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カルコゲナイド半導体における 光及び熱による誘起変化機構の

第5章 カルコゲナイド半導体における

§5.1斜方蒸着したAs系及びGe系アモルファス

・カルコゲナイド半導体において光照射 によって生じる膜厚とバンドギャップの変 化の相関関係

光照射によって発生するアモルファス半導体の可逆的変化及び不可逆的変 化の機構についてはさまざまな説明が行われている。 4 10これらの研究は主に、

フラット蒸着にて作製された薄膜或いは溶融一急冷されたガラスに対して行わ れたものである。光照射による変化は蒸着条件を変えることにより変化する。

特に斜方蒸着で作製された薄膜においては、変化が顕著になる。これは第2章 でも説明したように、作製された膜がコラム形状となるため、薄膜の原子密度 がより低くなるためである。 11そのため、光の照射によってより大きな変化が 発生することが予想され、実際の実験においても大きな変化が発生することが 確認されている。 1卜13基板と蒸発源との間に角度をつけることにより、蒸着さ れた原子はポイドをその周辺に形成するため、原子密度は減少し、原子はコラ ム状に蒸着される。原子がポイドによって囲まれると、原子の周辺にはより多 くの自由空間が生まれるため、光子の照射によって原子の動ける自由度が大き くなる。斜方に蒸着した試料においては大きな変化が発生すると予想されたに も関わらず,その構造が柔軟かつコラム状であるという理由により、光の照射 によるさまざまな物性‑の影響について、とりわけAs系カルコゲナイド半導体

については、今日まで殆ど研究がなされていない。

本研究の第1番目の考察は、第4章で行った実験結果より、 "斜方蒸着し たAs系及びGe系アモルファス・カルコゲナイドにおける光照射による膜厚と

バンドギャップの変化の相関関係"明らかにすることである○つまり斜方蒸着 したAs系(As2Se3,As2S3)及びGe系(GeSe2,GeS2)カルコゲナイドの薄膜におけ る、光照射による膜厚及び光学バンドギャップ‑の影響について考察するもの である。また、光照射及び熱処理によって、これらの変化にどのような影響が あるかについても観察した。本研究では光照射及び熱処理によって発生する、

これらの材料の膜厚と光学バンドギャップの変化について、明らかな相関関係 があることを実証した。このような系統的研究が行われたのは初めてのことで あると理解している。

さて、第4章の実験結果より導き出される考察は次の通りである。 As系及 びGe系の膜ともに、光照射と熱処理について、膜厚の増大とバンドギャップの

減少、また、膜厚の減少とバンドギャップの増大は同時に起こり得ることであ る。これまでの研究結果によれば、 Ge系カルコゲナイドの収縮¢ontraction)と 白化(bleaching)は、他の研究者の結果と関連があるようであるo 11113斜方蒸 着したGe系カルコゲナイド‑の光照射の影響における、 SpenceとElliott1 2の 研究によれば、酸素結合によって生じる構造の再編成、及び光による表面酸化

は、バンドギャップの増加につながると主張しているo しかし彼らがこの結論 に達したのは、空気中で照射した試料を使ってのことである。 Singhら13は、

斜方蒸着したGe系カルコゲナイド薄膜の膜厚の変化の研究の中で、膜厚の縮小 の原因は光に照射されることにより原子間結合が変化し、膜のコラム状構造が 破壊されることにあると主張している。またRajgopalanら11は、バンドギャッ

プの変化は光による体積変化の結果であると主張しているo しかしながら、膜 厚とバンドギャップの変化の関係については、今日まで明らかにされていないo 既に述べたように、 As系及びGe系の試料の両方において、膜厚の増大とバン

ドギャップの減少は同時に発生する。一方、膜厚の減少とバンドギャップの増 大も同時に発生する。この現象は光照射だけでなく熱処理についても観察でき

る。このことによって、膜厚とバンドギャップの変化について、強い相関関係 があることが判明した。本研究において、アモルファス・カルコゲナイド半導

体における光照射及び熱処理による膜厚とバンドギャップの変化には強い相関

関係が存在すると、強く主張するものである。

第4章の実験結果から明らかになったことは、光照射による膜厚及び光学 バンドギャップの変化は、斜方蒸着された試料について、それぞれ最大で11.帆

と9.2%という"顕著"な結果が得られた。このような変化は、フラット蒸着試 料と比較して非常に大きなものである。フラット蒸着された試料の場合、膜厚

と光学バンドギャップの変化はより少ない。また斜方蒸着したAs系及びGe系 の試料は、光照射によるバンドギャップの変化がフラット蒸着された試料と同

じ挙動を示している。つまりAs系薄膜では光黒化現象, Ge系薄膜では光自化 現象である。また光照射前の熱処理では結果は異なり、フラット蒸着された試 料とは逆になっている。またGe系薄膜で観察された光照射と熱処理の影響は、

As系薄膜のものとはまったく逆になっている.

