刑 事 訴 訟 法 三 二 二 条 の 原 理 と 解 釈
田 淵 浩 二
一 は じ めに 二 ア ド ミッ シ ョ ンの 原 理を め ぐる 議 論
︵一
︶ 国内 の 議 論
︵二
︶ アメ リ カ にお け る議 論 三 三 二 二条 一 項 の解 釈
一 は じ め に
刑事 訴訟 法に お ける 自白 は︑ 民 事訴 訟法 にお け るそ れと は異 な り︑ たと え法 廷 自白 で あっ ても ひと つ の証 拠に 過ぎ な い
︒そ して
︑自 白 は供 述証 拠で あ るか ら︑ 供述 が どの 程度 信用 で きる かの 評価 な くし て その 証拠 価値 は 定ま らな い︒ 一 般 に︑ 自白 の信 用 性評 価の やり 方 には いく 通り か の方 法が ある
︒ 第一 のや り方 は
︑自 白 から 独立 した 補 強証 拠が ある こ と を条 件に
︑そ れ が真 実を 述べ た もの か否 かの 判 断は 事実 認定 者 の自 由心 証に 委 ねる 方 法で ある
︒第 二 のや り方 は︑ 証 人 尋問 の場 合と 同 様︑ 自白 した 被 告人 に供 述過 程 につ き直 接質 問 する こと によ り
︑信 用 でき る自 白か ど うか 吟味 する 機 会 を設 ける 方法 で ある
︒当 該方 法 によ る信 用性 の 吟味 は︑ 被告 人 が黙 秘権 を放 棄 し︑ 質 問に 応じ る場 合 にの み可 能に な る
︒第 三の やり 方 は︑ 法廷 外に お いて 裁判 官が 自 白調 書を 熟読 吟 味し て信 用性 の 評価 を 行う 方法 であ る
︒当 該方 法は
︑ 大 量の 供述 調書 が 証拠 提出 され て きた 日本 にお い ては 一般 的な 評 価方 法で あっ た
︒こ れ ら以 外に も︑ 供 述が 体験 に基 づ く 供述 が否 かを 分 析す るた めの 供 述心 理学 的手 法 の研 究が 進展 し てお り︑ こう し た目 的 で行 われ た心 理 学鑑 定の 信用 性 を 肯定 し︑ 再審 開 始決 定の ひと つ の理 由に 加え た 事例 も登 場し て いる1
︒︶
取 調べ 過 程の 録 音・ 録画 の運 用 の拡 大に 伴い
︑ 供 述過 程を 客観 的 に分 析す るこ と が可 能に なっ て おり
︑今 後︑ 体 験供 述か 否か の 客観 的 分析 が可 能か つ 適切 な事 例が 増 え いく だろ う2
︒︶
刑事 訴訟 にお け る裁 判員 制度 の 導入 は供 述証 拠 の信 用性 評価 の あり 方に 変化 を もた ら した
︒裁 判員 裁 判に おい ては
︑ 供 述調 書を 読み 込 んで
︑そ の信 用 性を 吟味 する 第 三の やり 方は 維 持で きな くな り
︑実 務 にお いて は︑ 供 述調 書が 作成 さ れ てい るケ ース に おい ても
︑な る べく 公判 にお け る尋 問を 通じ て
︑供 述の 信用 性 を吟 味 する とい う第 二 のや り方 が重 視 さ れる よう なっ た
︒こ の傾 向は 第 三者 供述 だけ で なく 被告 人供 述 の場 合も 同様 で あり
︑ 自白 調書 を含 む 被告 人の 供述 調 書 の証 拠採 否を 留 保し
︑被 告人 質 問を 先行 させ る こと で︑ 供述 の 信用 性を 吟味 す る機 会 を設 ける こと が 試み られ るよ う
(法政研究 84‑3‑ )18 578
に なっ た︒ しか し
︑被 告人 質問 の 場合 は証 人尋 問 とは 異な り被 告 人が 個々 の質 問 に対 し て供 述を 拒む こ とも でき
︑ま た 虚 偽供 述を 行っ て も偽 証罪 によ る 制裁 を課 せな い こと から
︑常 に 被告 人質 問を 先 行さ せ るこ とが 果た し て被 告人 供述 の 信 用性 を吟 味す る ため の最 善の 方 法と 言え るか に つい て︑ 検察 官 から は強 い疑 念 が提 起 され てい る3
︒︶
筆者 は別 稿に お いて
︑被 告人 供 述に つい ても 証 人の 供述 同様 に 直接 主義 の理 念 が妥 当 する との 理解 の 下︑ 被告 人質 問 先 行型 審理 を支 持 する 立場 から そ の在 り方 を論 じ る機 会が あっ た4
︒︶
しか し
︑被 告 人の 供 述調 書の 取調 べ より も被 告人 質 問 を先 行さ せる こ とが 法的 ルー ル であ るこ とを 論 じた わけ では な く︑ 証拠 調べ の 順序 に 関す る裁 判所 の 裁量 権の 行使 と し て︑ その 合理 性 を肯 定で きる こ とを 論じ るに 留 めた
︒日 本の 刑 事訴 訟に おい て は取 調 べや 供述 調書 の 偏重 とい う実 態 が ある とし ても
︑ アメ リカ 証拠 法 の影 響を 受け て 作ら れた 現行 刑 訴法 の下 で︑ 被 告人 の 供述 調書 の取 調 べよ りも 被告 人 質 問を 優先 すべ き こと を法 的ル ー ルと して 論じ る こと は︑ 一見 す ると 簡単 では な い︒ す なわ ち︑ 当事 者 主義 を原 理と す る アメ リ カに おい ては
︑被 告 人 の法 廷外 供述 は︑ 自 白 を含 め︑ 民 刑事 共通 の 証拠 法上 の概 念 であ る
a d m is si o n
に当 た り
︑伝 聞法 則は 適 用さ れな い︒ 例 えば 連邦 証 拠規 則八
〇一 条︵ d
︶ 2︶ 項 は︑ 同 条 項が 定義 する 訴訟 の相 手 当事 者側 の 供述 を︑ 当該 供 述を 行っ た当 事 者に 対す る証 拠 とし て用 いる とき は︑ これ を﹁ 非 伝聞 証 拠﹂ と して いる5
︒
a d m is si o n
︶は
﹁不 利益 事実 の 承認
﹂と 訳さ れ るこ とが 一般 的 であ るが
︑法 律 上は
︑
a d m is si o n
の 本来 の語 意に 含 まれ る 何か を﹁ 認 め る﹂ こと も︑ 供 述の 内容 が供 述 者に とっ て不 利 益で ある こと も 要件 とさ れて い ない
︒ 訴訟 当事 者の 行 った 過去 の供 述 を 当該 当事 者に 対 する 不利 益証 拠 とし て用 いる 場 合が
a d m is si o n
で ある
︒
a d m is si o n
と いう 言葉 は︑ 連 邦証 拠法 八〇 四 条
︵B
︶ 3︶ 項が 伝 聞例 外と して 定 める
﹁利 益に 反 する 供述
﹂
st a te m en t a g a in st in te re st
︶と 混同 さ れ易 いこ とも あ り
︑連 邦 証 拠法 は二
〇 一一 年 改 正 にお い て︑ そ れま で 使 用 して き た
a d m is si o n
と い う 表 記を 止 め︑
相 手 当 事 者の 供 述
﹂
a n o p p o si n g p a rt y ʼs s ta te m en t
︶と い う表 記に 変更 し てい る︒ そこ で 以下 では
︑
a d m is si o n
はカ タ カ ナで
﹁ アド ミ ッシ ョン
﹂と 表 記す るこ とと し
︑ 相手 当事 者の 供 述﹂ と同 義に 用 いる こと とす る
︒
アド ミッ ショ ン は︑ 相手 当事 者 の口 頭に よる 供 述を 直接 聞い た 者の 証人 尋問 や 口頭 供 述の 録音 物の 再 生︑ ある いは 相 手 当事 者の 作成 な いし 署名 した 供 述書 面を 証拠 と して 取り 調べ る 形で
︑法 廷に 顕 出さ れ る︒ 被告 人が 自 らの 法廷 外供 述 の 信用 性を 争い た いと きは
︑ア ド ミッ ショ ンが 証 拠顕 出さ れた 後 に︑ 自ら 証言 台 に立 っ て供 述が 虚偽 で ある こと を説 明 す る必 要が ある
