Title
アモルファス・カルコゲナイド半導体における可逆光構造
変化に関する研究( 本文(FULLTEXT) )
Author(s)
葛川, 幸隆
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 甲第107号
Issue Date
1999-03-25
Type
博士論文
Version
publisher
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/1828
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。アモルファス・カルコゲナイド半導体に
おける可逆光構造変化に関する研究
Photo8truCtural
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in
Chalcogenide
Gla88e8
学位論文:博士(工学)甲107
平成11年1月
葛川
幸隆
目次
第1章
序論
1.1アモルファス半導体 1.2 アモルファス半導体の分類 1.3 アモルファス半導体の歴史 1.4 As-Se(S)あるいはGe-Se(S)ガラスの応用 1.4.1 はじめに 1.4.2 光メモリ-の展開 1.4.3 相転移 1.4.4 光構造変化 1.4.5 フォトレジスト-の展開 1.5 本研究の目的と本論文の構成 参考文献第2章
光誘起現象(バンドギャップ及び膜厚の変化)
2.1カルコゲナイドガラスにおける光誘起現象 2.2 フラット蒸着と斜方蒸着における構造変化 2.3 試料作製 2.3.1 As系とGe系試料の蒸着 1 4 6 8 ill 12 13 16 18 19 263.3 基板のサイズ及び測定位置 3.4 膜厚測定方法 3.4.1光干渉式膜厚測定装置の原理及び装置構成 3.4.2 光干渉式膜厚計の信頼性補完 3.5 バンドギャップ測定方法 参考文献
第4章
実験結果(膜厚とバンドギャップの変化)
4.1 As系試料の光照射及び熱処理(アニーリング処理) による膜厚とバンドギャップの変化 4.2 Ge系試料の光照射及び熱処理(アニーリング処理) による膜厚とバンドギャップの変化 4.3 まとめ 参考文献第5章
カルコゲナイド半導体における光及び
熱による誘起変化機構の考察
5.1斜方蒸着したAs系及びGe系アモルファス・ カルコゲナイドにおける光照射による膜厚と バンドギャップの変化の相関関係 5.2 アモルファス・カルコゲナイドガラスにおける 光照射による構造変化モデル(クーロン反発に よる膨張とスリップモデル) 5.3 斜方蒸着におけるAs系カルコゲナイドガラス の光照射による構造変化モデル 5.4 まとめ 参考文献第6章
総括
本研究に関する発表論文
謝辞
34 36 44 45 52 53 59 64 65 66 67 78 82 83第1章
序論
この章では、 §1.1でアモルファス半導体の基礎について概説し、 §1.2で アモルファス半導体の分類について述べ、 §1.3でアモルファス半導体の歴史 について述べ、 §1.4で応用面について述べる。最後に§1.5で本研究の目的を 述べ本論文の構成を示す。§
1.1
アモルファス半導体
アモルファス半導体を用いた電子デバイスが、水素化アモルファスシリ コン太陽電池、液晶ディスプレイ駆動用の薄膜トランジスタ(TFT)、テレ ビ映像素子等の言葉で最近、新聞紙上を賑わしている。既に実用化されてい るもの、 21世紀の夢の材料とまで言われているものもある。 「アモルファス(amorphous)」とはギリシャ語の"a-morph6"から来ており、 「はっきりとした形を持たないもの」とか、 「分類できないもの」という意味 を持つ。日本語では、 「非晶質」 (結晶に非ず) 、無定型、ガラス状という意は持たない固体を意味する。 1図1-1はⅣ族の元素を例にとった原子構造を2 次元的に示した概念図である。図1-1(a)の様な共有結合型結晶は、 8-N則1に従 い4個の価電子が各隣接原子と共有結合することにより、原子が規則正しく配 列し構造的に長距離秩序のある周期性を有している。これに対しアモルファス は、図1-1(b)の様に周期性は存在しない。 2 しかし、単に原子がランダムに存 在しているのではなく大部分の原子は8-N則に従って結合しており、短距離秩 序を有している。このため、アモルファスにおいても結晶と同様に、バンドモ デルが適用できる。しかし、長距離秩序がないため波動関数が空間的に拡がっ ておらず、アモルファス固有のバンドの裾状態やギャップ中の局在準位など、 電気的及び光学的特性に影響を与える電子状態が存在する。代表的なアモルフ ァス構造は、図1-1(b)の黒丸のような8-N則で決まる配位数より一つ配位数の
1
'&
上 \・*
H
屈
孤原子の空間配置
図1-2自由エネルギー配置 少ない状態の未結合手、すなわちダングリングボンドPB)が存在する事である。 これを以下欠陥という。アモルファスの結合距離については結晶の結合距離に比べて大きく変わるものでなく、結晶の結合距離に比べ、せいぜい±1%以下の
変化でしかない。結合角度については結晶の結合角度に比べて、変化量が大き くおおよそ±10%程度の結合角度の変化が認められる場合がある。熱力学的には、アモルファス状態は自由エネルギー最小の平衡安定状態に はなく、自由エネルギーの極小値である非平衡準安定状態にある。図1-2のA 点は熱平衡状態にある結晶を示しており、全系の自由エネルギーが最小となる 値である。アモルファスは急冷法によって形成されるため、点Aの熱平衡に達 する前に原子構造が凍結、より自由エネルギーの高い非平衡状態である図1・2 のB,C,Dの点をとる。急冷の仕方によってとる点は異なる。また、加熱や光励 起など外部からのエネルギーの供給によって、例えばB点から熱的にさらに安 定な極小点Cに移ったり、高い状態D点に変わったりする。さらに高いエネル ギーによって、アモルファス状態から結晶状態-の相転移も生じる。この外部 エネルギーによる特性変化が原因で、ときには安定性や信頼性の点でアモルフ ァス材料が、 "不信"の眼で見られることがある。しかし、図にも見られるよ うに無数の異なる自由エネルギー極小の状態が存在するため、結晶に比べてき わめて多様性に富む材料である。 3 アモルファス半導体をエネルギー空間で表現すると図1-3のように表され る。
化学結合論的立場から見たバンド構造を図(1-4)に示す。 反結合状態 孤立電子対
忘冊
+ト
結合状態十十
品i+
十十
反結合性バンド 非結合性バンド 結合性バンド 伝革帯 価電子帯 原子==こ>ボンド ==二=> バンド 図1-4 化学結合論的立場から見たバンド構造(Ⅵ族カルコゲナイド系) 2 Ⅵ族元素を主体として構成されるカルコゲナイド系の場合には、 S2P4配置 の最外殻電子6個のうち、S電子2個は各原子に局在した深いエネルギー状態に あり、 P電子2個が2本の化学結合手として2配位結合構造を形成する。残りの 2個のP電子は直接には結合に関与せず、孤立電子対として、周囲原子との弱 い(しかし、おそらく複雑な)相互作用を通して、価電子帯の頂上部を形成す ると考えられる。 2§
1.2
アモルファス半導体の分類
