症例1:脱分化脂肪肉腫内における myxoid tumor component について,
atypical lipomatous tumor or dedifferentiated component?
今田 浩生 山口 岳彦 飯田 俊 上田 善彦 獨協医科大学越谷病院 病理診断科
【症 例】 69 歳 男性
【主 訴】 腹部膨満(腹腔内腫瘤) 【現病歴】
13 年前に右陰嚢 atypical lipomatous tumor 切除術施行.その後は再発なく経過し,4 年 前に1 度終診. 2 年 前 に 腹 部 膨 満 を 主 訴 に 、 精 査 を し た と こ ろ 後 腹 膜 腫 瘤 を 認 め , 手 術 施 行 (dedifferentiated liposarcoma). 1 年前に後腹膜腫瘍が再発し,切除術施行.血管壁に強固に癒着しており完全切除が困難だ ったため,2 回に分けて切除 (2015 年 11 月,2016 年 2 月) を施行した. 【画像所見】 右腸腰筋に接する 41 mm 大の腫瘍で,CT では low density であり造影効果は見られない. 腫瘍は右総腸骨動脈を圧排し,変形を伴う. 【配布標本及び病理所見】(必要に応じて肉眼所見、免疫染色結果を含めてください) 直近( 2016 年 2 月)の手術検体.肉眼的に半透明な黄色調の腫瘤.組織学的には myxoid tumor component が主体をなす腫瘍で,辺縁には atypical lipomatous tumor が見られる. いずれも成分もMDM2, CDK4, p16 陽性,S100(±), αSMA, AE1/AE3, EMA 陰性. 【臨床経過】
術後現時点(4ヶ月経過)で明らかな再発所見を認めない.今後は化学療法 (Adriamycin, ifosfamide) を行う予定である.
【問題点】
Myxoid tumor component は atypical lipomatous tumor の一部としてよいか,それとも dedifferentiated component と考えるべきか.
症例2:前腕軟部腫瘍
伊藤 しげみ 宮城県立がんセンター 【症 例】 78 歳 男性 【主 訴】 左前腕腫瘤 【現病歴】 18 年前から左前腕腫瘤を自覚していた。最近 2 か月で明らかに増大しため近 医を受診し、MRI で不均一に造影される 80x55mm の腫瘤を指摘された。その後当院に紹 介となった。初診時、疼痛、痺れ、麻痺などは認められなかった。 【画像所見】 MRI: 左前腕遠位部手掌側、方形回内筋上に長径 8.5cm ほどの腫瘤を認めた。腫瘤は T1 強 調像で低信号(筋肉よりやや高信号)、T2 強調像で強い高信号で、ほぼ全体が強く造影さ れた。 CT: 左前腕遠位部の腫瘍は不均一濃染を呈した。主幹動・静脈の巻き込みは否定的と見ら れた。血管造影検査:左前腕遠位部腫瘍に一致するようにしてhypervascularity, tumor staining (部分的)を認めた。Malignant soft tissue tumor に一致する所見と考えられた。Vascular encasement, arteriovenous fistula は見られなかった。
【配布標本及び病理所見】前腕腫瘤の切除検体。
線維被膜により境界明瞭な血管由来の腫瘍。小型短紡錘形細胞が多数の小型血管を形成し ている。被膜直下の構造は hemangiopericytoma-like だが、中心部は細胞密度が低い。細 胞異型は軽度で核分裂像は殆ど観察されない。免疫組織化学では、CD31(+), CD34(-), SMA(-), EMA(-), S-100 protein(-), MIB-1 labeling index(4%)
症例3:脾腫を伴う多発性溶骨性病変を有する小児の 1 例
