• 検索結果がありません。

超低周波電磁界に関する環境保健クライテリア(世界保健機関)〔和訳〕

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "超低周波電磁界に関する環境保健クライテリア(世界保健機関)〔和訳〕"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

369

付録: 小児白血病の定量的リスク評価

磁界と小児白血病の間に因果関係は立証されていないが、異なるシナリオ下の政策分析にお いて潜在的に有用な参考情報を提供するために、因果関係があるものと想定して、考えられる 公衆衛生上のインパクトを以下に提示する(Kheifets、Afifi および Shimkhada、2006)。 ある要因へのばく露による公衆衛生上のインパクトは、寄与割合の計算に基づいて評価する ことができる。立証されているばく露と疾病の関係に基づく寄与割合は、因果関係があると想 定しているばく露が原因で起こる疾病の症例負荷の割合である。寄与割合は、集団があるばく 露分布を持っているときに起こる症例数と、その分布が変わった場合(例えば、ばく露が低減 した、あるいは介入によってなくなった場合)に同じ集団に起こるであろう症例数の差に基づ いている。この計算においては、集団のその他すべての特性が同じままであると想定されてい る。故に、寄与割合は、ばく露が低減したときにどれくらい発生率が低減するか、その程度を 評価するために用いることができる。疫学的文献では、0.3μT(算術平均)と 0.4μT(幾何学的 平均)を超える ELF 磁界ばく露レベルにおいて、小児白血病リスクが一貫して増加している。 そのために、これらの比較的高いレベルのばく露に対する寄与割合を評価することで、ばく露 と白血病発生率との間に因果関係があると想定すれば、これらレベル以上のばく露を除く、あ るいは低減させた場合の疾病の発生率へのインパクトを評価することができる。 寄与割合を粗く評価するために必要な 2 つの基本情報がある。それは、(1)疾病へのばく露効 果の評価と、(2)集団におけるばく露の存在率(prevalence)、である。 A.1 ばく露分布 生物学的に活性の高い因子、物理因子、生物学的因子、化学因子へのばく露によるリスクを 評価する際には、一般集団におけるばく露の分布と程度を理解することが重要である。ELF 磁 界のばく露による小児白血病リスクが、もしあるならば、それを効果的に定量化するためには、 子供のばく露の程度が評価されなければならない。2 章に記述したとおり、これらのばく露は、 電力供給のための周波数や電圧など多くの要因によって、国ごとに異なる。 ばく露分布を知り得るのに 2 つのタイプの研究がある。(1)子供のばく露の存在率(P0)を評 価するためのばく露調査と、(2)P0と P1の評価を提供するための症例対照研究からの症例シリ ーズである。ここで、P1は、小児白血病になった子供のばく露の存在率である。これらの情報 源をそれぞれ活用することには利点がある。症例対照研究は、最も関連するばく露の尺度を提 供しているが、例えば、集団に制限がある(例えば、電力線からある範囲に居住している)場 合、症例のばく露の存在率と集団のばく露の存在率(P1)に差が生じて、偏っているかもしれ ない。これにより、ばく露に関して制約のある研究からは、症例と対照のばく露の存在率は役 に立たないことになる。たとえ、症例に代表性があったとしても、マッチングが行われ、マッ チングファクターがばく露に関連しているならば、対照はそうはならない。その場合、研究か

(2)

