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企業年金の受給者減額に関する一考察 : 社会保障 法における企業年金の位置付けに関連して

著者 坂井 岳夫

雑誌名 同志社法學

巻 61

号 5

ページ 197‑260

発行年 2009‑11‑30

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012050

(2)

企業年金の受給者減額に関する一考察一九七同志社法学 六一巻五号

企業年金の受給者減額に関する一考察 ―

社会保障法における企業年金の位置付けに関連して

坂 井 岳 夫

  (一五四三)

(3)

企業年金の受給者減額に関する一考察一九八同志社法学 六一巻五号

はじめに

  ︵な課された主要任障務の一つであに保一け︶高齢期におる会所得保障は︑社り

と齢険保ういと﹂老故﹁るれさ定想事はこ能るあで故事な可︑測予に的観客でそがの︒金保険︶そ任務を果たしている にいお︑国がわはて年︑公的年金制度︵ 1

いう点で︑傷病・障害・死亡といった社会保険によって保障される他の偶発的な保険事故とは区別される

かし代のうちに老後への備えとて役貯蓄などの自助努力をする世現つ老のような性質をも①﹁齢﹂という保険事故も︑ かし︒し︑こ 2

否かについては個人差があり

る動扶内族家ⓑ︑や変能の準水活生はいる養力費スいてし在存がクリのたっいと性実確不あ計 ︑計にるす達調を費生たの期齢高②︑たまあっ生済うなもとに動変経てやレフンイⓐ︑は 3

ことから︑社会保険によ 4

る保障が求められている︒

  高齢期の所得保障に関し︑わが国の社会保障制度は︑一般に二階建てと称される公的年金制度を構築・運用している︒

その一階部分について規定するのが国民年金法であり︑定額給付としての老齢基礎年金を制度化している︵国年法二六

  (一五四四)

(4)

企業年金の受給者減額に関する一考察一九九同志社法学 六一巻五号 条以下参照︶︒国民年金法は︑日本国内に住所を有する二〇歳以上・六〇歳未満の者を網羅的に被保険者として捕捉する制度である︵国年法七条一項参照︶︒これによって国民皆年金が実現され︑すべての国民が公的な年金制度に加入す

ることとなる︒また︑二階部分について規定するのが厚生年金保険法をはじめとする被用者年金各法であり︑報酬比例年金としての老齢厚生年金等を制度化している︵厚年法四二条以下参照︶︒

  ただし︑保険事故としての﹁老齢﹂が備える上記の性質に照らせば︑高齢期における所得喪失︵所得の減少︶のすべてについて公的年金制度︵年金保険︶による填補が予定されるものではないことも︑また明らかである︒高齢期の所得

保障を論じるにあたっては︑公的年金制度と同時に︑私的な備えもまた重要な役割を与えられるということである︒

  わが国では︑高齢期の所得保障のための私的な備えとして︑企業年金が重要な役割を担っている︒沿革的には︑一九

五〇年代半ばに︑退職一時金に係る給付費用の平準化を意図して︑企業年金を導入する企業が現れるようになったとされる︵自社年金︶︒そして現在では︑適格年金制度・厚生年金基金制度・確定給付企業年金制度・確定拠出年金制度を

中心として︑制定法上の企業年金制度が一定の充実をみるにいたっている

の金ていつに度制年制業企たした充税上件に金年業企りよれのそ︑い行を遇優を要保がのの所得障制度備えるべき一定 の年業企︒られこ法金齢制はいずれも︑高期 5

実施を奨励するための枠組みと位置付けることができる

6

6

6

効す指もで章一第︑ちわな︒するいてし面直もに題課摘るくの的射反のそ︑はげ下引準よ水付給の金年的公︑にうの多   ︵度端一の度制障保得所は制担金年業企︑にうよのこ︶を二︑くで中の勢情済経・会社巻もり取をれそ︑がるあでのう

