ミトコンドリア電子伝達系・
酸化的リン酸化(2)
平成24年5月21日
第2生化学(病態生化学分野)教授
本日の学習の目標
電子伝達系を阻害する薬物を理解する
脱共役タンパク質について理解する
ミトコンドリアにNADHを輸送するシャトルにつ
いて理解する
ATPの産生量について理解する
複合体I、III、IVを電子が移動するとプロトンが内膜の内側(マトリック
ス側)から外側へ移動する。マトリックスのプロトン濃度が低下し、膜
電位(内側がマイナス、外側がプラス)が生じる。
NADH NAD+ Complex I FADH2 Complex II コハク酸 フマル酸 CoQ 2e– Complex III Cyt c 2 H+ + 1/2 O 2 H2O Complex IV) 2e–
NADHから3ATP
コハク酸から2ATP
複合体1、3、4で各々プロトン
が4、2、4個くみ出されると考え
られる。
ATP1分子を産生するためには
およそ3個のプロトンが必要
4H+ 2H+ 4H+グルコース1mol当り何mol
のATPが合成されるか?
ク
エ
ン
酸
回
路
オ キ サ ロ 酢 酸 再 生クエン酸回路
フ マ ル 酸 リ ン ゴ 酸 F A D F A D H 2 N A D H N A D + C2 → 2 CO2 イ ソ ク エ ン 酸 2 -オ キ ソ グ ル タ ル 酸 N A D H N A D + CO2 A T P G T P ス ク シ ニ ル C o A コ ハ ク 酸 N A D H C O2 Co A -S H C o A -S H NAD+ C3 → C 2 + CO2⎧
⎨
⎩
2xNADH
2xNADH
2xNADH
2xNADH
2xFADH2
2ATP
オ キ サ ロ 酢 酸 ク エ ン 酸 ピルビン酸 N A D H ア セ チ ル C o A N A D + C o A - S H CO2 C o A - S H6ATP
6ATP
4ATP
6ATP
6ATP
合計30ATPの産生
解糖 Glycolysis
エムデン・マイヤーホフ経路 Embden-Meyerhof pathway
グルコース グルコース 6-リン酸 フルクトース 6-リン酸 1,6-ビスリン酸 フルクトース ジヒドロキシ アセトンリン酸 グリセルアルデヒド 3-リン酸 1,3-ビスホスホ グリセリン酸 3-ホスホ グリセリン酸 2-ホスホ グリセリン酸 ホスホエノール ピルビン酸 ピルビン酸 NAD NADHATP ADP ATP ADP
ATP ADP ATP ADP
細胞質
ミトコンドリア(クエン酸回路,酸化的リン酸化)
解糖系:2ATPの産生
NADHはミトコンドリア内膜を通
過できない。細胞質でつくられ
たNADHはどうなるのか?
NADHシャトル
NADHのミトコンドリアへの移入
・
リンゴ酸アスパラギン酸シャトル
・
グリセロールリン酸シャトル
筋肉や膵
β細胞で発達
肝臓や心臓で発達
アスパラギン酸アミノ基転移酵素 (ミトコンドリア)
リンゴ酸アスパラギン酸
シャトル
リンゴ酸/2-オキソ グルタル酸キャリアー グルタミン酸/アスパラ ギン酸キャリヤー リンゴ酸 N A D H リンゴ酸 オキサロ 酢酸 NAD+ A アスパラ ギン酸 グルタ ミン酸 B オキサロ 酢酸 NAD+ N A D H C αーケト グルタル酸 αーケト グルタル酸 アスパラ ギン酸 グルタ ミン酸 D 膜間空間 細胞質 マトリックス ミトコンドリア内膜 A リンゴ酸デヒドロゲナーゼ (細胞質) B アスパラギン酸アミノ基転移酵素 (細胞質) C D リンゴ酸デヒドロゲナーゼ (ミトコンドリア) O2 3 A D P 3 A T P 電子伝達系オキザロ酢酸
グルタミン酸
αーKG
アスパラギン酸
COO- NH3+-C-H CH2 COO- COO- NH3+-C-H CH2 COO- CH2 COO- C=O CH2 COO- COO- C=O CH2 COO- CH2+
+
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
(AST)
アスパラギン酸アミノ基転移酵素 (ミトコンドリア)
リンゴ酸アスパラギン酸
