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分子組織体を感応物質に用いる電気化学計測法の研 究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

分子組織体を感応物質に用いる電気化学計測法の研 究

中野, 幸二

https://doi.org/10.11501/3075570

出版情報:Kyushu University, 1993, 博士(工学), 論文博士

(2)

第4章 二官能性長鎖チオールによる分子修飾電極.

4.1 緒言

クラウンエーテル誘導体を用いる アンモニアガスセンサ

さまざまな分子を秩序だった 構造に組織化し、 これにより個々の分子にはない 機能を獲得する。 このような組織体を構築するうえで、Langmuir - Blodgett (日) 法は最も有力な手法である。 これは、 本研究で意図する修飾電極系でも同様であ

るが、LB法と比較してごく単純な、 アルカンチオール類の化学吸着を利用する方 法についても興味深い報告がなされている1 )。

合硫黄化合物が、 水銀や金電極に吸着する現象は古くから知られている。 しか しこの現象は、 電極表面の不動態化という側面から捉えられているに過ぎなかっ た。 近年、 さまざまな表面分析法の発展を背景に、 長鎖アルキル基を持つチオー ルないしはジスルフイド類について、 自己組織的な単分子膜 形成が指摘された2)。

これは、 自己組織化単分子膜(self-assembled monolayer, SAM)として、注目を集め ているが、 固体表面で、の有機分子の自己組織化現象という観点からも興味深い。

単純なアルカンチオール類からの SAMは、 膜の均一性、 モノマーの配向性と

もに良好な特性を持っている。 加えて、 簡便な浸積法で膜を形成できる点は、 煩 雑な操作や技術的な熟練が要求されるLB法と対照的である。 またSAMモノマー の性質から類推して、SAM形成は金属表面への化学吸着によって起こると考えら れる。 この点についても、 銀表面での表面増強ラマンスペクトル測定から、 金属

(3)

一硫黄配位結合の関与が示唆されている3)。 金属一硫黄配位結合の安定性、 ない しは結合の不活性さを考慮すると、 SAMは電極表面の修飾法としても有望といえ る。 実際、 単純なアルカンチオールからの SAM修飾電極は、 強酸溶液中での電 位掃引にも耐え、 比較的長期(10日程度)の安定性的も良好と報告されている。

序章でも述べたように、 我々は SAM を修飾電極に応用するうえで前提となる 機能化一二官能性物質の合成を手掛けてきた4, 5)。 本章では、 末端にクラウンエ ーテルを導入した二官能性物質(1 )を合成した。 このような化合物から形成し たSAMでは、 ホストーゲスト相互作用の発現が期待できる。 しかしながら、 修飾 電極の電気化学的な特性を考えると、 問題点はもう一つある。

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我々が合成した二官能性物質も含めて、 これまでに報告されている SAM のほ とんどは絶縁体であり、 電気化学的にも不活性である。 また、 SAMモノマーが含 む長鎖アルキル基、 これはモノマーの綴密なパッキングに不可欠であるが、 その 疎水的な性質は、 イオン性物質の膜透過には不都合となる。 いずれの性質も、 酸 化還元反応に関与する化学種の電極反応の回害につながり、 電気化学的な応用を 図るうえではデメリットといえる。 フエロセニル基など の酸化還元活性な置換基 を導入した SAMモノマーの利用6, 7)、 あるいは疎水相互作用によってSAM中に 酸化還元活性種を保持させた系8, 9)などは、 この欠点を解消する一つの方法とい える。 修飾電極が酸化還元能を持つ場合、 共存する酸化還元活性種に対するメデ

イエーション作用が期待できるためである。

これに対して我々は、 SAMの誘電的性質、 つまり修飾電極の交流電気化学的な 特性に着目した検討を行っている5)。 第二章でも述べたように、 電極に微小な交

(4)

流を印加すると、 電極表面の誘電的性質に由来する交流の変調が観測される。 電 気化学的に不活性なSAMの形成は、 修飾電極を理想分極電極と見倣す、 つまり 電極表面では電子の授受が起らないと仮定する論拠となり得る。 またSAMの均 一性の高さも、 電極界面が単純なコンデンサと等価であると 仮定して解析するう えで都合が良い10)。

本章では、 末端にクラウンエーテルを導入したこ官能性物質(1)を合成し修 飾電極に応用した。 第二章で考察したように、 交流測定法はドライな系への適用 が容易といった利点を持っている。 そこで、 修飾電極のインピーダンス測定と組 み合 わせたガスセンサへの応用について検討した。 その結果、 本系がppmオーダ ーのア ンモニアガスに選択的に応答することがわかった。 このときの応答機構を 明らか にするために、 周波数応答分析法を用いて、 センサ セルの交流特性を詳細 に検討した結果についても述べる。

4.2

実験

4.2.1

試薬および修飾試薬の合成

化合物(1)は、 ヒドロキシメチルー18-クラウン-6 および11.11'-ジチオジウン デカン酸の酸塩化物を縮合し得た11)。 その他の試薬は、 全て市販品特級であり、

特に精製はせず、そのまま用いた。

4.2.2

修飾電極の調製と溶液系での電気化学測定

サイクリックボルタンメトリー(α1)測定には、 金線(<1> 0.5 x 15 mm)を作用 極に用いた。 電極の前処理は常法に準じた。 はじめに、 アルミナをにより電極表 面を鏡面に研磨した。 純水中に浸漬し超音波照射により洗浄したのち、 減圧下に て乾燥し用いた。 前処理した電極を、 (1 )のジオキサン溶液(10・3M,lM=1 mol dm勺に24時間浸潰したのち、 ジオキサンで充分洗浄後、 減圧下で乾燥して

(5)

測定に用いた。

cv測定には、 Solartron社製1286型ポテンシオスタツトを用いた。 測定セルは、

対極に白金板(10 x 10 mm)、 参照極に銀/塩化銀電極を用いた三電極構成とし、

測定に際しては、 溶液内を窒素置換して溶存酸素を除去した(10分間程度)。

4.2.3 センサセルおよびガスフロー系の構成

センサセルおよびガスフロー系の構成を図4.1に示す。 はじめに測定セルにつ いて述べる。

センサセルは2電極構成となっている。 セル内部への気体透過性を考慮し、 作 用極は銀網(20x 20 mm, 40メッシュ)とし、 対極には銀板(20x 20 x 0.5 mm)を 用いた。修飾電極は、 前処理を除いて4.2.2に準じて調製した。 作用極と対極と の聞にテフロンシート(厚さ0.15 mm)を挟み、 両極を電気的に絶縁する。 この ときシートの内側の一部(10 x 10 mm)を切り取り、 両極問で 電気伝導が起こる 部分を確保する。 ただしこの状態のままでは、 両極聞の 電気抵抗が高すぎ測定が

