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低栄養状態に陥っている大腿骨頸部骨折患者の歩行能力回復と栄養状態改善の関連性についての検討

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 172 43 巻第 2 号 172 ∼ 173 頁(2016 年) 理学療法学 第 43 巻第 2 号. 平成 26 年度研究助成報告書. 表 1 集計対象者と各群の属性. 低栄養状態に陥っている大 骨頸部骨折 患者の歩行能力回復と栄養状態改善の関 連性についての検討 岡本伸弘 1),増見 伸 1),水谷雅年 2),齋藤圭介 2),原田和宏 2) 1). 福岡和白リハビリテーション学院. 2). 吉備国際大学大学院保健科学研究科. 年齢(歳). 集計対象者. 栄養改善群. 栄養非改善群. (n=73). (n=39). (n=34). 87.1 ± 7.0. 86.4 ± 7.4. 87.9 ± 6.4. 性別(人)  男性. 14(20). 9(23). 5(14).  女性. 59(80). 30(77). 29(86). 身長(cm). 149.4 ± 8.3. 149.3 ± 8.1. 148.8 ± 8.3. 体重(kg). 36.9 ± 7.7. 38.8 ± 8.1. 40.5 ± 8.2. 入院時 Alb 値(g/dl). 2.9 ± 0.2. 2.9 ± 0.2. 2.9 ± 0.1. 入院時 FAC. 1(1 ‒ 1). 1(0.5 ‒ 1). 1(1 ‒ 1.75). 疾患内訳(人). キーワード:栄養状態,大 骨頸部骨折,歩行能力.  大. 骨頸部骨折. 35(47). 22(56). 13(38).  大. 骨転子部骨折. 38(53). 17(44). 21(62). 脳血管疾患の既往(人). はじめに.  有. 14(19). 9(23). 5(14).  大.  無. 59(81). 30(77). 29(86).  有. 26(35). 15(38). 11(32).  無. 47(65). 24(62). 23(68).  有. 51(69). 26(66). 26(76).  無. 22(31). 13(34). 9(24). 骨頸部骨折は受傷後に歩行能力が低下し,自立した生活. が送ることができず,要介護状態に陥ることが多い 1)。2025 年には年間 25 万人まで患者が増加する. 2). と推計されており,. 社会的に問題視されている疾患である。  大. 骨頸部骨折後における理学療法の第一義的な目標は,生. 活の基盤となる歩行が自立できるように支援することである。 大 骨頸部骨折後の歩行自立を阻害する要因は,下肢筋力 3)が ‒6). 弱いこと,バランス能力,栄養状態,受傷前歩行能力 4 ‒6). いこと,認知症 4. が低. や脳卒中の既往 5)7)を有していること,年. ‒6). 齢4. が高いことなどが挙げられる。そのなかでも栄養状態は,. 認知症(人). 受傷前歩行自立(人). 連続変数:平均値±標準偏差,カテゴリー変数:度数(割合) 離散変数:中央値(四分位範囲) Alb:Serum albumin FAC:Functional Ambulation Categories. 生理学的な側面から身体機能の回復に関与しており 8),理学療 法を行ううえで考慮すべき重要な要因であると考えられている。. 2.調査方法.  しかしながら,栄養状態については理学療法士が直接介入で.  データの収集は,後方視的に診療記録を基に担当理学療法士. きる領域ではないため,近年まで,理学療法に関する研究では,. が転記し行った。調査項目は,基本属性,医学的所見,受傷前. 栄養状態の視点を取り入れた研究はほとんど行われていなかっ. 環境,栄養状態,歩行能力とした。基本属性は性別,年齢,身. た。このような背景から,我々は回復期リハビリテーション病. 長,体重で構成した。医学的所見については,骨折型,脳血管. 棟(以下,回復期リハ病棟)に入院していた大. 疾患の既往の有無,大. 骨頸部骨折患. 骨頸部骨折の既往の有無,認知症の有. 者を対象とし,入院時における栄養状態と経時的な歩行能力に. 無で構成した。受傷前環境については,受傷前歩行自立の有無. ついて調査した。その結果,入院時における栄養状態と退院時. で構成した。栄養状態および歩行能力の測定に関しては以下に. の歩行能力に関連性があることを明らかにした. 9). 。一方,研究. 詳述する。. 課題として,入院期間中の栄養管理によって栄養状態は変化す. 1)栄養状態. るが,それによって歩行能力は影響を受けるのか明らかにする.  栄養状態については,回復期リハ病棟に入院時の血清アルブ. ことができていなかった。. ミン(以下,Alb 値)を指標とした。Alb 値は,身体の一時的.  