︒ この よう に︑ ア メリ カ証 拠法 は
︑証 言に つい て は反 対尋 問を 通 じて そ の信 用性 を争 う 機会 を設 ける こ と を原 則と する 一 方︑ 当事 者の 供 述を 本人 に対 す る不 利益 証拠 と して 用い る場 合 は︑ 被 告人 質問 を通 じ て当 該供 述の 信 用 性の 吟味 の機 会 を設 ける こと を 原則 とは して い ない
︒そ して
︑ 日本 の現 行刑 訴 法三 二 二条 一項 は︑ 占 領軍 統合 司令 部 が 提出 した 刑訴 改 正案 の修 正案 に
︑被 告人 の法 廷 外供 述 を証 拠使 用 でき る場 合の 一つ とし て︑
被 告人 の自 己 に不 利益 な 事実 の承 認﹂
a d m is si o n b y d ef en d a n t w h ic h is a d v er se t o h is i n te re st s
︶を 盛り 込 んだ こと から
︑ その 強い 影響 を 受 けて 作ら れた 規 定と され る6
︒︶
日 本の 刑事 訴訟 に おい て三 二二 条
︵及 び三 二四 条
︶が 果 たし てき た取 調 べ偏 重の 捜査 を 正 当化 する 機能 は
︑ア メリ カ証 拠 法の アド ミッ シ ョン が果 たし て きた 機能 と異 な る︒ し かし
︑三 二二 条 一項 がア ドミ ッ シ ョン の考 え方 に 強い 影響 を受 け た規 定で ある 以 上︑ なぜ 相手 当 事者 の任 意の 法 廷外 供 述で あれ ば︑ 第 三者 のそ れよ り も 緩や かな 要件 で 証拠 とし て許 容 され るの か︑ そ の法 的根 拠を 明 確に して おく 必 要は あ るだ ろう
︒実 は
︑ア メリ カに お い ても アド ミッ シ ョン の法 理が ど のよ うな 原理 に 依拠 した もの か に関 する 理解 は 決し て 自明 の理 では な く︑ 議論 が重 ね ら れて きた
︒ア メ リカ にお いて ア ドミ ッシ ョン の 法理 をめ ぐり ど のよ うな 議論 が 交わ さ れて きた かを 知 るこ とは
︑日 本 の 刑訴 法三 二二 条 の理 解を 深め る 上で も有 益に 思 われ る︒ そこ で
︑本 稿に おい て は︑ ま ず︑ アド ミッ シ ョン の原 理を め ぐ る議 論を 紹介 し た上 で︑ 現行 法 三二 二条 の解 釈 にど う活 かせ る かを 考察 する こ とに し たい
︒
(法政研究 84‑3‑ )20 580
二 ア ド ミ ッ シ ョ ン の 原 理 を め ぐ る 議 論
︵ 一
︶ 国 内 の 議論 一
三二 二 条一 項 は︑ 被告 人の 法 廷外 供述 が不 利 益事 実の 承認 で ある 場合
︵前 段
︶と
︑ そう でな い場 合
︵後 段︶ に分 け
︑ 両 者を 一文 にま と めて 規定 して お り︑ 形式 的に は 三二
〇条 の例 外 規定 とし て位 置 付け ら れて いる
︒し か し︑ 前段 につ い て は当 初よ り伝 聞 法則 不適 用の ケ ース とし て説 明 が行 われ てい た
︒ 例え ば︑ 現行 法 制定 当時 の英 米 証拠 法研 究の 第 一人 者で あっ た 江家 義男 は︑ 三 二二 条 一項 を次 のよ う に説 明し てい る7
︒︶
﹁ 公判 外に おけ る 被告 人の 供述 を 記載 した 書面 又 は被 告 人 の供 述の 伝聞 供述 を証 拠 とす るこ とは
︑形 に お いて は伝 聞証 拠 の許 容 に似 てい るが
︑ その 実は 伝聞 証 拠の 許容 では な い︒ 何と なれ ば
︑被 告 人は 自己 の供 述 に対 し反 対尋 問 権を も つは ず がな いか らで あ る︒ 但し
︑そ の 供述 が被 告人 に 利益 なも ので あ ると き
︑す なわ ち検 察 官に 不利 益な も ので あ ると き は︑ 検察 官が 反 対尋 問権 を有 す るか ら︑ これ を 証拠 とし て許 容 する の は伝 聞法 則の 例 外に なる
︒第 三 二二 条 一項 及 び三 三四 条一 項 は︑ この 見地 か ら︑ 前者 は書 証
︵供 述書 又は 供 述録 取 書︶ につ いて
︑ 後者 は伝 聞供 述 につ い て規 定 を設 けて いる
︒﹂
﹁ 英米 法に よれ ば
︑公 判外 にお け る被 告人 の供 述 で自 己に 不 利益 なも のは すべ て 許容 され る︒ そ の理 由 は︑ 被 告人 の自 己 に不 利 益な 供述 には 伝 聞法 則の 適用 が ない から であ る が︑ なお
︑自 己 に不 利 益な 供述 は︑ 一 般に 信用 性が あ ると 見 られ る から であ る︵ 一 一の
︵二
︶ 4︶ 参 照︶
︒ 不利 益 な供 述は 必ず し も犯 罪 行為 後に おけ る 供述
︑す なわ ち 自白 又 は自 認
︵狭 義︶ に限 ら れな い︒ 犯罪 行 為前 にお ける 供 述︑ 例え ば︑ 犯 罪の 動 機︑ 計画 など の 供述 を含 む︵ 広 義の 自 認︶
︒⁝
⁝ なお
︑自 認は 自 白と は異 なり
︑ 被告 人 が 供述 に際 し︑ そ れが 自 己に 不利 益な もの であ る こと を意
識す る 必要 は ない
︒し たが っ て︑ 被告 人が 自 己に 利益 であ る と信 じて なし た 供述 で あっ ても
︑客 観 的に 不利 益な も ので あ ると き は自 認で ある
︒﹂ 江家 は︑ 三二 二 条一 項が 設け ら れた 理由 につ い て︑
①被 告人 は 自己 の供 述に 対 し反 対 尋問 権を 持ち 得 ない こと
︑及 び
② 自己 に 不利 益な 供述 は︑ 一 般 に信 用性 があ ると 見ら れ るこ との
︑二 点 を挙 げ てい る︒
① は英 米証 拠 法の 権 威 であ る ウ ィグ モ ア︵
W ig m o re
︶の 見解 に依 拠 した 説明 であ る︒ こ れ に対 して
︑② に つい て は︑ 英 米法 にお いて
﹁利 益に 反す る 供述
﹂が 伝聞 例 外と され てい る 理由 を説 明し て いる 箇所 を参 照 との 指示 があ り
︑そ こ では
﹁一 般人 の 心理 とし て︑ 自 己 に不 利益 な事 実 を自 ら虚 構と し て他 人に 語る と いう こと は︑ き わめ て稀 であ る と考 え てよ い︒ した が って
︑自 己の 利 益 に反 する 事実 を 供述 した 場合 は
︑そ れは 一応 真 実性 が認 めら れて よ いわ けで ある
︒﹂ との 説明 がな され て いる8
︒︶
しか し
︑英 米法 にお い て﹁ 利益 に反 す る供 述﹂ とア ド ミッ ショ ンは 異 なる 法理 であ る こと は 前述 のと おり で ある
︒す なわ ち
︑ 前 者は
︑コ モン ロ ー上 は不 利益 と は金 銭的
︑財 産 的な もの に限 定 し︑ 刑事 上の 責 任を 含 まな いと 解さ れ てき た︒ 今日
︑ 連 邦証 拠規 則を 含 む各 法域 の法 令 にお いて 刑事 上 の責 任を 負う こ とに つな がる 発 言も 利 益に 反す る供 述 に含 める 傾向 に あ るが
︑そ こで 念 頭に 置か れて い るの は︑ 第三 者 が自 己の 刑事 責 任を 示唆 する 発 言を 行 った こと を︑ 被 告人 の有 利な 証 拠 とし て用 いる 場 合の 伝聞 例外 で ある9
︒︶
こ れに 対 し︑ 被告 人本 人 が自 己の 刑事 責 任を 示 唆す る発 言を し たと して も︑ そ れ はア ドミ ッシ ョ ンの 問題 であ り
︑こ の場 合︑ も はや 供述 の信 用 性の 有無 は証 拠 とし て の許 容性 にと っ て重 要で はな い
