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臨床的な理由がなくDRLより高い場合には 線量の低減を考慮すべきとされている 今回設定されたDRLは 関連学協会によって正式に承認された事実上の国内標準であり 強制力はないものの この取り組みが我が国の医療被ばくの実態把握と最適化に向けた第一歩になると国内外から期待されている そこで本稿では DRL

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医療被ばくのCommon Sense

Overview and Circumstances for Establishing Diagnostic Reference

Levels

Reiko Kanda, Ph.D., Yoshiharu Yonekura, M.D. Summary

In recent years, concern regarding the effects of radiation exposure in medical care has in-creased with the rapidly expanding use of medical radiation. To cope with the growing issue of medical exposure, international organisations have cooperated to achieve evidence-based protection from medical radiation. The ICRP and IAEA first introduced the concept of a “Di-agnostic Reference Level (DRL)” in 1996. DRLs have proven to be an effective tool for opti-mizing the protection of patients subjected to medical radiation exposure during diagnostic and interventional procedures.

Data for determining national DRL values are obtained from nationwide surveys. A DRL value is the selected level of a radiation dose for typical examinations for groups of standard-sized patients or a standard phantom. The 75th percentile of the distribution of values of dose-related quantities is commonly used for the DRL. DRLs are not intended to be used for individual patients. Also, DRL values are not limits.

Currently, the establishment of DRLs is an international requirement for protection from medical radiation. In Japan as well, the use of radiological examinations is rapidly increasing, and protective measures should be implemented as quickly as possible. To collect and share information on medical radiation exposure from within and outside of Japan and to establish a framework for protection from medical exposure, the Japan Network for Research and Information on Medical Exposures (J-RIME) was established in 2010 with the cooperation of related academic societies.

In 2015, J-RIME established the first DRLs in Japan, called “Japan DRLs 2015”, as a result of discussions with various experts in-cluding radiologists, radiological technologists, and medical physicists. These DRLs were established based on the results of the latest nationwide surveys conducted by liaison organisations of the J-RIME with the advice from international experts. The J-RIME and collaborating organisations are promoting a better understanding and the expanded use and deeper permeation of DRLs in medical settings.

The ICRP recommends that national DRLs should be revised at regular intervals or when substantial changes in technology, new imaging protocols, or improved image post-processing techniques become available. Until the next revision of DRL values, an efficient system to collect dosimetric data should be established in Japan.

1.診断参考レベルの概要と設定の経緯

神田 玲子,米倉 義晴

国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構

National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology NICHIDOKU-IHO Vol.61 No.1 6-12 (2016)

はじめに

医療放射線防護の基本原則は「行為の正当化」と「防護 の最適化」である。我が国の医療被ばくによる国民線量 は世界平均の6~7倍と推定されているが、医療被ばくの 実態が十分に調査・研究されているとは言い難く、医療 放射線防護に関する取り組みは大きく立ち遅れている。 2015年6月、医療放射線防護に関連する学協会が協働 して、医療被ばくの最適化のツールである診断参考レベ ル(diagnostic reference level: DRL)の設定を行った(通 称“Japan DRLs 2015”)1)DRLは、各々の放射線検査 で用いる線量の目安値であり、施設で用いている線量が、

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・レベル3:個別の患者に特定の医療行為を適用するこ との正当化 このうち、レベル1はすでに社会的に容認されている として、ほとんど議論の対象になっていない。レベル2 は「咳、呼吸困難、胸痛、発熱が見られる患者には、胸 部X撮影を行うのが適当」というような一般則を定める ことである。欧州では、こうした一般則を専門学会など が中心となってとりまとめたガイドライン(“referral guidelines”や“appropriateness criteria”と呼ばれている)

が利用されている。レベル3は患者ごとの事情を考慮し て、医師が個別に行う判断であり、患者に対しての十分 な説明と同意が必要である。 一方、医療放射線防護の最適化に当たっては、ICRP はDRLの利用を推奨しており、この考え方に従い、各 国で取り組みが行われている。

