( 東 女 医 大 誌 第54巻 第3
号 )
頁 294‑304 昭和59年3月
ラットにおける門脈栄養法と中心静脈栄養法の 比較に関する実験的研究
東京女子医科大学 外科学教室(主任:織畑秀夫教授〉
城 谷 典 保
( 受 付 昭 和58年12月10日〉
Experimental and Comparative Studies
on the Prehepatic and Central Venous Hyperalimentation i n Rats Noriyasu SHIROTANI
D e p a r t m e n t o f S u r g e r y ( D i r e c t o r : P r o f . H i d e o ORIHAT A ) T o k y o W o m e n ' s M e d i c a l C o l l e g e
The r e l a t i v e e f f i c i e n c y o f p r e h e p a t i c (PVH) a n d c e n t r a l v e n o u s h y p e r a l i m e n t a t i o n (CVH) was e v a l u a t e d i n r a t s .
A method was d e v e l o p e d t o s t u d y p r e h e p a t i c a n d c e n t r a l v e n o u s f e e d i n g by i n s e r t i n g a s i l a s t i c c a t h e r i n t h e p o r t a l v e i n and t h e c e n t r a l v e i n . B o t h g r o u p s r e c i e v e d h y p e r t o n i c d e x t r o s e and amino a c i d s a t a r a t e o f 220 K c a l
/kg / d a y f o r 7 d a y s . The c o n t r o l g r o u p was a l l o w e d t o i n g e s t a s t o c k d i e t a d l i b i t u m .
On t h e 7 t h p o s t o p e r a t i v e day
,a l 1 r a t s were s l a u g h t e r e d and t h e y were i n v e s t i g a t e d by t h e b i o c h e m i c a l and h i s t p a t h o l o g i c a l s t u d y .
Compared w i t h t h e c o n t r o l g r o u p
,t h e PVH l e d t o a d e c r e a s e i n w e i g h t w h i l e t h e CVH d e c r e a s e d i t s t i l l f u r t h e r .
The PVH r e s u 1 t ed i n h i g h e r n i t r o g e n e q u i l i b r i u m t h a n t h e CVH. Both g r o u p s showed s i m i l a r t r e n d s i n l i v e r f u n c t i o n and w a t e r b a l a n c e .
However
,f a t t y i n f i l t r a t i o n o f t h e l i v e r was f o u n d a b o u t t w i c e i n t h e PVH compared w i t h t h e CVH.
緒 言
近年,非経口的な栄養補給の必要性から,外科 領域における栄養法の進歩はめざましいものがあ る.なかでも
Dudrick
1)2)らの報告以来,中心静脈 栄養法はすぐれた治療法として確立され,広く臨 床に使用されている.しかし, ヒトにおける糖質,アミノ酸などの栄 養源は,消化管で消化・吸収をうけ,門脈を経て 肝臓で代謝,調節をうける.とくに,肝臓はアミ ノ酸代謝において主たる役割を担っており,門脈 内にアミノ酸を投与することの有効性について以 前より報告制されている.また,武藤5)らも述べて いるように,糖質およびアミノ酸を門脈内に投与
することは, これらの物質の効果的な利用に極め て有利なものと考えられる.
P i c c o n e
6)らは, 40例の食道癌患者の術後に門脈 栄養法をおこない,血糖値,血清浸透圧の安定,さらに窒素平衡において一般の静脈栄養法より良 好な結果を得たと報告している.
Ronald
7)らもサ ルを使用し,その有効性について検討している.本邦でも,内野8)らや長谷部9)らの報告がみとめら れるため,著者はラットを使用して,門脈内に直 接高カロリー輸液をおこない,門脈栄養法の有効 性について,中心静脈栄養法との比較検討をおこ なった.
‑294‑
材料および方法 1.実験材料
体重290g~300g の Wistar 系雄ラットを使用 した
2 .
実験方法国型飼料(オリエンタノレ飼育用 M)を摂取して いたラットに,手術施行
2 4
時間前より水分のみを 与え,宗田10)ら の 方 法 に し た が い ペ ン ト パ ル ピ タール腹腔内麻酔C50mg/kgi . p . )
下に頚部をイ ソジン液⑧(明治製菓〉で消毒後,小切聞を加え,右外頚静脈より上大静脈にシリコンラノミーカテー テル(D
owCorning
,S i l a s t i c
⑧,0 . 0 2 0 i n
I.D .
