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博士(医学)鄭 日男 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(医学)鄭   日男 学位論文題名

月をlicobacter pylori のCagA チロシンリン酸化モチーフ 構造とSHP ―2 結合能の胃癌株と十二指腸潰瘍株による検討

学 位論文内容の要旨

[目的と背景]

  欧米では〃.  pyl ori感染者の約60%がCagA陽性株であり,CagA陰性風pyl ori感染者よ り胃 癌発生率 が約6倍高い と言われ ている が,日本では胃癌や十二指腸潰瘍患者から分離 さ れ る風pyloriはほば100%CagA陽性であ る,発 癌に関連 する病 原因子と してのCagA蛋 白, 特にチロ シンリ ン酸化モチーフの個数と構造およびSHPー2結合能の関連が分子生物学 的 研 究 か ら 示 唆 さ れ て い る が , 臨 床 的 に 発 癌 と の 関 連 は 明 ら か に なっ て い な い.

  申請 者はCagA陽 性で胃癌 発症の低 リスク 疾患であ る十二 指腸潰瘍 霞pyloriのCagA蛋白 と胃 癌H pyloriのCagA蛋 白の発現 ,チロ シンリン 酸化モ チーフ数 と構造 ,SHP−2結合能 との 関連を検 討する ことによ ってCagA蛋 白と胃癌 の関連 を臨床的 に明らかにしようと試 みた.

[対象と方法]

1)患者と菌株

  十二 指 腸 潰瘍 丘pylori8株 , 胃癌 丘pylori8株を対 象とし ,患者の 胃粘膜生 検組織 の 組織学的特徴はUpdated Sydney Systemにより評価した.

2)培養,DNA抽出,PCR,DNAシークエンス

  菌株 を37℃の培 養器内 で一晩振 動培養 した後,3000rpmで遠心して沈渣となった細菌を 試料 とした. DNA抽出は 核酸抽出 剤によ って行っ た.PCRは(94℃―30秒 ,55℃―30秒,

72℃―30秒)35サイクル,条件下で行った.  QIAquick Gel Extraction kitでDNAを精製し,

反応プロトコールによってシークエンスを行った.

3)丘pyloriの蛋白抽出,Hpyloriと胃癌培養細胞株AGSの共培養

  グリ シンバッ ファー 法で蛋白 を抽出 した.H pylori菌をAGS細胞と100:1の比率で5時 間共培養した.

4)免疫沈降,ウエスタンブロット法

  免疫 沈降kitを用い て免疫沈 降を行 った.ウ エスタン ブロッ ト後の陽 性バンドをHRP発 色 キ ッ ト で 発 色 さ せ , density scoreは コ ン ピ ュ ー タ ー 上 で 測 定 し た ,

[結果]

1)背景胃粘膜r

  炎症スコア(炎症細胞浸潤)およぴ活動性スコア(好中球浸潤)は十二指腸潰瘍群の前庭部 で有意に高かった(P<O. 01,P〈O.Ol),体部腸上皮化生スコアは胃癌群で有意に高かった (Pく0.01).

2)臨床分離株のチロシンリン酸化モチーフ数

  十二 指 腸 潰瘍株 と胃癌株16株全て がPCR法 でCagAが陽 性であ った,十 ニ指腸潰 瘍では 8株全てがC端に3個 のtyrosine phosphorylation motifs (TPMs)を有していた.胃癌株で は 8株 中 7株 がC端 にTPMsを3個 有 し て い て ,1株 が4個 のTPMsを 有 し て い た .

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(2)

4)臨床分離株のチロシンリン酸化モチーフ構造

  十 二 指 腸 潰 瘍8株 と 胃 癌8株 中15株 がTPMsY−894,Y―913,Y―967を有 し ,1株 が TPMs−Y―894,Y‑913,Y一949,Y―1003を有していた.すなわち,チロシンリン酸化モチーフ とその周辺遺伝子シークエンスでは十二指腸潰瘍株(8株)と胃癌株(7株)のTPMs構造は完 全に一致しており,両株の聞で差異は全く見られなかった,

5) AGS細胞との共培養後の細胞内CagA蛋白およびSHPー2の解析

  胃癌株CagA蛋白のdensityスコ アは平均 値136. 08土30.75 (SD)で, ナ二指腸潰瘍株は 平 均 値133. 29土35.16 (SD)で あ り , 両 群 問 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た .   胃癌株SHP―2のdensityスコア は平均値73. 00土10.06 (SD)で,十二指腸漬瘍株は平均 値80. 18土13.30 (SD)で , 両 群 間 にCagA蛋 白 結 合SHP−2量 に 有 意 差 は な かっ た .