︒ ま た︑ 利益 に反 す る供 述の 場合
︑ それ ゆえ に真 実 性を 推定 させ る とい う以 上は
︑ 少な く とも 供述 時に 当 該供 述が 自己 に と って 不利 益で あ るこ とを 認識 し て行 った もの で なけ れば 意味 が ない
︒こ れに 対 し︑ ア ドミ ッシ ョン は
︑訴 訟の 一方 当 事 者側 が行 った 過 去の 供述 を訴 訟 にお いて その 者 の不 利益 に使 用 する 場合 のこ と であ る
︒そ して
︑当 事 者が 供述 した 際
︑ そ れが 将来 自己 に 不利 益な 証拠 と して 用い られ る こと にな るで あ るこ とを 認識 し てい る 必要 はな いこ と は︑ 江家 自身 が 指 摘し てい ると お りで ある
︒こ の よう に︑ 江家 の 解説 には
︑三 二 二条 一項 前段 を 説明 す るた めに
︑部 分 的に は英 米法 の
(法政研究 84‑3‑ )22 582
ア ドミ ッシ ョン の 法理 に依 拠し
︑ 部分 的に は﹁ 利 益に 反す る供 述
﹂の 法理 を参 照 した こ とに より
︑三 二 二条 一項 前段 の 趣 旨に つき 一貫 性 を欠 いた 説明 が みら れる
︒ 二
これ に 対し
︑ 藤岩 睦郎 は︑ や はり ウィ グモ ア の見 解を 参照 し つつ
︑三 二二 条 一項 の 趣旨 を次 のよ う に説 明し てい る10
︒︶
﹁ 承認 は事 実に 関 する 主張 即ち 証 言的 発言 であ る こと
︑被 告人 以外 の者 の法 廷外 の 供述 と異 なら ない
︒そ の証 拠価 値は 供 述者 の 観察 能力
︑そ の 偏見
・利 害の 存 否︑ 等々 に依 存 する
︒こ の見 地 から は 承認 の証 拠価 値 は︑ 当事 者の 利 益に 提 出さ れ ると 不利 益に 提 出さ れる とを 問 わず 同一 のは ず であ る︒
︵一
︶と こ ろが 被告 人の 不 利益 に提 出さ れ ると きは
︑証 言 的発 言一 般と し ての 価 値の 他に
︑さ ら に証 人の 自己 矛 盾︵ 法 三二 八 条参 照︶ と同 じ 論理 的価 値を 持 つ︒ 被告 人は そ の主 張や その 提 出す る 証拠 全体 を通 じ て語 るの であ る から
︑ この 自 己矛 盾の 基礎 は これ らの 全体 で ある
︒殊 にわ が 刑事 訴訟 では 被 告人 が 起訴 事実 を認 め ると 否と にか か わら ず 検察 側 はそ の全 部を 立 証す る責 任を 負 担す るの であ る から
︑被 告人 は 判決 あ るに 至る まで こ れを 争っ てい る もの と 擬制 さ れて いる に他 な らず
︑不 利益 な 事実 の承 認は か よう に擬 制さ れ た被 告 人の 主張 に対 し 論理 的に は常 に 自己 矛 盾た る もの であ る︒
︵二
︶右 の 論理 的見 地を 離 れて これ を法 律 的見 地か ら観 れ ば︑ 被告 人の 供 述と い えど も事 実に 関 する 証言 的発 言 であ る 限り 伝 聞規 則︵ 法三 二
〇条
︶の 適用 を 受け その 障壁 に 遭遇 すべ きは ず であ る
︒そ こで 被告 人 の法 廷外 の供 述 は︑ そ の利 益 に提 出さ れた と きは
︑特 別の 例 外即 ち﹁ 特 に信 用 すべ き情 況の 下に され た もの であ ると き﹂
法 三二 二条 一 項後 段
・三 二四 条一 項
︶に 該当 しな い 限り
︑こ の障 壁 を通 過し ない
︒ しか し︑ 被 告人 の不 利益 に 提出 され たと き は伝 聞規 則の 障 壁を 通過 する
︵ 法三 二 二条 一項 前段
・ 三二 四条 一項
︶︒ 何と な れば 反 対尋 問の 機会 を 与え ると いう 伝 聞規 則の そも そ もの 基礎 がこ こ では 欠 除︹ ママ
︺し て いる から であ る
︒
被告 人 自身 が 伝聞 規則 を援 用 すべ き唯 一の 者 であ り︑ また 自 分を 反対 尋問 す る必 要 もな い︒ 既に 自 分を 反対 尋問 す る機 会 は有 し てい たは ずで あ り︑ 更に 自ら 法 廷で 供述 して 前 の供 述を 弁明 す るに 十 分な 機会 を有 し てい る︒ この 意 味に お いて 承 認は 伝聞 規則 の 例外 とい って も
︑始 めか ら伝 聞 規則 適用 の範 囲 外で あ ると 説明 して も
︑同 じこ とで あ る︒ こ のこ と が承 認一 般の 証 拠法 上最 も重 要 な特 色で ある
︒
⁝⁝
︵三
︶ 不利 益 な事 実の 承認
﹂ とい う文 言に 曖 昧さ が あ るけ れど も︑ 承 認の 対 象は その 承認 をな した と き被 告人 に不 利 益で あ った 事実 には 限 られ ない
︒も ち ろん 供述 当時 の 供述 者の 利益 に 反し た もの であ るな ら ば︑ その 信憑 性 は増 大 する か もし れな いが
︑ この こと は証 拠 能力 とは 関係 が ない
︒供 述者 の 現在 の 主張 との 矛盾 が 承認 を証 拠と し て用 い る理 由 なの であ る︒
︵四
︶右 に 述べ た通 り︑ 現 在の 主張 との 自 己矛 盾と して の 価値 と︑ 伝聞 規 則の 障 壁を 通過 した 証 言と して これ を なし た 人及 び その 際の 状況 に 応じ た証 言的 価 値と の二 重の 価 値を 有す る︒ 承 認が 単 に﹁ 証明 力を 争 う﹂ もの とし て のみ で はな く
︑独 立の
﹁実 質 的証 拠﹂ とし て 用い られ るの は この 後者 とし て の性 質 に基 づく もの で ある
︒自 白は こ の承 認 の一 種 に他 なら ない
︒﹂ 藤岩 は︑ 三二 二 条一 項前 段の 理 解に おい て︑ 後 述の ウィ グモ ア によ るア ドミ ッ ショ ン 法理 の理 解に そ のま ま依 拠し た 説 明を 施し てい る
︒そ して
︑三 二 二条 一項 前段 の﹁ 不 利益 な事 実の 承 認﹂ と いう 文言 の曖 昧 さを 指摘 した 上で
︑ 被告 人 に不 利益 な事 実 の承 認﹂ に伝 聞 法則 が適 用さ れ ない 理由 を︑
① 自己 矛盾 と同 じ 論理 的 価値 を持 つこ と11
︑︶
及び
② 被告 人 自 身に 対し ては 反 対尋 問す る必 要 がな く︑ 法廷 で 自ら 弁明 する 機 会も 有し てい る こと に 見出 して いる
︒ もっ とも
︑前 者 に つい ては
︑英 米 法と は異 なり
︑ 日本 の刑 事訴 訟 法は 被告 人が 公 判で 罪を 認め て いる 場 合も 検察 官の 有 罪立 証を 要求 し て おり
︑そ の場 合 も自 白調 書は 三 二二 条一 項前 段 によ り証 拠採 用 可能 であ るこ と から
︑ 被告 人が 罪を 認 めて いる 場合 で あ って も︑ 検察 官 の立 証の 必要 が ある 以上
︑罪 を 争っ てい るこ と が擬 制さ れて お り︑ 不 利益 事実 の承 認 は常 に自 己矛 盾
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に 当た ると いう
︑ 技巧 的な 説明 が 行わ れて いる
︒
②の 点は
︑江 家 の説 明と 共通 す る部 分で ある
︒ ここ で藤 岩は
︑ 被告 人は 自分 を 反対 尋 問す る機 会は 有 して いた はず で あ り︑ 更に 自ら 法 廷で 供述 して 前 の供 述を 弁明 す るに 十分 な機 会 を有 して いる 点 を補 足 して いる
︒後 者 の点 は︑ 田中 和 夫 も︑