,O . 0 3 7 i n O . D . )
を挿入し留置した.カテーテル対側は 皮下トンネノレを通して肩甲骨聞に抜き,Harness
,P r o t e c t i v e c o i l
を経て,Cannular f e e d t h r o u g h s w i v e l C B i o c a n u l a
院に接続し,ラット用特注代 謝 ゲ ー ジ ( 夏 目 製 作 所 製 〉 の 上 部 に 固 定 し たS w i v e l
から持続徴量注入ポンプに連結させた.以 上の方法で静脈栄養法をおこなったものを中心静 脈栄養群(以下,CV
群〉とする.門脈栄養群(以 下,PV
群〉とは,同様の腹腔内麻酔下で開腹し,盲腸静脈より門脈に向って同様のシリコンラパー カテーテルを挿入し,カテーテル対側は腹壁を通 したのち,皮下トンネルを通して肩甲骨聞に抜き,
同じく持続徴量注入ポンプと接続させた.コント ロール群(以下,
C
群)は,固型飼料,水分を自由 に摂取させて管理をおこなった.これら
PV
群,CV
群のラットに対して,高カロ リー輸液のみで代謝ゲージ内を無拘束下の条件で7
日間管理した.投与方法は,持続徴量注入ポンプを使用して,
投与量としては
250m I ! kg/ day
,投与カロリー量220Kca I ! kg/ day
とする.術後1
日目は投与量の1 / 2
量を2
日目からは全量を投与した.3 .
輸液組成本実験には,市販の高カロリー輸液製剤
u C
パラ メンタールB⑧〉とアミノ酸製剤(モリプロンF⑧), ビタミン剤
CM.V.
I.⑧),電解質液C10%NaCl
大塚⑧),その他抗生物質,へパリンを加えたもの を使用し,表1
の如くである.なお,今回の実験 には脂肪乳剤の投与はおこなわなかった.17
表l 輸液組成(IOOOml中〉
Glucose 188g ビタミンA 15.038I.U エノレゴカノレシ
Amino acid 30g フエローノレ(V.D2)
1.504I.U Na+ │酢酸トコブエ
89mEq ローノレ(V.E) K+ 38mEq 1塩酸(Vチ.Bア1)ミン Mg2+ 5mEq りン酸リボフラビン
ナトリウム(V.B2)
CI‑ 62mEq 塩(V酸.Bピ.)リドキシン 5042 5mEq ニコチン酸アシド Phosphate 12mM パンテノーノレ Acetate 38mEq アスコノレピン酸
(V.C) PH 5.0‑6.0
non.pro‑cal/N 1651抗生剤,ヘパリン
実験群は,次の
3
群に分け (1)門脈栄養群CPV
群〉C I I )
中心静脈栄養群CCV
群〉 (III)コントロール群 (C群〉とした.4 .
体重測定8mg 75mg 15mg 23mg 150mg 38mg 752mg
ラットの体重は,麻酔施行後と実験終了時に測 定した.
5 .
原量ならびに尿中総窒素量尿量は実験開始したのち連日測定し,尿中総窒 素量は,
N‑corder
を用い2 4
時間尿の一部を使用し,総窒素量を算出した.
6 .
血液生化学検査1週間目の屠殺時に,腹部大動脈より採集した 血液(約
8m!)
を使用し,血清総蛋白(Bi u r e t
法), 血糖(OTB
法),インスリンCRAI2
抗体法),総 鉄結合能(フエロジン法), ト ラ ン ス フ ェ リ ンCLIA)
,総コレステロール(酵素法),遊離脂肪酸C L a u r e l l ‑T AC
法),GOT CUV
法),GPT CUV
法),ALPCPNP Rate a s s a y )
,コリンエステラー ゼ ( DTNBRate a s s a y
アセチルコリン基質〉を 測定した.7 .
