資本利益率分析を併用した利益図表 (2) : C・V・P
・I分析への1アプローチ
その他のタイトル Analysis of the Return on Investment in P/V Graph (2)
著者 末政 芳信
雑誌名 關西大學商學論集
巻 14
号 4
ページ 271‑294
発行年 1969‑10‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/00021203
(271) 1
資本利益率分析を併用した利益図表(2)
―
C •V ・ P ・ I 分析への 1 アプローチ—目 次 1. iま し が き 2.伝統的な図表分析 3.スペンサー氏の利益図表論
末 政 芳 信
4.バッカーおよびジェーコプセン両教授の利益図表論…………以上前号 5.高木博士の利益図表論………以下本号 6.利益図表で用いられる資本利益率の性質
7.使用資産利益率分析の利益図表への具体的適用 8.む す ぴ
5.高 木 博 士 の 利 益 図 表 論(1)
第3節でスペンサー氏の利益図表,第4節でバッカーおよびジェーコプセ ン両教授の利益図表を取り上げてきた。両者の考え方は若千異るが,いずれ も伝統的な損益分岐点図表上に資本利益率と売上利益率とを曲線として描く 工夫が見られた。しかし,それぞれ曲線として画かれた資本利益率ならびに 売上利益率の動態的変化のパクーンを抽象的に比較論評するのみで,具体的 に,絶対的な比較数値を定量的に示す形ほとられていなかった。この点,高 木博士ほ資本利益率曲線によって描かれた資本利益率扇形の面積を定量的に 把握することにより企業経営の収益性に関する総括的尺度としての健全度を
(1) 高木外次稿 新しい収益性の総括的尺度としての健全度 '国弘員人監修「例解 経営分析実務」第3編第1章(中央経済社 昭和34年4月)。
高木外次稿 新しい各種経済性の測尺としての健全度 '国弘員人監修「例解経営分 析実務」第 3編第 2章(中央経済社 昭和糾年4月)。
2 (272) 資本利益率分析を併用した利益図表(2)(末政)
測定されている。以下,高木博士の論述を見ることにする。
一般に,企業経営の収益性は資本利益率をもって総括的尺度とされるが,
高木博士ほ「それはその期間を一時点に集約表示した値に過ぎないので,損 益分岐点に関係がない。従って単なる資本利益率だけでは企業の収益性の趨
(2)
勢を動態的に把握することはできない。」 とまず問題点を指摘し,そのため に,「ここでは利益図表および資本図表を効使して,その収益性が消減するま での資本利益率の大きさを測定できるはずの新しい2, 3の理論式を誘導し
(3)
た。」 と述ぺられている。
高木博士はこの種の収益性の健全度,すなわち企業の健康度の新しい定義 としては,「経営の全体経済性(収益性)の容量 (capacity)または経済活動の潜
(4)
在エネルギーである。」とし,その要因は経営活動の強度因子(資本利益率)
と経営活動の容量因子(持続経路)とであり,この両者を乗じたものが,経 営の底力すなわち,経済不況に対する抵抗性を表現するものとしての収益性 の健全度=経営活動のエネルギーである。このような収益性の健全度 (4)の 定義づけにより,経営の収益性すなわち,資本利益率を損益分岐点に至るま
(5)
で完全動態的 (perfect‑dynamic)に把握できる。と述べられている。
では,高木博士の収益性に関する総括的尺度としての健全度(4)の具体的 算出方法を見ると,利益図表より売上利益率,資本図表より資本回転率をそ れぞれもとめ,それらを総合化する方法をとらないで,資本利益率扇形の面 積を最初から一挙に積分して求める方法をとっておられる。
(6)
その場合の積分法による公式は高木博士によれば,つぎの如くである。
Kf=固定資本, Kv=変動資本, K=総資本, Kv/S=w=変動資本率 Ro=資本回収点, SRo=資本回収点売上高, v=変動費率, F=固定費, C=
原価, B=損益分岐点,So=損益分岐点売上高, S=正常売上高, P=利益,と (2) 高木外次稿 新しい収益性の総括的尺度としての健全度 '国弘員人監修「例解
経営分析実務」 167頁。
(3) 高木外次稿 前掲稿 '167頁。 (4) 高木外次稿 前掲稿 '169頁。 (5) 高木外次稿 前掲稿 169頁。 (6) 高木外次稿 前掲稿 '173頁。
