スペイン民事訴訟法における外国法の証明《国際家
族法研究会報告(第23回)》
著者名(日)
徐 瑞静
雑誌名
東洋法学
巻
55
号
2
ページ
273-282
発行年
2011-12
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00000843/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止《国際家族法研究会報告(第 23回) 》
スペイン民事訴訟法における外国法の証明
徐 瑞静 一 はじめに 外国法の証明に関する問題は国際私法の適用の結果として 発生する。その場合において、諸国の対処の仕方が異なって おり、それについては、大陸法系諸国と英米法系諸国に二分 したうえで、すでに発表されている (拙稿「外国法の調査責任 に 関 す る 若 干 の 考 察」 東 洋 大 学 大 学 院 紀 要 四 七 集 八 七 頁 以 下) ス ペインにおいても、外国法の適用の際に生じる諸問題につい て、いかに対処すべきかが問題とされてきた。そこで、本報 告においては、日本と同じく大陸法系に属するスペインにお いて、その問題の規律に関わる民事訴訟法が改正されたこと を機として、当該問題に関する論議がいかに展開され、そし て、いかなる結論に到達しているかを辿ることとしたい。 二 スペイン民事訴訟法典第二八一条第二項前の状況 かつて、外国法の証明は、スペイン裁判所にとって、対立 が存在しない問題であった。 それによれば、 至上の平和 ( pax suprema ) の問題の一つであり、スペイン最高裁判所 (以下、 「最 高 裁 判 所」 と す る) の 第 一 部 門 が そ れ に つ い て 責 任 を 負 っ ていた。事実、その問題について、一八八九年以前、スペイ ン民法典は何ら言及しておらず、最高裁判所が外国法の証明 を規律するための規則を定立していた。明文規定をもって、 外 国 法 の 証 明 に 関 す る 新 し い 条 文 を 導 入 し た の は、 漸 く、 一九七四年の民法典においてである (笠原俊宏「スペイン民法 典 中 の 国 際 私 法 規 定(一 九 七 四 年) 」 法 学 新 報 八 四 巻 七・ 八・ 九 号 参 照) 。 い く つ か の 小 さ い 裁 判 所 が 同 民 法 典 第 一 二 条 第 六項について、異なる解釈の展開を試みた。しかし、最高裁 判所の視野から、同項については、最高裁判所によって一九 世 紀 に 作 り 出 さ れ た 従 前 の 基 本 原 則 を 変 更 し た も の で は な く、非常に特殊で分離された事件においてのみ、最高裁判所 はそれ自身が確立した基本原則から遊離することができると い う 立 場 が と ら れ て い た ( Alfonso-Luis Calvo Caravaca/Javier C ar ra sc os a G on zá le z, T he p ro of of fo re ig n la w in t he n ewSpanish Civil Procedure Code 1/2000, IPRax 2005, p.170.
) 。 外国法の証明に関し、最高裁判所によって作り出された基 本原則は、三つの広範な提案に要約されることができる。ま ず、第一の提案において、外国法は法律として取り扱うこと はできないとされた。なぜならば、かような場合には、それ はスペインの統治への攻撃となるからである。最高裁判所に よれば、外国法は事実として取り扱わなければならず、その 適用は専ら当事者によって主張され、かつ、証明されなけれ ばならないとされた。第二の提案において、裁判所は外国法 の証明に関与することができるが、そうすることは強制され
ないとされた。しかも、最高裁判所は、いつ、いかように、 裁判所が外国法の証明に関与することができるかを示してい ない。それゆえ、裁判所によるその関与は任意的であり、そ して、随意的でもある。第三の提案において、外国法が訴訟 当事者によって証明されないとき、スペイン裁判所は、法廷 地法適用の原則に則り、スペインの実質法に従って当面事件 を判断しなければならないとされた。最高裁判所の観点から は、前出民法典第一二条第六項および一九七八年スペイン憲 法は、外国法証明の問題について、まったく効力を有しない とされ、それらの立法に拘わらず、最高裁判所はそれらの三 つの提案における規則を援用し続けた。従って、外国法の適 用に関するその状況は、一九七四年民法典が公布される前の 一九世紀に最高裁判所によって築かれた状況とまったく同一 であった (
Calvo Caravaca/Carrascosa González, op. cit., p.170.