被告 人 は欲 す れば 任意 の供 述 によ って
︑そ の 書面 又は 原 供述 の意 味を 説明 し︑ また その 供述 をす る に至 っ た事 情 を説 明す るこ と がで きる ので あ るか ら︑ それ に よっ て充 分に 反 対尋 問と 同一 の 効果 を 発揮 する こと が でき るの であ る
︒ こ のよ うに
︑被 告 人の 不利 益な 事 実の 承認 を内 容 とす る書 面又 は 他人 の証 言は
︑ 形式 的 には 伝聞 証拠 の 形体 をと って い る
︵⁝
︶が
︑実 質 的に はは じめ か ら伝 聞証 拠の 要 素を 欠い てい る
︒従 って
︑理 論 的に は この 規定 は︑ 伝 聞証 拠の 法則 の 例 外で ある とい う べき では ない
︒﹂ と 説明 して いる12
︒︶
しか し
︑被 告人 が公 判で 三二 二 条一 項書 面の 信用 性を 争 う機 会を 持 てる こと を理 由 に︑ 法廷 外供 述 を非 伝聞 と結 論 付け てよ いか に つい ては
︑後 で 述べ る よう に疑 問が あ る︒ 三
この よ うに 三 二二 条一 項前 段 が設 けら れた 理 由に つい ては
︑ 部分 的に 矛盾 を 来し て いた り技 巧的 過 ぎる 説明 が含 ま れ てお り︑ 明快 と 言え るも ので は なか った
︒そ の 後の 教科 書に お いて も︑ 三二 二 条一 項 の原 理を
︑① 被 告人 自身 に対 す る 反対 尋問 は無 意 味で ある こと か ら︑ 伝聞 法則 が 適用 され ない と する もの13
︑︶
②任 意に 自 己の 利益 に反 す る供 述を 行う 場 合 は一 般的 に信 用 性が 高い から 伝 聞例 外と され た とす るも の14
︑︶
③ 自己 矛盾 に当 た るか ら
︑被 告人 はこ れ につ いて 説明 義 務 が生 じる とす る もの15
︑︶
あ るい は
︑④ これ らの 複 数の 観点 から 説 明し てい るも の16
︑︶
が多 い︒ さら には
︑
⑤こ れら いず れ の 説明 も不 十分 と した 上で
︑結 局
︑当 事者 主義 的 見地 から 説明 す る他 ない とす る もの17
︑︶
も見 られ る︒ こ のよ うに ばら ば ら の根 拠付 けが 行 われ てき た中 で 注意 すべ きこ と は︑ 三二 二条 一 項に 対し ては
︑ その 根 拠の 説明 はと も かく
︑捜 査機 関 の 作成 した 大量 の 被告 人の 供述 調 書が 証拠 提出 さ れて しま う結 果 に対 して
︑直 接 主義 の 観点 から の修 正 を施 すこ とが 課 題 であ ると 認識 さ れて いた 点で あ る︒
例え ば︑ 田宮 裕 は︑
直接 主 義は
︑ 証拠 と裁 判所 の関 係を 問 題に する 職権 主義 と いう アプ ロー チ は︑ む し ろ︑ わ が国 の 伝聞 法則 のね ら いの 中枢 に迫 る 重要 な視 点で も ある
︒な ぜな ら
︑調 書と くに 捜 査書 類 の多 用と いう こ とが 日本 の刑 事 裁 判の 特色 でも あ り︑ また 問題 点 でも ある が︑ そ の規 制が まさ に 伝聞 法則 をと る こと に よっ て果 たそ う とし た最 大の 課 題 とい える から だ
︒﹂ と述 べて いる18
︒︶
また
︑松 尾浩 也 も︑
捜査 機 関に よる 被疑 者 取調 べ の結 果を 証拠 と して 一般 的に 許 容 した こと に対 し ては
︑い わゆ る 直接 主義 の観 点か ら批 判を 生じ て おり
︑ 今後 の検 討課 題 とな っ てい る︒
﹂こ とを 認め て いた19
︒︶
さら に︑ 近時 は 直接 主義 の観 点 を伝 聞法 則の 趣 旨に 盛り 込む 積 極的 解釈 も展 開 され て いる
︒例 えば
︑ 堀江 慎司 は﹁ 伝 聞 法則 の基 礎に あ る公 判廷 での 尋 問の 手続 を構 成 する 要素 には
︑ 相手 方当 事者 に よる 反 対尋 問の 機会 だ けで はな く︑ 事 実 認定 者に よる 供 述者 の態 度・ 表 情等 の観 察や 法 廷の 厳粛 さな ど も含 まれ るこ と から す れば
︑第 1の 見 解︵ 筆者 注
:
上 記①の 見解
︶の よ うに 伝聞 法則 の 趣旨 が妥 当し な いと まで 言い 切 るの は適 切で な いと 思 われ る︒
﹂と 論じ てい る20
︒︶
ま た︑ 松 田岳 士は 刑訴 法 三二
〇条 一項 の 伝聞 法則 は︑ 裁 判所 の事 実認 定 に供 され る供 述 の採 取 過程 にお ける
﹁ 公開 の対 審﹂ を 保 障す る趣 旨と の 理解 に立 ち︑
公判 にお ける 被告 人 から の 供 述採 取と 公判 外の それ と の間 には
︑公 開 主義 の 保障 の有 無 のほ か︑ 公平 な 裁判 所の 前で 行 われ るか 否か
︑ 弁護 人の 立会 権 ない し質 問権 の 保障 を 伴う か否 か等
︑ 同条 項の 関心 に 属 する 重要 な差 異 があ ると いう べ きで あろ う︒
﹂と 論じ てい る︒ そし て︑ 刑 訴法 三二 二 条一 項も
︑伝 聞 不適 用 では なく 伝 聞例 外を 定め た もの であ り︑ 伝 聞例 外の 要件 は
﹁必 要性
﹂と
﹁ 信用 性の 情況 的 保障
﹂ が要 求さ れる べ きで ある との 解 釈 の下
︑前 者の 要 件に つい ては
︑ 被告 人が 公判 に おい て公 判外 供 述と 異な る供 述 を行 う か︑ ある いは 黙 秘す る場 合に
︑ 一 般に 認め るこ と がで きる こと
︑ 後者 の要 件に つ いて は︑ 上記
② の見 解に より 説 明す る ほか ない と唱 え てい る21
︒︶
当該 見 解 は︑ 直接 主義 の 理念 を読 み込 ん だ三 二二 条一 項 の具 体的 解釈 の 試み とい うこ と がで き る︒ しか し︑ こう し た三 二二 条一 項 にも 直接 主義 の 理念 を盛 り込 み 解釈 しよ うと す る近 時 の見 解は
︑今 の とこ ろ多 数の 支
(法政研究 84‑3‑ )26 586
持 を得 るま でに は 至っ てい ない よ うに 思わ れる
︒ 思う に︑ 当該 問 題を 考え るに あ たっ て は︑ 改め て︑ そ もそ も英 米法 に お いて
︑な ぜ当 事 者の 法廷 外供 述 がそ の他 の者 の 法廷 外供 述と 比 べて 証拠 法上 特 別に 許 容さ れて きた の か︑ その 原理 を め ぐり どの よう な 議論 が行 われ て いた のか を振 り 返る こと から
︑ 考察 を始 める こ とが 有 益で あろ う︒ そ こで 次に
︑ア ド ミ ッシ ョン の原 理 をめ ぐる アメ リ カの 議論 につ い て︑ その 概略 を 紹介 して おく
︒
︵ 二
︶ ア メ リ カに お け る 議 論 アメ
リカ にお い てア ドミ ッシ ョ ンは 民刑 事に 共 通す る証 拠法 上 の法 理で あり
︑ その 適 用範 囲は 日本 の 刑訴 法三 二二 条 よ りも 広い
︒連 邦 証拠 法八
〇一 条
︵d
︶ 2︶ 項が 定 める よう に︑ 当事 者本 人の 供述 以 外に
︑ 当事 者か ら当 該 事項 につ き 供述 する こと を 授権 され た者
︑ 当事 者の 代理 人 や被 用者
︑そ し て当 事者 の共 謀 者の 供 述も 対象 にな り 得る こと は︑ 三 二 二条 との 重大 な 相違 であ る︒ ま た︑ 口頭 供述
︑ 供述 書面 だけ で なく
︑事 実上 ま たは 法 律上 の争 点に 関 連し て︑ 発言 を 伴 った 当事 者の 行 為自 体も アド ミ ッシ ョン とし て 扱わ れて きた