この節の結論としては、斜方蒸着(蒸着角度:80度)したAs系(As2Se3,As2S3) 及びGe系(GeSe2,GeS2)薄膜において、光照射と熱処理による膜厚とバンドギャ

ップの影響について研究してきた結果、熱処理によってAs系薄膜では膜厚は縮 小し、バンドギャップは増大する。また光照射によって膜厚は増大し、バンド ギャップは減少する。一方、 Ge系薄膜では熱処理と光照射した後の膜厚とバン

ドギャップの変化は、 As系薄膜とまったく逆である。さらに、光照射前後に熱 処理すると、 As系及びGe系ともに、必ず光照射とは逆の影響が認められた。

斜方蒸着した、カルコゲナイド半導体では、膜厚とバンドギャップの変化は著 しいものである。膜厚と光学バンドギャップの間には、強い相関関係が存在す ることを、改めて強調する。また、この相関関係は熱処理及び光照射に依存せ ず、同時に材料系つまりAs系、 Ge系に関係なく相関関係が認められる。これ は普遍的性質が存在することを表している。このような相関関係が立証された のは初めてである。以上の様子を図5‑1及び図5‑2で図示する。

試料

熱処理後 光照射後 熱処理後

(光照身寸前) (光照射後)

バンドギャップ変化

強い相関関係

増加

図5・2膜厚変化とバンドギャップ変化の相関関係

§5.2 アモルファス・カルコゲナイドガラスに

おける光照射による構造変化モデル(クー ロン反発による膨張とスリップモデル)

アモルファス・カルコゲナイド半導体にバンドギャップ光を長時間照射す ると可逆光構造変化が生じる。この研究は20余年にわたり行われているが、こ の変化の理解は未だに不充分である。 4・6・15 アモルファス・カルコゲナイド におけるこのような可逆変化は、ギャップ下照射16や紫外線照射17 によって

も観察されている。これらの光により誘発される可逆変化の主要な結果は、次 のように要約される。

1 )一般に光黒化(PD: Photodarkening)として知られるa‑As2S3における光 学バンドギャップの減少。その値はバンドギャップ値の減少として2%程度 が報告されている。

2)体積膨張(VE: Volume ‑expansion) 。その値はa‑As2S3の場合、体積増加 として0.5%程度が報告されている。

3) Ⅹ線測定における第一回折ピーク(FSDP : First Sharp Di飽actionPeak) の変化。

これらの変化はすべて、ガラス転移温度近くで熱処理をすることにより元に戻 すことができる。 PDとVEの関係については、文献15において不確かさが残

しかし、この両者の基本モデルにおいては、光の照射により励起される特

定の原子のみを考慮しており、 PDあるいはVEを誘発する原子緩和が特定の カルコゲン原子の周囲で発生することになっている。例えば、分類1)に属す る結合ねじれモデル6では、 1つの光子がカルコゲン原子上の特定のLPに吸収

され、それによりその原子は正の電荷を帯びる。この特定の正電荷の原子は、

別の一番近いカルコゲン原子に、この2つの原子間に働くクーロン相互作用(引 力)により発生する結合ねじれにより近づく。電子空孔対の再結合の後、準安 定の原子の位置はLPとLP間の相互作用をより強くし、 VBを広げ、その結果 pDがおきる。しかし、このモデルでは、 VEの発生を説明できない。さらに、

上記のモデルの基本的な問題は.、何故固体の中で特定の原子だけが励起される のかが分からないことである. VBの上端部はLP帯により形成されるから、

特定の原子だけが励起される理由は見当たらない。すべてのLP電子は同等の確 率で励起されるから、 PDとVEの両方の発生には"マクロスコピックまたは メソスコピック"相互作用が影響していると考えられる。したがって、バンド テイルの電子または空孔がPDまたはVEの原因になっていることが予測され、

個々の原子が原因ではないと考えられる。

ここでは、典型的なアモルファス・カルコゲナイドであるアモルファス As2Se(S)3におけるPDとVEの両方を説明する新しいモデルを提案するo As2Se(S)3は、図5‑3に示すように、基本的には層状構造を持つことが知られて いる。電子の移動度は空孔のそれよりもずっと低いので,光発生の電子の多く は伝導帯のテイルに局在し、光照射時の空孔は、デンバー光起電力の起源と考 えられるVBおよびVBテイル状態を通じて、光が照射されていない部分に拡散 する。本研究で提案するVEとPDメカニズムのモデルは、以下のようなもので

ある。

1)光照射中,光子を吸収する層は負の電荷を帯び、層間にク 一口ン反発相互作 用を発生させ、それによりフアンデルワ‑ルスカが弱まり、層間距離が増加す

る(VE)

。この作用は、図5‑3において矢印E (作用E)により示される。実 験で観測された1つの層内の硫黄原子が下方に延びる原子価角(結合角)の拡 大と、光照射によりカルコゲン原子が橋状結合した2つの枇素原子間の距離の 増加19は、作用Eに関係する反発力により説明できる。層間の反発力の反応は、

各層の圧縮力として作用する。ただし、第三配位領域(As・S・As・S)は変化せず、

このことは、 2つの隣接するAsS3のピラミッド間の二面角は橋状結合している カルコゲン原子における原子価角の増加と同時に変化することを示唆する。し かし、この作用でLPとLP間の相互作用の変化はそれほど大きくなく、よって

この段階でPDは誘発されないと考える。その理由を以下に記述する0 2

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