らの P0 の評価は、P1 に向けて上方に偏るだろう。幸いに、最も共通なマッチングファクター は、子供の年齢と性別であり、これらは、研究のばく露にほとんど独立であるらしい(Greenland、 2001;2005)。一方、ばく露調査は、子供と大人の両方を含んでおり、一日中個人測定を行って おり、唯一子供部屋のばく露に関連している。少なくとも、これらの情報源を活用することで、 関連するばく露の範囲と、その後の寄与割合と検討のための数の範囲を知ることができる。 逆に、症例対照研究では、症例のばく露分布が用いられる。各プール分析に含まれる症例対 照研究については、プール分析で報告されているばく露分布が用いられた。どちらのプール分 析にも含まれていない研究に対しては、ばく露分布は、研究から直接抽出された(用いられた ばく露分布の詳細については表 A.1 と A.2 を参照のこと)。ばく露調査と症例対照研究に基づく ばく露分布に有意な差は無いと想定されている。更に、個人測定を用いて得られたばく露は、 測定時間の長さに関係なく、家屋内の据え置きの測定で得られたものと同等であると想定され ている。 全体的に、先進国からのばく露に関して不釣合いな情報が多くある。これらの国のうち、主 要な研究は米国で実施されてきた。また、僅かではあるが、欧州でも実施されている。アフリ カやラテンアメリカといった、ばく露に関して代表的な情報のない地域が多くある。更に、地 域内でばく露分布に実質的な違いがありえる。例えば、韓国のばく露は、中国やインドとはか なり異なる。これによって、全体的な寄与割合やその数の全体的な評価が困難になる。それは、 これらがばく露分布にかなり依存するために、世界中のばく露レベルに関するデータが多く必 要になるからである。 A.2 電磁界と小児白血病に対する寄与割合評価を用いたばく露反応解析 共変数の調整の必要がない場合、(1)疾病に関するばく露効果と、(2)集団のばく露の存在率と の推定値は単純に、調整されていない(粗い)寄与割合式(Levin、1953)に代入される: AFp = P0(RR-1)/[P0(RR-1)+1] ここで、AFpは、寄与割合の推定値で、RR は、リスク比の推定値である。もし交絡があるな らば、RR も P0 も調整されるべきである(Rothman および Greenland, 1998)が、実際、RR の 調整された推定値だけが通常、利用可能である。ELF EMF と小児白血病の関連性についてこの 計算をするために、白血病は稀な病気であることから、リスク比を推定するためにオッズ比が 想定される。また、「リスク比は対象集団における影響を推定する」、「バイアスはない」、「研究 集団から対象集団に移動する効果の推定に変化はない」と想定されている(Greenland、2004)。 バイアスや、ランダム誤差を超える他の原因からの不確かさを導入して分析を行うことは、か なり示唆に富んだものになるが、洗練されたテクニックを必要とする。 寄与数は、ばく露に起因する症例の過剰数として定義される。例えば、高ばく露に関する寄

(3)

371 与数は、これらのばく露が排除されれば、避けられたであろう症例数と解釈することができる。 寄与数は、寄与割合に症例の総数を乗じることで計算される。 AN = AFp×m1 ここで、AN は寄与数で、m1 は症例数である。 オッズ比が調整された症例対照研究では、次式は、Levin によって与えられた式よりもバイ アスが小さくなる。 AFp = P1(RRa-1)/RRa ここで、RRaは、調整された率比の推定値(オッズ比)で、P1は、対象集団における症例の ばく露の存在率である(Rothman および Greenland、1998)。この式は、P1を調整する必要がな く、対照を症例にマッチングすることによって影響を受けないという利点を有している。更に、 ばく露が調整因子に独立である(マッチしない、あるいは年齢と性別だけにマッチする研究に おいてはおよそ真実であるらしい)と想定することで、(稀な疾病の)式を通じて、P1 と RRa から P0 を推定することができる。 P0 / (1-P0) = P1 / (1-P1)RRa また、Greenland 等(2001)が 11 の研究に対して実施したように、連続のばく露データを用 いて計算することができるかもしれない。そのようなデータは、この解析で用いられたすべて の情報源から利用可能ではないために、ここではそのようにできない。Greenland 等(2001)の 結果は、連続ばく露からの結果はカテゴリー分けした結果とほとんど変わらないことを示して いる。 2 つのプール分析からのばく露量反応関数が RR を推定するために用いられた。2 つのプール 分析における違いの一つは、用いられたばく露の尺度(メトリック)である。Ahlbom 等(2000) は、9 つの疫学研究における幾何学的な平均磁界レベルと小児白血病との関連性に着目した。 しかしながら、Greenland 等(2000)は、12 の研究のこの関連性を検証するために、算術平均 を用いた。Greenland(2005)はこの分析を拡張して、0.3μT で二分する方法を用いて 14 の研究 を含めるようにした。これらプール分析の別の違いは、ばく露を分類するために用いられたカ テゴリーに関連している。Ahlbom 等(2000)が用いたのは、<0.1μT、0.1~<0.2μT、0.2~<0.4μT、 0.4μT 以上の 4 つのカテゴリーである。逆に、Greenland 等(2000)は、0.1μT 以下、>0.1μT~ 0.2μT 以下、>0.2μT~0.3μT 以下、>0.3μT の 4 つのカテゴリーを用いた。データセットやばく露 カテゴリーの選択に対する寄与割合の感度を扱うために、RR を求めるためのこれら 2 つの方 法に関連して、2 つのセットの寄与割合が提示された。