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窒素ガス

ドレイン

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センサセル 銀網作用極

テフ口ン製

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対極(銀板)

測定器へ

図4.1 測定装置の流路構成とセンサセルの矯造

(6)

困難で、ある。 そこで、 交流の印加 に対して適度な導電性を持たせるために、 シー トの切り欠き部分に 0-ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)を充填する。

NPOE は、 イオン 選択性電極の研究において、 ポリ塩化ピニルの可塑剤として汎 用されており、 比較的高い比誘電率(24)を持っている。

各種の試料ガスの調製には、 パーミカル パーミエーター(ガステツク社, PD-

1B 11型)を用いた。 この装置では、 一定温度に保ったチャンパー内にガス発生源

(純液体または液化ガス)をセットし、 チャンバー内に一定流量のキャリアガス (ここでは乾燥窒素)を流通させて試料ガスを動的に発生させる。 試料ガスの濃 度は、 所定量のキャリアガス流通に伴う、 ガス発生源の重量減少を測定した更正

曲線をもとに算出する。

測定セルは、 ガラス製フロー式(容量300 cm3)であり、 恒温槽中に浸してセ ル内の温度を一定に保った。 測定系の流路は、 セル内のパージのために 2系統構 成とした。 このときのガス流路は、 テフロン(一 部可塑剤を含む)また はガラス とし、 ガスの吸着による影響を防いだ。 測定に際しては、 ガス発生が定常状態に 達するまでチャンパー内にキャリアガスを流通させ(数十分から数時間, メーカ ー推奨値)、 このときのガスは、 測定セル直前に設けた三方バルブ、から排気した。

このようなコンデイショニングののち、 試料ガスを連続的にセル中に導入し測定 を行った。 なおセル内のパージは、 別系統からの乾燥窒素ガスにより行った。

4.2.4 ガスセンサ系での電気化学測定

センサセルのインピーダンス測定には、 自動LCR メーター(Wayne-Kerr社,

6425型)を用いた。 測定は二極式で行い、 正弦波交流(測定周波数1 kHz,印加電 圧500 mVp-p)の印加 に対するセル応答を、 各種の試料ガス共存下で測定した。

第二章の繰り返しになるが、 ここで観測されるインピーダンスは、 単に系に印 加した 交流(交番電場)に対する電気的な抵抗である。 このような特性値の詳細 を理解し、 物理化学的な特性値とするためには、 周波数分散の測定が不可欠であ る。 インピーダンスの周波数分散の測定には、 第二章と同様に、 周波数応答分析

(7)

の手法を用いた12)。 測定は、 Solartron社製 1286型 ポテンシオスタットおよび 1250A型周波数応答分析器を組み合わせて行った。 インピーダンス測定と同様に、

測定は二極式で行い、 正弦波交流(200 mVrms)の印加に対するセル応答を、 0.1 Hzないしは2mHzから65kHzの範囲で測定した。

4.3

結果と考察

4.3.1

修飾電極の特性

一連のアルカンチオールやその誘導体について、 それらの SAM形成挙動が、

電気化学測定や各種の分光分析法 により検討されている。 本研究では、 ガスセン サへの応用も含めて、 電気化学測定を中心に検討した。 はじめに、 サイクリック ボルタンメトリー(αr)の手法を用いた結果について述べる。

図4.2は、 溶液中に共存させた酸化還元対、 フエロ/フェリシアン化物イオン に対するボルタモグラムである。 未修飾の金電極では、 フエロ/フェリシアンの 電極反応に由来する可逆な酸化還元波が見られる。 (1) からの SAMで表面を修 飾すると、 酸化方向、 還元方向いずれについてもピーク電流値は低下する。 この とき、 若干であるがピーク電位がシフトし、 反応の可逆性が 低下する傾向が見ら れる。 これらは、 アルカンチオール類からの SAM 修飾電極に共通した挙動であ り、 電気化学的に不活性なSAMにより電極反応が阻害されたためと考えられる。

第三章で述べたように、 フエロ/フェリシアンのような可逆な反応系では、 ボ ルタモグラムのピーク電流値は以下の式で表される13)。

ら=

269. A . n3/2 . D1/2 . c. . v1/2

( 4.1)

ら,ピーク電流値(A); A電極面積(cm2); n,反応に伴って移動する電子数;

D,酸化還元種の拡散係数(cm2 S-l); Cへ酸化還元種のバルク溶液中の濃度 (mol dm-3); v,スキャン速度(V S-1)

(8)

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電位/ V vs. Ag / AgCI

図4.2 サイクリックボルタモグラム

(a)金電極, (b)修飾電極. 電位掃引速度,25mV sec・1;温度,250C;

[K4[Fe(CN)6]=[K3[Fe(CN)6]=1 mM, [TMACI]=0.1 M.

ここでの酸化還元活性種の拡散係数は、 バルク相から電極近傍、 具体的には電 極との間で電子移動を起こす距離までの領域における値である。 このときの距離 は、 最大で20入程度とされている。 また、 拡散係数は未修飾の金電極の場合と修 飾電極の場合とのあいだに本質的な差はないと考えられる。

このような考察に基づき、 図4.2のピーク電流値を比較して、 還元方向の電流 値変化から57 %、 酸化方向から48 %といった被覆率が得られた。 単純なアルカ ンチオールでは、 90 %以上の被覆率を示すという報告もある14)。 我々これまでの 検討では、

(1

)のようにかさ高な置換基を持つ二官能性誘導体では、 50 % 未満 の被覆率に留まっている5, 15)。 これは、 末端の機能性置換基の立体障害、 すなわ ち、 置換基自身の幾何学的なサイズとアルキル鎖のそれとの不一致に起因するも のであろう。 この問題の解決には、 アルキル鎖もかさ高な構造のものとし、 両者 のサイズを統一する工夫が必要であろう。 第二章で検討したような二分子膜化合 物を基本構造とし、 その二本のアルキル鎖をbアルカンチオールに変えた化合物