果として企業年金制度の拡充を要請し︑雇用の流動化は︑企業年金のポータビリティに関する議論の重要度を高め︑そして投資環境の悪化は︑受給権の保護を喫緊の課題に押し上げた︒これらの課題の中には︑立法による解決をみたもの

もあれば︑現在︑立法政策上の課題として議論されているものもある︒そのような課題とならんで︑解釈論上の重要問

  (一五四五)

(5)

企業年金の受給者減額に関する一考察二〇〇同志社法学 六一巻五号

題と位置付けられるのが︑給付水準の引下げ︑とりわけ受給者減額の問題である︒

  受給者減額については︑バブル経済崩壊後における経済情勢の悪化を受けて︑自社年金に関する裁判例が複数現れ︑学説における議論も重ねられてきた︒これに対し︑近時においては︑厚生年金基金制度や確定給付企業年金制度におけ

る受給者減額に関する裁判例も現れるようになり︑紛争の類型は多様化している︒

  ここで︑厚生年金基金制度および確定給付企業年金制度は︑当該制度に加入する者の﹁生活の安定と福祉の向上﹂を

目的とする制度であり︵厚年法一〇六条︑確定給付法一条︶︑給付設計をはじめとして制度を実施する各局面における各種の法規制を予定するものである︒企業年金には退職給付としての側面と所得保障給付としての側面があると指摘さ

れるが

い︑法の定一は面側の者後は制ていおに度制金年業企規に給他てれさ化体具で面場のの裏そ計設付給てれらけ付付定確 ︑上実事らぱっもは面側の者後︑はていおに金年社自の機能記や度制金基金年生厚の上と︑し対にのるれ現てし 8

るということも可能であろう︒そして︑自社年金と厚生年金基金制度あるいは確定給付企業年金制度との間に見出されるこのような法的背景の違いが︑厚生年金基金制度・確定給付企業年金制度の下で行われる受給者減額の法規制を論じ

る解釈論に︑いかなるかたちで現れてくるのかという点については︑十分な検討が必要であるものと思われる︒

  ︵よ︵厚生年金基金制度おび法確定給付企業年金制度制金三な︶本稿は︑以上のよう問年題意識に基づいて︑企業︶

の下での受給者減額について︑学説および裁判例の分析・検討をとおして︑法規制の在り方を考察するものである︵自社年金に関する学説および裁判例は︑上記の考察に必要な範囲で参照する︶︒

  具体的には︑第一章において︑受給者減額の問題を論じる際の基本的な視座を探るために︑社会保障法における企業年金の位置付けについて検討を行う︒受給者減額については︑これを論じるための制定法上の手掛かりが限られている

ところ︑企業年金の位置付けについての理解は︑解釈論を展開する上での指針としての役割を果たしうると考えるため

  (一五四六)

(6)

企業年金の受給者減額に関する一考察二〇一同志社法学 六一巻五号 である︒

  第二章では︑年金給付の支給をめぐる法律関係について考察する︒企業年金法制の下での年金給付に関しては︑そも

そも年金給付の支給をめぐる法律関係をいかに解するかについて︑学説および裁判例の中で見解の対立がある︒この点に関する理解は︑受給者減額に対する法規制の実質的な内容にも関わりをもつことから︑法規制の内容を論じる前提と

して考察を行う︒

  第三章では︑受給者減額に対する法規制の内容について考察する︒受給者減額の法規制については︑受給者減額の根

拠をどこに求め︑受給者減額の要件をどのように解するのかという問題や︑受給者減額を内容とする規約変更について法が求める認可・承認の意義をいかに解するのかという問題があり︑複雑な法規制の全体像を明らかにする必要がある︒

これらの問題の法的位置付けや法的意義に留意しながら考察を進め︑具体的な法規制の在り方を提示することを試みたい︒

︺﹂ ﹂︵︑﹁ 1﹂︵︑﹁退

︺︒ 2︺﹄︵﹄︵ 3

2︺︒

4西﹄︵

5沿﹄︵

  (一五四七)

(7)

