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(1)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界 : サンフランシスコ会議を素材として

著者 瀬岡 直

雑誌名 同志社法學

巻 59

号 1

ページ 47‑129

発行年 2007‑05‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011144

(2)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界四七同志社法学 五九巻一号

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界

サンフランシスコ会議を素材として

瀬 岡   直

  目 章 章     

   1      章    2

   1 2

 (四七)   

     3    1     2     1     2

   1     2     1     2 3

(3)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界四八同志社法学 五九巻一号 (四八)

はじめに

 本稿の目的は、サンフランシスコ会議を素材として、国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界を考察することにある。

 半世紀以上も前に樹立された国際連合は、人類未曾有の惨禍をもたらした第二次世界大戦の誤ちを繰り返さないために、いわゆる集団安全保障体制を整備・強化する制度として出発した。この国連集団安全保障体制の仕組みを概観する

ならば、まず国連憲章は加盟国の紛争の平和的な解決義務を定めると共に、国際関係における武力による威嚇又は武力の行使を一般的に禁止する。そして、ある加盟国が武力の行使等によって国際の平和及び安全を脅かした場合、この分

野に関して主要な責任を担う安全保障理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、非軍事的措置又は軍事的措置を発動する。

 そして、安全保障理事会の決定はすべての加盟国を拘束するけれども、手続き以外の事項(いわゆる実質事項)に関する安全保障理事会の決定は﹁常任理事国の同意投票を含む九理事国の賛成投票によって行われる﹂(第二七条三項)。

しかしこれを裏返せば、常任理事国が一ヵ国でも実質事項に関する安保理決議案に対して反対票を投ずれば、当該決議案は葬り去られることになる。これが一般に常任理事国の﹁拒否権﹂(

ve to ri gh t, ve to p ow er

)と呼ばれるものである。

 従来、強制措置をはじめ実質事項に関する常任理事国の拒否権は、国連憲章上、常に例外なく認められると一般に解 章 退

(4)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界四九同志社法学 五九巻一号 されてきたように思われる。その結果、こうしたいわば無制約の拒否権が投じられた場合、安全保障理事会は全く身動きがとれないにもかかわらず、国連加盟国は依然として国連憲章第二条四項に基づき武力による威嚇又は武力の行使を

一般的に慎む義務を負うと主張されてきている。 ところが、とりわけ冷戦終焉後、国際社会における五大国の力関係が大きく変化すると共に、人権の国際的保障をは

じめとする国際社会の共通利益がより強く意識されていくにつれて、国際社会は、従来の拒否権制度に疑義を懐かせる事態に少なからず直面し始めている。その結果、国際社会の共通利益を著しく阻害するような五大国の拒否権行使に対

して何がしかの制限を加えていこうとする動きが徐々に高まりつつあるように見受けられる

的値益利・力てしと然依はに本価根は会社際国、もとっも ・ 1)

、存りあで会社な的権分るす並が家国権主るす立対く鋭の 2

その結果、拒否権の行使を制限する試みは五大国間の分裂を誘発しひいては大規模な武力闘争を勃発させかねないため、こうした近年の試みに対して強硬に反発する主張も決して少なくない。

 では我々は、国連憲章が制定されてから半世紀以上も経つ今日、国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界をいかに考えてゆくべきなのだろうか。第二次世界大戦直後と比べて相対的に力が低下している一部の常任理事国が、

生まれつつある国際社会の共通利益を著しく阻害するような拒否権を投ずる場合、一体、当該拒否権の行使は国連憲章

上いかに捉えうるのだろうか。果たしてかような拒否権は、政治上ないし道徳上はともかく、少なくとも国連憲章上合法であると結論する他ないのだろうか。また、かような拒否権が国連憲章上行使されうるとしても、国連集団安全保障

体制、とりわけ国連憲章第二条四項は依然としてそのまま妥当すると評価せざるを得ないのか。 しかしながら、より根本的な観点からすれば、そもそも五大国の拒否権は自国の死活的利益を守るために止むなく認

められたものではないだろうか。だとすれば、紛争当事国としての五大国の拒否権はともかく、ある紛争の当事国でな

 (四九)

(5)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界五〇同志社法学 五九巻一号

い五大国の拒否権は行使され得ないと断定し得ないとしても、少なくとも何がしかの制約に服する権利又は裁量として

誕生したのではなかろうか。ならば、拒否権制度に疑義を懐かせているように思われる近年の事態を評価する序論的考察として、拒否権制度、とりわけ紛争当事国でない常任理事国の拒否権の意義と限界を国連憲章の起草過程にまで遡っ

て今一度検討すべきではないだろうか。 かような問題意識のもとに、筆者は﹁国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界

ダンバートン・オークス 会談を素材として

― ―

権の意義と限界ヤルタ会談を素材とし﹂否拒安及び﹁国連集団全る保障体制におけて 3)

論る考を執筆した ﹂と題す 4)

、論を検討したこれらの考会を踏まえて、本稿は談タンルして、ダンバート・。オークス会議及びヤそ 5

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界を、サンフランシスコ会議を素材としてさらに踏み込んで考察しようとするものである。その際まず、ヤルタ会談閉会後からサンフランシスコ会議開幕までの動きを概観し、ついで、サ

ンフランシスコ会議における拒否権に関する議論を考察する。そして最後に、今後の課題も視野に入れながら問題提起を行うことにしたい。

 なお本稿は、ダンバートン・オークス会議及びヤルタ会談を検討した拙稿と同様に

略和されている国連憲章第七章の平に題の侵び及、壊破和対平、威脅るすと問決れ解もをも視野入にたうえで、近年最 章国連憲章第六、の紛争の平和的 6)

行為に関する拒否権の意義と限界を考察することにしたい。なぜなら、本研究の問題関心は、武力行使をはじめ国際の平和及び安全が絡む近年の事例を念頭に置いて、国連集団安全保障体制における拒否権はそもそもいかなる権利ないし