(9)

も報告されており16)、 この問題との関連から興味深い。

図 4.2の CV測定では、 支持電解質として塩化テトラメチルアンモニウム

(TMACl)を用いた。 支持電解質として一般的なアルカリ金属塩の場合、 (1 ) のクラウン骨格と相互作用し、 測定系での現象が複雑になると予想、されたためで ある。 逆に、 このような測定系にアルカリ金属イオンを添加すれば、 クラウン骨 格との相互作用がボルタモグラムに反映されるはずである。

図4.3に、 カリウムイオン共存下でのボルタモグラムを示す。 ピーク・電流イ直の 変化量としては30 %程度ではあるが、10・5Mから10・2Mというカリウムイオン の濃度範囲でボルタモグラムに変化が見られる。 (1)の クラウン骨格とカリウ ムイオンとの錯形成に伴い、 電極表面には正の電荷が派生する。 電極反応にあず かるのは、 アニオン性のフエロ/フェリシアンイオンであるから、 静電的な効果 による濃縮が起こり、 電流値は増大すると予想される。 しかし図4.3に示すよう に、 カリウムイオン濃度の増大に対して電流値は減少している。 この詳細は、 現

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図4.3 サイクリックボルタモグラム [K +], (a) 0; (b) 10・5;

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(c) 10-�; (d) 10-'"'; (e) 10-C. M. その他の条件は図4.2に閉じ.

(10)

時点では不明であるが、 SAMの構造変化によるものと考えている。 SAMの構造 は、 (1 )のコンホメーションや配向状態などと密接に関連する。 錯形成に伴う 電荷の発生は、 これらの因子に大きな影響を持つと考えられる。

このように不充分な点はあるものの、 (1 )からのSAMは金属イオンとの錯形 成能を示した。 SAM形成によってクラウン骨格の錯形成能が損なわれることはな

く、 そのホストーゲスト相互作用を化学計測に利用できることが確認された。

4.3.2 各種ガス成分に対するインピーダンス応答

本研究で新たに合成した(1)は、 SAM 形成時にもホストーゲスト相互作用を 行い得ることが確認された。 そこで、 修飾電極の応用として、 インピーダンス測 定と組み合わせたガスセンサについて検討した。

第二章で述べたように、 電気化学系のインピーダンスは、 電極界面の二重層や 電極反応に由来する。 これらはいずれも、 電極電位に影響されるため、 インピー ダンス測定は、 通常、 作用極の電位を規制した状態で行われる13)。 しかし 、 半導 体ガスセンサなどの固体系では、 作用極の電位そのものの定義が暖昧であり、 こ のような条件は設定できない。 センサセルの構成から明らかなように、 本系はこ れらとは若干異なり、 NPOEを溶媒とした非水系での測定に近い。 そこで、 電極 には銀を用いた。 銀表面の溶解反応(Ag/ Ag+)は、 非水溶媒中でも可逆的に起こ り、 電極電位の安定性が高い。 このため、 非水溶媒系での参照電極として汎用さ れている17)。 電極電位が安定している点は、 二電極方式でのインピーダンス測定 にも都合が良い。

図4.4に、 各種の試料ガスに対する、 センサセルのインピーダンス応答を示す。

このときの応答は、 セルインピーダンスの低下として観測された。 図4.4 では、

インピーダンスの変化量を試料ガス濃度に対してプロットしている。 この図から 明らかなように、 本センサは、 数ppmから100 ppmのアンモニアガスに対して応 答する。 なお、 ブランクガス(乾燥窒素)に対するセルインピーダンス は、 ほぼ

1 MQであり、 この値と比較すると、 応答量は10%未満に留まる。 しかし、 応答

(11)

図に示す結果は有 したがって、

の再現性は高く、 測定値の変動は数%であった。

意の応答と考えられる。

ここでは標準ガス調製の都合状、 ベンゼ また、 揮発性の有機溶媒のいくつか、

メタノールおよびアセトンについて検討した。 図4.4 から明 クロロホノレム、

ン、

これらの謝斗ガスについては応答量も小さく、 有意の応答は認め らかなように、

いずれの試料ガスについ なお未修飾の銀電極を用いた場合には、

ても全く応答しなかった。

られなかった。

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試料ガス濃度, ppm

各種ガス成分に対するインピーダンス応答

(0)アンモニア(未修飾電極) ,(く>)ベンゼン,(X)クロロホルム,

(+)メタノール,(ム)アセトン,(・)アンモニア(未修飾銀電極)・

測定周波数,1kHz;印加電圧,500 mV;温度,25 oc.

4.4

(12)

アンモニアガスに対する応答特性を示す。 測定セル内への試料ガス 図4.5

センサセルのインピーダンス値が低下し、 数分程度で一定値に達 の導入 に伴い、

セル内を窒素ガスでパージ アンモニアガスの導入を停止し、

することがわかる。

このときには十分程度 の時間を要 セルインピーダンスは再び増加する。

すると 、

するも のの、 試料ガスの曝露前とほぼ等しい値まで回復する。 ただし、 長時間に ( 1時間あたり約2.3 kn) ベースラインのドリフト

わたり繰り返し使用すると、

この理由のひとつに、 測定器の経時安定性が挙げられるが、 センサ が見られる。

この点については、

セル.の劣化などの不可逆的な変化が起きている可能性もある。

今後の検討が必要であろう。

これまで に報告されているアンモニアガスセンサの例との比較につい ここで、

ガス感応膜の伝導度変化が利用されており、

センサの原理としては 、 て述べる。

i)電解重合ポリピロール膜18)、ii)金属一フタロシアニン錯体の蒸着膜19)を感応膜 に用いたネ食討がなされている。 いずれも、 櫛状パターンのアレイ型電極表面を感

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図 4.5 アンモニアガスに対する応答特性

アンモニア濃度,(a) 20; (b) 26; (c) 31; (d) 40 ppm. その他の条件l

i

図4.4'こ同じ.

実線の矢印はアンモ二アガスの導入,破線の矢印が窒素ガスによるパージを表す.