アモルファス物質も結晶と同様に、その電気的特性の違いによって絶 縁体、半導体、金属に分類される。アモルファス半導体はさらに、カルコゲ ナイド系とテトラ-ドラル系に大別することができる。テトラ-ドラル系は siなどのⅣ族元素を主成分としており、8-N則によって4配位で結合するた め、構造がかなりしっかりしていて柔軟性が少ない。そのため、普通は融液 凍結によってアモルファス(ガラス)にする事はできない。気相からアモル ファス薄膜を作製するのが一般的方法である。また、水素化によってダング リングボンドを終端し、欠陥密度を減少させることにより構造敏感性をもた せることができる。すなわち単結晶と同様、価電子制御が可能となる。カル コゲナイド系は酸化物ガラスの延長線上にあり、Ⅵ族元素であるカルコゲン 元素と呼ばれている、 S、 Se、 Teが主成分となったものである。 Ⅵ族元素は、 2配位で結合しており構造の柔軟性が大きいためガラスになりやすく、別名 カルコゲナイドガラスと呼ばれている。表1-1に典型的なアモルファス半導するが、次のような大きな相異点がある。第一に、テトラ-ドラル系はアモ ルファス膜しか得られないが、カルコゲナイド系の多くはバルクガラスも作 りうる。テトラ-ドラル系はガラスとならず、アモルファス膜を加熱すると 結晶化する。これに対してカルコゲナイド系はガラス転移現象を現すことが 多い。第二に、カルコゲナイド元素は種々の元素と化合して、安定なアモル ファス物質を作る。 SiやGeを主成分としたテトラ-ドラル系物質は、構造 が硬く異種原子を取り組みにくい。 2 テトラ-ドラル系 単元系 C.Si,Ge 水素化単元系 C:H,Si:Ⅲ,Ge:班 合金系 Si)_,Ge.,Si)_xC., Si)_,N,Si)_xOx 水素化合金系 Si)_,Ge,:H,Si)_,C,:H Si)_,N.:H,Si)_.0,:H Ⅲ-v族 GaAs,GaSb,Gap カルコゲナイド系 単元系 S,Se,Te Ⅴ-Ⅵ系 As)_xS.,As)_,Se.,As)_,Te. Ⅳ-Ⅵ系 Ge)_xSx,Ge)_.Sex.Ge)_,Te, 3元系 As-Se-Te,As-Ge-Te,Ge-Sb-S 4元系 As-Te-Si-Ge Ⅴ族 As,Sb 表1-1典型的なアモルファス半導体の分類2 酸化物ガラスとの関連では,表1-2の周期律表で解るようにⅥ族元素は 上から下-0,S,Se,Teと並んでおり、 0がS,Se,Teで置き換わったものがカ
ルコゲナイド系材料と見なすことができる。実際、 GeO2、 GeS2、 GeSe2な
どのガラスを作ることができる。たとえばGe-0とGe-Se結合を比べると、 前者はイオン性が強く、後者は共有結合と見なされる。この共有結合性が半 導体となる必須条件である。 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ Ⅶ 1 ⅠⅠ 2 Li B 0
§
1.3
アモルファス半導体の歴史
アモルファス半導体が機能材料として初めて用いられたのは電子写真 (商標:ⅩEROX)としてアモルファスSeの光伝導性を利用したもので、1948 年に実用化された。 4そしてその後アモルファスSeに関する研究がいろいろ 行われている。この流れとは別に、 1950年代ロシア・レニングラードのヨ ツフェ研究所でKolomietsを中心とするグループが、カルコゲナイド系材料 に結晶にならずアモルファス状態になる領域があることを発見し、広範囲に 組成を変え精力的に研究を行った。そしてこの物質、すなわちカルコゲナイ ド系アモルファス半導体が構造敏感性を持っていないことを示した。 5アモ ルファス半導体が世界的に注目を浴びるきっかけとなったのは、 1968年に、 米国のベンチャー会社であるECD (Energy Conversion Devices lnc.)の社長Ovshinskyが、 Te・As・Si・Geからなるカルコゲナイド系アモルファス半導体 で、従来、単結晶系SiやGeでしか実現していなかった電気的スイッチ素子 や、メモリ現象を発見したことがPbysicalReviewLetters6に発表されたこ とによる。 さらに注目を浴びたのは、 1975年にイギリスのダンディ大学のSpear とLeComberによって、水素化アモルファスSiに不純物添加することによ り価電子制御bn制御)ができ、 pn接合において整流特性や光起電力が見い だされたことである。それまではアモルファス半導体は結晶半導体とは異な り、 pn制御は不可能とされており、そのため機能材料としての応用分野も かなり限られたものであった。結晶Siなどのエレクトロニクスにおける華々 しい応用は、その殆どがpn制御をその要としている。 2それ故、前述の発 見により、アモルファス半導体が光学的・電気的デバイスとしてさらに期待 され、また実際に実用化されるようになった。アモルファス半導体研究の発 展の中で忘れてはならない人はイギリスのMottである。 Mottは1930年代 からいろいろな分野で物理学に大きな寄与をした理論物理学者であるが、ア モルファス半導体研究をたえず理論面から支えた功績によって1977年度ノ ーベル物趣学賞を受賞している。 表1・3にアモルファス半導体の年表を掲げる。
1948 a-Seの光伝導性を利用した電子写真 1955 カルコゲナイド系アモルファス半導体研究(Kolomietsらのレニ ングラードグループ) 1968 As-Te-Si-Geの電気的スイッチ.メモリ(Ovshinsky) 1973 Se-As-Teによる撮像素子(日立-NHK) 1974 カルコゲナイド系における光構造変化の発見(電総研.田中ら) 1975 水素化アモルファスSiで初めてpn制御と整流特性.光起電力 の発見(Spear-LeComber) 1975 カルコゲナイド系における光誘起ESR(Bishopら) 1975- カルコゲナイド系におけるnegativeUの欠陥モデル(Street-1976 MottおよびKastner-Adler-Fritzsche) 1977 a-Si:Hにおける光劣化の発見(Staebler-Wronski) 1977 a-Si:Hを用いた太陽電池の発表 1977 MottおよびAndersonノーベル物理学賞受賞 1980 アモルファスSi太陽電池の実用化(三洋電機、富士電機) 表1-3 アモルファス半導体年表2 表1・3に掲げた研究の過程において,種々の光誘起現象が確認されてい る。これは、アモルファス半導体にそのバンドギャップに相当するエネルギ ーをもつバンドギャップ光を照射すると、その物理的・化学的・機械的性質 が変化するという現象である。光誘起現象の原因は,光子の吸収によって励 起される電子的なものと、光吸収により発生する熱の効果が考えられるが、 7 未だ原因となる機構とその構造変化との対応が明確になっている現象は 少なく、今なお研究が続けられている。第2章及び第5章では本研究の対象 となる現象を詳述する。
§
1.4
A8-Se(S)あるいはGe-Se(S)
ガラスの応用
★1.4.1
はじめに
アモルファス・カルコゲナイドとアモルファス・シリコンとは物性的にか なり異なったところもあるが、大面積受光デバイスのように共通の考え方が適 用できる応用もある。電気的メモリ,光メモリ、フォトレジスト、電子写真、撮像デバイス、太陽電池など多彩な応用の中にアモルファス半導体の特徴を見
いだすことができる。 「アモルファス」という言葉と「半導体」という言葉は、 もともと相容れない概念を包含している。そもそも「半導体」という概念が無 限周期構造を有する結晶モデルから導き出されたものであるから、 「アモルフ ァス」という概念とは直接結びつかないことになる。しかし現在では「アモル ファス半導体」と言う言葉で一般的に理解され、応用されているため、この章 では、特に厳密な区別をしないで、応用面に焦点を当て考察していきたい。 アモルファス半導体の応用の歴史をひもといてみても、やはり「アモルフ ァス」という概念と「半導体」という概念とが、ちょうど縄のように寄り合わ されているのを感じる。ある応用はこの材料のガラス的性質を利用しており、 他の応用は半導体的な特性を利用している、というように、そして勿論、両者 の特性を旨く併せて利用したところに、これまでの材料に無い独自の応用分野 が開けている。表1・4はこれまでに提案されているアモルファス半導体デバイス をまとめたものである。 1デバイスの動作原理の欄に示されているように,アモ ルファス状態と結晶状態との間の相転移に伴う物理的性質の変化を利用したも のはどちらかといえばガラス的性質の応用であり、光伝導性や接合特性を利用 したものは半導体的性質の応用であるといえる。 アモルファス半導体が世界的な注目を集めたのは、 1968年にアメリカの Ovshinskyがカルコゲナイド系アモルファス半導体を用いて高速のスイッチ素 子やメモリ素子が作製されると発表したときであるが、 6実はそれ以前にアモル ファス半導体を用いたデバイスを基礎にした巨大な産業が出現していた。