裁量として誕生したのか、を考察することにあるからである。  (五〇)

(6)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界五一同志社法学 五九巻一号 第一章 サンフランシスコ会議開幕までの動き

 ヤルタ会談が終了したおよそ一个月後の一九四五年三月五日、米国が国際機構に関する連合国会議(

U N C IO : T he

U nit ed N at io ns C on fe re nc e on In te rn at io na l O rg an iz at io n

)の招請状を各国へ送付する際に、安全保障理事会の表決方式

たるヤルタ方式が国際社会に向けてはじめて公表された。ダンバートン・オークス提案第六章第C節に挿入されたヤルタ方式の全文は以下の通りである。

第六章 安全保障理事会

第C節 表決

1

はるす有を権票投の個一、国.事理各の会事理障保全安。

2

理国事理七、は定決の会事障.保全安るす関に項事続手

の賛成投票によって行われる。 7)

3

同は、常任理事国の意決投票を含む七理事国定の.項その他のすべての事に会関する安全保障理事

の賛成投票に 8)

よって行われる。ただし、第八章第A節及び第八章第C節

1

者に定決くづ基に)註筆(:決解的和平の争紛つ いては、紛争当事国は、投票を棄権しなければならない

9)

 そして、一九四五年四月二五日、国際機構に関する連合国会議、いわゆるサンフランシスコ会議が開催される運びとなった。当初招請された国家は、一九四五年三月一日までに連合国宣言

含英を国請招四の中ソ米に国ヵ二四たし名署に 10

めた四六ヵ国であった

参ラ、ウクライナ、ベルーーシ(白ロシア)のクマ後ンころが会議開幕、。アルゼンチン、デと 11

 (五一)

(7)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界五二同志社法学 五九巻一号

加が認められた結果、会議に参加した国家は合計五〇ヵ国に達した

12

 ところで、会議開催当時の軍事的状況を見ると、まずヨーロッパにおいて、ヒトラーが自殺した一週間後の五月七日、ドイツは連合国に対して無条件に降伏した。しかし、他方、アジアにおいては、四月一日、米軍は沖縄本土上陸作戦を

敢行したが、六月二一日になってやっと沖縄本土を占領するに至ったにすぎず、国連憲章の署名が行われた六月二五日においても連合国は依然として日本と戦火を交えていた

13

 かかる流動的な軍事的状況が会議の推移ひいては国連憲章の内容に大きな影を落としたことは想像に難くない。しかし、オーストラリア代表を務めたハーバート・エバット(

H er be rt. V . E va tt

)も吐露したとおり、﹁一九四五年四月二 五日にこの会議を招集する責任を負う政治家はジレンマに陥っていた。戦争中に会議を招集することは悪い憲章を生み出すかも知れない。(しかし)戦争後に会議を招集することは全く憲章を生み出さないかも知れなかった

﹂。 14

 これらの点を踏まえれば、当時の各国政府代表たちは、いかに内容が歪んだものになろうとも何とか普遍的な国際連合を樹立するために、連合国が枢軸国に対して大同盟の形でかろうじて結びついていた第二次世界大戦の最中に連合国

会議を開催するという苦渋の決断を下したのであった。そしてこの決断は、第一次世界大戦終結後にヴェルサイユ平和条約と抱き合わせて国際連盟規約を策定した結果、米ソ両国が最初から加盟せずに出発せざるを得なかった国際連盟の

苦い経験を想起すれば、止むに止まれぬものであったに違いない。 では、以上のような軍事的、政治的、社会的な背景を踏まえて、我々は、サンフランシスコ会議における拒否権をめ

ぐる討議をいかに考察していくべきであろうか。この点に関しては、まず、﹁拒否権の基本的な性質の検討は、その多面的な性格の承認から始めなければならない

is. L In la ud e, Jr . C

摘にの)耳を傾ける指必(ドーロク・スニイたっいと﹂ 15

要があろう。なぜなら、既述の拙稿で考察したとおり、ダンバートン・オークス会議及びヤルタ会談において、国連集  (五二)

(8)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界五三同志社法学 五九巻一号 団安全保障体制における拒否権の問題は、常任理事国が紛争当事国である場合とそうでない場合との区別がほぼ常に念頭に置かれていたからである。

 だとすれば、サンフランシスコ会議における拒否権をめぐる議論も、常任理事国が紛争当事国であるか否かの観点から検討することが肝要である。したがって以下、まず第二章では常任理事国が紛争当事国である場合の拒否権につき概

観し、続く第三章では常任理事国が紛争当事国でない場合の拒否権につき踏み込んで検討していくことにしたい。さらにその際、ダンバートン・オークス提案第八章第A節(現国連憲章第六章)と第B節(同第七章)をも区分したうえで

考察を進めることにしたい。なぜなら、会議に参加していたほとんどの国家は、この区別も念頭に置く修正案ないし発言を提起していたように思われるからである。

 なおサンフランシスコ会議は、第一委員会(一般規定)、第二委員会(総会)、第三委員会(安全保障理事会)、第四委員会(司法機関)の四つの委員会が仕事を分担して進められた

事三理障保全安﹁の会員委第、は題問権否拒てしそ。 16

会の構造と手続﹂に関する第一分科会(

C om m itt ee II I/ 1

)において集中的に討議された。したがって本稿の考察対象は、特に断らない限り第三委員会の第一分科会における議論である。ただし、招請国にフランスを加えた非公式の五大国委 員会(

B ig F iv e

)における討議も必要に応じて検討することにする

大ろ五のこは題問権否拒、ことの際実、らなぜな。 17

国委員会において意見の一致を見るまで解決されなかったからである

18

 (五三)

(9)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界五四同志社法学 五九巻一号

第二章 紛争当事国である常任理事国の拒否権

一.第八章第A節

 平和的解決において紛争当事国たる常任理事国は拒否権を行使しうるだろうか。ここに平和的解決とは、ダンバートン・オークス提案の﹁侵略の防止及び抑圧を含む国際の平和及び安全の維持のための取極﹂と題する第八章のうち第A

