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製品組合せに対する貢献利益分析の適用

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製品組合せに対する貢献利益分析の適用

その他のタイトル Application of Contribution Profit Analysis to Product Mix

著者 末政 芳信

雑誌名 關西大學商學論集

12

3

ページ 240‑275

発行年 1967‑08‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/00021484

(2)

22 (240) 

製品組合せに対する

貢献利益分析の適用

末 政 芳 信

1. は し が き

今日,近代経営の企業においては,単に全社的に一括して業績を把握する だけでなく,各市場別,各製品別等の業務区分にもとずいた業績を把握し,

それが全社的にどのような貢献度合を示めすかを明確に把握することが必要 とされている。例えば,多品種製品を製造・販売する企業においては,いか なる製品をどれだけ製造・販売すべきか,特にどの製品に力を入れるべきか,

又どのような製品組合せによれば,総合的に見て望ましいか等を決定するこ とが重要な問題となっている。そのためには,まず各製品別に得られる収益 とそれに明白に跡づけることが可能な費用及びその差額としての利益を把握 しなけれぼならない。

この種の問題は広い意味での C•V•P 関係の分析によって有効に取扱われ る。これは各製品毎の原価・営業量•利益関係を明確に把握し,それによっ て得られた数値を利用して製品組合せが考慮される。しかし,その場合 C

V•P 関係における利益の概念をどの様な意味をもつべきものと解するかが大

きな問題である。もし各種の利益概念が考慮されるとすれば,その中でどの 様な利益概念を使用することが妥当であるかを注意深く見究めなければなら ない。その場合の利益概念としては,通常純利益概念よりも,むしろ広義の 貢献利益概念が重要視される。広義の貢献利益概念は,利用目的並びに業務

(1) 

区分の性質によって種々の概念に分けられるが,ここでは利益計画目的のた (1) ①青木茂男著「貢献利益法」黒沢清編新しい会計学第4巻「責任会計」(日

本経営出版会昭和427 113 122頁参照。

(3)

製品組合せに対する貢献利益分析の適用(末政) (241) 23  めの製品組合せ決定に関する問題として,限界利益型及び製品個別固定費控 除後の貢献利益の両者を考慮することにし,その二つの利益概念を使用した 場合,製品組合せにおいてどのような分析が行こなわれるかを計数的に考察 したい。一般的には,限界利益概念を中心にした製品組合せのための分析が 取りあげられているので,ここでは,特に製品個別固定費控除後の貢献利益 概念を中心にした製品組合せのための技術的分析を重点的に考察したい。と りわけ,限界利益による分析とこの製品個別固定費控除後の貢献利益による 分析ほどのように相違するかが興味ある課題である。この課題を C•V•P 関 係の主要な分析手法である損益分岐点分析並びに L•P 分析手法によって解 明してゆきたいと思う。それが又製品組合せ決定問題に対する最も有効な分 析手段であると思われるからである。尚ここでは,製品組合せ問題を複雑に しないために,製造高と販売高が相違しないという前提のもとで,各製品の 製造。販売の組合せを考えることにしたいと思う。勿論,製造高と販売高は 一致しない場合の製品組合せ問題は重要であり,又積極的に取組むべき課題 であることはいうまでもないが,ここでは,製品個別固定費が製品組合せ問 題にいかなる重要性を有するかを探ぐることを主目的としたいためである。

2.  製 品 組 合 せ 選 択 に 利 用 さ れ る 利 益

製品組合せ (Productm江)の問題は多品種の製品を製造・販売する企業に とって主要な意思決定問題である。そのため,種々の角度からその問題に対 するアプローチがなされる。一般的にはマーケッティング・マネジメントの

Raymond P.  Marple,  "Management Accounting  Is  Coming of Age,"  NAA  Management Accounting, Vol. XLVIII, No. 11  (July, 1967), pp. 316.