それ はアモルファスセレン感光体を用いた電子複写機産業である。基礎現象 デバイスの動作原理使用材料 応用例 ダブル注入 バルク負性抵抗による導 電率の変化 Te-As-G(ラ-Si しきい値スイッチ 熱軟化 レーザ光照射による膜中 S() As-Te-Se 大容量可逆メモリ ポイドの発生 大容量画像ファイ レーザ光照射による膜の 穴あけ ノレ 結晶-アモルフア 電流パルス印加による導 Te-Ge-SbーS Ge-Teor リードモーストリ ス転移 電率の変化 メモリ 光パルス印加による反射 大容量光メモリ プリンタ 大容量光メモリ 電子ビームメモリ 非銀塩写真 率.透過率の変化 Se-Te レーザ光照射による導電 率の変化 光パルスと電流パルス同 Se-Te (As-Te-Ge)-時印加による書き込み光 パワーの低減 電子ビーム照射による二 次電子放出の変化 光照射による結晶核の生 成と加熱による結晶成長 CdS Ge-Te-As Te系 光構造変化 光照射による透過率の現 象と加熱による回復 光照射による屈折率の変 化と加熱による回復 光照射による化学的安定 性の変化 As-Se-S-Ge As-Se-S-Ge Se-Ge 可逆光メモリ マイクロフィシユ フォトレジスト 光ドーピング 金属ドープによる光透過 率の変化 金属ドープによる化学的 (As-S-Te):Ag (Se-Ge):Ag 画像記録 フォトレジスト
化学修飾 不純物ドープによる導電 (Ge-Te-Se-率の制御 As):Ni 光起電力 p-i-n或いはショットキー 接合の障壁利用 Si 太陽電池 光導電 高抵抗膜-の電荷蓄積 Si 電子写真、撮像管 電界効果 MⅠS構造における伝導度 変調 Si 薄膜トランジスタ 表ト4 アモルファス半導体デバイス1 アモルファス・カルコゲナイド半導体については、前述のように、多種の応用 が提言されているが、本稿ではこのうち"光メモリ"と"フォトレジスト"に 対する応用面について考察する。
★1.4.2
光メモリ-の展開
情報の書き込み、或いは読み出し、またはその両方に光を用いるメモリを 光メモリと呼ぶ。この種のメモリはコンピュータの入出力装置や大容量ファイ ルメモリ、あるいは民生用のビデオディスクなど-の応用がかなり進んでいる。 アモルファス半導体、特にアモルファス・カルコゲナイドは、均一な大面積薄 膜を作製することが比較的容易であり、比較的低パワーの光照射によって大幅 な物性の変化を示すことが多いので、光メモリの材料としては優れた材料であ るといえる。表1-5を見ると光メモリ関係の応用がいかに多いかが理解できる。 アモルファス半導体の欠点の一つであるキャリア易動度の低さが、光メモリ関 係の応用では表面に現れないため、アモルファス半導体の特色を生かすことの 出来る分野であるともいえる。光メモリに用いることの出来る物性変化として は膜の相転移、構造変化、組成変化、変形などを伴う光の反射率、透過率,屈 折率の変化などが考えられる。 メカニズム 材料 分解能 感度 消去時間 繰返し回 flines/mmi fmJ/cm21 is) 敬 結晶化 Ge-As-Te等 500 ∫-102 10-6/bit <100 構造変化 As-Se-S-Ge専 >104 --102 ・-1 >104 光ドーピング As2S3+Ag等 >104 ・-102 穴あけ As-Te-Se等 500 ・-102 光.電流併用 As-Te-Ge-Cds 100 -10-1 光潜像+加熱 Se-Te等 500 10 表1-5 アモルファス半導体メモリの性能1★1.4.3
相転移
アモルファス相と結晶相との間の相転移を利用したメモリである。 8Ge-Te 系あるいはSe-Te系などのアモルファス・カルコゲナイド半導体が結晶化する と、アモルファス相に比べて、通常は光の吸収端が長波長側に移動し、反射率 も増加して見たところ金属的になる。この光学的特性の差の最も直接的な応用 は非銀塩写真である。またアモルファス相と結晶相との間の可逆的な相転移を 利用することも可能である。電気的メモリが電流パルスによる発熱によって書 き込まれるのに対し、光メモリは集光されたレーザ光線によって書き込まれる。 書き込まれた部分の大きさはレーザ光のスポット径とパルスの持続時間などに ょって決まるが、その中の微結晶の粒径は10nm程度かそれ以下と考えられて おり、高密度メモリ-の応用が出来る。いったん書き込んだ結晶相の部分を消 去して再びアモルファス相に戻すには、電気的メモリと同様に、光強度が強く、 持続時間の短い光パルスを照射して、結晶化した部分を溶融し、急冷によって 再びアモルファス相に戻すことが出来る。このメモリの書き換えは、薄膜材料 の溶融など形状の変化を伴いやすいプロセスを必要とするため、多回数の繰り 返しが困難であるという欠点を持っている。★1.4.4
光構造変化
Se-As・Ge、 As-S系などのアモルファス・カルコゲナイド半導体で見いださ れた現象で、相転移を伴うことなく、短波長の光照射によって吸収端が長波長 側に移動し(光黒化: Photodarkening) 、加熱によって短波長側に移動する現 象がある。 9 この現象は、最初Kenemanによって発見されたが、諸外国のみ ならず、我国でも沢山の研究者の研究テーマとなり、その機構のみならず、応 用面についても多くの研究結果が報告されている。本研究もその一端である。 この変化の特徴は、アモルファス相の中の二つの準安定状態間で起こるた め、膜の変形を伴うことが無く、従って書き換え特性が104以上とずば抜けて優 れていることである。また前述の相転移と異なって結晶化といった大幅な原子 配列の変化を含まず、局所的な不規則性の変化に起因すると考えられることから、解像力の限界は1nm程度と、殆ど原子レベルに近づくと考えられている。
このことは、昨今のメモリ事情がコンピュータメモリの大容量化-の進路を取 っていることから、応用面について大きな展開が期待される。またCD-ROMや 最近のDVDはDigital Versatile Discの略号として名付けられ、映画、音楽、コンピュータなど様々な用途に応用されマルチメディア用のパッケージメディ アとしての記憶素子としてもてはやされているが、アモルファス・カルコゲナ イド半導体が実採用されれば、高集積メモリとして更なる大きな応用分野が開 かれるものと思われる。 光メモリには書き込み、読み出しに当然ながら光ビームが使われており、 その光ピーヰの波長も近年、短波長側に移行しつつある。つまり、より高解像 度の方向に、またより高集積化の方向に向かっている。その意味ではアモルフ ァス・カルコゲナイド半導体光メモリは格好の光メモリとなりうる要素を備え ている。例えば光ビームであるが、 CD-ROMのときは、可視光の限度に近い 780nmのレーザ光を使用していたが、 DVDではさらに短波長の650nm或いは
しかしながら、高集積メモリ、特に光メモリについてはレーザの短波長側 -のシフト及び記憶素子自身の微細化のみで、高集積メモリが実用化される訳 でなく、図1-5に示すように、いろんなアプローチからの開発が必要である。 図1-5 光ディスク高密度化-のアプローチ10 マルチメディアの第1世代ではCDファミリーをベースに、転送速痩 1.5Mbps、記録容量680Mバイトを軸として、パッケージメディア主体、伝送 メディアが従のシステム展開で進んできた。 CDファミリーとコンパチブルな記 録メディアCD-Rの導入を契機として、オーディオ用のCDDA(Compact Disk DigitalAu血')からデータ、静止画、動画をも記録できるCD-ROM、ビデオCD -の急速なシステムの展開-拡大がなされ、 AVC業界は大きく変貌した。 1995 年12月に高密度ディスクDVDが、日欧のオディオビジュアルメーカ9社の合 意の下に企画統一された。これは従来のCDファミリーに比べて、転送速度、 記録密度とも一桁上であり、これらがマーケットインされた1997年は、マルチ メディア第2世代の幕開けとなった。より高品質の動画像情報を記録、再生す るには、メディアの記録密度の向上と情報の圧縮とを併用する必要がある。同 様に伝送メディアにおいても,高転送レート化と情報の圧縮との両者に依存せ ざるを得ない。図1-6は高密度ディスク(ROM)に対応する記録可能ディスク は、それらのソフト制作上からも、またコンピュータのバックアップメモリと しても重要である。