DRLの概念

診断において不要な被ばくから患者を防護する目安と して、1996年にはICRPからDRL4)が、IAEAInternational

Atomic Energy Agency)からは“ガイダンスレベル”が 提唱された5)IAEAは、ガイダンスレベルとして具体 的な数値を提示したが、ICRPは、DRLは国または地域 ごとに設定されるべきとして、具体的な数値は提示しな かった。これは国や地域の施設によって機器や処置のプ ロトコールが異なる可能性があるためである。十数年の 間、ほぼ同様の概念にこの2つの用語が用いられていた が、2014年に改訂されたIAEA国際基本安全基準(Basic Safety Standards: BSS)では“DRL”が用いられており6) ここに来てようやく用語としても“DRL”が定着した感が ある。 前述のとおり、DRLは国または地域ごとに設定される が、その設定に当たっては、まず検査種別に、あらかじ め標準化された方法により線量測定が実施される。そし て患者やファントム測定による典型的な線量の分布の75 パーセンタイルの値(低い方から4分の3に位置する値)と して設定することが多い(図1)。医療現場では、施設の 標準的検査の線量とDRLとを比較し、施設の値がDRL を超えていた場合、必要な画質や診断能を損ねずに線量 を減らす方策を取る必要がある。一般的には、使用して いる機器の性能やプロトコールなどを調査し、高い線量 となっている原因を突き止め、より適正な線量の使用に 臨床的な理由がなくDRLより高い場合には、線量の低 減を考慮すべきとされている。 今回設定されたDRLは、関連学協会によって正式に 承認された事実上の国内標準であり、強制力はないもの の、この取り組みが我が国の医療被ばくの実態把握と最 適化に向けた第一歩になると国内外から期待されてい る。そこで本稿では、DRLの海外での状況や“Japan DRLs 2015”設定の背景や経緯、今後の運用などについ てまとめる。

放射線防護の歴史とDRLの意義

物理学の教授であったレントゲンが、陰極線の性質を 調べようとしてX線を発見したのは1895年末のことであ る。翌年にこの研究成果が発表されるや否や、骨折や体 内異物(弾丸など)の診断への利用が直ちに始まり、我が 国でも1898年には東京帝国大学医科大学と陸軍軍医学 校に医療用X線装置が設置されている。こうした放射線 科学の黎明期に、研究者、技術者、医療人、患者に放射 線障害が発生し、1928年に国際放射線医学会議( Interna-tional Congress of Radiology: ICR)において、国際X

線およびラジウム防護委員会〔国際放射線防護委員会(

In-ternational Commission on Radiological Protection:

ICRP)の前身〕が組織された。このことからもわかるよ うに、放射線防護のための技術と制度は、当初医療にお いて適切に放射線を利用するために整備されたのであ る。 現在のICRPでは、第3専門委員会において、医療分野 におけるさまざまな放射線利用の際に必要となる防護に ついての勧告を行っている。その中で、放射線医療の患 者の防護に関してはその正当化と最適化が重要であると いう基本的な考え方を提示している。放射線作業者の被 ばくと異なり、患者の被ばくには線量限度が設けられて いない。これは、被ばくする患者にとって便益が明確で あり、一律に線量を制限すると診断や治療の効果を減少 させ、患者の便益を損なう可能性があるためである。 ICRPでは、医師の判断を尊重しつつ、できるだけ客 観的かつ透明な意思決定プロセスにするために、被ばく を伴う医療行為の正当化を次の3つに階層化している2、3) ・レベル1:医療に放射線を利用すること自体の正当化 ・レベル2:ある臨床症状を示す患者に一定の医療行為 を適用することの正当化

