A
101 102 103 ‑
exposure
time(s)
104
図5‑7 Time dependence of△L & △E26
△いま膜厚ⅣE)の変化量を示し、 △Eはバンドギャップ四g)の変化量を示すo
§5.3 斜方蒸着におけるA8系カルコゲナイド ガラスの光照射による構造変化モデル
§5.1ではアモルファス・カルコゲナイドにおける光照射による膜厚とバン ドギャップの変化の相関関係を明らかにした。また§5.2ではアモルファス・カ ルコゲナイドにおける光照射による新しい構造変化モデルを提案した。この節 では斜方蒸着における枇素系カルコゲナイドガラスの光照射効果を§5.2の新
しい構造変化モデルを拡大適用することで説明する。
アモルファス・カルコゲナイドガラスにおける光照射による、種々の構造 変化はこれまでの章でも詳しく説明してきた。まず光照射によって原千(カル
コゲン)の位置が変わる構造変化モデル1。次に光照射によって原子間の結合 が壊れたり、変わったりする構造変化モデル2。いずれのモデルも根本的な問 題点は固体中で特定の原子が励起される理由を説明しがたいことである。この 間題点を解決するため、光黒化及び体膨張の発生モデルについて新しいモデル の提案をした。 2このモデルでも孤立電子対の役割を重視している。このモデル
では、光照射によって層が陰電荷を帯び、それが層間にクーロン反発を引き起 こすと想定している。このクーロン反発が膨張とすべりの動きをもたらし、そ れによって光黒化と体膨張が生じる。このモデルは光黒化と体膨張を十分に説
明することができる。
光によって誘起される変化は、斜方蒸着する事で大幅に増大させることが 可能である。斜方蒸着された膜はコラム構造を有し、フラット蒸着に比べ、約
半分の原子密度になることが報告されており、 11光を照射すると大きな変化が 生じる可能性がある。事実、実際に大きな変化が観察されている。 1・1卜13基板を 蒸着ボートに対し、ある角度で置くと、堆積した原子によってその近辺には影、
っまりポイドが生じ、そのために原子密度が低下し、原子はコラム状に堆積す
る。原子がポイドに囲まれているために,周囲に多くの自由空間があり,光に 照射されると自由に変化することができる。斜方蒸着の試料ではその自由空間
のために、大きな変化が予想されるにもかかわらず、現在までのところ、光照射がさまざまな特性に与える影響を調べる研究はほとんど行われていない。膜 を斜方蒸着すると光によって誘起される全ての影響が大幅に増大することは,
多くの著者によって明らかにされている。蒸着角度が80度で成膜された
Seo.75Geo.25のアモルファスカルコゲナイド膜では、 12%もの光収縮が観察され
ている。 13
筆者は、 GeおよびAs系ガラスに光照射および熱処理を行うと、バンドギ ャップと膜厚に「大規模な」変化が生じるという詳細な実験結果を最近発表し た。 1その変位規模は体積で最大11.0%、バンドギャップで最大9.2%の「大規 模な」変化を観察することができた。斜方蒸着したカルコゲナイド膜に光を照
射すると、 Ge系カルコゲナイドで「大規模な」変化が見られるのみならず、 As 系カルコゲナイド膜でも体積とバンドギャップに「大規模な」変化が見られる
ことがわかった。また、これらの膜厚とバンドギャップの変化に対して強い相 関関係が存在することを見いだした。 1
本節では、斜方蒸着したAs系の(As2Se3,As2S3)カルコゲナイド薄膜の膜 厚および光バンドギャップについて、光によって誘起された影響を述べる。ま た、光照射の前および後の熱処理がこれらの変化に与える影響を観察した結果 を述べる。光照射と熱処理について、これらの膜厚および光バンドギャップの 変化の相関関係を明らかにする。最近筆者らが提案した"クーロン反発による 膨張とスリップモデル" 2を拡大適用して、斜方蒸着膜の光黒化と体積膨張の"大 規模な"変化を説明する。
すでに述べたように、他の研究者も斜方蒸着膜での「大規模な」変化を観察 しており、その変化をさまざまに説明している。斜方蒸着膜には多くのポイド があり、多孔性の層構造をしているために、 11・13一般には光照射によるポイ
ドの崩壊が大規模な変化をもたらすと考えられている。光を照射した場合に小 角Ⅹ線散乱(SAXS: Small angle X・ray scattered)密度で見られる著しい変化に ついても、多くの研究者は、斜方蒸着した薄膜での大規模な光収縮は、光照射
によって生じた大きな構造変化が直接原因して生じたものであると提案してお り、 12・27これは、光に誘起されたポイド崩壊が光収縮をもたらす現象に基づ いて解釈されている。 27しかしながら、 SpenceおよびElliottは12,広域Ⅹ線
多様なモデルが、多くの研究者によって提案されているが、 5 7・19これらは体積 の変化を説明することができない。これらのモデルは、斜方蒸着膜で見られた
体積の"大規模な"変化を十分に説明することはできないと思われる。
筆者らが最近提案した"クーロン反発による膨張とスリップモデル" 2なら, 体積の変化を十分に説明することが可能である。したがって、このモデルを一
部変更したうえで、次に斜方蒸着膜で見られた"大規模な"変化を説明する。
周知のとおり、斜方蒸着したカルコゲナイド膜は多くのポイドを持つ構造
であり、 28原子密度はフラット蒸着膜の原子のほぼ半分である。 11また原子の 周りには多くの自由空間が存在することが考えられる。従って層は動きやすく、
従って反発動作も容易となる。このことは, VEⅣolumeexpansion)となる.つ まり膜厚が厚くなる。自由空間が多いと言うことは層間のすべりも、大きくな
り、従ってバンドギャップの変化量も大きくなる。