磁気ヘッド
匡二
データで変調さ れたレ-ザ 一定強度のレーザ T1一一夕で変調されたレーザ 光変調形光磁気TIJィスク 瑞気変調形光磁気ITJィスク 相変化形光子ィスク 図1・6 記録可能ディスクの記録方法10 光磁気ディスクは、レーザ光の照射による熱とフェリ磁性記録層の磁気特 性との組み合わせで記録する方法で、記録膜にはTbFeCo系の材料が使われる。 光変調形と磁気変調形がある。前者はレーザ光によりキュリー温度近傍まで上 げられた記録膜の照射部分が、補助磁界の保磁力が低下して磁界の向きに磁化 が反転することを利用して記録する方法である。データを重ね書きするオーバ ライトが難しいのが難点である。後者の磁気変調形は、一定強度のレーザ光で あらかじめ記録膜の磁気方向が反転できる温度にまで温めておき,磁気-ツド に流す電流の方向に従って磁界を反転させて記録する方法である。 相変化形ディスクはGeTeSb系に記録膜に熱を加えることにより膜の相を 結晶状態からアモルファス状態に変化させ、相の変化による光の反射率の差(結 晶状態の方が10-30%高い10)を光-ツドで検出する方法である。現在はレー ザ光の波長780nm、3,5インチ両面で600Mバイトの記録容量、データの転送
速度9Mbps程度が実用化されている。面記録密度をさらに3-5倍向上させる には、短波長化とともに熱干渉による記録補償などの解決が必要であるが、最 近の専門誌によると開発に成功したとの報告もある。またレーザを短波長化し★1.4.4
フォトレジスト-の展開
アモルファス・カルコゲナイド半導体の光照射による構造変化は、前節で 述べたように、ほとんど原子レベルのサイズである1nm程度の高解像度を有し ていると考えられる。この高解像度を生かして、半導体製造プロセスにおける、 フォトレジスト-の応用が考えられる。 DRAMの高集積開発競争は止まること を知らず、昨今の市場では64M (メガ)バイトのメモリが一般化してきている。 DRAM製造メーカでは、既に1G (ギガ)バイトの素子も研究室レベルで完成 している。メモリーの高密度化に従い、当然ながらIC回路のデザインルールは 微細化の方向にある。 フォトレジスト自身の高解像度は勿論のこと、 IC回路焼き付けに必要な露 光装置(ステッパー)の光源の波長が重要になってくる。アモルファス・カル コゲナイド薄膜によるフォトレジスト-の応用が成った上で、ステッパー光源 の開発が必要である。図1-7はDRAMの世代交代とデザインルール及びステッ パーの光源について表したものである。 1G以上のメモリーについては、ステッ パー方式でなく、直接描画方式も取りざたされているが、フォトレジストの必 要精度に関してはアモルファス・カルコゲナイド薄膜で十分であると云えよう。 図1・8は半導体製造のフォトプロセスを示している。 '84 '86 '88 i90 '92 '94 '96 '98 '00 '02 '04 '06 DRAM 世代 デザイン ノレーノレ 使用光源-・、:・\l
・\・ -. ・‥、・・lL
..\・i :・ハ・・l
:、:・、、・. ・、・ 2.OFLm 1.2FLm 0.8〃m 0.5JJm O35JJm 0.25JJm,0・18JLm,0・15JLm,0・13JLm 図1-7 DRAMの世代交代とデザインルール及び光源の関係Se-Ge膜蒸着
AgNo3溶液につける
露光
酸によるエッチング
アルカリによる
エッチング
基体(siO2,Si3N4-
)
エッチング
se-Ge膜除去
ネガプ。セご\-l l l l l ■■■ ■- ■■ポジプロセス
熱処理
I l l l - ■- ■l■ 図1・8 半導体製造のフォトプロセス1§
1.5
本研究の目的と本論文の構成
これまで、アモルファス半導体にバンドギャップに等しい光エネルギー で光照射を行うと、構造変化,金属の拡散(フォトドープ)、吸収端の移動 (バンドギャップの変化)、並びに光学定数、膜厚、微少部分での硬度の変化、 およびバルクと薄膜の化学特性の変化などさまざまな作用が生じることが 報告されている。 ll これらの変化は可逆的なものと、不可逆的なものがある。光照射によっ てAs2Se3およびAs2S3のアモルファス蒸着膜12に可逆的な光黒化現象 (Photodarkening: PD)が生じることが初めて報告されたのは25年近く前 であるが、アモルファス半導体における光黒化プロセスは依然として解明さ れていない。 11そして光照射によって誘起されたアモルファス半導体にお ける可逆的、不可逆的な変化の説明については、多種多様な機構が提唱され ている。 11・18-18 本研究では、試料として光照射、および熱処理によって膜厚、およびバ ンドギャップに大きな変化量を示す斜方蒸着により作製されたAs系、およ びGe系試料を採用した。それらの試料の膜厚、およびバンドギャップを測 定し、両者の関係を確定すること、光照射及び熱による構造変化の究明を行 うことを目的とする。 本論文は全6章からなる。第1章では、アモルファス半導体の基礎的事 項、応用面と共に、本研究の背景、目的を述べている。第2章はアモルファ ス・カルコゲナイド半導体における、光誘起現象、バンドギャップの変化に ついての考察、及び試料作製について述べる。第3章では膜厚測定,バンド ギャップ等の測定方法について述べる。第4章は膜厚及びバンドギャップの 変化に対する測定結果について述べる。第5章は光及び熱による誘起現象の 機構の考察及び新しい光構造変化モデルについて述べる。第6章は本研究の 総括について述べる。1田中-宣,アモルファス半導体の基礎(1982)オーム社 2清水立生,アモルファス半導体(1994)培風館.
3桑野幸観アモルファス(1985)講談社
4
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5
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6 S.R
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7 D.L. Staebler
and C.R, Wronski, Appl. Phys. Lett. 31 (1977) 292,
8 J. Feinleib,
et al., Appl. Phys. Lett. 18 (1971) 254.
9 S・A・ Keneman, Appl. Phys. Lett. 19 (1971) 205.
10中島平太郎、井橋孝夫、小川博司、 CDファミリー(1996)オーム社.
ll K Shimakawa, A.V Kolobov
and S.R. Elliott, Adv. Phy臥44 (1995)475.
12 J・P. De Neufville, S.C. Moss,
and S.R. Ovshinsky, a. Non-Cry告t. Solids. 13 (1973/74)
191.
13 K. Tanaka, J. Non-Cry告t. Solids. 35-36
(1980) 1023.
14 Ke. Tanaka, Rev Solid State. S°i.4
(1990)641.
15 S.氏. Elliott, a.Non-Cryst. Solids 81 (1986) 71. 16 R.A, Street, Solid State Commun. 24 (1977) 363.
17A.V Kolobov and G.a. Adriaenssens, Philos. Mag. B 69 (1994) 21.