病理組織学的検査実験終了時屠殺し,ラットより肝を採集してた だちに
10%
中性ホルマリン液で固定する.組織は,ヘマトキシリンーエオジン
CH‑E
染色),ズダンIV
染色,オイルレッドC O i lr e d ) 0
染色をおこな い光顕的に観察した.‑295‑
結 果 1.体重増減(図1)
PV
群,CV
群,C
群の体重増減は,図1
に示し た.実験開始時とくらべ7
日後の実験終了時の 体重の差を表わしたものである.PV
群は‑ 4 . 3
士2 0 . 0 g
,CV群 9 . 4 : t 2
1.4 g
,C
群3 9 . 9
土1 1 . 1 3 g
で あり,C
群に比してPV
群,CV
群とも有意の低下 である(P<O.O
l).PV
群とCV
群を比較すると,PV
群の方がCV
群よりも体重減少が軽度である傾向を示しているE 60
「一一一一←PくO.ul‑一一一一一寸
,‑‑Pく0.01一「
40
20
。
‑20
‑40
図1 体重増減
5%
,
Pく0.05,
れ=10
。
PV CV C 図2 肝重量/体重が,両群聞に明らかな有意差はみとめられなかっ た.
2 .
肝重量・体重比(図2)
屠殺時の肝重量を,体重との比で検討した.
PV
群3.9%
,CV
群3.4%
,C
群3.8%
である.PV
群とC
群は同程度の比率であったが,PV
群において は,CV
群よりも有意に高値を示しており, (p<0 . 0 5 )
,PV
群の方がCV
群よりもC
群に近い値を とる傾向がみとめられた.3 .
水分バランス(図3 )
PV
群とCV
群の術後1
日目より7
日目までの 水分バランスの推移を図3
~こ示した.PV
群,CV
群とも投与輸液量と排世尿量との差を水分バランスとして,経目的変化の推移を比べたものである.
両群とも正の水分バランスをみとめた.
PV
群は,術後
1
日目2 9 . 5
士7 . 8 5 m , l 2
日目3 0 . 0
士8 . 0 6 m l
,3
日目2 6 . 1 : t 5 . 8 4 m l
,4
日目3 0 . 6
土8 . 5 0 m l
,5
日1 1 n
60
ー
‑
・
PV群(n=10)0‑‑‑0 CV群(n=lO)
40
20
。
日2 3 4 7
図3 水分バランス
mgN
P<O.Ol
「一一一一一~
E
コ
PV群(n=lOl lZZ2I CV群(nニ10)再0.05 100
P<O.05
「一一一一一1
50
1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日 mean士SD
‑30
図4 窒素平衡
目
3 2 . 6 : t 1 5 . 6 3 m , l 6 B
目3 9 . 0
土1 6 . 5 8 m l
,7
日目3 4 . 7
士1 6 . 4 3 m l
であった.CV
群は,術後1
日目2 0 . 1 : t 6 . 90m , l 2
日目2 9 . 6 : t 1 2 . 4 2 m l
,3
日目2 9 . 7 : t 1 3 . 3 0 m , l 4
日目2 2 . 3 : t 6 . 1 4 m l
,5
日目2 8 . 8 : t 1 6 . 2 5 m l
,6
日目3 1 . 8 : t 1 2 . 9 8 m l
,7
日目3 1 . 2 : t 5 . O O m l
を示した.PV
群の方が,術後4
日 目以後CV
群よりもやや正の水分パランスを示し ているが,両群聞に有意差はなかった.4 .
