【A.診療体制】
当科は、漢方診療とリウマチ・膠原病の診療を担当して います。平成 31 年度は、藤永洋部長、渡辺哲郎部長、 引網宏彰非常勤医、山口智史非常勤医(富山大学第一内 科免疫・膠原病内科所属)、金原嘉之非常勤医(富山大学 和漢診療科所属)の 5 名が外来を担当します(表1)。藤 永医師は日本東洋医学会認定漢方専門医および指導医、 日本リウマチ学会リウマチ専門医および指導医です。渡辺 医師は漢方専門医および指導医、リウマチ専門医および 日本リウマチ学会認定ソノグラファーです。引網医師は漢 方専門医・指導医、リウマチ専門医です。当院は日本東 洋医学会、日本リウマチ学会の専門医教育の認定施設で あり、漢方医学と関節リウマチ・膠原病の教育を研修医 および専攻医に当科で行っています。 −1−◆ 発行日
平成31年4月15日
No.
202
富山県立中央病院 〒 930-8550 富山市西長江 2-2-78 TEL 076(424)1531 http://www.tch.pref.toyama.jp/看 護 部 の 紹 介
薬 剤 部 の 紹 介
栄 養 管 理 科 の 紹 介
内 科 和 漢 ・ リ ウ マ チ 科
陽春の候、皆様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。 今月の各部・各診療科の紹介は、内科和漢・リウマチ科と形成外科です。 内科和漢・リウマチ科スタッフ写真 後列左より 宮本看護師 有沢看護師 金原医師 前列左より 渡辺部長 藤永部長 陽春の候 皆様におかれましては 益々ご健勝のこととお慶び申し上げ ます。 昨年度中は、当院の運営にご協力 いただき大変ありがとうございました。 本年度もよろしくお願いいたします。 最近のトピックスといたしましては、循環器内科と心 臓血管外科がタイアップして経カテーテル的大動脈弁植 え込み術(TAVI)を導入しています。TAVI は重症大動 脈弁狭窄症に対する新たな治療法で、年齢や持病により 従来の外科的人工弁置換術は困難であると判断された 患者さんでも治療が可能な新しい低侵襲治療法です。消 化器内科では県内初の超拡大内視鏡を導入しています。 最大 520 倍の光学拡大機能が付くことでリアルタイムに 細胞レベルまで観察が可能となっています。外科系では、 ダビンチを使用したロボット手術も疾患の適応を拡大し ています。泌尿器科ではこれまでの前立腺癌に加えて腎 癌に対して、外科では胃癌、大腸癌、婦人科では卵巣疾 患に対しても施行しています。また、脳外科では下垂体 腫瘍に対する内視鏡治療も開始しています。 当院は地域の先生方および病院、施設等と患者さん の医療情報を共有し、さらなる連携に向けて日々改善し てまいりたいと考えております。総合地域連携部長挨拶
診療部長・外科部長 加 治 正 英年間 500 名を超える方が初診で訪れています。漢方診療に関心・受療希望をされる患者さんや、関節リウマチ・ 膠原病の患者さん、それらが鑑別にあがる患者さんを早期に当科へご紹介いただけたら幸いです。
【B.診療内容】
1. リウマチ・膠原病:リウマチ疾患の的確な早期診断・鑑別に心がけています。そのため、関節エコーや MRI 検査などが速やかに行えるようになっています。関節リウマチに対する生物学的製剤は現在本邦で使用可能 なすべての製剤に対応しています。また、いくつかの臨床研究・治験に参加しています。膠原病の難治例に 関しては、各臓器の専門科と連携をとりながら診療に当たっています。 2. 漢方医学(和漢診療学):東洋医学や和漢薬に関する古今の叡智を活用し、西洋医学ではなかなか対処しが たい疾患や病態の方を主に対象としています。治療は漢方エキス製剤とともに、生薬を用いた煎じ薬も保険 適応で使用しています。【C.WoCBA 症例に対する関節リウマチ診療について】