資本利益率分析を併用した利益図表(2)(末政) (273) 3
すれば,
」=
J S = 1
pdS=J S = 1
S‑F‑vS dSSo/s k s°‘s 訂+ ws—
=
( 1 ; 9 吋 { 1 ‑ 窯 ) ー2.303字
log砂竺ふ 0 / S }
‑2. 303‑‑log l F Kf/S+w
W S So .................. (ii) Kf/S+w‑s ず
この (ii)式が新しい収益性の総括的尺度としての健全度を表わす正統な式 であり,「この式はやや複雑で冗長に見えるがたかだか対数を求める手続き以
(7)
外は全く簡単な算術であって実用性に乏しいものではない。」 と述べられ,
この式により同博士の第2図に示された資本利益率の面積が算出されている。
(8)
念のため,高木博士の第2図および第3図を引用することにする。
高木博士の第2図 高木博士の第3図
A
F
厄
0 SRoS。
上の (ii)式が正統なものであるが,やや手数がかかるので,亜流かもしれ ないが実用向の式として,つぎのような公式が記述されている。また,この 式は同博土の利益図表と資本図表とを重ねた上の第3(9) 図との関係のもとで説 明されている。
(10)
その公式はつぎの如くである。
利益三角形=P(S‑So) 2s2
資 本 台 形 = (K + K f +wSo) (S‑So) 2s2
(7) 高木外次稿 前掲稿 '173頁。 (8) 高木外次稿 前掲稿 173頁。 (9) 高木外次稿 前掲稿 '174頁。 (10) 高木外次稿 前掲稿 174頁u
.................. (a) .................. (b)
4 (274) 資本利益率分析を併用した利益図表(2)(末政)
健全度 (4)=(a) ‑= p
(b) ‑K +Kf+wso ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(iii) S‑So
この(iii)式の結果は第3図における の平均利益 (Pm)と平均資本 2
(Km)との比率であり,この式(iii)は本質的には(ii)とは全く異なり, 精度
(11)
に差が認められるがある程度利用できる,とされている。
さらに,上の(ii)式および(iii)式より, iまるかに簡単なものとして,資本 利益率三角形の面積を求めるつぎの公式を健全度を表わすものとされている。
(12)
その公式は
4= 百 f(1-~)...1 P (, So (iv) この(iv)式により算出される三角形は「一般に扇形との差はたかだか5 %
(13)
であるので,この式も十分な実用価値を有している。」 とされている。
上記三つの式の具体的な適用について,高木博士は「……そのうち,最も 正統な式は式(ii)であり,精度は落ちるが最も実用的なものでは(iv)であり,
また理念は異るが損益分岐点までの売上高の平均における資本利益率を表わ す式(iii)も実用上これらの式の代用となる。最も正確精密を要するときは式 (ii)を用い,拙速をたっとぶときは式(iii)または(iv)を適用するのが良かろ
(14)
ぅ。」 と結論づけられている。また,この健全度の適用領域として,(イ)期間 比較および経営比較への適用,(口)計画設定,たとえば製品組合せ決定,新製 品の追加生産決定への適用をあげられている。
以上の論述は企業経営の全体経済性に関する分析としての健全度の概念で あったが,高木博士はさらにその概念を部分経済性にまで拡張し,各種部分 経済性の新しい尺度として,損益分岐点分析を織り込んだ各種の健全度を13
(15)
組取り上げられている。ここでは,資本利益率,資本回転率,売上利益率に
(16)
関連するもののみを簡単に紹介することにしたい。
(11) 高木外次稿 前掲稿 174頁。 (12) 高木外次稿 前掲稿 175頁。 (13) 高木外次稿 前掲稿 175頁。 (14) 高木外次稿 前掲稿 175頁。
(15) 高木外次稿 新しい各種経済性の測尺としての健全度 '国弘員人監修「例解経 営分析実務」 181一196頁。
(16) 高木外次稿 前掲稿 '186‑189頁参照。
資本利益率分析を併用した利益図表(2)(末政) (275) 5
資本利益率に関するものとして, 1.固定資本利益率の健全度 (LlKf) と, 2. 変動資本利益率の健全度 (LlKv)があげられている。