) 。 三 スペイン民事訴訟法典第二八一条第二項新設後の展開 スペインにおいては、その後、二〇〇一年一月八日に、同 月七日成立の新民事訴訟法典が施行され、それに外国法の証 明に関する新しい規則が導入されている。最も重要な規定は 民事訴訟法典第二八一条第二項であり、同項は「慣習および 外国法も証明されるべきものとする。外国法の内容および有 効性は証明されなければならず、裁判所はその適用のために 必 要 で あ る と 考 え る い か な る 手 段 を も 使 う こ と が で き る。 」 と規定している。同項が定める規則は、次の通りである。す なわち、第一に、外国法は証明されなければならない。第二 に、外国法の内容および効力は証明されるべきである。第三 に、一般規則として、訴訟当事者が外国法を証明しなければ ならない。そして、第四に、外国法は、全体として、外国法 に 適 用 さ れ な い い く つ か の 証 明 規 則 に 従 う 事 実 と は 少 し 異 な っ て い る。 以 上 の 四 点 で あ る ( Calvo Caravaca/Carrascosa
González, op. cit., p.170 et seq.
) 。 以上のような規則が明示されたにも拘わらず、スペイン民 事訴訟法典第二八一条第二項は、外国法の証明について、そ れ以上の規則については何ら言及していない。すなわち、⑴ 外 国 法 は、 誰 に よ っ て 主 張 さ れ な け れ ば な ら な い か。 そ し て、それが主張されなかった場合には、いかなる結果をもた らすか。⑵外国法はすべての事件および訴訟において証明さ れなければならないか。⑶外国法を証明する適正な手続時期 はいつか。⑷外国法を証明する手段は何であるか。⑸外国法 は誰によって証明されるべき、ないし、証明されることがで きるか。⑹外国法が証明されない場合には、いかなる結果を もたらすか。⑺外国法を証明されない時はどうなるか。以上 が、 外 国 法 の 適 用 の 際 に 生 じ る 可 能 性 が あ る 問 題 点 で あ る (
Colvo Caravaca/Carrascosa González, op. cit., p.171.
) 。 それならば、スペイン民事訴訟法典は、外国法の証明に関 する上記のような重要な諸問題について、何ら言及していな いのであろうか。一見すると、スペインの立法者は、単に、
国 際 私 法 に つ い て あ ま り 注 意 を 払 っ て い な い よ う に 見 ら れ る。 し か し な が ら、 そ の 一 方、 ス ペ イ ン の 立 法 者 は、 敢 え て、 外 国 法 の 証 明 に 関 す る い く つ か の 輪 郭 を 表 現 し た 過 ぎ ず、かような証明に関する特別な規則を発展させる権限を裁 判所に委ねているように見ることもできる。それゆえ、外国 法の証明に関し、スペインは、法律上の規則、裁判所の規則 の混合であるということになるであろう。そのような態度を 肯定的に解するならば、スペイン民事訴訟法典第二八一条第 二項の規定における外国法の適用に関する制度は、従前に比 して、より一層、柔軟なものになり、そして、大きく変化を 遂げた難渋な最近のグローバリゼーションとの関わりにおけ る二一世紀の国際的私法状況に巧みに適用することができる こととなり、 同項の規定は、 いわば、 開かれた法文を提示する 制 度 と し て 定 義 さ れ る こ と が で き る ( Ca lvo C ara va ca /C arr asc osa
González, op. cit., p.171.