WoCBA は Women of Child-Bearing Age の略で、妊娠・出産可能な 18-45 歳の女性を指します。関節リ ウマチ(以下 RA)は女性に多く(男女比は 1:3 ~ 4)、RA の発症年齢に 20 ~ 40 歳台の妊娠可能な女性が数 多くいらっしゃいます。 妊娠前(非妊娠期)の問題点は、RA 女性の妊娠・出産率が一般女性より少ないことや、RA 治療は将来の妊 娠に与える影響を考慮しなければならないことが上がられます。厚生労働省研究事業『関節リウマチ(RA)や炎 症性腸疾患(IBD)罹患女性患者の妊娠、出産を考えた治療指針の作成』の 2017 年度総括によれば、2015 年 の RA 女性患者からの出産は一般女性の 42.2%(95%CI:24.1-60.2%)に留まっていました。この原因として、 RA の疾患そのものや治療による妊孕性低下と RA に罹患したことによる妊娠・出産・育児に対する不安から妊娠 を制限する患者がいることが考えられます。これまでの疫学研究などから、RA の疾患活動性が高いと不妊率が 高くなるとが知られています。従って妊娠の可能性がある WoCBA の RA 患者にはできるだけ妊娠前に RA 疾患 活動性を下げることが望まれます。 妊娠期の RA 患者の問題点は、RA 疾患そのものによる母体・胎児への影響と RA 治療薬の胎児への影響が上 げられます。RA では妊娠中は関節炎が軽快して分娩後に再燃することが知られています。RA は Th1/Th2 バラ ンスが Th1 優位で IFN γ、TNF α、IL-6、IL-12 などの炎症性サイトカインの濃度が増えているが、妊娠中は Th2 優位となり IL-4、IL-5、IL-10 などの抗炎症性サイトカインの濃度が増えることで RA の活動性が低下すると考えら れています。また、妊娠中は制御性 T 細胞の数が増加し、抗炎症性サイトカンの産生を増加、炎症性サイトカイ ンの産生を低下させることが言われています。しかし、最近の疫学研究で妊娠中も半数以上の RA 患者は中疾患 活動性以上を維持していることが知られるようになりました。そして、妊娠中の疾患活動性が高いと早産になりや すいことや低出生体重児の出産が多くないやすいことが報告されています。低出生体重児は、出生後 3 か月間の 急激な体重増加をきたしやすく、将来の心血管イベントや糖尿病などの代謝性疾患発症のリスクが懸念されます。 分娩後の問題点は、RA の再燃、母乳栄養時の RA 治療薬をどうするか、育児での母体への負担が上げられます。 出産後に約 4 割の患者が RA 再燃するとも言われ、分娩前より RA 再燃に備えた治療戦略を立て、授乳中は乳児 の安全性を考えた薬物治療を行うことが大事となります。妊娠・授乳中の薬物治療に関しては厚生労働科学研究 班から出された「全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(JIA)や炎症性腸 疾患(IBD)罹患女性患者の妊娠、出産を考えた治療指針」(https://ra-ibd-sle-pregnancy.org/ からダウンロー −2− −5− 月 火 水 木 金 1 診 渡辺 ○渡辺 渡辺 ○渡辺 ○渡辺 2 診 ○藤永 藤永 ○藤永 藤永 藤永 3 診 ○山口 ○金原 ○引網 表1−3−
【A.診療体制】
平成 31 年 3 月を持ちまして黒田友集医師が退職し、平成 31 年 4 月から川村 亮医師が赴任しました。現在、池田医長・ 川村医師の 2 名で診療をおこなっています。外来診療は午前 中のみとなっており、外来担当は表1のとおりです。月・水 曜日の午後、木曜日の午前 / 午後は、中央手術室での手術 日となっています。今後ともよろしくお願い申し上げます。看 護 部 の 紹 介
薬 剤 部 の 紹 介
栄 養 管 理 科 の 紹 介
形 成 外 科
形成外科スタッフ 左より 長谷部看護師 池田医長 川上医師 ド可)が参考となります。 当科で経験したセルトリズマブペゴル(CZP)を使用し、帝王切開で児を得た 30 代女性の関節リウマチ患者 の症例を提示します。帝王切開は、子宮筋腫の手術歴があるために施行されました。セルトリズマブペゴルは、 Fc 部分がポリエチレングリコールに置換されているため、胎盤通過性が極めて少ないとされています。妊娠・出 産を希望する関節リウマチ患者への生物学的製剤としてはセルトリズマブペゴルが推奨されます。 【現病歴】X-2 年 2 月 両側手指関節炎で RA 発症.