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セメント象牙境の構造と機能に関する組織学的および

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 歯 学 ) 福 島 千 史

学 位 論 文 題 名

セメント象牙境の構造と機能に関する組織学的および      免疫組織化学的研究

学位論文内容の要旨

【緒言 】

  セメント象牙境の組織学的研究は主としてラットを使って行われてきた.これらの研究によれば,

セ メン ト 象牙 境は 線維 に乏しくへマトキ シリンに濃染し,トルイジ ンブルー(TB)染色とPAS染色 に 反 応を 示 す, 幅1―2pmの 層と して 観察 され る .最 近の 免疫 組織 化 学的 研究 はこ の 層の 主要 基 質 は 酸 性 糖 蛋 白 質 ( 酸 性GPs)で あ る 骨 シ ア ロ 蛋 白 質(BSP)と オス テオ ポ ンチ ン(OPN)であ ること を明らかにし,さらに両者 はセメント質と象牙質の接着に密接に関与していることを示唆し ている .一方,ヒトのセメント象 牙境の構造と機能にっいての 報告は少なく不明確な部分 も多い が,以 下のニつの所見に大別でき る.:1)ラット同様,セメ ント象牙境は線維に乏しくプロテオ グ リカ ン(PGs)に 富み ,PGsがセメント質 と象牙質の接着に関与する ,2)セメント質と象牙質の 界 面に は 特殊 た介 在層 は存 在 せず ,両 者の 線 維同士が絡み合ってお り,これによルセメント質 と 象 牙質 は 固く 接着 する .1)は 光顕 , 走査 電顕 の所 見 だが ,PGsの 存在 につ いて は 古典 的組 織 化 学染 色 の観 察の みか ら であ り, 集積 する 基 質がPGsであ るか 否か は不 確 実で ある .2)は 透過電 顕による所見をもとにして おり,限られた領域のみでの観察であるおそれがある.よって,

本 研究 は ヒト 永久 歯の セメ ン ト象 牙境 を光 顕 と走査電顕を使って, 組織学的および免疫組織化 学 的 に広 範 囲に わた り検 索 し, セメ ント 象牙 境 の構 造と 機能 を解 明 する こと を目 的 とし た.

【材料 と方法】

  ヒト 下 顎第 一大 臼歯20本 , 下顎 小臼 歯10本 を使用した.これらは 抜去後ホルマリン溶液中で 保管さ れていたものである.

  光顕 に よる 観察 では ,歯 を5%EDTAで脱 灰後 ,通 法に 従 いパ ラフ ィン 包埋し,近遠心方向に 厚 さ5pmの連 続切 片 を作 成し た. 切片 に はH−E,TB,PAS,細 網鍍 銀 染色 を施 した , さら に免 疫 組織 化 学に より ,BSP,OPN,お よびPGsを検 出す るた め に数 種の グリ コサミノグリカン(GAG s), すなわちコンドロイチン4硫酸,デルマタン硫酸,コンドロイチン,コンドロイチン6硫酸,お よびケ ラタン硫酸の検出を試みた .一部の切片にはl?/ol‑リプシンを含むりン酸緩衝液で37℃,12

‑‑‑24時間処理し,TB染色あるいは 免疫染色(BSPとOPN)を施し た.

  走査 電顕による観察では,歯を ダイヤモンドディスクで近遠 心方向に半切し,切削面を 砥石で 研 磨し た 後,5VoEDTAで脱灰した,一部 の試料は光顕で使用したトリ プシン溶液にて37℃,72時 間処理 した.ついでトリプシン処 理したもの,無処理のもの両 方に通法通り導電染色を施 し,脱 水,乾 燥,蒸着して検鏡した.

【結果 】 光顕に よる観察

  無細 胞および有細胞セメント質 のいずれにおいても,セメント象牙境は周囲セメント質よりもへ マ トキ シ リン に濃 染し ,TB,PAS染色に 反応を示す幅2ー3umの層とし て観察された.鍍銀染色で はセメ ント象牙境はほとんど染ま らず,周囲セメント質に比べて線維に乏しいことが示された.免 疫染色 ではセメント象牙境は周囲 セメント質よりもBSPとOPNに強い反応を示した.しかしながら,

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(2)

いずれのGAGsもセメント 象牙境とセメント質自体に 全く反応を示さなかった.15時間トリプシン 処理 を行 った 切 片で は, 無細 胞 およ び有細胞セメント 質のいずれにおいてもセメン ト象牙境は TB染色に染まらなくなり 白い線状の隙間として認め られ,24時間処理するとセメ ント質と象牙質 は完 全に 剥離 し た, 15時間 トリ プシ ン処 理 した 切片 では セ メント象牙境はBSPに もOPNにも反 応を示さなくなり,白い 線状の隙間として観察された.いずれの切片でもセメント質と象牙質自体 の構造の変化や破壊は認 められなかった.