18 H. Fritzsche, Philos. Mag. B 68
第2章
光誘起現象とバンドギャップ
及び膜厚の変化
§2.1カルゲナイドガラスに於ける光誘起現象
前章でも述べたが、アモルファス・カルコゲナイド半導体における、光照 射によるさまざまな誘起現象は、未だに解明されていない。論議されるべき主 な問題は次の二つである。 (1)ミクロな構造変化とそのモデル化 (2)構造変化と光学ギャップの関係 これまでいくつかのモデルが提案されている。これらを紹介しながら、本研究 で光誘起現象に対する新しいモデルを提案する。この新しいモデルは従来のモ デルでは説明できなかった、体積膨脹を説明できるモデルである。 光照射によって生じるAs2Se3及びAs2S3のアモルファス蒸着膜における 光黒化現象(Pbotodarkening : PD) 、或いはGeSe2及びGeS2のアモルファ ス蒸着膜における光自化現象(Photobleaching :PB)が報告されている. 1 光異化現象はdeNeuRTilleらによって報告されている。 2しかし光黒化機構は 依然として解明されていない。 3またHe-Neレ-ザ・ビームでの光照射によ り、 As2S3膜は可逆的な構造変化を示すことが報告されている. 4 Ge膜では Kawaguchiらによって不可逆的なPB現象は光照射時の大気圧に左右される ことが原因であると報告されている。 1 アモルファス半導体において、光照射によって誘起される可逆的及び不可 逆的な変化の説明は、多くの研究者から多種多様な機構が提案されている。光 黒化について多くの研究者は、光黒化の原因として、孤立電子対(Lone・pair : LP)の役割に重点をおいている。即ち、光異化発生の原因はカルコゲン孤立電子対の相互作用における変化であると考え、孤立電子対一孤立電子対の相互
作用が増加すると、価電子帯(ValenceBand:VB)が広くなり、それによってバンドギャップが減少し、光黒化現象が起こると考えている。 これまでに提案されたモデルは次のように分類することができる。図2・1 に光構造変化のモデルを図示する。まず光照射によって原子(カルコゲン)の 位置が変わる。 5・6これを"モデル1''と称する。次は光照射によって原子間 の結合が切れたり、変わったりする。 7・8これを"モデル2"とする。しかし、 いずれのモデルも、光照射によって励起されるのは特定の原子のみである。す なわち、原子の緩和を誘起する光異化または体積膨張(Volume Expansion : vE)が、特定のカルコゲン原子周辺に生じるとしている。例えば、モデル1 に属する結合が"ねじれ.る"モデル6では、光子がカルコゲン原子上の特定の 孤立電子対に吸収され電子を放出し、それによって陽電荷を帯びる。この陽電 荷を帯びた原子は、クーロン引力によって結合が"ねじれ" 、最も近いカルコ ゲン原子に近づく。電子、正孔の対が再結合した後、原子が準安定位置に落ち 着くために孤立電子対一孤立電子対相互作用がさらに強力になり、それによっ て価電子帯が広くなり,光黒化が生じる。しかし、このモデルは体積膨張(VE) の発生を説明できない。 一方、 Elliott7はカルコゲナイド・ガラスで見られる可逆的光誘起現象(棉 造的、機械的及び光学的変化)の大部分は、分子間及び分子内での結合の切断 (または弱まり)の組み合わせをともなうー様な結合切断機構に基づいている、 としている。 Kolobovら8は、高精度広域Ⅹ線吸収微細構造四ⅩAFS: Extended
x-ray absorption丘ne structure)測定及びラマン散乱測定から、多重配位位置 の対間に動的結合が生じる事によって発生する光励起状態のセレンの配位数 の増加を見いだした。これは、孤立電子対の役割を実験で初めて証明し、光に ょる可逆的構造変化がアモルファス・カルコゲナイドに固有である事を示した。 これはモデル2に対応する.しかしながら、 E11iottのモデルもKolobovらの 実験事実も光照射によって見られる体積変化(VE)を説明することができな い。
図2-1 a-Seを例にとった光構造変化モデルのいろいろ
表2-1にAs2Se3、 As2S3、 GeSe2及びGeS2の化学量論組成であるカルコゲ
ナイドガラスの光構造変化とPD特性を示す。9この表の二段目は局所構造の柔 軟性の目安として平均配位数mおよび結合角の自由度(結合のイオン性)に
関連する電気陰性度の差(x A-XB)であるo mが同じであればx A-XBが 大きい場合に、
1∠喝VEoが大きくなる.
9As2Se3 As2S3 GeSe2 GeS2
E.[eV] 1.76 2.41 2.20 3.15 AE. -0.015 -0.045 -0.032 -0.075
ー∠WoVE.
8.52×10ー3 1.82×10ー2 1.46×10 2 2.38×10 2 X^-XB 0.22 0.30 0.44 0.52 m 2.40 2.40 2.67 2.67 MQAV/V
EV 3.3×10 3 4.4×10 3 6.1×10 3 6.0×10ー3 3.7×10 3 4.7×10ー3 Ⅹ線回MQ 折変化EV Yes Yes Yes 分光感度 α≧103cm 1 α≧103cm 1 α≧103cm 1 xA -XB :合金A,Bの組成元素の電気陰性度の差 m :平均配位数 表2-1光構造変化(及びPD)の物質依存性前述のモデル1及びモデル2において、根本的な問題点は、特定の原子が 励起される理由を説明出来ないことである。価電子帯の上部は孤立電子対バン ドによって形成されているから、特定の原子が励起される根拠はない。励起さ れる可能性はどの孤立電子対も同じであるため、光異化や体積膨張は、マクロ スコピックまたはメゾスコピックの相互作用が優勢であると予想される。従っ て、光異化または体積膨張の原因は、個々の原子ではなく、バンド状態(また はバンドテイル)の電子や正孔であると考える。 本研究では、光黒化及び体積膨張の発生について新しいモデルを提案する。 このモデルを"モデル3" 10とする。このモデルも孤立電子対の役割を考慮し ている。モデル3では、光照射によってアモルファス特にカルコゲナイドを形 成する層が陰電荷を帯び、それがクーロン反発を引き起こすと考える。このク ーロン反発が膨張とすべりの原因となり、それによって体積膨張と光異化現象 が生じる。このモデルを用いれば、体積膨張と光黒化現象が十分に旨く説明で きる。このモデルの詳細は第5章で述べる。 モデル1 , 2及びこれまでの過去の測定はすべて蒸発源に平行な基板での 蒸着(フラット蒸着)とバルク・ガラスについて提案されたものである。光に ょって誘起される現象は、蒸着条件を変えることで、例えば蒸着角度(斜方蒸 着)を変えることで、現象を大幅に増大させることが可能である。斜方蒸着に おける膜は組成原子密度が低いため、光を照射すると大きな変化が生じる可能 性があり、実際に大きな変化が観測されたと報告されている。 11・14フラット蒸 着と斜方蒸着の違いにおけるさまざまな現象は、次節で詳しく述べる。そして 斜方蒸着における枇素系、ゲルマニュウム系の"大規模な"光誘起現象の構造 変化モデルは、 "モデル3" 10を拡大し適用することで新しいモデルが提案でき る。この新しいモデルは第5章で詳しく述べる。
§2.2
フラット蒸着と斜方蒸着における構造変化
バンドギャップ以上のエネルギーを持つ光の照射は、特定のアモルファ ス・カルコゲナイド薄膜に様々な物理的、 2,11・15-17及び化学的特性18・19の可逆的 及び不可逆的変化を生み出すことが知られている。 11光収縮について、 -1%の 光収縮が枇素系アモルファス・カルコゲナイド半導体で報告されている。 16・20光 収縮が増大できれば、光学的記憶素子、画像処理、パターンの再現、位相ホロ グラフィ等21122123の領域での可能性がある. a-Se-Ge膜についてSinghらの研 究は、 11膜の斜方蒸着によって、すべての光誘起効果が大きくなることを報告 している。図2-2で示すように蒸着角度8 0度でのアモルファスSeo.75Geo.25膜 では蒸着角度以外は同一条件で12%もの、光収縮が観測されている0I
Ln Ul しU Z X ⊆⊇ :工 ト一 三 LL) LD ≡ く エ U ■■」 i Z O トー U < ⊂亡: しL 0 0. o 20 LO 60 80ANGしE OF DEPOStTtON
(degrecs卜・・」-図2-2 a-Seo.75Geo.25膜(膜厚1 FLm)の蒸着角度 と膜厚の変位量の関係図11 図213でフラット蒸着と斜方蒸着を比較した。斜方蒸着において、大きな変 化量が観測されるのは、蒸着時に膜がコラム形状となるため、図2・4で示すよう に薄膜の原子密度がより低くなるためといわれている。 12その実験結果も確認さ れている。 11 13
図2-3 フラット蒸着と斜方蒸着の蒸着密度
10
ANGLE OF OEPOSmON( degrees) 80 7 i ミ ⊂) 勺 'こー Lq く⊃ Z く エ U つ- ■・・-UI ≡ l▲J ⊂)
§2.3
試料作製
★2.3.1
As系試料[As2Se(S)3]と
Ge系試料[GeSe(S)2]の蒸着