(13)

応膜で修飾し、 前者では0.01%程度からのアンモニガスに対して伝導度の変化が 起こると報告されている。 一方後者の例では、 レーザ一光照射に伴う光伝導性を 利用し、 1.5 ppmから84 ppmの濃度のアンモニガスに対して応答すると報告され ている。 本研究の場合も、 センサの感度や選択性に関する定量的な議論は不充分 と言わざるを得ないが、 ここに挙げた研究では、 アンモニアガス応答についての み言及されているに過ぎない。 センサの感度に限って比較した場合でも、 本セン サはこれらに比肩し得るものである。

4.3.3 センサセルの交流特性一未修飾銀電極系

以上述べてきたように、

(1

)によるSAM修飾電極は、 インピーダンス測定と 組み合わせたアンモニアガスセンサへの応用が可能であった 。 センサの応答は、

アンモニアに対して選択的に起こる。 4.3.1で述べたcv測定の結果と併せて考え ると、 このときの応答は、

(1

)のクラウン部位が行うホストーゲスト相互作用 に基づくものと考えられる。

第二章で述べたように、 このような測定系で観測されるインピーダン スは、 単 純に、 系に印加した交流(交番電場)に対する電気的な抵抗に過ぎない。 そこで、

このような特性値の物理化学的な意味を明らかにし、 センサの応答機構を詳細に 理解するために、 セルインピーダンスの周波数分散の測 定とその解析について検 討した。

図4.6に、 未修飾の銀網を作用極としたセルの、 複素インピーダンスプロット を示す 。 高周波数領域での半円の軌跡と、 それに続く低周波域の軌跡が認められ る。 同ーのセルについて二倍の厚さのスペーサーを用いると、 軌跡の半径がほぼ 二倍、 つまり抵抗値が倍増する。 こ のような結果は、 高周波数域の半円の軌跡が、

両極聞に充填したNPOE相に由来することを意味し、 NPOE相は、 抵抗成分と容 量成分から成る並列回路と電気的に等価といえる。 このときの容量成分は、 言う までもなく NPOEの誘電性に由来している。 一方、 抵抗成分についてはいくつか

の解釈がある20)。

(14)

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2.0 インピーダンスの実数成分/ Mn

図4.6 センサセルの複素インピーダンス特性

(a)スペーサ-厚0.15 mm, (b)スペーサ-厚0.30mm.

作用極,未修飾銀電極;印加電圧,200mV . �__;r円1S 測定温度250C.

ひとつは、 NPOE相がある程度の導電性を持つという考えである。 もちろん、

NPOE自体は導電性を示さないが、 ごく微量のイオン性物質が含まれていれば電 気伝導が起こり得る。 他方、 理想的な誘電体とは異なり、 実在の誘電体では電導 性以外にエネルギーの損失の原因となる過程がある。 物質の 誘電性は、 印加した 電場によって物質が分極することで観測される。 分極は分子の永久双極子が電場 に配向することに他ならないが、 分極が瞬間的に起こらずに時間的な遅れを伴う 場合 には、 エネルギーの損失、 つまり誘電損を伴う。 エネルギーの損失は、 電気 的には抵抗と等価であるから、 このような誘電体は、 やはり容量成分と抵抗成分 からなる電気的回路と等価となる。

以上の2つの機構は、 単純な誘電体の場合でも区別し難く、 精密な解析は本研 究の範囲毒を越える内容である。 図4.6における半円の軌跡をNPOE相に帰属する ことは、 これらの考察と矛盾しないことを強調しておく。 また、 測定周波数領域 が充分ではなく、 図 4.6では低周波数域の軌跡はごく一部しか現れていない。 こ

(15)

この点については、 修飾電極系での結果をもとに述べる。

4.3.4 センサセルの交流特性一修飾銀電極系

図4.7に、 修飾電極を作用極としたときの複素インピーダンスプロットを示す。

ここでは、 測定周波数の下限を2 mHzまで拡大しており、 低周波数領域にも、 半 円の軌跡とそれに続く直線の軌跡が認められる。 なお、 高周波域の軌跡の半径は、

図4.6と比較して半分程度になっているが、 これは、 作用極の修飾に伴う実効面 積の.低下によるものと考えられる。 4.3.1でのcv測定から得られた、 被覆率50

%という結果とも矛盾しない。

4.3.3での結果に基づき、 高周波域の軌跡をNPOE相に当てはめると、 低周波域 の軌跡は、 電極反応由来と考えることができる。 第二章で述べたように、 電極反 応のモデルとしてRandles型の等価回路が一般的に用いられている13)。 このとき のインピーダンスプロットは、 電荷移動抵抗と二重相容量に由来する半円の軌跡

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インピーダンスの実数成分/ MQ

図4.7 センサセルの複素インピーダンス特性とそのアンモニア濃度依存性

アンモニア濃度, (a) 0; (b) 10; (c) 50 ppm. 作用短,修飾電極;その他の条件は図4.6に同じ.

(16)

と、 それに続く傾き45 0の直線の軌跡から構成される。 図4.7における低周波域 の軌跡も、 ほぽ類似の形状となっている。 ただしこの系では、 両者の分離が明確

これ以上の検討は困難であった。

ではなく、

アンモニアガスの共存はインピーダンス しかし、 図4.7 から明らかなように、

このときの変化は、 高周波域と低周波域それ 特性にいくつかの変化をもたらす。

ぞれについて現れて おり 、 高周波域では軌跡の半径が小さくなっている。 一方低 周波域では、 直線の軌跡が原点方向に平行移動する挙動が見られる。 低周波域の やはり半円の軌跡の この変化は、

Randles型回路を当てはめて考えると、

軌跡に

電荷移動抵抗と二重層容量の変化 その要因は、

半径が小さくなるときに対応し、

アンモニア濃度の増加に伴いプロットの変化 である。 いずれの周波数領域でも、

も大きくなっているが、 低周波域の方が変化の程度は大きい。

インピーダンス一周波数表 の複素インピーダンス表示を、

この違いは、 図4.7

このときのBode 線図 を示 低周波域でのインピーダンス低下が著しいこ (Bode線図)に変えることで明確になる。 図4.8に、

高周波域での変化と比較して、

す。

•• •• 日・・

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φ

1.4

1.0 1.2

0.8

0.6

0.4

qE \ 代人 ・ ・恥lUλ」、

0.2

0

10・3 10-2 10・1 100 101 102 103 104 105 周波数/ Hz

アンモ二ア濃度, (a) 0; (b) 10; (c) 50 ppm.

