため の段 階 で あ るの と同様 に、社 会主 義道 徳や社 会 主義 的人道主義 も更 に高 い水準 であ る共産主 義道徳へ 導 くた めの ステ ップで あ る。
これ らは社 会主義 の道徳 体系 であ り、それ ぞれ差 異 は あ るが 、マ ル クス主義
{30)
を指 導 原 理 とす る点 か ら言 え ば 、本 質 は 同 じで あ る と解 釈 して い る。 っ ま り、
この三 者 は道徳原 則 を述べ た もので あ ると言 う。
そ して、 この道 徳原 則 を実践 、運 用 に移す た め に、家庭道 徳 、職 業 道徳 、 企 業道徳 、社 会道 徳 の四っ を具体 的 な行 為基 準 に挙 げ てい る。 それぞれ の道 徳 内容 は逐 一述べ ないが、 この行為 基準 と しての四つ の道徳 と三 っ の道徳 原 則 は互 い に補 完 し統一 的で あ る とす る。 例 えば 、あ る鉄 道局 の職員Mの 例 を 挙 げている。 それ に よると、列 車の車両が火災を起 した際 、乗客 の救助 によ っ
て 自身 は大 き な負 傷 を した が、Mは 生命 の危 険 を顧 みず 人命 の救助 を第 一 に 考 え て行 動 した と言 う。 それ に対 して、無私 の精神 は共 産主 義道徳 の体 現 、 模範 的 な行 動 は社会 主義道 徳 の義務 、他 人 の危 難 を救 った とい う点 で は社会 主義 的人道 主義精 神 の結 晶で あ る とす る。 また、 このMの 行為 は、鉄道 局 の
{31)
職業道徳や 企業道徳 の模範 で もあ り、社 会公徳 を も体現 してい ると評価す る。
っ ま り、一 っ の道 徳行 為 は、道徳 原則 と道 徳基 準 に照 らして見れ ば、相 互 に 関連 してい ると言 うので あ る。 しか し、 この よ う な例 は、別 に共産 主義道 徳 や社会 主義道 徳 を言わ な くと も、資 本主義社 会 で も当然 見聞 で きる。 また 、 行 為基 準 の四つ の道徳 に して も、社 会 主義精 神 文 明論 か ら導か れ る三つ の道 徳 原則 を持 ち出 さな くとも用 は足 りる。で は、何 故 に この よう な道徳 論 を展 開す るので あ ろ うか。 それ は、 マル クス主義 の唯物 史観 や 階級論 に 由来す る
ことは言 う まで もない。
それ によれ ば 、人類 は原始社 会 、奴隷 制度 、封建 制度 、 資本主 義制 度 、社 会主義制度 を経 て、五種 の社会形態 の所 有制 を有 して きた。階級分化が起 こっ た奴 隷制 か ら資本主 義社会 まで は私 有制 が 中心 で あ り、私有制 社会 で は統 治 階級 が被統 治階 級 を搾 取 してきた。 そ のた め、道徳 もそれぞれ の統 治 階級 の 利 益 を擁護 す るため の もので あ った 。そ の間 に あ って、被 搾取 階級す なわ ち 労働者 階級 の道徳 が形 成 され継 承 され て きたが 、そ れ は統 治 階級 の道 徳 と対 立す るもので あ った 。そ して 、社 会 主義社 会 に な って、 それ まで の私 有制 社 会 か ら公有制 へ移 行 し、公有 制 を特徴 とす る社 会主 義道徳 が形成 され た と言
社 会主 義精 神文 明論 に見 る理 想 と道徳(樋 口)135
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う。 っ ま り、各歴 史段 階 では 、それ ぞれ の経済 的基礎 に基 づ い た相 違す る道 徳 が存 在 し、私 有制社 会 では私 有制 の維持 に貢献 し、公 有制社 会 で は無産 階 級 す なわ ち最大 多数 の労働 者 に貢献す る道 徳 で あ ると言 うわ けで あ る。 これ は、 まさに社 会存 在 が社会 意識 を決 定す るとい うマル クス主 義 の唯物 史観 で あ る。86年 決 議 の ④ に も、「道 徳 は経 済的 基 盤 の反 映 で あ る」 とあ る通 り で あ る。
