Title
Severe Combined Immunodeficiency (SCID) マウスを用いたイ
ヌ腫瘍株の樹立とその増殖および転移の特性( 内容の要旨 )
Author(s)
杉本, 健
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 甲第020号
Issue Date
1995-09-22
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/2074
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及 び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 旦 杉 本 健 (山梨県) 博士(獣医学) 獣医博甲第20号 平成7年9月22日 学位規則第4粂第1項該当 連合獣医学研究科 獣医学専攻 東京農工大学 Severe CombinedIJnmunOdeficiency(SCID) マウスを用いたイヌ腫瘍株の樹立とその増殖お よび転移の特性 主査 東京農工大学 助教授 副査 東京農工大学 助教授 副査 帯広畜産大学 教 授 副査 岩 手 大 学 助教授 副査 岩 手 大 学 教 授 副査 岐 阜 大 学 教 授 嗣 夫 夫 堆 助 明 幸 峯 明 茂 幸 忠 尾 崎 田 田 藤 丸 早 山 原 岡 工 論 文 の 内 容 の 要 旨
コンパニオンアニマルとしてのイヌやネコは長命化に伴い腫瘍性疾患が増加しているに
もかかわらず、良性腫瘍や早期癌は手術により治療可能であるが、それ以外の癌は難治性 である。そこで、これらの効率的診断および治療の開発は小動物臨床における大きな課題 である。その解決には、癌症例の木目細かな械察だけでは不十分で、癌の本質を詳細に見極められる実験系鱒不可欠である。しかしながら、莞犬医領域では臨床と密接に連係をとれ
る実験系が殆ど機能していない。癌症例の個々に対応する実験系としてはin vitroおよぴ in vivoの様々な系があるが、ヒト癌の研究に広く使用されて多くの成果をあげている異種移植jnvivo実験系に注目した。異種腫瘍のレシピエントとしては、1970年代以降丁細
胞機能を欠損したヌードマウスが独占的かつ精力的に利用されてきたが、TおよびB細胞 横能を欠損した重度複合免疫不全(SC川)マウスが1983年に発見きれて以来、このマウスも ヒト癌の研究に使用されてきている。SCIDマウスはヌードマウスと比較して、ヒト癌の可移植性、増殖速度および転移能の克進が報告されているが、イヌ腫瘍の検討は皆無に等し
い。そこで本論文では、第一にSC川マウスにイヌ腫瘍を移植して可能な限り多くの膵癌株
を樹立し、株化樹立要因を分析した。第二に増殖および転移に特色を示す樹立株について、 症例個々の再現性と普遍性を追求した。第三にレシピエントであるSC川マウスとヌードマー143-しCO2を発生させることを示した。さらにGC/MSやIH-NMR等を用いて、トルエ
ンの分解代謝物質を明らかにし、その代謝経路を推定した。
第3章では、海岸に多量打ち上げられ処理、処分の必要な海藻の微生物による分解、除
去に関する基礎研究を行った。この研究ではカジメを材料とし、またカラム実験を採用し、 分解に関与する細菌叢の変化に注目し検討した。その結果、海藻をよく分解する2種類の
菌、Fjh・jo aJgJβ0ル九日cusとPgeudo爪0βag CムJoroJ-ap力isを分離した。またこれらの海藻
の分解においては好気下では無機化し、嫌気下でアルギン酸を蓄積することを示した。さ らに、窒素源の添加が海藻の分解を速めることを明らかにした。 第4章では、原油中に含まれ、悪臭をもつ2-nてルキルチオフェンを分解する両種を分 離した。そしてその分解菌EK-9891が形態学的特徴、生理生化学的性質とGC含量から Pseuわ劇08∂S fJuoresce〃Sであると同定した。本菌が各種の2-n一アルキルチオフェインを分 解し、抗生物質の修飾剤である2-n一チオフェイン酢酸を生成すること、ペプトン等の窒素 源の添加が、分解効率を上げることを示した。