) 。 四 まとめ――外国法の証明をめぐる疑問点の整理 ( 1 )外国法主張の必要性の有無 事 実 は 当 事 者 が 主 張 し な け れ ば な ら な い (ス ペ イ ン 民 事 訴 訟 法 典 第 三 九 九 条 参 照) 。 し か し、 外 国 法 は 単 純 な 事 実 で は な い (同 法 典 第 二 八 一 条 第 二 項 参 照) 。 特 定 の 事 件 へ の 外 国 法 の 適用はスペイン抵触規則から直接的に導かれるものであり、 当事者または裁判所は、外国法の援用を主張することはでき ない。一八八九年以前から、最高裁判所は、外国法の主張は 常に関連当事者によってなされなければならないという規則 を確立していた。従って、当事者が外国法の適用の問題を主 張しないとき、外国法は考慮されてはならなかった。それに 対して、新しい民事訴訟法の実施の結果、外国法が単なる事 実の証明と全面的に異なっているため、そのような主張は支 持されるべきではない。それゆえ、今や、外国法の適用の主 張 は 必 要 と は さ れ な い と 考 え ら れ る こ と に な っ た ( Calvo
Caravaca/Carrascosa González, op. cit., p.171.
) 。 ( 2 )外国法の証明の必要性 民事訴訟法典第二八一条第二項は明瞭に外国法は証明され なければならないと述べている。最高裁判所は、かつて、外 国法が証明されなければならないことを支持している。外国 法は、外国法としてではなく、裁判所および当事者がスペイ ン 法 を 知 ら な け れ ば な ら な い ( jura novit curia 「裁 判 所 は 法 を 知 る」 原 則 を 含 む) と い う 理 由 に よ っ て 証 明 さ れ な け れ ば な ら な い (民 法 典 第 六 条 第 一 項 参 照。 Calvo Caravaca/Carrascosa
González, op. cit., p.171.
) 。 しかし、それにも拘わらず、民事訴訟法典第二八一条第二 項は、各訴訟ごとに、すべての事件において証明されなけれ ばならないか否か、という点については明言していない。そ れゆえ、特定の外国法の適用が非常に頻繁であるとき、当該 外国法は、スペイン裁判所において、かつて証明されたこと があるならば、その後のすべての個々の事件および訴訟にお
いても証明されるべき必要はない、ということになる。かよ うな場合に、外国法の証明を求めることは決して能率の良い こ と で は な い。 異 な る 法 規 に 従 い、 例 え ば、 鑑 定 人 の よ う に、裁判所ではないいずれかの官庁が、特定の外国法の内容 を知っているときは、当該外国法を適用する資格が与えられ て い る (民 事 登 録 規 則 第 九 一 条、 鑑 定 規 則 第 一 六 八 条 第 四 号 等 参 照。
Calvo Caravaca/Carrascosa González, op. cit., p.171.
) 。 ( 3 )外国法証明の適正手続時期 事実の証明と外国法の証明とは全く異なっており、外国法 の証明は特殊である。それゆえ、外国法は控訴裁判所および 最高裁判所、すなわち、控訴審、上告審のいずれにおいても 証明することできる。反対に、事実は、スペインにおける一 般的規則として、常に第一審においてのみ証明されることと なる (
Calvo Caravaca/Carrascosa González, op. cit., p.171.
) 。 一八八九年以前、最高裁判所は、外国法は専ら第一審にお いて証明されなければならず、控訴審または上告審において 証 明 さ れ る こ と が で き な い と し て い た。 そ の 説 明 に お い て は、明らかに、最高裁判所の視点から見て、外国法は単なる 事実であり、外国法の証明は事実の証明と同様でなければな らないということであった。それに対して、民事訴訟法典に おいては、事実と外国法との間の相違は明らかであるから、 今や、最高裁判所の前における事実の主張は拒否されるべき であり、そして、外国法の証明は、第一審、控訴審、上告審 に お い て 認 め な け れ ば な ら な い ( Calvo Caravaca/Carrascosa
González, op. cit., p.171.
) 。 ( 4 )外国法証明の適正手段 外国法の証明には、当事者による証明、及び、裁判所によ る証明がある。まず、前者の場合において、民事訴訟法典第 二八一条第二項は、いかなる証拠手段が外国法を証明するた めに適切であるかを明らかにしていない。一般原則として、 外国法の内容を適切に確認することを認める証拠手段のみが 用いられることができる。そのような観点から、いくつかの 証拠手段、例えば、公文書、専門家の報告、または、いわゆ る外国法目撃が、外国法を証明するための証拠手段として適 切に使用されている。しかしながら、他の証拠手段は外国法 を適切に証明するのに使用されていない。例えば、裁判上の 事 実 、 人 、 物 の 同 一 性 の 確 認 が 、 そ れ と し て 挙 げ ら れ る ( C alv o
Caravaca/Carrascosa González, op. cit., p.171.