William L. Ferrara, "Responsibility Reporting vs. Direct Costing ‑ Is  There  Conflict?" NAA Management Accounting, Vol. XLVIII, No. 10 (June, 1967),  pp. 4354. 

I. Wayne Keller, "Controlling Contribution,"NAA ManagementAccou 'f1,Vol.  XLVIII, No. 10 (June, 1967), pp. 2132. 

William L. Ferrara, "The Contribution Approach," NAA bulletin, Vol. XLVI,  No. 4 (December, 1964), pp. 1929. 

(4)

24 (242)  製品組合せに対する貢献利益分析の適用(末政)

観点からなされる。マーケッティング・マネジメントの広い視野から製品組 合せ問題が取りあげられる場合,小川教授が次に指摘されるように,「……こ のように差別化,多様化,専門化の計画の結果としてプロダクト・ミックス

(1) 

が決まるものと考えることが出来るが,……」。 ここでは,このようなアプ ローチをとらないで,小川教授が前文に引継いで,「これとは別に,企業のプ ロダクト・ミックスそのものを計画の対象として分析する手法も従来から存 在し,線型計画法の発展は,この分析法を大きくクローズアップさせたと言

(2) 

いうる。」 と述べられているような視角からこの問題を考えたい。すなわち,

製品組合せそのものの具体的な選択技術ないし計算の方法を考察するのが本 稿の目的である。したがって管理会計的なアプローチによる製品組合せ決定 の問題である。

では具体的な製品組合せを計画の対象として分析する方法にはどのような

(3) 

ものがあるか,小川教授によれば,つぎの方法をあげられている。

1.簡単な方法

(1)  各製品の売上高に占める比率を分析する方法

(2)  各製品の寄与率に基づいてプロダクト・ミックスを分析する方法 (3)  利益余裕率 (Marginof safety ratio)による方法

(4)  企業のプロダクト・ミックスの八分類による分析方法 2.線型計画法

小川教授は,これらの方法についてそれぞれ具体的に説明をされている。

例えば,(1)の方法については売上占有度によって分析するが,売上利益率等

(4) 

の利益情報が得らればさらに有効であると述べられている。

私見によって,これらの方法を大別すれば,

日各製品の利益を要因として分析する方法

各製品の売上高基準等の非利益要素を要因として分析する方法

(1) 小川英次著「生産計画論」(KK河出書房新社 昭和424 98 (2) 小川英次著「前掲書」98

(3) 小川英次著「前掲書」 98105 (4) 小川英次著」前掲書」 98

(5)

製品組合せに対する貢献利益分析の適用(末政)

(一)及び口の両要因を併せて分析する方法 の三つに分けることが出来ると思う。

(243) 25 

企業の利益計画,とりわけ予算絹成過程における製品組合せの選択決定に は,ゃしまり日の利益を要因とした分析方法が中心的課題になると思う。上記 の小川教授のあげられた方法のうち, (2)の各製品の寄与率 (P•V 比率)に よる方法, (3)の各製品の利益余裕率 (M•S 比率)による方法, 及び2の線 型計画法ほ,具体的な教授の例示によっても明らかな如<,利益を要因とし た分析方法であると思う。小川教授の(2)の寄与率による方法及び(3)の利益余 裕率による方法は,通常,管理会計並びに原価計算では損益分岐点分析とし て取りあげられる。したがって,この両者は本稿において損益分岐点分析に よる方法として考察することにしたい。また,小川教授による 2の線型計画 法も,通常,限界利益ないし変動利益を使用する分析方法とされているの で,本稿でも同じように,貢献利益を用いる L•P 計算による方法として考

(5) 

察することにしたい。その基本的な理由は前に指摘したように,損益分岐点 分析と同じ会計的な意味における限界利益を使用する L.P 計算ほ C•V•P 関係の分析手法の一つとして考えることが出来るからである。すなわち,製 品組合せ問題は広い意味での C•V•P 関係の分析によって有効に取扱うこと が出来,その C•V•P 関係の分析手法として,最も有用な損益分岐点分析と L•P 計算による分析をあげることが出来るからである。したがって,本稿で ほ,製品組合せ問題の有効な C•V•P 関係による分析方法として, 損益分岐 点分析による方法及びL.P計算による方法を論じたいと思う。

