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等電点電気泳動法による全身性エリテマトーデスの      抗DNA 抗体の分析

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Academic year: 2021

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     博士(医学)佐川      学位論文題名

等電点電気泳動法による全身性エリテマトーデスの      抗DNA 抗体の分析

―免 疫 グ□ ブリ ンク ラ ス, 免疫 複合 体と の 関係―

学位論文内容の要旨

    I研究目的

  全身性エリテマ トーデス(SLE)において,抗DNA抗体は腎障害をはじめ血管炎や皮膚炎の 発症 に 大き くか かわ っ てい るこ とが 推定 さ れ,二本鎖DNA(ds―DNA)や一本鎖DNA(ss ーDNA)に対する抗体,免疫グ口ブリンクラスによる違いによってその病原性の違いや疾患活 動性との関係など が指摘されている。また,SLEは免疫複合体病としても知られ,DNA/抗 DNA抗体の免疫複合体(IC)の沈着が種々の臓器障害を引き起こすとされている。本研究では,

SLE患者 にっ き ,等 電点 電気 泳動 法(IEF)を 用いて抗DNA抗体の種 類及び分布やICとの関 係にっいて明かにすることを目的とした。

    u実験方法

  1) 症 例 : 当 科 外 来 通 院 ま た は 入 院 中 のSLE患 者 の 活 動 期 血 清 を 用 い た 。   2)分取用IEF:水平型IEFカ ラムに,患者血清とBiolyte(pH3.O一10.O)を混合し泳動 後,試料を20分画しpHを測定した後,透析し分析に用いた。

  3)ELISA法 に よ る 抗DNA抗 体 の 測 定 :ds―DNA,ss―DNAを マイ クロ プレ ート に 固 相化し,被検血清を加え反応させた。洗浄後Peroxidase標識ヤギ抗ヒトIgG(またはIgM,IgA) 抗体を反応させ,基質を加え吸光度を測定した。

  4)ICの測定:MRLマウスのモ ノクローナルIgG型リウマト イド因子を固相化したマイク 口 プレートに被検血清を加え反応させた。洗浄後Alkali・phosphatase標識ヤギ抗ヒトIgG抗 体F(ab )2分画を反応させ,基質を加え吸光度を測定した。

  5) FPLC,HPLCカラ ムに よる 患 者血 清の 分離: イオン交換はFPLCカラムを, ゲル濾過

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に はHPLCカラ ムを 用い た 。

  5) PHカ ラム による抗DNA抗体の溶 出:SLE患者血清を本カラム に吸着させた後溶出し そ の分 画 を透 析後 濃縮 し てIgGおよ び 抗DNA抗 体を 測定 した 。

    m結  果

  1) ELISA法 に よ る 免 疫 グ ロ ブ リ ン ク ラ ス 別 抗DNA抗 体 :SLE群 に お け るIgGお よび IgM型 抗ss― ,抗ds―DNA抗体 およ びIgA型 抗ss―DNA抗 体 は健 常人 に比 ベ 有意 に高 かっ たが,IgA型抗dsDNA抗体で は有意差を認めなかった。

  2)IEFに よ る 血 清 免 疫 グ口 ブリ ン ,抗DNA抗体 およ びICの分 布 :SLE患 者血 清のIEF によ る分 析で ,IgGはほとんどの部分 がpH6付近にピークを持つ幅 の広い分布を示し,pH9 以上 の部 分に も 一部 分布 して いた 。IgAおよびIgMはpH5付近にピ ークを認めたが,IgGに 比べ その 分布 は 狭くpH9以 上 の部 分へ の分 布 はな かっ た。 抗DNA抗体のIEFによる分析で IgG型 抗DNA抗 体 は, 抗ssー, 抗ds―DNA抗 体 共に 酸性 寄り (pH5.7前後)とアルカル寄 り(pH8か ら10前 後 ) の 二 峰性 の分 布 を示 した 。IgAお よびIgM型抗DNA抗体 は, 単 峰性 で酸 性側 (pH5.7)に分布していた。ICを測定した結果では,IgGと同様にpH9以上の部分 に分布していた。