資本回転率に関するものとして, 3.総資本回転率の健全度(Llt)と, 4. 固定資本回転率の健全度 (Llt')があげられている。
売上利益率に関するものとして, 5.売上高利益率の健全度 (4S)のみが あげられている。
これら各種部分経済性の健全度の具体的算出法として,前述の(ii)式のよ うな積分法と,利益三角形と資本台形から導かれる健全度式すなわち,(iii) 式のような幾何法の二つの公式を展開されている。ここではそれらの公式を いちいち引用しないことにしたい。
以上のような高木博士の利益図表論について,その特徴を要約するとつぎ のようになる。
(1) 収益性に関する健全度概念を展開され,それは静止的なある一定時点の 測定値を問題とするのでなく,損益分岐点図表で意図される動態的な分析 の形で,資本利益率分析を論じていることは優れた長所と認められる。
(2) 健全度を正統に表わすものとして,資本利益率扇形面積の大きさによる としたことに特徴が認められる。前述の如く,資本利益率曲線のパクーン/
だけでは定量的な比較ができなかった。その点,高木博士が積分法によっ て具体的に計算する方法を説明されていることは注目に価する。
(3) さらに,資本利益率扇形の面積を求めることが面伊」な場合にほ,資本利 益率三角形の面積によって健全度を表わそうとしているが,これは前節の バッカーおよびジェーコプセン両教授の第12‑1図の資本利益率が曲線と してではなく,直線として表わそうとしていたものと軌を一にしており興 味がある。しかし,純理論から見れば問題があるので,その性質を理解し た上で簡便な方法としての使用が考えられてよい。
(4) 高木博士は全体経済性に関する健全度と部分経済性に関する健全度の二 つに分けて,その具体的な測定方法を論じられている点は優れている。し かし,この両者の区別は前節のバッカーおよびジェーコプセン両教授の場 合のような全社的総括図表と業務区分図表の区分とは相違していることに
6 (276) 資本利益率分析を併用した利益図表(2)(末政)
注目しなければならない。高木博士の部分経済性の健全度の測定は全社的 な総括分析にも,業務区分別分析にも適用されるものであり,それは全体 経済性の構造的な内容分析を意図したものである。
(5) 健全度 (J)測定の場合における資本利益率は総資本利益率であるか,経 営資本利益率であるか,その他の資本利益率であるかについては,具体的 な論述が見られない。すなわち,使用すべき利益ならびに資本の概念につ いて説明されていない。その点についての詳細な論議が望まれる。
(6) 資本利益率扇形の面積を求める場合に問題となるのは,いかなる売上高 までの範囲にするかである。高木博士はそれを正常売上高までとし,「……
正常売上高とは,種々の制約条件下において最も能率よく操業され製造販
(17)
売し得る平均の売上高 (normalsales)を意味する。」 とされている。しか し,この正常売上高はむしろ予算売上高,実際売上高とは異るものであろ う。また正常売上高は現存のキバシィティ水準を表わすものと考えられる。
もしそうであれば,予算に関する計画を批判する尺度として資本利益率扇 形の面積を求める場合には,正常売上高より予算売上高を考慮することが 望ましいと思う。この点については高木博士の論述は見られない。できれ ば,前節のバッカーおよびジェーコブセン両教授の場合のように,売上高 について現存の利用可能キャパシティー水準と予算水準との両者を示すエ 夫が望まれる。
6.利 益 図 表 で 用 い ら れ る 資 本 利 益 率 の 性 質
一般に,企業経営の収益力を測る総合的尺度として用いられる資本利益率 は,企業内部の具体的な管理目的のためにどのように使用されるか。この問 題を考えることによって,利益図表の中で描かれる資本利益率の意義, 目的 が明らかになると思われる。事実,具体的な管理目的に応じたいくつかの異 なった計算方法によって資本利益率が算定されている。
N.A.Aの調査報告書第35号によれば,資本利益率分析には,つぎの2つ の主要な用途があるとされている。それは (1)期間的資本利益率の測定,(2)
(17) 高木外次稿 新しい収益性の総括的尺度としての健全度 '171頁。
資本利益率分析を併用した利益図表(2)(末政) (277) 7 (1)