C•V•P 分析手法は, 或る意味では,利益分析法ともいわれる。一般的に ほ,損益分岐点分析と密着した P/V分析の意味で使用されることも多い。

しかしながら,広い意味で利益分析法が取りあげられる場合にほ,(一)純利益 (Netprofit approach)と,口貢献利益法(Contributionapproach)に分け

られる。

純利益法の意味について,山辺教授によれば,「純利益法は従来一般に行こ

(5) 拙稿、原価計算方式と L•P の関係(2)-C•V•P 分析への一考察_ヽ関西

大 学 商 学 論 集 第12巻第2号(昭和426 102‑103

(6)

26 (244)  製品組合せに対する貢献利益分析の適用(末政)

なわれてきた方法であって,これは全部原価計算の見地にもとづくものであ る。したがって,これを全部原価賦法 (fullallocation approach)と呼ぶこと

(6) 

もある。」 と述べられている。このような純利益法は総ての原価を製品単位 に配賦した総原価を売・上収益から差引いた製品単位当りの純利益思考をもっ て,各業務区分別の意思決定資料を作成することである。しかし,これはマ

'(7) 

ープル氏の見解を適確に要訳された山辺教授の説明によれば,

「厳密に吟味すれば,原価配賦は一種の便宜手段である。すなわち,それは 一定の仮定のもとに共通費を直接費に変じ,固定費(キャパシティ・コス ト)から変動費率を作りだすために会計担当者たちがあみだした一種の考案 である。それはコストを収益に対応せしめるためには,すべての製造原価を 製品単位に割掛ける必要があると云う誤れる思考のため,とるに至ったとこ ろの一種の虚構(fiction)である。原価配賦は,原価総計と原価配分の対象と なる原価計算単位数との関係についての仮定と費用率を決定する際の操業度 についての仮定とを含むものであるから,誰がそのような仮定を行なうか,

また.誰が費用率決定のための諸要素を選ぶかに依存する。それゆえ,原価配 分は原価のマニュビュレーションであって,原価の会計ではない。原価配賦 は一種の便宜手段である。したがって,この手続の継続的使用は,単にその 必要が感ぜられ,かつ他に満足な代替的方法が見つからないかぎり,正当化 されるにすぎない。原価配賦の手続は多年にわたり引き続き行なわれて来た。

その理由はそれが論理的であるとか,適切であるからと言うのでなく,それ

(8) 

以上有益な代替的方法が見当らなかったからである……」と述べられている。

したがって,このような恣意的な仮定にもとづいて,原価配賦された結果得 られる純利益数値は,その仮定が予想と反するときには純利益数値も変化し,

それによって各業務区分の利益を比較することが無意味なものになってくる。

このような原価配賦が意思決定問題に無用であることについてケ¥:r.ラー及び (6) 山辺六郎稿:::管理会計の報告としての貢献利益法::: 会計第88巻第1号(昭和

407 13

(7) ・ Raymond P. Marple, "The Relative Contribution Approach to Management  Reporting," NAA Bulletin, Vol. XLIV, No. 10 (June, 1963). 