また 、86年 決 議 の ④ で は 、「そ のた め に も 、 国家 の利 益 、集 団 の利 益 、 個 人 の利益 と相 結合 した社 会主 義 の集 団主義精 神 を発揚 させ なけれ ば な らな い」 と言 う。 更 に90年 には李 先念 等 の幹 部 が 「人 民 的利 益 高於0切(人 民
く33)
の利 益 は一切 の もの よ り優 先 され る)」 と主張 してい る。 これ らは公 有制 社 会 の 当然 の帰結 と も言え る。 ここで も問題 に なるのは 、 国家 や集 団す なわ ち 社 会 の利 益 と個 人 の利 益 の関係 で あ る。 換 言す れ ば 、一 応 「社 会価 値 」 と
「自我価値 」 と置 き換 え る こともで きる。社会 主義 理論 に従 え ば、 当然、社 会 の利 益 は個人 の利益 に優 先 され なけれ ば な らないわ けで るか ら、社 会価値 は 自我価値 に優 先 され る。 この点 は理 想 の 問題 にお いて も触 れ たが 、社 会 主 義精 神文 明論 では社 会価値 の創 造 を通 して 自我 価値 を体 現す る ことが 求め ら れ る。っ ま り、社 会価 値 と 自我 価値 の一致 を求め 、そ のた め に社 会主 義 の思 想 教 育 を通 して人 に社 会主 義 的 自覚 を促す わ けで あ る。 私有制 社 会 では、理 想 も道徳 も価値観 もす べ て各 自の階級 の利益 を擁 護す るの に用 い られ るため 、 社 会 と個 人の価値 観 の一致 は不 可能 だが 、公有 制 の社会 主義社 会 で は全体 の
繁栄す なわ ち社 会 の繁栄 が個 人 の理想 で あ り道 徳 なのであ るか ら、社 会価値 と 自我価値 は一致す るこ とが で きる。 一致 でき ないのは、経 済基 盤が不十 分 、 体 制 にお け る欠陥、業 務上 の過 失 な どに よる もので、社 会主 義理論 の不備 に
よる もの では ない とい う ことに なる。
そ こで 問題 に な るのが 、利 の解 釈 で あ り、価 値 の解 釈 で あ る。社 会 主義理
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論 に よれ ぼ、利 の解釈 を経 済 的物質 的 に捉 えて い る。 そ うであれ ば こそ 、全
体 の利 益 は個 人 の利 益 には優 先 され なければ な らな い ことに なる。 そ の点 に 異論 は ない。 しか し、社 会主義 精神 文 明論 に見 られ るよ うに、真善 美 を価 値 観 と し、共 産主 義 の実現 を真 、そ の実現 に貢献す る ことを善 と捉 え るこ とに
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疑 問 が あ る。(こ こで は 美 の 問題 は 取 り上 げ な い)先 に も述 べ た よ う に 、 一 っ は 真 理 と価 値 の 問 題 で あ る。 価 値 と は評 価 主 体 と客 体 と の関 係 を評 価 主 体 が 認 識 し評 価 す る こ とで あ り、 関 係 概 念 で あ る。 一 方 、 真 理 とは 客 体 の事 実 を あ りの ま ま に 表 現 す る こ と で 、 評 価 主 体 の そ の 客 体 に対 して の 評 価 は含 ま れ な い はず で あ る。 例 え ば 、 万 有 引 力 の 法 則 は地 球 上 に お い て は 真 理 で あ る が 、地 球 外 で は適 用 で き な い。 また 、 人 間 が そ の法 則 を利 用 して 、人 間 に と っ て 有 益 な作 用 を もた らす こ とが で きれ ば 、万 有 引 力 の 法 則 は そ の 恩 恵 に あず か る 人 間 に と って は価 値 が あ る 。 っ ま り、万 有 引 力 自体 は客 体 で あ り、 そ れ 自体 が 真 理 で あ る の で は な く、 そ の法 則 が真 理 な ので あ る。 ま た 、 そ の 利 用 厚 生 に あ ず か る こ と に よ って 、始 め て価 値 が 生 じる の で あ る。 