Bode線図 図4.8

(17)

センサの応答機構について以 これらの結果は、 定性的ではある が

とがわかる。

(図4.9)。

下の知見を与える

アンモニアガス の気相からNPOE相への分配であろう。 極 応答の第一段階は、

性物質であるアンモニアがNPOE相に分配(溶解)することでNPOE相のインピ 電導tf:の向上に寄与す この原因については不明であるが、

ーダンスは低下する。

るイオン種の生成、 ないしはNPOE相の見かけの誘電車の増大につ なが るものと このときの変化はごく小さい。 未修飾の銀電極は 応答しな 考えている。 ただし、

この過程はセンサのアンモニア 応答にはさほど

(1 )

センサ応答の基礎は、

これまで述べて きたように、

いという結果 と併せて考えると、

寄与しないといえる。

余似同桜制官ハb代人hmluλ」、

a)複素インピーダンスプロット

インピーダンスの実数成分

e- SAM/電極界面 電極

NPOE相 気相

b)センサセルの模式図

Cdl CNPOE

c)センサセルに対する等価回路

RNPOE

RCT

複素インピーダンス特性から予想されるセンサの応答機構 図4.9

(18)

からの SAMとアンモニア分子との相互作用にあることは明らかであり、 その内 容は、 クラウン部位の ホ ストーゲ ス ト相互作用以外に考えにくい。 つま り 、 NPOE相中に溶解したアンモニア分子が、 SAM表面でホストーゲスト相互作用す

る。 こ れが、 電極界面のインピーダンス低下につながり、 アンモニア応答性が発 現する。

ただし、 電極反応 にあずかるのはあくまで銀/銀イオンであり、 アン モニア分 子は SAM 表面に存在するに過ぎない。 アンモニア分子の存在により、 二重層容 量が変化するとも考えられるが、 両者を関連づける何らかの物理化学的な過程が 必要である。 銀ーア ンミン錯体生成による電極反応の促進なども考えら れるが、

その本質については、 ここで明らかにすることはできなかった。

(19)

参考文献

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(19) R. Brina, G. E. Collins, P. A. Lee, N. R. Armstrong, Anal. Chem., 62, 2357 (1990).

(20) 小泉直-J日本化学会編新実験化学講座基礎技術4電気", p.265,丸善,東京(1976).

(20)

第5章 DNA修飾電極. 二重鎖DNAの末端修飾による 固定化とDNA結合性物質センサへの応用

5.1

緒言

目的とする物質と選択的に反応し、 それが何らかの手法で検知できる物理化学 的な量の変化と結びつ いている一こ のような性質が、 化学センサの感応物質に要 求される機能といえる。 計測の対象となる物質は、 一時的にせよ感応物質と結合 する。 これは、 物理的センサにはな い特徴であり、 このときの結合の安定性や選 択性は、 化学センサの性能と密接に関連する。 したがって、 より優れた感応物質 は高性能化学センサの鍵であり、 低分子量の化合物に限らず大環状化合物、 高分 子化合物まで、 その利用が精力的に研究されている1)。

本研究でも、 センサ感応素子としての分子組織体といった観点から検討してき た。 第二、 三章では、 合成二分子膜および多相系高分子膜を用いて、 これら組織 体に特有のダイナミックな構造変化を作動原理とするセンサについて検討した。

第四章では、 単分子膜修飾電極系における感応物質として、 新たに二官能性アル カンチオールの利用を提唱した。 本研究も含めて、 合成系の感応物質をベースと したセンサの対極に、 さまざまなバイオセンサがある2,3,4)。

酵素や抗体をはじめ とし、 ホルモンや神経伝達物質のレセプターなど、 生体分 子が行う特異的な反応の例は数多い 。 生体成分は一般に不安定であり、 しばしば 微量で高価である。 さらに、 その化学構造上、 計測の対象や条件に融通がき かな い本質的な欠点もある。 しかし、 酵素を例にと れば、 分子認識と表現される厳密

(21)

な基質選択性は極めて魅力的である。 しかも、 酵素と基質との反応によってより 検出が容易な生成物を生じたり(例えばプロトン)、 二番目の基質を消費する場 合(酸素など)には、 センサの構成はごく簡単になる。 これらのメリットは、 前 述の欠点を補つてなお余り有るものであり、 バイオセンサのい くつかは既に実用 の域に達している。

酵素や抗体と並んで、核酸も多様なバイオアフィニティー反応に関与している5)。

これは、 二重鎖形成によって提供される塩基対聞の疎水場や二重鎖骨格聞の溝 さらには リン酸基の電荷など、 核酸 に独特な構造に由来するものが多い。 核酸塩 基対間への低分子の挿入反応(イン ターカレーション)、 リプレッサータンパク の溝への結合などは、 その代表的な例である。 特に後者は、 ある特定の塩基配列 に特異的に起こる。 つまり、 核酸も一種のバイオアフイニティーリガンドであり、

したがってセンサ感応素子としての利用が期待される。 しかし、 以下に述べる理 由により、 その例はごく限られている6,7,8)。

まず、 核酸は反応活性基に乏しく電極表面などへの固定化の足掛りがない。 タ ンパク質や酵素は、 アミノ基やカルボシキル基といった活性なアミノ酸残基を持 ち、 このため、 適当な架橋試薬に利用により容易に固定化できる。 核酸をセンサ の感応物質として用いるためには、 適当な支持体への固定化が必須であるが、 現 状では有効な方法は無い。 また、 核酸は酵素のような触媒能を持っていない。 核 酸のバイオアフイニティー反応を検出するうえでも、 酵素センサにおける間接的 な検出法の適用、 つまり反応の生成物や基質を定量に利用することも困難である。

核酸を感応物質とする化学センサを確立するに当たって、 これら二つの障害をク リアする必要がある。 本章では、 DNA二重鎖をバイオアフイニティーリガンドに 用いた化学センサについて述べる。 電極表面への核酸の固定化、 核酸のバイオア フィニティー反応の検出というこつの障害は、 前章までの成果をもとに解決した。

