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新規抗緑膿菌薬の創製を指向したパシダマイシン類の合成と

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Academic year: 2021

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博 士 ( 生 命科 学 )    岡 本和 也

学 位 論 文 題 名

新規抗緑膿菌薬の創製を指向したパシダマイシン類の合成と      構造活性相関に関する研究

学位論文内容の要旨

  緑膿 菌の 毒カは 弱く、 健常者にはほとんど感染しないが、新生児や、免疫カの低下した患者が易感染 宿主 となり 、重 篤な症 状を呈する場合がある。薬剤耐性も深刻な問題であり、緑膿菌感染症の治療に有 効な3系 統の薬 剤、す なわち、広域B‐ラクタム系、アミノ配糖体系、二ユーキノ口ン系に対して、同時 に耐性を示す多剤耐性緑膿菌(multi‑drug resistant Pseudomonas aeruginosa: MDRP)は、最も問題とされ てい る病原 菌の ーつで ある。MDRP感染 発症時 の致死 率は 約40%に 上ると言われているものの、効果的 な治療薬が無いため、MDRPに有効な治療薬の創製が望まれている。

  ウリジルペプチド系抗生物質(uridyl peptide antibiotics UPAs)は、緑膿菌に対して選択的に抗菌作用 を示 すこと が知 られて いるヌクレオシド系天然物であり、ムレイドマイシン類、ナプサマイシン類、バ シダ マイシ ン類 と、最 近発見されたサンサンマイシン類が知られている。抗菌活性発現機構は細菌の細 胞壁 であるべプチドグリカンの合成を阻害することによるが、その作用機序はB‐ラクタム系抗生物質や バン コマイ シン とは異 なる。ベプチドグリカンは、脂質糖ベプチドであるりピドIIの重合により形成さ れ る 。UPAsは りピ ドuの 合 成を 担 う転 移酵 素MraYを強 カに 阻害す る。MraYは、多 くの細 菌間で 高度 に保 存され てお り、そ の欠損 は細菌 の生存 に致 死的で あるこ とから 、MraY阻害剤の開発は薬剤耐性菌 に 有 効 な抗 菌剤 の開発 にっな がる と考え られる 。この よう に既存 の抗菌 薬とは 作用機 序を 異にす る UPAsは 、緑膿 菌に対 する新 たな 抗菌薬 の有望 な候補 化合 物と考 えられる。故に、これまでいくっかの グル ープに よりUPAsの合成 研究 が行わ れてき たが、 その 全合成 は未だ達成されておらず、系統的な構 造活 性相関 研究 に至っ ていな い。そ こで著 者は 、UPAsの 初期の 構造活性相関研究に有用な合成ルート の確立を本研究目的とした。

  UPAsは、4.。5.位にz|オキシアシルェナミド構造を有する3|−デオキシウリジンとテトラペプチドから 構成 される 。UPAsに 見られるZ‐オキシアシルエナミド構造は、そのD位に酸素原子を有することが特徴 で、 本構造 を有 する化 合物はUPAs以外 に無い 。また 、そ の活性 発現への寄与も示唆されており、Bugg らは 、本構 造がMraYと共有 結合 し、安 定な複 合体を 形成 するこ とで活性を発現すると考察している。

  一方 で、 一般的 なェナ ミド構造の構築は精力的に研究されており、有用な方法が見出されている。中 でも ハ口ゲ ン化 ピニル とカルポキサミドのク口スカップリングは、一般的に温和な反応条件下で立体特 異的 に進行 する ため、 種々のポリケチド型天然物の全合成に利用されている。そこで著者は、ク口スカ ップ リング に着 目し、 まずバ シダマ イシンDの 全合成を目指すこととした。本全合成では、ウリジン部 Z−オキ シハ口 ゲン化 ピニルとテトラベプチドカルボキサミドのク口スカップリングが必要となるが、d 位の 異性化 、複 数のへ テ口原 子存在 下での 触媒 の失活 、官能 基選択 性を克服することが課題となる。

  基質 とな るウリ ジン部Z‐ オキシ ハロゲ ン化 ピニルの合成については、まずTanakaらの方法を参考に した。すなわちウリジン部4.。5|位のエキソオレフアン体を原料とし、5.位のフェニルチオ化、スズヘの 変換 、ヨウ 素化 を経てz| オキシ ヨウ化 ピニル の合成を検討した。その結果、リポ体については所望の Z―オキシヨウ化ピニルを得ることができたが、天然型である3|‐デオキシ体についてはフェニルチオ化と 続くのスズへの変換が低収率(2工程3%)であり、本方法による合成は困難であると判断した。そこで、