(8) 山辺六郎稿:::前掲論文::: 17

(7)

製品組合せに対する貢献利益分析の適用(末政) (245) 27 

フェララ両教授はつぎのように述べている。

今日の複雑な事業活動を認識するとき,原価配賦 (costallocation)の問題 が急速に前面に押し出されてきた。跡づけ不可能な原価 (nontraceablecosts) 

(これはしばしば共通又は連結原価として考慮される)を取扱う最も有用な 方法として,多くの目的にとってこれらの原価を配賦する必要がないため,

これら原価の配賦を意図せぬ(forget)ことである。このコメントは奇妙に思 えるかも知れないが,意思決定及び業績評価の目的のために全く現実である

(9) 

と述べている。

このように,意思決定目的並びに業績評価目的の立場から,原価配賦の結 果得られた純利益数値は好ましくないのである。

貢献利益法の意味について,同じく山辺教授によると,「貢献利益法は直接 原価計算の見地にもとづく方法であり,……この貢献利益法は,各業務区分 の相対的貢献利益額を表示するものであるから,また相対的貢献利益法 (re

(10) 

lative  contribution  approach) とも呼んでいる。」 と述べられている。この ように,貢献利益法は基本的には直接原価計算制度と結びつけて考えられる。

しかし,全部原価計算方式のもとにおいても,制度的な計算の外で,直接原 価分析を行うことによって貢献利益法を適用することは可能である。

さて,貢献利益並びに貢献利益法の概念についてはどのように考えられる か,種々の見解が見られるので若干調べてみることにする。

青木茂男教授によれば,「貢献利益は利益概念の一つであって,この貢献利 益概念を用いた計算技術が貢献利益法である。まずこのような概念と技術の

(11) 

区分が明確にされねばならない。」 と述べられ,つづいて,「……まず貢献利 益法の表示様式を中心に,いくつかの様式例を紹介し,かつそれについての コメントを付することによって,もっと貢献利益法そのものの理解に使する

(12) 

こととする。」 と述べられ,貢献利益法をつぎの三つのタイプに分けられて

(9) I. Wayne Keller and William L. Ferrara, Management Accounting for Profit  Control (New York: McGraw‑Hill Book Co., 2nd. ed.,  1966), pp. 660661.  (10)  山辺六郎稿、前掲論文::: 13

(11)  青木茂男著「前掲書」 113

(8)

28 (246)  (13) 

いる。

製品組合せに対する貢献利益分析の適用(末政)

限界利益型貢献利益法 回避可能費控除型貢献利益法 個別固定費区分型貢献利益法

ケェラー及びフェララ両教授によれば,何に対する貢献(contributionto...)  か,によって貢献利益はつぎの四つに分けられている。 (14) 

(1)  他の人によって統制可能な原価 (costscontrollable by others)すなわ ちそこでの統制不能原価,及び利益に対する貢献

(2)  意思決定によって影響されない原価及び利益に対する貢献 (3)  共通費及び利益に対する貢献

(4)  固定費及び利益に対する貢献

また他の個所において,会計のタイプとの関係で貢献の意味をつぎのよう

(15) 

に使い分けている。

責任会計 (ResponsibilityAccounting)のときは:::統制::: (control)が重 要であるから,(1)の他の人によって統制可能原価及び利益に対する貢献の概 念が用いられる。

意思決定会計 (DecisionAccounting)のときは:::変化::: (change')が重要 であるので,(2)の意思決定によって影響されない(変化しない)原価及び利 益に対する貢献の概念が用いられる。

直接原価計算(DirectCosting)のときは,原価は変動費対固定費に分けら れ,さらに跡づけ可能固定費対共通固定費に分けられる。したがって,前者 の分類のみのときは,(4)の固定費及び利益に対する貢献の概念,後者の分類 までなすときは(3)の共通費及び利益に対する貢献の概念も併用される。

上のように,貢献利益は,種々の活用目的,ならぴに会計のタイプによっ ていくつかに分類されるが,製品組合せ選択決定問題のために,貢献利益は

(12)  青木茂男著「前掲書」 113 (13)  青木茂男著「前掲書」 113 122

(14)  I. Wayne Keller and William L. Ferrara, op.  cit.,  p.  722.  (15)  I. Wayne Keller and William L. Ferrara, op.  cit.,  pp. 713716. 