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図1 線量調査に基づくDRLの設定 (模式図,75パーセンタイルを目安とした場合) 向けた対策を講じる。こうしたプロセスを進めることで、 最適化が徹底化されると期待されている。 DRLは著しく高い線量を用いている施設を特定するた めのツールなので、標準的な体格の患者や標準ファント ムについて容易に測定され再現性の高い線量尺度を用い て設定される。しかし患者が受ける線量そのものではな いし、患者個人に適用するものでもない。またDRLの 値は、最適化の進展およびハードウェアやソフトウェア の進歩につれて更新されるべきものである。

海外でのDRLの設定状況

DRLの設定に当たっては、まず線量に関する実態調査 が行われる必要がある。英国と米国では、1950年代か らX線診断の全国調査が行われ、1970年代になると米国 ではNEXT調査(Nationwide Evaluation of X-Ray Trends)と呼ばれる全国調査が実施され、1980年代には 英国でNRPB(National Radiation Protection Board,

現在のPublic Health England)が患者の入射表面線量に 関する調査を行うようになった。こうした調査は欧州に 広がり、被ばく線量に関する勧告が示される基盤となっ た。 前述の通り、1996年にICRPはDRLを、IAEAはガイ ダンスレベルの活用を勧告する報告書を発表してい る4、5)。その翌年、欧州委員会が示した欧州指令(Council Directive 97/43/EURATOM)は、欧州におけるDRLの 普及に大きな役割を果たした7)。欧州委員会は加盟国に 対しDRLの確立を求めるとともに、その後もフォロー アップ調査を行っている。2014年に発表された調査結 果によると、成人のX線検査に関するDRLを設けている 国は欧州諸国の76%だが、小児のX線検査のDRLに関 しては45%にとどまっている。またDRLを設定してい る全ての国で、自国の線量調査の結果に基づいてDRL の値を定めているわけではない8)

一方、米国ではACR(American College of Radiolo-gy)、AAPM(American Association of Physicists in Medicine)、NCRP(National Council on Radiation Protection and Measurements)などによって示された

DRLが事実上の標準となっている。特記すべきは、CT

の誤操作による過剰被ばく問題がきっかけとなって、既 に複数の州においては線量データの記録および管理が法

的規制の対象とされている点である。ACRでは個人の受

ける被ばく線量を登録する仕組み(dose index registry)

を推進している9)が、学会が中心となって実施している

医療における被ばく線量の低減をめざすキャンペーン (Image Gently, Image Wisely)ともリンクしている。

我が国におけるDRLが作成されるまでの経緯

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ミュニティもDRL設定に向けて機運が高まったが、行 政が直接的に関与することはほとんどなかった。2011 年1月、放射線審議会基本部会は、ICRP2007年勧告の 国内制度などへの取入れに係る審議の第二次中間報告を 発表した。その中で、医療被ばくに係る放射線防護で検 討すべき事項について以下のように整理をしている10) ──医学的手法の正当化、診断参考レベル、線量拘束 値、品質保証、放射線治療における事故防止などの主要 な項目については、医療被ばくの対象者に対する防護の 基本的事項として、必要に応じて、国内法令に取り入れ ていくべきである。また、診断参考レベル等の具体的な 数値規準は、医療及び放射線防護に精通する関係省庁と 関連学会等の関係機関により共同で設定されることが適 切である。 放射線審議会がこの報告書を発表した直後に東京電力 福島第一原発事故が起こり、ICRP2007年勧告の国内制 度などへの取入れに関する審議は中断したままである が、関連学協会を中心としたDRLの設定に向けた活動は 加速度的に進んだ。これは放射線検査の線量に関する定 期的調査やモデル地区によるフィージビリティスタディ など、医療従事者による地道な取り組みがあったからで あることは言うまでもない。 放射線検査の全国調査は多くの研究者が実施している が、一例をあげると、鈴木昇一氏らは、1974年から 2014年までに一般撮影における患者の受ける線量の全 国調査を10回行っている11)。また群馬県内では、毎年、 患者性別・年齢、撮影部位・範囲・条件、使用装置などに ついての調査を行っている。調査結果から放射線被ばく 線量を推算して、医療機関へデータを返送したり、研究 会で報告するなどの形で医療現場へのフィードバックを 行ったことで、極端な過剰線量あるいは過少線量を利用 する施設はほぼなくなったという12)。さらに我が国にお ける医療被ばくの量的基準の先駆けとしては、日本診療 放射線技師会が2000年および2006年に定めた「医療被ば くガイドライン」がある13、14)。これは線量調査の平均値 を参考に低減目標値を示すものであった。