その代替法として、エキソオレフイン体5.位の直接的ヨウ素化を検討したところ、iodoDjumdjcollidjmum

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(2)

triflate (IDCT)が有効であることを見出し、3|―デオキシ‑z‑オキシヨウ化ピニルを得ることができた。さ らに、 本試薬はりボ体にも適用可能であり、エキソオレフィン体から直接z‐オキシヨウ化ビニルを立体 選択的に得ることが出来た。

  次いで 、z‐オキシヨウ化ピニルとテトラペプチドカルボキサミドとのCu(D触媒を用いたクロスカップ ルングを検討した。まず、Buchwaldらが報告している〃,N′.ジメチルエチレンジアミンを配位子として 用いる 条件下 で反応 を行 ったと ころ、テトラベプチドカルポキサミドが、カルポキサミドの窒素原子と C末 端のt‑Buエ ステ ルで反 応し自 己環化 した 環状イ ミドが副生し、目的のカップリング体を得ることは 出来な かった 。この 原因 は、テ トラペ プチド カル ポキサ ミドとCu(D触媒 により生じたアミダート中間 体にお いて、Cu(Dによ り活性 化さ れたカ ルボキ サミド の窒素原子が、分子内の求電子部位であるC末端 のt‑Buエ ステル カルポ ニル炭 素原子を攻撃したことによると考察した。そこで、これを抑制すべくt‑Bu エステルとの立体反発の増大を狙い嵩高い配位子として1。2‐ジフェニル‑MN′.ジメチルエチレンジアミ ンを用 いたと ころ、 所望 のカッ プリング体を得ることが出来た。本反応は高い官能基選択性を示し、ウ レア 、 カ ル バ メー 卜、 第2級アミ ド、 インド ールNHな ど多 くの反 応性官 能基の 存在下 で、 第1級 カル ボキサ ミドが 選択的 に反 応する 結果となった。最後に脱保護を行い、バシダマイシンD及びその3 .ヒ ド口キシ体の初の全合成を達成した。

  次に、 これ らの生 物活性 を測定 した結 果、MraY阻害 活性、 抗菌活 性とも にほぼ同等の値を示した。

このことから、ウリジン3|位への水酸基の導入は、生物活性に対して許容されることが明らかとなった。

  そこで 著者 は、天 然物で あるパシダマイシンDと同等の活性を有し、且つ合成が比較的簡便な3.‐ヒ ド 口 キ シ バ シ ダ マ イ シ ンDを り ー ド と し て 構 造 活 性 相 関 研 究 を 進 め る こ と と し た 。   初期の 構造 活性相 関研究 においては、幅広い構造変換を迅速に展開すべく、多検体合成にも適応可能 な収束 的合成 法が望 まれ る。そ こで著 者は、U酉4成 分反応 (U14CR)を 鍵とする第2世代合成法の検討 を行った。その鍵中間体であるウリジン部のd,D‐不飽和イソ二卜リルは、Z.オキシヨウ化ピニルに対し、

これま で見出 してい るク 口スカ ップリング条件下でホルムアミドを導入した後、これを脱水することで 収率良 く調製 レた。 続く 各バー トとのU14CRも円滑 に進行し、初期の構造活性相関研究に極めて有用な 第2世代合成法の確立に成功した。

  最後に 、本 ルート を適用 し、3 ‐ ヒドロ キシバ シダマイシンDの初期SARを行った。その結果、UPAs に特 徴 的 な テ トラ ベプ チド 部のア ミノ酸 残基で あるDABA部分の 立体 配置がMraY阻害 活性、 抗菌活 性 に重要 である ことを 明ら かにし た。ま た、UPAsの中で も最も 活性 の高い ムレイ ドマイ シンCの側 鎖で あるGlリLI所―1りをN末端に導入した誘導体を合成し、そのL囎_1pをL ̄1りに置換すると活性が大幅に 低下 す る こ と から 、L―m‐1沁 残 基 の 水酸 基の 位置が 活性発 現に重 要であ るこ とを明 らかと した。