走査電顕による観察

  トリプシン処理してい なぃ無細胞および有細胞セメント質のいずれにおいても,セメント象牙境 は周囲組織よりもやや滑 沢にみえるものの形態的特 殊性はほとんど認められなか った,しかし,

トリプシン処理で線維問 基質が除去されると,セメント象牙境はセメント質と象牙質の線維同士の 交織は少なく,線維に乏 しい溝として現れた.セメ ント質と象牙質自体の構造の 変化は認められ なかった.

【考察】

  Yamamotoら は ,ヒ ト歯 のセ メ ント 象牙 境を 組織 学 的, およ ぴPAS染色とTB染色に より組織化 学的 に観 察し , セメ ント 象牙 境 に含 まれ る酸 性多 糖 体はPGsに結合しでいるGAGsで あり.セメ ント 象牙 境で のセメント質 と象牙質の接着は線維同士の 交織ではなくPGsが接着因子 として関わ ると 報告 した .本研究結果 はこの所見を概ね支持するも のであるが, PGsが接着因 子として関 わる と いう 部 分は 再検 討す る 必要 があ るこ とを 示 した .な ぜならPAS染色とTB染 色はGAGsに 特異 的で はな く ,酸 性GPsに も反 応す るか ら であ る. そこ で 本研究では数種のGAGs,および酸 性GPsで あ るBSPとOPNを 検 索 し た , 結 果 , セ メ ン ト 象 牙 境 は い ず れ のGAGsに も反 応 せず , 少なくともこれらと結合 したPGsは含んでいなぃこと が示唆された,PGsはコラー ゲン線維の石灰 化に重要であるが,石灰 化の途中で大部分が分解・ 消失すると考えられている, ラット無細胞セ メント質形成でも,GAGsは形成直後のセメント質表 面に存在するが,その後消失 することが確認 されている.ゆえに,ヒトセメント質でもPGsは石灰化過程で分解され,セメント象牙境にもセメン ト質にも残らなくなると 思われる.

  一 方,BSPとOPNに 対し てセ メ ント 象牙境は強い反応 を示した,この反応はトリプ シン処理で 消失し,さらに長時間の 処理でセメント質と象牙質 は剥離した.トリプシンは強 カな蛋白分解酵 素であり,線維間基質は 消化するもののコラーゲン線維はほとんど消化しなぃ.このことは,セメ ン ト 象 牙 境 の 接 着 に 関与 する 酸性 多糖 体 を合 む基 質はPGsでは なくBSPとOPNで ある こ とを 示 唆している. BSPとOPNは基質同士を接着させる働き があり,吸収された骨と新生骨との界面(セ メントライン)や,シャ ーピー線維を含む歯槽骨と含まなぃ歯槽骨との界面にも集積することが明 らかにされている.これ らのこともBSPとOPNがセメ ント質と象牙質の接着に関与 することを支持 している.

【結論】

1.無細胞セメント質と 有細胞セメント質の両方で, セメント象牙境は線維に乏しく,酸性多糖体   に富む幅2―3umの層と して観察された.

2. セ メ ン ト 象 牙 境 は 抗BSPお よ び 抗OPN抗 体 に 反 応 を 示 し た が , 抗GAGs抗体 には 全 く反 応   を示さなかった.

3.トリプシン処理する とセメント象牙境は抗BSPお よぴ抗OPN抗体に対する反応を示さなくなり,

  さらに長時間処理する と象牙質とセメント質は剥 離した.

これらの観察所見 から,セメント質と象牙質 の接着にはセメント象牙境に 高密度に集積するBSP とOPNが 接着 因 子と して 関与 する こ とが 示唆 され た .

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(3)

学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授 教 授 教 授 助 教 授

川浪 脇田 吉田 山本

学 位 論 文 題 名

雅 光     稔 重 光 恒 之

セメ ント象牙 境の構造 と機能 に関する 組織学的および      免疫組織 化学的研 究

  審 査は 主査、 副査全員が一同に会して口頭 で行った。はじめに申請者 に対し本論文の要旨の説明を 求 めたところ、以下の内容について論述した。

  ラットのセメント象牙境の組織学的研究において、セメント象牙境は線維に乏しくヘマトキシリンに濃染し、

トルイジンブルー染色とPAS染色に反応を示す、幅1−2pmの層として観察されると報 告されている。最近 の 免 疫 組 織 化 学 的 研 究 で は 、 こ の 層の 主 要基 質は 酸性 糖 蛋白 質( 酸性GPs)で ある 骨 シア ロ蛋 白質 (BSP)とオステオポンチン(OPN)であり、さらに両者はセ メント質と象牙質の接着に密接に関与しているこ とを示唆している。一方、ヒトのセメント象牙境の構造と機能についての報告は少なく、不明確な部分も多 いが、以下のニつの所見に大別できる。すなわち、1)ラット同様、セメント象牙境は線維に乏しくプロテオ グリカン(PGs)に富み、PGsがセメント質と象牙質の接着に関与する、2)セメント質と象牙質の界面には特 殊な介在層は存在せず、両 者の線維同士が絡み合うことによルセメント質と象牙質は固く接着する。1)は 光顕 、走 査電 顕の 所 見だ が、PGsの存 在に つい て は古 典的 組織 化 学染 色の 観察 のみ で、集積する基 質 がPGsであるか否かは不確実 である。2)は透過電顕によ る所見をもとにしており、限られた領域のみでの 観察であるおそれがある。よって、本研究はヒト永久歯のセメント象牙境を光顕と走査電顕を使って、組織 学的及ぴ免疫組織化学的に 広範囲にわたり検索し、セメ ント象牙境の構造と機能を解明することを目的と した。