J-RIMEを中心としたDRL設定の取り組み

線量管理は正当化および最適化のために不可欠である が、管理のための費用や労力は概して少なくない。よっ て、安全上の観点から義務づける法制化や利益の観点か らその対価として支払う診療報酬といった動機づけを必 要とするが、今のところ我が国ではこうした最適化にイ ンセンティブを与える仕組みはできていない。結果的に、 いまだ医療被ばくの実態を把握するシステムが確立せず、

UNSCEAR(United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation)へのナショナルデータ

の提供や国のDRLの設定などにおいて障害となってい

る。こうした問題の解決を念頭に、2010年に医療被ば

く研究情報の集約を目的としたオールジャパン体制のハ ブ組織として「医療被ばく研究情報ネットワーク(Japan Network for Research and Information on Medical Exposure: J-RIME)」が発足した。組織の設立に賛同し た放射線医療関係の学協会や国際機関と日本の橋渡しを している研究者らがJ-RIMEの中核メンバーである。 J-RIMEは第6回総会(2014年4月)において、J-RIME の団体会員である学協会と協力して日本の診断参考レベ ルを設定することを決議した。IAEAの最新のBSS6) は「政府はDRLを設定することを保証すべき」と書かれ ているが、日本においては先般の原発事故の影響から、 政府抜きで「日本の」DRLを設定することを余儀なくさ れた。その分、検討の透明性や客観性の担保に配慮し、 医療放射線防護の主だった学協会が参加して「日本の」 DRLと呼べる数値の設定が心がけられた。まず学協会か ら推薦された医師、診療放射線技師、医学物理士などが 協力して、全国規模での実態調査や調査手法・結果の詳 細検討などを行った。また海外専門家の助言を得て、国 際水準を満たす検討プロセスが採用された。こうして設 定された数値は、今後改正されることを想定して、「Japan DRLs 2015」と名付けられた。なおモダリティごとの設 定方法の詳細に関しては報告書1)をご覧いただきたい。

DRL活用のための推進方策

Japan DRLs 2015は関連学協会によって正式に承認さ れた事実上の国内標準であるとはいえ、強制力はなく、 DRLを利用するかどうかは、施設や医療従事者の放射線 防護に対する意識による。そのため、現在は普及啓発活 動や運用に向けたマニュアル作成が積極的に進められて いる。 普及啓発活動に当たっては、J-RIMEはDRLを説明す るための標準的な資料を作成し、ホームページ上で公表 している15)。またJ-RIMEの参画学協会は会員のニーズ

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に応じた講習会やセミナーを開催している。こうした普 及活動においては、施設でDRLを運用した際に発生し た疑問点が多く寄せられるようになり、医療現場に近い 学会が中心となって、DRL運用に向けたマニュアル作成 が進められている。比較的よく聞かれる質問は、自施設 の代表値の出し方や測定方法についてである。CTの場 合は、コンソールに表示される線量の指標を用いるが、 標準化された線量測定において標準ファントムや線量計 を用いている医用画像機器の場合、これらを有しない施 設では同様の線量測定を行うことはできない。学協会で は、既存のソフトウェアやガラス線量計などの利用、装 置の表示値を代用するなどの工夫に関して情報を提供す るとともに、線量計の貸し出し事業などにも着手してい る。 なおDRL活用に歴史の長い海外においてもまだDRL への誤解があるようだ16)。表1DRLを理解するヒント を列記したが、DRLの意義として最も強調すべき点は、 線量限度ではないということ、そして優れた診療と劣っ た診療の境界ではないという点である。患者の体重や体 格により、標準的患者よりも高い線量が必要とされる場 合があるので、患者に適用して個々の患者の被ばくを制 限することのないように、DRLの正しい理解が求められ る。また施設の値がDRLを超えていた場合、線量を減 らす方法を探す必要があるが、その際、最高の画質を求 めるのではなく、各々の診断に必要十分な画質を求める べきであるという点に留意すべきである。 現在ICRPでは、DRLによる最適化のさらなる推進に 向けて、概念の整理や、各モダリティのDRLに用いら れる単位や線量自動収集に関する情報、さらには研修プ ログラムや小児の重要性などについて最新のガイダンス をとりまとめ、近々公開する予定としている。