企業年金の受給者減額に関する一考察二〇二同志社法学 六一巻五号 6

5

退︶︵調 調退退退 調退 ︶︒ 退 調 7調退﹄︹退調 8﹄︵

第一章  社会保障法における企業年金の位置付け

第一節  社会保障と他の制度・手段の関係

一  「第一次報告」および「勧告」の内容

  社会保障法における企業年金の位置付けを検討するにあたっては︑わが国における社会保障制度の展望について論じる︑社会保障制度審議会﹁社会保障将来像委員会第一次報告

社会保障の理念等の見直しについて﹂︵一九九三年︒

以下︑﹁第一次報告﹂とする︶︑および︑同﹁社会保障体制の再構築︵勧告︶

安心して暮らせる二一世紀の社会を目

  (一五四八)

(8)

企業年金の受給者減額に関する一考察二〇三同志社法学 六一巻五号 指して﹂︵一九九五年︒以下︑﹁勧告﹂とする︶が参考になる︒﹁第一次報告﹂および﹁勧告﹂は︑人口構造の変化や低成長経済への移行といった︑現在に連なる社会・経済状況下での社会保障の在り方を構想するものである︒その中では︑

少子高齢化や財政面での制約を念頭に︑社会保障における公私の役割についても論じられている︒

  まず︑﹁第一次報告﹂の中では︑社会保障とならぶ公的な生活保障制度が整備され

︑あるいは民間の生活保障手段が 9

充実している

社国う行を障保活生の民けけだれそ︑がすた果を割わでな基︑度制るくづ形を盤のは障保会社の記上︒いな役要重でえ ︒なうよのそ︑てしそとる現てれさ摘指が状現のいに状民うるす障保を活生の国つは障保会社︑﹁はてい 11

会保障と類似の機能を果たす制度︑社会保障が機能するための前提となる制度などさまざまな公共政策と相まって国民の生活の維持︑向上が図られる︒とりわけ国民のニーズが高度化・多様化する中で︑国民の福祉の向上のため︑社会保

障のみならずこれらの社会保障に関連する制度についてもそれぞれの位置づけをはっきりさせ︑さらには企業福祉等民間の役割も含めこれに十分な考慮を払いつつ相互の役割分担と連携を図り︑総合的にその推進を図っていくことが必要

である︒﹂との姿勢が示されている︒

  また︑﹁第一次報告﹂では︑労働力人口の減少や高齢化の進展が社会保障の財源上の制約を強めるとの認識も示され

ている︒この点に対しては︑﹁国民の生活安定のために社会保障が核心的な役割を果たす必要があることは今さらいう

までもない︒しかし︑生活保障のすべてが公的責任で行われるわけではなく︑個人や家族等の私的な責任に委ねられなければならない分野も少なくない︒特に︑高齢社会の到来による年金︑医療︑介護等の急速な費用増大を考えるとき︑

社会保障制度の長期的安定を確保するためには︑財政面での制約をも考慮しつつ社会保障の守備範囲を再検討することは避けられない︒﹂との姿勢が示されている︒

  一方︑﹁勧告﹂においては︑社会保障をめぐる公私の役割分担について︑﹁公的部門と私的部門が相互に連携して︑国

  (一五四九)

(9)

企業年金の受給者減額に関する一考察二〇四同志社法学 六一巻五号

民の生活を安心できるものにしていくという視点が重要である︒公的部門が対応すべき国民のニーズや満たすべき水準

は︑その制度の趣旨・目的︑他制度とのバランス︑一般国民の生活水準︑財政の状況等を勘案しながら︑各分野ごとに国民の合意を得て決定していかざるを得ない︒﹂とする︒そして︑公的年金の給付水準に関しては︑﹁公的年金は生活の

安定にかかわる基本的なニーズを満たし︑企業年金や個人年金はより豊かな老後の生活の保障を求めるニーズに対応する︒﹂との指摘を行うと同時に︑﹁今後は︑後者の役割がこれまでより大きくなると考えられる﹂とも述べている︒