確 か に 、 人 間 は 地 球 上 に棲 息 す る 限 り、 万 有 引 力 の影 響 を 受 け る の は 当然 で あ るが 、 評 価 主 体 が そ の影 響 を 意 識 して評 価 す る こ と に よ って価 値 が 生 ず る の で あ り、 意 識 しな け れ ば 評 価 す る こ と も な く、 無 意 識 の 内 に影 響 は 受 け て い て も 、 評 価 主 体 に と って 価 値 が あ る と は 言 え な い 。(も ち ろ ん 、 こ の例 の 場 合 は 、 実 際 の 作 用 と い う点 で 言 え ば 、 評 価 主 体 が 無 意 識 で あ って もそ の 影 響 下 に あ るわ け で あ るか ら、 人 間 に と って 普 遍 的 価 値 を有 す る と言 う こ とは で き る。 こ こ で は 、 あ く まで 評 価 主 体 の評 価 対 象 との 関 係 を 中 心 に述 べ て い る)。
そ の 意 味 で 、 真 理 は創 造 す る こ と はで き な い 。 万 有 引 力 の 法 則 は創 造 で は な く して 発 見 で あ る。 価 値 は 、 評 価 主 体 と客 体 と の 関 係 で あ り、 評 価 主 体 に と っ て利 益 が あ る と評 価 す れ ば 、 そ の客 体 は評 価 主 体 に と って 価 値 が あ る。
しか し、価 値 は関係 概 念 で あ る故 に 、 そ の一 方 に変 化 が あ れ ば 評 価 主 体 に と っ て の価 値 も変 化 す る。 した が って 、 評 価 主 体 の 環 境 の 変 化 や 心 的 状 態 、 自覚 な ど の変 化 に よ って 、客 体 の価 値 も変 化 す る。 そ れ 故 に 、 価 値 は創 造 で き る
社 会主 義精神 文 明論 に見 る理 想 と道徳(樋 口)137
とも言え るので あ る。 っ ま り、価 値 とは評価 主 体 に と って の利 益が 基盤 で あ り、真理 自体 には評価 主体 との利益 関係 が直接 生 じるわ けで は ないので 、真 理 は価値 概 念か ら除外 され なけれ ば な らない。 無論 、真理 に意味が ない とい
うこ とで は な く、価 値概 念 と相違 す る ことを言 うので あ る。
す ると、社 会主 義精神 文 明論 に見 られ る共産 主義 とい う 「真理 」 は、価 値 概 念 の 内に含 まれ ない こ とにな る。 そ うであれ ば 、共 産主 義実 現 の理 想や そ の道 徳 もそ の 「真理 」 を実 現 して い くた めの手 段で あ り、それ 自体 に価値 が 内在 してい るとは言 え ない。 価値 は、評価 主体 が客体 の認 識 を通 じて獲得 す るもので あ るか ら、 ここでは共産 党 の社会 主義精 神 文 明論 を通 じて認識す る 理想 や道 徳 と、そ の評価 主体 で あ る中 国の国 民一人一 人 との関係 が 問題 に な る。 っ ま り、人 に よ って はそ の理 想や 道徳 を価値 と認 め るで あ ろう し、 そ う で ない場 合 も往 々に してあ る ことは 自明の理 で あ る。 それ 故 に こそ 、共産 党 は社 会主 義精 神文 明論 の 中で も思想 ・道徳建 設 を重視 し、社会 主義 の価値 観 を全 民族 が共 有す る ことを奨 励す るので あ る。 しか し、一 時 にそ の理 想や 道 徳 を実現 す るこ とは不 可能 なので、社 会主義 道徳 や社 会主 義的 人道 主義 とい う段 階 を設 け る ことに な る。 す る と、それ らと共産主 義道 徳 との関係 は どう な るのか。社会 主 義精神 文 明論 では弁証 関係 にあ る と言 うが 、 も し共 産主 義 道徳 が真 理で あ るな らば、社 会主 義道徳 や人 道主 義 は真理 で は ないのだ ろ う か。 牧 口価値 論 に従 えば、 その道徳 が そ の時点 で社 会 の繁栄 を築 く最 も有 効 な道 徳 であ ると証 明で きれ ば真理 で あ ると言え るが 、そ の証 明がで きなけれ ば、事実 をあ りの まま に表現 して い るわ けで は ないので真理 とは言 え ない と い うことになろ う。 そ う考 え る と、共産主 義や社会 主義 な どの理 想や道 徳 は、