節﹁紛争の平和的解決﹂を指す

い題を論激てっぐめを問わのこが連ソ対国米び闘し国結おに決解的和平、果たソし歩譲に的終最が連及英いおに談会て ン明とたしにからにで稿別りです、てしおバ、スタルヤび及議会クダーオ・ントー。そ 19

て紛争当事国である常任理事国は投票を棄権する義務を負うことで決着した。そして、その根拠としては、﹁何人も自己の裁判官たりえない﹂といった法格言、大国と小国の主権の形式的平等、公開の場における討議の必要性等々が挙げ

られていた。くわえて、サンフランシスコ会議においても招請国は、少なくとも平和的解決において紛争当事国たる常任理事国が投票を棄権しなければならないことを一貫して主張していた

をこ権否拒るす関に点のは国小中、果結のそ。 20

めぐる議論を蒸し返す必要はなかった。したがって、会議においてこの種の拒否権自体を疑問視する発言は全くなされなかったと言って良い。

 もっとも、平和的解決において五大国を含む紛争当事国が投票を棄権しなければならないことが認められたとしても、では個別具体的な状況において紛争当事国が投票を棄権するのはいかなる範囲においてか、あるいは棄権した結果

どのような効果が生ずるのか、そもそもある国家が紛争の当事国か否かをいかに判断するのか、等々について問い質す発言は決して少なくなかった

に少ていた諸国は、な加くとも平和的解決し参般にかしながら、一的。に言えば、会議し 21

おいて紛争当事国たる常任理事国が投票を棄権する義務を負うことについて合意に達していたと評価しうる。だからこ  (五四)

(10)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界五五同志社法学 五九巻一号 そ、現国連憲章第二七条三項の第二文は、最終的に、﹁第六章及び第五二条

。﹂票を棄権しなければならないと、して結実するに至ったのである投はに決事当争紛、はていつ国定

3

紛争決の平和的解(:筆者註)にづく基

二.第八章第B節

 では、強力的解決において紛争当事国たる常任理事国は拒否権を行使しうるだろうか。ここに強力的解決とは、ダンバートン・オークス提案第八章のうち﹁平和に対する脅威又は侵略行為の決定及びこれに関する行動﹂と題する第B節

を指す

こ場国事当の争紛該当、合たるし出提を案議決の旨るた常動かる去り葬を案議決るかて任し使行を権否拒は国事理す発 対る和平﹁が国盟加連国あを、ばえとた、てっがたにす。議置措制強はいるあ、案決るの旨るす定認を﹂威脅し 22

とができるか、が問題となり得よう。 以下では、各修正案の具体的な内容とそれに対する招請国の反論を概観して、この点をめぐる拒否権の意義及び問題

点を指摘することにしよう。なおその際、拒否権をいわば全面的に否定する修正案も視野に入れることにしたい。なぜなら、拒否権を全面的に否定する修正案の問題点は、強力的解決における紛争当事国の拒否権の文脈でより一層浮き彫

りになるように思われるからである。

1

.ダンバートン・オークス提案に対する修正案  強力的解決における紛争当事国の拒否権に関して修正案を提示したのは、エクアドル

、エルサルバドル 23

、フィリピ 24

、イラン 25

、キューバ 26

、メキシコ 27

、オランダ 28

少ャギ、初当議会もとくな、シたま。たっあで国ヵ七のリ 29

、ブラジル 30

、エ 31

チオピア

で発ないし制限を指摘する言廃を行った。ただしここ止の国権じめいくつかの中小がをこの点に関する拒否は 32

 (五五)

(11)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界五六同志社法学 五九巻一号

は、紙幅の関係上、紛争当事国たる常任理事国に対する強制措置を最も明確に主張したように思われるエクアドルとフ

ィリピンの修正案に焦点を当てることにしたい。 まずエクアドルは、ヤルタ方式において非手続事項に関する決定はすべての常任理事国の投票が必要であることを指

摘したうえで、﹁この方式を承認することは、非常任理事国の存在と投票を大幅に無視し、その結果、これら理事国を明白かつ不正に劣等な立場に置くに等しいだろう

﹂と指摘した。 33

 ついでエクアドルは、﹁この理論の受諾は樹立されようとしている国際機構の運命に致命的な結果をもたらすだろう。なぜなら、そのために、加盟国の法的平等(

ju rid ic al eq ua lit y

)の原則が無視されるだろうからである。⋮⋮また、万 一たった一常任理事国が機構の発展を妨げ失敗に追い込もうと望む場合には、この機構自体が機能麻痺を余儀なくされるだろうからである

。かたい突を点題問の権否拒ら点観の等平権主の国盟加と﹂ 34

 さらにヤルタ方式の下では、平和的解決において紛争当事国は棄権する義務を負うにもかかわらず、より重大かつ切迫した強力的解決において紛争当事国たる常任理事国が拒否権を投じうる点に注意を向けたうえで、エクアドルは﹁一

ヵ国あるいはそれ以上の他の加盟国に対する理事会の常任理事国による侵略あるいはその脅威は、この提案において唱えられている集団安全保障体制に訴えることによって撃退あるいは中立化され得ない

国た事理任常えと、てし言断と﹂ 35

自身が平和を攪乱する場合であっても、安全保障理事会は当該理事国に対して何がしかの制裁措置を発動すべきことを正面から訴えかけた。

 これら強硬な批判を滔々と述べたうえで、エクアドルはダンバートン・オークス提案第六章、とりわけ安全保障理事会の表決手続に関して次のような修正案を提示した。すなわち、  (五六)

(12)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界五七同志社法学 五九巻一号 安全保障理事会のすべての決定は、扱われている主題がいかなるものであろうとも、採択するためには八理事国の賛成投票を必要としなければならない