二  「第一次報告」および「勧告」の政策的視点

はき民国︑ちわなす︒うよで生がとこる取み読を点視の活策生ズーニるす対に障保活︑水てけ受をどなりま高の準的政   ﹁﹂給の障保会社︑はらか告水勧﹁びよお﹂告報次一付第な手うよの次︑てし関に段やお度制るす完補をれそびよ準

高度化・多様化している︒しかし︑このようなニーズのどこまでを公的に保障していくかは一つの政策的な判断を要する問題である︒特に︑自己責任の理念や財政上の制約を考慮するならば︑生活保障のすべてが公的責任によって行われ

ることにはならない︒むしろ︑今日の生活保障は︑社会保障︑社会保障以外の公的な生活保障制度︑民間の生活保障手段といった相互補完的な制度や手段によって実現されている︒

  所得保障に関していえば︑社会保障としての公的年金に加え︑民間の生活保障手段としての企業年金が存在するということになる

けなする税制優遇は公的生に活保障制度と関連付対度︒にまた︑企業年金各法基制づいて実施される年金 11

て把握することも可能であろう︒これらのうち︑公的年金は生活の安定に関わる基本的なニーズを実現すべきものであり︑企業年金はそのような水準を越えた老後の生活保障についてのニーズを実現すべきものであると位置付けられるこ

とになる︒

  (一五五〇)

(10)

企業年金の受給者減額に関する一考察二〇五同志社法学 六一巻五号 第二節  二〇〇〇年・二〇〇四年公的年金改革

一  公的年金改革の背景

  ﹁し的なニーズ﹂の充足とた基︒そこで続いては︑﹁勧告本る勧の告﹂は︑公的年金制度役わ割を︑﹁生活の安定にかか﹂

後︑特に近時における公的年金制度の展開を確認する︒

  世代間扶養の理念を内包する公的年金は︑人口構造の変化によって制度の在り方が深刻な影響を受けるものである︒

少子高齢化という社会状況に直面したわが国の公的年金制度にとって︑現役世代の負担と高齢世代への給付のバランスを見直し︑持続可能な年金制度を構築することは︑焦眉の政策課題となっていた︒そのような課題について立法的な対

処を行い︑現在の公的年金の給付水準に大きな影響を及ぼしたのが︑二〇〇〇年および二〇〇四年の法改正である︒

二  公的年金改革の内容

  ︵こ保険料負担の高騰と︑れ金に起因する若年世代のの年一進︶急速な少子高齢化の展民による厚生年金および国年

金制度に対する不信感・不安感という問題に対処すべく行われたのが︑二〇〇〇年の法改正である

11

  そこでは︑年金の給付総額を抑制するために︑①厚生年金︵報酬比例部分︶の給付水準の引下げ︑②六五歳以降の基

礎年金・厚生年金の改定方式の変更︑③特別支給の老齢厚生年金︵報酬比例部分︶の支給開始年齢の引上げ︑④六〇歳台後半の在職老齢年金制度の導入︑が行われた︒これらのうち︑公的年金と企業年金との関係を考えるにあたって特に

重要なのは︑①および②である︒すなわち︑①厚生年金︵報酬比例部分︶の給付水準については︑将来世代の過重な負担を防ぐために将来の保険料率を抑制することとし︑これに対応する給付総額の抑制措置の一つとして給付水準の五%

引下げが行われた︒その結果︑受給開始時における公的年金の所得代替率は︑おおむね六割となった︒また︑②年金額

  (一五五一)

(11)

企業年金の受給者減額に関する一考察二〇六同志社法学 六一巻五号

の改定については︑従来︑基礎年金に関して高齢者世帯や現役世帯の消費支出などを総合勘案して政策改定が行われ︑

厚生年金に関して現役世代の手取賃金の上昇に応じて改定が行われてきた︵賃金再評価︶︒これに対し︑改正後は︑現役世代の負担が増加する中で︑現役世代の賃金上昇分を受給者に移転することは困難であるとの考慮に基づいて︑賃金

