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図 5.8 インピーダンスの実数成分(Rs) ,虚数成分(1/ωCJの周波数依存性.s キナクリン濃度,(a)0 M (・, 0); (b) 2x10・7M(.,く));(c), 1 x1 0・6M (Â, ム)・
(・,.,Â)は実数成分, (0,く),ム)が虚数成分. その他の条件は図5.2に同じ.
の変数はマーカーイオンの拡散係数だけである。 プロットの傾きの減少は、 拡散 係数の増大に他ならない。 キナクリンと DNA二重鎖との結合により、 マーカー イオンの拡散過程が促進されることがわかる。
以上のように、 本研究では、 DNA二重鎖の固定化法を新たに提案し、 DNA修 飾電極のキナクリン応答について報告した。 その後の研究により、 本系が、 他の DNA結合性物質にも適用できることが明らかになっている36)。 さらに、 固定化し た DNA二重鎖を変性させるとキナクリン応答が消失することもわかった37)。 こ のような知見から、 二重鎖といった核酸に独特な組織構造がそのバイオアフニテ
ィー反応と密接に関連することを強調しておく。
最後に、 水晶発振子重みセンサを用いた測定に関して、 装置利用を快諾くださ いました熊本大学工学部 谷口 功 教授、 および実験を指導して頂いた関連各 位に感謝いたします。
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第6章 まとめ
第1章でも述べたように、 化学の多くの分野では、 個別の分子構造とその機能 発現に焦点が置おかれている。また、 さまざまな 現象を分子レベルで理解するた めに、 対象を分割して部分部分を解析する方法論がとられる。これは、 熱力学に おけるエネルギー加成性の分子論的 な表現かもし れない。部分 部分のエネルギー
の総和が系全体のエネルギーであるように、 この方法論では、 分子を構成する小 構造(または官能基)の機能の総和を分子全体の機能と考えることが前提にある。
このような方法論に立ったアプローチは、 化学のあらゆる分 野で大きな成功を 収めてきた。同時に、 将来的にも新 しい発見に結びつくことに疑いはない。これ は、 本論文で扱った化学センサの場合にも当てはまる。高性能 な化学センサを実 現するうえで、 感応物質は一方の要である。より優れた感応物質を求めて、 “小 構造の機能の総和" という立場から多様な物質が合成されてきた。そしてそ れら が、 新たな計測法に結びついた例は無数にある。
本論文では、 分子組織体を感応素子とする化学センサについて述べた。研究の アプローチは、 やはり “分子機能の総和としての分子組織体" に他ならない。し かし生体の超分子構造のように、 組織体レベルでは、 この機能の加成性を超 える 例も見られる。合成系では、 筆者らの、 クラウンエーテル包埋不斉二分子膜組織 体が、 その一例といえよう。本研究 で意図する化学センサは、 加成性を凌駕する 実例の発見につながるという点 で意義深いものと考えた。
研究は合成二分子膜および多相系高分子膜を素材に、 これら ならではの特徴を 積極的に取り入れた化学計測法に始まり、 新しい分子組織体よる修飾電極系、 お
よぴセンサ感応物質としての核酸の利用に進んだ。 いずれも他に類例を見ないも のであり、 新しい知見や応用の可能性といった成果が得られたものと考えている 。 しかし、 それらが加成性を凌駕する実例たり得るかについては、 筆者の力及ばず により明解な結論づけができなかっ た。 この点については、 今後の検討課題とし ていきたい。 以下に、 第2章以降の内容と成果についてまとめる。
第2章では二分子膜修飾電極の電気化学特性について検討した。 ここでは、 金 属イオン応答性の不斉二分子膜を電気化学系に拡張することを目的とした。 円二 色性スペクトルは、 化学センサの検出系としてはやや特殊な印象が拭えないが、