また2-nてルキルチオフェン顆の分解経路 ・を明らかにするため、GCやGC/MSを用いて、その分解生成物を同定し、その分解が β一酸化により行われ、最終的に2-n-チオフェン酢酸を生成することを明らかにした0なお、 この2-n-チオフェイン酢酸の生成は廃棄過程での付加価値の高いものへの変換であり、実 に有益なことである。 第5章では、酸性雨により酸性化された土壌や湖沼等でも生育できる、酸・アルミニウ ム耐性菌初めて分離(ST-3991)している。本菌が形態学的および生理生化学的性質やG c含量およびキノ、ン分析によりFlavobacte[iumsp・であると同定した0また本菌株がpH 3.0の耐酸性(^1100ppn存在下で)とアルミニウム耐性(pH3・5,2000ppn)を持つ特徴を 明らかにした。さらに、本菌株が酸性土壌条件下でイオン化するアルミニウムを吸着させ るともに、菌体内にも吸収する能力を持っていること、PHを上昇させる機能を持つこと などの新知見を得た。 このように本研究は、いわいる環境問題を地球規模から、地域間題までとらえ、そこか ら五つのターゲットを設定し、環境微生物学的に取り組み、それぞれの汚染物質の分解菌 を単離、それぞれの微生物の形態的特徴、生理生化学的性質等により同定し、ついで代謝 物質を検索、同定し、それらの代謝経路を推定、または初めて明らかにしたものである0 これらの基礎研究は、今後、これらの環境汚染物質の分解と除去に向けての応用の可能性 を示唆するものであり、良き礎となると述べている。 審 査 結 果 の 要 旨 主査および副査の5名は、平成7年8月9日.静岡大学農学部において学位申請者に対 し公開論文発表をさせた後、12時30分から13時30分まで学位論文審査を行なったQ 発表論文の要旨は別紙の通りであり、その要点は以下のごとくである。 近年、地球規模での環境汚染の進行が危倶され、重要な社会問題となっている。これら の汚染物質の発生防止はもとより、すでに拡大、また拡大しつつある汚染物質の分解、除 去を図ることは重要である。そこで微生物学的手法による分解、除去を目的として本研究
ウスにおけるイヌ腫瘍の増殖および転移の比較検討を行った。
1.イヌ腫瘍のSCIDマウスへの移植と株化樹立
手術もしくは剖検により採取した腫瘍材料をSC柑マウス皮下に移植したところ、初代移
植成功率は41.ほ(30/73)であ【った。その内訳は良性腫瘍3l.7‡(13/41)、悪性腫瘍53.ほ(17
/31)であった。初代移植に成功した30例中20例が株化樹立ができ、株化できなかった10例
中8例は増殖の極めて遅かった良性乳腺腫瘍であった。また、転移症例5例中4例が初代移植に成功し、そのうち乳癌2例は皮下移植において原腫瘍に一致する肺転移が認められた。
残りの2例(骨肉腫および肥満細胞腫の各1例)はSCIDマウスにおいて転移がみられなか 一 った。骨肉腫株において転移が確認できなかったのは、SCtDマウスが移植後早期に死亡したためであった。イヌ腫瘍のSCIDマウス移植における株化樹立因子の解析では、悪性腫瘍
が良性腫瘍に対して有意に高値を示したが、それ以外の要因では相連は認められなかった。
2.SCIDマウス移植イヌ腫瘍の増殖および転移の特性
2度の腫瘍摘出後転移が発現した肥満細胞腫株は、SCIDマウスへの皮下移植では転移が
みられなかった。そこで、この腫瘍細胞浮遊液を静脈内接種したところ、症例と同様の癌
性腹膜炎による腹水貯溜・後腹膜転移が認められた。この皮下移植腫瘍を実験的に切除し
ても同じ転移現象が得られるため、手術による腫瘍細胞の血管内への播種が転移の主因と考えられた。これらの転移現象は別の肥満細胞腫株にも表現されるので、この鵬に共通
したものと思われた。次に、肺転移症例の乳癌細胞を正所性(乳腺内脂肪組織)移植した ところ、皮下(異所性)移植と比較して肺転移形成率の克進、臓宵リンパ節への転移が認 められた。しかもこの乳癌細胞の静脈内接種により形成された肺転移兼は、数個よりなる 大結節性であったのに対し、乳腺内脂肪組織移植では本症例に一致する肺葉全体にわたる 多数の蜂の巣状小結節を形成し、自然転移の特質を備えていた。さらに、良性腫瘍ではあ るが、SCIDマウスの皮下において速やかな増殖をする肛門周囲腺腫株のホルモン依存性増殖の検討を行った。すなわち、オスSCIDマウス移植肛門周囲腹腔に対する去勢による腫瘍