そこで本研究は,大. な栄養状態を反映するだけでなく,生命予後にも影響する. 骨頸部骨折後の低栄養患者を対象と. 10). し,栄養状態改善の有無と歩行能力の関連性について明らかに. ことから,重要な指標として位置づけられている。なお,入院. することを目的とした。. 時 Alb 値については,入院日より 1 週間以内に測定したものを,. 対象と方法. 退院時 Alb 値については,退院日前より 1 週間以内に測定した. 1.対象. ものを用いた。.  調査対象者は,福岡市内 1 ヵ所の病院における回復期リハ病. 2)歩行能力. 棟に 2010 年 1 月∼ 2013 年 3 月の間に入院した 65 歳以上の自.  歩行能力については,歩行自立度分類「Functional Ambu-. 力で経口摂取ができる大. 骨頸部骨折患者 301 名とした。除外. lation Categories(以下,FAC) 」を指標とした。FAC は移動. 基準は,入院時血清アルブミン値 3.3 mmg/dl 以上の者,骨折. 範囲と介助量によって 0 ∼ 5 点まで 6 段階に得点化することが. の既往歴がある者,診療記録の漏れ等により,データに欠損値. できる。本尺度は,Holden ら 11) や Lord ら 12) によって基準. があった者とし,集計対象者は 73 名であった。なお,本研究. 関連妥当性や信頼性が確認されている。測定については,入院. における倫理的配慮は,ヘルシンキ宣言を遵守して研究計画を. 時から入院 8 週目まで 2 週間隔に測定したものを用いた。. 立案し,所属機関倫理審査委員会の承認を受け実施した。.

(2) 大. 骨頸部骨折患者の歩行能力回復と栄養状態改善の関連性. 173. 表 2 多重比較検定の結果 入院 6 週目. 入院 8 週目. 2.3. 2.7. 2.9. 栄養非改善群 FAC. 1.1. 2.0. 2.3. 2.5. *. 入院 4 週目. 1.7. *. 入院 2 週目. 1.0. **. 入院時 栄養改善群 FAC. 2.7. FAC:Functional Ambulation Categories,** p<0.01,* p<0.05. 3.分析方法. が確認できた。続いて,多重比較検定では,入院 6 週目および入.  集計対象者の栄養状態について,入院時から退院時までに. 院 8 週目の栄養改善群の歩行能力は,非栄養改善群の歩行能力. Alb 値が増加した者を「栄養改善群」 ,維持または低下した者. とくらべ,統計的に有意に高い値を示しており,入院 6 週目頃. を「非栄養改善群」とし,2 群に分類した。次に,栄養状態改. から栄養状態改善による影響が顕著に表れることが確認できた。. 善の有無と歩行能力の関連性を確認するために,独立変数は測.  これらのことから,栄養状態改善の有無が歩行能力の回復に. 定時期要因(入院時,入院 2 週目,入院 4 週目,入院 6 週目,. 影響を与えている可能性が高く,患者の栄養状態を考慮した. 入院 8 週目)と栄養状態改善要因(栄養改善群,非栄養改善群),. 理学療法を展開しなければならない重要性が改めて明らかに. 従属変数は FAC とした繰り返しのある二元配置分散分析を実. なった。. 施した。多重比較検定には Tukey 法を用いた。. 文  献. 結  果. 1)日本整形外科学会,日本骨折治療学会:大 骨頸部 / 転子 部骨折診療ガイドライン(改訂第 2 版).南江堂,東京, 2011,pp. 20‒26. 2)総 務 省: 日 本 の 将 来 推 計 人 口.http://www.ipss.go.jp/ syoushika/tohkei/newest04/gh2401.pdf(2015 年 1 月 24 日引用) 3)Ratanen T, Avela J: Leg extension power and walking speed in very old people living independently. J Gerontol. 1997; 52(4): 225‒231. 4)武山憲行,大島文夫,他:手術療法を受けた 65 歳以上の 大 骨頸部骨折患者の予後.Hip Joint.2001; 27: 116‒120. 5)市村和徳,石井佐宏:統計 高齢者大 骨近位部骨折の 退院時歩行能力に影響を与える因子:ロジスティック回 帰分析を用いた解析.Orthopedic surgery.2001; 52(10): 1340‒1342. 6)中山義人,白井康正,他:高齢者の大 骨頸部内側骨折 の予後.The East Japan journal of clinical orthopaedics. 1996; 8(1): 13‒17. 7)新井智之,金子志保,他:大 骨頸部骨折患者の歩行自立 に必要な要因:決定木分析による検討.日本老年医学会雑 誌.2011; 48(5): 539‒544. 