バンドギャップの測定
§3.1 はじめに
本研究遂行において試料の膜厚とバンドギャップの測定は必須の非常に大 切な測定項目である.薄膜膜厚の測定はエリプソメータが一般的であるが、本 研究では多量の膜厚測定が必要であるので手軽に測定でき、高精度な膜厚測定 器が必要である。そのため膜厚計は光干渉式膜厚計を採用した。膜厚のほかに、
光学定数の屈折率(n)と吸収係数Oi)も必要なため、市販の光干渉式膜厚計を改 造して基準膜厚計とした。光干渉式膜厚計は測定薄膜に対し非破壊かつ非接触 で測定可能なため、効率の良い測定が可能である。一方、光干渉式膜厚計の測 定値の信頼性を確かめるため触針式膜厚計を採用し、光干渉式膜厚計の信頼性
を確保した。光干渉式膜厚計の測定で、高精度のデータを確保する必要がある 場合は、測定試料基板は反射率の高い事が重要である。このため本研究の試料 基板は、今まであまり採用されていない、シリコンウエハ及びコ‑ニング7059
を基板として採用した。以下の節で試料基板、光干渉式膜厚計、及びバンドギ ャップ測定について述べる。
本研究の特徴の一つは膜厚とバンドギャップの相関関係を明らかにするこ とである。そのためには膜厚とバンドギャップの測定を正確に、測定する必要 がある。従来方法、例えば光干渉式膜厚計でバンドギャップを算出できるし、
uv‑VIS‑NIR分光分析によっても膜厚は算出できる.しかしいずれの場合も測
§3.2 試料基板の条件について
試料基板は後述する膜厚及びバンドギャップの測定のため、下記の条件が 必要となる。
1.研究に用いる光干渉式膜厚測定器は、試料基板の平面性が極力優れているこ とと,反射性が良好であることが必要である。
2.UV‑VIR・NIR分光分析による、バンドギャップ測定は、試料基板の透明性が 良好であることが必要である。
以上の必要条件を満足する基板として膜厚測定用にはシリコンウエハ基板(6 インチ)を採用した。一方、バンドギャップ測定用にはコ‑ニング社製ガラス 7059を採用した。
基板平面度データ、シリコン基板の反射率及びコ‑ニング7059の透過率は表 3‑1‑3・3に示す.
基板 平面粗度 測定サイズ 規格出所
シリコンウエハ Rmax: 6インチ SEMⅠ
10Å (150mm) M1.8‑̀89
コ‑ニング社
7059
Rmax:
100Å‑150Å
300mmX400mm Corning社資料
表3‑1平面度データ
波長 反射率 波長 反射率
400nm 48.5% 632.8nm 35.0%
450nm 42.0% 650nm 34.5%
500nm 38.5% 700nm 34.0%
550nm 37.0% 750nm 33.5%
600nm 35.5% 800nm 33.0%
表3・2 シリコンウエハの反射率(波長632.8nmの反射率が公称反射率) シリコン基板の反射率:光を垂直入射したときの各波長における反射率
「信越半導体株式会社(SEMI)資料」による
材料 透過率 波長 板厚
7059 90%以上 350nm‑‑700nm 2m
表3・3 石英ガラスの透過率
コ‑ニング社製ガラス7059の透明度:光の透過率で規定
「Corning社資料」による
§ 3.3 基板のサイズ及び測定位置
シリコン基板は20mmX20mmに切断し、コ‑ニング7059基板は10mm
.×20mmに切断して、アモルファス膜を蒸着した。また光照射の位置は図3‑1 に示すように各基板のほぼ中央に、ほぼ直径5mmの円の範囲を照射した。
図3‑1シリコン基板と光照射位置
膜厚の測定は図3・1に示すようにシリコン基板のほぼ、中心付近に直径 5mmの光照射を行う。測定ポイントは図3‑2に示すように光照射範囲内で光照
射範囲の中心及びその中心から1皿皿及び2mm離れた位置で3時, 6時、 9時、 12 時の位置の、計9点を測定して、その平均値をとって測定値とした。一方、光
照射範囲外の部分の測定点は、図3‑2に示すのように光照射範囲の中心より、
4mm及び5mm離れた位置で3時、 6時、 9時、 12時の位置の、計8点を測定
して、その平均値をとって測定値とした。光照射前の試料の膜厚測定はシリコ
ン基板のほぼ中心を9点測定する。その測定位置は図3‑2の光照射の位置と同じである。
20mm
4mm
g
⊂>
』】
EZn +‑
+ ーlIー.+++
+ 十 十
lmm̲llmm
、射範囲
5mm
図3‑2 シリコン基板の膜厚測定点
バンドギャップの測定は、光照射前、光照射後とも試料基板のコ‑ニング ガラス7059の中心付近を測定点とした。
I
§3.4 膜厚測定方法
★3.4.1光干渉式膜厚測定装置の原理及び装置構成
現在、半導体や液晶のプロセスラインで使用されている膜厚測定器には, さまざまな方式がある。その中でも特に透明膜の測定は、非破壊、非接触の測 定を特徴とする光干渉式膜厚計(光干渉分光法)とエリプソメーター(偏光解 析法)が広く用いられている。これらはいずれも、薄膜内部の光の多重反射に
ょる干渉効果を利用して膜厚を測定する。エリプソメータは古くから評価実績 があり、その測定の絶対値は一般に高く信頼されている。一方、光干渉式膜厚 計は換作の手軽さと良好な測定再現性、及び微少スポット測定を特徴として、
近年かなり普及している。また測定の絶対精度も、大幅な信頼性の改善がはか られている。