(9)

製品組合せに対する貢献利益分析の適用(末政) (247) 29  どのように考えらるべきかが問題となる。その場合の貢献利益は上のケェラ ー及びフェララ両教授の分類による (2)の意思決定により影響されない原価及 ぴ利益に対する貢献額であり,またそれは(3)の共通費及び利益に対する貢献 額が有用な概念と思われる。 (4)の固定費及び利益に対する貢献額のみでは通 常限界利益ないし変動利益といわれるものであり,業務区分別の比較利益と しては不十分である。

この点,製品種類別損益計算書において,具体的に限界利益と上の(2)及び (3)の意味における貢献利益との関係については山辺教授の論述によって明白 である。山辺教授によれば,

「……各製品種類の正味売上高から変動費(売上直接原価)を差引くことに より限界利益が算定され,限界利益から個別固定費(各製品種類に直課され る短期キャパシティ• ::iスト)を差引くことにより貢献利益が算定される。

各製品種類の限界利益は会社全体のキャパシティ・コストの回収と利益の産 出に対する貢献額を示めし,……また各製品種類の貢献利益は共通固定費の 回収と利益の産出に対する貢献額を示めし,したがって各製品種類の売上貢 献利益率は製品種類の組合せその他の意思決定の指標となる,これに対し共

(16) 

通固定費はこの場合意思決定には関連がない。」 と述べられている。

このように,山辺教授の優れた論述によっても明らかな如く,製品組合せ には個別固定費控除後の貢献利益が有益な利益概念である。しかし,その場 合,個別固定費の性格ないし,意味について十分な吟味が必要である。製品 種類別損益計算書における個別固定費の性質について,また山辺教授の論述 を見ると,

「……専らある製品種類の製造,包装等のみに従事する部門があり,またあ る製品種類のために支出する販売費があるが,……この種の製造部門の固定 費およびこの種の販売固定費もまた各製品種類に直課することができる。こ れらの費用は,当該製品が存在しないならば発生しない製品種類の個別費で ある。……右に述べたような,ある製品種類にとり専用の加工部門・包装部

(16)  山辺六郎稿:::マックファランド著「管理会計上の諸概念」の解説H:::産業経理 第26巻第12号(昭和421 45

(10)

30 (248)  製品組合せに対する貢献利益分析の適用(末政)

(17) 

門における設備の減価償却費,保険料および税金は個別固定費である。」 述べられている。

このように,製品組合せ問題における個別固定費は,その特定製品を製造

・販売しないときは回避できる原価であり,その特定製品に明確に跡づける ことが出来,かつその製品の固有の固定費でなければならない。さらに理論

(18) 

的,分析的に考えれば,個別固定費を性質別に分解しなければならない問題 が生ずるが,ここでは,製品組合せの計算技術的アプローチを主目的として いるので,個別固定費を分解しないことにする。しかしながら,このような 個別固定費の性格を把握し,共通固定費とは明確に区別しなければならない

と思う。

以上のような考察をふみまえて,製品組合せ選択決定のために,限界利益 型貢献利益並びに個別固定費控除型貢献利益がいかに有用であるか,節を改 めて具体的な計算数値を使用し,損益分岐点分析並びに L•P 計算による分 析をすすめてゆきたい。

3.  損 益 分 岐 点 分 析 に よ る 方 法

多品種の製品を製造・販売している企業では,各品種の限界利益率が異っ ているのが通例であるが,この場合,損益分岐点分析ほどのようになされる か,その主要なものとして,国弘教授によれば,基準法,平均法,個別法の

(1) 

三つがあげられている。しかし,限界利益ないし限益利益率を使用して,具 体的に,品種組合せ選択をなす場合の方法として,平均法と個別法の例示を 中心にして説明をすることにする。本稿では,限界利益概念の使用のもとで のあらゆる多品種企業における損益分岐点分析の諸方法を示すことが目的で (17)  山辺六郎稿、管理会計の報告方法としての貢献利法ヽ会計第88巻第1号(昭和

407 24

(18)  個別固定費は短期キャパシティ・コストに属するものと長期キャパシティ・コ ストに属するものとに分けられる。またさらに, specificc~pacity costsprogra mmed costscommittedcostsに分けられる。