多田 広志1) 三又 義訓1) 土井田 稔1) 鈴木 正通2) 佐藤 孝2) 江原 茂3) 岩手医科大学整形外科学講座1) 同病理学講座 2) 同放射線医学講座 3) 【症 例】 11 歳 男児 【既往歴・家族歴】 本症状以外に特記すべき既往歴なし 妹が血小板無力症 両親は健康 【現病歴】 2 歳時に保育園で転倒した際に近医で脛骨に骨透亮像を指摘されたが、線維性骨異形成症の 疑いにて経過観察とされていた。3 歳時に右股関節痛、左膝関節痛を訴え、再度 X 線撮影 を行い、両側大腿骨にも骨透亮像を認めたため、当院へ紹介になった。左大腿骨骨幹部の 病変に対し、切開生検(掻爬)を施行した(標本1-1.2)が、病理所見上、診断がつかなか った。生検時の手術所見によると、骨皮質の開窓で active な出血あり、掻爬してようやく 止血されたとのことであった。その後、生検の2 週間後に左大腿骨骨折、4 歳時に左脛骨骨 折、5 歳時に左脛骨再骨折を生じた。非典型的ではあるものの、多発性の線維性骨異形成症 を疑って6 ヶ月毎にフォローアップを続けていた。10 歳時に右鎖骨骨折にて近医で保存治 療したとのことでX 線撮影したところ、肋骨や頸椎横突起にも病変を認めたため、全身 CT を撮影した。多発性溶骨性病変と脾腫を認めたため、再度診断目的に大腿骨頚部病変より 針生検を施行した(標本2)。さらに肋骨病変より切開生検を追加した(標本 3)。 【画像所見】 単純X 線像:大腿骨、脛骨に多発する溶骨性病変を認める。右肋骨に皮質の菲薄化と膨隆 を認める病変を認める。頭蓋骨に多発するpunched out lesion を認める。過去に骨折した 部位には溶骨性病変は残存しているが、alignment は正常。 CT:頭蓋骨、脊椎、肋骨、仙骨、腸骨、大腿骨に多発性溶骨性病変を認める。第 3 頸椎は 椎体高減少を認める。脾腫を呈し、脾臓内に多発性の低吸収域の病変を認める。 PET:病変に集積は認めない。 血液一般・生化学:特記すべき異常所見は認めない。 【提示標本】 ①3 歳時の大腿骨骨幹部からの掻爬した手術検体 ②11 歳時の大腿骨頚部からの針生検検体 ③11 歳時の肋骨からの掻爬した手術検体 【問題点】症例4:下顎病変
落合 隆永1、嶋田 勝光1、保坂 典子2、長谷川 博雅1 松本歯科大学 口腔病理学講座 1) 長野市民病院 病理診断科 2) 【症 例】 65 歳 女性 【現病歴】 20XX 年下顎左側智歯の歯冠を含む嚢胞様病変に対し生検および開窓術を施行した。開窓 術1 年後に病変の摘出術(配布標本)が施行された。既往歴や家族暦に特記事項なし。 【画像所見】 初診時 CT にて下顎左側第三大臼歯歯冠を含む周囲に一層の骨硬化帯をみる境界明瞭な 単房性のX線透過性病変を認めた(Fig. 1, 2)。近接する下顎左側第一大臼歯と第二大臼歯 は生活歯であった。 【配布標本及び病理所見】 病理組織学的には、異物反応を伴う比較的厚い線維性結合組織から構成される嚢胞壁内 に数層の重層上皮が裏装する不規則な嚢胞腔が認められた(Fig. 3)。嚢胞を裏装する上皮 組織は非角化重層扁平上皮で構成され、嚢胞腔内に有棘細胞様細胞が肥厚して突出し、上 皮プラークの形成をみた。肥厚上皮内には腺腔様構造や粘液細胞がみられた(Fig. 4)。嚢 胞壁の一部でhobnail 様の腔内に突出した粘液細胞で裏装された部分も観察された(Fig. 5)。 これら腺腔や粘液細胞はPAS 染色陽性であった(Fig. 11)。嚢胞壁を構成する結合組織内 の一部では扁平上皮の島状ないし塊状の増殖も認めた(Fig. 6)。また、骨様象牙質を思わ せる硬組織塊あるいは歯原性上皮で囲まれた石灰化物も散見された(Fig. 7-10)。 免疫染色では、嚢胞を裏装する上皮組織はCK19 が全層に陽性を示した(Fig. 12)。CK14 は裏装上皮の基底細胞と有棘細胞様細胞に陽性であった(Fig. 13)。CK7 は内腔側の細胞 と腺腔を構成する細胞および粘液細胞に陽性であった(Fig. 14)。 【問題点】 病理診断症例5:顎下腺腫瘍の一例