36

直接的あるいは間接的に理事会自身に権限を委譲すると認める紛争あるいは論争の当事国たる理事国は、理事会

が、この提案の第八章において規定される権限と権威にしたがって、かかる紛争ないし論争に関連して下す決定に関する投票を棄権しなければならない

37

 要するに、このエクアドル修正案によれば、およそ第八章に関わる紛争の当事国たる常任理事国は全く拒否権を投じ

得ない。注目すべきは、第八章第A節のみならず第八章第B節においても、常任理事国は拒否権を有さない規程ぶりとなっていることである。いずれかの常任理事国が侵略した場合の強制措置の発動を念頭に置くエクアドルのさきの発言

はその証左であろう。 ましてエクアドルが、安全保障理事会はこの機構の一三ヵ国の代表から構成され、総会は非常任理事国たる八ヵ国を

選出する修正案を提示していたことを踏まえるならば

りす残、もてじ投を票対反がてべ国事理任常五、は案正修のこ、 38

の八非常任理事国が賛成票を投じれば、安保理決議が採択される仕組みを前提としていた。その意味で、加盟国の形式的な主権平等を前提とするエクアドル修正案は、招請国の大前提たる五大国一致の原則と真っ向から対立するきわめて

急進的な内容であった。 ついでフィリピンも、ダンバートン・オークス提案第六章第C節第三項に対して次のような修正案を提出した。すな

わち、

 (五七)

(13)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界五八同志社法学 五九巻一号

第三項:その他のすべての事項(実質的事項:筆者註)に関する安全保障理事会の決定は、それぞれ、投票する常

任理事国の過半数及び非常任理事国の過半数の賛成投票によって行われる。ただし、第八章A節に基づく決定及び第八章C節第一項第二文に基づく決定においては、紛争当事国は投票を棄権しなければならな

39

 さらにフィリピンは、とりわけ武力を伴う強制措置に関して次のような修正案まで提示した。すなわち、

表決:平和を維持するための軍隊の使用を伴うすべての決定においては、安全保障理事会の常任理事国の五分の四及び非常任理事国の四分の三の賛成投票が必要とされなければならない

40

 これらの修正案を踏まえるならば、フィリピンは、安全保障理事会が実質事項に関する決議案を採択するためには、

少なくとも常任理事国三ヵ国及び非常任理事国三ヵ国の合計六ヵ国の賛成投票が必要であると考えていたと言えよう。さらに、とりわけ武力を伴う強制措置に関しては、四常任理事国と五非常任理事国の賛成投票が必要であることになろ

う。 そしてフィリピンは、全会一致よりはむしろ制限過半数を提案する理由として以下の二点を挙げた。すなわち第一に、

﹁多数決による支配に関する民主主義的な原則が理事会の表決手続に導入されるべきであること

か侵規定は、その地位を捨て去り略す国となるかも知れないいずれる関四に国の五分のに投票のよれ定っる決さ択採て ﹂、事理任常、﹁に二第 41

の大国に対して発動される法的な行動を可能にするだろうこと

﹂である。 42  (五八)

(14)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界五九同志社法学 五九巻一号  くわえてフィリピンは、﹁もし戦争において五常任理事国のうち四ヵ国、かつ、非常任理事国のうち三分の二の国家が侵略国と烙印することに合意すれば、この機構はそれによって侵略国に対して法的な武器を行使しうるのみならず、 侵略国に打ち勝つことができるだろう

大拒こるす止廃を権否のに国事理任常るた国事とあ争し、﹁はンピリィフてくるか。たし言明をとこ当紛ずんかな、権く 的ピの案正修ン、リィフ眼てし摘指主解が任否拒の国事理常強るけおに決﹂力と 43

国間の衝突が無秩序へと導くだろうこと、全会一致が世界の安全保障にとって絶対条件(

sine qua non

)であること、また、多数決による支配に関する民主的な原則が理事会の効率性を弱めること、といった議論に反駁した

﹂のであった。 44

2

.招請国の反論

 では、中小国のこうした強硬な修正案に対して、招請国は強力的解決における紛争当事国の拒否権をいかに正当化しようと試みたのだろうか。とりわけ招請国は、中小国の修正案に多かれ少なかれ共通していたこの拒否権の制限ないし

廃止の根拠、すなわち、国家主権の形式的平等、一国一票制に基づく民主的な多数決制度

。論ていかなる反を対提出したのかしに々等 能、止防の痺麻機の構機際国 45

 まず、国際組織における民主主義の問題点に関して最も掘り下げた英国は、次のような明快な議論を展開して強く反

発した。すなわち、たしかに安全保障理事会は、連盟理事会のような全会一致制度ではなく、原則として多数決制度を採用することによって、迅速かつ実効的に行動しうるようにすべきであるけれども、﹁実際には、五つの常任理事国が

理事会の多数によって拘束されるべきであることを難なく受け入れうると期待することは容易でない

く、構成される国際組織においてあっらゆる場合に多数決制度を貫てよ・が国は力・利益に値価大主家き権国るな異く ﹂英、てし言発と 46

仕組みは自ずと限界が有ることを指摘した。

 (五九)

(15)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界六〇同志社法学 五九巻一号

 つづけて自国内において古くから民主主義の伝統を培ってきた英国は、きわめて多くの﹁民主主義と平等に基づく

批判

動々主主民るけおに国自は我と、々時、﹁ちわなす。た義民論。変の口人、は々我がだる主あに向傾る誇を度制な的し 反な分言発とるいてし知承十てはとこるいてれさ張主しが﹂づし対に判批のられこき基らに由理なうよの次、もが 47

などに対して選挙区を修正する再配分に関する法案を定期的に提出しそれを可決することによってのみその誇りを正当化しうるのである。だが国際的な分野ではこれを行うことができない。目の当たりにしている不平等を受け入れなけれ