8)Biolo G, Tipton KD, et al.: An abundant supply of amino acids enhances the metabolic effect of exercise on muscle protein. Am J Physiol. 1997; 273: E122‒E129. 9)岡本伸弘,増見 伸,他:高齢大 骨頸部骨折患者の栄養 状態と歩行能力予後との関連性について.理学療法科学. 2015; 30(1): 53‒55. 10)Kawakami K, Kadota J, et al.: Reduced immune function and malnutrition in the elderly. Tohoku J Exp Med. 1999; 187(2): 157‒171. 11)Holden MK, Gill KM, et al.: Clinical gait assessment in the neurologically impaired. Reliability and meaningfulness. Phys Ther. 1984; 64(1): 35‒40. 12)Lord S, Harry K, et al.: Community ambulation after stroke. How important and obtainable is it an what measures appear predictive. Arch Phys Med Rehabil. 2004; 85(2): 234‒239. 13)Hagino H, Furukawa K, et al.: Recent trends in the incidence and life time risk of hip fracture in Tottori, Japan. Osteoporos Int. 2009; 20(4): 543‒548. 14)厚生労働省:超高齢化社会を見据えて高齢者がよりよ く 生 き る た め の 日 本 人 の 食 事 を 考 え る.http://www. mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-KenkoukyokuSoumuka/0000015824.pdf(2015 年 1 月 24 日引用). 1.集計対象者と栄養状態に関する各群の属性  集計対象者 73 名の平均年齢は 87.1 歳であった。性別は男性 14 名(28%) ,女性 59 名(72%)であり,女性の割合が高い 集団であった。この内,過去に脳血管疾患の既往があった者は 14 名(20%),認知症を罹患していた者は 26 名(35%)であっ た。また,受傷前に歩行が自立していなかった者は 22 名(30%) であった。栄養状態は Alb 値 2.9 g/dl であった。集計対象者の 栄養状態改善の有無について分類した結果,栄養改善群 39 名, 栄養非改善群 34 名であった。各群の諸特性の比較した結果(表 1),基本属性,医学的所見,受傷前環境,栄養状態,歩行能力 に統計的な有意な差は認められなかった。 2.栄養状態改善の有無と経時的に測定していた歩行能力の比較  各群の経時的な歩行能力の推移について示した。二元配置分 散分析の結果,測定時期要因による主効果と栄養状態改善要 因による交互作用が認められた。多重比較検定の結果(表 2), 入院時における 2 群間の歩行能力は,統計的に有意な差は認め られなかった。入院 2 週目は栄養改善群の歩行能力と比較し, 非栄養改善群の歩行能力は統計的に有意に高い値であった。入 院 4 週目は 2 群間の歩行能力は,統計的に有意な差は認められ なかった。入院 6 週目および入院 8 週目においては,栄養改善 群の歩行能力と比較し,非栄養改善群の歩行能力は統計的に有 意に低い値であった。 考  察  集計対象者について,我が国における大 年齢は 80 ∼ 85 歳がもっとも多く. 骨頸部骨折の受傷. 13). ,集計対象者の平均年齢. と大きな差がないことから,妥当な調査対象者であると考え る。また栄養状態について,厚生労働省が提出している年代 別 Alb 値の資料 14)と集計対象者を比較すると,集計対象者の Alb 値はやや低く,栄養状態が低下している集団であった。次 に,栄養状態改善の有無によって分類した各群の諸特性を比較 した結果,属性,栄養状態,歩行能力は統計的な有意な差はな く,同等であったと考えられた。  本研究結果よりいくつかのことが示唆された。はじめに,二 元配置分散分析の結果,栄養状態改善要因による交互作用が認 められ,歩行能力の回復には栄養状態改善が影響していること.

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