野口 映1) 小山 基弘1) 干川 晶弘1) 中島 久弥2) 高木 正之1) 聖マリアンナ医科大学 病理学1) 整形外科 2) 【症 例】 30 歳代 女性 【主 訴】 右顎下部腫瘤 【既往歴】 SLE、ループス腎炎・生体腎移植後、高血圧、脂質異常症、陳旧性肺結核、 多発軟部腫瘍(他院で背部:神経鞘腫。肘、頚部、臀部:multiple pericytic tumor と診断 されている) 【家族歴】 特記事項なし 【現病歴】 5 年程前より右顎下部腫脹を自覚され、その後、増大・縮小を繰り返していた。 他院で一度精査されるも、経過観察となっていた。1 ヶ月程前より再度増大してきたため当 院受診となった。 【画像所見】 CT では右顎下腺内に 30×15mm 大の病変を認めた。リンパ節腫脹はみられなかった。MRI では、T1WI で既存の顎下腺より低信号を示し、T2WI では被膜様構造を認め、内部に小低 信号領域を複数認めた。超音波では、境界明瞭な低エコー腫瘤として描出され、ドップラ ーで血流信号が豊富であった。 【病理所見】 肉眼的には、顎下腺内に境界明瞭で白色充実性を呈する腫瘍がみられた。組織学的には、 好酸性胞体を有する紡錘形細胞が分葉状に増生する像を示し、細胞密度が高い部分と低い 部分が見られた。細胞成分の乏しい領域では粘液基質の産生がみられ、細胞密度の高い領 域では、類円形細胞で、核分裂像が散見された。免疫組織学的には、腫瘍細胞はα-SMA、 caplonin、desmin、HHF-35 陽性で、MIB-1 陽性率は hot spot にて約 10 %であった。 【臨床経過】術後、局所の経過は良好であったが、約半年後、縦隔、肺に同様の腫瘍を認 め、切除を行った。【配布標本】顎下腺腫瘍切除検体(当日、他院での切除検体も供覧予定) 【問題点】 病理組織診断
症例6-1:下咽頭ポリープ状病変
福永 真治 彭 為霞* 内藤 善哉* 新百合ヶ丘総合病院 病理診断科、*日本医科大学 統御機構診断病理学 【症 例】 65 歳 男性 【主 訴】 咽頭違和感 【現病歴】 数か月前より咽頭違和感があり、しゃべりづらくなって耳鼻科を受診。下咽 頭にポリープがあり、徐々に増大するため咽頭腫瘤摘出術が施行された。 【配布標本及び病理所見】 肉眼像:45x25x25mm 大のポリープ状腫瘤 組織像:標本閲覧 【臨床経過】術後18 か月経過し、再発転移は見られず健在。 【問題点】 組織診断
症例6-2:左鼠径部腫瘤(第 47 回呈示症例の再検討)
福永 真治 新百合ヶ丘総合病院 病理診断科 【症 例】 77 歳 男性 【主 訴】 右鼡径部のしこり 【既往歴】 2008 年、S 状結腸癌手術. 経過は順調 【現病歴】 1 か月前に左鼠径部のしこりに気づく。腫瘤の摘出術が施行される。 左縫工筋の筋膜下に存在する約4cm 大の腫瘤で精索との関係はない。臨床的にはリンパ節 腫大ないし血腫が考えられた。 術後9 ヶ月経過し再発を認めない。 [病理所見】 肉眼像:40x25x20mm、境界明瞭な白黄色の充実性腫瘤、出血を伴う。 組織像:標本閲覧 【問題点】 組織診断
症例7:腎周囲嚢胞性腫瘍の 1 例
内橋 和芳1 松山 篤二1 柴 瑛介1 木村 芳三2 久岡 正典1 産業医科大学医学部 第1 病理学 1) 聖マリア病院 病理診断科 2) 【症 例】 67 歳 女性 【主 訴】 右側腹部腫瘤 【既往歴および家族歴】特記事項なし 【現病歴】手術の約 1 ヶ月前に腹部全体の膨満感および臥位時の右側腹部腫瘤を自覚し、 続いて頻尿も出現した。その後、近医を受診し、超音波検査にて右側腹部に嚢胞性病変を 認め、紹介となった。CT、MRI 検査の後、腫瘍摘出術が行われた。 【画像所見】 CT: 長径 20 cm の嚢胞性腫瘤を認める。腫瘤内部は水と同程度の均質な吸収値を呈してい る。右腎は内側頭側に圧排され偏位し、水腎症をきたしている。 