某整形外科でブシラミン(Buc),サラゾスルファピリジン (SASP)で治療され,コントロールは良好であった.X 年 6 月より左手関節痛が出現し,両手のこわばりも悪化. 同年2月当科に紹介された. 【既往歴】子宮筋腫で核出術 【生活環境】既婚.妊娠歴なし.現在不妊症の加療中 【血液生化学検査】WBC7,300/mm3,RBC 375 万 /mm3,Hb 12.4g/dl,Ht 35.7%,Plt 26.6 万 /mm3, CRP 0.13mg/dl,ESR 16mm/h,MMP-3 83.3ng/nl,RF 71IU/ml,抗 CCP 抗体 153U/ml,ANA 80x, 抗 SS-A 抗体 1x,抗 SS-B 抗体 (-) 【治療経過(図 1. 図 2.)】活動性のある RA で患者は寛解を希望していた。また、30 代女性で妊娠を希望して不 妊症の治療中であった。そのためセルトリズマブペゴル(CZP)を開始した。CZP 開始後、RA は寛解を達成した。 CZP 開始 56 週後に妊娠した。妊娠中も CZP を継続し、妊娠 32 週で帝王切開にて健康生児を得た。出産後も CZP を継続しながら母乳栄養を行い、RA は寛解を維持していた。(詳細は臨床リウマチ, 30:107-113, 2018 をご覧ください) (文責:藤永) CZP 200mg/2w SASP BUC PSL 2.5mg/d mHAQ 0.00 0.875 0.00 0.125 0.00 0.00 0.00 0.125 0.00 DAS28‐ESR SDAI 100mg/d 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 0W 4W 12w 24W 36w 44W 52W DAS28‐ ESR SDAI CDAI 1.0g/d 5mg/d Toyama Prefectural Central Hospital SDAI DAS28ESR 4 brest feeding CZP 400mg/2w200mg/2w SASP cerecoxib mHAQ 0.375 0.00 0.250 0.00 0.125 0.00 0.00 0.00 DAS28‐ESR SDAI 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 0W 4W 12w 24W 44W 52W 80W 88W 96W 104W DAS28‐ ESR SDAI pregnancy 400mg/d→200mg/d 1.0g/d Skin rash Dec 17 deliveryToyama Prefectural Central Hospital Niigata Rheumatic Center
SDAI DAS28ESR 3 brest feeding 図2 図1
【B.NPWTi-d(周期的自動注入機能をともなった局所陰圧閉鎖療)について】
治りにくい創傷を陰圧にコントロールし環境を整え、創傷治癒を促進する陰圧創傷治療システムは、2010 年 4 月より保険診療にて入院患者さんに対して使用可能となり、平成 25 年 7 月より外来通院患者さんに対しても使 用可能となりました。
これまで当科では、局所陰圧閉鎖療法(Negative Pressure Wound Therapy、以下 NPWTという。:図 1) として、ActiV.A.C. 型陰圧維持管理装置(KCI 社)、PICOTM 創傷治療システム(スミス・アンド・ネフュー社)、 SNaPʀ陰圧閉鎖療法システム(KCI 社)を用いていました。 更に平成 30 年より、洗浄液の周期的自動注入機能により創面の環境調整、創の清浄化を行い、管理された 陰圧を付加し、創の保護、肉芽形成の促進、滲出液と感染性老廃物の除去を図り(Negative Pressure Wound Therapy with Instillation and Dwelling、以下 NPWTi-d という。:図 2)、創傷治癒を促進するこ とを目的とした V.A.C.Ulta 治療システム(KCI 社)(図 3)を使用するようになりました。 −4− −3− 図 1.NPWT(V.A.C. 治療) 管理された陰圧を付加し、創の保護、肉芽形成の促進、滲出液と感染性老廃物の除去を図り、 創傷治癒を促進します。 図 3.V.A.C.Ulta 治療システム 図 2.NPWTi-d(V.A.C. ベラフロ治療) 洗浄液の周期的自動注入機能により創面の環境調整、創の清浄化を行い、管 理された陰圧を付加し、創の保護、肉芽形成の促進、滲出液と感染性老廃物 の除去を図り、創傷治癒を促進します。 月 火 水 木 金 午前 1 診 (池田) ○ ○ ○ × ○ 午前 2 診 (川村) ○ ○ ○ ○ ○ 表1