(1) 国弘員人著「新版損益分岐点新講」(ダイヤモンド社 昭和423 133150

(11)

製品組合せに対する貢献利益分析の適用(末政) 249) 31  はなく,個別固定費控除後の貢献利益を使用した場合の損益分岐点分析の手 法を考察することを主目的としておるのであり,そのような貢献利益を使用 した損益分岐点分析と限界利益を使用した損益分岐点分析の相異を見ること を目的としているからである。したがってその角度から,必要な範囲の分析 に限定して考えることにする。又次節で L•P 計算による分析方法を損益分 岐点分析による方法と比較しやすいように,ジェデイケ教授の例示を中心し て見ることにする。

(2) 

ジェデイケ教授の具体的な数字を引用すると,つぎの如くである。

A製品 B製品

販 売 価 額 $ 10QQ  8 変 動 費 5QQ  6 総 固 定 費 200,000

したがって,固定費は個別固定費と共通固定費に分けないで,一括した固 定費として示されているので,限界利益型貢献利益のみしか算出出来ない。

A.平均法による製品組合せの方法

全社的な一つ損益分岐点を算出するためには,まずA及びB製品の販売比 率を知ることが絶対的に必要である。したがって,つぎの固定された二つの 販売比率を使用したケースを見ると,損益分岐点の算出しまつぎの如くである。

(1)  A製品2B製品1の製品組合せの場合 損益分岐点売上=200,000 =466, 666 

1

B製品2A製品1の製品組合せの場合 損益分岐点売上=200,000 =577, 777 

17 

26  (3) 

また,図表によって表わされたものほつぎのジェデイケ教授の図表1であ

(2) Robert K. Jaedicke,  "Improving B‑E Analysis  by Linear Programming  Technique," NAA Bulletin, Vol. XLII, No. 3 (March, 1961), p.  5. 

拙稿、原価計算方式と L・Pの関係(1)ヽ関西大学商学論集第12巻第1号(昭和42 4 56頁参照。

(12)

32 (250) 

った。

製品組合せに対する貢献利益分析の適用(末政)

ジェデイケ教授の図表1 利益(単位1,000)

400  300  200  100 

‑100 

‑200 

‑300 

‑400 

利 益 図 表

2A‑1B  2B‑lA  販売(単位1,000) 900 1,000 

この損益分岐点分析の結果,限界利益金額を極大化するA製品及びB製品 の組合せを選択することによって,損益分岐点売上高を低くし,ひいては純 利益を大きくすることが出来るといったことがわかる。この事実は限界利益 率の高い製品を出来るだけ多く製造・販売するような組合せを考えるべきだ ということになる。しかし,これは各製品の現有製造能力及び販売能力等に 制限がないと仮定される場合に初めて妥当するのである。すなわち,このよ うな仮定が妥当する場合には,各製品単位当り限界利益率の高いものを中心 にして製品組合せ問題を考えることが出来るのである。しかしながら,これ らの仮定が非現実的であり,一般的には妥当しない場合が多いので,単純に 製品単位当りの限界利益率の高さによってのみ考えることは出来ない。

各製品の製造能力,すなわち,利用可能機械時間数,労働力,材料等によ り制限があり,又各製品の販売能力も製造能力の関係で制限されたり,販売 設備,販売人員等より制限される場合には,どのように考えるべきであるか,

N.A.(C.)A.の調査報告書第2̲3号によれば,「利益の大きい製品はどれだけか を判断する場合には,会社の販売能力や製造能力を左右する要因について限 界利益率を計算しなければならない。ある会社では,これを有効貢献利益と

(4) 

よんでいる。……」。またNAAの調査報告書第37号においても,「製品の販 (3)  Robert K. Jaedicke, op. cit.,  p.  5. 