) 。 当事者は専ら公文書によって外国法を証明することができ る (民 事 訴 訟 法 典 第 三 一 七 条 参 照) 。 か つ て、 い く つ か の 裁 判 所の判決がこの見解を受け入れている。例として挙げれば、 スペイン法務省の検事総長によって発行された外国法の内容 に関する証明書が公文書である。一八八九年には、外国法の 内容に関する六〇〇以上の証明書が、検事総長によって発行 されたにも拘わらず、私文書が外国法の内容の確認に適正に 使用されていることが明らかであるときは、証拠方法として
認められ、しばしば、当事者は外国法の条文の単なるコピー を提出することがある。しかし、これらの文書は外国法を正 しく証明するのに適しておらず、スペイン裁判所は、証明手 段としてそれらの文書を拒絶している。当事者は、専ら専門 家 の 報 告 に よ っ て 外 国 法 を 証 明 す る 権 利 を 与 え ら れ る (民 事 訴 訟 法 典 第 三 三 五 条 参 照) 。 当 該 専 門 家 が 外 国 法 の 専 門 家 で あ ることは必要でない ( Calvo Caravaca/Carrascosa González, op. cit., p.172. ) 。 これと対照的に、最高裁判所は、一八八九年以来、外国法 を証明するための二つの手段の累積、すなわち、公文書およ び専門家の報告を要求していた。しかし、現在、このような 最 高 裁 判 所 の 態 度 は 放 棄 さ れ な け れ ば な ら な い。 な ぜ な ら ば、民事訴訟法典第二八一条第二項は、外国法が証明される べきとき、 累積証拠手段を要求していないからである ( Calvo
Caravaca/Carrascosa González, op. cit., p.172.
) 。 当事者によって同意された事実は証明される必要はない。 いくつかの裁判所は、当事者が特定の外国法の内容に同意す る と き、 こ の 外 国 法 は 証 明 さ れ る 必 要 は な い と 決 定 し て い る。しかし、この理論は、議論の余地ない事実の理論として 知られているが、新しい民事訴訟法典の規則においては、そ のような余地はない。蓋し、外国法は事実ではないからであ る。それゆえ、当事者がその内容に同意したとしても、外国 法は常に証明されなければならない (民事訴訟法典第二八一条 第 二 項 参 照) 。 一 九 七 一 年、 最 高 裁 判 所 は、 外 国 法 の 分 野 に お け る 議 論 の 余 地 な い 事 実 の 理 論 を 拒 否 し て い る ( Calvo
Caravaca/Carrascosa González, op. cit., p.172.
) 。 一方、後者の場合、すなわち、裁判所による証明の場合に ついて、民事訴訟法典第二八一条第二項は、裁判所によるこ とが必要であることを前提と考えているとしても、裁判所が 外国法を確認するためには、いかなる手段をも利用すること が可能であることを明示している。これは制限のない規則で ある。従って、裁判所は適正であるならば、外国法を確認す るために、いかなる手段をも利用することができる。この規 定は、特に裁判所に対して、それが、局地的国際条約(例え ば、一九六八年六月七日に署名された「外国法の情報に関す る ヨ ー ロ ッ パ 条 約」 、 一 九 七 九 年 五 月 八 日 に モ ン テ ビ デ オ に おいて署名された「外国法の証明および情報に関する汎米条 約」 、 お よ び、 ス ペ イ ン が 他 の 国 と 署 名 し た い く つ か の 二 国 間条約に含まれた個々の法的手段を利用することの権限を与 えている。二国間条約が、メキシコとは一九八四年一二月一 日、ブラジルとは一九八九年四月一三日、旧チェコスロバキ アとは一九八七年五月四日、中国とは一九九二年五月二日、 ブ ル ガ リ ア と は 一 九 九 三 年 五 月 二 三 日、 モ ロ ッ コ と は 一九九七年五月三〇日、旧ソビエト連邦とは一九九〇年一〇 月二六日、ウルグアイとは一九八七年一一月四日に署名され ている。さらに、民事訴訟法典第二八一条第二項は、個人的
知識によって、外国法の内容を確認することを裁判所に認め
ている
(
Calvo Caravaca/Carrascosa González, op. cit., p.172.