︒ さら に︑ アド ミ ッシ ョ ンは 本人 が直 接 知見 した 事実 の 供 述で ある 必要 は なく
︑個 人の 意 見や 他人 の意 見 を語 るも ので あ って もよ い22
︒︶
こ のよ う にア ドミ ッシ ョ ンと され る供 述 は 日本 の刑 訴法 三 二二 条一 項前 段 より も広 範で あ るが ゆえ に︑ ア ドミ ッシ ョン の 原理 を 統一 的に 説明 す るこ とは 必ず し も 簡単 では ない
︒ アメ リカ にお い て︑ アド ミッ シ ョン の位 置付 け は︑ 伝聞 法則 の 体系 化 が進 めら れる 中 で活 発に 議論 さ れ た過 去を 持つ
︒ 理論 的な 疑問 点 が解 消さ れて い ると はい えな い が︑ コモ ンロ ー 上の 伝 統と して 今日 ま で受 け入 れら れ て きた
︒以 下で は︑ 基 本的 にベ イ ン︵
B ei n
︶が 一 九八 四 年に 発表 した 論文
﹁当 事者 の ア ドミ ッシ ョ ン︑ 代 理 人 のア ド ミ ッシ ョン
:
羊の 皮を 被っ た伝 聞 狼23
﹂︶
の整 理に 従 って
︑ア ドミ ッ ショ ンの 原理 に 関す る アメ リカ の学 説 を紹 介す るこ と に した い︒
ベイ ンは
︑ア ド ミッ ショ ンの 原 理に 関す る学 説 を︑ アド ミッ シ ョン は︑
①供 述 証拠 に 当た らな いか ら 伝聞 法則 の適 用 が ない とす る見 解
︑② 供述 を行 っ た当 事者 に反 対 尋問 の機 会を 付 与す る必 要が な いか ら
︑供 述証 拠で あ って も伝 聞法 則 の 適用 がな いと す る見 解︑ 及び
③ 伝聞 証拠 に当 た るが
︑当 事者 主 義の 原理 から 認 めら れ てき た特 別の 伝 聞例 外で ある と す る見 解に 分類 し てい る︒ そし て
︑ベ イン 自身 は
︑い ずれ の見 解 も批 判し
︑ア ド ミッ シ ョン の自 由な 証 拠使 用を 認め て
︑ 補 強法 則と 証明 力 評価 によ り正 確 な事 実認 定を 担 保し よう とす る こと には 限界 が ある こ とを 理由 に︑ ア ドミ ッシ ョン を 通 常の 伝聞 例外 と して 位置 づけ る べき であ り︑ か つ︑ 伝聞 例外 を 真実 に合 致す る 形で
︑ 制限 的か つ合 理 的に 運用 する 裁 判 所の 裁量 権を 認 める こと を前 提 に︑ 伝聞 例外 の 要件 に信 用性 の 要件 を加 える 必 要は な いと 説く
︒そ し て︑ こう した 立 場 から 特に 自己 の 知識 経験 に基 づ かな いよ うな 信 用性 を欠 くア ド ミッ ショ ンの 排 除の 可 能性 を論 じて い る24
︒︶
︵1
︶ 非供 述証 拠説
︵ 情況 証拠 説︶ スト ラホ ーン
︵
S tr a h o rn
︶は
︑伝 聞法 則は 法廷 外供 述 をそ の内 容の 真実 性 を証 明す る目 的で 使用 す るこ と を 禁止 し て いる とこ ろ︑ 伝 聞法 則に 係ら ず 法廷 外の 発言 が 証拠 とし て許 容 され る場 合を
︑
①伝 聞 法則 が適 用さ れ ない 場合
︑す な わ ち︑ 法廷 外の 発 言が 供述 証拠 と して 用い られ ず
︑し たが って 何 ら信 用性 の問 題 が生 じ ない 場合
︑② 伝 聞法 則が 部分 的 に 満た され てい る 場合
︑す なわ ち
︑供 述証 拠と し て申 し立 てら れ た法 廷外 の発 言 が︑ 信 用性 を向 上さ せ るた めの 何ら か の 調整 的仕 組み の 下で 行わ れ︑ ま たは 再生 され た がゆ えに 受入 れ 可能 であ る場 合
︑③ 純 粋な 伝聞 例外 の 場合
︑す なわ ち
︑ 完 全に 無条 件下 で 行わ れた 法廷 外 の発 言が
︑信 用 性を 向上 させ る ため の調 整的 仕 組み を 不要 にす る正 当 な理 由に より
︑ 供 述証 拠と して 申 し立 てら れる 場 合に 分類 し てい る25
︒︶
そ して
︑① の 伝 聞法 則が 適用 され な い場 合と して
︑
ⅰ︶ 作 用的 な 行為 と して の発 言︵ 例 えば
︑約 束行 為︑ 中 傷行 為︑ 名 誉 棄損 行為 等︶
︑
ⅱ︶ 関 連性 をも つ 行 為 の 一部 と し て の発 言
︵事 件 と関 連性 をも つ 行為 と同 時に 行 われ た発 言 によ っ て行 為の 意味 を 説明 する 場合
︶︑
ⅲ︶ それ 自体 が関 連 性を もつ
(法政研究 84‑3‑ )28 588
情 況的 行為 とし て の発 言︵ 後述
︶︑
ⅳ︶ 以 前 の不 一致 供述 を証 人 の弾 劾に 用い る場 合︑
ⅴ︶ アド ミッ シ ョン を取 り上 げ てい る︒ そし て
︑最 初の 三つ に より 伝聞 不適 用 のす べて の場 合 をカ バー でき
︑ 後の 二 つに つい ては
︑
ⅰ︶ から
︵
ⅲ︶ の 一つ また 複数 に 分類 でき ると い う26
︒︶
さら に彼 は︑ ア ドミ ッシ ョン を
︑① 当事 者に よ る明 示的 アド ミ ッシ ョン
︑② 当 事者 と 一定 の関 係を 持 つ者 が当 該関 係 と の関 連で 行っ た アド ミッ ショ ン
︵代 理的 ア ドミ ッ ショ ン
︶︑
③他 人の 供述 を当 事者 が 否定 しな かっ た こと に よる 黙示 的 アド ミッ ショ ン
︑④ 当事 者の 行 為に よる 暗示 的 アド ミッ ショ ン の四 類型 に分 類 して い る︒ そし て︑ こ れら すべ ての ア ド ミッ ショ ンは 叙 述的 価値 を持 つ こと はあ り得 る が︑ 伝聞 法則 が 適用 され ない 本 当の 理 由は
︑そ れら が 行為 とし て使 用 さ れる から であ る とい う︒ すな わ ち︑ アド ミッ シ ョン を証 拠と し て使 用可 能な 理 由は
︑ それ らが 当事 者 又は 当事 者と 有 意 義な 関係 を有 す る者 の関 連性 を もつ 行為 であ り
︑そ れゆ えア ド ミッ ショ ンは
︑ たと え それ が叙 述的 価 値を も有 し得 る と して も︑ その 信 用性 を問 題に す るこ とな く正 当 化で きる から で ある とい う27
︒︶
以 下で は 各タ イプ のア ド ミッ ショ ンの 基 本 型で ある 明示 的 アド ミッ ショ ン に限 定し て︑ ス トラ ホー ンの 見 解を 説明 する
︒ 明 示的 ア ド ミッ ショ ン﹂ は
︑訴 訟当 事 者 に 対 して 相 手 方 が申 し 立 て た その 者 の 法 廷外 供 述 の こ とで あ る︒ スト ラ ホ ーン は︑ 明示 的 アド ミッ ショ ン は﹁ それ 自体 が 関連 性を もつ 情況 的 行為 とし ての 発言
﹂ 情況 的発 言︶ に 該 当す ると い う28
︒︶
この 情況 的 発言 とは
︑特 定 の人 物に より
︑ ある いは 特定 の 外部 的情 況の 下 で行 わ れた こと によ り
︑そ の発 言内 容 が 真実 であ るか 否 かに 関係 なく
︑ 証明 力を 持つ 発 言の こと であ り
︑伝 聞法 則は 適 用さ れ ず︑ 情況 的発 言 とし て許 容さ れ る とい う29
︒︶
情況 的 発言 の例 とし て は︑
①精 神に 問 題の ある 者の 滑 稽な 発言 をそ の 者の 精 神異 常を 証明 す るた めの 情況 証 拠 とし て用 いる 場 合の 他︑
②犬 の 飼い 飼い 主に よ る隣 人へ の犬 に 注意 とい う警 告 を︑ 犬 の獰 猛な 性格 に つい ての 飼い 主 の 認識 を証 明す る ため の情 況証 拠 とし て用 いる 場 合︑