(4)  N.A. (C.) A. Research Report No. 23,  Direct  costing,  April,  1953.  染谷恭次郎監訳「直接原価計算」(日本生産性本部 昭和385 180

(13)

製品組合せに対する貢献利益分析の適用(末政) (251) 33 

売可能数量が利用できる機械の製造能力をこえる場合には,この機械を使っ て機械時間あたり限界利益のもっとも大きい製品を製造すれば,純利益はも っとも大きくなる。第4表から明らかなように,売上高1ドルあたりの限界 利益のもっとも大きい製品が,必ずしも機械時間あたりについても,もっと も利益が大きいとはかぎらない。……労働力が不足していて,販売できる数 量全部を製造することができないような場合には,労働時間あたりの限界利 益がもっとも大きい製品を製造するために,その労働力を使うことがもっと

(5) 

も有利である。……」とし,ついで,「一般的にいえば,企業が達成できる製 造数葦を左右する要因別に限界利益を示すということになる。ある会社では これを有効限界利益 (effectivemarginal income)と名づけている。前に述べ たように,この要因としては,そのときの状況によって異なるが,販売能力,

(5) 

生産能力,労働力,あるいは材料が考えられるであろう。」 と報告されてい るのである。

このように, NAAの両報告書にある有効限界利益ないし有効貢献利益が 最大になるような製品組合せが基本的に考えられなければならない。しかし,

このような有効限界利益概念を有効に利用した製品組合せの分析が,損益分 岐点分析で可能であるかが問題となる。少くとも,全製品を平均化した一本 の直線限界利益線で示した平均法による損益分岐点分析のみでは難しいよう に思われる。

この事実は,多品種の製品を製造・販売する企業では,全体を一つの損益 分岐点分析,すなわち,平均法によるのみでは,有益な製品組合せ選択決定 に限界があることを認めなければならないことになる。この点,ビャマン教 授の論述によれば明白である。同教授によれば,

「もし,数種の異なった製品を製造している企業が,一つの損益分岐表を望 むならば,われわれは,正常的な製品組合せの仮定をおき,その図表が基礎 においている仮定を明確にしておくことが出来る。いずれにせよ,企業全体 に対する損益分岐表の有用性は,企業によって製造される製品の数が増大す (5)  N.A.A. Research Report No.  37,  Current Application  of  Direct  Costing, 

January,  1961.  染谷恭次郎監訳「前掲書」 52‑53

(14)

34 (252)  製品組合せに対する貢献利益分析の適用(末政)

(6) 

るにつれて,減少してゆくことは明らかなところである。」 と述べられてい るのである。

したがって,限界利益概念を使用する場合においても,つぎの個別法の考 え方を有用なものとしなければならない。

B.個別法による製品組合せの方法

国弘教授が,「個別法というのほ,各品種の単位当りの限界利益または限界

(7) 

利益の率を問題にして『損益分岐点』を算出する方法である。」 と述べられ ている如く,全体的に一括して平均化した形で表わされる損益分岐点分析で はなく,個々の製品別の限界利益の大きさをそのまま分析に利用する方法で ある。したがって,その方法の一つとしては個々の製品別に,損益分岐点を 算出する形式がとられる。そのようにすれば,製造能力ないし販売能力によ って可能売上高が制限された場合も,その関係を表示することが出来る。例

(8) 

えば,ジェデイケ教授の図表2によってその事実を読みとることが出来る。

同図の点線で区切られた範囲のみが現実的に有効な範囲である。しかしなが ら,可能売上高を制限する制約条件が多くなり,また製品種類が多くなった 製品組合せの場合には,ジェデイケ教授の指摘されるように,下記の損益分 岐点分析より展開された方法では分析が困難である。

ジェデイケ教授の図表2 ,

゜゜゜  

 

0 0   0 0   ( O O O O O O O   2 4   0 0 0 0 0 0   8 6 4 3 2  

l

L$  利 益 図 表

製品 B

! 販売

(単位1,000)

!, 600  2,000  2,400  2,800  3,200  3,600 

(6)  Harold Bierman, Jr.,  Topics in  Cost Accounting and Decision  (New York: 

McGraw‑Hill Book Co., 1963), p.  41.  H・ビャマン著溝ロ一雄監訳「原価管 理と経営意志決定」(税務経理協会 昭和405 59

(7) 国弘員人著「前掲書」 135 (8)  Robert K. Jaedicke, op. cit.,  p.  8. 