アモルファス物質は、固体を液化あるいは気化させた後、急冷し再び固 化させることにより作製される。すなわち、急冷によって結晶成長を妨げる ことでアモルファス状態を実現している。これは結晶が十分な熱と時間をか けて結晶成長させ作製されるのとは対照的である。 薄膜作製法は、気相状態にある原子、分子、イオン、ラジカルなどを基 板に堆積させる気相法と、液体あるいは溶液から作成する液相法の2つに大 別される。気相法はさらに真空蒸着法やスパッタリング法など物理現象を利用した物理気相成長法(PVD: Physical Vapor Deposition)と化学反応を利用 した化学気相成長法(CVD: Chemical Vapor Deposition)とに分けられる。本 研究に用いたカルコゲナイド系アモルファス半導体a・As2Se(S)8と
a-GeSe(S)2の薄膜はPVDである真空蒸着法で作製した。真空蒸着法は、真空 中でソースとよばれるバルクの蒸発源を加熱して気化させ、気化した原子ま たは分子を基板上に堆積させ膜形成を行う方法である。
図2-5に室温で蒸着を行う場合の概略図を示す。装置は日本真空技術K.K EBB-6型である。基板は、蒸着前にトリクロロエチレン、アセトン、エタ ノールにて超音波洗浄を行った。また蒸着源には、液相凍結法によって作製 された高純度バルクガラスを使用し、これをあらかじめ空焼きを施したボー ト上に並べ、ボートに交流電圧を印加し抵抗加熱することで試料を蒸発させ 基板に堆積させる。 これまで本研究室で使用されてきた試料(例えば、 a-As2S3、 a-As2Se3 a-GeSe2、 a-GeS2など)は、室温での蒸着で十分な冷却スピードが得られ、 結晶化は起こらない。図2-5に示す真空ベルジャー内に設けられた、モリブ デンボート(Moボート)に蒸着材料を乗せて、上方に80度の角度で設けら れた基板固定具にシリコン基板(20mmX20mm)及びコ-ニング7059ガ ラス(10mmX20mm)をセットする。シリコン基板とコ-ニングガラスは 同一条件下での蒸着を必要とするため、同じ基板固定金具に両基板をセット して同時に蒸着を行った。蒸着時の諸条件は次の通りである。 真空度 ・-2×10-6Torr 基板温度 室温 表2-2 蒸着条件
★2.3.2
光照射方法
図2-6 光照射器具 光照射の諸条件 材料 光源 照射強度 照射時間 真空度 ⅠR カット 照射面積 Se系 ハロゲン 40mW 2時間 ・-2×10-4 水 直径 ランプ /cm2 Tory フィルタ 5mm S系 水銀灯 40mW 2時間 -2×10-4 水 直径 /cm2 Torr フィルタ 5mm 表2-3 光照射の諸条件★2.3.3
熱処理方法
材料 温度 ガラス転移温度 熱処理時間 真空度
As2Se3 433K 443E 2時間 -2×10-6Torr As2S3 453K 463K 2時間 ・-2×10-6Torr GeSe2 473E 673K 2時間 ・-2×10-6Torr GeS2 473K 673K 2時間 -2×10-6Torr Tg:ガラス転移温度 表2-4 熱処理条件 熱処理温度についてはAs系はTg(ガラス転移温度)の10K低い温度で行っ た. Ge系はTgの200K低い温度で行った。 Ge系のTgは高いので、 Tg温度 近くで熱処理を行うと、薄膜の蒸発現象が発生する。従って本研究でも他の研 究者が採用した200 K低い熱処理温度を採用した。
1 T. Kawaguchi, S. Maruno
and Ke. Tanaka, J. App. Phy貞., 73 (1993) 4560.
2 a.P. De Neufvile, S.C. Moss,
and S.R. Ovshinsky, J. Non-Cry告t. Solids. 13 (1973-1974)
191.
3 K. Shimakawa, A.V. Kolobov,
and S.R. Elliott, Adv. Phys.44 (1995) 475.
4 H. Hisakuni,
and Ke. Tanaka, Appl. Phys. Lett. 65 (1994) 2925.
5 K. Tanaka, J. Non-Cryst. Solids. 35-36 (1980) 1023. 6 Ke. Tanaka, Solid State Commun. 54
(1985)867; Rev. Sol. St. S°i.4 (1990) 641.
7S.R. Elliott, J, Non-Cryst. Solids. 81
(1986)7l.
8 A.V. Kolobov, H. Oyanagi, K. Tanaka,
and Ke, Tanaka, ・Phys. Rev. B. 55 (1997) 726・
9田中-宣、アモルファス半導体の基礎(1982)オーム社.
10 K. Shimakawa, N. Yoshida, A. Ganjoo, Y. Kuzukawa,
and J. Singh, Phil. Mag. Lett.
77 (1998)153.
ll B.
Singh, S. Rajagopalan, P.K. Bhat, D.K. Pandaya, and K.L. Chopra, Solid State・ Commun. 29 (1979) 167.
12 S. Rajagopalan, K.S. Harshvardhan, L,K. Malhotra,
and K.L. Chopra, J. Non-cryst・ Solid乱50 (1982)29.
13 C.A. Spence,
and S.R. Elliott, J. Non-Cry告t, Solids. 97-98 (1987) 1215 ; Diffusion
Defect Data. 53-54 (1987)227 ;Phys. Rev. B. 39 (1989) 5452.
14 Y. Kuzukawa, A. Ganjoo,
and K. Shimakawa, ∫. Non-Cryst・ Solids1 227-230 (1998)
715-718.
15 JIP deNeufville, Optical Properties
of Solids ; New Developments. edited by B・0・ Seraphin (Amsterdam: North Holland). (1976)437・
16 Ⅰ.Shimizu,
and H. Fritzsche, J. Appl. Phys, 47 (1976) 2969・
17 B.T. Kolomiets, S,S Lantratova, Ⅴ.M. Lyubin, Ⅴ.P. Pukharov,
and M.A. Tagirdzhanov, Sov. Phys. Solid State. 18 (1976)686,
18 Y. Utsugi, S. Zembutsu, Appl. Phy乱Lett.
27(1975) 508.
19 H. Nagai, A. Yoshikawa, Y. Toyoshima, 0・ Ochi,
and T・ Mizushima, Appl・ Phys・ Lett・
28 (1976)145,
20 H. Hamanaka, K. Tanaka,
and S. Iizima, Solid State Commun, 23 (1977) 63.
21 D. Goldscbmidt, T. Bemsteinn,
and P.S. RudⅢan, Phys. Status Solidi(a)41 (1977) 283.
22 S. Zembutsu, Y. Toyoshima, T. Igo, and H. Nagai, Appl・ Opt, 14 (1975)3073・
23 M. Terao, H. Yamamoto, S.Asai,
and E. Maruyama, J・ Japan・ Soc・ Appl・ Phys・
第3章
試料基板の条件及び膜厚・
バンドギャップの測定
§3.1
はじめに
本研究遂行において試料の膜厚とバンドギャップの測定は必須の非常に大 切な測定項目である.薄膜膜厚の測定はエリプソメータが一般的であるが、本 研究では多量の膜厚測定が必要であるので手軽に測定でき、高精度な膜厚測定 器が必要である。そのため膜厚計は光干渉式膜厚計を採用した。膜厚のほかに、 光学定数の屈折率(n)と吸収係数Oi)も必要なため、市販の光干渉式膜厚計を改 造して基準膜厚計とした。光干渉式膜厚計は測定薄膜に対し非破壊かつ非接触 で測定可能なため、効率の良い測定が可能である。一方、光干渉式膜厚計の測 定値の信頼性を確かめるため触針式膜厚計を採用し、光干渉式膜厚計の信頼性 を確保した。光干渉式膜厚計の測定で、高精度のデータを確保する必要がある 場合は、測定試料基板は反射率の高い事が重要である。このため本研究の試料 基板は、今まであまり採用されていない、シリコンウエハ及びコ-ニング7059 を基板として採用した。以下の節で試料基板、光干渉式膜厚計、及びバンドギ ャップ測定について述べる。 本研究の特徴の一つは膜厚とバンドギャップの相関関係を明らかにするこ とである。そのためには膜厚とバンドギャップの測定を正確に、測定する必要 がある。従来方法、例えば光干渉式膜厚計でバンドギャップを算出できるし、 uv-VIS-NIR分光分析によっても膜厚は算出できる.しかしいずれの場合も測§3.2