増殖への影響をみたところ、鵬の増殖が止まり、明らかな増殖抑制が認められ、臨床の
観察結果から一般的に受け入れられている男性ホルモン依存性増殖が実験的に証明きれた。 3.SCIDマウスおよびヌードマウスにおけるイヌ腫瘍の増殖および転移の比較イヌ腫瘍の増殖におけるSCIDマウスとヌードマウスの比較では、SC川マウスの方がやや
良好であった。転移の比較では、SCIDマウスの方が転移形成率の克進が認められ、この原 因としてB細胞の関与が示唆された。以上より、SCIDマウスを用いることにより、イヌ鵬の株化樹立を効率良く行うことが
でき、ヌードマウスでは樹立不可能であった良性腫瘍もかなりの確率でSC川マウスにおい
て増殖することがわかった。また、イヌ肛門周囲腹腔の男性ホルモン依存性増殖の実証は、 現在行われている去勢やホルモン療法を理論的に支持するだけでなく、同じホルモン依存 性増殖をするヒト前立腺癌との増殖メカニズムの対比も可能となった。きらに、転移克服 のための実験系は極めて重要であるが、従来の転移実験系は肺転移をするものが多く、臨 床的には殆どの症例でみられるリンパ節転移系は少ない。イヌ乳癌の正所性移植により所 属リンパ節転移がみられたので、移植部位は臨床の再現性を左右する重要な因子と思われる。転移の標的臓器は古くから"seed-Soi・1[1ypotheses"が提唱されているように腫瘍特
ー144-しCO2を発生させることを示した。さらにGC/MSやIH-NMR等を用いて、トルエ
ンの分解代謝物質を明らかにし、その代謝経路を推定した。
第3章では、海岸に多量打ち上げられ処理、処分の必要な海藻の微生物による分解、除
去に関する基礎研究を行った。この研究ではカジメを材料とし、またカラム実験を採用し、 分解に関与する細菌叢の変化に注目し検討した。その結果、海藻をよく分解する2種類の
菌、Fjh・jo aJgJβ0ル九日cusとPgeudo爪0βag CムJoroJ-ap力isを分離した。またこれらの海藻
の分解においては好気下では無機化し、嫌気下でアルギン酸を蓄積することを示した。さ らに、窒素源の添加が海藻の分解を速めることを明らかにした。 第4章では、原油中に含まれ、悪臭をもつ2-nてルキルチオフェンを分解する両種を分 離した。そしてその分解菌EK-9891が形態学的特徴、生理生化学的性質とGC含量から Pseuわ劇08∂S fJuoresce〃Sであると同定した。本菌が各種の2-n一アルキルチオフェインを分 解し、抗生物質の修飾剤である2-n一チオフェイン酢酸を生成すること、ペプトン等の窒素 源の添加が、分解効率を上げることを示した。また2-nてルキルチオフェン顆の分解経路 ・を明らかにするため、GCやGC/MSを用いて、その分解生成物を同定し、その分解が β一酸化により行われ、最終的に2-n-チオフェン酢酸を生成することを明らかにした0なお、 この2-n-チオフェイン酢酸の生成は廃棄過程での付加価値の高いものへの変換であり、実 に有益なことである。 第5章では、酸性雨により酸性化された土壌や湖沼等でも生育できる、酸・アルミニウ ム耐性菌初めて分離(ST-3991)している。本菌が形態学的および生理生化学的性質やG c含量およびキノ、ン分析によりFlavobacte[iumsp・であると同定した0また本菌株がpH 3.0の耐酸性(^1100ppn存在下で)とアルミニウム耐性(pH3・5,2000ppn)を持つ特徴を 明らかにした。さらに、本菌株が酸性土壌条件下でイオン化するアルミニウムを吸着させ るともに、菌体内にも吸収する能力を持っていること、PHを上昇させる機能を持つこと などの新知見を得た。 このように本研究は、いわいる環境問題を地球規模から、地域間題までとらえ、そこか ら五つのターゲットを設定し、環境微生物学的に取り組み、それぞれの汚染物質の分解菌 を単離、それぞれの微生物の形態的特徴、生理生化学的性質等により同定し、ついで代謝 物質を検索、同定し、それらの代謝経路を推定、または初めて明らかにしたものである0 これらの基礎研究は、今後、これらの環境汚染物質の分解と除去に向けての応用の可能性 を示唆するものであり、良き礎となると述べている。 審 査 結 果 の 要 旨 主査および副査の5名は、平成7年8月9日.静岡大学農学部において学位申請者に対 し公開論文発表をさせた後、12時30分から13時30分まで学位論文審査を行なったQ 発表論文の要旨は別紙の通りであり、その要点は以下のごとくである。 近年、地球規模での環境汚染の進行が危倶され、重要な社会問題となっている。これら の汚染物質の発生防止はもとより、すでに拡大、また拡大しつつある汚染物質の分解、除 去を図ることは重要である。そこで微生物学的手法による分解、除去を目的として本研究