ばならない。そして、いかなる手荒かつ迅速な方法によってでもこの不平等を変更することはできない

をそみが欠如しているため、そもも仕国際組織においては、拒否権組の社お分権的な国際更に会い平変て和的るゆわい ﹂。、は国英りまつ 48

全く認めない国内社会のような多数決制度が機能する大前提はほぼ完全に欠落していることを指摘したのである。 さらに英国は、﹁将来の安全保障理事会の席を占めるだろう常任理事国を務める代表は、実際、おそらく世界中の半

数以上の人口の代表に相当するだろう。考慮されなければならないのはまさにこの事実である

、維とは、国際の平和及び安全を持るする国際機構の目的からすればこせ占国の多数をさる諸大めのを投票権に反映力 て発言し口、世界人﹂と 49

必ずしも不合理ではないことを訴えかけた

、が決制度として多数決制度実る質的に機能するためには表け、おこれらの英国の発言は多くの論者が、国際組織に  。 50

社会構成員の間に最低限の同質性・連帯性が不可欠であると指摘することと合致するものである

数在し広範に共有された価値が存し、なければ、実際の少数派は多もたし的えば、﹁もま通の目共がけ存ばれ、なし在 。言に的端を由理のそ 51

派の支配を専制的とみなすだろう。そしてもし少数派が、多数派は我々の死活的利益を尊重しないだろうと怖れるならば、力によってその専制を覆すよう試みるだろう

﹂からである。 52

 この評価を敷衍してより具体的に言えば、たとえば、国際連盟時代から共産主義体制として少数派の悲哀を痛感して  (六〇)

(16)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界六一同志社法学 五九巻一号 きたソ連は、果たして、自らが当事国となるポーランド問題の強力的解決に関して、拒否権を放棄して国際組織の多数決に基づく決定をそのまま受け入れるだろうか

、ルばらなるす起想を言発な硬強のチ談。ャチるけおにー会タル、ヤたま 53

植民地問題に関して少数派に属する英国が、スエズ運河問題の強力的解決に関して拒否権を放棄することは現実的にどこまで可能だろうか

際もる米国が、そもそ自抱国に矛先を向ける国えを立会して、伝統的な孤主。義の根強い国内議ま 54

組織の決定を尊重しそれに従うだろうか

き合な少、くかもとは場といなで国事当争紛くも国でい、はに合場るあ国自事当争紛の接直が国が自は国大のられこ、 少会数ていおにろ社際国、うしむ、の数えれる優で力もどけでるあで派。は否 55

おい自らの国益を力で実現しようとするのではないだろうか。 テヘラン会談

決を大国間の激しい対立想け起すれば、強力的解るおクにンバートン・オース、会議及びヤルタ会談ダ 56

において大国自身が紛争当事国である場合にまで多数決制度を採用する構造的基盤は、そもそも現在の国際社会において未だ存在しないと言わざるを得ない

に、の各修正案はこ小の重い問い掛け国中ドるして、エクアル。をはじめとすそ 57

対する説得力ある回答を何ら提示し得なかったように思われるのである。

 さらに、もしかりに、分権的な国際社会と集権的な国内社会の基本構造の違いに関わるこれらの根本的な問題を熟慮

することなく、主権の形式的平等に基づく多数決制度を貫徹する国際機構が強引に樹立されるならば、一体、いかなる状況が生まれるだろうか。

 この問いに関しても詳細な議論を展開した英国は、まず、第八章第B節について﹁常任理事国は、紛争当事国であろうとなかろうと、絶対的な拒否権を固持する

易こ張に反対するとのはきわめて容主こそ﹂上論理、てし、。たし言断と 58

であるけれども、実際上、いかなる状況になるだろうかと疑問を呈したうえで次のような仮想例を挙げた。すなわち、﹁一

 (六一)

(17)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界六二同志社法学 五九巻一号

大国

二あるいはそれ以上の大国でもよい

が世界機構に挑戦し、もしその他の大国がその挑戦を受けて立つとすれ ば、一体、いかなる状況になるだろうか。その場合、世界機構は間違いなく瓦解し、もし可能ならば阻止しようと腐心している戦争がまさに勃発する

構れ侵略国と考えらるわ場合に、国際機けり国と体、常任理事自﹂。身が紛争当事国一 59

が制裁措置を発動すべきことを強硬に迫るフィリピンのような中小国は、自国の修正案が採択された結果生ずるこれらの問題点をどのように評価するのだろうか。

 かような議論の展開を踏まえて最終的に英国の代表は、﹁現実的に見れば、大国が持つ強制措置に関するこのいわゆる拒否権は、実は現実の一つの帰結にすぎない。もし我々が、純粋な理論上、完全に論理的で完全に無欠な憲章を起草

しようとするならば、この場に集う多くの代表が、今考慮するよう求められているものよりも良い憲章を起草しうるだろうことは疑いない。だが問題は、我々は何がしたいのかである。⋮⋮紙の上で理論的に満足するけれども何らかの疑

いを持つにちがいない機能に関する何かに署名したいのか、それとも、限界内で機能するだろうと誠実に信ずる何かに署名したいのか

﹂と語気を荒げたのであった。 60

 ではその他の招請国はいかなる議論を展開していたのか。まず米国は、﹁制裁を適用する決定における拒否権の行使に関して、米国代表は、これはもし一つの大国が侵略国になれば理事会は戦争を阻止する権限を持たないことを意味す

ると説明した。かような場合、自衛の固有の権利が適用され、世界の諸国家は彼らが戦争に突入するか否かを決定しなければならない。⋮⋮結論として、提案されている憲章は完全ではなく機能することが難しいだろうけれども、計画さ

れうる他のいかなる制度とも同じくらい、あるいはそれ以上のものである

際保当は会事理障全大安、合場たっな該国国さ国、めたいな有をく全を限権く叩と略る侵 要すに米国は、ある大国が を実現しいし厳ま踏たえた議論を展開﹂。と 61

機構は完全に麻痺せざるを得ないこと、裏返せば、強力的解決において紛争当事国たる常任理事国はいわば絶対的な拒  (六二)