[考察]

  本研究で はAGS細胞とCagA陽性の胃 癌株およ ぴ十二指腸潰瘍株を共培養し,細胞内ヘ挿 入さ れ るCagA蛋 白およ び結合す るSHPー2を 比較検討 した. 免疫沈降 後のAGS細胞内 に挿 入されたCagA蛋白は 胃癌株間 あるい は十二指 腸潰瘍 株間で著 しい差 異があり,疾患の差 異よりも 株間で の差異が 著しか った.挿 入CagA蛋白 量の平均 値でも 十二指腸潰瘍株と胃 癌株の間 で有意 差はなかった.この結果は結合するSHP―2量の比較でも同様であり,胃癌 株間ある いは十 二指腸潰瘍株間で著しい差異があり,疾患の差異よりも株間での差異が著 しかった .これ らの結果 から, 胃癌株お よび十二 指腸潰 瘍株霞pyloriのCagA遺伝子およ び胃上皮 細胞内 に挿入さ れるCagA蛋 白および 結合す るSHP−2は差 異は認 められず,疾患 の差異で はなく 個々の株間での多様性に依存することが明らかとなった.この菌株間での CagA蛋白産 生の差異 の生じる 機序は 明らかで なく, 今後の研 究が必 要である.臨床分離 株におけ る本研 究から単 に胃上 皮細胞内 に挿入さ れるCagA蛋 白およ び結合するSHP―2の 差異から 胃発癌 を考察す ること は困難で あり,感 染から 胃発癌に 関わる 機序の解明には CagA蛋白以 外の菌側 要因,宿主要因(炎症性サイトカインの遺伝子多型など),環境要因

( 塩 分 な ど ) を 加 味 し た 総 合 的 な 検 討 が 必 要 で あ る と 考 え ら れ る .

[結語]

1)霞pylori陽性胃 癌8株中8株が,十二指腸潰瘍8株中8株がCagA陽性であった(100%).

2)十 二指腸 潰瘍8株中8株,胃 癌8株 中7株 は3個 のチロ シンリン 酸化モ チーフがあり,そ の周辺遺伝子のシークエンスにも全く差異は見られなかった.

3) AGS細胞内に挿入されたCagA蛋白量および,それに結合するSHP―2結合量の比較では胃 癌株と十二指腸潰瘍株間の差異が認められなかった.

  したがっ てこれ らの差異から胃発癌の意義を考察することは困難であると推定された.

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(3)

学位論文 審査の要旨

     学位論文題名

Helicobac たァウッ励カのCagA チロシンリン酸化モチーフ 構造と SHP ー 2 結合能の胃癌株と十二指腸潰瘍株による検討

   欧米では〃.  pyl ori 感染者の約60 %がCagA 陽性株であり,CagA 陰性〃.pyl ori 感 染 者よ り胃 癌発 生率 が約 6 倍高 いと 言わ れて いる が, 日本 では胃癌や十ニ指腸潰瘍 患者から分離される〃.  pyl ori はほぼ100 %CagA 陽性である.発癌に関連する病原 因 子 と し て の CagA 蛋 白 , 特 に チ ロ シ ン リ ン 酸 化 モ チ ー フ の 個 数 と 構 造 お よぴ SHP ー 2 結合 能の 関連 が分 子生 物学的研究から示唆されているが,臨床的に発癌との 関 連 は 明 らか にな って いな い. 以上 に基 づぃ て申請 者は CagA 陽性 で胃 癌発 症の 低 リスク疾患である十二指腸潰瘍〃・  pyl ori と胃癌且pyl ori におけるCagA 蛋白の発 現 ,チ ロシ ンリ ン酸 化モ チー フ数と構造,SHP ―2 結合能との関連をPCR ,DNA シーク エ ンスをして,チロシンリン酸化モチーフ数と構造を臨床的に検討し,〃. pylori と AGS 細 胞 共 培 養 後 の AGS 細 胞 内 に 挿 入 さ れ る CagA 蛋 白 お よ び CagA 結 合 SHP − 2 の 量 を 免 疫沈 降後 ,抗 CagA 抗体 と抗 SHP 一 2 抗 体を用 いて ウエ スタ ンブ ロッ ト法 で 検 討し た. 次に 全て の臨 床株 を免 疫沈 降せ ずに 分子 量から 推定してAGS 細胞内に挿 入 され るCagA 蛋 白量 及び CagA 結合SHP −2 の量をウエスタンブロット法で検討した.

