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岡 田 努 (受付:昭和30年5月8日)

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(1)

感 作 血 球 の 免 疫 学 的 意 義

第 3 報

腸 内 病 原 菌 を 以 っ て す る 研 究

第4篇腸チフス菌体加熱浸出液の血球威作原性に 関 す る 研 究 補 遺

金沢大学結核研究所細菌免疫部(主任:柿下正道教授)

(受付:昭和30年5月8日)

私')は,先に腸チフス菌体加熱浸出液を以っ て感作せる血球凝集反応に関する研究成績を報 告したが,本篇に於ては,その浸出温度に就い て検討を行い,併せて腸チフス菌ブイヨン培養

実 験 1)菌体浸出温度と感作能の関係に就いて.

腸チフス菌2mgmlの生理的食塩水浮遊液を 60。C,65。C,80。C,90。C及び100。Cにて30 分間浸出せる液を感作原として腸チフス閑免疫 家兎血清との間に夫々血球凝集反応を試みた.

その成績は第1表に示す如く,60。C及び65。C 加熱浸出液感作血球の凝集反応は総て陰性で,

80。C加熱浸出液感作血球の凝集反応は陽性を 示すも,その程度は低く且つ不安定で,90。C 及び100。C加熱浸出液感作血球は菌体を以って する凝集反応と同程度の凝集価を示し,繰返し 実験を行うも常に一定せる成績を示した.

2)腸・バラ混合ワクチン(56。C,30分間加熱 殺菌し0.5%の割に石炭酸を加えたもの)

遠心上澄液を感作原とする血球凝集反応に 就いて.

調 製 後 , 5 年 を 経 た る 陳 旧 な 市 販 ( 北 陸 血 清 製造所)の腸・バラ混合ワクチンを12,000r.p.m.

3 0 分 間 遠 心 沈 澱 し た 上 澄 液 を 感 作 原 と し て

濾液の感作能に就いても検索し,些か知見を得 たのでここに報告し御批判を仰ぐ次第である.

実験材料並びに実験方法は,先に報告(1)した 通りであるので省略する.

成 績

実験を試みた.その成績は第2表に示す如く,

腸チフス菌,パラチフスA菌,パラチフスB菌 の各免疫家兎血清に対し夫々強い血球凝集反応 を呈した.即ち,浸出温度は低温であっても菌 浮瀧液を長期間放置すれば液中に血球感作能物 質が遊離し,且それは5年の長期間を経るも尚 変質するものではない事が明となった.

3)腸チフス菌培養メヂウム(ブイヨン)中 に遊離する血球感作能物質に就いて.

腸チフス菌をブイヨン培地(50ml宛分注)10 本に同時に移植し,37。Cに保ち,18時間,24 時間,48時間,7日及び15日目に夫々2本宛取

り出し1本は56。Cに,1本は100cCに夫々30 分間加熱殺菌し,各管の半量は3,000r.p.m.30

−分間遠心沈澱し,その上澄液を,他の半量はザ イツ濾過器を以って濾過し,その濾液(以下ザ イツ濾液と称す)を夫々感作原とし,免疫血清 との間に血球凝集反応を試みた結果では第3表 に示す如く,培養48時間迄のものでは100C・加

(2)

熱遠心上澄液に弱い感作能が認められるのみで 100。C加熱ザイツ濾液及び56。C加熱遠心上澄 液或はザイツ濾液を用いての感作血球凝集反応 は総て陰性に終った.7日間培養のものでは上 記4つの方法で得られた何れの感作原を以って するも血球凝集反応は陽性であったが,ザイツ 濾液感作では極めて弱く,且不安定であった.

而して15日間培養のものでは総て強い血球凝集 反応を呈し,菌体を以ってする凝集反応と同程 度の凝集価を示した.

4)血球感作能物質のザイツ濾過器の通過性 に就いて.

先の実験に明らかな如く,菌体浸出液或は培 養液の血球感作能はザイツ濾過により著明に減 弱する事を認めた.その原因は一部の研究者に 依り指摘された如く分子の大きさに依るものか 或はアスベストの吸着に依る現象なるかを明か にせん為次の実験を行った.

(a)腸チフス菌100。C加熱浸出液(2mgml) 30ml中に,直径6cmのザイツ濾過板を細 く砕いたものを投入し,時々攪伴し乍ら37。C に2時間放置したる後,4,000r.p.m.30分間遠

心沈澱し,その上澄液を以って感作せるo型人 血球と腸チフス菌免疫家兎血清の間に行った血 球凝集反応成績は第4表に示す如くアスベスト に依り完全に吸着される事を認めた.

(b)次ぎに,腸チフス菌をブイヨン培地に1 週間培養し更に1週間氷室に放置せる後,100。C 30分間加熱殺菌し3,000r.p.m.30分間遠心沈 澱せる上澄液に就いて同様の実験を行った成績 は第5表に示す如く感作能の減弱を認めた.