DRLの改正に向けて

医療放射線防護分野の世界的権威であるDr. Madan Rehaniによると、日本の医療放射線防護が国際標準レ ベルであるとみなされるためには、①日本のDRLが他 国の値と比べて高くないこと、②日本のほとんどの施設 において、典型的に用いている線量がDRLを下回って いること、といった条件を満たす必要がある。Japan DRLs 2015を検査種別に海外のDRLと比較すると、い くつかの検査ではJapan DRLs 2015の方が高めであった。 例えば成人の頭部単純ルーチンCTのDRLは欧米より高 い。この理由として、急性期脳梗塞に対する血栓溶解療 法適応決定のCTにきわめて高い画質が要求された結果、 それに引きずられてほかの患者の線量が過剰になってい る可能性が指摘されている17)。また小児でも頭部CT 線量が高めだが、その理由は不明である。今後DRLの 運用により諸外国並みに低減することが期待できる。 またJapan DRLs 2015では、IVR(interventional radiology)のDRLとして入射面線量率のみが記載され ているが、これを補完するため、学会を実施主体とした 全国調査も計画されている。項目としては、装置表示空 気カーマ(Gy)、総面積線量(Gy・cm2)、透視時間(min)、 主に使用した秒間パルス数、撮影回数、総フレーム数な どが検討されている。さらに最適化のツールとしては、 “達成可能線量(achievable dose: AD)”や“診断参考レン

ジ(diagnostic reference range: DRR)”と言った概念も

表1 DRLの利用を助けるヒント16) ・ DRLは線量限度ではない.最適化されているかどうかを調査するツールと考えるべき. ・ DRLは患者個人には適用しない. ・ 患者線量のデータの平均値もしくは中央値を使って,DRLとの比較を行う. ・ DRLに用いる線量指標は簡単に測れるものにする. ・ DRLを活用する際には,診断情報や画質の評価も組み合わせる. ・ DRLの適用にはある程度の柔軟性を持たせる.例えば患者の体格や条件の公差など. ・ DRLは良い診療と悪い診療を区別するものではない. ・ DRLより線量が低いからといって,必ずしも最適化されている値ではない. ・ DRLを超えている場合,X線撮影系やプロトコールを調査し,最適化を図るべきである. ・ DRLは動的かつ継続的な最適化のプロセスとして利用されるべきである. ・ DRL活用の目標は,画質や診断情報に関して妥協してまで線量を低減することではない.

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広まりつつある(図2)。

このような理由から、数年後には、日本においても再

度全国実態調査を行い、DRLの見直しを行う必要がある。

英国では全国の病院に勤務する医学物理士により集めら れた線量データをPHE(Public Health England)に提出 する仕組みができている18)。またACRでは、CT検査の 被ばく線量を自動的に収集し、報告する仕組みが導入さ れている19、20)。そこで我が国でも、次回以降のDRL 正時には、統一されたフォーマットで良質な調査結果を 効率良く得られるよう、現時点からdose index registry