③義 母の 息 子に 対す る妻 の 所に 帰 りな さい とい う 忠告 を︑ 義母 が 息 子の
︵妻 に対 す る︶ 愛情 を疎 外 しな かっ たこ と
︑あ るい は義 母 が嫁 に対 して 悪 意を 持 って いな かっ た こと を証 明す る
た めの 情況 証拠 と して 用い る場 合
︑④ 被害 者が 発 した 脅迫 を被 告 人が 聞い たこ と を︑ 被 告人 が正 当防 衛 を行 う必 要が あ る と信 じて いた こ との 情況 証拠 と して 用い る場 合 等を あげ てい る
︒そ して
︑明 示 的ア ド ミッ ショ ンも 情 況的 発言 の一 種 で あり
︑伝 聞法 則 が適 用さ れな い とい うわ けで あ る︒ スト ラホ ーン は そう 考え る理 由 を次 のよ うに 説 明し てい る30
︒︶
一 般に 情況 的発 言 の証 明 力は
︑そ の存 在 が当 該証 拠を 申 し 立て られ た当 事 者の 主張 の有 効 性と 整合 しな い こと によ って 生 じる
︒例 えば
︑ 愛情 疎 外行 為に より 訴 えら れて いる 義 母 が︑ 自分 の息 子 に対 し妻 のと こ ろに 帰る よう に 助言 した こと の 立証 を申 し立 て る場 合
︑彼 女は
︑原 告 であ る息 子の 妻 の
︑義 母が 自分 に 悪意 を抱 いて お り︑ かつ 息子 の 妻に 対す る愛 情 を疎 外し たと い う主 張 とは 一致 しな い 情況 を立 証し よ う とし てい るこ と にな る︒ 訴訟 当 事者 の好 まし く ない 言語 的行 為 が︑ 息子 の現 在 の訴 答 にお ける 主張 の 有効 性を 否定 す る 情況 証拠 であ る こと を理 由に
︑ 息子 に対 する 証 拠と して 申し 立 てら れる かも し れな い 場合 も︑ まさ に そう であ る︒ 当 事 者の 供述 がそ の 者の 現在 の訴 答 にお ける 主張 と 異な ると いう 情 況は
︑陪 審員 に よっ て 考慮 され るに 値 する 適切 なも の で あり
︑そ れは
︑ た また ま供 述が 叙 述的 内容 を伴 う なら ば︶ 供述 中に おい て明 示的 に 叙述 され た事 実が 真 実で あっ た と きと 同じ 程度 の 重要 性を 付与 す る場 合も ある
︒ しか し︑ 叙述 的 内容 を伴 うか ど うか は 偶然 に過 ぎな い
︒そ れは 当事 者 の 関連 性を もつ 行 為で ある がゆ え に訴 訟に 用い ら れる ので あり
︑ 伝聞 法則 の適 用 の対 象 では ない
︒伝 聞 法則 は︑ 叙述 的 で ある こと に唯 一 の正 当性 を持 つ 供述 に対 して の み適 用さ れる
︒ 彼の いう
﹁情 況 的発 言﹂ は︑ 発 言が 事実 を叙 述 する もの であ っ ても なく ても
︑ 訴訟 当 事者 の裁 判に お ける 主張 と一 致 し ない 情況 を明 ら かに する もの で あれ ば証 明力 を 肯定 でき る発 言 を意 味し てい る
︒そ し て︑ 明示 的ア ド ミッ ショ ンも
︑ 叙 述的 内容 を伴 う かど うか に関 わ らず
︑当 事者 の 裁判 にお ける 主 張と 一致 しな い 過去 の 関連 性を 持つ 行 為と して 証明 力 を 肯定 でき るの で
︑ 情況 的発 言﹂ に 分類 でき ると いう
︒し かし
︑ その 趣旨 は分 か り難 い︒ そ もそ も︑ ス ト ラホ ー ンが 情 況的 発言 とし て 例示 する 内容 は 日本 の教 科書 が いう とこ ろの
﹁ 精神 状態 の供 述
﹂に 相 当す るも ので あ るが
︑精 神状 態
(法政研究 84‑3‑ )30 590
の 供述 は表 現・ 叙 述の 過程 を伴 う ため
︑供 述の 信 用性 の有 無に か かわ らず 証明 力 をも つ わけ では ない
︒ 情況 的発 言が 常 に 証明 力を 持つ と いう ため には
︑ 当事 者の 発言 事 実︵ 情況
︶か ら 発言 者の 心理 を 推認 し
︑さ らに 発言 者 の心 理か らこ れ に 影響 を与 えた 事 実の 存在 を推 認 する 二段 階の 推 認を 容認 する 他 ない が︑ そう し た推 認 を認 める ので あ れば
︑結 局す べ て の供 述 は情 況証 拠と して の性 質 を持 つこ とに なり
︑伝 聞法 則は 無意 味な も のと なっ て しま う31
︒︶
ス トラ ホ ーン がア ド ミ ッシ ョン を情 況 証拠 とし て正 当 化し よう と試 み は︑ アメ リカ に おい て支 持を 受 ける に 至ら って おら ず
︑ま して や︑ 彼 の アド ミッ ショ ン の捉 え方 は︑ 被 告人 の法 廷外 供 述を 供述 証拠 と して 使用 する こ とが 前 提に ある 日本 の 刑訴 法三 二二 条 一 項前 段と はか け 離れ てし まう こ とか ら︑ あま り 参考 には なら な い︒
︵2
︶ 反対 尋問 不要 説 ウィ グモ アの 初 期の 見解 は︑ ア ドミ ッシ ョン の 原理 を︑ 証人 の 自己 矛盾 供述 の 弾劾 的 使用 と共 通す る 点に 見出 し︑ 実 質 証拠 とし ての 使 用を 認め ない 考 え方 であ った が
︑そ の後
︑ア ド ミッ ショ ンは 供 述証 拠 であ り︑ かつ 実 質証 拠と して 使 用 する こと を許 容 して きた 判例 の 立場 を受 入れ た 上で
︑伝 聞法 則 の適 用を 否定 し てい る
︒彼 はそ の理 由 とし て︑ まず 通 常 の論 理学 と心 理 学的 側面 から
︑
①ア ドミ ッシ ョ ンも
︑一 般の 供 述に 備わ って い るの と 同じ 自然 的な 証 明力 を肯 定で き る こと
︑② 追加 的 な価 値と して
︑ 現在 の主 張と 矛 盾す る供 述を 別 の機 会に 行っ た こと が 明ら かに なれ ば 相手 当事 者の 信 用 を失 わせ ると い う意 味に おい て
︑証 人の 自己 矛 盾供 述と 同じ 論 理が 妥当 する こ と︑ を 指摘 して いる
︒ 次に
︑証 拠の 許 容 性に 関す る法 的 ルー ルの 観点 か ら︑
③自 らの 公 判外 供述 を自 己 に対 する 証拠 と して 申 し立 てら れた 当 事者 は︑ 自ら が 伝 聞法 則を 援用 す る唯 一の 存在 で あり
︑自 らに 対 して 反対 尋問 を 行う 必要 がな い ため
︑ 伝聞 法則 を適 用 すべ き基 礎が 失 わ れる こと
︑言 い 換え るな らば
︑ その 者は 既に 自 分自 身に 対し て 反対 尋問 を行 う 機会 を 有し てい たし
︑ 証言 台に 立っ て 以 前の 供述 につ き 説明 する 機会 を 持つ こと がで き るこ と︑ を指 摘 して いる32
︒︶
ウィ グモ アに よ れば
︑ア ドミ ッ ショ ンに は二 重 の要 素か らな る 特別 の証 明力 が ある と いう
︒ひ とつ は
︑す べて のア ド ミ ッシ ョン は︑ 自 己矛 盾供 述を 証 人に 対し て使 用 する 場合 と同 様 の弾 劾的 推認 を
︑相 手 当事 者の 公判 に おけ る主 張に 対 し て行 うこ とを 可 能に する 点で あ る︒ もう 一つ は
︑全 ての アド ミ ッシ ョン は︑ 相 手当 事 者に 対し て用 い られ る場 合︑ 伝 聞 法則 を満 たし て おり
︑ひ とた び 許容 され れば
︑ あら ゆる 供述 が 情況 に応 じて 有 する の と同 じ供 述証 拠 とし ての 価値 を 有 して いる 点で あ る︒ 例え ば︑ 当 事者 が供 述を 行 った 時に 供述 が 当該 当事 者の 自 然な 偏 向な いし 利益 に 反す るこ とが よ り 顕著 であ る程