  以上著 者は 、UW峪の 構造活 性相 関研究 を視野 に入れ 、その特徴的構造であるz‐オキシアシルエナミ ドを、Cu(I)触媒を用いるク口スカップリングにより、緩和な条件下、効率的に構築できる方法を見出し、

これを 鍵とし て、バ シダ マイシ ンDおよび3. ‐ヒド 口キシバシダマイシンDの初の全合成を達成した。

さら に 、 そ のMraY阻害活 性と抗 菌活性 の比 較を行 い、バ シダマ イシ ンDの3. 位への 水酸 基の導 入が MraY阻害 活性および抗菌活性に対して許容されることを明らかとレた。次いで、3|―ヒド口キシバシダ マイシ ンDをりー ドとし て効率 的な 初期評 価を行 うべく 、U一4CRを鍵と し、より収束的な第2世代合成 法を構 築した 。これ によ り、初 期構造活性相関研究の迅速な実施が可能となった。今後、これらの知見 を基に、更なる構造活性相関研究の進展が期待できる。

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学位 論文審査の要旨 主 査   准 教 授    市 川    聡 副 査    教 授    松 田    彰 副 査    教 授    佐 藤 美 洋 副 査   准 教 授    齋 藤    望

学 位 論 文 題 名

新規抗緑膿菌薬の創製を指向したパシダマイシン類の合成と      構造活性相関に関する研究

博士学位論文審査等の結果について(報告)

   新生児や免疫カの低下した患者を易感染宿主とする緑膿菌は、時に重篤な症状を呈する 場合がある。薬剤耐性も深刻な問題であり、緑膿菌感染症の治療に有効な 3 系統の薬剤に 対し て、同時 に耐性 を示す多 剤耐性緑 膿菌 (MDRP) は 、最も 問題とさ れてい る病原菌の ーつ である。 MDRP 感染発 症時の致死率は約 40 %に上ると言われているものの、効果的な 治 療 薬 が 無 い 。 MDRP を 含 む 緑 膿 菌 に 広 く 有 効 な 治 療 薬 の 創 製 が 望 ま れ て い る 。    本論文は,このような現況にある抗緑膿菌薬開発を踏まえ,抗菌抗生物質パシダマイシ ン類に着目した天然物合成とその構造活性相関研究について述べたものである。既存の抗 菌薬とは作用機序を異にするバシダマイシン類は、緑膿菌に対する新たな抗菌薬として有 望な候補化合物であり、これまでいくつかのグループにより合成研究が行われてきた。し かしその全合成は未だ達成されておらず、系統的な構造活性相関研究に至っていない。そ こで著者は、まずパシダマイシン類の構造活性相関研究に有用な全合成経路を確立するこ ととした。

   バシ ダマイシ ンD の全合成の鍵となる Z オキシアシルェナミド構造の構築は、ハ口ゲン 化ピニルとカルポキサミドのクロスカップリングを適用することとした。基質となるウリ ジン部Z オキシハ口ゲン化ビニルの合成は、ウリジン部 4 |,5 |位のェキソオレフィン体を原 料として、 5 |位のフェニルチオ化、スズヘの変換、ヨウ素化を経てZ オキシヨウ化ビニル の合成を検討した。その結果、リポ体については所望の Z オキシヨウ化ピニルを得ること ができたが、天然型である 3'‑ デオキシ体についてはフェニルチオ化と続くのスズへの変換 が低収率であった。そこで、エキソオレフィン体5 |位の直接的ヨウ素化を検討したところ、

iodonium dicollidinium triflate (IDCT) が有効であることを見出し、 3 |,デオキシ‑Z オキシ ヨウ化ビニルを得ることができた。さらに、本試薬はりボ体にも適用可能であり、エキソ オ レ フ ィ ン 体 か ら 直 接 Z オ キ シ ヨ ウ 化 ピ ニ ル を 立 体選 択 的 に得 る こ とが 出 来 た。

   次いで、Z オキシヨウ化ビニルとテトラベプチドカルボキサミドとのCu(D 触媒を用いた ク口スカップリングを検討した。まず、 Buchwald らが報告しているべN .′.ジメチルエチレ ンジアミンを配位子として用いる条件下で反応を行ったところ、テトラベプチドカルボキ サミ ドが、カ ルボキ サミドの窒素原子とビ末端の t Bu エステルで反応して自己環化した

