VR モーションベースにおける視覚表現がユーザー体験に及ぼす影響
Effects of visual information in VR motion-base on user experience
1W153048-4 葛生 真也 指導教員 河合 隆史 教授
KUZU Masaya Prof. KAWAI Takashi
概要: 本研究では物理振動を一定にしたまま、視覚刺激のみを変化させたときのユーザー体験に及ぼす 影響の検討を行う。実験ではローラーコースター型VRコンテンツを用いて、視覚刺激としてコースター の傾きの大きさを変化させつつ、モーションベースによる物理振動の大きさは変えずに同じ動きをする ようにした。結果として視覚刺激の傾きと物理振動の傾きの差が大きくなると快適性を損なわずに体験 としての面白さが向上することが分かった。
キーワード: バーチャルリアリティ、モーションベース、物理振動 Keywords: Virtual Reality, Motion Base, Physical Vibration
1. 始めに
VRを用いたコンテンツが続々と誕生している。
その中の1つにモーションベースなどの身体に物 理振動を加える装置と VR を組み合わせたコンテ ンツがある。本研究ではVR による視覚刺激とモ ーションベースによる物理振動に違いを持たせた ときにユーザー体験に与える影響の検討を目的と している。
2. 実験方法
本実験では HMD として HTC 社の「HTC
VIVE」、モーションベースとしてInjoyMotion 社
製のエアコンプレッサ式のものを用いた。実験環 境は図1に示す。
実験刺激としてローラーコースター型のコンテ ンツを用意した。本実験では条件毎に視覚刺激と してコースターの傾きの大きさを変化させる一方、
モーションベースによる物理振動の傾きは視覚刺 激の傾きの大きさに関係なく同じ動きをするよう にした。刺激の条件は傾きの軸2条件(Pitch軸、
Roll軸)と視覚刺激の最大角度5条件(3.5°、7°、
15°、30°、60°)の組み合わせで 10 条件とし
た。なお実際のモーションベースの物理振動の最 大角度は7°となっている。
実験参加者は成人大学生20人とした。実験では 10条件を各2回ずつ、合計20試行をランダムな 順番で行った。実験参加者はモーションベースに 着席し、HMDを装着した。各試行が終了する毎に HMD を外し、感情の尺度を画像で直感的に評価
するSAM [1]に回答し、任意で休憩を取った。ま
た全試行終了後に口頭インタビューを行った。
図 1 実験環境の様子 3. 実験結果
SAMスコアの情動価と覚醒度の平均値を図2、図 3に示す。SAMスコアの平均値について視覚刺激 の角度、回転軸の 2要因で二元配置分散分析を行 ったところ、情動価については回転軸の主効果が
有意に認められ、覚醒度については視覚刺激の角 度の主効果が有意に認められ、交互作用の有意な 傾向が見られた。また視覚刺激の角度について
Tukey-Kramer 法による多重比較を行ったところ
情動価の平均値は 60°と 15°の間に有意傾向が 見られたのみで、覚醒度の平均値は60°の時、ほ かの角度より有意に高い値が得られた。またイン タビューから 60°の条件が印象に残っていると 答える人が多く、その理由としては「コースを見 て驚いた」、「高くてドキドキした」などポジティ ブな意見が多く見られた
図 2 SAMスコアの平均値(情動価)
図 3 SAMスコアの平均値(覚醒度) 4. 考察
SAM の情動価と覚醒度の結果より視覚刺激の
角度とモーションベースによる物理振動の差が大 きくなったとき情動価への影響は少なく、覚醒度 への影響は大きいということが分かった。このこ とはインタビューで得た最大角度に対するポジテ ィブな意見が多かったことも関連していると考え られる。また Roll軸について 3.5°の角度の覚醒
度が 7°と比べて高くなっている。これはインタ
ビューより視覚刺激の角度が低すぎるとレールの 傾きを目視でとらえるのが難しくモーションベー スが突然傾いたように感じてしまうからだと考え られる。
5. まとめ
本研究ではモーションベースの物理振動を変え ずに、VRによる視覚表現のみに変化を与えると快 適性を損なわずに体験としての面白さを向上する ことができるということが分かった。今後の課題 としては視覚刺激と物理振動との間に予期せぬ乖 離を防ぐためのモーションベースの制御方法が挙 げられた。
6. 参考文献
[1] M. M. Bradley , P. J. Lang, “Measuring emotion: the self-assessment manikin and the semantic differential,” Journal of behavior therapy and experimental psychology, 第 巻 25, 第 1, pp. 49-59, 1994.
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