窒素平衡(図4)PV
群とCV
群との術後1
日目より7
日目まで の経目的な変化を,窒素平衡として図4に示した.術後
1
日目より7
日目までの累積窒素平衡では,PV
群3 7 9 : t 205.1mgN
,CV
群1 8 8
士150.8mgN
と な り , 平 均 窒 素 平 衡 はPV
群5 4 . 2 : t 77.32mgN
,CV
群1 9 . 4 : t 6 9 . 93mgN
であり,明らかに有意差 をみとめる(p<O.O
l).経目的な変化をみると,
PV
群は術後1
日目よg/dl TP
3 2
。
PV CV CL一一一」
P<O.Oll P<O.Ol
U GOT
300
O PV CV C
mU/ml ALP 800
。
PV CV CL‑‑J P<0.051 P< 0.05
U GPT
30
20
10
。
PV CV CU/ml ChE
0.6
。
PV CV CL一一」
巴三旦~P<O.Ol
mg/dl TChol
。
PV CV C1 9
り
7
日目まで連日正の窒素平衡をとり, とくに5
日目から7日目にかけて顕著な正の値を示してい る.一方,CV
群は術後4
日目と6
日自にわずかな 負の窒素平衡を示した以外,同様に正の値を示し ている. 2群間で経日的変化を比べてみると,術 後5
日目,6
日目において,有意の差をもってPV
群の方が正の窒素平衡を示している
( p < 0 . 0 5 ) .
以上よりみて,
PV
群の方がCV
群より窒素平衡 においては,有利なものと考えられる.5 .
血液生化学検査〈図5)
1)血清総蛋白(TP) g / d l
PV
群では4 . 6 5 : t 0 . 6 9 7
,CV
群5 . 0
土0 . 4 0 6
,C
群5 . 8 4
士0 . 1 5 1
であり,PV
群CV
群ともC
群に比し て有意に低下しているが(p<O.O
l),PV
群とCV
群の聞には有意差はなかった.
2 )
アルカリフォスファターゼ(ALP)mU/ml PV
群2 9 0 . 7 : t 6 8 . 2 6
,CV
群3 2 1 . 4 : t 9 4 . 3 1
,C
群mEq/L FFA
0.6
。
PV CV CμU/ml IRI 40
30
20
10
‑
・・・・1 ..
"
PV CV C
mg/ dl Transferrinμg/dl TIBC 400 150
100
50
100
。予V CV C
。
PV CV Cmg/ dl Glucose
300
200
100
。
PV CV C 図5 血液生化学検査‑297‑
5 6 4 . 0 : t 2 0 7 . 5 4
であった.PV
群CV
群ともC
群に くらべ有意に低下しているが( p < 0 . 0 5 )
,PV
群とCV
群聞には有意差をみとめなかった.3 )
コリンエステラーゼ( C h E )U/ml PV
群0 . 2 2 : t 0 . 0 8 9
,CV
群0 . 3 4
土0 . 0 7
,C
群o . 3 3 : t 0 . 0 5 9
であった.PV
群は,CV
群C
群より も 明 ら か に 有 意 差 を も っ て 低 下 し て い た(p<
0 . 0 5
,p<O.O
l).PV
群とCV
群との聞に差がでた ことは,投与経路の違いによる結果と考えられる.4 ) GOT U (Karmen 単位)
PV
群1 8 2 . 9 : t 7 2 . 8 7
,CV
群1 5 5 . 9
士6 2 . 7 6
,C
群1 3
1.4 : t 5 0 . 3 8
であり3
群聞に差はなかった.5 ) GPT U (Karmen 単位)
PV
群2 0 . 9
土4 . 8 4
,CV
群2 3 . 4
:t8 . 4 9
,C
群2 3 . 8
士1 0 . 8 5
であり3
群聞に差はなかった.6 )
総コレステロール(TCho l ) m g / d l PV
群6 9 . 0
:t9 . 1 1
,CV
群8 0 . 4
:t1 2 . 4 0
,C
群8 6 . 4 : t 2 9 . 8 1
であり,C
群の値にばらつきがある が3
群聞に有意、差はみとめられなかった.7)遊離脂肪酸
(FFA) mEq/1
PV
群0 . 2 6
土0 . 1 7 2
,CV
群0 . 2 3
士0 . 0 8 8
,C
群0 . 2 6
士0 . 1 1 4
であった.3
群間に有意差はなかっ た.8 )
トランスフェリン( T r a n s f e r r i n )m g / d l PV
群9 3 .7
:t1 7 . 5 4
,CV
群1 1
1.0
:t2
1.4 8
,C
群9 7 . 6
士1 1 . 2 9
であり3
群聞に有意差はなかった.9 )
総鉄結合能(TIBC)μg/dl
PV
群2 4 8 . 5
:t6 8 . 4 3
,CV
群2 7 0 . 8
:t9
1.3 4
,C
群2 9
1.8
:t9
1.3 4
であった.3
群聞に有意差はなかっ た.1 0 )
インスリン(IRI)μU/ml
PV
群6 . 5
:t1.0 6
,CV
群1 7. 6
:t1 4 . 4 8
,C
群5 . 0
:tO
であった.CV
群にのみやや高い値を取るもの がみとめられ,値にパラツキをみとめる.これら のデーターのみでは,PV
群とCV
群との聞の統 計学的な有意差を論ずることはできないと判断し た1 1 )
血糖( G l u c o s e )mg / d l
PV
群1 7
1.1 : t 2 5 . 1 7
,CV
群1 6 7 . 5
士2 4 . 0 0
,C
群1 7 6 . 4
土4 6 . 6 9
であり,有意差はなかった.6 .