新工場の取得などの投資プロジェクトの資本利益率の測定である。この2つ の資本利益率分析は異質のものであるから,別個に論じられなければならな い。利益図表との関連で取り上げられる資本利益率分析は,一般的に前者の 期間的資本利益率の測定に関するものと考えられるので,ここでは,期間的 資本利益率についてのみ取り上げることにする。
期間的資本利益率を使用する具体的な目的はつぎのように考えられる。
(1) 期間総合利益計画ないし予算編成
(2) 期間計画との関係における個別利益計画設定,たとえば有利な製品組合 せ,有利な追加製品の決定,価格政策など。
(3) 予算統制などの統制目的のための業績評価,特に事業部門別などの部門 業績評価。
このような問題について,予算管理との関連で述べられたウェルッシュ教 授のつぎの論述は注目しなければならない。すなわち,
「資本利益率は,経営管理者の綜合的な統制計画に含まれるべき分析用具で ある。資本利益率は,それによって経営管理者の注意が,利用可能な資本で 最高の利益を獲得するというきわめて困難な目的へと,はっきりしかも強制 的に向けられるという明確な利点をもっている。それは,売上高,使用資本,
および費用という 3つの主要な要因について,そのどれを伸展させるかとい う固定観念を許す代りに,それらの組合せに注意を向けるようにするのであ
(2)
る。」 と述べられている。
期間的資本利益率による分析は上の(1), (2)の計画設定過程よりも(3)の統制 過程における強調が見られる。すなわち業績管理ないし業績評価目的のため
(1) N. A. A., Return on Capital as a Guide to Managerial Decisions, Research Report No. 35 (N. A. A., December 1959).
アメリカ会計協会編,染谷恭次郎監訳「経営指栖としての資本利益率」(日本生産 性 本 部 昭 和36年4月) 4頁。
(2) Glenn A. Welsch, Budgeting: Profit‑Planningand Control (New York: Prentice‑ Hall, Inc, 1957), pp. 224‑225.
G.A.ウエルシュ著 諸井勝之助訳絹「企業予算」(日本生産性本部 昭和36年1 月) 236頁。
8 (278) 資本利益率分析を併用した利益図表(2)(末政)
に行なわれることが多い。しかし, C・V・P分析としての利益図表の中で 資本利益率分析を行おうとすれば,やはり,短期利益計画目的が重視されな ければならないのではないかと思う。したがって,特に,利益計画設定ない し予算編成に関連して利用されるべきものとして,資本利益率分析を併用し た利益図表の特徴を考えることができる。いうまでもなく,予算編成から予 算統制への有機的な連結過程から見て,業績評価のための資本利益率分析の 重要性を否定するものではない。
このように,まず利益計画ないし予算編成目的のための資本利益率分析を 考えると,予算数値による資本利益率を算出し,ついで,予算統制ないし業 績評価のために,実績数値による資本利益率を算出することになる。この点,
ウェルッシュ教授のつぎの説明は有益である。
「資本利益率の概念は,予算利益を評価するためのより有意義な方法を提供 する。会社もしくはその下位部門に適用される資本利益率は,純利益を使用 総資産で除することによって求められる。この手続は,歴史的数値に適用さ れて,実現利益率を構成するか,あるいは予算数値に適用されて,予算上の
(3)
または計画上の利益率を構成する。」 と述べられている。
さて,利益管理ないし予算管理のための資本利益率を取り上げる場合,ま ず資本利益率そのものの構造を分析的に考える必要がある。一般に,資本利 益率といわれるものは,貸借対照表の借方資産の部に関連する投資資産利益 率ないし使用資産利益率と同じ意味であるかどうか,またそれと相違すると すれば,どのように使い分けされるかが問題である。それは資本利益率を広 義に解すれば,使用資産利益率と,貸借対照表貸方の部に関連する利益率,
たとえば, 自己資本利益率,資本金利益率を含んでいる。このような広義の 資本利益率は使用総資産利益率との関係で,つぎのように分解される。
利益 売 上 高 茎伶資産 利 益 売上高 総資産 自己資本 = 自己資本 売上利益率x資産回転率x自己資本比率=自己資本利益率
使用総資産利益率
(3) Glenn A. Welsch, op. cit., p. 219.