試料基板の条件について
試料基板は後述する膜厚及びバンドギャップの測定のため、下記の条件が 必要となる。 1.研究に用いる光干渉式膜厚測定器は、試料基板の平面性が極力優れているこ とと,反射性が良好であることが必要である。 2.UV-VIR・NIR分光分析による、バンドギャップ測定は、試料基板の透明性が 良好であることが必要である。 以上の必要条件を満足する基板として膜厚測定用にはシリコンウエハ基板(6 インチ)を採用した。一方、バンドギャップ測定用にはコ-ニング社製ガラス 7059を採用した。 基板平面度データ、シリコン基板の反射率及びコ-ニング7059の透過率は表 3-1-3・3に示す. 基板 平面粗度 測定サイズ 規格出所 シリコンウエハ Rmax: 6インチ SEMⅠ 10Å (150mm) M1.8-`89 コ-ニング社 7059 Rmax: 100Å-150Å 300mmX400mm Corning社資料 表3-1平面度データ波長 反射率 波長 反射率 400nm 48.5% 632.8nm 35.0% 450nm 42.0% 650nm 34.5% 500nm 38.5% 700nm 34.0% 550nm 37.0% 750nm 33.5% 600nm 35.5% 800nm 33.0% 表3・2 シリコンウエハの反射率(波長632.8nmの反射率が公称反射率) シリコン基板の反射率:光を垂直入射したときの各波長における反射率 「信越半導体株式会社(SEMI)資料」による 材料 透過率 波長 板厚 7059 90%以上 350nm--700nm 2m 表3・3 石英ガラスの透過率 コ-ニング社製ガラス7059の透明度:光の透過率で規定 「Corning社資料」による
§
3.3
基板のサイズ及び測定位置
シリコン基板は20mmX20mmに切断し、コ-ニング7059基板は10mm .×20mmに切断して、アモルファス膜を蒸着した。また光照射の位置は図3-1 に示すように各基板のほぼ中央に、ほぼ直径5mmの円の範囲を照射した。 図3-1シリコン基板と光照射位置 膜厚の測定は図3・1に示すようにシリコン基板のほぼ、中心付近に直径 5mmの光照射を行う。測定ポイントは図3-2に示すように光照射範囲内で光照 射範囲の中心及びその中心から1皿皿及び2mm離れた位置で3時, 6時、 9時、 12 時の位置の、計9点を測定して、その平均値をとって測定値とした。一方、光 照射範囲外の部分の測定点は、図3-2に示すのように光照射範囲の中心より、 4mm及び5mm離れた位置で3時、 6時、 9時、 12時の位置の、計8点を測定して、その平均値をとって測定値とした。光照射前の試料の膜厚測定はシリコ
ン基板のほぼ中心を9点測定する。その測定位置は図3-2の光照射の位置と同 じである。20mm 4mm
g
⊂> 』】 EZn +-+ ーlIー.+++ + 十 十 lmm_llmm 、射範囲 5mm 図3-2 シリコン基板の膜厚測定点 バンドギャップの測定は、光照射前、光照射後とも試料基板のコ-ニング ガラス7059の中心付近を測定点とした。I
§3.4
膜厚測定方法
★3.4.1光干渉式膜厚測定装置の原理及び装置構成
現在、半導体や液晶のプロセスラインで使用されている膜厚測定器には, さまざまな方式がある。その中でも特に透明膜の測定は、非破壊、非接触の測 定を特徴とする光干渉式膜厚計(光干渉分光法)とエリプソメーター(偏光解 析法)が広く用いられている。これらはいずれも、薄膜内部の光の多重反射に ょる干渉効果を利用して膜厚を測定する。エリプソメータは古くから評価実績 があり、その測定の絶対値は一般に高く信頼されている。一方、光干渉式膜厚 計は換作の手軽さと良好な測定再現性、及び微少スポット測定を特徴として、 近年かなり普及している。また測定の絶対精度も、大幅な信頼性の改善がはか られている。 今回の膜厚測定は大日本スクリーン製造株式会社製の光干渉式膜厚計"ラ ムダエースⅤしM6000"を使用した。 1当装置は半導体、液晶の薄膜測定用と して市販されている。今回、光学定数(屈折率:n、吸収係数: k)をサンプル に応じて測定することが必要なため、付属しているコンピュータのプログラム ソフトの改造を行って各定数の測定を容易にした。光干渉式膜厚計の基本モデ ルは、図3・4に示すように照明型顕微鏡と分光器、及びデータ処理部のコンピュ ータから構成されている。 当膜厚計はサンプル面上の部分を組み込まれた照明型顕微鏡で観察しなが ら微少領域で測定することができ、最小測定スポットは¢ 1 〝m迄可能である。 検出器はイメージセンサーを搭載した同時測光型の分光器を使用している。 ccDで代表されるこのイメージセンサーは、十分な出力信号のダイナミックレ ンジを有している。 CCD受光素子個々の感度のばらつきは、シューディング補正を行うことにより解決している。この分光器は同時測定機能と駆動部を有し
ない特徴を生かし、全波長の情報を短時間で、しかも光量変動などの外乱要素 を受けにくい形で出力が取り出せる。検出情報の蓄積時間は数10ミリ秒以下と 高速なので、全雑音の暗電流は微弱である。そのため、波長スキャニングタイ プで高感度な検出器を備えた分光器と比較しても、はるかにS/N比の高い信号を取り出せることができる。従って現在ではこのイメージセンサーを検出器に したものが主流となっている。 分光器から得られたスペクトルのプロファイルは、膜厚に応じて山と谷を 形成するため、その膜の屈折率が分かれば、スペクトル波形の周期を求め容易 に膜厚を算出することができる。また、数〝m以下の薄い膜は、測定精度の高 いカーブ・フィット法を用いている。この方法は予め分かっている材質の膜で、 想定される範囲内の各膜厚に対応した分光反射プロファイルをコンピュータで 計算しておき、実際の測定で得られた波形と順次比較して、最も類似した計算 プロファイルをもたらす膜厚を測定値とする。この方法はプロファイルの計算 パラメータに測定サンプルの屈折率や吸収係数の波長分散、そして対物レンズ のNA値などの装置関数を盛り込むことにより、非常に精度の高い測定を可能 にする。
光干渉式膜厚計の測定原理をさらに詳しく解説する。薄膜による光の干渉 は古くから良く知られている現象で、水面上の油膜や、シャボン玉の呈する美 しい色等は、この薄膜の上面及び下面からの反射光が互いに干渉する結果生じ るものである。この干渉色は、膜の屈折率や厚さにより変化するので、この干 渉色を分光して、そのスペクトルを解析すれば、薄膜の厚さを測定できるo 空気(屈折率n2-1.0) ♂ 2:入射角 ♂ 1:屈折角 〟,:境界面1の反射率の振幅 r。 :境界面0の反射率の振幅 図3・5 単層膜-の入射光、反射光 図3-5は単層膜に光が入射し反射する場合を示す.一般に膜厚dl、屈折率 nlの薄膜が、屈折率他の基板上にあるとき、薄膜の上面に接する媒質の屈折率 をn2とすれば、反射率Rlは次の式で表される。
IRll2
-1-6l= 2 4nonl n2 n12(n..nl)2 -(n.2 -n22)(n.2-n12)sin2旦
2 4 7mldl A (3・1)(3・
2) これは膜の吸収係数が0であり、かつ入射光が、薄膜面に垂直に入射している と仮定した式である。垂直でない場合は次式で表される。JR.[2
r12 +ro2 +2rorl COS6l1+ro2r12 +2rorI COS6l
さらに膜に吸収係数が存在するときは次式となる。 Rlei^ = 4l= tan-1 -r.(1-r12)sinュ. rl(1+r.2) +(1+,12)cos61 (3・3) (3-4) (3・5) 式(3-3)(3・4)(3-5)におけるzb,nは、偏光の概念を導入しており、さらに式(3・ 4)(3-5)では、 zt),A, 6 1が複素数となり、求める膜の反射率Rlは極めて複雑にな る′。吸収係数がoであり、垂直入射であることを前提とすると、式(3-1)から反 射率Rlは波長1、膜厚dl、特定波長における基板、膜の屈折率[a)(1),nl(1)] の関数であるから、波長を定めれば、膜厚dlの試料の反射率Rlは容易に計算で きる.従って,特定波長における反射率より膜厚dlを求めることは可能である。 式(3・1)をdlについて解くと次式となる。
dlニスcos-1ユニ互.坐
47Zn1 2nl X=2nl(n2 +no)- 8nonln2 1-Rl/
〃1 -〝。)(〝。-〃1) L- (0, 1, 2, ・・・) (3-6) (3-7)(鶴) 100 80 60 40 20 0 400 知0 餌0 700 800(nm) 図3-6 実際の測定プロファイルを得るために以下に述べるソフト的な手法を用い ている。この測定器の光源には-ロゲンランプが用いられている。例えばシリ コンウエハーでキャリブレーション、即ち膜のない基板だけの状態で反射光を 分光したときの各波長に於ける強度をとったプロファイルを図3・6に示す。 400 500 600 700 800(nm) 図3・7 このシリコンウエハにシリコン酸化膜(SiO2)を作製したサンプルを測定した反 射光のプロファイルは図3-7である。 ここで図3-6と図3-7を重ねてみる-と図3-8になる.