) 。 ( 5 )証明の対象 外国法は証明されなければならない。その場合における外 国法とは、特定の論争に適用される外国の有効な法的規則、 例えば、制定法、慣習、そして、時には、裁判例等、すべて の法源がそれに含まれる (
Calvo Caravaca/Carrascosa González,
op. cit., p.172. ) 。 民事訴訟法典第二八一条第二項は、外国法の内容および効 力が証明されなければならないことのみを明示している。し かし、そのことから重要な問題が発生する。すなわち、これ らの二つの点のみを証明するだけで足りるのか、それとも、 民事訴訟法典第二八一条第二項によって述べられていない他 の点についても、外国法の証明は包括しなければならないの か、 と い う 問 題 で あ る。 前 者 の 立 場 は、 二 〇 〇 三 年 一 〇 月 二九日のマドリード地区労働判決において支持され、裁判所 は外国法の内容および効力の証明を受け入れた。しかし、そ れ に も 拘 わ ら ず、 後 者 の 立 場 が、 最 高 裁 判 所 に よ っ て 好 ま れ、そして、より正しいものとされたように見られる。それ ゆえ、外国裁判所が決定すると同じ方法により、スペイン裁 判所も事件を決定することが必要である。外国法のすべての 点がすべて証明されなければならない。かようにして、次の 諸点が証明されなければならないこととなる。すなわち、① 外国法の内容、すなわち、外国法の文字上の表現、②最近建 国された国々との関係において重要である外国法の有効性お よび存在、そして、必要であるならば、③外国法を適用し、 かつ、解釈する外国裁判の証明を含め、特定の外国規則の解 釈、④特定の事件への外国規則の適用、がそれらとして挙げ られる。それゆえ、最高裁判所の言葉においては、スペイン 裁判所が外国法の正確な意味についていかなる合理的な疑い もないときに初めて、外国法は正確に証明される、というこ とになる (
Calvo Caravaca/Carrascosa González, op. cit., p.172.
) 。 ( 6 )外国法証明責任の負担者 民事訴訟法は、一般に、当事者が外国法を証明しなければ な ら な い こ と を 定 め て い る (民 事 訴 訟 法 典 第 二 八 二 条 参 照) 。 それにも拘わらず、いくつかの例外がある。なぜならば、裁 判所が外国法の適用において関与することができるからであ る (民 事 訴 訟 法 典 第 二 八 一 条 第 二 項 参 照) 。 し か し、 民 事 訴 訟 法は、いかなる事件において、いかなる強さをもって、裁判 所が外国法の証明に関与することができるかを特定していな い。その問題を明らかするため、事件をいくつかのグループ に 区 別 す る こ と が 必 要 で あ る ( Calvo Caravaca/Carrascosa
González, op. cit., p.172.