我々のアプローチは以下の通りである。

まず、 高分子反応を利用してDNA二重鎖の末端を化学的に修飾し、 固定化の ための足掛かりを導入する。 このとき、 通常であれば、 アミノ基やカルボキシル

(22)

基などを含む化合物が候補となるが、 ここではチオール基の前 駆物質に着目した。

既に述べたように、 含硫黄化合物は 金属表面に化学吸着し、 特に長鎖アルキル誘 導体では、 自己組織的な単分子膜形成が見られる9, 10)0 DNA二重鎖の末端にこの ような修飾 を施せば、 これが金属表面へのアンカーとなってDNA二重鎖が固定 化されると考えられる。本研究では、 チオール基の前駆物質として 2-ヒドロキシ エチルジスルフイド(HEDS)を用い、 ホスホジ エステル結合を介して二重鎖末 端に導入する誘導体化を行った。

次に、 DNA修飾電極と組み合わせる検出系である。核酸は酵素のような触媒能 を持っていない。また、 それ自身は電気化学的に不活性でもある。このため、 電 極表面でアフイニティー反応が起こ るとしても、 これを検出す ることは困難であ る。第三、 四章で検討したように、 このような系では“イオンチャンネルセン サ"

11, 12, 13)の原理が有効である。 “イオンチャンネルセンサ" では、 適当な酸化還 元活性種(マーカーイオン)を共存させ、 ボルタモグラム測定 を行う。修飾電極 表面で起こるさまざまなアフイニティー反応により、 例えば修飾膜の透過性が変 化すれば、 これはマーカーイオンの ボルタモグラム変化から直ちに検出できる。

DNA二重鎖をアフイニティーリガンドとしたセンサとして、 本章では、 代表的な インターカレーターであるキナクリ ンを例に取り検討した。併せて、 本章で提唱 する DNA 固定化法の基礎として、 赤外分光法、 水品発振子重みセンサを用いた 検討、 さらに交流測定法を用いた修飾電極の特性評価についても述べる。

5.2 実験

5.2.1 試薬およびDNAフラグメントの調製

二重鎖DNAには、 仔ウシ胸腺(calf thymus, CT)由来のものを用いた(シグマ 社)。キナクリンおよび1-シクロヘキシル-3-(2・モルホリノエチル)カルボジイミ

ドメソーp-トルエンスルホン酸塩(CMCpTs)はAl合ich社製のものを用いた。その

(23)

他の試薬類は、 全て市販の特級品であり、 特別な精製 は行っていない。

はじめに、 子ウシ胸腺DNAを超音波照射により切断した。 次いで、 透析、 フ ェノール抽出、 エタノール沈澱と いった一連の操作により精製して用いた14, 15)。

超音波照射により調製したDNAフラグメントは、 DNA二重鎖がランダムに切 断された、 塩基対数( 分子量 )に分布を持ったフラグメントの混合物である。 そ こで、 アガロースゲル電気泳動により、 DNAフラグメントの分子量分布を確認し た。 このよう な操作から予期されるように、 分子量分布の制御は困難であり、 調 製した試料フラグメントごとに分子量分布は変動した。 以降の検討で用いた試料 の分子量分布は以下の通りである。

5.2.3, 5.2.4, 5.2.5項: 18 -150 kDa (27 -226 bp)

5.2.6項: 18 -40 kDa (27 -61 bp),または40 -400 kDa (26 -260 bp )

なお、 それぞれの塩基対数は、1塩基対(bp)が分子量 660 に対応するとして見 積っている。

5.2.2 末端修飾DNAの調製

0.4 gのCMCpTsを0.4 cm3のh伍S緩衝溶液(0.04 M, 2-(N-モルホリノ)エタン スルホン酸-水酸化ナトリウム, pH 6.0, 1 M = 1 mol dm-3)に加熱(40 <C)しな がら溶解させた。 これにCT DNA (5 mg)を含むME S緩衝溶液0.2 cm3を加え、

400Cで24時間放置し反応させた。 次いで、 HEDS水溶液(0.03M)0.037 cm3を 加え、 室温下にて24時間反応させた16, 17)。 反応混合物をNAP-I0カラム ( フア ルマシア社製,排除限界分子量5 kDa) を用いてゲル浦、過し、 過剰のHEDSを分離 した。 分取したフラクション のうち、 核酸塩基に特徴的なuv吸収(入max, 260 nm)が見られたものを、 以降の実験に用いた。 得られた末端修飾DNA溶液は、

冷温下(5 <C)にて保存し、 電極等の修飾にはそのまま用いた。 なお、 溶液中の DNA濃度は、 塩基対単位でのモル吸光係数として、ε260= 6600 (cm-1叫p・1; Mbp'

(24)

塩基対単位でのモル濃度)を用いて見積もった。

5.2.3 末端修飾DNA中のチオール基の定

ジスルフイド基の還元試薬として、 40mMジチオスレイトール(Drr)-0.1 M リン酸緩衝溶液(pH 7.5)を調製した。 DTI水溶液0.5 cm3と、 DNA水溶液試料 (5.2 mMbp) 0.5cm3 とを混合したのち、 室温下にて1時開放置し、 修飾DNA中 に含まれるジスルフイド基を還元した。 なおDTI水溶液は、 乾燥窒素ガスを通気 し、 溶存酸素を除去したのち使用した18, 19)。

次に反応混合物をゲル漉過し、 過剰のDITを分離した (NAP-10 カラム使用)。

カラムは、 あらかじめ緩衝溶液(0.04 M MES緩衝溶液, 0.1 Mリン酸緩衝溶液の 1: 1 (vjv)混合溶液)で平衡化させたのちに使用した。 試料の全量をカラムにチャ

ージし、 この直後からの溶出液1 .5 cm3を分取した。 溶出液の一部(0.1 cm3)を 用いて、 吸光光度法により溶出液中に含まれる DNA濃度を決定し、 残部の試料 は以降の実験に用いた。

修飾DNA 中に含まれるチオール基の定量は、 Ellman 法により行った。 まず、

5,5'- ジチオビスー(2・ニトロ安息香酸) (DTNB)をリン酸緩衝溶液 (0.1 M, pH 7.5) に溶解し、 10mM水溶液 とした。 DTNBはチオール基の共存によって還元され、