病理組織学的所見(表2
,写真1‑ 6)
表2 肝組織の病理学的検討
脂肪空胞 PV群(n CV群 C群
=12) (n= 11) (n=7) 大きさ
粗 大
•
(8%)徴 細
••••
• • • • (67%)‑ ・ ・ ・
(36%)量
多 量
••
(17%)中 等 量
•
(8%)•
(9%)少 量
‑ ・ ・ ・ ・
(42%)・ ・ ‑
(27%)位 置
小葉周辺
••••
• • • • (67%)‑ ・ ・ ・
(36%)中 間 帯
•••
(25%)•
(9%)小葉中{;、
一一一」ーーー
PV
群,CV
群,C
群において,H‑E
染色,ズダ ンIV
染色,O i l r e d 0
染色による病理組織学的変 化を観察したが,肝に脂肪空胞の出現をみとめる 以外,特別な所見は観察できなかった.脂肪空胞 に つ い て は , そ の 大 き さ 量 位 置 " に より,表
2
のように分類した.PV
群( n = 1 2 )
は, 大きさ"で粗大1
例C8
%), 徴細8
例( 6 7 % )
であり,脂肪空胞の出現率は75%
であった. 量"は,多量
2
例(17%)
一写真1
, 中等量1
例( 8
%)一写真2
,少量5
例( 4 2 % )
一写 真3
であった. 位置"は,小葉周辺が8
例( 6 7 % )
であり,小葉周辺から中間帯にかけて出現したも のが
3
例( 2 5 % )
であり,小葉中心には存在し なかった.一方,CV
群( n = 1 1 )
では, 大きさ"は徴細なもののみ
4
例( 3 6 % )
であり,脂肪空胞 出現率36%
である. 量"は中等量1
例( 9
%)一写 真4
,少量3
例( 2 7 % )
一写真5
で, 位置"は小 葉周辺4
例( 3 6 % )
,小葉周辺から中間帯にかけて のものが1
例(9
%)であった.C
群には,脂肪 空胞の出現はほとんどみとめられなかった(写真6 ) .
従って,脂肪空胞の出現率からみると,
PV
群はCV
群のおよそ2
倍の頻度であった.さらに,PV
群,
CV
群とも,脂肪空胞は小葉周辺から中間帯に かけて出現しているのが特徴である.脂肪空胞に ついては,高カロリー輸液にともない出現してお り,また投与経路の違いにおいても差が出ている.2 9 8 ‑
事事 量。: 〉斗
ヰカ
ーlN坦坦ll
e、コトー
ヰ 図 炉・4
M判岨周回目 ua︿報叶WUTA︒弔首輪開 (×HC)
園町宮崎回目 HZZや剛2RUTO斗HNV(出向添市仰)・
同判圃RN‑ua︿報叫ミ TR﹀謂掛里帰 (×HO﹀
園町零時湿な g号機陣ョ し
ro
営が (国・開 港市開)・付加ωM Va︿報JW'V T且)事酋簿 (×HC)
園町宮崎湿な zbv剛sしず吊v営MV(出・開 港市伊﹀・
城 谷 論 文 付 図
I I
‑300‑
写真4 CV群ラットの肝組織 Cx 10) 脂肪空胞が 中等量"みられる CH‑E染色〕
写真5 CV群ラットの肝組織 Cx10) 脂肪空胞が 少量"みられる CH‑E染色).