(4)

Ahlbom 等(2000)によるプール分析では、平均居住磁界ばく露に対する小児白血病リスク は 0.1μT 未満のばく露に比して、0.1~0.2μT に対して OR=1.08(95%CI=0.89~1.31)、0.2~0.4μT に対して OR=1.11(0.89~1.47)、0.4μT 以上に対して OR=2.00(1.27~3.13)であった。Greenland ら(2000)によるプール分析では、0.1μT 未満の場合と比較して、0.1~0.2μT に対して OR=1.01 (0.84~1.21)、0.2~0.3μT に対して OR=1.06(0.78~1.44)、0.3μT 以上に対して OR=1.68(1.24 ~2.31)であった(点推定値と信頼区間の双方とも、2 つの研究を足し合わせても実質的に変 わらないままであった)。ランダム誤差に加えて、すべてのバイアスのもとを組み込んだ場合、 最終的な推定値は、OR=2.7(0.99~32.5)になった(Greenland、2005)。(注:この推定値は、 更なる不確かさを寄与割合計算に組み込むために、後で用いられたものである) A.3 リスクの総合判定

寄与割合(AF)がばく露分布をもつすべての国に対して推定された(図 A.1 と A.2 参照)。 多重の分布がある米国とドイツについては、最大の症例対照研究と最大のばく露調査が図 A.1 で用いられた AF の計算に使用された。高ばく露群とばく露全体が比較できるように、AF 推定 値は、異なるばく露カテゴリーに分割された。 小児白血病の寄与数(AN)が世界中の地域に対して計算され、地球全体的な推定値を得るた めに加算された。これらの地域の推定値を計算するために、当該地域の国から表 A.1 と A.2 で 推定された最低と最高のばく露レベルが用いられた。その地域の国からの情報がない場合は、 表 A.1 と A.2 からの最低と最高のばく露の存在率が用いられた。算術平均が 0.3μT を超えるば く露の存在率の範囲は、0.47%と 10.49%であった(表 A.1)。幾何平均が 0.4μT になるのは、0.37% と 4.78%であった(表 A.2)。サンプル数が大きく、西洋ではない地域の代表として見なされる Yang の研究(Yang、Ju および Myung、2004)は、未知のレベルの領域(ラテンアメリカ、ア フリカ、オセアニア)に対する上限範囲を計算するために用いられた。これらの低い推定値と 高い推定値が各々合わされ、世界全体の範囲が生み出されることとなった(図 A.3 と A.4)。

(5)

373

図 A.1 特定国のばく露分布を用いた算術平均ばく露に基づく寄与割合に対する点推定値、ならびに上限値および下 限値と、Greenland 等(2000)によるプール分析からの影響の推定値(日本:Kabuto 等、2006;韓国:Yang、Ju および Myung、2004;ベルギー:Decat、Van den Heuvel および Mulpas、2005;ドイツ(1):Brix 等、2001;ドイツ(2):Schuz 等、2001;英国:UKCCSI、1999;カナダ:McBride 等、1999;米国(1):Zaffanella および Kalton、1998;米国(2):Linet 等、1997)

図 A.2 特定国のばく露分布を用いた幾何平均ばく露に基づく寄与割合に対する点推定値、ならびに上限値および下 限値と、Ahlbom ら(2000)によるプール分析からの影響の推定値(ベルギー:Decat、Van den Heuvel および Mulpas、 2005;ドイツ:Michaelis 等、1998;英国:UKCCSI、1999;カナダ:McBride 等、1999;米国(1):Zaffanella および Kalton、1998;米国(2):Linet 等、1997)

(6)