再評価は行わず︑物価の上昇に応じた年金額の引上げを行うこととした︒

  ︵対付のバランスに一定の処とがなされた後も︑少子給担二に︶二〇〇〇年の法改正よ負って年金保険についての高

齢化の進行は続いた︒そのため︑持続可能な年金制度の構築と︑公的年金制度に対する信頼の確保は︑引き続き公的年金制度をめぐる重要な政策課題と位置付けられていた︒この点について再度の対処を行ったのが︑二〇〇四年の法改正

である

11

  加えて︑同年の法改正の背後には︑五年ごとの財政再計算の際に給付内容や保険料水準を見直すという従来の制度が︑

将来の給付水準および保険料水準を見通しにくくするものであり︑この点が年金制度に対する不安の一因となっているとの問題意識があった︒そのような状況の中で導入されたのが︑保険料水準固定方式である︒ここで︑保険料水準固定

方式とは︑保険料負担と年金給付の関係について︑最終的な保険料水準を法定し︑社会全体の所得や賃金の変動に応じて給付水準を調整するという方式である︒そして︑保険料水準固定方式における給付水準の調整方法として︑年金制度

を支える被保険者数を減少させる要因である少子化の影響や︑給付費用の増加要因である平均余命の延びを︑給付水準の調整に反映させる仕組みである﹁マクロ経済スライド﹂が導入された︒つまり︑公的年金の給付は︑固定化される保

険料水準に対応する給付水準に向けて︑その実質価値を減じていくことになった︒その結果︑公的年金の所得代替率は︑二〇二三年に六五歳となった者について︑五割に減少するものと見込まれている︒

  (一五五二)

(12)

企業年金の受給者減額に関する一考察二〇七同志社法学 六一巻五号 第三節  二〇〇一年企業年金改革

一  企業年金改革の背景

  前記の公的年金改革と前後して︑以下のような背景の下で︑企業年金法制の整備も進められた

11

  その第一は︑企業年金に関する既存の法制度の問題あるいは限界の顕在化である︒まず︑厚生年金基金の代行部分に関し︑経済情勢の悪化により運用損が生じ︑設立企業に負担が生じることとなった︒その結果︑代行部分の存在が︑企

業のメリットよりも負担として意識されるようになり︑代行部分の返上が求められるにいたったのである︒また︑わが国の企業年金法制は︑受給権の保護が不十分であるとの指摘もなされていた︒受託者責任の不明確さ︑支払保証制度の

不十分さ︑退職事由による給付水準の格差︑懲戒解雇にともなう年金給付の不支給︑ポータビリティの欠如といった問題である︒

  そして第二は︑社会・経済環境の変化である︒すでに指摘したとおり︑公的年金の機能縮減が避けられない状況の中で︑企業年金法制の拡充が強く求められることとなったのである︒このほか︑経済情勢の悪化︑企業年金に関する会計

基準の変更︵退職給付会計の導入︶により︑年金資産の積立不足への対処が喫緊の課題と位置付けられ︑また︑雇用の流動化の進展により︑転職者のニーズにも応えうる企業年金制度の在り方が模索されるようになった︒

二  企業年金改革の内容

︵一︶このような背景の下︑二〇〇一年に︑確定拠出年金法により︑確定拠出年金制度が導入された

額し々の加入者が自己責任で運用︑を掛金とその運用収益との合計個金金を拠出する掛掛の額あらかじめ決定し︑その 出確定拠︒年金とは︑ 11

をもとに給付額が決定される年金である︒確定拠出年金においては︑企業の従業員を対象とする企業型年金と︑自営業

  (一五五三)

(13)