写真6C群ラットの肝組織 CX20) 脂肪空胞を認めない CH‑E染色).
考 察
門脈内輸液は,
F i n e
ll)凶らが出血性ショックに 対して牌静脈を介して門脈内へ動脈血を注入し,その効果をみとめたことが始まりと考えられる.
本邦では,昭和
1 7
年以降,斉藤漢同らが門注療法と して一連の研究をおこなっている.また北J1114l,松 本15L有地16)らによっても報告され,高張糖液,ビ タミン剤,酸素飽和血等の門注療法が,肝庇護の 面から意義のある治療法であるとされている.こ れらの方法により肝内血流量は増加し,肝機能お よび網内系の機能が促進されることが知られてい る.栄養補給という面からアミノ酸を投与したの は門脇mであり,カゼイン酵素分解産物を使用し,これらを門注した場合アルブミンの増加が促進さ れると報告し,武藤5)らは,結晶アミノ酸混合液及 びブドウ糖を門脈内に注入し,末梢静脈注入例と 比較している.
門脈栄養法としては,内野8)らが犬を使用し,間 歌的完全門脈栄養輸液をおこなっている.規則正 しい生体の代謝リズムにあわせて高カロリー輸液 をおこなうには,門脈が代謝効率のよい経路であ り,輸液時間の短縮の可能性があるとしている.
また,注入液がまず肝を通過することにより,肝 の解毒作用,マグロファージ作用が働き,感染の 防止,中毒症の発生が防止されることが期待でき ると述べている.長谷部9)らは,ラットにおける検 討ならびに臨床応用について報告し,中心静脈栄 養法よりも体重増加,窒素平衡が良好であったと 報告している.
一方,諸外国では,
Joyeux
l8)らによって妊娠犬 に正常な出産をさせ,長期経門脈完全栄養法の有 効性が立証されている.P i c c o n e
6)らは,臨床例で 良好な成績をおさめている.しかし,
Ronald
7)らや横山19)らは,門脈栄養法が 期待されたほどの効果は得られなかったとしてい る.そこで,著者は門脈栄養法の有効性を検討す る目的で,ラットを使用し本実験をおこなった.まず,ラットにおける長期間
TPN
実験法につ いての試みについては,多くの報告20ト24)がある が,栄養量の投与については各研究者によりまち まちである.そこで著者は,投与栄養量をラット23
の固型飼料を参考にしながら,独自の組成内容を つくった.電解質, ビタミン剤については, ヒト の必要量と考えられる量を投与し,そのほかへパ
リン,抗生剤なども加えた(表
O.
投与方法は,
S w i v e l
およびHarness
を使用し たS t e i g e r
矧らの方法に準じたものである.従来,拘束下あるいは無拘束下川の条件でおこなわれて いた方法よりも,無拘束に近い状態でラットの代 謝状態を観察することが可能である.しかし,
B i r k h a h n
27lらは,H a r n e s s
の装着がラットにスト レスを与え,体重増加が明らかに悪くなると述べ ているし,Goodgame
削らも同様の報告をしてい る.Harness
の装着によるストレスは,無視でき ないものと考えられるが,PV
群,CV
群とも同一 条件下で比較する場合,ほぼ無拘束下輸液法とし ての目的は達することができた.一方,カテーテル留置にともなう輸液トラブル としては,カテーテルの自然抜去と
e x t r a v a s a ‑ t i o n
であり,これらに対しては北爪22)らの報告にもあるように,①カテーテルの自然抜去に対して は
Harness
を 紳 創 膏 で 確 実 に 固 定 す る . ②e x t r a v a s a t i o n
~こ突すしてはシリコンラパーカテーテルを使用することが重要なことと考えられる.
さらに,高カロリー輸液に伴う合併症としては,
術直後より大量投与をおこなった場合,耐糖能の 低下による高血糖,尿糖の出現制,浸透圧利尿によ る脱水29),電解質の異常30)などの症状が出現する.