(18)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界六三同志社法学 五九巻一号 否権を保持するため、その他の加盟国は自衛の権利を行使して事実上世界戦争に突入する他ないことを淡々と説明した。

 まして共産主義体制をとり国際連合における少数派の前面に立たされることが目に見えていたソ連は、﹁ヤルタ表決方式のいかなる変更も望ましくないだろう。なぜなら、もし安全保障理事会の決定が(五大国の)全会一致でなければ、

軋轢の原因が生ずるだろうからである。﹃拒否権﹄は理事会の常任理事国を特別な地位に置くだろう。⋮⋮だが、それは常任理事国に対して課されるだろう責任及び義務に相応するものである

﹂と発言した。 62

 つづけてソ連は、﹁表決方式のような根本的な問題は、安全保障理事会の実効性を弱めることなしに変更され得ない

効にしろ、五大国の全会一致基はづく安全保障理事会の実むり常よ力説して、中小国が非に敏感な表決手続の正統性と ﹂ 63

性をきわめて重視する立場を貫き通した。この発言から、強力的解決における紛争当事国の拒否権を絶対的に保持するソ連の強硬な姿勢が伺えよう。

 もっとも、ダンバートン・オークス会議及びヤルタ会談に引き続きサンフランシスコ会議においても五大国が、拒否権はあくまでもかれらの義務及び責任に相応するものであるとほぼ常に言及していることを踏まえれば、果たしてソ連

が、紛争当事国としての拒否権はともかく、紛争当事国でない場合において拒否権をほぼ無制約な権利ないし裁量とし

てどこまで明確に捉えていたのかは必ずしも判然としない。 最後に中国は、﹁我が国はヤルタ会談に出席していなかったけれども、表決に関する決定を受け入れた

﹂と発言し、 64

その理由として、我が国は﹁戦争の遂行に大いに貢献し、かつ、平和の維持に大きく貢献しうる招請国政府の団結が固持されることを望むからである

なあにおいて欠点がる方ことは否定でき式決づ表説明した。つけ﹂て中国は、﹁このと 65

いけれども、一定の利点があると感じている。なぜなら、満州事変当時の国際連盟の状況と反対に、すべての大国が今

 (六三)

(19)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界六四同志社法学 五九巻一号

設立されようとしている機構の加盟国となるだろうからである。さらに全会一致の規則は、危機において、全会一致で

投票する五大国すべてが理事会によって下されるいかなる決定をも支えるだろう事を意味する

、理い経験を踏まえて、安全保障事の会の表決手続の正統性よりも苦変は際 要するに中国事国、連け州満盟るおに代時 ﹂。たし価評と 66

五大国の全会一致を大前提とする安全保障理事会の実効性ひいては国際連合の普遍性を何よりも重視する姿勢を堅持した。そして中国のみならず他の招請国ひいては多くの中小国も、国際連盟の失敗の一因が大国の不参加にあったことを

痛感して、国際機構の普遍性を確保することは何にもまして優先されねばならない至上命題であると考えていたように思われる。だとすれば、エクアドルをはじめとする中小国の修正案は、この種の拒否権が認められなければ国際連合へ

の不参加も辞さない大国の断固とした決意をあまりにも軽視していたと言わざるを得ない。 もっとも、同時に、国際連合の普遍性をきわめて重視する中国は、強制行動に対する拒否権は﹁侵略の阻止、そして

国際の平和及び安全の維持に関して、より大きな責任が常任理事国の肩にのしかかっていることを意味する

ら提きな責任を負うことをも前にてしていたことを忘れてはな大し常理強調したとおり、対任事国が中小国間の紛争に ﹂も度幾と 67

ない。

三.小括 以上の起草過程を総括するならば、会議が中盤に差し掛かった頃になると、平和的解決において紛争当事国たる常任

理事国は投票を棄権する義務を負うけれども、強力的解決において紛争当事国たる常任理事国がほぼ全面的に拒否権を行使しうることについて、ほとんどの会議参加国は積極的であれ消極的であれ、合意に達していたと評価しうるように

思われる

国し首脳の紛争当事国とて大の拒否権に関する合意中三、、。そしてこのことはヤソルタ会談における英米が 68  (六四)

(20)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界六五同志社法学 五九巻一号 小国の強硬な反発に晒されながらも、ほぼそのまま生き長らえたことを意味した。 その理由は、当時未だ第二次世界大戦の真最中であったため、連合国会議において招請国の強硬な意見が通りやすい

雰囲気であったこともさることながら、より根本的に言えば、強力的解決における紛争当事国たる常任理事国の拒否権が、現実の国際政治における大国の力を反映したものに他ならないことにあった。換言すれば、国際組織が大国の当事

国である紛争をいかに強力的に解決するかは基本的に法ではなく政治の問題であった

にむは政治を規律するというよりはして的とこるめ認に面ろ全を権否拒、法しるなあ関しても、少とくもこの文脈にと そた、かりに問れが法の題で。ま 69

よって政治をほぼそのまま認めざるを得なかったのである

os s R lf A

筆の立する場合、こ体が制(国連集団安全保障体制:対に国フ だとすれば、アル・大ロス()が、﹁要する 。 70

者註)は無用である。大国が合意する場合、それは余計である

当もおに決解的力強とるくな少、えいはけ紛る文妥はていおに脈の争権否拒の国事当といは誇と、幾分の張が含まれて 現治政実響、てし摘指対にをする法の影﹂否定したこと 71

しているのではなかろうか

い投際国もそもそは権票のに国大るけおに面場な法よよなな得し定断でまといくっ全が義意るす律規てうのこ、ていお に小大てしと然依はざ的本さ、はで味意の根まま権に会社際国な的分。るす存並が家国なそ 72

