論文審査の結果の要旨
氏名:細 川 透
専攻分野の名称:博士(医学)
論文題名:敗血疾患者に発生する急性期脳容積減少/脳室拡大と臨床的意義 審査委員:(主 査) 教授 中 嶋 秀 人
(副 査) 教授 吉 野 篤 緒 教授 根 東 義 明
教授 天 野 康 雄
敗血症は予後不良な疾患であり,敗血症関連脳症の合併は生存率だけでなく社会復帰率に関わる重大な 病態である。敗血症の急性期に脳容積減少など脳器質的異常が生じることが転帰不良につながることが想 定されるが,その機序は不明点も多い。本研究では,敗血症患者に発生する急性期脳障害に着目し,ICU 入室後に経時的に脳容積減少や脳室拡大が発生していることを明らかにするとともに,脳容積減少/脳室 拡大の臨床的意義と神経学的転帰不良との相関性を検討した。
対象は敗血症と診断された 85例で,20歳未満,院内発症,既に治療介入のある転院例は除外された。入 院時と入院後7-16病日の頭部CTでBicadidate ratio (BCR),Evans index (EI),Volumetry (Vo)を測定 して脳容積減少/脳室拡大を評価し,集中治療の重症度スコア(SOFA,APACHE II),ICU滞在日数,気 管挿管日数,予後スケール(GOS-E,mRS)との関連性を単施設前向き観察研究として検討した。2回の 頭部CTの経時的比較では,脳容積減少/脳室拡大とされるBCR増加を67.1%,EI増加を55.3%,Vo減 少を78.8%に認めた。全体では,Vo変化率がICU滞在日数(ρ= 0.2178, P = 0.0453),気管挿管日数(ρ
= 0.2252, P = 0.0382)と相関し,脳容積減少・脳室拡大を認めた症例において,Vo変化率がGOS-E(ρ
= -0.2756, P = 0.0240),mRS(ρ= 0.3137, P = 0.0097)と相関し,退院時または転院時神経学的予後不良 に関係していた。
敗血症患者の約 55-79%に急性期脳容積減少/脳室拡大が認められ,敗血症急性期に認める脳容積減少
/脳室拡大は退院時もしくは転院時の神経学的転帰不良と関係していることが明らかになり,その原因と 対策の解明は敗血症患者の生存率と長期的転帰を改善する一助になることが示唆された。これらの研究成 果は敗血症関連脳症の病態メカニズムを解明する上で学術的意義が高い。
よって本論文は、博士(医学)の学位を授与されるに値するものと認める。
以 上 令和 3年 2月17日