図 A.3 0.3μT を超える電磁界の算術平均ばく露に起因する 14 歳以下の小児白血病の、全世界および各地域の症例 数の推定値とその幅(および相当する信頼区間)。地域の幅は、その地域の国の最低ばく露レベルと最高ばく露レベル に基づいている。地域のどの国からも情報がない場合は、全体の最低ばく露レベルと最高ばく露レベルが用いられた。 図 A.4 0.4μT 以上の電磁界の幾何平均ばく露に起因する 14 歳以下の小児白血病の、全世界および各地域の症例 数の推定値とその幅(および相当する信頼区間)。地域の幅は、その地域の国の最低ばく露レベルと最高ばく露レベル に基づいている。地域のどの国からも情報がない場合は、全体の最低ばく露レベルと最高ばく露レベルが用いられた。

(7)

375 表 A1 症例対照研究の症例のばく露あるいはばく露調査のすべての応答者に基づく算術平均のばく露分布 研究 研究タイプ 測定 磁界カテゴリー(μT) 0.1 >0.1~≦0.2 >0.2~≦0.3 >0.3

ベルギー Decat、Van den Heuvel および Mulpas、2005 ばく露調査 24 時間個人測定 81.9% 11.5% 1.6% 5.1% 251 カナダ McBride 等、1999 a 症例対照 48 時間個人測定 58.59% 25.93% 10.77% 4.71% 297 ドイツ Michelis 等、1998 a Brix 等、2001 Schuz 等、2001 b 症例対照 ばく露調査 症例対照 24 時間寝室 24 時間個人測定 24 時間寝室 85.23% 73.6% 91.83% 9.66% 17.8% 6.42% 1.70% 4.1% 0.97% 3.14% 4.5% 0.78% 176 1,952 514 日本 Kabuto 等、2006 b 症例対照 7 日家屋内 88.46% 5.77% 3.85% 1.92% 312 韓国 Tang、Ju および Myung、2004 ばく露調査 24 時間個人測定 64.0% 24.2% 4.0% 7.8% 409 英国 UKCCSI、1999 b 症例対照 48 時間家屋内 92.73% 5.31% 1.49% 0.47% 1,073 米国 London 等、1991 a Linet 等、1997 a Zaffanella および Kalton、1998 Zaffanella、1993 症例対照 症例対照 ばく露調査 ばく露調査 24 時間寝室 24 時間寝室 24 時間個人測定 24 時間家屋内 67.90% 63.17% 64.2% 72.3% 18.52% 23.82% 21.1% 17.5% 3.09% 6.43% 7.8% 5.6% 10.49% 6.58% 6.6% 4.6% 162 638 995 987 a Greenland 等(2000)によって報告されているプール分析の分布に基づく b ばく露カテゴリー:<0.1,0.1~<0.2,0.2~<0.4,≧0.4μT

(8)

376 表 A2 症例対照研究の症例のばく露あるいはばく露調査のすべての応答者に基づく幾何平均のばく露分布 研究 研究タイプ 測定 磁界カテゴリ(μT) 0.1 0.1~<0.2 0.2~<0.4 ≧0.4

ベルギー Decat, Van den Heuvel お よ び

Mulpas、2005 ばく露調査 24 時間個人測定 91.9% 4.1% 2.8% 1.2% 251 カナダ McBride ら、1999 a 症例対照 48 時間個人測定 63.97% 20.59% 10.66% 4.78% 272 ドイツ Michelis 等、1998 a 症例対照 24 時間寝室 89.14% 6.86% 2.86% 1.14% 175 英国 UKCCSI、1999 a 症例対照 48 時間家屋内 94.87% 3.54% 1.21% 0.37% 1,073 米国 Zaffanella および Kalton、1998 Linet 等、1997 a ばく露調査 症例対照 24 時間個人測定 24 時間寝室 72.6% 70.25% 17.6% 18.66% 7.5% 8.24% 2.3% 2.86% 995 595 a Ahlbom 等(2000)によって報告されているプール分析の分布に基づく

(9)