動物においても幼若ラットに術後
1
日百より1
日 必要カロリー量の全量を投与した場合には死亡率 が50%
以上31)にも達し,死亡例では肝,腎,尿細管 などに強度の障害がおこると報告されており,生 存例でもo v e r l o a d
の徴候を呈し,体重増加率の 減少,浮腫の発生がみられると言われている州.そ こで,著者は術後1
日目は投与量の50%
,2
日目 からは全量を投与したが,ラットにおいてはとく に異常なく実験をおこなうことができた.体重増減をみると(図
1)
,PV
群,CV
群とも 体重減少であり,PV
群の方がCV
群よりも体重 の減少が軽度で、あったが,両群聞には明らかな有 意差はみとめられなかった.また,経口摂取から 輸液投与に移行すると,腸内容物減少のため体重‑301‑
は
5%
低下する33)と言われており,手術ならびにH a r n e s s
の装着によるストレスを加味すると,北爪
22)らの報告にもみられるように,今回の投与カ ロリー量では,体重維持か,やや減少するのが妥 当と考えられる.PV
群は開復手術であり,CV
群 よりも明らかに大きな手術侵襲と思われるが,PV
群の方が体重の減少が少ないことは,門脈栄養法 の有効性を示唆する結果と言えよう.つぎに,肝重量・体重比をみると(図
2)
,PV
群とC
群がほぼ等しい債を示しており,門脈内に 高カロリー輸液をおこなっても,今回の投与量,投与カロリー量では肝に水分の畜積やそれに伴う 腫大化はないものと言えよう.
CV
群が他の2
群よりも有意に低値をとることは,投与経路に起因 するものかどうか不明で あった.
水分バランスでは(図3),
PV
群とCV
群との 間に有意の差は認められなかった.このことは,高カロリー輸液施行中,門脈内投与においても中 心静脈内投与と同様に,腎機能が正常に働いてお り,投与量に見合った尿が排世されていることを 意味している.したがって,腎機能の面からみて も,門脈内投与することが水分バランスに不利に 働くものでないことを示している.
ラットに輸液を開始した時の糞便排世量は,谷 沢叫らによると術後
1
日目より急激に糞便排世量 は減少し2
日目以降の輸液投与期間中の糞便排 世量は重量比で投与前値の2%
程度であり,輸液 投与中の糞に由来する排世窒素量は,全排世窒素 量の3.2%
にすぎず,窒素平衡を測定する際には無 視できる量であるとされている.そこで,本実験 における窒素平衡は,総投与窒素量と尿中排i
世窒 素量との差で算出した.窒素平衡は,体内のアミノ酸代謝をみるうえで重要な栄養学的指標と考え られるので,
PV
群とCV
群で比較してみた.PV
群がCV
群よりも有意の差をもって正の窒素平衡 を示している(図 4).いずれの群でも正の窒素平 衡をとることは,アミノ酸代謝が同化の傾向を とっていると考えられるが,PV
群により著明な 改善がみられる.このことは,門脈内に高カロリー 輸液をおこなうと,蛋自同化の過程が充進しはじ めた場合,PV
群ではアミノ酸利用率がすぐれている.さらに,
PV
群の場合は,アミノ酸が一旦肝 に保留され,その結果アミノ酸代識が高まるもの と推察される.門脈栄養法がアミノ酸代謝に有利 に働くことを示した結果と考えられる.血液生化学検査では,血清総蛋白,アルカリフォ スファターゼ,コリンエステラーゼ,
GOT
,GPT
, 総コレステロール,遊離脂肪酸, トランスフェリン,総鉄結合能,インスリン,血糖の11項目につ いて比較検討した(図
5
入血清総蛋白,アルカリ フォスファターゼ値では,C
群 と く ら べPV
群CV
群とも有意に低値であり,高カロリー輸液と 経口摂取との差であると考えられた.PV
群とCV
群との間には差がみられないことから,門脈内投 与および中心静脈内投与の差によるものではな かった.コロンエステラーゼ値は,PV
群のみ有意 に低下し,他の2
群よりも肝細胞障害がやや強い ものと考えられる.しかし,その他の生化学デー ターについては差がなかった.以上のことより,PV
群とCV
群との問で,明らかな生化学的差は なく,ほぽ同程度の肝機能と判断される.肝の病理組織学的な検討では,
PV
群,CV
群左 も徴細な脂肪空胞が,小葉周辺から中間帯にかけ て出現している(表2
).横山19)らも同様の実験で,肝小葉周辺部を中心に大小脂肪頼粒が多数認めら れ,著明な脂肪変性の像を示したと報告している.