) 。 第一のグループは、当事者による外国法の証明につき、抵 触 規 則 (伝 統 的 な 双 方 的 抵 触 規 則) が 外 国 法 の 実 質 的 内 容 に 拘 わ ら ず、 外 国 法 を 指 定 す る と き (盲 目 の 抵 触 規 則) 、 外 国 法 の
適用のため、関係当事者はかような外国法を証明しなければ ならない。この当事者は原告でも被告でも良い。第一の例と して、一方当事者が民法典第一二条第二項によって認められ ている第一次反致を主張するときは、この当事者が反致の根 拠となる外国抵触規則を証明しなければならない。第二の例 として、原告が外国法に基づく訴訟を提起するときは、その 者 が 当 該 外 国 法 を 証 明 し な け れ ば な ら な い。 第 三 の 例 と し て、被告が外国法に基づく訴訟に対する答弁を出すときは、 その者が外国法を証明しなければならない。抵触規則が国際 条 約 に 含 ま れ て い る と い う 事 実 は 状 況 を 変 え る も の で は な い。それゆえ、次のような事件においてさえ、外国法を証明 しなければならないのは、裁判所ではなく、関係当事者であ る。 二 〇 〇 三 年 一 一 月 一 八 日 の ア リ カ ン テ 控 訴 裁 判 所 判 決 は、この見解を受け入れている。その事件の内容は次のよう なものである。すなわち、一九八〇年六月一九日の「契約債 務の準拠法に関するEC条約」に従い、国際的貸付けがベル ギー法によって支配された。しかし、当事者のいずれもベル ギー法を証明しなかった。そこで、裁判所自身もベルギー法 を証明しないことを決定した。要するに、両当事者は、外国 法を証明するときに生ずる費用を支払う必要はなく、経済的 観点から見れば、この規則は正しい規則である。外国法の適 用が特別な利益のみに関係し、そして、一般利益に関係しな いため、当事者が外国法の証明について決着するということ は妥当であると考えられる。特別の利益と社会的または一般 的利益との間の区別は、フランス国際私法において認められ て き た 訴 訟 事 件 の 可 処 分 性 ま た は 可 処 分 権 利 (当 事 者 双 方 お よ び 一 方 当 事 者 は 外 国 法 を 証 明 し な け れ ば な ら な い が、 裁 判 所 は そ れ を 証 明 し な く て も 良 い) と 訴 訟 事 件 の 付 加 処 分 性 ま た は 不 可処分権利 (裁判所は当事者の訴訟的態度に拘わらず、外国法を 証 明 し な け れ ば な ら な い) と の 区 別 で あ る。 第 二 の グ ル ー プ は、 裁 判 所 に よ る 外 国 法 の 証 明 (外 国 法 の 職 権 に よ る 適 用 に お ける立法者の特別な利益) である。いくかの事件において、立 法者は特定の外国法の適用における明瞭な利益を表示してい る。これらの事件においては、この利益が支配しなければな ら な い。 そ こ に お い て は、 当 事 者 が 外 国 法 を 証 明 し な い と き、裁判所が職権をもってそれを証明しなければならない。 外国法を証明する費用および負担は外国法によって見積もら れ る こ と に な る (社 会 的 共 同 体 に 関 す る 特 定 の 利 益) 。 い く つ かの抵触規則は裁判所の職権による外国法の証明を要求して いる。例えば、①抵触規則に付された内容によって指定され た外国法、すなわち実質的に色付けられた抵触規則がその実 質的内容を理由として特定の外国法の適用を要求する。これ ら の 抵 触 規 則 は 微 妙 な 利 益 (未 成 年 者、 消 費 者、 取 引、 労 働 者、 扶 養 権 利 者 の 利 益 等) を 保 護 す る。 民 法 典 第 九 条 第 五 項 (国 際 養 子 縁 組 を も 参 照) が 挙 げ ら れ る。 ② 国 際 的 に 強 行 的 な 外国規則が挙げられる。これらの外国の規則は国家の重要な
利益を保護する。それゆえ、それは裁判所の職権により適用 されなければならない。第三のグループは、裁判所による外 国 法 の 証 明 (当 事 者 に と っ て 外 国 法 を 証 明 す る こ と が 不 可 能) である。しばしば、当事者は誠実に外国法を証明しようする が、しかし、成功しない。これらの事件においては、裁判所 が外国法を証明するか、または、外国法の証明を完成しなけ ればならない。裁判所の関与が、実質に関する裁判所の決定 に対する当事者の権利を保護するために必要である。それに も拘わらず、当事者が外国法を証明する最良の地位にいると き、裁判所は外国法を証明する必要はない。このような事件 の 場 合 に は、 当 事 者 の み が 外 国 法 を 証 明 し な け れ ば な ら な い。例えば、二〇〇四年二月二六日のマドリード自治裁判所 判決において、オランダ居住のオランダ市民である原告当事 者が完全にオランダ法を証明できる状態であったので、裁判 所 は そ れ を 証 明 し な い こ と を 決 定 し た ( Calvo Caravaca/
Carrascosa González, op. cit., p.172 et seq.