企業年金の受給者減額に関する一考察二〇八同志社法学 六一巻五号

者や一定の企業年金制度を実施していない企業の従業員を対象とする個人型年金の二つの制度が用意されている︒また︑

企業型年金を実施する企業や確定給付年金に関する業務の運営管理機関について︑忠実義務や一定の禁止行為などを内容とする行為準則が定められている︒

  このような内容による確定給付年金は︑従来の確定給付型の企業年金とは異なる類型の制度を創設することで企業年金制度の選択肢を拡大している︑確定給付型の企業年金であるため事後的に積立不足の問題を生じることがない︑行為

準則の法定により受託者責任が明確化される︑掛金や運用収益が個人ごとに記録管理されることからポータビリティの確保に適合的であるといった意義をもっている︒

︵二︶同じく︑二〇〇一年には︑確定給付企業年金法によって︑確定給付企業年金制度も導入されている

すてである︵制度の概要についは年︑第二章第二節一も参照︶︒金ののよ業年金とは︑下記型うな特徴をもつ確定給付 定確︒給付企 11

なわち︑確定給付企業年金においては︑企業が実施主体となり外部機関で積立てを行う規約型制度と︑企業とは別個の法人である企業年金基金が管理運営主体となる基金型制度の二つの制度が用意されている︒また︑確定給付企業年金を

実施する企業に対して︑給付に充てるべき積立金の積立てが義務付けられ︑企業︑基金の理事︑資産管理運用機関などに対しては︑忠実義務や一定の禁止行為などを内容とする行為準則が定められている︒

  このような内容による確定給付企業年金は︑厚生年金の代行をともなわない確定給付型の企業年金制度の一類型を提供する︵確定給付企業年金法は︑厚生年金基金から確定給付企業年金への移行︑すなわち代行部分の返上を認めている︶

とともに︑積立義務や行為準則の法定によって受給権の保護を前進させるという意義をもっている︒   (一五五四)

(14)

企業年金の受給者減額に関する一考察二〇九同志社法学 六一巻五号 第四節  社会保障法における企業年金の位置付け

一  学説の状況

  以上のような制定法の状況を前提とした場合︑これらの企業年金法制の下で実施される企業年金には︑社会保障法上︑

いかなる位置付けが与えられるべきか︒このような問題は︑企業年金に関する立法政策を論じる際に︑基本的な視座を得るための議論として重視されることも多いが︑現行法の解釈を論じるにあたっても︑示唆を提供しうるものである

11

とりわけ︑企業年金給付の支給をめぐる法律関係や︑受給者減額の要件という問題は︑これを規律する制定法上の明確な規定を欠いているが︑そのような問題について論じようとする場合には︑企業年金法制の法的位置付けが法解釈の指

針となりうるものと解される︒そこで以下では︑本稿における考察の基本的な視点を得ることを目的に︑社会保障法における企業年金の位置付けを論じる学説あるいは主張について検討する︒

  この点に関する議論状況を概観すると︑①退職給付としての側面を重視し︑労使自治の尊重を主張する見解︑②現行法の解釈としては退職給付としての側面を重視する一方で︑所得保障給付としての側面にも配慮した法政策を展望する

見解︑③所得保障給付としての側面を重視し︑社会保障法上の位置付けを論じる見解︑④厚生年金基金については所得保障給付としての側面を重視する一方で︑他の法制については退職給付としての側面を重視する見解などがある︒

  第一の見解は︑以下のように主張する

た経考に分十を勢情済やし境環営経たれかお慮︑業必のそ︑がるあが要く柔いてっ図を応対な軟の企はにめたくいて︑ ︒は従と業企︑金者事当の員年業企業までをし営運に全健金あ年業企︑た︒る 11

めには労使による話合いが欠かせない︒このような観点から︑労使自治の重要性が導かれる︒そして︑労使自治を前提として制度を検討していくにあたっては︑企業や従業員の多様なニーズに応えるために︑過剰な規制や不公正な規制を

排除する必要がある︒

  (一五五五)

(15)