G.A.ウエルシュ著 諸井勝之助訳編「前掲訳書」231頁。
資本利益率分析を併用した利益図表(2)(末政) (279) 9
本来,利益計画ないし予算編成のための資本利益率の基本的な考え方は,
経営管理者それぞれの利益管理責任区分にある資産がどのように有効に使用 され,それが利益をあげているかを見ることであるとすれば,使用資産利益 率を中心にして資本利益率分析を考えなければならない。これはつぎのウェ ルッシュ教授の論述,ならびにN.A.Aの調査報告によって明かである。
ウェルッジュ教授によれば,「経営管理の目的にとっては,資金源泉は使用 資産利益率を測定するにあたって重要ではない。重要な点は,特定の経営管 理者に委託されたすべての資金が,いかに有利に使用されているかというこ
(4)
とである。」 と述べられている。
また, N.A.Aの調査報告によれば,「要するに,資本利益率は内部管理目 的のためには,資産にもとづいて利益率を計算するほうが,財務管理の影響....
を受けないで,営業活動の業績を測定できるから,よいと考えられているの
(5)
である。」 とされている。
このように,狭義の利益計画ないし予算編成においては,貸借対照表借方 の部に関連した使用資産利益率を中心にした分析ということになる。では,
貸借対照表借方の資産をどのように考えるべきであろうか,それほ,使用資 産利益率を期間総合的利益計画に関連した全社的総括分析に使用する場合と,
個別利益計画に関連した業務区分別の分析に使用する場合とに区別して考え ることができると思う。前者の場合には,全社的使用総資産利益率,全社的 使用経営資産利益率が用いられ,後者の場合には,業務区分別使用総資産利 益率,業務区分別使用経営資産利益率,業務区分別直接使用資産利益率,業 務区分別直接使用固定資産プラス正味運転資本利益率などが用いられる。
つぎに,それら使用資産利益率の具体的な算定に関する問題点を概説する ことにする。
使用総資産利益率算定公式の基礎になる分母は,貸借対照表借方の総資産
(4) Glenn A. Welsch, op. cit., p. 222.
G.A.ウエルシュ著 諸井勝之助訳編「前掲訳書」 234頁。 (5) N. A. A., op. cit.