(%) 100 80 60 40 20 0 400 500 600 700 800 図3-8 この波形はある意味で絶対強度の分布を示しているが経時的な変化、例え ば光■源の光量変化等によってプロファイルが変わる。膜のプロファイル図3-7 をキャリブレーションのプロファイルで割る、即ち各波長における比率を求め ると図3・9の様に干渉による情報のみとなる。
図3・10は以上で述べたソフト上の処理をしたシリコンウエハに5,897Åの As2Se3薄膜を作製したサンプルのプロファイルである. 400^s 500 600J 700 ^L 800(nm) 図3・10 このプロファイルを相対分光反射比率といい、次の計算式で膜厚値を求めるこ とが出来る。 d:I ・r-1: 4 ns nL Is A]. a-膜厚 (3-8) ここで、んは最も短波長側の山又は谷の位置の波長・ nsはその波長での屈折率、 ALは最も長波長側の山又は谷の位置の波長・ nLはその波長での屈折率、 Ⅹはそ の両者の間の山と谷の数で、図3-10ではⅩ-8である。 膜厚測定における光学定数を決定するフローチャートは図3-11に示す。 2 この測定理論は波長を一定波長ごとに分割し(部分波長領域) 、その波長領域 ごとに実測反射比率と理論反射比率とが一致するように光学定数を増減し、こ れに基づいて波長と共に連続的に変化する補正光学定数を定め,この補正光学 定数に基づいて透過膜の理論反射比率が実測反射比率に一致するように透過膜 の膜厚を再度決定する方法である。この方法は被測定試料に形成された薄膜の 光学定数が変化した場合でも、変化に対応させた補正光学定数に基づいて膜厚 を測定する方法であるので、正確な膜厚の測定ができる。 2
図3・11膜厚測定における光学定数の算出プロセスフロー
光学定数の算出プロセスフロー(☆)にあるCaucbyの多項式を以下に示す。
この測定器の基本仕様は表314に示す。測定領域は今回の測定ではめ 5 IL mを 使用した。 測定範囲 100Å-200,000Å _ i?-I:I:--
≡妻_≡≡≡_;_L;≡三:-_-___i_
-f享享_≡
¢1FLm, ¢2FLm, ¢5FLm, ¢10FLm, ¢20FLm 表3-4 光干渉式膜厚計の諸元★3.4.2
光干渉式膜厚計の信頼性補完
非接触式光干渉式膜厚計の信頼性を確認するために採用した膜厚測定器は 日本真空技術株式会社(ULVAC)製の触針式膜厚測定器である。 装置の型番は"DEKTAK II A"を採用した。この測定器の基本仕様は表3-5に 示す。双方で測定の結果、光干渉式膜厚計と触針式膜厚計の測定データの差異 は±1%以下であった。従って光干渉式膜厚計の信頼性を確認した。 水平解像度 500Å 垂直方向分解能 5Å 膜厚表示範囲(フルスケール) 50Å-655,000Å 走査距離 50〝m-30mm 触針圧 10-50mg(今回は10mgを使用) 触針半径 2.5,5.0,12.5,25.OFLm(今回は2.5FLmを使用) 表3・5 触針式膜厚測定器の諸元$3.5
バンドギャップ測定方法
試料のバンドギャップは、 UV・VISINIR分光分析装置(自記分光光度計) にて測定した透過率より算出した。この節では分光分析装置で測定した透過 率CI1.bs%)から吸収係数を求め、光学バンドギャップを算出する方法について 説明する。 この測定器の基本仕様は表3-6に示す。 測定波長範囲 190′-3200nm 分解能 0.1nm サンプリング間隔 0.5nm 波長正確さ紫外.可視域 ±0.3nm(スリット幅表示値0.2nmにて) 近赤外域 ±1.6nm(スリット幅表示値1nmにて) 測光正確さ ±0.3%T(0-loo‰) 表3-6 UV-VIS-NIR分光分析装置の諸元 アモルファス半導体は、原子配列に長距離秩序がなく、また短距離化学E v g(E ) 図3・12 アモルファス半導体の光学遷移過程 図3-12にアモルファス半導体のバンド図、及び図3-13に基礎吸収端付 近での吸収スペクトルの概形を示す。図中で、 Aの領域は、一般にTauc領 域と呼ばれており、価電子帯と伝導帯間の光学的電子遷移にもとずくものと されており、そのスペクトルは次式で近似できる。 a(hu)・hu= (hu-Eg)2 (3・11) ここでαは吸収係数、 huは光子エネルギー、そしてEgは光学バンドギャッ プである。 Bの領域はUrbacb領域と呼ばれ、次式の指数関数で近似できる。
α(hu)
∝exp(hu/Eu)
(3112) ここでEutまUrbach裾エネルギーと呼ばれている。この領域は図3112で示 すように、バンド裾状態とバンド間の遷移にもとづくものと考えられてい る。 Cの領域は、構造欠陥の関与した光学的電子遷移によるものと解釈され ている。#
L*尊
昏SEB
光子エネルギー
図3-13 アモルファス半導体における光吸収係数スペクトルの概形 本研究では、作製した試料の透過率を自記分光光度計にて測定し、そこ から吸収係数を求め、式(3・11)を用いて光学バンドギャップを決定した。以 下に透過率の測定から吸収係数および光学バンドギャップを求める方法に ついて説明する。 4 ガラス基板と試料との境界面の反射率をR2とすると、ガラス基板を透過 してきた光に対し(1-R2)の光が試料の中に侵入する。ここで、試料の膜厚を dl、吸収係数をalとすると、試料内で生じる光の吸収は1-exp(-aldl)と表さ れる。試料と空気との境界面での反射率をRlとすると、 (1-Rl)・(1-R2)・eXP(-α1dl)の光がこの境界面を透過し、 Rl ・(1-R2)・eXP(-α1d.) の光が反射することになる。ここでの反射光は、再び試料とガラス基板の境 界面で反射され、試料内で多重反射が生じる。この試料内での多重反射を考 慮すると、試料の透過率Tは次式となる。項比: Rl ・R2 ・eXP(-2aldl) の等比級数であるので、次式となる。 r= (1-Rl)・(1-R2)・eXP(-aldl) 1-Rl ・R2 ・eXP(-2aldl) 図3・14光の透過の様子 (3・15) (3・16) 次に、ガラス基板の厚さをd2、吸収係数をα2、ガラス基板表面での反 射率をR,とすると、試料とガラス基板を合わせた透過率Tlは式3-16を用い て次となる。 Tl = T・(1-R,)・exp(-a2d,) また、ガラス基板のみの透過率T2は次式となる。 T2 -(1-R3)・(1-R,)・exp(-a2d2) (3・17) (3・18) 分光計の出力する値は、試料側の透過率Tlを参照項側の透過率T2で割った比 であり、この値をTobsとすると、 robs
-Ti/T2
=T/(1-R,)
(3-19)となるo よって、試料の透過率Tは、分光光度計の測定結果Toぬより次のよ うに求められる。 T= Tobq ・(1-R,) ここで、上式をα1について解くと、 ・1
-ま1n[妄(
(1-Rl)・(1-R2)+4T・Rl ・R2 +(1-Rl)・(1-R2) (3-20) (3・21) となり,分光光度計の測定値Toぬから、式(3-20)と式(3121)を用いて試料の級 数係数α1が求められる。また、 2つの物質A、 Bの屈折率をそれぞれ〃.、 〝2 とすると、この境界面での反射率Rtま屈折率を用いて次のように表されるo R-(H)2
(3.22, 従って、試料の屈折率をnl、ガラス基板の屈折率をn2、空気の屈折率n,を1 とすると、上式のRl、 R2、 R,は次式で求められる.Rl-(H)2,ち-(H)2,
R3-(H)2
(3.23, 図3・15にバンドギャップ測定の概要を示す。なお図3・15でバンドギャ ップの算出を行うとき、膜厚値が必要であるが本研究では光干渉式膜厚計で 測定した正確な膜厚値を使用した。光学バンドギャップの算出は、求めた吸図 3-15 バンドギャップの測定概要