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環 状 イ ミ ド が 副 生 し 、 目 的 の カ ッ プ リ ン グ 体 を 得 る こ と は 出 来 な か っ た 。 こ の 原 因 は 、 テ ト ラ ペ プ チ ド カ ル ポ キ サ ミ ド とCu(D触 媒 に よ り 生 じ た ア ミ ダ ー ト 中 間 体 に お い て 、Cu(D に よ り 活 性 化 さ れ た カ ル ボ キ サ ミ ド の 窒 素 原 子 が 、 分 子 内 の 求 電 子 部 位 で あ る ビ 末 端 の t‑Buエ ス テ ル カ ル ボ ニ ル 炭 素 原 子 を 攻 撃 し た こ と に よ る と 考 察 し た 。 そ こ で 、 こ れ を 抑 制 す べ く 寿Buエ ス テ ル と の 立 体 反 発 の 増 大 を 狙 い 、 嵩 高 い 配 位 子 と し て1.2. ジ フ ェ ニ ル

‑A:N:ジ メ チ ル エ チ レ ン ジ ア ミ ン を 用 い た と こ ろ 、 所 望 の カ ッ プ リ ン グ 体 を 得 る こ と が 出 来 た 。 本 反 応 は 高 い 官 能 基 選 択 性 を 示 し 、 ウ レ ア 、 カ ル バ メ ー ト 、 第2級 ア ミ ド 、 イ ン ド ー ルNHな ど 多 く の 反 応 性 官 能 基 の 存 在 下 で 、 第1級 カ ル ポ キ サ ミ ド が 選 択 的 に 反 応 す る 結 果 と な っ た 。 最 後 に 脱 保 護 を 行 い 、 パ シ ダ マ イ シ ンD及 び そ の3. ‐ ヒ ド ロ キ シ 体 の 初 の 全 合 成 を 達 成 し た 。 合 成 し た 化 合 物 の 生 物 活 性 を 測 定 し た 結 果 、MraY阻 害 活 性 、 抗 菌 活 性 と も に ほ ぼ 同 等 の 値 を 示 し た 。 こ の こ と か ら 、 ウ リ ジ ン3. 位 へ の 水 酸 基 の 導 入 は 、 生 物 活 性 に 対 し て 許 容 さ れ る こ と が 明 ら か と な っ た 。

  幅 広 い 構 造 変 換 を 迅 速 に 展 開 す べ く 、 多 検 体 合 成 に も 適 応 可 能 な 収 束 的 合 成 法 と し て 、 Ugi4成 分 反 応(U‑4CR)を 鍵 と す る 第2世 代 合 成 法 の 確 立 も 行 っ た 。 本 合 成 法 を 用 い て 、 3| ‐ ヒ ド 口 キ シ パ シ ダ マ イ シ ンDの 初 期SARを 行 っ た 。 そ の 結 果 、UPAsに 特 徴 的 な テ ト ラ ペ プ チ ド 部 の ア ミ ノ 酸 残 基 で あ るDABA部 分 の 立 体 配 置 やL.m‑′11如 残 基 の 水 酸 基 の 位 置 がMraY阻 害 活 性 、 抗 菌 活 性 に 重 要 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。

  論 文 発 表 に 続 い て 発 表 内 容 と そ の 関 連 の 専 門 分 野 を 含 め た 口 頭 試 問 を 実 施 し た 。 そ の 内 容 は 、 本 研 究 の 背 景 、 目 的 お よ び 関 連 分 野 等 に お け る 知 識 な ど 多 岐 に 亘 っ た 。 こ れ ら に 対 す る 回 答 は 、 適 切 か つ 高 度 な も の で あ り 、 博 士 の 学 位 を 与 え る に 相 応 し い と 判 断 し た 。 提 出 さ れ た 学 位 論 文 は 独 創 的 か つ 有 用 性 に 富 み 、 本 専 門 研 究 分 野 の 中 で 高 く 評 価 さ れ る に 値 す る 内 容 で あ る と 判 断 し た 。

    以 上 の 結 果 、 本 論 文 審 査 委 員 会 は 、 岡 本 和 也 氏 を 北 海 道 大 学 博 士 ( 生 命 科 学 ) の 学 位 を 授 与 す る に 相 応 し い 十 分 な 学 カ と 研 究 能 カ を 有 す る も の と 認 め る 。

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参照

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