さらに,
TPN
による肝脂肪変性と肝GSH‑PO
の 動きの聞に密接な関係があり,TPN
による肝傷 害の原因として脂質過酸化傷害があることを明ら かにし,脂肪乳剤を添加すると,肝GSH‑PO
に改 善がみられたとしている.青木35)らの報告でも,高 カロリー輸液を無脂肪輸液で行なうと肝に高度の 脂肪浸潤をきたすと述べている.本実験では,そ の頻度がPV
群でCV
群のおよそ2
倍であり,こ れ は 高 カ ロ リ ー 輸 液 の 門 脈 内 投 与 に よ る 肝 のo v e r l o a d i n g s y n d r o m e
によるものと判断でき,門 脈内投与における適切な投与カロリー量の検討が 必要なものと思われる.一方,C
群には明らかな脂 肪空胞の出現はほとんどみられないことから,高 カロリー輸液には糖質,アミノ酸,脂肪の適切な 割合で投与することが栄養学的に必須なことと考えられる.
以 上 よ り , 門 脈 栄 養 群
CPV
群〉と中心静脈栄養 群CCV
群 〉 に つ い て , 経 口 摂 取 の コ ン ト ロ ー ル 群C C
群 〉 を 対 照 と し て , 栄 養 学 的 な ら び に 病 理 組 織 学 的 な 面 よ り 考 察 し て き た が , 門 脈 栄 養 法 が 中 心 静 脈 栄 養 法 よ り ア ミ ノ 酸 代 謝 に 有 利 に 働 き , そ の 他 の 栄 養 学 的 指 標 に お い て は 両 栄 養 法 聞 に 差 が な く,有用な静脈栄養法の1っ と 考 え ら れ る . し か し 門 脈 栄 養 法 に は 肝 の 脂 肪 変 性 が 高 頻 度 に 出 現 す る た め , 指 肪 乳 剤 投 与 に よ る 比 較 検 討 が , 今 後 の課題と考えられる.結 量五岡 田
ラ ッ ト を 対 象 と し て , 代 謝 ゲ ー ジ を 用 い て 無 拘 束 下 の 条 件 で 管 理 す る 方 法 で 実 験 を 行 な い , 門 脈 栄 養 法 の 有 効 性 に つ い て , 中 心 静 脈 栄 養 法 と 比 較 検 討 し , 以 下 の 結 果 を 得 た .
1)門脈栄養法は,中心静脈栄養法よりも窒素平 衡 が 良 好 に 保 た れ , 肝 の ア ミ ノ 酸 代 謝 に 有 利 に 働 L 、
T
ミ2 )
体重では,門脈栄養法の方が中心静脈栄養法 よりやや良好な傾向を認めた.3)水分バランスをみると,両栄養法とも正常な 腎機能が保持された.
4)門脈栄養法では,中心静脈栄養法より肝の脂 肪 変 性 が 高 頻 度 で あ り , 肝 の overloading syndromeが出現しやすい.
5)血液生化学検査では,両栄養法の間にほとん ど差がなかった.
稿を終るにあたり,終始御指導と御高閲を頂いた東 京女子医科大学外科学教室,織畑秀夫教授に謹んで感 謝の意を表します.さらに,病理組織学については,
病理学教室の梶田昭教授の御指導に負うところが大 きく,心から御礼申し上げます.
また,終始御助言を頂いた教室の倉光秀麿助教授,
馬淵原吾講師,木村恒人講師,ならびに実験に際し御 協力下さった中谷雄三,滝口進,米山公造氏諸兄に心
より感謝いたします.
〔本論文の要旨は昭和58年4月5‑7日,第83回日 本外科学会総会において発表した.)
文 献
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