企業年金の受給者減額に関する一考察二一〇同志社法学 六一巻五号

  第二の見解は︑以下のように主張する︒企業年金は︑その誕生の経緯からも︑実態からも︑労使の意識からも︑﹁退

職金﹂としての性格をもっている

る去格を完全消しにるとは無理であこ ﹂働条件性という﹁労く︒意また︑企業年金制度の任性づに照らせば︑労使合意に基 11

なまの重要性が高る年以上︑そのよう金業︒のしかし︑老後所企得保障において 11

側面を重視した法制度に移行するか

るとあが要必くいてっ探を和調の﹂︑﹁障保得所後老﹁と﹂件条働労 11

11

  第三の見解は︑以下のように主張する︒基礎的部分を超えた老後の所得保障を公的年金によって実現することは︑財

産権や人格的利益の侵害という問題を生じることになる

にのじ講を置措遇優上受制税︑い負を担︑給政を段手のどなう行制権規法のめたの護保負財︑運接・間に接営に関わり 的超を分部︒む礎基︑ろしたえい所得保障につては︑国家が直 11

よって︑個人の自主的な﹁選択﹂の契機をもつ多様な所得保障手段を確保することが望ましい︒企業年金法制には︑このような所得保障手段としての意義が認められる

11

  第四の見解は︑以下のように主張する︒厚生年金基金は︑老齢厚生年金の代行を行うという点でも︑公的責任で終身の年金給付を行うという点でも︑社会保障としての性質をもっている

年年業企るけおに度制金付︒給定確︑し対にれこ 11

金基金は︑複数企業が共同で年金制度を実施するための便宜に配慮して設けられた制度であり︑私的な法人である

つと生活保障給付しはての意義をも︑付生たるよに金基金年給厚︑てっが ︒し 11

職金退︑は付給るよに基の金年業企︑し対に 11

給付︵退職金︶である

11

二  検討と私見

  以上をもとに検討するに︑﹁はじめに﹂︵一︶で確認した﹁老齢﹂という保険事故の特徴に照らせば︑所得保障制度は

本来的に︑公的年金制度︵社会保険︶とそれを補完する各種の年金制度の補完関係の下で成り立つべきものであるとい

  (一五五六)

(16)

企業年金の受給者減額に関する一考察二一一同志社法学 六一巻五号 うことができる︒そして︑その補完関係の在り方は︑公的年金の給付水準の引下げと︑企業年金の機能の拡充という年金制度の改革によって一定の変容を迫られ︑所得保障制度の中にあっての企業年金の役割は一段と高まってきていると

評価することができる︒この意味で︑企業年金の私的な性格をことさらに強調する第一の見解は︑現在における企業年金の位置付けを適切に評価していない面があるといわざるをえない︒

  そして︑このような企業年金の変化は︑法の趣旨および内容を介して︑企業年金の具体的な在り方にも影響を及ぼしている︒すなわち︑法は︑企業年金制度の目的が﹁生活の安定と福祉の向上﹂にあることを明らかにした上で︵厚年法

一〇六条︑確定給付法一条︶︑各制度の趣旨に照らして給付設計に規制を加え︑受給権の保護を強化している︒このような制定法の状況は︑所得保障制度の中にあっての企業年金の役割の高まりが︑具体的な法制度の内容によって裏打ち

されたものであるということを示している︒そこで︑第二の見解に対しては︑今後の法政策を論じる場合のみならず︑現行法の解釈を論じる場合にも︑企業年金の生活保障給付としての側面は十分に尊重すべき段階にあるとの主張が可能

であると思われる︒

  このような位置付けを与えられるべき企業年金は︑﹁第一次報告﹂や﹁勧告﹂も指摘するとおり︑生活保障の一端を

担う制度として︑広義の社会保障法の中に積極的に位置付けられるべき段階にきているものと解される︒その際の基本

的な視点としては︑第四の見解が主張するような厳密な意味での社会保障性の有無を機軸とするのではなく︑企業年金の特徴に応じ︑第三の見解が指摘するような多様な観点からの助成および規制が模索されるべきである︒

︶︑︶︑ 9 10

  (一五五七)

参照

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