MRI: 右腎外側に 21 x 13 x 14 cm の嚢胞性腫瘤が見られ、腫瘤はやや厚い被膜を有し、内 部はT1 軽度高信号、T2 高信号で薄い隔壁様構造を多数認める。造影にて、被膜は増強さ れるが、隔壁様構造に信号変化はない。【手術および肉眼所見】嚢胞内には、old bloody fluid が 1600 ml 貯留していた。嚢胞と連 続して横行結腸間膜に脂肪織様腫瘤を認め、同時に切除した。 【病理所見】嚢胞壁(標本①)は、リンパ球浸潤を伴う線維組織で構成され、被覆上皮は なくフィブリンが析出している。壁の外側では脂肪組織から連続性に異型間質細胞が増殖 している。脂肪芽細胞や多核細胞も含まれている。脂肪織様結節(標本②)では、線維組 織の増生、異型間質細胞を認める。 【臨床経過】残存病変に対し、右半結腸切除術+右腎摘出が行われた。腎周囲・腎洞脂肪 組織(標本③)、結腸の漿膜下脂肪組織(標本④)にも初回手術と同様の腫瘍細胞の浸潤が 認められた。術後2 ヶ月で、局所再発、転移の所見はない。 【問題点】 画像診断、病理組織診断
症例8:左耳下部のミキソイドな皮下腫瘍
多田 豊曠* 田口 佳広** 土田 孝*** 豊川市民病院*病理診断科, **形成外科, ***浜松医科大学病院病理部 【症 例】 76 歳 男性 【主 訴】 左耳の下の腫瘤 【既往歴】【家族歴】 格別の事項なし 【現病歴】 半年以上前に右耳下部の腫瘤に気づく。特に症状はない。 なお、耳珠に接して有毛性の小型皮膚腫瘍(母斑細胞性母斑)も存在。 【画像所見】異常なし 【配布標本及び病理所見】 肉眼的に境界明瞭であったが、摘出時に壁が部分的に破れ、腫瘍内のゼリー状物質が漏 出した。配布標本は右耳下部の腫瘤(3×2.5 ㎝)の短軸方向割面のHE染色標本。壁の破綻 部です。腫瘍底は皮下組織までで、深部への浸潤はなかった。 病理組織学的には、境界がやや不明瞭(特に真皮側で不明瞭)で、腫瘍は真皮深層から 皮下組織にかけて存在し、多分葉状のmyxoid spindle cell neoplasm です。豊富な粘液の 中に、多くの部分で紡錘形細胞が疎に分布します。核は細長の核が多いが、時に丸く、ま た多核細胞も見られる。若干の大小不同を見るが、特段の細胞異型を示さない。細胞質は 乏しい。少量だが細く好酸性の(あるいはやや太めの)膠原線維が見られる。ミキソイドな病 変内には明らかな脂肪細胞を認めない。 免疫染色:上記の紡錘形細胞等の“間質細胞”は CD34(+), S-100 蛋白(-), desmin(-)。 その他に、CD163(+)細胞や泡沫細胞も存在。分葉状の小葉を D2-40(+), Prox-1(+), CD31(+) の単層の細胞が縁取るlymphangiomatoid な所見が特に真皮に近い部分で認められる。 しかし、深部ではpseudovascular な space となる。 遺伝子的な検索は行われていない。 なお、標本の一端に色素細胞性母斑が存在するが、上記病変との関連はないと考える 【臨床経過】術後一カ月半時点では腫瘍の再発やその他の異常を認めない。 【問題点】病理組織学的診断症例9:左大腿軟部腫瘍の一例
武本 淳吉 山田 裕一 孝橋 賢一 小田 義直 九州大学大学院医学研究院形態機能病理学 【症 例】 74 歳 女性 【主 訴】 左大腿の腫瘤および疼痛 【既往歴】 脳挫傷、狭心症、高血圧 【現病歴】 受診 1 年前より左大腿内側に腫瘤を自覚していた。腫瘤の増大と動作時の疼 痛の増悪認めたため近医受診。MRI にて左大腿部軟部腫瘍を指摘され精査加療目的に当院 整形外科紹介となった。左大腿に4cm 大の弾性軟、可動性良好な腫瘤を認めた。軽度の圧 痛を伴うが、発赤や熱感はなし。切開生検施行するも確定診断は得られず、広範切除術が 施行された。 【画像所見】 左大腿部単純X 腺:明らかな異常所見なし。 左大腿部MRI:左大腿中間広筋内に T1 等信号、T2 不均一な高信号を呈する境界明瞭な腫 瘤性病変あり。