電気化学系で類似のシステムを実現する意義は大きい。 その結果、 二分子膜が結 晶相から液晶相に相転移するとき、 電極の交流特性が劇的に変化することを 発見 した。 これは、 キャスト膜修飾電極、 およびLB膜修飾電極に共通した現象であ った。 さらに、 周波数応答分析法を用いて、 この現象を物理化 学的な立場か ら理 解する検討を行った。 現在までのところ、 この現象を積極的 に利用した化学計測 法の確立には至っていない。 しかし、 修飾電極は湿度センサに応用できることを 示した。
第3章では、 多相系高分子修飾電極を用いた化学センサについて検討した。 こ こでは、 疎水性のピニルポリマーと親水性の合成ポリペプチドからなるブロック コポリマーを新たに 合成した。 この材料からのキャスト膜は、 それぞれのブロッ クの性質の相違により、 自発的にミクロ相分離構造をとる。 合成ポリペプチドド メインは、 さまざまなイオンや分子を受容しそのコ ンホメーションを変化させる。
これは、 ポリペプチドドメインを介しての透過性変化につながる。 この材料を修 飾電極系に応用し、 イオンチャンネ ルセンサの原理を適用することで、 生体 膜の イオンチャネル機構に準じたカルシウムイオンセンサを開発した。 また、 赤外分 光法による膜のキャラクタリゼーションにより、 本センサ系で の作業仮説の妥当 性を確認した。
第4章では、 分子組織体による表面修飾の発展として、 二官能性アルカンチオ
ール誘導体による電極 表面の分子修飾、 および修飾電極を 用い る化学計測につい て検討した。 近年、 長 鎖アルキル基を持つチオー ルないし はジスルフィド類につ いて、 金属表面への吸着に伴う自己組織的な単分 子膜形成 が指摘された。 こ のと き の吸着機構として、 金属一硫黄配位結合の関与が示唆されて いる。 金属-硫黄 配位結合の不活性さ、 自己組織化に よる均一な単分子膜の形成 という点 を考慮す ると、 こ の現象は電極 表面の修飾法 として有望と いえよう。筆者らはこのよ うな 観点か ら、 二官能性チ オールによる 分子修飾法を提案し、 系統的な研究を行って きた。 本章では、 末端にクラウンエーテルを導入した長鎖アルカンチオール誘導 体を新たに合成した。 この化合物を 電極表面の修飾に用い、 交流電気化学的な測 定法と組み合せることでアンモニアガスセンサの開発に成功した。
第5章では、 DNA二重鎖のバイオアフィニティー を利用した化学センサについ て検討した。 生体内においてDNAは、 二重鎖、のかたちでさまざまな バイオアフ イニティー反応に関与している。 したがって、 DNA 二重鎖をアフイニティーリ
ガンドとすれば、 さまざまな DNA 結合性物質の計測が可能 と考えられる。 電気 化学センサ系でこれを実現するには、 金属電極表面への DNA 二重鎖の固定化が 鍵である。 しか し、 適切な手法はこれまで に提唱され てい なか った 。 そこで、
DNA二重鎖の末端をチオール前駆体で修飾し、 金表面への化学吸着を利用した固 定化法を 新たに開発した。 次いで、 赤外分光法、 水品発振子重みセンサに より 固 定化挙動を検討した。 さらに本系 の応用として、 代表的なインターカレーターで あるキナクリンを例に取り検討し、 DNA結合性物質センサとしての有用性を確認 した。
以上の研究で得られた知見、 およ び成果が、 関連する分野に関わる方々の参考 にな れば幸いである。
謝 辞
本論文の内容は、 筆者が、 九州大学工学部在職中に行った研究の成果であり、
その期間、 終始変わらぬご厚情を持ってご指導下さいました高木 誠教授に衷心 より感謝申し上げます。 また本論文をまとめるにあたり、 貴重なご教示と深甚な ご配慮を賜りました中塩文行教授、 山添 異教授、 および今坂藤太郎教授に深く 謝意を表します。
研究の立案と遂行に当たっては、 中嶋直敏教授(現在は長崎大学工学部)、 前 田瑞夫助教授に懇切丁寧なご指導を 戴きました。 ここに篤く感謝致します。 加え て、 研究のさまざまな面で便宜を計って戴きました、 九州大学工学部応用物質化 学科の諸先生方に感謝申し上げます。