(c)次で,ザイツ濾過に依る感作能の減弱度 を明かにせん為,腸チフス菌No.58株の1週間 ブイヨン培養液を100。C,30分間加熱し,その強 力遠心沈澱した上澄液とザイツ濾液とについて 血球感作能を比較した.その成績は第6及び7 表に示す如く両者の原液を以って感作せる場合 血清稀釈倍数に於て殖程度の低下を認めたが,

感作原を稀釈して比較すれば,ザイツ濾液では 3倍稀釈で既に著明な減弱を認め10稀釈で殆ど 消失する事を認めた.次に阻止試験に依る比較 に於ても第7表に示す如く著明な減弱を認め

総括並びに考案

最近,大西2)は腸チフス菌加熱浸出液感作血 球凝集反応に関する報告に於て,浸出液のザイ

ツ濾液には全く血球感作能が認められないとし これは血球感作能物質の粒子が大きいためアス ベスト板を通過し得ないからであると説明して 居る.而して私')も又先に腸チフス菌,パラチ フスB菌,赤痢菌の加熱浸出液感作血球凝集反 応に関する研究成績を報告し,その際ザイツ濾 液を感作原とする時は凝集価は試験管5本程度 低下する事を認め,これは感作能物質がアスベ ストに吸着されるためであろうと報告した.今一 回の実験によれば,ブイヨン培地に15日間培養 する時はそのザイツ濾液にも尚充分な感作能の 存する事が認められ,又当教室の松井3)は極め て高濃度の腸チフス菌の100。C,加熱浸出液(50

mgml)のザイツ濾液と遠心上澄とは同程度の 感作能を有する事を証明した.私は腸チフス菌 加熱浸出液並びに陳旧ブイヨン培養液に就いて 一部はザイツ施過に依る減弱度を,又一部はア スベストに依る吸着試験を行い,感作能の消失 或は減弱は感作能物の粒子の大きさに依りアス ベスト板を通過し得ないためではなくて,アス ベストに吸着される事に起因する事を明かにし た又,富沢4)は腸チブス菌をブイヨン培地に培 養すると培養メヂウム中にVi沈降原が遊離し 然もそれは培養16時間頃より出現し,36〜40時 間にして最高に達すると報告して居る.私の今 回の成績と比較すれば,Vi沈降原と血球感作 能物質とは異った物質である事が窺知されるが 更に両者の喫係について検討中である.

【 2 】

(3)

1)先に述べた私の方法に依り血球凝集感作 能を有する腸チフス菌浸出液を得るためには,

90。C〜100。C,30分間の加熱が必要であるが,

56。C,30分間の低温にて加熱せる腸チフス菌ワ クチンも長期間放置するとその上澄液中に血球 感作能物質が遊離し,且5年の長期間を経るも

尚変質するものではない.

2)ブイヨン培地に腸チフス菌を7日間以上 培養すれば血球感作能物質が遊離する.

3)腸チフス菌の血球感作能物質は,一部ア ス ベ ス ト に 依 り 吸 着 さ れ る が , ザ イ ツ 濾 過 器 を 通過し得る.

13(上);119;127;137,

日本伝染病学会雑誌,

28(12),685,1955.3)松井敏夫:未発表.

4)富沢万之助:日細誌,9(11),941,1954.

1)岡田努:金大結研年報,

1955. 2)大西敏夫

第 1 表 浸 出 温 度 と 凝 集 価 の 関 係 浸出温度

血 清 稀 釈 倍 数

一六︑四ロロ

ーニ︑二つロ

|一ロロ一五ロ 一︑六○ロ

八○o四○○

二つロ

五 一

600C 65。C 80oC 90oC

100oC

− − l*

T Y

■■■■■■̲−−4■■

■ ■ ■ ■ ■

1 ■ ■ ■ ■ ■

−一

■ ■ ■ ■ ■

−−q■■■■■−1■■■■■■■■■■■■■■■ー一一

一一一一士士一一十十十士十十十十十十十十十十十十十十十

十十十十

十十一十十

十十十十

十十一十十

外腸チフス菌体を以ってする凝集反応

I

第2表腸・バラ混合ワクチン遠心上澄液感作 血球凝集反応成績

希 釈 倍 鐵

六︑

一一︑

︲一︑

ロロ

五□

|一つ一つ

十 十 十 十 十 十 十 十 士 一 一

十 十 十 十 十 十 十 十 十 士 一

器腸・バラ混合ワクチン遠心上澄液感作血球.