アメリカ会計協会編,染谷恭次郎監訳「前掲訳書」 11頁。
10 (280) 資本利益率分析を併用した利益図表(2)(末政)
である。その分子は税引前純利益,税引後純利益,金融費用プラス税引前純 利益のいずれかが用いられる。それぞれ特徴はあるが,税引前純利益が比較 的多く使用される。
使用経営資産利益率算定公式の基礎になる分母は,貸借対照表借方の総資 産から,遊休資産,建設仮勘定,投資資産等を除いた生産・販売の営業活動 に基本的関係ある資産額であり,また,その分子は営業利益が用いられる。
製品,工場,営業所などの業務区分別の業務区分別使用資産利益率の算定 についてある。全社的な総括的使用資産利益率の算定の場合とは異った重要 な問題を考えなければならない。それは矢野氏の指摘によると,つぎの4つ の課題が解決されなければならないことになる。
「1. 使用資産の適正な配分 2. 原価の公正な配分
3. 部門間の取引の適正な価格設定
(6)
4. 固定資産の適切な評価」
矢野氏の指摘による第1,4の課題は算定公式の分母の額の算定に関する ものであり,第2, 3の課題は分子の額の算定に関するものである。
さらに問題になるのは分母の算定に関連して共通資産の配分,また分子の 算定に関連して共通費の配賦をどのように取扱うかである。これは業務区別 使用経営資産利益率,業務区分別使用総資産利益率を算定するとすれば,・必 ず問題になる点である。これに対する基本的な考え方としては,当該業務区 分について直接利益管理責任を負う範囲の資産額をまず把握すべきである。
共通資産はその配分のために妥当な根拠が存在するときのみ配分されるべき であり,恣意的な配分によって各業務区分の比較がゆがめられてはならない。
それに関連して,共通費の問題も共通資産の配分に準じて考えなければなら ない。したがって,本部費等の共通費の配賦についても基本的には慎重でな ければならない。このような困難な問題にする1つの解答を表わしたものが,
ある意味では業務区分別直接使用資産利益率の活用ということになる。では,
(6) 矢野宏稿 資本利益率による業績評価と問題点 '同志社商学 第20巻 第5• 6 号(昭和仏年3月) 175頁。
資本利益率分析を併用した利益図表(2)(末政) (281) 11
どのような業務区分別使用資産利益率を使用すべきかの問題は,個々の使用 資産利益率の算定の対象となる業務区分が,企業におけるいかなる管理組織 ならびに責任会計組織と結びついているかによって決められなければならな い。それとの関連をぬきにして具体的な使用資産額ならびにそれに関連する 利益額の決定は困難である。しかし基本的には,その分母の資産額と分子の 利益額とは,それぞれ性質が相応して考えられる意味あるものでなければな らない。このように考えると,業務区分別使用資産利益率をどのように利用 するかの結論は,つぎのN.A.Aの報告が参考になる。それは,
「経営管理上の責任をもつ各部門の資本利益率を計算する場合には,……か れらが寵接管理している資本と費用についてのみ責任を課することがよいと 思われる。すべての資本と費用を配分することが必要である場合には,各部 門が直接使用している資本に対する製造利益率と,総資本にたいする総利益 率の 2つを計算してもよい。これによって,個々の部門の業績も測定できる
(7)
ことになる。」 とされている。
結局, N.A.Aの報告のように,業務区分別直接使用資産利益率と業務区 分別使用総資産利益率の両者を有効に併用することが望ましい。この点,第 4節のバッカーおよびジェーコプ七 ノ両教授の第12‑7図は,このような2 つの使用資産利益率を描いた具体例として高く評価してよいと思う。
7. 使 用 資 産 利 益 率 分 析 の 利 益 図 表 へ の 具 体 的 適 用
C·V•P 分析の展開としての利益図表との関連で用いられる資本利益率
分析の性質を前節で見てきたが,その場合,資本利益率をまず使用資産利益 率として把握しなければならない。ここでは,全社的な総括利益図表におけ る具体的な使用資産利益率の展開と,業務区分別利益図表における具体的な 使用資産利益率の展開とに分けて考えることにしたい。
まず,全社的な総括分析は使用総資産利益率を中心課題とし,その図表化 をつぎの4つの課題に分けて考えることにする。
(7) N. A. A., op. cit.