︑ アド ミッ ショ ン はよ り信 用性 が 高く なる
︒た だ し︑ この 要素 は アド ミ ッシ ョン の証 明 力を 高め るが
︑ 許 容性 にと って は 本質 的な もの で はな いと も述 べ てい る33
︒︶
なお
︑ウ ィグ モ アは
︑ア ドミ ッ ショ ンと 証人 の 自己 矛盾 供述 の 証拠 とし ての 使 用は 弾 劾的 推認 を可 能 にす る点 で共 通 す るも のと 捉え て いる が︑ 前者 と 後者 が同 じ法 理 であ ると 述べ て いる ので はな い 点に 注 意を 要す る︒ 両 者を 証拠 顕出 す る 際の 手続 的違 い とし て︑ 証人 の 自己 矛盾 供述 を 証拠 とし て使 用 する ため には
︑ 予め 証 言台 の証 人に 警 告を 行い
︑こ れ か ら自 己矛 盾供 述 とし て申 し立 て よう とす る供 述 を行 わな かっ た か否 かを 質問 す る必 要 があ る︒ しか し
︑当 事者 のア ド ミ ッシ ョン を証 拠 とし て申 し出 る 場合 は︑ この 事 前警 告は 要求 さ れて いな い︒ そ の理 由 につ き︑ 一九 世 紀中 頃ま でコ モ ン ロー 上は 相手 当 事者 には 陳述 能 力も 証言 を義 務 付け るこ とも 認 めら れな かっ た こと か ら︑ 被告 人に 以 前に どの よう な 供 述を 行っ たか 質 問す るこ とは 不 可能 であ り︑ も しそ れを 要求 す れば
︑す べて の アド ミ ッシ ョン は証 拠 から 排除 され て し まっ てい ただ ろ うが
︑そ の後
︑ 相手 当事 者の 陳 述能 力が 認め ら れ︑ 証言 を義 務 付け る こと が可 能に な った が︑ ルー ル は 変わ らな かっ た から だと いう
︒ そし て︑ ルー ル が変 わら なか っ たこ とに は二 つ の重 要 な理 由が あり
︑ 一つ 目は
︑相 手 当 事者 は事 実上 証 言台 に立 たな く てよ く︑ した が って 予め 以前 の 自己 矛盾 供述 に つき 相 手当 事者 に質 問 する 機会 を持 て な いこ と︑ 二つ 目 は︑ 事前 警告 を 要求 する 唯一 の 目的 は︑ 証人 が 退席 する 前に 以 前の 自 己矛 盾供 述に つ き説 明す る公 正 な 機会 を与 える こ とに ある とこ ろ
︑当 事者 は理 論 上は 公判 の間 出 席す るこ とに な って お り︑ アド ミッ シ ョン とさ れる 供
(法政研究 84‑3‑ )32 592
述 を取 調べ た後 に 相手 当事 者が 必 要と 考え るな ら ば︑ 説明 のた め に証 言台 に立 ち 自ら 防 御す る機 会を 持 てる こと にあ る と され る34
︒︶
この よう にウ ィ グモ アは
︑ア ド ミッ ショ ンを 証 拠と して 申し 立 てら れた 当事 者 はそ れ に対 して 反対 尋 問を 行う 必要 が な いた め伝 聞法 則 を適 用す べき 基 礎を 欠く こと
︑ すな わち
︑当 事 者は 自ら 以前 の 供述 に つき 慎重 に発 言 でき たし
︑自 ら 証 言台 に立 って 説 明す るこ とが 可 能で ある こと を 理由 に︑ アド ミ ッシ ョン は伝 聞 証拠 に 当た らな いと す る︒ 他方
︑ア ド ミ ッシ ョン の証 明 力に つい ては
︑ 相手 当事 者の 公 判に おけ る主 張 に対 する 弾劾 的 推認 力 を基 礎と した 上 で︑ 情況 に応 じ て 程度 は異 なる が
︑当 事者 の自 然 な偏 向な いし 利 益に 反す る供 述 はそ の供 述の 信 用性 を 高め ると いう 意 味で の証 明力 も 伴 い得 るこ とを 認 めて いる
︒し か し︑ ウィ グモ ア の見 解に は︑ 次 のよ うな 問題 が つめ ら れる こと なく 放 置さ れた まま に な って いる
︒ 第一 に︑ アド ミ ッシ ョン の信 用 性に 関し て自 ら が法 廷で 説明 す る機 会の 保障 は
︑相 手 方証 人に 対す る 反対 尋問 権の 保 障 とは
︑同 じ意 味 を持 つわ けで は ない
︒す なわ ち
︑伝 聞法 則が 法 廷外 証拠 を供 述 の真 実 性を 証明 する た めの 証拠 とす る こ とを 原則 とし て 禁止 して いる の は︑ 反対 尋問 権 を行 使た めの 機 会を 相手 当事 者 に与 え るた めで ある
︒ 相手 当事 者が 反 対 尋問 によ り信 用 性を 吟味 する 必 要が ない と考 え ると きは
︑伝 聞 証拠 に同 意す る こと で
︑伝 聞証 拠で あ って も証 拠能 力 を 与え るこ とが で きる 一方
︑反 対 尋問 権の 行使 が 必要 と考 える と きは
︑原 則と し て伝 聞 証拠 の証 拠調 べ は行 われ ず︑ 原 供 述者 の証 人尋 問 が行 われ る︒ こ れに 対し て︑ ア ドミ ッシ ョン の 場合
︑自 己に 対 する 証 拠と して 使用 さ れる 側の 当事 者 が その 信用 性を 争 うこ とを 選択 し たと して も︑ ア ドミ ッシ ョン の 証拠 能力 が否 定 され る わけ では ない
︒ すな わち
︑ア ド ミ ッシ ョン が自 己 に対 する 証拠 と して 採用 され た 当事 者は
︑確 か に︑ それ が真 実 を述 べ たも ので ない こ とを 説明 する 機 会 を持 つこ とは で きる し︑ その 説 明に 成功 する こ とも ある だろ う が︑ たと え信 用 性の 基 盤を 欠く よう な アド ミッ ショ ン で あっ ても
︑裁 判 所が 事実 認定 の 資料 とす るこ と を防 ぐこ とが で きる わけ では な い35
︒︶
第二 に︑ ウィ グ モア は︑ ほぼ 民 事事 件を 念頭 に おい てア ドミ ッ ショ ンの 説明 を して い るが
︑刑 事事 件 の場 合︑ 被告 人 が
︑ア ドミ ッシ ョ ンの 内容 が虚 偽 であ るこ とに つ き法 廷で 説明 す るこ とは
︑単 な る防 御 権の 行使 では な く︑ 黙秘 権の 放 棄 をも 意味 する
︒ すな わち
︑ア ド ミッ ショ ンを 証 拠と して 用い ら れる 被告 人は
︑ 黙秘 権 を放 棄し て︑ 自 ら︑ 問題 とな っ て いる 法廷 外供 述 を行 った のか
︑ 自己 が語 った こ とが 正確 に法 廷 に顕 出さ れて い るか
︑ それ は真 実を 述 べた もの かを 供 述 する 方法 を選 択 する か︑ ある い は黙 秘権 行使 を 選択 し︑ 自ら は アド ミッ ショ ン に対 し て何 ら供 述し な いか の選 択を 迫 ら れる こと にな る
︒刑 事事 件に お いて アド ミッ シ ョン の採 用は
︑ 少な くと も被 告 人に 黙 秘権 行使 を放 棄 する か維 持す る か の選 択を 迫る 不 利益 を及 ぼす 以 上︑ 信用 性の 基 盤を 欠く よう な アド ミッ ショ ン まで 許 容し てし まう こ とを 防ぐ 方策 が 採 られ てし かる べ きで なか ろう か
︒と ころ が︑ ア ドミ ッシ ョン を 伝聞 法則 の適 用 外と 位 置付 けて しま っ ては
︑司 法審 査 に おい て︑ アド ミッ シ ョン の 証拠 と して の許 容性 をコ ン トロ ー ルす る可 能性 は 大幅 に制 約さ れ て し まう だ ろ う︒ も し ウ ィグ モア が︑ ア ドミ ッシ ョン に 弾劾 的推 認力 し か認 めず