臨 床 分 離 株の チロ シン リン 酸化 モチ ーフ 数と 構造は 十二 指腸 潰瘍 群と 胃癌 群で 差 異 は 全 く 見 ら れ な か っ た . AGS 細 胞 と の 共培 養後の 細胞 内に 挿入 され るCagA 蛋 白 量 およ びSHP − 2 の量 も両 群間 に有意差はなかった,これらの結果より,日本人臨床 株による検討では,〃.  pyl ori のCagA 遺伝子C 端の構造とSHP ー2 の結合能は胃発癌 に関連はないこ与が示唆された・

   口頭 発表 に際 し, 副査 の田 中教授より胃癌株と十二指腸潰瘍株でりン酸化結合部 位 を 含 め てCagA の 構造 が全 く同 じパ ター ンの 株があ った か否 かに っい て, また 接 着 因子 やほ かの 遺伝 子に っい て質問があった.これに対して申請者は,十二指腸潰 瘍 株 と 胃 癌株 でほ とん どの 株で CagA の構 造が 全く同 じパ ター ンを 示し ,接 着因 子 や その ほか の遺 伝子 の関 与に ついては今後検討予定であると回答した,副査の武蔵 教 授よ り胃 癌株 と十 ニ指 腸潰 瘍株の採集時期,SHP ー2 の量には差がなくてもりン酸

博 馬

正 一

香 中

浅 田

授 授

教 教

査 査

主 副

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化の 違い に差 が認 めら れるか,正常に近い細胞ではどうなるか,SHP ー2 すぐ下流の 分子 とし て何 が考 えら れるかについて質問があった.これに対して申請者は,臨床 株は 内視 鏡中 胃癌 と十 二指腸 潰瘍 と診 断さ れた 時に 生検 組織 から 菌を 培養 し実 験 に使用したこと,SHP −2 の量には差がなくても,外のりン酸化の違い例えぱセリン,

リシ ンな どの りン 酸化 の違いが充分考えられると回答した.正常に近い細胞ではど うな るか にっ いて は癌 細胞以外の正常に近い細胞で今後検討しでみたいと回答し,

SHP ― 2 す ぐ下 流の 分子 として 何が 考え られ るか につ いて申請者は,GAP 蛋白を今後 検討 して みた いと 回答 した. さら に主 査の 浅香 教授 より CagA とSHP ―2 のチ ロシ ン リン酸化系の以外の実験系にはどのようなものが考えられるか,〃. pylori 感染か ら胃 発癌 に至 る系 の解 明には どの よう な研 究を して いけ ぱよ いか など にっ いて 質 問が あっ た. これ に対 して申 請者 は, 非リ ン酸 化経 路が 考え られ ると 回答 した .

〃.  pyl ori 感染から胃癌に至る系の解明にはどのようなものが考えられるかについ て 申 請 者 は , CagA の ほ か の 遺 伝 子 を 今 後 検 討 す べ き た と 回 答 し た .    本研究は〃,  pyl ori におけるCagA 蛋白の発現,チロシンリン酸化モチーフ数と構 造お よび SHP ― 2 結 合能 が胃癌株と十ニ指腸潰瘍株間で差が認められないことを初め て明らかにしたことで高く評価された.

   審 査員 一同 は, これ らの成果を高く評価し,大学院課程における研鑽や取得単位

など も併 せ申 請者 が博 士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判

定した.

参照

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