377 表 A3 ばく露の 50%を低減させる仮説シナリオに対する米国の寄与割合(AF)と寄与数(AN)の点推定値、低推定値、高推定値 算術平均 以下を超えるばく露: 0.1μT 0.2μT 0.3μT ばく露に起因する全症例数の割合(AF) 現在のばく露分布a 仮説の分布b:すべてのばく露が 50%低減 ばく露に起因する全症例数(AN) 現在のばく露分布 仮説の分布:すべてのばく露が 50%低減 ばく露低減によって回避される症例数 5.41%(-3.78%,16.48%) 1.27%(-2.02%,5.29%) 138(-97,421) 32(-52,135) 105(-45,286) 5.18%(-0.05%,11.96%) 1.16%(-0.21%,3.02%) 133(-1,306) 30(-5,77) 103(4,228) 4.73%(1.65%,8.73%) 1.01%(0.34%,1.93%) 121(42,223) 26(9,49) 95(33,174) 幾何平均 以下を超えるばく露: 0.1μT 0.2μT 0.4μT ばく露に起因する全症例数の割合(AF) 現在のばく露分布a 仮説の分布b :すべてのばく露が 50%低減 ばく露に起因する全症例数(AN) 現在のばく露分布 仮説の分布:すべてのばく露が 50%低減 ばく露低減によって回避される症例数 3.95%(-2.83%,12.30%) 0.94%(-0.99%,3.32%) 101(-72,315) 24(-25,85) 77(-47,230) 2.46%(-0.71%,6.77%) 0.37%(-0.20%,1.17%) 63(-18,173) 10(-5,30) 53(-13,143) 1.67%(-0.46%,3.49%) 0.20%(-0.05%,0.42%) 43(12,89) 5(1,6) 38(10,83) a Zaffanella および Kalton(1998)に基づいて計算された対数正規分布 b Zaffanella および Kalton(1998)に基づいて計算された対数正規分布(すべてのばく露を 50%低減させた場合

(10)

集団のばく露分布が 50%低減したとする仮説シナリオの影響を推定するために、この変更を 反映するために新しいばく露分布が計算された。ばく露分布のシフトを計算するためには、分 布の平均と標準誤差を知る必要があった。この情報は、1998 年の米国 EMF RAPID 研究だけし か利用可能ではなかった(Zaffanella および Kalton、1998)。ゆえに、米国の 50%ばく露を低減 する前と後で、算術平均と幾何平均のばく露分布に対して、0.1μT、0.2μT、0.3μT、0.4μT を超 えるばく露に対して AF と AN の推定値が計算された(表 A.3 参照)。AN の違いは、50%のば く露低減によって避けられる症例数を反映したものである。 AF の従来の計算は、ランダム誤差以外のいかなる不確かさも反映していないし、また、考 えられるバイアスの影響に関して変則的な判断もない。政策分析に追加の参考情報を提供する ために、研究のバイアスに関する不確かとばく露分布に関する不確かさを考慮して、(AF によ って測定されている)高い居住磁界ばく露の影響に関して伝統的なベイズ解析も提供されてい る。これらのベイズ解析は、居住磁界ばく露の公衆衛生上のインパクトは限定的であることを 支持している。しかし、利用可能なデータに照らして、公衆衛生上のインパクトの可能性がな いままでもあるし、大きなインパクトの可能性があるままでもある(Greenland および Kheifets、 2006)。2 つの解析の違いは、両方の方向性において変動するが、全体的には、ベイズ解析の結 果は、従来の結果を過剰に楽観的なものに見せているし、過剰に信頼度を高く見せている。

(11)

