論文内容要旨
論文題名
Visualization of junctional epithelial cell replacement by oral gingival epithelial cells over a life time and after gingivectomy
(口腔上皮由来細胞による接合上皮細胞置換の可視化)
掲載雑誌名 Scientific Reports (投稿中)
歯周病学 加藤麻友
内容要旨
歯の萌出直後の接合上皮(JE)は歯原性上皮に由来し、経時的に口腔歯肉 上皮(OGE)由来細胞に置換するとされているが、その詳細は明らかでない。
本研究の目的は、マウス歯胚移植技術を用い、萌出直後の歯原性上皮由来 の JE における口腔上皮由来細胞による置換の詳細な過程について検証す ることである。
C57BL/6N(野生型)マウスの第一臼歯を抜歯し、器官培養した胎生 14 日 齢 C57BL/6-KI(CAG-EGFP) マウスの歯胚をその抜歯窩に移植した。萌出し た移植歯の JE について移植後 200 日まで GFP 陽性細胞の局在を観察した。
また JE において発現が報告されている Integrin
4、Laminin5 について免 疫組織学的解析を行った。さらに、野性型マウスに GFP マウスの歯胚を移 植し、萌出直後に口蓋側 JE 部分を切除し、治癒過程の経時的な解析を行 った。加えて、切除前である歯原性上皮由来 JE、切除 30 日後の OGE 由来 JE、OGE の遺伝子プロファイルを比較した。移植後 50 日の移植歯萌出直後では、歯髄、歯根膜および JE が、移植歯 胚由来の GFP 陽性細胞により構成されていた。JE においては移植後 140 日まで GFP 陽性細胞が検出され、経時的に GFP 陽性細胞の減少が認められ た。移植後 200 日では接合上皮は GFP 陰性細胞にて構成されていたことか ら JE は OGE 由来細胞に置換したと推測される。しかしながら、長期観察 の間に GFP の発現抑制が生じた可能性も否定できないため、全身に tdTomato を発現する C57BL/6-KI(ROSAmT/mG)マウスに同様の手法で GFP 陽性 歯胚を移植し、200 日間観察した。移植後 50 日の時点では JE は GFP 陽性 細胞にて構成されていたが、移植後 140 日では JE における GFP 陽性細胞 の減少を認め、基底層でレシピエント由来の tdTomato 陽性細胞による部
分的な置換がみられた。移植後 200 日では接合上皮に GFP 陽性細胞は認め られず、接合上皮は完全に tdTomato 陽性細胞により置換されていた。以 上より GFP 陽性細胞の消失は、GFP の発現抑制によるものではなく、OGE 由来細胞による置換であることが明らかとなった。
また、口蓋側 GFP 陽性 JE の切除後に治癒した JE は、GFP 陰性細胞にて 構成され、歯原性上皮由来 JE の再生は認められなかった。一方で、免疫 組織学的解析では、移植後 200 日および JE 切除後に治癒した JE において も、移植後 50 日の歯原性上皮由来 JE と同様に Integrin
4 および Laminin5 の発現が認められた。RNA sequence による網羅的遺伝子発現解析の結果より、歯肉切除後の OGE 由来 JE は
Odam
を含むいくつかの JE 特異的遺伝子の発現を獲得して いた。しかしながら、主成分解析の結果、歯肉切除術前の歯原性上皮由来 JE とは異なる遺伝子発現プロファイルを示していることが明らかとなっ た。以上より、移植歯の JE は経時的に OGE 由来細胞によって基底層より置 換され、また切除治癒後においても JE は OGE 由来細胞によって構成され ることが明らかとなった。さらに、歯原性上皮由来 JE が OGE 由来 JE とは 異なる特有の性質を有する可能性が示唆された。