33 本を語る時に、最初に本を手にした際に感じ
る表紙の触感から話すなんて如何なものかと思 われるかもしれません。ページを繰る前の話、
早計に過ぎるからです。とはいえ、ちりめん本 に初めて触れた時に感じる、あの“温もりのあ る肌触り”に、この本が伝えようとしている日 本文化の精神性、誠実性が込められているはず だと私は考えています。ファーストタッチの触 感が忘れられず、ちりめん本を撮影するカメラ マンにも、「温もりの感触が伝わるような写真 を!」と、最初に注文し、2015年度スクール・
カレンダーに図書館所蔵のちりめん本を紹介す る作業を始めたほどです。
ちりめん本とは、印刷された和紙を圧縮して 縮緬状に加工し、和綴じ形式の書物にして刊行 したもの。明治期にちりめん本を企画し、初め て出版したのは長谷川武次郎。27才の時にキリ スト教の洗礼を受けていることもあり、日本の 伝説やお伽噺に盛り込まれている日本人の倫
理性、文化性に興味を抱きました。そして海 外の人にも日本人の心を理解してもらおうと、
『桃太郎』をはじめとする日本昔噺を在日欧米 人に英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、
ポルトガル語など世界の言葉に翻訳させ、浮 世絵師に挿絵を描かせ、さらに日本人の温も りが伝わるようにとちりめん本に加工し、日本 文化の一つとして海外発信していったのです。
この長谷川武次郎の「言語を介して異なる文 化を持つ人々の共感を喚起していった」ちり めん本の出版は、今日のグローバル社会にあっ ても大きな意味があると思います。異なる文化 を持つ人々に対する共感、エンパシー(共感力)
こそ、グローバル社会に生きる私たちが求め ていかなければならない教養の一つであると 思うからです。
うちだ あきひろ(広報室)
エンパシーを呼び起こした「ちりめん本」
内田晃弘
ちりめん本特集記事