としても、少なくとも規律する意義が乏しい問題であると言っても過言ではなかろう

々文我ていおに脈の、こにるす要。 73

が肝に銘じておくべきことは、﹁世界が滅びようとも正義はなされよ(

Fiat justitia, pereat mundus

)﹂ではなく、﹁正義が滅びようとも世界は生きよ(

Pereat justitia, vivat mundus

)﹂なのである

74

 (六五)

(21)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界六六同志社法学 五九巻一号

第三章 紛争当事国でない常任理事国の拒否権

 では、紛争当事国である常任理事国の場合はともかく、ある紛争の当事国でない常任理事国は国連憲章上拒否権を行

使しうるだろうか。また、もし行使しうるとしても、一体、その具体的な根拠及び範囲はいかなるものと考えられていたのだろうか。

 すでに別稿で指摘したとおり、﹁中小国間の紛争に対する﹃四人の警察官﹄としての常任理事国の投票権は、国際社会において力の集中に裏付けられた正統な支配をいかに行うべきかといった観点から国際法によって紛争を規律する意

義が決して小さくないという意味において、まさに集団安全保障体制の根幹に触れるきわめて重要な問題であった

、正及びヤルタ会談において面会から取り上げられなかった議スのクもかかわらず、これら問題はダンバートン・オーに ﹂。 75

あるいは、少なくともほとんど表面化しなかったように思われる。 なぜなら、自国の死活的利益に目を奪われがちであった大国のみが集ったこれらの会合においては、﹁議論の焦点が、

紛争の当事国は投票しうるか否か、とくに紛争当事国たる常任理事国は拒否権を投じうるか否か、に終始していたため、それに優るとも劣らない集団安全保障体制の根幹に触れる問題、すなわち中小国間の紛争における﹃四人の警察官﹄の

責任の具体的内容に関しては、全くと言ってよいほど議論が詰められなかった

おはスコ会議において、招請国自ンらが紛争当事国でない場合にシラがめ では、中小国フじはてしンサ討た加参に議 ﹂。るあでらか 76

ける拒否権をいかに正当化しようとしたのか。また、これに対して、中小国はまさに自国の死活的利益が絡む紛争について、﹁四人の警察官﹂が持つ拒否権の意義と限界をどのように捉えていたのか。果たして、安全保障理事会へ付託さ

れた紛争と直接関係しない常任理事国は、当該紛争にかかわる何がしかの決議案に対していついかなる場合でも拒否権  (六六)

(22)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界六七同志社法学 五九巻一号 を投じうると当然に考えられていた、と断言できるだろうか。換言すれば、第二章において明らかにした紛争当事国としての常任理事国の拒否権をほぼ全面的に認めざるを得なかった根拠が、紛争当事国でない常任理事国の拒否権に対し

ても無条件にあてはまるのだろうか。 かような問題意識の下に、以下、本章では、とくに会議中盤以降に焦点となっていった紛争当事国でない常任理事国

の拒否権の意義と限界を考察していくことにしよう。

一.ダンバートン・オークス提案に対する修正案

1

.第八章第A節

 まず、平和的解決に関するダンバートン・オークス提案第八章第A節において、紛争当事国でない常任理事国の拒否権は認められるだろうか。また、かりに認められるとすれば、この拒否権の存在は、平和的解決において紛争当事国た

る五大国でさえ投票を棄権する義務を負うことといかに整合的に説明しうるだろうか。 この拒否権に関して修正案を提示したのは、エクアドル、エルサルバドル、フィリピン、イラン、キューバ、メキシ

コ、オランダ(以上、拒否権を全面的に否定する修正案)、オーストラリア

、ギリシャ 77

、フランス 78

の一〇ヵ国であった。 79

くわえて、ニュージーランド

たっ 限の廃止ないし制指を否摘する発言を行権拒のるじめ非常に多く国を家がこの点に関すは 80

わてに対する批判を概観しお否こう。なお、拒否権をい権拒リの下では、オーストラア。修正案を中心にこの種以 81

ば全面的に否定する各修正案も、当然のことながら、平和的解決における紛争当事国でない常任理事国の拒否権を否定しているが、これら修正案の問題点は既に指摘したのでここでは省略することにしたい。

 まず、会議当初からオーストラリアは、ヤルタ方式において紛争当事国たる常任理事国は投票を棄権しなければなら

 (六七)

(23)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界六八同志社法学 五九巻一号

ないことを指摘したうえで、それにもかかわらず﹁なぜある紛争の当事国ではない五大国のいずれかが、調停及び仲介

によってその紛争を解決しようとする試みを阻止する権能を有するのか、我々は全く理解できない

うう疑問を投げかけていた。そのえ強で、オーストラリアは次のよいていの当事国でなし大国五拒意対否義に在存の権 ﹂争紛、てし言発と 82

な修正案を提示した。すなわち、

1

はるす有を権票投の個一国.事理各の会事理障保全安。

2

成決定は七理事国の賛投会票によって行われうるの事.れ別段明示的に規定さる理場合を除き、安全保障。

。けいならなばれ

3

びを、紛争当事国は投票棄い権しな及節A第章八第てお第づ八章第C節第一項に基くに安全保障理事.の決定会 を安定決の会事理障保全、、はで下の項二第節C第は少八む票投成賛の国事理七含なを国事理任常三もとく章

4

.安定決の会事理障保全、、はで下の節B第章八第は五。のるすと要必を票投成賛国常事理七む含を国事理任第

必要とする

83

 この修正案によれば、まず第八章第A節において常任理事国が紛争当事国でない場合は﹁別段明示的に規定される場合﹂ではないため、拒否権は認められない。ついで、第八章第B節においては常任理事国が紛争当事国でない場合でも

拒否権が原則として認められるけれども、地域的機関による強制行動に関する第八章第C節第二項に関しては、常任理事国が地域紛争の当事国であろうとなかろうと、﹁少なくとも三常任理事国を含む七理事国の賛成投票﹂で足りる