第4章の実験において斜方蒸着膜に"大規模な"体積変化が生じる現象 が観測された。この原因は、斜方蒸着膜ではポイドが多いため、光照射時に光 に晒されるカルコゲン原子が多くなり、生じた電子の多くは伝導体(CB)チ イルに局在することになる。その結果クーロン反発力が大きくなり、カルコゲ ン層がその平衡位置から離れることから、 LP‑LPの相互作用全体が増加する ために価電子帯(VB)が広がり、それが光黒化伊D)をもたらす. LP‑LPの相 互作用で価電子帯(VB)上端のエネルギーは増加すると考えられる。これに
よって価電子帯は広がるが、伝導帯はほとんど変わらない。 20斜方蒸着膜で は周囲にポイドがあるために、カルコゲン層の方向に沿ったすべりもフラット 蒸着膜の場合より大きくなり、その結果、 LP‑LPの相互作用の増加がより大
きくなってバンドギャップに、より大きな変化が生じるようになる。励起され た電子は光の照射中はバンドテイルに留まるとすれば、照射範囲のすべての層 は負の電荷を帯びることになり、反発力を生じさせる。この反発エネルギーは、
フアンデルワ‑ルスカ(フラット蒸着膜の場合、一層につき約750meVと推
定される) 6を減少させることによって体積膨張を誘起することがある。 80度 の入射角で蒸着した膜における原子密度はフラット蒸着膜のほぼ半分であり、
11また、膜にポイドが存在することから、多くのフリースペースが存在し、そ の結果として大きな体積膨張を引き起こすものと思われる。
この節の目的は斜方蒸着での"大規模"変化についての説明である。まと めを行うと図5‑8のようになる。
匝亘垂】
大きなフリースペース
反発動作が容易
vE(体膨張)の大きな変化
層のスリップ動作が 大きくなる
pD(光黒化)の大きな変化
図5‑8 斜方蒸着によるVEとPDの大規模変化
S5.4 まとめ
1.膜厚とバンドギャップを独立で測定し、小さな膜厚変化とバンドギャップ 変化を正確に測定することに成功した。
2.アモルファス・カルコゲナイド半導体において膜厚変化とバンドギャップ 変化の間には強い相関関係があることを見いだした。
3.光膨張現象と光異化現象を説明する新しい構造変化モデルを提案した0
1 Y. Kuzukawa, A. Ganjoo, and K Shimakawa, J. Non‑Cry告t. Solids. 227(1998) 715,
2 K・ Shimakawa, N. Yoshida, A. Ganjoo, Y. Kuzukawa, and a. Singh, Phil. Mag. Lett.
77 (1998) 153.
3 Y・ Kuzukawa, A. Ganjoo, K. Shimakawa, and Y. Ikeda, Phil. Mag. (1998).(In Press).
4 K. Shimakawa, A.V. Kolobov and S.氏. Elliott, Adv. Phys. 44 (1995) 475.
5 K. Tanaka, J. Non‑Cry告t, Solids. 35‑36 (1980) 1023.
6 Ke. Tanaka, Solids State Commun. 54 (1985)867; Rev. Sol. St. Sci. 4 (1990)641.
7 S.R. Elliott, J. Non‑Cry告t. Solids. 81 (1986) 71.
8 R.A. Street, Solid State Commun. 24 (1977)363.
9 A.V. Kolobov and G.J. Adriaenssens, Philos. Mag. B. 69 (1994)21.
1 0 H. Fritzsche, Philo臥Mag. B 68 (1993)561.
1 1 S. Rajagopalan, K.S. Harshvardhan, L.K Malhotra and K.L. Chopra, J. Non‑Cry告t, Solids. 50 (1982)29.
1 2 C.A. Spence and S,R. Elliott, J. Non‑Cry告t. Solids. 97‑98 (1987) 1215 ; Diffusion Defect Data. 53‑54 (1987)227; Phys. Rev. B 39 (1989)5452.
1 3 B. Singh, S. Rajagopalan, P.K. Bhat, D.K. Pandaya, and KL. Chopra, Solid State・
Commun. 29 (1979) 167,
1 4 K. Starbova, J. Dikova, and N. Starbov, J, Non‑Cryst. Solids. 210 (1997)261.
1 5 G. Pfeiffer, M,A. Paesler and S.C, Agarwal, J. Non‑Cryst. Solids. 130 (1991) 1111
1 6 Ke. Tanaka and H. Hisakuni, J, Non‑Cryst. Solids. 198‑200 (1996) 714.
1 7
K. Hayashi, D. Kato and K. Shimakawa, I. Non‑Cryst. Solids. 1981200(1996)696・
1 8 A.V. Kolobov, H. Oyanagi, K. Tanaka, and Ke Tanaka. Phys. Rev. B. 65 (1997)726・
1 9 C,Y. Yang, M.A. Paesler and D.E. Sayers, Phys, Rev, B 36 (1987)9160.
20 T. Watanabe, H. Kawazoe and M. Yamane, Phys. Rev. B 38 (1988)5677.
2 1 E.M. Purcell, Electricity and Magnetism. Berkeley Physics Course. Vol・ 2 (1985)
second edition(New York: McGraw‑Hill).