TNB アニオンを遊離する。 この ときの反応は 1 : 1 の量論比で起こり、 遊離の TNBアニオンは波長 412 nmに極大吸収を持つ。 したがって、 試料溶液の吸光度 をも とに、 生成した TNB アニオンのモル数を求めれば、 これはチオール基のモ ル数に対応する。 実際の操作としては、 吸光スペクトル測定用セルに修飾DNA 溶液0.1 cm3を とり、 これにDTNB溶液0.01 cm3を加え、 直ちに、 波長412 run

における吸光度の経時変化を測定した。

5.2.4 FT - IR測定

IR 測定には、 半導体検出器(水銀ーカドミウムーテルル )を備えた Nicolet 510 M型Ff- IRを用い、 透過法および高感度反射法によりIRスペクトルを得た。

(25)

特に後者の測定においては、 シグナルがきわめて微弱である。 光路中の水蒸気に よるパッ クグラウンド吸収を抑えるために、 測定器内部を乾燥空気でパージして 測定を行う必要がある。 以下に、 それぞれの測定における試料調製法を示す。

はじめに、 透過法による測定では、IR測定用CaF窓、板を基板に用いた。 基板を 超純水で洗浄後、 減圧下で乾燥する。 この窓板表面に DNA 水溶液をキャストし、

減圧下で乾燥し測定試料とした。 透過スペクトルの測定条件は、 分解能4 cm-1、

スペクトル積算回数31回である。

反射スペクトル測定には、 顕微鏡用スライドガラスを基板に用い、 表面に、 ク ロム、 金の)1慎に蒸着膜を形成させた。 基板をクロム酸混液(10 wt%重クロム酸カ リウム水溶液と濃硫酸の等容量混合溶液)に浸漬したのち、 超純水、 メタノール の順で洗浄後、 減圧乾燥した。 前処理した基板を、 5 'c の冷温下で 24時間、

DNA水溶液に浸漬し表面修飾した。 基板を超純水で洗浄したのち、 減圧下で乾燥 し測定試料とした。 高感度反射スペクトル測定には、 p-偏向を用い、 基板への入 射角度は850 (基板法線に対して)とした。 なお測定条件は、 分解能4cm-1、 スペ クトル積算回数2025回である。

5.2.5 水晶発振子重みセンサによるDNA固定化量の定量

測定には、 相互薬工社製SF-105型匂いセンサを用いた。 発振子(9 MHz, A下 カット)には、 表面の一部に金薄膜を蒸着しである。 発振子と接している膜面は 周波数測定用の電極となり、 露出した表 の面を DNA の固定化に利用する。 金表 面に DNA が吸着すると、 金薄膜全体としての重量が増加する。 このときの発振 周波数の低下量を、 Sauerbreyの式20, 21)をもとに重量の増加量に換算し、 DNAの 固定化量とした。 なお、 発振子の周波数精度はきわめて高く、 重量変化に対 する 周発振波数の応答も高感度で起こる。 これは、 数ngの変化でほぼ1 Hzの周波数 低下のレベルであるため、 発振周波数の測定はすべて減圧下で 行った。 測定操作 は以下のとおりである。

水品発振子を超純水で洗浄したのち減圧乾燥した。 このときの発振周波数を測

(26)

定したのち、 5.2.4 に準じて、 発振子を修飾 DNA 溶液で処理した。 発振子を1E 緩衝溶液 (1mMエチレンジアミン四酢酸を含む,10mMトリスヒドロキシメチル アミノメタンー塩酸緩衝溶液 ,pH 7.2)で充分洗浄し、 さらに超純水で洗浄した。

発振子を減圧乾燥したのち、 未修飾時に準じて発振周波数を測 定した。 このとき の発振周波数の低下量を、Saue rbre yの式をもとに重量の増加量に換算した。

5.2.6 電気化学測定

DNA 修飾電極の化学センサへの応用、 およびその電気化学特性の基礎検討を目 的に、 サイクリックボルタンメ トリー (cv)測定、 および周波数応答分析(FRA) の手法22)を用いた交流電気化学測定を行った。 修飾電極の調製は以下のとおりで ある。

作用極は金ディスク (<1> 1.6 mm, Bio釦alytic剖Sys tems社)とし、 cv測定および FRA 測定に共通して用いた。 はじめに、 アルミナスラリーを用いて電極表面を鏡 面研磨した。 電極を超純水に浸し、 超音波照射により洗浄したのち減圧下で乾燥 した。 前処理した電極を 5.2.4に準じて処理し、 表面にDNAを固定化した。 得ら れたDNA修飾電極は、TE緩衝溶液に浸し冷温下(5<C)にて保存した。

cv 測定には、Solartron社 1286型ポテンシオスタットを用いた。 測定セルは、

対極に白金板(10x 10 mm)、 銀一塩化銀電極(3 M NaCl, Bioan alytical Systems社) を参照極に用いた三電極構成とした。 支持電解質は、 それぞれ5 mMのフエロシ アン化カリウム、 フェリシアン化カリウムを含む 0.1 M塩化カリウム水溶液であ り、 測定に際しては、 10分間程度窒素ガスを通気して溶存酸素を除去した。

FRA測定は、Sol紅tron社製 1250A型周波数応答分析器、 同1286型ポテンシオ スタットを組み合わせて行った。 なお、 電極およびセルは cv測定と共通である。

FRA測定時の操作は、 以下のとおりである。

支持電解質は、 それぞれ5 mMのフエロシアン化カリウム、 フェリシアン化カ リウムを含む0.1 M塩化カリウム水溶液であり、 10分間程度窒素ガスを通気して 溶存酸素を除去した。 この測定条件下では、 溶液中に共存する酸化還元対によっ

(27)

て作用極の電位が一定値に保たれているが、加えてポテンシオスタットによる電 位規制も行った。 つまり、 測定に際して作用極の電位を測定し、 このときの値に 電極電位を固定した。 この条件で作用極に正弦波交流(25 mVrms)を重畳し、 0.1 Hzから65 kHzの周波数範囲における複素インピーダンスを測定した。 なお、cv、