。地 84

域的機関による強制行動に関して三常任理事国の賛成投票で足りるとする趣旨は、通常、五大国すべての具体的な利害  (六八)

(24)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界六九同志社法学 五九巻一号 が絡む地域紛争はあり得ないことを念頭に置いたものであろう

紛す日、﹁(ヤルタ)方式が規定るたような、第八章第A節(翌れオさそしてカナダは、このーストラリア修正案が提示  。 85

争の平和的解決)における紛争当事国の﹃拒否権﹄のみならず、紛争当事国でないいかなる常任理事国の﹃拒否権﹄も認めるべきではない

に、﹁た。またペルーは全持会一致は平和的解決し支ーを発言し、ベルギ及﹂びチリもこの発言と 86

関して主張されるべきではない。したがって、ペルーはオーストラリアとチリの提案、とりわけ地域的取極に対して適用される箇所に賛同する

﹂と発言した。 87

 ついで、ギリシャは第八章第A項第五項

、正ちわなす。たし示提を案修るえ加を言文なうよの次に 88

いかなる調整も実現しないならば、また、かような失敗が安全保障理事会によって世界の平和に対する脅威とみなされるならば、理事会は七理事国の賛成投票により平和に対する脅威の存在を決定する

89

 さらにニュージーランドは、﹁もし今提案(

st an d

)されている拒否権が削除されるならば、ダンバートン・オークス

提案に責任を負う大国は決定を受け入れることができないと主張するだろうし、また、その結果当然(提示される)代

替案はダンバートン・オークス提案すべてを削除することになるだろうと理解している

権案続及び拒否関の提の決範囲、程度及び効手表になるあが要必るれさが﹁明説るすだからこそ果 、に時同、もらがなし言発と﹂ 90

﹂と強く主張した。 91

 そして、紛争当事国たる常任理事国の拒否権に優るとも劣らないほど重要な問題は、﹁五常任理事国のうち一理事国が緊急かつ直接に関係しない(

no t im m ed ia te ly a nd d ire ct ly in vo lv ed

)紛争にかかわる場合である。この場合、一常任

理事国はいかなる行動に対しても恣意的に反対しそれを阻止しうるのだろうか。当該事項は予備的な段階において討議

 (六九)

(25)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界七〇同志社法学 五九巻一号

されうるのだろうか。たとえば二つの小国間において戦争の危険が絡む紛争が進行している場合、この問題は安全保障

理事会へ付託されうるのか。付託される場合、どの程度まで取り上げられうるのか。⋮⋮一大国は当該事項が安全保障理事会によって審議の議題になることを阻止しうるのか

。題たいてし起提を問に早ぎ継矢と﹂ 92

2

.第八章第B節

 では、強力的解決に関するダンバートン・オークス提案第八章第B節について、紛争当事国でない常任理事国は拒否権を行使しうるのだろうか。もし行使されうるならば、一体なぜ、強力的解決における紛争当事国でない五大国は、自

国の死活的利益が絡まないにもかかわらず、拒否権を認められるのだろうか。 強力的解決における紛争当事国でない常任理事国の拒否権に関して修正案を提示したのは、エクアドル、エルサルバ

ドル、フィリピン、イラン、キューバ、メキシコ、オランダ(以上、拒否権を全面的に否定する修正案)、ギリシャ

エジプト 93

、オーストラリア 94

さドージーュニ、にら。ンたっあで国ヵ〇一のラ 95

につ点のこが家国のかくい他のそめじはを 96

関する拒否権を廃止ないし制限すべき旨の発言を行った。以下では、比較的詳細な議論を展開したギリシャとエジプトを中心に各修正案の具体的な内容を紹介しておこう。

 まずギリシャは会議当初、﹁二あるいはそれ以上の常任理事国以外の国家が紛争当事国である場合、常任理事国は平和の破壊あるいは侵略行為の存在を決定することに関して拒否権を放棄すべきである。さらに、少なくとも勧告は、常

任理事国による拒否権の行使なしに安全保障理事会が下しうるようにすべきである

を法第六章第C節は、﹁潜在的な違提反国の利益となる明確な権利案スリは つづけてギクャシ、ンーオダ・トーバン ﹂。たし張主と 97

創設しながら、その犠牲国に対して害を与えるものである。なぜなら、いずれかの常任理事国による拒否権の行使を通  (七〇)

(26)

国連集団安全保障体制における拒否権の意義と限界七一同志社法学 五九巻一号 じて、安全保障理事会は侵略行為の存在に関する決定に至ることを妨げられうるからである

、るうな新たな第三項を挿入す修の正案を提出した。すなわちよ次第二章に節の第C項第三項の間と う指摘した第えで、六﹂と 98

第三項:第八章第B節第二項に基づく安全保障理事会による勧告は、七理事国の賛成投票によって行われる

99

 この提案によれば常任理事国は、紛争当事国であろうとなかろうと、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の

存在に関する勧告について拒否権を投じることができない。さらにギリシャは、第八章第B節第二項の最後に以下のような文言を加える修正案を提示した。すなわち、

とりわけ、安全保障理事会の常任理事国以外の二あるいはそれ以上の加盟国間の紛争が生ずる場合には、後者(安

全保障理事会:筆者註)は、平和の破壊ないし侵略行為の存在に関する決定について、七理事国の賛成投票によって決定を下さなければならない

100

 この修正案に基づけば、常任理事国は、自国が直接の紛争当事国でない中小国間の紛争の場合、平和に対する破壊ないし侵略行為の存在に関する勧告のみならず決定についても拒否権を行使することができない。

 ついでエジプトは、﹁疑いなく、大国の特権的な立場は正常なもの(

no rm al

)であり、これらの国家が平和の維持に関して果たすより大きな責任によって正当化される。国際連盟の経験に基づき、責任の過度の分割という過去の誤りを

避けるようにすべきである。だが、非常に少数の手に権力全般を集中する仕組みを採用することによって、反対の極(

th e

 (七一)

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