事実 の証 明 をす ることは不可 能で あ るか ら、真理観 で捉 え るよ りも、む しろ 牧 口が言 う価 値 観 で捉 え るべ きで は ないだ ろ うか。っ ま り、評価 主体 にと っ
て利 益が あ るか否 か とい う観 点で あ る。
そ う捉 えれ ば、評 価主 体 の変化す なわ ち 自覚 の変化 によ って、評価 主体 の
客体 へ の価 値 を創造 す るこ とが で き るわ けであ るか ら、そ の 自覚 を促 す教 育 が重 要 に なる と解釈 で き、 よ り創造 的 な意義 を有す るよ うに なる と思わ れ る のであ る。 また、社 会主義 精神 文 明論 で言 う ように、道徳 に上下 の段 階 を設 け る必要 もない。 っ ま り、個 人 の利 益 は利 、社 会 とい う評価 主体 の利益 は善 で あ るか ら、共 産主 義道徳 、社 会 主義道徳 、社 会 主義 的人道 主義 は社 会 公益 を もた らす 限 り、道徳 的価 値 を有す る と言 え るのであ る。 しか し、繰 り返す が 、道徳 的価値 も価 値 であ るか らには、評価 主体 や客体 の変 化 によ って変化 す る。 その意 味で は、時空 の限界 を抱 え てい るわ けだが 、社会 主義精 神 文 明 論 ではそ の普遍 的基 準 を、歴史 発展 の必 然的趨 勢 、多 くの人 民の利益 、 人類
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の 解 放 と 自由 に置 い て い る。 これ は理 想 の 問題 と同 様 で あ り、 ま た 現 段 階 で
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は 、 そ の基 準 を 生 産 力 の発 展 に 利 す る こ と と して い る。 こ こで注 目 した い の は 、 人 民 の 利 益 と い う点 で あ る。 この 点 は 重 要 で あ る こ とは 言 う ま で も な い が 、す る と、 こ こ で も個 人 利(利 的価 値)と 全 体 利(社 会 的 価 値)と の 関係 が 問題 に な る。 そ して、 そ の 際 に必 要 な の は利 的 価 値 の解 釈 で あ る。 これ が 二 点 目の 問題 で あ る。
牧 口常 三 郎 に よれ ば 、 利 的 価 値 に っ い ては 、 当 然 、 評 価 主 体 の 欲 望 充 足 が 基 本 で あ るが 、 こ の評 価 主 体 の 主 観 概 念 には 四 つ の概 念 が 含 まれ て い る と 言 わ れ る。 そ れ は 、 ① 個 人 の 主 観 の 感 情 的 な存 在 、 ② 評 価 者 の 立 場 、 態 度 、
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③ 人 問生 命 、④ 団体 生命 で あ る。 これ を社会 主義 精神 文 明論 と比較 す る と、
① は社 会主 義精 神 文 明論 で言 う欲 望 充 足 のた め の個 人利 に、② は階級 的利 益す なわ ち各 階級 意識 か ら発す る個 人利 に相 当す ると思われ る。 も っとも、
① と ② は共 に専 ら個 人 の感 情 を基 盤 に して い る点 で は変 わ りが ない。③ に っ い ては 、社 会 主義 精神 文 明論 で は触れ てい な い。 ④ は社 会 の ことで あ り、
社会 の範 囲や定義 の問題 はあ るが社会 主義精 神文 明論で も言及す る。す ると、
大 きな相違 点 は人 間生命 の伸 縮 に関す る利 的価値 を認 め るか否か にあ ると言 え る。 ここが重 要 な点 であ るよ うに思 う。