FRAいずれの測定も恒温条件下(25:t: 0.2 'C)で行った。

5.3 結果と考察

5.3.1 末端修飾DNA中のチオール基の定旦

本研究の他にも、 二重鎖 DNAを適当な支持体に固定化し、 そのバイオアフイ ニティー反応を分離・分析法に応用する研究が幾っか報告されている23, 24)。 近年

研究が活発なDNAプローブ25, 26)も、 一部相補的な構造を持つ一本鎖、DNAどうし の 二重鎖形成に基礎を置き、 一本鎖 DNAを検出の対象とする点で 研究の方向性 が異なるものの、 応用面での影響力の 大きさから注目される。 いずれにせよ、

DNA固定化はこれらの研究にお いて大きな比重を占めている。 スキーム5.1に示 すように、 この目的に対する我々のアプローチはごく単純で、ある。

まず、 高分子反応を利用して DNA 二重鎖の末端を化学的に修飾し、 固定化の ための足掛かりを導入する。 前章で述べたように、 我々は二官能性チオールによ る分子修飾電極について研究を行ってきた経緯があり27, 28, 29)、 本研究ではチオ ール基の前駆物質としてHEDSを用いた。 DNA二重鎖の末端にこのような修飾を 施せば、 これを金属表面へのアンカーとして DNA二重鎖を固定化できると考え られる。 一般的には、DNA二重鎖にアミノ基やカルボキシル基などを導入し、 適 当な架橋試薬を用いて支持体に固定化する手法がとられる。 我々の系は、適用で きる支持体が金属、 特に硫黄との親和性が高 いものに限られるが、 末端修飾DNA を吸着させるだけと いった、 操作の簡便さがメリットである。 これは、 生体高分 子を固定化の対象にするうえで重要と考えられる。 それらの多くは、 熱的にある

82

-IIIIIIIIIIIIIII色』一一一一一一一一一一一一一一一一一一一- J

・E・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(28)

スキーム5.1 DNA二重鎖の化学修飾と金属表面への固定化

0- O-P-OH

O

二重鎖DNA

(1 ) (2) (3)

�P�2H4S-SC2H40H

修飾DNA

(1 )水溶性カルポジイミドを用いてリン酸基とチオール前駆体とを縮合 (2)ゲル溜過による分離, DNA二重鎖を分取

(3)修飾 DNAを用いて金属支持体を表面処理, 化学吸着による固定化

いは共存物質により変性し易い。 なお、 本研究で用 いた誘導体化法は、 他の生体 高分子に適用した研究16, 17)を参考にしており、 それ自体に新規性はない。 また、

以下に述べるジスルフイド基の定量18,19)についても同様である。

末端修飾 DNAの精製操作からわかるようにも、 この方法では、 チオール前駆 体で修飾された二重鎖 DNAと未修飾のままの二重鎖を分離できない。 単純には、

前者だけが金表面への化学吸着に関与し、 後者の共存は障害とはならないとも考 えられるが、 ジスルフイド基の導入車を把握することは、 以降の検討の参考とな る。 ここでは、 DITによるジスルフイドの還元、 Ellman法によるチオールの定量

という一連の手順により、 修飾DNA溶液中のジスルフイド基を定量した。 得ら れた値を、 溶液中に含まれる怒酸塩基対の総濃度と比較し導入車を計算した。 し かし、 チオールの定量結果は再現性に乏しく、 数十%程度のばらつきが認められ

(29)

た。 これは、 分析対象が高分子化合 物であり、 反応が定量的に進行しなかったた めと考えられる。 より詳細な検討が必要なことは言うまでもないが、 試料となる 二重鎖 DNAは、 塩基対数にある分布 を持つ混合物である。 また、 ここで用いた 方法は多段階の反応 ・ 分離操作からなる。 これら要素から、 本研究の範鳴を越え るものと考え検討は断念した。 参考値にとどめるが、 代表的な分析結果は以下の 通りである。

分子量分布18 -150印a

(27-226

bp)の二重鎖DNAについて、

試料中の塩基対総濃度 2.78 mMbp ジスルフィド基の濃度 0.018 mM

これらの値から、 154個の塩基対 に対してジスルフイド基が1個含まれている ものと見積もることができる。

5.3.2 FT-IRによる検討

図5.1に得られたIRスペクトルを示す。 末端修飾DNAで処理した金基板は、

DNAキャスト膜の透過スペクトルとほぼ同一の反射スペクトルを示すことがわか る。 文献値30, 31)との比較も含めてそれぞれのバンドの帰属を表5.1に示す。

このような結果から、 金基板の表面が DNA で修飾されていることがわかる。

ただし、 生体高分子の 多くは、 国体 表面に非特異的に吸着する。 ここで得られた 結果も、 DNAの非特異的な吸着によるものであり、 チオール前駆体は吸着に何ら 関与してない可能性もある。 この点を確認するために、 超音波切断しただけの二 重鎖DNAを用いて実験した。 基板の処理を含めて、 実験条件は修飾DNAの場合 と同ーとして測定試料を調製した。 この場合には、 図5.1に示すようにDNAに特 徴的な吸収が全く認められず、 天然の二重鎖DNAでは、 修飾DNAと同じレベル での吸着は起こらないことがわかる。

(30)

凋-ynu nu

A

-- nu

aali--'v

c

1662 1216

A = 0.004

性-ERE H

八〆 h 1クso/ \ IV \j V \

y許可ー�

1217 1120

1800 1600 1400 1200 1000 800

波数/ cm-1 図5.1 IRスペクトル

(a) DNAキャス卜膜の透過スペクトル, (b)修飾DNAにより処理した金基板の 反射スペクトル, (c)未修飾のDNAにより処理した金基板の反射スペクトル.

表5.1 IR吸収の帰属

波数/ cm・1

帰属 反射スペクトル 透過スペクトル 文献値

1032 1033 1050

|

フラノースのωo怖振動

1121 1120 1086 |リン酸法の対称、伸縮振動

1216 1217 1220 |リン限基の逆対称仲縮振動

1250 1252 1265 |フラノースのO-H伸縮振動

1450 1450 1475 |ウラシル残基のC=N仲縮振動

1480 1479 1490 |アデニン残基骨格のイ111縮振動

1551 1554 1552 |プリン澱骨格の伸縮振動

1662 1658 1650-1680 |プリン,ピリミジンのC=O伸縮振動

参照

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