今回は、NPWTi-d を行うV.A.C.Ulta 治療システムについて紹介します。 従来の陰圧閉鎖療法では壊死組織を伴う感染創に対して使用することは 感染悪化の問題がありましたが、V.A.C.Ulta 治療システムは、局所陰圧 閉鎖療法(V.A.C. 治療)中に、創面上のフォームへの洗浄液(生理食塩水) を注入し一定時間浸漬させ、それを回収することを周期的に繰り返し行う (ベラフロ治療:図 4)ことで局所創洗浄を行い、感染創に対しても効果 的に創傷治癒を促進することを目的とします。また、洗浄が必要なくなれ ば周期的自動注入機能を用いず、従来の局所陰圧閉鎖療法として使用す ることが可能です。 1. 適応疾患 ① NPWT の適応疾患: 既存治療に奏効しない、或いは奏効しないと考えられる難治性創傷 A 外傷性裂開創(一次的に閉鎖が不可能なもの) b 外科手術後の離開創・開放創 c 四肢切断端の開放創 d デブリードマン後の皮膚欠損創 ② NPWTi-d の適応疾患: 既存 NPWT で奏効しない難治性創傷、或いは既存 NPWT で奏効しないと考えられる難治性創傷(局所感 染が存在しても、その拡大がなく、沈静化すると考えられる創傷及び汚染創に限ります。) 2. 症例 1) 60 代 男性。胃癌手術後 SSI(手術部位感染)。 感染部を除去・洗浄し V.A.C.Ulta 治療システムにて 治療を開始。生理食塩水 20ml を 10 分間浸漬させ 3.5 時間の陰圧で開始。徐々に肉芽形成・創収縮を認め、皮 膚欠損の面積に収縮に伴い、浸漬量を減少させ、陰圧時 間も長くしていき、4 週間以降は軟膏治療で 50 日目に は上皮化を認めました。 2) 60 代 男性。 肝 細 胞 癌 手 術 後 SSI。 壊 死 部 を可及 的 に 除 去し V.A.C.Ulta 治療システムにて治療を開始。24ml を 10 分間浸漬させ2.5 時間の陰圧で開始。壊死除去を追加し、 徐々に肉芽形成・創収縮を認め、NPWTi-d 開始から 25 日目に縫縮しました。 以上、NPWTi-d について説明させていただきました。 今回ご紹介しました NPWTi-d は、創傷の状態・患者さん自身の全身状態などによって適応条件がありますが、 感染を伴う創傷の治癒に対して有用なシステムです。 創傷治癒についてご不明なことがありましたら形成外科にご相談ください。 (文責:池田) −5− 図 4.V.A.C. ベラフロ治療
−6− −1− がん診療に関する相談支援センター ホームページアドレス http://www.tch.pref.toyama.jp/ 地域連携室(医療機関向け)電話076−424−1531/内線3177 メールアドレス [email protected] 医療相談室(患者・ご家族向け)電話076−424−1531/内線9130・9307 メールアドレス [email protected] 「地域連携室だより」の送付を希望されない 場合は下記までご連絡下さい。 富山県立中央病院 地域連携室 代表電話 076(424)1531/内線3177 予約専用 076(491)7160 F A X 076(491)7109 新年度も引き続きよろしくお願いいたします。 5月1日には、新元号「令和」が始まります。これからの未来が希望に満ち溢れたよ り良い社会となるよう願いが込められているとのことです。令和の出典となった万葉集 の関連本が書店で売れ切れているようですが、この機会に万葉集に触れてみるのもよ いかなと思っています。地域連携室一同、気持ちを新たに「令和」を迎えたいと思いま す。ご指導、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。 (地域連携室主幹 山口)