379 表 A4 磁界と小児白血病に関する 15 の症例対照研究と 4 つの磁界調査研究における 0.3μT 未満に比した 0.3μT を超えるばく露に起因する白血病症例割合(AF%)に対する従来の推定値(95%信頼限界)とベイズ(事後)のパーセ ンタイルa 参考文献 集団 AF%(95%信頼限界) 従来 ベイズ(事後) 症例対照研究: Coghill、Steward および Philips、1996 Dockerty 等、1998 Feychting および Ahlbom、1993 Kabuto 等、2006 Linet 等、1997 London 等、1991 McBride 等、1999 Michaelis 等、1998 Olsen、Nielsen および Schulgen、1993 Saviz 等、1988 Schuz 等、2001 Tomenius、1986 Tynes および Haldorsen、1997 UKCCSI、1999 Verkasalo 等、1993 英国 ニュージーランド スウェーデン 日本 米国 米国 カナダ ドイツ デンマーク 米国 ドイツb スウェーデン ノルウェー 英国b フィンランド 0.5(0.2, 0.7) 0.9(0.5, 1.3) 3.1(1.4, 5.2) 1.5(0.7, 2.3) 2.9(1.4, 4.2) 4.5(2.2, 6.5) 2.1(1.0, 3.1) 1.2(0.6, 1.8) 0.1(0.1, 0.2) 2.1(1.0, 3.5) 0.3(0.1, 0.5) 0.9(0.4, 1.4) 1.0(0.4, 1.6) 0.2(0.1, 0.3) 1.1(0.5, 1.9) 0.7(-0.4, 18) 0.9(-0.5, 20) 8.6(0.6, 44) 3.2(-1.0, 24) 3.5(-1.1, 20) 4.9(-1.2, 27) 3.1(-0.9, 23) 1.0(-0.5, 21) 0.6(0.0, 17) 4.7(-1.0, 34) 0.7(-0.4, 17) 0.7(-0.5, 18) 0.6(0.0, 15) 0.6(-0.4, 16) 0.8(0.0, 20) ばく露調査: Brix 等、2001

Decat、Van den Heuvel および Mulpas、 2005 Tang、Ju および Myung、2004 Zaffanella、1993 Zaffanella および Kalton、1998 ドイツ ベルギー 韓国 米国 米国 3.1(1.3, 5.5) 3.0(1.1, 6.5) 5.2(2.2, 9.6) 3.2(1.3, 5.9) 4.4(1.9, 8.0) 3.8(0.0, 36)c 3.8(0.0, 36)c 5.6(-1.1, 44)d 3.9(0.0, 36)c 4.5(-0.1, 38)c a Greenland および Kheifets、2006 から採用 b >4μT vs. 2μT 以下に対する AF(2~4μT を除く) c 北米のオッズ比モデル(直接測定、高い罹患率)を用いて調整。磁界と白血病のオッズ比は 2.9(CI:0.99~8.6) d Kabuto のオッズ比モデルを用いて調整(直接測定、高い罹患率)

図 A.2  特定国のばく露分布を用いた幾何平均ばく露に基づく寄与割合に対する点推定値、ならびに上限値および下 限値と、Ahlbom ら(2000)によるプール分析からの影響の推定値(ベルギー:Decat、Van den Heuvel および Mulpas、 2005;ドイツ:Michaelis 等、1998;英国:UKCCSI、1999;カナダ:McBride 等、1999;米国(1):Zaffanella および Kalton、1998;米国(2):Linet 等、1997)
図 A.3  0.3μT を超える電磁界の算術平均ばく露に起因する 14 歳以下の小児白血病の、全世界および各地域の症例 数の推定値とその幅(および相当する信頼区間)。地域の幅は、その地域の国の最低ばく露レベルと最高ばく露レベル に基づいている。地域のどの国からも情報がない場合は、全体の最低ばく露レベルと最高ばく露レベルが用いられた。  図 A.4  0.4μT 以上の電磁界の幾何平均ばく露に起因する 14 歳以下の小児白血病の、全世界および各地域の症例 数の推定値とその幅(および相当する信頼区間)。地域の

参照

関連したドキュメント

 肺臓は呼吸運動に関与する重要な臓器であるにも拘

前章 / 節からの流れで、計算可能な関数のもつ性質を抽象的に捉えることから始めよう。話を 単純にするために、以下では次のような型のプログラム を考える。 は部分関数 (

チューリング機械の原論文 [14]

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

ある周波数帯域を時間軸方向で複数に分割し,各時分割された周波数帯域をタイムスロット

口腔の持つ,種々の働き ( 機能)が障害された場 合,これらの働きがより健全に機能するよう手当

、肩 かた 深 ふかさ を掛け合わせて、ある定数で 割り、積石数を算出する近似計算法が 使われるようになりました。この定数は船

本論文での分析は、叙述関係の Subject であれば、 Predicate に対して分配される ことが可能というものである。そして o