  3)FPLCお よ びHPLCに よ る 抗DNA抗 体 お よ びIC分 布 の 分 析 : 抗DNA抗 体 お よ び ICを ,FPLCのIgGを主成分とする第一 ピークに認めた。さらにHPLCによるゲル濾過にて,

ICは高分子領域に特に高く ,他の領域にも幅広く認め た。抗DNA抗体は高分子領域が主で,

IgG型 抗ss―DNA抗 体 が 主 な も の で あ っ た 。 上 記 のFPLCに よる 第 一ピ ーク のHPLCでの 分析では, ICは高分子領 域に多く,抗DNA抗体は高分 子領域および低分子領域に認めた。

  4) PHカ ラ ム に よ る 抗DNA抗 体の 溶 出:SLE患者 にお けるPHカ ラ ムに よる 免疫 吸 着療 法 で , 血 中IgG型 抗DNA抗 体の 滅少 率 を見 た。 抗ssDNA抗体 は77.8%, 抗dsDNA抗 体は 62.9%であり,ICは56%で あった。本カラ厶通過によ り抗DNA抗体は著明に下がりIEF分布 で見ると特に高pH領域のピ ークが消失していた。本カ ラムに吸着させたSLE患者血清成分を NaClにて溶出した。最初の 低濃度塩にて大部分のIgGは 溶出し,高濃度塩で溶出されたもの は最 初の 約1/8.2から1/9.6程度であ ったが,抗DNA抗体の溶出量 の変化はほとんどなく,

抗DNA抗 体/ 総量IgG比で 見る と抗DNA抗体 は 高塩 濃度 での 溶出 率 が高 く, 総IgGに 比べ PHカラムにより親和性の強 いことがわかった。本カラムによる低濃度塩溶出分画はアルカリ 側に幅広く分布していたが,高濃度塩溶出分画はさらに強いアルカリ側のpH9.O付近に限局し

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て い た 。

    IV考  案

  全身性工リテマ トーデスにおいて抗DNA抗体は最もその病因との関連が深く,種々の面か ら検 討 がな され てい る 。SLE患者血清のIEFに よる各免疫グ口ブリンの分 布でIgGはIgAや IgMと異 なり , 高pH部分 の分布を含め二峰性 を示したが,この傾向は各ク ラス別の抗DNA 抗体のIEFでの分 布をみた時も同様であった。 さらにICは,IgGの分画に見られたこの高pH 部分の分布に一致 して認められ,この部位にIgG主体のICの存在が明かとなった。この様に 液相のIEFでICの 位置を確認した報告はなく本研究が始めてである。さらにこのアルカリ側 の部分fま SLE患 者でのPHカラムによる免疫吸 着療法で消失しており,本カラムが抗DNA抗 体の み なら ずICをも よ く吸 収し てい るの が 明か であった。FPLCによる抗DNA抗体および ICの分析では,ともにその主要部分をIgGを主成分とするカラム素通りの第一ピ―クに認めた が,このピークは主にcation lc IgGからなっていると思われ,ICもこの部分に存在しているこ とが示された。こ のことはまたPHカラムが特にcationic IgGを吸着する能カがあり,同時に その部分に存在し ているICをも吸着するのに 都合がよいと言うことが判明した。HPLC分析 にて ,SLE患 者 血清 では 主に抗DNA抗体を主体 とした様々のサイズのICが 形成され循環し ていることが示さ れた。SLEのICにっいて種々の報告が見られるが,本研究においても種々 のサイズのものが 認められており,今後さらにICサイズとSLEの各病型毎の関係にっいての 分析 が 重要 と思 われ た 。本 カラ ムよ り溶 出 され た抗DNA抗体 はよ り濃 縮 されたIgG型抗 DNA抗体 で, ア ルカ リ寄 りの部分に限局して 分布しているcationic IgG( 抗DNA抗体)で ある。さらにこの 様なcationic IgG(抗DNA抗体)が腎組織に対し親和性が強く腎毒性を示 す可能性があるとの報告がみられるが,これらの点にっいては今後,より直接的でかっ綿密な分 析が必要であると思われた。