ウスにおけるイヌ腫瘍の増殖および転移の比較検討を行った。
1.イヌ腫瘍のSCIDマウスへの移植と株化樹立
手術もしくは剖検により採取した腫瘍材料をSC柑マウス皮下に移植したところ、初代移
植成功率は41.ほ(30/73)であ【った。その内訳は良性腫瘍3l.7‡(13/41)、悪性腫瘍53.ほ(17
/31)であった。初代移植に成功した30例中20例が株化樹立ができ、株化できなかった10例
中8例は増殖の極めて遅かった良性乳腺腫瘍であった。また、転移症例5例中4例が初代移植に成功し、そのうち乳癌2例は皮下移植において原腫瘍に一致する肺転移が認められた。
残りの2例(骨肉腫および肥満細胞腫の各1例)はSCIDマウスにおいて転移がみられなか 一 った。骨肉腫株において転移が確認できなかったのは、SCtDマウスが移植後早期に死亡したためであった。イヌ腫瘍のSCIDマウス移植における株化樹立因子の解析では、悪性腫瘍
が良性腫瘍に対して有意に高値を示したが、それ以外の要因では相連は認められなかった。
2.SCIDマウス移植イヌ腫瘍の増殖および転移の特性
2度の腫瘍摘出後転移が発現した肥満細胞腫株は、SCIDマウスへの皮下移植では転移が
みられなかった。そこで、この腫瘍細胞浮遊液を静脈内接種したところ、症例と同様の癌
性腹膜炎による腹水貯溜・後腹膜転移が認められた。この皮下移植腫瘍を実験的に切除し
ても同じ転移現象が得られるため、手術による腫瘍細胞の血管内への播種が転移の主因と考えられた。これらの転移現象は別の肥満細胞腫株にも表現されるので、この鵬に共通
したものと思われた。次に、肺転移症例の乳癌細胞を正所性(乳腺内脂肪組織)移植した ところ、皮下(異所性)移植と比較して肺転移形成率の克進、臓宵リンパ節への転移が認 められた。しかもこの乳癌細胞の静脈内接種により形成された肺転移兼は、数個よりなる 大結節性であったのに対し、乳腺内脂肪組織移植では本症例に一致する肺葉全体にわたる 多数の蜂の巣状小結節を形成し、自然転移の特質を備えていた。さらに、良性腫瘍ではあ るが、SCIDマウスの皮下において速やかな増殖をする肛門周囲腺腫株のホルモン依存性増殖の検討を行った。すなわち、オスSCIDマウス移植肛門周囲腹腔に対する去勢による腫瘍
増殖への影響をみたところ、鵬の増殖が止まり、明らかな増殖抑制が認められ、臨床の
観察結果から一般的に受け入れられている男性ホルモン依存性増殖が実験的に証明きれた。 3.SCIDマウスおよびヌードマウスにおけるイヌ腫瘍の増殖および転移の比較イヌ腫瘍の増殖におけるSCIDマウスとヌードマウスの比較では、SC川マウスの方がやや
良好であった。転移の比較では、SCIDマウスの方が転移形成率の克進が認められ、この原 因としてB細胞の関与が示唆された。以上より、SCIDマウスを用いることにより、イヌ鵬の株化樹立を効率良く行うことが
でき、ヌードマウスでは樹立不可能であった良性腫瘍もかなりの確率でSC川マウスにおい
て増殖することがわかった。また、イヌ肛門周囲腹腔の男性ホルモン依存性増殖の実証は、 現在行われている去勢やホルモン療法を理論的に支持するだけでなく、同じホルモン依存 性増殖をするヒト前立腺癌との増殖メカニズムの対比も可能となった。きらに、転移克服 のための実験系は極めて重要であるが、従来の転移実験系は肺転移をするものが多く、臨 床的には殆どの症例でみられるリンパ節転移系は少ない。イヌ乳癌の正所性移植により所 属リンパ節転移がみられたので、移植部位は臨床の再現性を左右する重要な因子と思われる。転移の標的臓器は古くから"seed-Soi・1[1ypotheses"が提唱されているように腫瘍特
ー144-異性がある。乳癌と肥満細胞腫の転移臓器に相違がみられ、しかも各々の症例を再現して