抗血清

T Y

P A

P B

PA菌

血 球

PB菌

血 球

十 十 十 十 十 十 十 十 士 士 一

十 十 十 十 十 十 十 士 一 一 一

■ 、

十 十 十 十 十 十 十 十 士 一 一 十 十 十 十 十 十 十 十 十 士 一

(4)

第3表腸チフス菌ブイヨン培養液を感作原とする血球凝集反応成績

i

殺菌温度 分離法菌体

培養時間 血 清 稀 釈 倍 数

一三﹀二つロ

一︑一︿○︒

︿○○

四○ロ

二つつ一ロ︒

J0、、

五ロ

五 。

濾液

一156°C一一皿 上澄濾液一. Ⅱ■■■■−−−q■■■■−d■■■■ー

18h

4q

肯 十 十 十 十 十 十 士 一 一 一

56。C

ら 垂

濾液

− − ‐ − − − − − | ‐

上澄

24h

100oC

濾液一

│‐‐‐‐‑‑‐‐‐‐

上澄

' 十 十 十 十 十 十 士 一 一 一

濾液

ー−Ⅱ■■■■q■■■■一一ー1■■■■

一一一■一

│56。C

100。C

48h 濾液一 iil 一一

̲

一一

一一

一一

毒 十十十十十十十±‐ |−

− I ■ ■ ■ ■ q ■ ■ ■ ■ 』 ■ ■ ■ ■ 一 1 ■ ■ ■ ■ ー ■ ■ ■ ■ ■

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土 一 一 一 一 一 一 一

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100。CI」

│志|+ 十 十 十 十 十 十 士 一 一

蕊 千十非十千‑'一十±‐‐

CC・

6050

−1

I

15.

T Y

鵲腸チフス菌体を以ってする凝集反応

第 4 表 ア ス ベ ス ト の 血 球 感 作 能 物 質 吸 着 現 象 免 一 疫 一 血 清 稀 釈 倍 ︷︿︑四○o

数三宮

b■P一L■ⅡI

感作原 抗原 対照

一︑︷︿oo

ノtt−一一一一

一oo

−L﹃ノ ハロロ

五ロー

ニロ

一○一

十 十 十 十 十 十 十 + 士 一

未 処 浸 出

置液

ア ス ベ ス ト で 吸 着 せ る

浸 出 液 "‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑i‑

1

、 │ Z X 十 十菌体

十 十 十 . 十 十 十 士

【 4 】

(5)

第5表アスベストの血球感作能物質吸着現象

I

L│

〜 、 T Y

十 十 十 十 + 十 十 十 士 一

〜 〜

I

l q j

〜〜

第6表ザイツ濾過の血球凝集反応原の力価に及ぼす影響

対照感 作 原 免 疫 血 清 稀 釈 倍 数

I

一○︑二四○一一

五︑一二つ一

二︑茎くつ一惟

一︑一六つ一冊

茜ローH

一二一つ一川

二︿・川汀

八つ一u剛

四つ一冊

二つ一冊一つ一冊

'01

l

l3:10州

− − − − − − − − − . .

遠心上澄液 | −

+ + + 州 + + + 冊 + + + + + + + 士 一 一 一

,:,01冊州州州州州++±‐‐‐

1 : 3 0 1 冊 + + + + + + + + + + + + + 士 一 一 − −

9:,01++}++++++++++++±‐−−

3:'01冊++++++++十士一一一一

ザイシ猫液

,:101圭一一一一一一一一一一|‐

1

1 : 3 0 − − 一 一 − − − − ー ー .

第 7 表 ザ イ ツ 漉 過 が 血 球 感 作 能 に 及 ぼ す 影 響 一 阻 止 試 験 一

使用血清:感作血球凝集価,2560倍 阻止のため使用した濃度500倍 反応用血球:濃厚浸出液(松井)感作血球

C1:無処置血清と感作血球との反応 c型:生理的食塩水と感作血球の反応

C3,C4:無感作血球と無処置血清並びに生理的食塩水との反応

【 5 】 感作原 抗原

免 疫 血 清 稀 釈 倍 数

五つ

二○一つ 八つ四o二○一○

。 ・ 。 。

一︑︷︿ 一六︑四琴一︑一一 ○つつ□

つつ 対照

未 処 置 ブイヨン上澄

感作

血 球 十 十 十 十 十 十 十 十 士 一 ア ス ベ ス ト で

吸着せるブイ ヨン上澄

感作

血 球 十 十 十 十 十 十 十 士 一 一 ■ ■ ■ ■ ■

、迩辱稀釈倍数

抗 原 種 別 〜

3 0 6 0 1 2 0 2 4 0 4 8 0 9 6 0 19203,8407,68015,360C1 C C C.4

遠 心 上 澄 液 − + + + + 州 州 州 +++ 一 ■ ■ ■ ■

ザ イ ツ 濾 液 − + + + + + + + 什 + + + + 州 + + + 州 ++ ■ ■ ■ ■ ■

参照

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