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博士(農学)相馬 潤 学,位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(農学)相馬   潤 学,位論文題名

トウモ口コシ栽培による

アズキ落葉病菌菌量低下機構に関する研究

学位論文内容の要旨

  アズキ落葉 病は不完全 菌類に属す る糸状菌Phialophora greばataf.sp.

adzukicolaによる土壌病害である。本菌は発芽間もないアズキ根に侵入し、維 管束の褐変・萎ちょうを引き起こし、さらには落葉・枯死にいたらしめる。本 病の発生は1938年に初めて報告されたが、1970年には十勝地方を中心に大発 生し、その発生面積は栽培面積の66%にあたる14,00 0haに達した。その後 も本菌の分 布面積は大 きく、北海 道におけるアズキの最重要病害である。

  本菌は土壌中で分生胞子で生存していると考えられているが、トウモロコシ を栽培することにより、その菌量が著しく低下し、その結栗発病も抑制される ことが明らかとなった。抵抗性品種の普及が進んでいない現状では、その他の 耕種的あるいは生物的・生態的防除が必要とされる。そこで、これに寄与する 知見を得る目的で、このトウモロコシ栽培によるアズキ落葉病菌菌量低下機構 の 解 明 を 試 み た 。 本 論 文 は そ の 成 果 を ま と め た も の で あ る 。   菌量低下の場は、根の影響を最も顕著に受ける根圏土壌と考え、トウモロコ シ、アズキ、ダイズ、コムギに関して菌量の測定を行った結果、4作物共に著 しい菌畳の低下(1/10以下)が認められた。

  一方、栽培土壌全体の菌量はァズキ栽培では低下しなかったが、他の3作物 の栽培では漸減し、秋には根圏土壌中の菌量に近い値となった。根圏土壌中で は同様に低下するにも関わらず、この様な差がアズキと他作物の間に認められ た原因として、根系の違いが考えられた。土壌中の根長密度(単位土壌容積当 たりに含まれる根の長さ)を測定したところ、アズキ以外では著しい増加が認

(2)

められた。このことは、これら根長密度の大きくなる植物(トウモロコシ、ダ イズ、コムギ)は根を土壌の広範囲に広げ、その根圏での菌量低下の効果を土 壌全体に及ぼしたことを示し、逆に根長密度の増加が小さいアズキではその根 圏 で の 菌 量 低 下 が 土 壌 全 体 に 及 ば な か っ た こ と を 示 し て い る 。   宿主も含めた複数の作物の根圏土壌中で同様に菌量の低下が認められたこと から、これは作物の種類によらない非特異的な作用によることが示唆された。

そこで、根浸出液に一般に含まれるとされる糖・アミノ酸の水溶液を透析膜を 介して徐々に土壌に浸出させるモデル系を用い、そこで形成される疑似的な根 圏、すなわち人工根圏土壌中の本菌菌量を調査した。その結果、人工根圏土壌 中においても実際の植物根圏と同様に菌量が低下した。殺菌土壌、あるいは低 温殺菌土壌(60℃‐40分)を用いた同様の実験では菌量低下は全く認められ ないことから、人工根圏土壌中の菌量低下現象には非耐熱性細菌の何らかの作 用が関係するものと考えた。さらに、この時、微生物活性が低いと(4℃下)

菌畳低下が認められないことから、高い活性も必要条件であることが明らかと なった。簡易細菌同定システムとクラスター分析を組み合わせることにより、

人工根圏土壌中の細菌相と対照土壌中の細菌相を詳細に比較した結果、両者は 非常によく似ており、人工根圏土壌中である特定のグループに属する細菌が選 択的に増加するのではないことが明らかとなった。したがって、菌量低下は一 般的な細菌の全体的な働きによる可能性が高いと考えられた。このことは、非 特 異 的 な 根 圏 効 果 に よ る 菌 量 低 下 と ぃ う 考え を 支 持 す る も の で あ る 。   人工根圏土壌中におけるアズキ萎ちょう病菌(Fusarium oxysporumf.sp. a dzu kiC ola)とコムギ条斑病菌(Cephalosporium gramineum)の菌量につい て検討した結果、両菌とも全く影響を受けなかった。このことから、根圏土壌 中における菌量低下はアズキ落葉病菌に特異的な現象であることが示唆された。

  螢光染色した分生胞子を接種した土壌を用いて人工根圏土壌中での発芽を観 察した結果、アズキ落葉病菌では発芽率は数%と非常に低かったが、コムギ条 斑病菌では25%以上の発芽率であった。したがって、人工根圏土壌中のアズ キ落葉病菌は未発芽の状態で死滅することが明らかとなった。また、このこと か ら 、 菌 量 低 下 現 象 に 対 し て 土 壌 静 菌 作 用 の 関 与 が 示 唆 さ れ た 。     ‑ 821−

(3)

  土壌静菌作用をin vitroで再現するLeaching systemを用いて、アズキ落葉 病菌の栄養ストレスに対する感受性を検討した。その結果、アズキ落葉病菌は コムギ条斑病と比較して著しく感受性が高く、強い栄養ストレスの下で速やか に死滅した。

  上の実験の結果から、根圏土壌中におけるアズキ落葉病菌の菌量低下機構と して以下のようなことが推察された。すなわち、植物根からの浸出液により増 加した非耐熱性細菌がアズキ落葉病菌分生胞子の周囲に集まり、それから浸出 する栄養分を利用することにより、急激に内在栄養分が欠乏する。これにより 分生胞子は外部からの栄養の供給があっても発芽不能の状態となり、さらにそ の よ う な 栄 養ス ト レ スが 継続 する こと により 、死 滅す ると考 えら れる 。   以上のような非特異的な微生物全体(非耐熱性細菌全体)による根圏土壌中 での菌量低下の効果を土壌の広範囲に及ぽすことのできる根系を備えたトウモ ロコシを栽培することによって土壌中の菌畳は低下すると考えることができる。

