抗菌薬の投与方法
公益財団法人 北野生涯教育振興会の助成金(2015年) によって、本資料は作成されました。この場を借りて感謝い たします。新潟県立看護大学 野村憲一
このことをわかるには、
母集団薬物動態解
析
を理解しておかなくてはなりません。
最近の抗菌薬の投与方法はここが変わった!
抗菌薬の薬物動態学・力学( PK-PD )
PK ( 標的部位で の抗菌薬の濃 度 ) PD ( 最小発育阻止 濃度 :MIC)有効な
投与法の
探索
薬物の用法・用量の根拠となる臨床薬理学的理論
が構築されつつある.
臨床的有効性と PK-PD パラメーター
① Cmax/MIC 比 ② T>MIC (%) ③ AUC24/MIC 濃度依存的に抗菌作用を示 す . キャンディン系 ポリエン系 時間依存的に抗菌作用を示す . 中間的な性質を示す. アゾール系 MIC Cmax MIC MIC AUCベーターラクタム系 ペニシリン系 セファロスポリン系 マクロライド系 エリスロマイシン クラリスロマイシン アジスロマイシン フルオロキノロン系 ガチフロキサシン レボフロキサシン モキシフロキサシン 薬力学的分類 治療目標 濃度非依存性 (時間依存 性) 濃度非依存性 (時間依存 性) 濃度依存性 (時間非依存 性) MIC 超過時間
time above MIC >
40-50 %
MIC 超過時間
time above MIC >
40-50 % 24 時間 AUC/MIC 比> 25-30 24 時間 AUC/MIC 比> 25-30
抗菌薬の PK-PD パラメーター
Time above MICの薬剤
0
4
8
12
1
6
20
24
0.01
0.1
10
100
時 間
抗 菌 薬 濃 度Low MIC
の細菌に対するシミュレーション
( 第4世代セフェム(セフォゾプラン)の場合)低い MIC
( m g / m L ) 2 バイアル /30 分 %T>MIC=6時間=25% 50%にするには→1日2回投与で十分 6 時間0
4
8
12
1
6
20
24
0.01
0.1
10
100
時 間
高い MIC
( m g / m L )では, high MIC の場合は?
2 バイアル /30 分 2 バイアル /30 分1日あたり,4バイアルまでの保険診療上の規定があるので・・・.
抗 菌 薬 濃 度ところが,
%T>MIC=5時間= 20.8% 50 %にするには→1日に 2V の3回投与(計 6V )が必要. 5 時間0
4
8
12
1
6
20
24
0.01
0.1
10
100
時 間
高い MIC
( m g / m L )3回 / 日投与 (2V, 1V, 1V) のシミュレーション
2 バイアル 1 バイアル 1 バイアル 2 バイアル 抗 菌 薬 濃 度 %T>MIC= 12 時間=50 % 6 時間 4 時間 2 時間0
4
8
12
1
6
20
24
0.01
0.1
10
100
時 間
Middle
( m g / m L ) 2V 2VLow
Very
High
Zone 1 Zone 2 Zone 1 では,3回投与の方が T>MIC は長 い. Zone 2 では,2回投与の方が T>MIC は長 い. 抗 菌 薬 濃 度 1V 1V 2V3回 / 日投与は,いつも2回 / 日投与よりも有効なのか?
3hr3hr 1hr 3hr必ずしも3回 / 日投与の方が time above
MIC
が長いとは限らない.
0
4
8
12
1
6
20
24
0.01
0.1
10
100
時 間
MIC
%T>MIC=24時間=100 % ( m g / m L )持続投与のシミュレーション
抗 菌 薬 濃 度0
4
8
12
1
6
20
24
0.01
0.1
10
100
時 間
MIC
%T>MIC=0時間 ( m g / m L )持続投与のシミュレーション
持続投与では,まったく効果がない場合がある
.
抗 菌 薬 濃 度0
4
8
12
1
6
20
24
0.01
0.1
10
100
時 間
High
MIC
( m g / m L )3回 / 日投与( 1V, 1V, 1V )のシミュレーション
1V 1V 1V1回に 1V (計3V / 日)では, time above MIC が維持できない場合がある.
抗 菌 薬 濃 度 2h 2h 2h
セフェム系の最適投与法
2 V ,1 V ,
1 V ,
AUC / MICの薬剤
イトラコナゾー
ル
予防投与として用いたイトラコナゾールシロップの
薬物動態
Kanbayashi Y, Nomura K, et al.,
International Journal of Antimicrobial and Agents, 2009
背景
造血器悪性腫瘍に対する化学療法後の好中球減
少時にみられる
侵襲性アスペルギルス症
は,致
死率 50 %ときわめて予後不良である.
(Kume H, et al., Pathol Int 2003, 53:744-750. )
アスペルギルスにも高い活性を示し,吸収率も
改善された
イトラコナゾール内用液
は,予防効
果が期待できる薬剤の一つである.
目的
深在性真菌症予防には,イトラコナゾールはトラフ値が
250ng/mL
は必要.
しかし,トラフ値から,適正投与量を決定することは困
難.
患者の血中濃度にもとづいた,
母集団薬物動態解析
により,日本人での深在性真菌症予防としてのイト
ラコナゾール内溶液の至適投与法を確立する.
母集団薬物動態解析( Population Phar
macokinetic Analysis )とは?
個人毎の薬物動態を論じるのではなく,対象患
者の属する
母集団 (Population)
の薬物動態を
考える.
解析プログラムとして, Beal らが開発した
NON
MEM
(Nonlinear Mixed Effect Model :非線形
混合効果モデル ) が広く利用されている.
患者および方法
京都府立医大附属病院の血液・腫瘍内科で化学療法を
受けた入院患者
7名
イトラコナゾールシロップ
200mg/ 1回 / 日
を予防目的
で投与し,定常状態での血中濃度を測定 (
24 ポイン
ト
)
母集団薬物動態解析にて薬物動態パラメーターの算出
を行い,解析・検討した.
薬物動態モデル
薬物動態モデル ADVAN2 TRANS2( 線形 ) 1次吸収過程のある 1- コンパートメント モデル 混合効果モデル ( 個体間変動 ) 指数誤差( exponential )モデル 測定誤差( ERROR )モデル 指数誤差( exponential )モデル 期待値推定アルゴリズムFO ( first order approximation ) POSTHOC :経験ベイズ推定
日本人のイトラコナゾールシロップの母集団薬物動態パ
ラメーターを決定した.この結果により,投与量・方法
別のシミュレーションが可能となった.
真菌感染症は,イトラコナゾールシロップ 200mg/ 日の
投与で予防でき,服用困難な症例では分割投与も同等の
効果が期待できる.
結語
アスペルギルス症例に対するボリ
コナゾールの有効性
Parameter mean (RSE %)500 Bootstrap replicates median (95%CI) CL(L/hr) 11.2 (21.3) 11.5 (8.1-15.9) Vd(L) 68.7(12.0) 68.5(57.4-81.54) Kel 0.163 0.167 AUC ( μ g ·hr/mL ) 17.86 17.39 AUC(0-24hr ) 35.71 34.78 t1/2 ( hr ) =0.693/Ke l 4.25 4.15 Cmax 2.91 2.90
母集団薬物動態パラメーター
p o ss ib ili ty Reliability=89.2%