Gd 造影で不均一に造影される。 【配布標本及び病理所見】 <生検標本> 病理所見:膠原線維性間質を背景に紡錘形細胞が束状、もしくは花筵状に増殖している。 一部粘液性基質もみられる。細胞異型や核分裂は目立たない。免疫染色:(陽性)alpha-SMA (focal), Calponin (focal), h-Caldesmon (focal), p16 (focal) (陰性)AE1/AE3, CAM5.2, EMA, Desmin, S-100, CDK4, MDM2
<切除標本> 肉眼所見:多結節性に増殖しており、粘液を豊富に含み、出血を思わせる黒色部分と白色 調の部分が混在している。 病理所見:卵円形から紡錘形の腫瘍細胞が網状に増殖し、一部で豊富な粘液性基質を伴っ ている。核異型や核分裂像は目立たない。生検標本の同様に、紡錘形細胞が束状に増殖し ている像も認められる。
免疫染色:(陽性)p40, h-Caldesmon, Calponin (focal), Synaptophysin (focal), BAF47 (陰性)alpha-SMA, Desmin, AE1/AE3, CAM5.2, EMA, CK14, S-100, CDK4, MDM2 【臨床経過】 術後、再発・転移なし。
症例10:鼠径部に発生した巨大軟部腫瘍の一例
山田 倫1) 元井 亨1) 平井 利英2) 加藤 生真1) 大隈 知威1) 五嶋 孝博2) がん・感染症センター都立駒込病院 病理科1) 同 骨軟部腫瘍科 2) 【症 例】 43 歳 男性 【主 訴】 腫瘤の自覚 【現病歴】 既往歴、家族歴に特記事項なし。2014 年 12 月に左鼠蹊部に腫瘤を自覚した ため近医を受診し、軟部腫瘍が疑われた。当初はゴルフボール大であったが、その後 増大し巨大な腫瘤を形成した。当院に転院し画像検査及び針生検にて悪性の粘液線維 性腫瘍が疑われ、2015 年 9 月より2術前化学療法(2 コース施行)後、広範切除が施 行された。 【画像所見】 術前 MRI では左鼠径部に塊状の皮下腫瘤を認めた。腫瘤は T1 強調画像で筋 肉より低信号、T2 強調画像で均一な高信号を示した。内部に T1、T2 強調画像で高信 号、脂肪抑制T2 画像で低信号の斑状領域が混在していた。またガドリニウム造影 T1 強調画像では増強効果が見られ、血流の豊富な腫瘤であった。以上より、脂肪成分を 含む粘液性腫瘍と考えられ、粘液型脂肪肉腫や粘液線維肉腫が鑑別に挙げられた。 【配布標本及び病理所見】 配布標本は広範切除時の腫瘍組織。針生検検体では成熟した脂肪組織を巻き込みなが ら豊富な粘液基質と少量の膠原線維を背景に小型で円形から紡錘形の腫瘍細胞が散在 していた。腫瘍細胞は卵円形から短紡錘形の軽度の大小不同のある核を有していた。 分裂像は乏しかった。血管増生は顕著ではなかった。 切除検体では18x12x10 ㎝大の皮下腫瘤であり、左精索を圧排していた。割面では周囲 に線維性被膜を有する腫瘤で、黄白色調の粘液状の領域を主体とし大小の黄色斑状部 分が散在性に認められたが壊死は伴っていなかった。また腫瘤には分葉構造は認めら れなかった。組織学的には生検時と同様の腫瘍細胞が増殖しているが部位により細胞 の粗密が見られた。核異型は軽度で概ね均一だが、核の不整や大小不同が一部に見ら れた。混在する脂肪細胞はいずれも成熟しており、異型性はなく、脂肪芽細胞も認め られなかった。免疫組織化学的には腫瘍細胞は AE1/AE3(-)、CAM5.2(-)、EMA(-)、 Desmin(+)、α-Smooth Muscle Actin(-)、Muscle Specific Actin (HHF35)(-)、S100 protein(-)、Synaptophysin(-)、CD34(+)、c-Kit(-)。MIB1 陽性率約 10%。【臨床経過】 現在まで術後の再発、転移はない。 【問題点】 病理診断