    V結  論

  SLE患者血清を用い,IEFにて免疫グ口ブリン,抗DNA抗体および免疫複合体の 分布を調 べ以下の結論を得た。

  1.抗DNA抗 体 には ,IgG,IgA,IgM classのも のが 認め ら れ,IEFに て各免疫グ口 ブ リン と同 様に そ れぞ れ特 有の 限 定し たpHの範 囲に分布し ていた。IgA及びIgM型抗DNA抗 体は酸性寄りにーっのピ ークを示すように分布した が,IgG型抗DNA抗体は二相性に別れア

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ルカリ 寄りの部分はICの分布と一 致していた。

  2. またFPLC(イオン交換法)やHPLC(ゲル濾過法)など他 の方法を用いた場合にも抗 DNA抗 体とICは 一 致し た分 布を 示し , 抗DNA抗 体を 合むICを 見て い るも のと思われた。

さらに この様なICは様々の分子サ イズのものが認められた。

  3. SLE患者に対し行ったPHカラ ムを用いた免疫吸着療法では,この様ナょICはカラムに より吸 着除去された。このことよ りPHミニカラムを作製しSLE患者血清の分析を行ったとこ ろ,カ ラムに対する親和性は溶出 第二ピークでより強く抗DNA抗体の濃度も高かった。同成 分 は IEFプ レ ー ト 法 に よ る 分 析 で は よ ル ア ル カ リ 側 に 分 布 し て い た 。   4. 以上 よル ヒ トSLE患者におい て,IgG型抗DNA抗体の中で もアルカリ領域に分布した 陽イオ ン性IgG型抗DNA抗体とされ るものは,免疫複合体を形成 しやすい傾向を示し,この タイプ の抗DNA抗体はSLEの組織障 害,特に糸球体腎炎の発症に 関与している可能性が考え られた 。

学位論文審査の要旨

  抗DNA抗 体 お よ びDNA/ 抗DNA抗 体 の 免 疫 複 合 体(IC)は , 全 身性 工リ テ マト ーデ ス

(SLE) の腎 障 害を はじ め血 管炎 や 皮膚 炎な どの臓器障害を引き起こす とされている。

  今 回 申請 者は 活動 期SLE患者の血清を用い ,等電点電気泳動法(IEF)に より抗DNA抗体 の種類や分布,ICとの関係にっいて分析を試み た。

  その結果は,

  (1)SLE群 に お け るIgG,IgM型 抗ss一 , 抗ds―DNA抗 体 お よびIgA型抗ssーDNA抗 体は健常人に比べ ,有意に高かった。

  (2) SLE患者血清 中免疫グ口ブリンの等電点 による分析で,IgGは二峰に分かれ大部分は pH7以下 に分 布 し, 残りはpH9以上の分画に認 められた。IgAとIgMはそれ ぞれpH4.7と5.1 に ー っ の ピ ー ク を 示 しIgGに 比 べ そ の 幅 は 狭 く ,pH9以 上 に は 認 め ら れ な か っ た 。

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  (3)抗DNA抗体の 等電点 は,SLE症例では抗ss―,抗ds−DNA抗体ともに二峰性の分布を 示 し,第 一のピ ークはpH5.7に,第 二のピ ークはpH9.0に認められた。IgAおよびIgM型抗D NA抗体の等電点分布は,各症例とも単峰性であった。

  (4) ICの等電 点によ る分布 では,mRF法でpH8.5よルアルカリ側に向かって上昇し分画19 においてピークを形成した。anti一Clq法でも同様であった。