の整備や線量情報収集ツールの作成を進めている21)。今 後、こうした仕組みを早急に導入するためには、医療機 器の開発に当たる産業界や実際の診療に従事する医療現 場、専門学会などの協力が必要であることは言うまでも ない。そして医療被ばくの最適化が医療従事者のモラル に頼っているという我が国の現状を打破するためには、 行政の力が必要であると考える。 【参考文献】 1) 医療放射線防護連絡協議会,日本小児放射線学会,日本医 学物理学会,他:最新の国内実態調査結果に基づく診断参 考レベルの設定.2015 2) ICRP: Justification of a radiological practice in medi-cine. ICRP Publication 105: Radiological protection in medicine. Ann ICRP 37: 31-32, 2007 3) ICRP: The 2007 Recommendations of the Internation- al Commission on Radiological Protection. ICRP Publi-cation 103. Ann ICRP 37: 2-4, 2007 4) ICRP: Radiological Protection and Safety in Medicine. ICRP Publication 73. Ann ICRP 26: 2, 1996 5) IAEA: International Basic Safety Standards for Pro-tection against Ionizing Radiation and for the Safety of Radiation Sources, Safety Series No. 115. 1996 6) IAEA: Radiation Protection and Safety of Radiation Sources: International Basic Safety Standards, IAEA Safety Standards Series No. GSR Part3. 2014 7) European Commission: Council Directive 97/43/EUR- ATOM of 30 June 1997 on health protection of individ- uals against the dangers of ionizing radiation in rela-tion to medical exposure, and repealing Directive 84/466/Euratom. Official Journal L-180, 1997 8) European Commission: Radiation Protection No 180, Diagnostic Reference Levels in Thirty-six European Countries, Part 2/2. 2014 9) American College of Radiology: Dose Index Registry. Available from: http://www.acr.org/Quality-Safety/ National-Radiology-Data-Registry/Dose-Index-Regis try 10) 放射線審議会基本部会:国際放射線防護委員会(ICRP) 2007年勧告(Pub.103)の国内制度等への取入れについて ―第二次中間報告―(平成23年1月). 図2 DRLとその他の概念との比較

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11) 鈴木昇一:医療放射線の線量評価と測定法.INNERVI-SION 30: 10-12, 2015 12) 遠藤啓吾:がん放射線診断における患者被ばくの実態調査と 放射線誘発がんのリスク推定に関する研究.がん研究開発 費(21分指-05-04)最終報告書,2012 13) 日本診療放射線技師会:医療被ばくガイドライン ―患者さ んのための低減目標値―.2000 14) 日本診療放射線技師会:放射線診療における線量低減目標 値 ―医療被曝ガイドライン2006―.2006 15) J-RIME診断参考レベルワーキンググループ:最新の国内実 態調査結果に基づく診断参考レベルの設定(その2),2015. Available from: http://www.radher.jp/J-RIME/report/ DRLkyotusiryou-2.pdf 16) International Commission on Radiological Quality and Safety (ICRQS): Quality News. July 2015 17) 赤羽正章:J-RIMEにおけるDRLへの取り組み.INNERVI-SION 30: 28-30, 2015 18) Hart D, Hillier MC, Shrimpton PC: Doses to Patients from Radiographic and Fluoroscopic X-ray Imaging Procedures in the UK – 2010 Review, HPA-CRCE-034. 2012 19) Bhargavan-Chatfield M, Morin RL: The ACR Comput- ed Tomography Dose Index Registry: the 5 million ex-amination update. J Am Coll Radiol 10: 980-983, 2013 20) Spelic DC, Food and Drug Administration (FDA), Cen-ter for Devices and Radiological Health (CDRH), et al: Nationwide Evaluation of X-ray Trends (NEXT) proto-col for 2008-2009 survey of cardiac catheterization. CRCPD Publication #E-09-2. USA: Conference of Ra-diation Control Program Directors, Inc., p. 53, 2009 21) 奥田保男:日本版DIR構築への取り組み.INNERVISION 30: 31-32, 2015

参照

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