実 験 に は ヒ ト 下 顎 第 一 大 臼 歯20本 、下 顎 小臼 歯10本を 使 用し た。 まず 歯を5%EDTAで 脱灰 後、 通法 通ルパラフィン包埋し、近遠心方向に厚さ5ハmの連続切片を作成した。切片にはH―E、トルイジンブルー、

PAS、細網鍍銀染色を施した 。さらにBSP、OPN、およびPGsを検出するために数種のグリコサミノグリカン (GAGs)、すなわちコンドロ イチン4硫酸、デルマタン硫 酸、コンドロイチン、コンドロイチン6硫酸、およ びケラタン硫酸の検出を試 みた。一部の切片には1%ト リプシンを含むりン酸緩衝液で37℃、12〜 24時間 処理 し、 卜ルイ ジンブルー染色あるいは免疫 染色(BSPとOPN)を施した。 走査電顕による観察では、歯 を ダイ ヤモ ンドデ ィスクで近遠心方向に半切し 、切削面を砥石で研磨した 後、5%EDTAで脱灰した。一部 の

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(4)

試料は光顕で使用したトリプシン溶液にて37℃、72時間処理した。ついでトリプシン処理したもの、無処理 のもの両方に通法通り導電染色を施し、脱水、乾燥、蒸着して検鏡した。

無細胞および有細胞セメント質の両方で、セメント象牙境は周囲セメント質よりもへマトキシリンに濃染し、

ト ルイジ ンブル ー、PAS染 色に反 応を示す幅2―3umの層として観察された。鍍銀染色ではセメント象牙境 は ほとん ど染ま らず、 線維に 乏しいこ とが示 された 。免疫染色ではセメント象牙境はBSPとOPNに強い反 応を示したが、GAGsには全く反応を示さなかった。15時間トリプシン処理を行った切片では、セメント象牙 境はトルイジンブルー染色に染まらなくなり白い線状の隙間として認められ、24時間処理するとセメント質 と 象牙質 は完全 に剥離 した。 また、免疫染色では15時間トリプシン処理した切片のセメント象牙境はBSP にもOPNにも反応を示さなくなり、白い線状の隙間として観察された。電顕による観察では、トリプシン処 理していなぃセメント象牙境は形態的特殊性がほとんど認められなかった。しかし、トリプシン処理し線維 間 基質が 除去さ れると 、セメ ント象牙 境はセ メント 質と象牙質の線維同士の交織は少なく、線維に乏し い溝として現れた。以上より、

1)無細胞セメント質と有細胞セメント質で、セメント象牙境は線維に乏しく、酸性多糖体に富む幅2ー3ロm   の層として観察された。

2) セメン ト象牙 境は抗BSP、抗OPN抗 体に反 応を示 したが 、抗GAGs抗 体には 全く反応を示さなかった。

3)トリプシン処理するとセメント象牙境は抗BSP、抗OPN抗体に反応を示さなくなり、さらに長時間処理す   ると象牙質とセメン卜質は剥離した。

こ れらの 観察所 見から 、セメ ント質と 象牙質 の接着 にはセメント象牙境に高密度に集積するBSPとOPNが 接着因子として関与することが示唆された。

引き続 き審査 担当者 と申請 者の聞 で、論 文内容 及び関 連事項に ついて 質疑応 答がなされた。主な質問 事項と して、

  1)GAGsに 対する 抗体を3種類に 限定し た理由 につい て 2)ト リプシン 処理が コラー ゲン線 維に及 ばす影 響につ いて 3)臨 界点乾燥 が標本 に及ば す影響 につい て

4) 有 細 胞 セ メ ン ト 質 と 無 細 胞 セ メ ン ト 質 を ど の よ う に し て 厳 密 に 区 別 し た か つ い て 5)今 後の展望 につい て

などで あった 。

これら の質問 に対し 、申請 者は適 切な説明によって回答し、本研究の内容を中心とした専門分野ついて 十分な 理解と学識を有していることが確認された。本研究はヒ卜のセメント質と象牙質の接着にはBSPと OPNを含 む基質 が接着 因子とし て関与 するこ とを示 し、今 後の臨床研究へもっながる重要な指針を与え たこと が評価 された 。

以上の ことか ら本研 究の内 容は、 歯科医 学の発 展に十 分貢献す るもの であり 、審査担当者全員は、学 位申請 者が博 士(歯 学)の 学位を 授与す るのに 値する ものと言 忍めた 。

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