アメリカ会計協会絹,染谷恭次郎監訳「前掲訳書」 38頁。
12 (282) 資本利益率分析を併用した利益図表(2)(末政)
I.使用資産利益率,売上利益率,資産回転率,総費用利益附加率の図示 II.使用資産利益率曲線と売上利益率曲線とを描いた利益図表の作成 III.資本利益率扇形と資本利益率三角形との関係の明示
IV. 資産ないし資本利益図表の作成
以上の課題を具体的に取扱うために,第2節と同じ数値を使用したつぎの 第4表の例示を中心にして説明することにしたい。
第 4 表
売上利益 使用資産利 益附加率率 資産回転率溢率
△ 100%1 o I o △46.87%
△ 50% △100%1 29. 41%△29.41%
△ 20% △25%1 55.55%△13.88%
△9.09% △ 10%1 67.56%△6. 75%
o I o I 78. 76%
。
7. 69%1 7. 14%1 89. 74%1 6. 41%
14. 28%1. 12. s%1 100 %I 12. s%
20 %I 16. 66%1. 109. 1s%I 1s. 3%' 25 %1 20. 00%¥ 119. 04%1 23. 8%
I.売上高をグラフ上の水平軸に独立変数として表わし,第4表上の総費用 利益附加率,売上利益率,資産回転率,使用資産利益率を従属変数として垂 直軸に表わしたものが,つぎの第 5図である。この図はそのままでは一般に いわれる実数を中心とした構造分析としての伝統的な利益図表の形にほなっ ていない。これは比率分析の図表化である。
グラフ上で表わされた各比率の曲線ほ,また数式によって表わすことがで きる。もし,売上利益率曲線を数式によって示すと,つぎのようになる。さ
らに,売上利益率をY,売上数量をXと仮定すれば,
S‑V‑F y= s
sx‑V ‑F x‑立 ‑E
s s
= SX =
s‑V‑‑F
= S X
資本利益率分析を併用した利益図表(2)(末政)
第 5 図
(283) 13
. / ︑ ー
.
ー•
//
燈 ` ゃ 一20%10%00%90%80%70%60%50%40%30%20%10%。10%20%30似~1 1
濠
`
︐ ⑥
︐ 恣
︐ 恐
1OO奴0網 400 500 600初0800 900 1,000 売上高
また,使用総資産利益率を求める公式はつぎのようになる。もし,使用総 資産利益率をYとすれば,
S‑V‑F y =
Fa+wS
= s x ‑ V x ‑ F x s‑V‑‑F Fa+wsx = Fa
X +ws
14 (284) 資本利益率分析を併用した利益図表(2)(末政)
飢r F x‑‑‑=‑‑‑‑s s Y= Fa
—s +wx
したがって,数式において,売上利益率曲線と使用総資産利益率曲線との 交点を求めると,つぎの公式によって算出することができる。
S‑V‑F S‑V‑F s = Fa+wS sx‑vx‑F s― 切 ーF
sx = ‑ Fa+wsx
具体的に計算するために, F=300,000, v=5, s=lO, Fa=640, 000, w=O. 2 とすれば,つぎのようになる。
10x‑5x‑300, 000̲ 10x‑5x‑300,000 10z = 640, 000 + 0. 2 X !Ox 0. 5x‑30, 000 ̲ =‑5―300,000
X ‑640, 000+2x
(0. 5←30,000) (640, 000+2x) =x(5x‑300, 000)
320,000‑炉‑640,000 x 30, 000‑60, OOOx = 5炉ー300,000x 4炉ー560,000x+640, 000 X 30, 000=0
吋
OO炉 ー 鬼3 64,000=0 したがって,18.666士/18.6662‑46,400
X = ̲75
2 1
7,500
= 18.666土V18.6662‑341.333
砂 団
18.666~2.666
叶 祁
X = 16x3, 750
1 =60, 000 または,
= 21. 333 X 3, 750
1 =80, 000
その結果,第5図における BE点が60,000コであり, D点が80,000コであ ることがわかる。
このように,図表によっても,数式によっても同じ数字が算定される。
資本利益率分析を併用した利益図表(2)(末政) (285) 15 II. 使用総資産利益率曲線と売上純利益率とを C•V·P 分析における実数 を中心とした構造分析としての性質をもつ伝統的な利益図表(損益分岐点図 表)上に描けば,つぎの第 6図のようになる。