) 。 ( 7 )外国法の不証明の効果 スペイン民事訴訟法はこの困難な問題に答えを提供してい ない。そのため、スペインの裁判所および研究者は、次のよ うないくつかの異なる理論を支持してきた。 第一の理論は、請求の不許可の理論である。すなわち、請 求内容を決定することができないため、認められてはならな いとされる。しかし、この理論は拒否されるべきである。な ぜならば、二〇〇二年二月一一日のスペイン憲法裁判所判決 は、外国法が援用または証明されないとき、請求の不許可を 受け入れないスペイン民事訴訟法典により、審理された事件 に お い て の み、 請 求 の 不 許 可 が 可 能 で あ る と 判 示 し て い る ( 民 事 訴 訟 法 典 第 四 〇 三 条 参 照 。 Ca lvo C ara va ca /C arr asc osa G on zá lez , op. cit., p.173. ) 。 第二の理論は、スペイン実質法の理論である。すなわち、 当事者が専らスペイン法を基礎として論議し、かつ、抵触規 則 に よ っ て 指 定 さ れ た 外 国 法 を 援 用 ま た は 証 明 し な い と き は、 ス ペ イ ン 実 質 法 が 適 用 さ れ る べ き で あ る と さ れ る (法 廷 地 法 規 則 へ の 回 帰) 。 し か し、 こ の グ ル ー プ の 理 論 も い く か の 理 由 で 拒 否 さ れ る べ き で あ る。 ま ず、 こ の 理 論 は 民 法 典 第 一二条第六項において定められた抵触規則の強行性を無視し ている。外国法を援用しないことおよび証明しないことだけ で、当事者がその適用を認めず、その結果、スペイン実質法 へ導くことができるということは、民法典第一二条第六項の もとにおいて受け入れられず、有効であるとはいえない。そ して、この理論は法律上の不確実性を主張している。なぜな らば、それによれば、特定の国際私法状況において適用され るべき法律が何であるかを知ることが不可能であるからであ る。それゆえ、この理論は、CE第九条、および、当事者の 法 的 確 実 性 に 対 す る 権 利 を 侵 害 す る も の で あ る ( Ca lvo C ara va ca /
Carrascosa González, op. cit., p.173.
)
第三の理論は、裁判所の職権による外国法の適用の理論で ある。ある研究者によれば、当事者が外国法を援用せず、証 明しないとき、裁判所は抵触規則によって指定された外国法 を自発的に適用しなければならず、そして、外国法を証明す る費用の負担については、それを証明すべきであった当事者 へ移転しなければならない。この理論は、民法典第一二条第 六項に定められたスペイン抵触規則の強行性と一致する。そ れ に も 拘 わ ら ず、 こ の 第 三 の 理 論 も 有 効 で あ る と は い え な い。なぜならば、民事訴訟法典第二八二条によって考えられ ているような外国法証明負担を尊重していないからである。 こ の 規 定 に よ れ ば、 関 連 し た 利 益 が 専 ら 私 的 利 益 で あ る と き、裁判所は当事者の義務を遂行してならず、次のような二 つの点が指摘されるべきである。まず、この理論は明らかに 民事訴訟法典第二一八条に違反している。裁判所は当事者に よって主張されていない法的根拠に基づいて事件を決定して はならない。それゆえ、当事者が外国法を援用せず、証明し ないとき、裁判所は外国法に基づく事件を決定することがで きない。そして、外国法を証明することが不可能で、裁判所 の出費を意味するばかりではなく、その負担を当事者へ移転 してはならない。時間浪費の手続きでもある。要するに、な ぜ、当事者がそれ自身の特別な利益のみに関わる証明をなす ための時間および財源を裁判所が負担しなければならないの か。なぜ、裁判所が当事者によって主張されていない法的根 拠に基づく事件を決定しなければならないのか、というのが そ の 理 由 で あ る ( Calvo Caravaca/Carrascosa González, op. cit., p.173 et seq. ) 。 