︑真 実 立証 のた めの 証 拠に は なら ない とい う 当初 の立 場を 維 持 して いた なら ば
︑伝 聞証 拠に 該 当し ない とい う 位置 付け は一 貫 して いた とい え る︒ し かし
︑実 質証 拠 とし ての 使用 を 認 める 立場 をと る 以上
︑ア ドミ ッ ショ ンを 非伝 聞 と位 置付 ける こ とは
︑一 般的 な 伝聞 証 拠の 定義 とは 一 貫し ない
︒
︵3
︶ 特別 な伝 聞例 外 説 アメ リカ では
︑ アド ミッ ショ ン を伝 聞証 拠と 位 置付 けた 上で
︑ しか し伝 聞例 外 を認 め るた めの 信用 性 の情 況的 保障 と は 無関 係な
︑特 別 の理 由か ら伝 聞 例外 を認 めた も ので ある とす る 説明 も有 力で あ る︒ モー ガン は︑ 伝 聞証 拠を 供述 内 容の 真実 性を 証 明す るこ との で きる もの とし て 申し 立 てた 法廷 外供 述 と定 義す るな ら ば
︑ア ド ミッ ショ ン も明 らか に伝 聞 証拠 に当 たる とし た 上で
︑ アド ミッ シ ョン の 法 理は 伝 聞 法則 よ り も 歴 史が 古 く︑ 特権 の主 張が 問題 に なっ てい る場 合 を除 き︑ 当事 者 のい か な る関 連性 をも つ行 為の 証 拠も
︑ その 者に 対す る 証拠 とし
(法政研究 84‑3‑ )34 594
て 許容 でき る﹂ と いう
︑承 認さ れ てき た法 理の 附 随物 であ ると い う︒ そし て︑ 不 適切 な 方法 で獲 得さ れ た自 白を 排除 す る 自白 法則 を︑ ア ドミ ッシ ョン の 法理 を後 に修 正し た もの とし て位 置づ け てい る36
︒︶
さ らに
︑彼 は
︑ 当事 者自 身に よっ て 行わ れた アド ミ ッシ ョン の許 容 性は
︑そ れが 行 われ た情 況が 事 実認 定者 によ る それ を 公正 に評 価す る 手段 を与 える と い う考 え 方に では なく
︑訴 訟 の 当事 者主 義理 論に 依拠 し てい る︒ 当 事者 は︑ 自分 に対 して 反対 尋問 す る機 会 を 持て な か った こと や︑ あ るい は自 分は 宣 誓の 制裁 の下 で 話し ても 信用 す るに 足り ない こ とに
︑ 異議 を申 し立 て るこ とは ほと ん ど でき ない
︒当 事 者の 相手 方は
︑ その 当事 者が 述 べた り︑ 行っ た こと が何 であ れ
︑そ の 者に 対し て使 用 する こと が許 さ れ る︒ もと もと
︑ 当事 者は 法廷 で 説明 する 機会 を 持つ こと はで き なか った が︑ 一 八〇
〇 年代 の中 ごろ か ら︑ 証人 適格 が 肯 定さ れる よう に なり
︑事 実認 定 者に
︑そ の者 が 知っ てい るあ ら ゆる 関連 情報 を 提供 で きる よう にな っ た︒ その 結果
︑ 伝 統的 な判 例は 供 述証 拠に 対し て 通常 適用 され る 制限 を当 事者 本 人の アド ミッ シ ョン 証 拠に 適用 する こ とを 否定 して い る
﹂と も説 明し て いる37
︒︶
また
︑レ フ︵
L ev
︶ も︑ ア ドミ ッシ ョン は
︑法 廷外 供述 で ある にも 関わ ら ず真 実を 証明 する ため の証 拠と し て許 容さ れ る以 上︑ 定義 上 は伝 聞証 拠で あ ると 位置 づけ て いる
︒そ の上 で
︑信 用性 を高 め る方 向 に推 進さ せる 力 によ って のみ ほ と んど の例 外の 存 在が 正当 化さ れ るの に対 し︑ ア ドミ ッシ ョン は 異な る基 礎の も と受 け 入れ られ てい る とい う︒ すな わ ち
︑ それ は︑ 当事 者 が別 の機 会に 裁 判所 にお ける 現 在の 立場 と 合致 しな い供 述を 行っ てい たと きは
︑そ の 者 の現 在の 立 場は 悪く なる
︑ とい う司 法政 策
﹂で あり
︑ま た︑
それ は︑ 不一 致に 対す る制 裁で あ り︑ 現 在の 請求 と異 な る別 の機 会 の説 明を 締め 出 すこ とを 防止 す るた めの 禁反 言 であ る︒ 相対 的 な信 用性 は重 要 では な い︒ 当事 者が 自 分自 身に 矛盾 す れ ば︑ 裁判 所は い ずれ かの 立場 を 真実 とし て取 り 扱う こと が許 さ れる
︒﹂ とい うわ け であ る38
︒︶
こう した 当事 者 の自 己責 任論 に 依拠 した 説明 は
︑ア ドミ ッシ ョ ンの 性質 を︑ 伝 聞法 則 の体 系に とら わ れる こと なく 説 明 する 試み であ る
︒刑 事事 件に お いて も︑ 例え ば
︑取 調べ 時に 被 告人 が任 意に 行 った 弁 解と
︑公 判に お いて 検察 側の 証
拠 を見 た上 で行 わ れた 被告 人の 弁 解の 内容 と異 な ると き︑ 捜査 段 階の 供述 が公 判 にお け る被 告人 の弁 解 に反 駁す る証 拠 と して 使用 でき る こと はあ るだ ろ う︒ その 際︑ た とえ 捜査 段階 の 弁解 が虚 偽で
︑ 公判 段 階の 弁解 が真 実 であ った とし て も
︑こ うし た使 用 が許 容さ れる の は︑ 被告 人が 自 ら捜 査段 階で 虚 偽弁 解を 行っ た こと が 招い た帰 結と 言 えな くは ない
︒ し かし
︑捜 査段 階 で自 白し てい た 被告 人が 公判 に おい て否 認に 転 じた とき に︑ 捜 査段 階 の自 白に よっ て 犯罪 を立 証し よ う とす るケ ース に おい ては
︑被 告 人の 捜査 段階 の 自白 を法 廷に お ける 被告 人の 否 認供 述 の信 用性 を弾 劾 する 目的 にと ど ま らず
︑捜 査段 階 の自 白が 検察 側 立証 の中 心に な る場 合が 含ま れ る︒ この 場合 は
︑被 告 人が 捜査 段階 で 自白 した こと が 虚 偽か 真実 かを 問 わず に︑ 証拠 と して の価 値を 認 める こと はで き ない
︒他 方で
︑ 被告 人 は捜 査段 階で 自 白し てい たと い う 事実 自体 が︑ 事 実認 定者 に予 断 を与 え︑ 事実 認 定を 誤ら せる 危 険は 常に 存在 す る︒ そ れゆ え︑ 当事 者 主義 原理 に基 づ く アド ミッ ショ ン 証拠 の正 当化 は
︑民 事事 件に お いて はと もか く
︑と りわ け﹁ 合 理的 な 疑い を超 える 証 明﹂ が要 求さ れ る 刑事 事件 にお い ては
︑何 らか の 安全 装置 が設 け られ てし かる べ きで あろ う︒ 以上 に検 討し て きた よう に︑ ア メリ カに おけ る アド ミッ ショ ン の原 理を めぐ る 議論 は
︑い ずれ もそ の まま 日本 に受 け 入 れる こと は妥 当 でな かろ う︒ そ れで は︑ 刑訴 法 三二 二条 一項 の 原理 はど のよ う に理 解 すれ ばよ いか
︑ 節を 改め 若干 の 考 察す るこ とに し た︒
三 三 二 二 条 一 項 の 解 釈
現行 刑事 訴訟 法 が被 告人 以外 の 者の 供述 と被 告 人の 供述 を区 別 して 伝聞 例外 規 定を 定 めて いる こと に つき
︑ア ドミ ッ シ ョン の法 理の 影 響を 受け て制 定 され たこ とは 事 実だ ろう
︒英 米 法に おけ るア ド ミッ シ ョン の法 理の 主 要な 適用 場面 は 民 事事 件で ある が
︑日 本で は刑 事 事件 にお いて の み︑ 当事 者︵ 被 告人 に限 定さ れ てい る
︶の 法廷 外供 述 に特 別の 伝聞 例
(法政研究 84‑3‑ )36 596