1983年に近藤らはトウモロコシのみではなく、ダイズ、各種マメ科牧草の栽 培によっても土壌中菌量が低下したことを報告したが、これは、これらが高い 根長密度を持つことから、トウモロコシと同様の機構によって起きたと考える ことができ、本研究の結論と一致する。

822 ‑

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

生越 木村 喜久田 小林

     郁夫 嘉郎 喜六

     学 位 論 文 題 名 トウモロコシ栽培による

アズキ落葉病菌菌量低 下機構に関する研究

  本 論 文 は 和 文 で 記 さ れ 、 図43、 表21を 含 む 総 頁 数121か ら な り 、10章 を も っ て 構 成 さ れ て い る 。

  ア ズ キ 落 葉 病 は 病 原 菌Phia Iophora gregatafsp.  adzukicolaによ る 土 壌伝 染 性 病 害 で あ り 、 北 海 道 の ア ズ キ 栽 培 の 重 要 な 障 害 と な っ て い る 。 本 病 は 土 壌 中 に 生 存 す る 分 生 胞 子 が 根 に 感 染 す る こ と に よ っ て 起 こ る が 、 ト ウ モ ロ コ シ を 栽 培 す る こ と に よ り 、 土 壌 中 の 病 原 菌 菌 量 が 著 し く 低 下 し 、 発 生 が 低 減 さ れ る こ と が 知 ら れ て い る 。 本 論 文 は こ の ト ウ モ ロ コ シ 栽 培 に よ る ア ズ キ 落 葉 病 菌 菌 畳 低 下 の 機 構 を 解 明 す る 目 的 で 行 っ た 研 究 を ま と め た も の で あ る 。   ト ウ モ ロ コ シ 、 ア ズ キ 、 ダ イ ズ 、 コ ム ギ の 各 根 圏 土 壌 中 の 本 菌 菌 量 を 調 査 し た 結 果 、 そ れ ぞ れ で 著 し い 菌 量 低 下 (1/10以 下 ) が 認 め ら れ た 。 一 方 、 栽 培 土 壌 中 の 菌 量 は ト ウ モ ロ コ シ 、 ダ イ ズ 、 コ ム ギ 栽 培 で は 徐 々 に 低 下 し た が 、 ア ズ キ 栽 培 土 壌 中 の 菌 量 に は 変 化 が 認 め ら れ な か っ た 。

  こ れ ら4作 物 の 土 壌 中 の 根 量 ( 根 長 密 度 ; 単 位 土 壌 容 積 当 た り に 含 ま れ る 根 の 長 さ ) を 測 定 し た 結 果 、 ア ズ キ を 除 く3作 物 の 根 長 密 度 は 生 育 と 共 に 上 昇 し た が 、 ア ズ キ で は 顕 著 な 増 加 は 認 め ら れ な か っ た 。 こ の こ と か ら 、 ア ズ キ は そ の 根 圏 で の 菌 量 低 下 の 効 果 を 土 壌 の 広 範 囲 に 広 げ る こ と が で き な い た め 土 壌 中 の 菌 量 低 下 が 認 め ら れ な か っ た と 考 え ら れ た 。反 対 に 、ト ウ モ ロコ シ 、 ダイ ズ 、

(5)

コムギはその根系の広い分布によって、土壌全体の菌量を低下させることがで きると考えられた。

  宿主も含めた複数の作物の根圏土壌中で同様に菌畳の低下が認められたこと から、これは作物の種類によらない非特異的な作用によることが示唆された。

そこで、根浸出液に一般に含まれるとされる糖・アミノ酸の水溶液を透析膜を 介して徐々に土壌に浸出させるモデル系を用い、そこで形成される疑似的な根 圏、すなわち人工根圏土壌中の本菌菌畳を調査した。その結果、人工根圏土壌 中においても実際の植物根圏と同様に菌量が低下した。また、この菌量低下現 象には60℃.30分の熱処理によって死滅する非耐熱性の細菌の増加とその高 い微生物活性が関与することが明らかとなった。これらの結果は非特異的な根 圏 効 果 に よ る 菌 量 低 下 と ぃ う 考 え を 支 持 す る も の で あ る 。   人工根圏土壌中におけるアズキ萎ちょう病菌(Fusarium oxysporumf.sp. a dzukicola)とコムギ条斑病菌(Cephalosporium Arramineum)の菌量につい て検討した結果、両菌とも全く影響を受けなかった。このことから、根圏土壌 中における菌量低下はアズキ落葉病菌に特異的な現象であることが示唆された。

  また、人工根圏土壌中でアズキ落葉病菌分生胞子は発芽しないまま死滅する ことが明らかとなった。一方、コムギ条斑病菌は25%以上が発芽したことか ら、アズキ落葉病菌の菌量低下への土壌静菌作用の関与が示唆された。土壌静 菌作用を再現するためのLeaching systemを用いて、強い栄養ストレスを継続 的に加えたところ、アズキ落葉病菌の生存率が著しく低下した。このことから、

菌量低下は根圏微生物(非耐熱性細菌)による栄養ストレスによって胞子の内 在 養 分 が 喪 失 す る こ と に よ っ て 起 こ る こ と が 推 察 さ れ た 。   以上の研究成果は、学術上高く評価される。よって審査員一同は、最終試験 の結果を合わせて、本論文の提出者相馬潤は博士(農学)の学位を受けるの に十分な資格があるものと認定した。

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