シャトル
リンゴ酸/2-オキソ グルタル酸キャリアー グルタミン酸/アスパラ ギン酸キャリヤー リンゴ酸 N A D H リンゴ酸 オキサロ 酢酸 NAD+ A アスパラ ギン酸 グルタ ミン酸 B オキサロ 酢酸 NAD+ N A D H C αーケト グルタル酸 αーケト グルタル酸 アスパラ ギン酸 グルタ ミン酸 D 膜間空間 細胞質 マトリックス ミトコンドリア内膜 A リンゴ酸デヒドロゲナーゼ (細胞質) B アスパラギン酸アミノ基転移酵素 (細胞質) C D リンゴ酸デヒドロゲナーゼ (ミトコンドリア) O2 3 A D P 3 A T P 電子伝達系グリセロールリン酸シャトル
細胞質 膜間空間 マトリックス ミトコンドリア内膜 2 ADP 2 ATPe-
O
2 電子伝達系 FADH2 FAD N A D H グリセロール 3-リン酸 ジヒドロキシ アセトンリン酸 NAD+ AB
B グリセロール3-リン酸 デヒドロゲナーゼ(内膜) A グリセロール3-リン酸 デヒドロゲナーゼ(細胞質)NADHが
リンゴ酸ーアスパラギン酸シャトル
でミトコンドリア
の中に入ったとすると2分子のNADHが解糖系で産生され
ているので2x3=
6分子のATP
が産生されることになる。
30ATP + 2ATP(解糖系) + 6ATP =
合計38ATP
アスパラギン酸・グルタミン酸膜輸送担体(シトリン)欠損症
NADHをミトコンドリアに運べない
白色脂肪細胞 褐色脂肪細胞
褐色脂肪細胞
は新生児にみとめられる。
白色脂肪細胞に比べて脂肪の蓄積は
少なく、ミトコンドリアが発達している。
熱の産生
に中心的な働きを行っている
と考えられる。
褐色脂肪細胞の熱発生(UCPによる脱共役)
β 酸 化 ク エ ン 酸 回 路 NADH, FADH2 2e- H + H + H + H + H + H + 熱 発 生 H+ H+ 1 / 2 O2 H2O A D P A T P Fo-F1 ATPase アシルCoA アシルCoA 脂肪酸 トリアシル グリセロール (脂肪) トリアシルグリセロール リパーゼ cAMP依存性 プロテインキナーゼ cAMP ATP アデニル酸シクラーゼ 活性化 ノルアドレナリン H+UCP-1
活性化 活性化 活性化UCP(uncoupling protein)
UCP-1(thermogenin):
褐色脂肪細胞
に特異的に発現
UCP-2:種々の臓器に広く発現が認められる
UCP-3:筋肉に主に認められる。
UCP-4, UCP-5:脳神経に認められる。
糖尿病マウスでは膵島におけるUCP2の発現 が増加しており、インスリン分泌を低下させる 筋肉にUCP3を過剰発現する マウスでは、体重が減少するシトクロムオキシダーゼ
シトクロムcから電子を受け取った複合体IVは内部で銅、ヘム
鉄と電子が移動し、最後に酸素にわたされる
Fig14-27
4個の電子で完全に還元されるはずだが、
実際には部分的な還元が起こり、酸素が
スーパーオキシド陰イオンラジカル(・O2-)
(
活性酸素
の一種)に変換してしまう。これ
は近傍の分子と反応して
細胞障害
をおこし
てしまう。
中間テストの実施について
5月28日(月)1時限目の講義時間内に、生化学2の中間試験
を行います。
出題範囲は5月22日「グリコーゲン代謝(1)」までの生化学2
(山縣)の講義分。
形式は○×形式で行います。
1. グリセロールリン酸シャトルは細胞質でできたNADHをFADH2として ミトコンドリアに運ぶ 「 」 2. リンゴ酸はミトコンドリア内膜を通過できる 「 」 3. CN(青酸)は複合体IVにおける電子伝達を阻害する 「 」 4. ジニトロフェノールにより酸化とリン酸化は脱共役される 「 」 5. UCP2は褐色脂肪に発現している 「 」 6. 褐色脂肪は熱の産生に重要な働きを担っている 「 」 7. 1分子のNADH2から2分子のATPが産生される 「 」 8. 酸素は4個の電子を受け取り、水に還元される 「 」 9. オリゴマイシンはATP合成酵素に作用する 「 」 10. すべての組織はリンゴ酸シャトルとグリセロールリン酸シャトルの両方を 使用することができる 「 」 理解の確認のために