  (5) FPLCイ オ ン 交換 カ ラ ム で抗DNA抗体 およびICはとも に,IgGが 主成分 である 第一 ピークに一致して認められた。

  (6)症 例1のFPLCイ オン交 換カラ ムによ る第一 ピークをHPLCにて ゲル濾 過し,ICおよ び 抗DNA抗 体の分布 を測定 した。ICは特に 高分子 領域に 多く, 抗DNA抗体 は高分子領域お よび低分子領域に認められた。

  (8)抗DNA抗体高 値のSLE患 者に対 しフェ ニルア ラニン 結合(PH) カラム を用いた免疫 吸 着療法 を行っ た。同 カラム 通過に より抗DNA抗体は 著明に低下し特に高pH領域のピーク が消失した。

  (9)臨 床経験例 を実験 的に確認のためPHカラムに吸着したSLE患者血清成分を,NaClを ス テップヮイズに加え溶出し,分画中のIgG濃度および抗DNA抗体を測定した。最近のO.15 MNaCl加TBSで 大 部 分 のIgGは 溶 出 し ,O.5MNaCl加TBSで 溶出 さ れた ものは 総量にし て 約1/8から1/9程度であった。

  00)抗DNA抗 体とIgGの 比はO.15MNaCl加TBSに て溶出された分画では0.10〜0. 12であ るのに対し,O. 5MNaCl加TBSで溶出された分画でO.35〜O.49と高く,抗DNA抗体がその部 分 に濃縮 され溶 出され たため ,抗DNA抗 体は非 特異的IgGに比べ よりPHカ ラムに対し親和 性が強いことが判明した。

  (1D上 記 のPHカラム 溶出分 画の等 電点電 気泳動 では,0.15MNaCl加TBS溶出分 画はpH 7.8付近を中心としたアルカリ側に幅広く分布したが,O. sM NaCl加TBS溶出分画はそれより さらにアルカリ側に限局して分布した。

  以上の結果,活動期SLE患者血清において,

1. 抗DNA抗 体に は ,IgG,IgA,IgM classのも の が 認 めら れ ,IgG型 抗DNA抗 体 はIEF で二相性に分布しアルカリ寄りの部分はICの分布と一致した。

2. FPLCやHPLCで も抗DNA抗 体 とICの 分 布は 一 致 し てい た 。ICは 種々の 分子サ イズの ものが認められた。

3. SLE患者 で のPHカ ラムによ る免疫 吸着療 法では ,抗DNA抗 体は総IgGより親 和性が 強

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く,よルアルカリ側に分布していた。

4.以上の結果よルヒトSLE患者において,特にアル カリ領域に分布したcationic IgG型抗 DNA抗体は,免疫複合体 を形成しやすい傾向を示し,SLEの組織障害,特に糸球体腎炎の発 症に関与している可能性が考えられた。

  試 問に 際し , 小林 教授 より,DNA以 外の成分を抗原としたICにっ いての検索,抗DNA抗 体が 酸性 のDNAと 結合 す るとアルカリ 側よりむしろ酸性側に移動す る理由,抗DNA抗体が c ationicな理由は構造的なものかどうかにっいて,柿沼教授より,ICがアルカりなのはClqを 多く含むためではないのか,IgG subclassによる違いはどうか,皆川教授より,SLEの活動性 との 関係 ,CNSル ープ ス における抗DNA抗体およびICの髄液への出 現の有無,免疫吸着療 法での有効例の有無,有効除去成分などにっいて,宮崎教授より,等電点分析の結果は病態予後 判定 の指 標に な るか ,IgGのICが腎組 織に沈着する理由,Adhesion moleculeとの関係,

IgG,IgA, IgMなどのpI(等電点)にっいて糖質の量 やPolymerなどの影響にっいて,石橋 教授 より ,ICはbasicで あるので,Mono―Qcolumnをもちいるなら ば,pass throughしな い条件で行うべきであるなどにっいて,それぞれ質問およびコメントがあったが申請者は概ね適 切な答弁をした。

  以上により,本論文は学位授与に値するものと判定した。

参照

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