今回の膜厚測定は大日本スクリーン製造株式会社製の光干渉式膜厚計"ラ ムダエースⅤしM6000"を使用した。 1当装置は半導体、液晶の薄膜測定用と して市販されている。今回、光学定数(屈折率:n、吸収係数: k)をサンプル に応じて測定することが必要なため、付属しているコンピュータのプログラム ソフトの改造を行って各定数の測定を容易にした。光干渉式膜厚計の基本モデ ルは、図3・4に示すように照明型顕微鏡と分光器、及びデータ処理部のコンピュ
ータから構成されている。
当膜厚計はサンプル面上の部分を組み込まれた照明型顕微鏡で観察しなが ら微少領域で測定することができ、最小測定スポットは¢ 1 〝m迄可能である。
検出器はイメージセンサーを搭載した同時測光型の分光器を使用している。
ccDで代表されるこのイメージセンサーは、十分な出力信号のダイナミックレ ンジを有している。 CCD受光素子個々の感度のばらつきは、シューディング補
正を行うことにより解決している。この分光器は同時測定機能と駆動部を有し
ない特徴を生かし、全波長の情報を短時間で、しかも光量変動などの外乱要素を受けにくい形で出力が取り出せる。検出情報の蓄積時間は数10ミリ秒以下と 高速なので、全雑音の暗電流は微弱である。そのため、波長スキャニングタイ プで高感度な検出器を備えた分光器と比較しても、はるかにS/N比の高い信号
を取り出せることができる。従って現在ではこのイメージセンサーを検出器に したものが主流となっている。
分光器から得られたスペクトルのプロファイルは、膜厚に応じて山と谷を 形成するため、その膜の屈折率が分かれば、スペクトル波形の周期を求め容易 に膜厚を算出することができる。また、数〝m以下の薄い膜は、測定精度の高 いカーブ・フィット法を用いている。この方法は予め分かっている材質の膜で、
想定される範囲内の各膜厚に対応した分光反射プロファイルをコンピュータで 計算しておき、実際の測定で得られた波形と順次比較して、最も類似した計算 プロファイルをもたらす膜厚を測定値とする。この方法はプロファイルの計算 パラメータに測定サンプルの屈折率や吸収係数の波長分散、そして対物レンズ
のNA値などの装置関数を盛り込むことにより、非常に精度の高い測定を可能 にする。
光干渉式膜厚計の測定原理をさらに詳しく解説する。薄膜による光の干渉 は古くから良く知られている現象で、水面上の油膜や、シャボン玉の呈する美
しい色等は、この薄膜の上面及び下面からの反射光が互いに干渉する結果生じ るものである。この干渉色は、膜の屈折率や厚さにより変化するので、この干 渉色を分光して、そのスペクトルを解析すれば、薄膜の厚さを測定できるo
空気(屈折率n2‑1.0)
♂2:入射角
♂1:屈折角
〟,:境界面1の反射率の振幅
r。 :境界面0の反射率の振幅
図3・5 単層膜‑の入射光、反射光
図3‑5は単層膜に光が入射し反射する場合を示す.一般に膜厚dl、屈折率 nlの薄膜が、屈折率他の基板上にあるとき、薄膜の上面に接する媒質の屈折率 をn2とすれば、反射率Rlは次の式で表される。
IRll2
‑1‑6l=
4nonl 2n2
n12(n..nl)2 ‑(n.2 ‑n22)(n.2
‑n12)sin2旦
24 7mldl A
(3・1)
(3・
2)これは膜の吸収係数が0であり、かつ入射光が、薄膜面に垂直に入射している と仮定した式である。垂直でない場合は次式で表される。
JR.[2
r12 +ro2 +2rorl COS6l1+ro2r12 +2rorI COS6l
さらに膜に吸収係数が存在するときは次式となる。
Rlei^ =
4l= tan‑1
‑ r.(1‑r12)sinュ.
rl(1+r.2) +(1+,12)cos61
(3・3)
(3‑4)
(3・5)
式(3‑3)(3・4)(3‑5)におけるzb,nは、偏光の概念を導入しており、さらに式(3・
4)(3‑5)では、 zt),A, 6 1が複素数となり、求める膜の反射率Rlは極めて複雑にな る′。吸収係数がoであり、垂直入射であることを前提とすると、式(3‑1)から反 射率Rlは波長1、膜厚dl、特定波長における基板、膜の屈折率[a)(1),nl(1)]
の関数であるから、波長を定めれば、膜厚dlの試料の反射率Rlは容易に計算で きる.従って,特定波長における反射率より膜厚dlを求めることは可能である。
式(3・1)をdlについて解くと次式となる。
dlニスcos‑1ユニ互.坐
47Zn1 2nl
X=2nl(n2 +no)‑
8nonln2
1‑Rl
/
〃1 ‑〝。)(〝。‑〃1)L‑ (0, 1, 2, ・・・)
(3‑6)
(3‑7)
(鶴) 100
80
60
40
20
0
400 知0 餌0 700 800(nm)
図3‑6
実際の測定プロファイルを得るために以下に述べるソフト的な手法を用い ている。この測定器の光源には‑ロゲンランプが用いられている。例えばシリ
コンウエハーでキャリブレーション、即ち膜のない基板だけの状態で反射光を 分光したときの各波長に於ける強度をとったプロファイルを図3・6に示す。
400 500 600 700 800(nm)
図3・7
このシリコンウエハにシリコン酸化膜(SiO2)を作製したサンプルを測定した反 射光のプロファイルは図3‑7である。
ここで図3‑6と図3‑7を重ねてみる‑と図3‑8になる.