第 6 図 1,000
売上・費用 800
600
300
゜
‑300
゜
200 400 60030%
20%
10%
゜
一,‑10%
‑20%
‑30%
800 1,000 売上高 640 680 720
I
760 ~00 840 使用賽産
この図表は,全社的な総括図表であるから,使用総資産利益率曲線と売上 純利益率曲線を描いたが,両者の利益率は資産回転率を介して相関関係をも
っているので,分析的に見て有益である。 しかし, また使用経営資産利益率 曲線と売上営業利益率曲線の両者を描く方法も有用である。
率曲線を描くだけでは,予定売上高ないし予算売上高におけるそれぞれの利 しかし,両利益
益率が, どれだけの比率になるかを,予算売上高に対する予算利益の金額と ともに示すことになるだけである。さらに,使用資産利益率曲線の曲線パク ーンは明らかにできるが,他の利益率曲線との定量的な比較はできない。
16 (286) 資本利益率分析を併用した利益図表(2)(末政)
さらに第2節の伝統的な図表分析で取り上げた相関図表,すなわち利益図 表と資本図表の連結により,目標資本利益率を可能ならしめる利益計画達成 点を求める利益率図表に近いものとして,つぎの第7図を描くことができる。
第 7 図 130%
120%
『
10%転率1 0 0 % 90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
‑30%‑20%‑10% 0 10% 20% 30% 40% 50%
40o 50o 6bo 袖~100 売上利益率
1,000 売上高
この第7図は垂直軸に資産回転率,水平軸に売上利益率をとり,それらを乗 じたものとしての使用資産利益率をプロットしたものである。右下りの目標 等量使用資産利益率曲線と予算数値によって描かれる右上りの予定使用資産 利益率の交点が利益計画達成点である。この例示では, 15%の目標等量使用 資産利益率曲線と予定使用資産利益率曲線との交点Aほ,第3図利益計画図 表上のT点,第4図相関図表上のA点.および第6図のT点と同じ大きさの
資本利益率分析を併用した利益図表(2)(末政) (287) 17 売上高および売上利益率を表わしている。この図表も2つの比率曲線の交点 を求めるといった点では,一種の相関図表である。第 4図の相関図表と全く 異るのは資産回転率を重視して描いたことであり,その反面,売上高が水平 軸の下に附属的に示された点である。資産回転率を重視する場合には,この 第 7図もその利用価値は高いと思われる。
III.使用資産利益率曲線の曲線パクーンにより,また一定売上高における利 益率の大きさにより比較するだけでなく,面積概念を使用して定量的な比較 分析が行なわれる。これは高木博士によって展開された理論であった。ここ では,第5節で引用した高木博土の公式を,具体的な例示にあてはめて問題 を考えることにする。
(1) まず考えなければならないことは,損益分岐点売上高から正常売上高 ないし現存の可能キャパシティ売上高までの間の使用資産利益率扇形の面積 を計算するか,損益分岐点売上高から予算売上高までの間の使用資産利益率 扇形の面積を計算するかの問題である。利益計画設定ないし予算編成目的か らは,後者の予算売上高までの使用資産利益率扇形の面積を計算することが 基本的であると思う。しかし,バッカーおよびジェーコブセン両教授の図表 分析のように,現存の可能キャパッティーと予算売上高との対比も有益な分 析である。したがって正常売上高ないし現存の可能キャパシティー売上高ま での使用資産利益率扇形の面積を計算することが副次的に望ましいと思う。
具体的計算は計算の便宜上と,図表の見やすさといった点から,理論的に は副次的であるが,損益分岐点売上高 (600,000円)から正常売上高(1,000, 000円)までの間の使用総資産利益率扇形の面積を,高木博士の公式によっ て計算すると,つぎのようになる。
4= 1‑0.5
~{o.
2.(1‑0. 6) ‑2. 303 x 0. 64 log‑2. 303 x ~lQg 0. 3,̲̲
. o
64+0. 2 0. 2 0. 64+0. 2X0. 60. 64+0. 2 O. 64+0. 2X0. 6}
= 晶{ o .
08‑1. 47392 log粽 } ー
3.4545 log器
=12. 5 {0. 08‑1. 47392 X 0. 0433} ‑3. 4545 X 0. 0433
=0. 20223825‑0.14957985