(15)

製品組合せに対する貢献利益分析の適用⑥ミ政) (253) 35  したがって,多数の制約条件の存在のもとでは,このことは損益分岐点分 析の問題点の一つであると認めなければならない。しかし,限界利益概念を 使用するとき,個々の製品の限界利益を段階的に積み重ねて,最終的には,

全体的な固定費との関係で一つの損益分岐点を示すような階梯式利益図表に よれば,品種間の限界利益の大きさが,全体的な利益にどの様に貢献してい るかが簡単かつ明瞭にわかるので,有益な分析方法であるといわなければな らない。

いまもし,ジェデイケ教授の例示を拡大利用し,つぎに階梯式利益図表を 画くことにする。

A製品2対B製品1の製品組合せで,販売量は両者合計で100,000ケと仮 定する。したがって, A製品は売上数量66,667ケ売上高666,670ドル,限界 利益333,335ドルとなり, B製品は売上数量33,333ケ,売上高333,330

限界利益66,666 ドルとなる。この数字による階梯式利益図表はつぎの第 3•1 図である。

利益(単位1 ,000) 4001 

300  200  100 

‑100 

‑200 

‑300  100 

A製品

3• 1

 

B製品一ー4

戸 ( 単 位1,000)

: 

多数の制約条件のもとで,有効限界利益の最適組合せをはかることは,む しろ,損益分岐点分析の基本問題に関するものであり,個別法個有の問題で はない。したがって,この種の限界を損益分岐点分析に認めた上においても,

なおかつ,階梯式利益図表は多品種企業における製品組合せ選択問題におけ

(16)

36 (254)  製品組合せに対する貢献利益分析の適用(末政)

る有益な分析方法であるということが出来る。

さて,個別固定費控除後の貢献利益を使用した損益分岐点分析について,

論じている文献は少ないように思うが,個別法の考え方によって,個別固定 費控除後の貢献利益との関係で損益分岐点を算出している例示として,ヶェ

ラー及びフェララ両教授によるものをつぎにあげることが出来る。

(9) 

「一工場二製品のケースにおいて,

個別固定費 変 動 費 販 売 価 格 共通固定費

単位当り貢献額 個別固定費をカバーす るための損益分岐点

損益分岐点資料

製品A 製品B

$ 100,000 

$ 3.00 

$ 6.00 

$120,000 

4. 00 

8. so 

$45,000  損益分岐点計算

製品A 製品B

$ 3.00  100,000 

=33, 333単位

$ 4.50  120.000 

4.50 

=26, 667単位

両教授によれば,さらに, 45,000ドルの共通固定費をカバーするためA 品及びB製品の多くの可能な販売組合せがあり,代数学的に,それは 3A+

4. 5B=45, 000の式が必要な組合せを表し,この等式を解くには制限された

(10) 

製造能力及び販売可能性によって限界づけられる。と述べている。

両教授の上の例示では,そのつぎの具体的計算が示されていないので,損 益分岐点分析としての具体的展開は明らかでないように思われる。

両教授のように,損益分岐点の算出を製品別の個別固定費に対するものと,

共通固定費に対するものとに分けて考えているとすれば,ビャマン教授の論 述がこの点参考になると思う。

ビャマン教授によれば,「一つの可能性は,製品系列ごとに損益分岐表を描 (9) I. Wayne Keller and William L. Ferrara, op.  cit.,  pp.  661662.  (10)  I. Wayne Keller and William L. Ferrara, op.  cit.,  p.  662. 

参照

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