第四の理論は請求の拒否の理論である。当事者が専らスペ イ ン 法 に 関 し て 論 議 し、 外 国 法 を 援 用 せ ず、 証 明 し な い と き、裁判所は請求を拒否しなければならない。この理論が最 も正しいと考えられている。蓋し、第一に、裁判所は自発的 に 外 国 法 を 適 用 し て は な ら な い が (一 般 規 則 と し て、 当 事 者 は 外 国 法 の 証 明 の 負 担 を 推 定 さ れ な け れ ば な ら な い) 、 し か し、 裁 判所はスペイン実質法も適用することができないからである (抵 触 規 則 は 強 行 的 性 質 を 有 す る も の で あ り、 そ の 規 則 が 外 国 法 を 適 用 す べ き と し て 指 定 す る と き、 ス ペ イ ン 実 質 法 に 従 っ て 事 件 を 解 決 す る こ と は で き な い) 。 第 二 に、 民 事 訴 訟 法 典 第 二 一 八 条第二項は、当事者によって主張されていない法的根拠に基 づいて、裁判所が事件を解決してはならないことを定めてい る。それゆえ、当事者がスペイン法について論議し、準拠法 が外国法であるとき、裁判所は当事者およびその弁護士の義 務を遂行することはできず、かつ、してはならないからであ る (抵触規則によって、指定された外国法に基づく事件の提出) 。 第 三 に、 こ の 理 論 は 当 事 者 の い か な る 詐 欺 行 為 を も 排 除 す る。事実、この理論の中身において、当事者は抵触規則に従 い、外国法が準拠法である事件において、スペイン実質法を 合意することが認められない。第四に、この理論は法的確実
性 を 確 か に す る (C E 第 九 条 第 三 項 参 照) 。 そ れ ゆ え、 準 拠 法 は抵触規則によって指定された法と異なる法にはならないか らである。第五に、この理論はいかなる裁判の拒否をも導か ない。事実、この理論は争議が法的見解から正しく根拠づけ られなかったということのみを意味する。当事者は外国法を 主張しなければならず、スペイン実質法に基づいて主張して はならない。請求が拒否されるとき、原告は抵触規則によっ て指定された外国法に基づいて正しく新しい請求を提出する ことができる。民事訴訟法典第四〇〇条は、この二番目の請 求を妨げない。なぜならば、それは新しい訴訟物を提出する からである。この第四番目の理論は、次の裁判によって採用 されてきた。現行民事訴訟法典第二八一条第二項前号におけ るいくつかの下級裁判所、最高裁判所の労働部門、そして、 間 接 的 に、 憲 法 裁 判 所 に よ っ て で あ る ( Calvo Caravaca/
Carrascosa González, op. cit., p.174.
) 。 ( 8 )外国法証明不可能の効果 い く つ か の 事 件 に お い て、 外 国 法 の 証 明 が 不 可 能 で あ る (例 え ば、 最 近、 建 国 さ れ た 国 々、 戦 争 中 の 国 々) 。 民 事 訴 訟 法 典第二八一条第二項は、これらの事件については何も述べて いない。問題を解決するために、二つの異なる仮説がある。 第一に、もし、次位の連結規則が存在するときは、かような 抵触規則の連結規則によって指定される法律が適用されなけ ればならない。第二に、抵触規則が唯一の連結規則を有する ときは、スペイン実質法が適用されるべき最後の根拠として 法 廷 地 法 へ 戻 る。 そ の 他 の 解 決、 例 え ば、 請 求 を 拒 絶 し た り、外国法の証明されない法律の内容とより緊密に結びつい て い る 外 国 法 (母 法) を 適 用 し た り、 ま た は、 抵 触 す る 相 異 な る 法 律 の 統 合 か ら 生 ず る 統 一 法 (補 充 法) を 適 用 す る こ と は、 そ れ ほ ど 適 正 で は な い と 説 か れ て い る ( Calvo Caravaca/
Carrascosa González, op. cit., p.174.
)
。
(じょ・ずいせい